以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置が適用される分散電源システムの構成を示すブロック図である。
図1を参照して、分散電源システムは、複数の区画(例えば、30区画程度)の集合体で構成されたスマートタウン内に配置される。当該スマートタウンを構成する複数の区画の各々は、共通の柱上トランスに接続させる複数の需要家(例えば、10軒程度)によって構成される。図1中には、区画19Q,19R,19Z、及び、区画19Q,19R,19Zにそれぞれ対応する柱上トランス9Q,9R,9Zが例示されるが、区画の数は任意である。又、区画19Qにおいて、需要家a及び需要家bが例示されるが、需要家数についても任意である。
各需要家宅18は、太陽電池1、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池3、蓄電池用電力変換装置4、需要家宅内の負荷5、分電盤6、HEMS(Home Energy Management System)7、スマートメータ8、宅内配電系統10、宅内通信ネットワーク11、及び、信号線12を備える。宅内通信ネットワーク11は、HEMS7と宅内の住設機器とを接続する。信号線12は、分電盤6で計測した各機器の消費電力等を、HEMS7へ送信する。
尚、図1では、区画19Q内の需要家a及び需要家bの需要家宅18a,18bの構成を、上述の各要素の符号に添字a,bを付して例示しているが、各需要家宅でのシステムの構成は同様であるので、需要家を区別せずに説明する際には、符号a,bを付さずに表記するものとする。同様に、柱上トランスについても、区画を区別せずに説明する場合には、符号Q,R,Zを付さずに、単に柱上トランス9と表記する。
さらに、各需要家及び各区画で共有されるスマートタウンの構成として、変電所24、変電所24及び各柱上トランス9間の柱上トランス1次側の配電系統16、柱上トランス9及び各需要家間の柱上トランス2次側の配電系統14、宅外通信ネットワーク13、CEMS(Community Energy Management System)15、タウン蓄電池20、タウン蓄電池用電力変換装置21、自動電圧調整器23、及び、DSO(Distribution System Operator)による配電自動化システム25が配置される。
CEMS15は、区画19Q〜19Zで構成された街区内の需給電力を管理する。宅外通信ネットワーク13は、各需要家のHEMS7及びCEMS15の間を通信接続する。タウン蓄電池用電力変換装置21は、タウン蓄電池20及び配電系統16の間で、直流/交流電力変換を実行する。配電系統16には、電圧計測のための複数の電圧計22が配置される。電圧計22の配置個数は任意であり、図1中には、電圧計22a〜22xが配置される構成が例示される。自動電圧調整器23及び配電自動化システム25によって、配電系統16の電圧が制御される。以下では、自動電圧調整器23をSVR(Step Voltage Regulator)23とも称する。具体的には、配電自動化システム25からの制御指令に従って、SVR23がタップ切換を行うことによって、配電系統16の電圧が調整される。
本実施の形態では、各需要家宅内に、「分散電源」として、太陽電池1及び蓄電池3を設置するものとして以下の説明を行う。太陽電池1は「創エネ機器」の一実施例に対応し、蓄電池3は「蓄エネ機器」の一実施例に対応する。尚、全需要家が、太陽電池1(創エネ機器)及び蓄電池3(蓄エネ機器)の両方を有する必要はなく、各需要家は、太陽電池1及び蓄電池3の一方のみを有してもよい。
図2には、図1に示された需要家宅18内の各種設備の構成をさらに説明するためのブロック図が示される。
図2を参照して、太陽電池1及び太陽電池用電力変換装置2により、創エネ機器による分散電源が構成され、蓄電池3及び蓄電池用電力変換装置4により、蓄エネ機器による分散電源が構成される。尚、上述のように、各需要家宅の電源システムには、創エネ機器による分散電源、及び、蓄エネ機器による分散電源の一方のみが配置されてもよい。
負荷5は、例えば、エコキュート(登録商標)等の蓄熱機器51、エアコン52、冷蔵庫53、照明54、IHクッキングヒータ55を含む。負荷5は、宅内配電系統10から供給された電力によって動作する。分電盤6の内部には、ブレーカ単位で消費電力を計測するための電力計測回路61が配置される。電力計測回路61による測定値は、信号線12を経由して、HEMS7へ送信される。HEMS7は、宅内通信ネットワーク11を経由して、負荷5の各機器及びスマートメータ8との間でデータの授受が可能である。さらに、HEMS7は、宅外通信ネットワーク13によって、CEMS15との間でデータの授受が可能である。
次に、図3には、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の構成を説明するブロック図が示される。
図3を参照して、太陽電池用電力変換装置2は、電圧計201、電流計202、第1のDC/DC変換回路203、第1の制御回路204、直流母線205、電圧計206、電流計207、第1のDC/AC変換回路208、第2の制御回路209、電圧計210、電流計211、及び、通信インターフェース回路212を含む。
電圧計201は、太陽電池1から出力される電圧(DC)を計測する。電流計202は、太陽電池1から出力される電流(DC)を計測する。第1のDC/DC変換回路203は、太陽電池1より出力される第1の直流電圧の直流電力を、第2の直流電圧の直流電力に変換する。第1の制御回路204は、第1のDC/DC変換回路203を制御する。直流母線205は、第1のDC/DC変換回路203より出力される第2の直流電圧を第1のDC/AC変換回路208に供給する。電圧計206は直流母線205の電圧を計測する。電流計207は、第1のDC/DC変換回路203より出力される電流(DC)を計測する。
第1のDC/AC変換回路208は、第1のDC/DC変換回路203より出力される直流電力を交流電力に変換する。第2の制御回路209は、第1のDC/AC変換回路208を制御する。電圧計210は、第1のDC/AC変換回路208より出力される電圧(AC)を計測する。電流計211は、第1のDC/AC変換回路208より出力される電流(AC)を計測する。通信インターフェース回路212は、太陽電池用電力変換装置2とHEMS7との間で通信を行う。
蓄電池用電力変換装置4は、電圧計401、電流計402、第2のDC/DC変換回路403、第3の制御回路404、直流母線405、電圧計406、電流計407、第2のDC/AC変換回路408、第4の制御回路409、電圧計410、電流計411、及び、通信インターフェース回路412を含む。
電圧計401は、蓄電池3から出力される電圧(DC)を計測する。電流計402は蓄電池3から出力される電流(DC)を計測する。第2のDC/DC変換回路は、蓄電池3より出力される第3の直流電圧の直流電力を、第4の直流電圧の直流電力に変換する。第3の制御回路404は、第2のDC/DC変換回路403を制御する。直流母線405は、第2のDC/DC変換回路403より出力される第4の直流電圧を、第2のDC/AC変換回路408に供給する。
電圧計406は、直流母線405の電圧を計測する。電流計407は、第2のDC/DC変換回路403より出力される直流電流を計測する。第2のDC/AC変換回路408は、第2のDC/DC変換回路403より出力される直流電力を交流電力に変換する。第4の制御回路409は、第2のDC/AC変換回路408を制御する。電圧計410は、第2のDC/AC変換回路408より出力される電圧(AC)を計測する。電流計411は、第2のDC/AC変換回路408より出力される電流(AC)を計測する。通信インターフェース回路412は、蓄電池用電力変換装置4とHEMS7との間で通信を行う。
尚、第1のDC/DC変換回路203及び第2のDC/DC変換回路403、並びに、第1のDC/AC変換回路208及び第2のDC/AC変換回路408の構成としては、公知のDC/DCコンバータ及びインバータの構成を適宜用いることが可能である。又、図3の構成において、第1のDC/AC変換回路208及び第2のDC/AC変換回路408の各々は「インバータ部」の一実施例に対応し、特に、第1のDC/AC変換回路208は「第1のインバータ」に対応し、第2のDC/AC変換回路408は「第2のインバータ」に対応する。又、第2の制御回路209及び第4の制御回路409は「インバータ制御部」の一実施例に対応する。
図4は、図3に示された、太陽電池用電力変換装置2の第1のDC/DC変換回路を制御する第1の制御回路204の構成を説明するブロック図である。
図4を参照して、第1の制御回路204は、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御回路2041、電圧制御回路2042、切換回路2043、及び、第5の制御回路2044を有する。MPPT制御回路2041は、電圧計201及び電流計202の計測値に基づき、いわゆる、最大電力点追従制御のために、太陽電池1より発電される電力を最大限取り出すために、太陽電池1の最大電力点をサーチする。具体的には、MPPT制御回路2041は、電圧計201によって測定される直流電圧を、上記最大電力点に対応する電圧に制御するための第1のDC/DC変換回路の制御指令値を生成する。
電圧制御回路2042は、電圧計206の計測値に基づき、直流母線205の直流電圧(第2の直流電圧)を、予め定められた目標電圧(例えば、350V)に維持するための、第1のDC/DC変換回路203の制御指令値を生成する。
第5の制御回路2044は、MPPT制御回路2041及び電圧制御回路2042への制御パラメータ及び制御目標値等を出力するとともに、太陽電池1の発電状態などを管理する。第5の制御回路2044は、切換回路2043の制御信号をさらに出力する。
切換回路2043は、第5の制御回路2044からの制御信号に従って、MPPT制御回路2041及び電圧制御回路2042の出力のうちの一方を、第1のDC/DC変換回路203の制御指令値として選択的に出力する。
後述するように、第1のDC/DC変換回路203は、MPPTモード又は電圧制御モードで制御される。切換回路2043は、MPPTモードでは、MPPT制御回路2041が生成した制御指令値を出力する一方で、電圧制御モードでは、電圧制御回路2042が生成した制御指令値を出力するように制御される。
図5は、図3に示された、太陽電池用電力変換装置2の第1のDC/AC変換回路208を制御する第2の制御回路209の構成を説明するブロック図である。
図5を参照して、第2の制御回路209は、位相検出回路2091、無効電流制御回路2092、無効電流波形生成回路2093、有効電流制御回路2094、有効電流波形生成回路2095、加算器2096、第6の制御回路2097、実効電圧算出回路2098、電圧制御目標値生成回路2099、及び、不感帯テーブル生成回路2100を有する。
位相検出回路2091は、電圧計210で計測した交流の電圧波形から位相を検出する。無効電流制御回路2092は、実効電圧算出回路2098より出力される配電系統の交流電圧の実効電圧、電圧制御目標値生成回路2099で生成した電圧制御目標値、及び不感帯テーブル生成回路2100で生成した不感帯幅情報に基づき、第1のDC/AC変換回路208から出力する無効電流の振幅指令を生成する。無効電流制御回路2092の詳細は、後程説明する。
無効電流波形生成回路2093は、位相検出回路2091から出力された交流電圧の位相検出情報、及び、無効電流制御回路2092によって生成された振幅指令値から、第1のDC/AC変換回路208より出力する無効電流波形を生成する。
有効電流制御回路2094は、第6の制御回路2097を介して通知される、電圧計206で計測した直流母線205の電圧、電流計207で計測した直流母線205を流れる電流、実効電圧算出回路2098より出力される宅内配電系統10の交流実効電圧、電圧制御目標値生成回路2099で生成した電圧制御目標値、無効電流制御回路2092から出力される無効電流振幅情報、及び、不感帯テーブル生成回路2100で生成された不感帯幅情報に基づき、第1のDC/AC変換回路208から出力する有効電流の振幅指令値を生成する。有効電流波形生成回路2095は、位相検出回路2091から出力された交流電圧の位相検出情報、及び、有効電流制御回路2094によって生成された振幅指令値から、第1のDC/AC変換回路208より出力する有効電流波形を生成する。
加算器2096は、無効電流波形生成回路2093より出力される無効電流波形と、有効電流波形生成回路2095より出力される有効電流波形とを加算することによって、第1のDC/AC変換回路208より出力する交流電流目標値を生成する。第6の制御回路2097は、加算器2096からり出力される交流電流目標値と、電流計211から出力される交流電流の計測結果とから、第1のDC/AC変換回路208の出力電流を交流電流目標値に制御するための、第1のDC/AC変換回路208の制御指令値を生成する。
実効電圧算出回路2098は、電圧計210から出力される宅内配電系統10の交流電圧から交流実効電圧を算出する。電圧制御目標値生成回路2099は、実効電圧算出回路2098より出力される交流実効電圧から交流電圧(交流実効電圧)の制御目標値を生成する。不感帯テーブル生成回路2100は、不感帯幅情報を生成する。
尚、無効電力生成時は、第6の制御回路2097で皮相電力が算出される。算出された皮相電力が、第1のDC/AC変換回路208の容量を超える場合には、第6の制御回路2097は、加算器2096より出力される交流電流目標値を修正することによって、第1のDC/AC変換回路208の出力電力(出力電流)が第1のDC/AC変換回路208の容量以下になるように制御する。
図6は、図3に示された、蓄電池用電力変換装置4の第2のDC/DC変換回路403を制御する第3の制御回路404の構成を説明するブロック図である。
図6を参照して、第3の制御回路404は、充電制御回路4041、放電制御回路4042、切換回路4043、及び、第7の制御回路4044を有する。
充電制御回路4041は、蓄電池3の充電制御を行う際の第2のDC/DC変換回路403の制御指令値を生成する。放電制御回路4042は、蓄電池3からの放電制御を行う際の第2のDC/DC変換回路403の制御指令値を生成する。第7の制御回路4044は、充電制御回路4041及び放電制御回路4042への制御パラメータ及び制御目標値等を出力するとともに、蓄電池3の充電量、充電電流、放電電力量などを管理する。第7の制御回路4044は、切換回路4043の制御信号をさらに出力する。
切換回路4043は、第7の制御回路4044からの制御信号に従って、充電制御回路4041及び放電制御回路4042の出力のうちの一方を、第2のDC/DC変換回路403の制御指令値として選択的に出力する。
切換回路2043は、蓄電池3の充電が指示される際には充電制御回路4041が生成した制御指令値を出力する一方で、蓄電池3の放電が指示される際には放電制御回路4042が生成した制御指令値を出力するように制御される。
図7は、図3に示された、蓄電池用電力変換装置4の第2のDC/AC変換回路408を制御する第4の制御回路409の構成を説明するブロック図である。
図7を参照して、第4の制御回路409は、位相検出回路4091、無効電流制御回路4092、無効電流波形生成回路4093、有効電流制御回路4094、有効電流波形生成回路4095、加算器4096、第8の制御回路4097、実効電圧算出回路4098、電圧制御目標値生成回路4099、及び、不感帯テーブル生成回路4100を有する。
位相検出回路4091は、電圧計410で計測した交流の電圧波形から位相を検出する。無効電流制御回路4092は、実効電圧算出回路4098より出力される配電系統の交流電圧の実効電圧、電圧制御目標値生成回路4099で生成した電圧制御目標値(宅内配電系統10)、及び、不感帯テーブル生成回路4100で生成した不感帯幅情報に基づき、第2のDC/AC変換回路408から出力する無効電流の振幅指令を生成する。無効電流制御回路4092の詳細は、後程説明する。
無効電流波形生成回路4093は、位相検出回路4091から出力された交流電圧の位相検出情報、及び、無効電流制御回路4092によって生成された振幅指令値から、第2のDC/AC変換回路408より出力する無効電流波形を生成する。
有効電流制御回路4094は、第8の制御回路4097を介して通知される電圧計406で計測した直流母線405の電圧、電流計407で計測した直流母線405を流れる電流、実効電圧算出回路4098より出力される宅内配電系統10の交流実効電圧、電圧制御目標値生成回路4099で生成した電圧制御目標値(宅内配電系統10)、無効電流制御回路4092から出力される無効電流振幅情報、及び、不感帯テーブル生成回路4100で生成された不感帯幅情報に基づき、第2のDC/AC変換回路408から出力する有効電流の振幅指令値を生成する。有効電流波形生成回路4095は、位相検出回路4091から出力された交流電圧の位相検出情報、及び、有効電流制御回路4094によって生成された振幅指令値から、第2のDC/AC変換回路408より出力する有効電流波形を生成する。
加算器4096は、無効電流波形生成回路4093より出力される無効電流波形と、有効電流波形生成回路4095より出力される有効電流波形とを加算することによって、第2のDC/AC変換回路408より出力する交流電流目標値を生成する。第8の制御回路4097は、加算器4096から出力される交流電流目標値と、電流計411から出力される交流電流の計測結果とから、第2のDC/AC変換回路408の出力電流を交流電流目標値に制御するための、第2のDC/AC変換回路408の制御指令値を生成する。
実効電圧算出回路4098は、電圧計410から出力される宅内配電系統10の交流電圧から交流実効電圧を算出する。電圧制御目標値生成回路4099は、実効電圧算出回路4098より出力される交流実効電圧から交流電圧(交流実効電圧)の制御目標値を生成する。不感帯テーブル生成回路4100は、不感帯幅情報を生成する。
尚、無効電力生成時は、第8の制御回路4097で皮相電力が算出される。算出された皮相電力が、第2のDC/AC変換回路408の容量を超える場合には、第8の制御回路4097は、加算器4096より出力される交流電流目標値を修正することによって、第2のDC/AC変換回路408の出力電力(出力電流)が第2のDC/AC変換回路408の容量以下になるように制御する。
次に、図5及び図7の主要なブロックの詳細についてさらに説明する。
図8は、図5及び図7に示された無効電流波形生成回路2093,4093の構成を説明するブロック図である。尚、無効電流波形生成回路2093及び4093の構成は同様であるので、無効電流波形生成回路2093を代表的に説明する。
無効電流波形生成回路2093は、位相シフト回路20931、リミッタ20932、乗算器20933、無効電力出力時間計測回路20934、及び、無効電力計測回路20935を有する。
位相シフト回路20931は、位相検出回路2091より出力される位相情報をπ/2(90°)シフトして、無効電流を生成する際の基準となる余弦波(COS波形)を生成する、リミッタ20932は、無効電流制御回路2092より出力される無効電流振幅が予め定められた上限値を超えないように制限する。無効電流制御回路2092からの無効電流振幅は、当該上限値を超えない場合には、リミッタ209932によって制限されずにそのまま乗算器20933に出力される。一方で、無効電流制御回路2092からの無効電流振幅が当該上限値を超える場合には、リミッタ209932から上記上限値が乗算器20933に出力される。乗算器20933は、位相シフト回路20931より出力される基準余弦波(COS波形)と、リミッタ20932通過後の無効電流の振幅情報との乗算によって、無効電流指令値を生成する。
無効電力出力時間計測回路20934は、無効電流制御回路2092から出力される無効電流の振幅情報から無効電力の出力時間を計測する。無効電力計測回路20935は、無効電流制御回路2092から出力される無効電流の振幅情報に基づき、第1のDC/AC変換回路208から出力する無効電力を計測する。
図9は、図5及び図7に示された有効電流制御回路2094,4094の構成を説明するブロック図である。尚、有効電流制御回路2094及び4094の構成は同様であるので、有効電流制御回路2094を代表的に説明する。
図9を参照して、有効電流制御回路2094は、有効電流不感帯制御指令生成回路20941、有効電流制御指令生成回路20942、減算器20943、出力抑制制御回路20944、有効電力計測回路20945、及び、出力抑制時間計測回路20496を有する。
有効電流不感帯制御指令生成回路20941は、電圧制御目標値生成回路2099から出力される電圧制御目標値、無効電流制御回路2092から出力される無効電流振幅情報、実効電圧算出回路2098から出力される実効電圧算出結果、及び、不感帯テーブル生成回路2100から出力される不感帯幅情報に基づき、有効電力を抑制するための指令値を生成する。有効電流制御指令生成回路20942は、第6の制御回路2097を介して入力される電圧計206の計測結果、及び、電流計207の計測結果に基づき、有効電力を制御するための有効電流指令値を生成する。
減算器20943は、有効電流制御指令生成回路20942の出力から有効電流不感帯制御指令生成回路20941の出力を減算することによって、有効電流指令値を生成する。出力抑制制御回路20944は、第6の制御回路2097から出力される出力抑制指令に基づき、出力電力の抑制が必要な場合には、減算器20943から出力される有効電流指令値を抑制する。尚、当該出力抑制指令は、配電自動化システム25からCEMS15及びHEMS7経由で通知される。
有効電力計測回路20945は、出力抑制制御回路20944を通過した有効電流指令値から、有効電力量を計測する。出力抑制時間計測回路20946は、有効電流不感帯制御指令生成回路20941の出力、及び、出力抑制制御回路20944の出力から、有効電力の出力が抑制されている時間を計測する。
図10は、図5及び図7に示された実効電圧算出回路2098,4098の構成例を説明するブロック図である。尚、実効電圧算出回路2098及び4098の構成は同様であるので、実効電圧算出回路2098を代表的に説明する。
図10を参照して、実効電圧算出回路2098は、乗算器20981、積算器20982、平方根計算器20983、及び、除算器20984を有する。
乗算器20981は、電圧計210による宅内配電系統の交流電圧の計測値同士を乗算することによって電圧二乗値を算出する。乗算器20981の出力は、積算器20982に入力される。これにより、電圧二乗値の総和が計算される。具体的には、位相検出回路2091から出力される位相検出情報に従って、例えば配電交流系統の1周期毎に、積算器20982で算出した総和が、図示していないレジスタにラッチされるともに、積算値がゼロにリセットされる。
積算器20982の出力(すなわち、図示していないレジスタ出力)は、平方根計算器20983に入力されて、電圧二乗値の総和の平方根が求められる。さらに、除算器20984では、平方根計算器20983の出力値が、配電交流系統の1周期期間に相当する積算器20982での積算サンプル数N(N:自然数)で除算される。この結果、除算器20984の出力値は、宅内配電系統10の交流実効電圧に相当する。
図11は、図5及び図7に示された電圧制御目標値生成回路2099,4099の構成を説明するブロック図である。尚、電圧制御目標値生成回路2099及び4099の構成は同様であるので、電圧制御目標値生成回路2099を代表的に説明する。
図11を参照して、電圧制御目標値生成回路2099は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを構成する、乗算器20991、複数段のレジスタ20992a〜20992m、及び、複数段の加算器20993a〜20993mを有する。
電圧制御目標値生成回路2099は、実効電圧算出回路2098によって算出された、宅内配電系統10の交流実効電圧が入力されて、当該交流実効電圧の移動平均値を算出する。例えば、本実施の形態1では、1分間の移動平均値が算出される。電圧制御目標値生成回路2099によって算出された、宅内配電系統10の交流実効電圧移動平均値は、宅内配電系統10の電圧制御目標値として、有効電流制御回路2094及び第6の制御回路2097へ送出される。
本実施の形態1では、図1に例示したとおり、「創エネ機器」として、自然エネルギーを活用する太陽電池1を用いた場合について説明するが、これに限るものではなく、例えば燃料電池や風力発電設備などを用いることも可能である。或いは、太陽電池1と他の創エネ機器との組み合わせが「創エネ機器」として、需要家に配置されてもよい。
「蓄エネ機器」としての蓄電池3については、定置された据置型バッテリを用いた場合について説明するが、これに限るものではなく、例えば、電気自動車の車載バッテリを蓄電池として用いることも可能である。或いは、据置バッテリ及び車載バッテリの組み合わせを「蓄エネ機器」とすることも可能である。また、リチウムイオンバッテリを用いる場合は、厳密には、バッテリ側に内蔵されたバッテリ管理ユニットが、蓄電量、充放電の可否、充電時の最大充電電流などを管理して、第3の制御回路404に通知することになるが、本実施の形態では、説明を簡単にするため、蓄電量、充放電の可否、充電時の最大充電電流などの管理は、統一的に第3の制御回路404で行うものとして説明を行う。さらに、本実施の形態では、説明を簡単にするため、図3〜図11のブロック図に記載された各ブロックによる各種制御機能はハードウェアで実施するものとして説明を行うが、後述するように、本実施の形態で説明する各制御機能は、ハードウェアのみによる実現に限定されるものではない。
次に、本実施の形態1の電力変換装置の具体的な動作について説明する。
再び図1を参照して、実施の形態1に係る電力変換装置が適用される分散電源システムが配置されるスマートタウンにおいて、各需要家宅18はZEH住宅で構成されており、全ての住宅には太陽電池1(例えば、容量は4〜6kW程度)が設置されるケースを想定する。このケースでは、スマートタウン全体で、いわゆるメガソーラが構成される。
各需要家宅18には、柱上トランス9から、スマートメータ8を介して宅内配電系統10に電力が供給される。さらに、HEMS7には宅外通信ネットワーク13を介して、CEMS15が接続される。以下、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4によって構成される電力変換装置を用いた、宅内配電系統10の系統電圧安定化制御について説明する。
再び図2を参照して、HEMS7が起動すると、HEMS7は、宅内通信ネットワーク11に接続されている、太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、蓄熱機器51、及び、エアコン52等の各種負荷機器のステータスを確認する。この際、CEMS15から各変換装置向けに制御用の目標電圧情報やスレッショルド電圧(不感帯幅情報)等が通知されている場合には、HEMS7は、太陽電池用電力変換装置2、及び蓄電池用電力変換装置4に対して、宅内通信ネットワーク11を介して通知する情報を、一部HEMS7内で加工して通知する。
宅内通信ネットワーク11のプロトコルとしては、エコーネットライト(Echonet Light:登録商標)を使用し、物理層としては、イーサネット(Ethernet:登録商標)を使用することができる。但し。宅内通信ネットワーク11のプロトコルは、エコーネットライトに限られることはなく、他のプロトコル、或いは、独自のプロトコルを適用することが可能である。同様に、物理層についても、イーサネットに限られず、Wi−SUN(Wireless Smart Utility Network)、特小無線等の無線ネットワーク、電灯線を利用したPLC(Power Line Communications)ネットワーク、又は、光ネットワーク等を適用することが可能である。
さらに、CEMS15及びHEMS7の間は、宅外通信ネットワーク13で接続されている。CEMS15及びHEMS7間の情報の授受については、後程説明する。HEMS7は、各機器のステータスの確認を終了すると、各機器の動作を監視する。具体的には、各機器の消費電力、太陽電池1の発電電力、及び、蓄電池3の充放電電力の計測値が監視される。また、HEMS7は、CEMS15から指令が通知された場合、その指令内容に従い各機器に指示を通知する。或いは、HEMNS7は、各種計測値(消費電力量等)及びステータス情報をCEMS15に送付する。
次に、本実施の形態1に係る電力変換装置による、配電系統14(柱上トランス2次側)における系統電圧の安定化制御の具体的な動作原理を説明する。
太陽電池1等の分散電源の発電電力量が増加し、宅内との連系点に相当する配電系統14の交流電圧(交流実効電圧)が上昇した場合、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力することによって、交流電圧(交流実効電圧)の上昇を抑えることができる。従って、太陽電池用電力変換装置2は、宅内配電系統10の交流電圧の交流実効電圧値を監視し、交流実効電圧値が上昇した場合、無効電力を出力する機能を備えるように構成される。
図12には、無効電流の出力によって交流実効電圧値の上昇を抑制する系統電圧安定化制御の原理を説明するための円グラフが示される。
図12を参照して、原点0を中心とした円グラフの横軸は有効電力(或いは、有効電流)を示し、縦軸は無効電力(或いは、無効電流)を示す。一般に、太陽電池1に接続された太陽電池用電力変換装置2の容量(出力できる最大電力、あるいは最大電流)は、太陽電池1の最大発電電力と同等となることが多い。例えば、4kWの太陽電池1を搭載している場合は、太陽電池用電力変換装置2の容量も4kWに設計されることが一般的である。
図12の円グラフは、太陽電池用電力変換装置2が出力可能な最大電力(円グラフの半径に相当)を示す。すなわち、太陽電池用電力変換装置2は、円グラフの内側の範囲内で、宅内配電系統10に対して電力を供給することができる。
図12の円グラフについてさらに説明する。例えば、無効電力がゼロの場合は、太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池1の最大発電電力を出力することができる。この際の出力電力は、図12中に、有効電力(最大)と表記したベクトルの大きさに相当する。
しかしながら、太陽電池1が最大電力を発電していた状態から、系統電圧の上昇を抑制するため無効電力を出力すると、無効電力及び有効電力を加算したベクトルの終点は、図12に示すように円グラフの外側になる。このような電力は、太陽電池用電力変換装置2からは出力することができない。
従って、無効電力を出力する場合は、図12中に示すように有効電力の出力を抑制した上で、無効電力を加算することが必要となる。系統連系規定では、力率は0.85以上と規定されている。図12中のθは、cosθ=0.85となる、有効電力及び無効電力の位相差を示している。従って、太陽電池用電力変換装置2から出力可能な無効電力の最大値(図12中のPimax)は、太陽電池用電力変換装置2の定格容量及びsinθの積となる。
本実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2が、無効電力を出力するために有効電力を抑制する必要がある場合には、太陽電池用電力変換装置2ではなく蓄電池用電力変換装置4から無効電力を出力することで、配電系統14(宅内配電系統10)の交流電圧の上昇を抑制する。これにより、太陽電池1の発電電力を最大限確保した上で、無効電力の出力による系統電圧安定化制御が実行される。
具体的には、太陽電池1の発電電力が太陽電池用電力変換装置2の定格電力(最大出力電力)の85%以下である場合は、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力しても、有効電力及び無効電力のベクトル和の終点は図12の円グラフの内側に止まるため、太陽電池1からの発電電力は抑制されない。この場合には、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力することによって系統電圧安定化制御が実行される。
一方で、太陽電池1からの発電電力が太陽電池用電力変換装置2の定格電力(最大出力電力)の85%を超える場合には、太陽電池用電力変換装置2より無効電力を発生すると、有効電力及び無効電力のベクトル和の終点が図12の円グラフの外側に出る場合がある。この場合には、太陽電池用電力変換装置2の有効電力、すなわち、太陽電池1の発電量の抑制を回避するために、蓄電池用電力変換装置4の定格電力(最大出力電力)までの範囲内で無効電力を出力するように、蓄電池用電力変換装置4を制御することによって系統電圧安定化制御が実行される。
このように、系統電圧安定化制御のための無効電力は、太陽電池1の発電電力(有効電力)の抑制が必要となるケースを除いて、基本的には、太陽電池用電力変換装置2から出力される。これにより、以下に説明するような消費電力の抑制を図ることができる。
例えば、太陽電池1の発電電力が十分にあり、蓄電池3が満充電状態の場合、蓄電池用電力変換装置4は、自身の消費電力を抑えるため待機モード(待機電力がほとんど発生しない動作モード)に設定されて充放電を停止している状態となる。このような状態の蓄電池用電力変換装置4を起動して無効電力を発生させることを想定すると、待機モード中にも、蓄電池3及び蓄電池用電力変換装置4間、並びに、宅内配電系統10及び蓄電池用電力変換装置4間に配置されるリレー回路(図示せず)への供給電力や蓄電池用電力変換装置4を制御する第3の制御回路404及び第4の制御回路409への供給電力が必要になることで、待機電力の増加が懸念される。又、待機中の蓄電池用電力変換装置4を使用する場合も、無効電力発生のために第2のDC/AC変換回路408を動作させるので、スイッチング損失や導通損失が発生し、不必要に電力を消費してしまう。
従って、太陽電池1より出力される発電電力が抑制されない場合には、蓄電池用電力変換装置4よりも太陽電池用電力変換装置2を優先して無効電力を出力するように制御することで、上述した不必要な消費電力を発生させることなしに、系統電圧安定化制御を実行することができる。
一方で、太陽電池1の発電電力が予め定められた基準値以上の場合には、蓄電池用電力変換装置4を起動して無効電力を発生することによって、宅内配電系統10の交流実効電圧の上昇を抑制する。これにより、太陽電池1等の創エネ機器から出力される発電電力を不必要に抑制することなく、交流実効電圧の上昇を抑制するための無効電力を出力できる。例えば、上述のように、力率が0.85以上と定められている場合は、上記基準値は、電圧計や電流計等の測定器の誤差及び太陽電池用電力変換装置2での損失等を考慮した上で、太陽電池用電力変換装置2の定格電力の0.85倍の数値に対応して定めることができる。
太陽電池用電力変換装置2及び/又は蓄電池用電力変換装置4による系統電圧安定化制御によって宅内配電系統10の電圧上昇を抑制することにより、配電系統14(柱上トランス2次側)の電圧上昇についても抑制できる。すなわち、上記系統電圧安定化制御は、宅内配電系統10及び配電系統14の両方の電圧を安定化することができる。このように、各需要家宅内に配置された分散電源システムによって、配電系統14にSVCや系統用蓄電池等の高価な配電系統安定化設備を配置することなく、或いは、配電系統安定化を小容量化して、配電系統14の電圧上昇を抑制できるので、コスト削減を図ることができる。
又、本実施の形態1では、宅内配電系統10の交流電圧を対象とした系統電圧安定化制御を説明するが、計測が可能であるならばその他の部位の交流電圧、例えば、スマートメータ8の入力側、又は、柱上トランス9の直下などの交流電圧を、系統電圧安定制御の対象とすることも可能である。
本実施の形態1では、上述の系統安定化制御の開始条件として、以下に説明する不感帯を設定する。本実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4は、通信線を介して直接お互いの情報をやり取りすることなく動作させるので、HEMS7は、CEMS15から受信した不感帯幅情報を加工して、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知する。
図13には、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知される不感帯幅情報の一例を説明する概念図が示される。図13の縦軸には、系統電圧安定化制御の対象とされる宅内配電系統10の交流実効電圧が示される。
図13中の破線は、電圧制御目標値生成回路2099から出力される電圧制御目標値(上述のように、宅内配電系統10の交流実効電圧移動平均値に相当)を示す。又、一点鎖線は、CEMS15から通知される不感帯幅情報から生成した不感帯上限電圧及び不感帯下限電圧を示す。
実施の形態1では、HEMS7は、交流実効電圧が不感帯上限電圧を逸脱した場合は、不感帯の範囲を、「太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合の不感帯幅」<「蓄電池3の不感帯幅」<「太陽電池1の発電電力が基準値以上の場合の不感帯幅」となるように加工する。加工した各不感帯幅情報は、HEMS7から太陽電池用電力変換装置2(2種類を通知)及び蓄電池用電力変換装置4へ通知される。
尚、発電電力の基準値は、実施の形態1では定格電力の0.85倍とする。また、不感帯幅の関係は上記に限るものではない。上記のように設定することで、太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合は、太陽電池用電力変換装置2から系統電圧安定化制御(無効電力出力)が開始され、基準値以上太陽電池1が発電している場合は、蓄電池用電力変換装置4から系統電圧安定化制御(無効電力出力)が開始される。尚、詳細な動作については後述する。
次に、図1及び図14〜図16を用いて、本実施の形態1の電力変換装置の動作原理について説明する。実施の形態1では、太陽電池1などの創エネ機器の発電電力の急峻な変化については各需要家に設置された分散電源内の電力変換装置を活用して系統電圧の安定化を図るとともに、長周期の電圧変動は、従来通りに配電系統16(柱上トランス1次側)に設置された自動電圧調整器(SVR)23のタップ切り換えで調整を行う。
まず図14を用いて、SVR(自動電圧調整器)による系統電圧制御の動作イメージを説明する。図14の横軸は時間軸であり、縦軸には、分電盤6内の電力計測回路61で計測した宅内配電系統10の交流実効電圧が示される。
図1に示された自動電圧調整器(SVR)23は、配電系統16(柱上トランス9の2次側)の交流実効電圧(配電系統電圧)が、配電系統16におけるSVR23の運用電圧の上限電圧、あるいは下限電圧を、予め定められた時間(例えば、60秒程度)逸脱すると、タップ切り換えを実行して、配電系統電圧を適正値に自動調整するように制御される。例えば、本該SVR23の運用電圧範囲は、配電系統電圧(6600V)の±1.5%(6600V±100V)とすることができる。
図14中には、配電系統電圧におけるSVR23の運用上限電圧及び運用下限電圧を、宅内配電系統10の交流電圧に換算したものが点線で示されている。以下では、宅内配電系統10の交流実効電圧が図中の運用上限電圧より上昇した場合には、配電系統電圧についても、SVR運用上限電圧より上昇し、同様に、宅内配電系統10の交流実効電圧が図中の運用下限電圧より低下した場合には、配電系統電圧についてもSVR運用下限電圧より低下するものとして説明を進める。
図14を参照して、日射急変によりタウン内に設置された太陽電池1の発電電力が急峻に増加することにより、宅内配電系統10の交流実効電圧が上昇する。宅内配電系統10の電圧上昇によって、配電系統電圧も上昇する。時刻t1において、配電系統電圧がSVR運用上限電圧を超過することで、時刻t1から予め定められた時間(60秒)が経過した時刻t2において、SVR23は、配電系統電圧を低下させるためのタップ切換を実行する。これにより、配電系統電圧が低下するとともに、宅内配電系統10の交流実効電圧も低下する。図14中には、比較のために、時刻t2でタップ切換をしなかった場合の電圧挙動が点線で示される。
一方で、この時点では、日射量が元に戻ることで太陽電池1の発電電力は減少に転じており、宅内配電系統10の交流実効電圧は、SVR23でのタップ切換による減少後も徐々に低下を続け、配電系統電圧も低下する。この結果、時刻t3では、配電系統電圧がSVR運用下限電圧よりも低下するので、時刻t3から予め定められた時間(60秒)が経過した時刻t4において、SVR23は、配電系統電圧を上昇させるためのタップ切換を実行する。この結果、SVR23でのタップは、時刻t2までと同様に設定される。従って、時刻t4以降では、配電系統電圧及び宅内配電系統10の交流実効電圧は、時刻t2でタップ切換を実行しなかった場合と同様に推移する。
このように、太陽電池1による発電電力の変化に従う宅内配電系統10の交流実効電圧の変化によって配電系統電圧が変化すると、SVR23のタップ切換によって、配電系統電圧は、SVR運用電圧範囲内(SVR運用下限電圧〜SVR運用上限電圧)に静定される。一方で、図14の制御例では、日射量の変化に応じて、SVR23が短い期間に2回のタップ切り換え動作を行うため、SVR23の機器寿命が短くなることが懸念される。尚、一般的には、再生可能エネルギーなどが導入されていない配電系統では上記タップ切換えは、一日で20〜30回程度実施される。
従って、本実施の形態1では、上述した電力変換装置による系統電圧安定化制御によって宅内配電系統10の電圧の大幅な変動を抑制することにより、SVR23によるタップ切換の回数を抑制した上で、配電系統電圧を安定化する。例えば、上述のように、SVR23の運用電圧範囲が、配電系統電圧(6600V)の±1.5%(6600V±100V)である場合には、太陽電池1の発電電力変動に起因する配電系統電圧の変動幅が、上記運用電圧範囲の電圧幅よりも狭く抑制されるように(例えば、±75V以内)、需要家側の分散電源内の電力変換装置(太陽電池用電力変換装置2及び/又は蓄電池用電力変換装置4)を制御する。
次に、図15を用いて、本実施の形態1の需要家側の分散電源を活用した系統電圧安定化制御の動作イメージを説明する。図14と同様に、図15の横軸は時間軸であり、縦軸は、宅内配電系統10の交流実効電圧が示される。SVR23の運用上限電圧及び運用下限電圧についても、図14と同様のものが示される。
図14を参照して、図中に太線で示される、宅内配電系統10の交流実効電圧の電圧制御目標値Vr*は、図11で説明したように、分電盤6内の電力計測回路61で計測した交流実効電圧の1分間の移動平均値に従って設定される。尚、電圧制御目標値Vr*の設定手法は、これに限るものではなく、交流実効電圧をローパスフィルタにLPFをかけて求めても良いことは言うまでもない。一方で、実線で示される、宅内配電系統10の交流実効電圧(瞬時値)は、日射量の変化に応じて、折れ線状に逐次変化している。
図14の斜線領域は、各時点における、交流実効電圧の電圧制御目標値Vr*を中心とする不感帯幅の電圧範囲を示している。日射急変により、宅内配電系統10の交流実効電圧が急峻に変化して不感帯幅の電圧範囲から逸脱すると、電力変換装置(太陽電池用電力変換装置2及び/又は蓄電池用電力変換装置4)から出力される有効電力及び無効電力の制御によって、宅内配電系統10の交流実効電圧を不感帯幅の範囲内に抑えるための系統電圧安定化制御が実行される。
尚、電力変換装置による系統電圧安定化制御を行なっても、電圧の上昇又は低下を十分に抑制できない場合には、配電系統電圧(配電系統16)の交流電圧がSVR運用電圧範囲を外れることに応じてSVR23がタップ切換を実行することにより、配電系統電圧の安定化を図ることができる。図14の例では、時刻ta,tb〜tc,tdにおいて、配電系統電圧を抑制するためにSVR23でのタップ切換が実行され、このタイミングで、宅内配電系統10の交流実効電圧についても低下する。
図15に示した、電力変換装置による系統電圧安定化制御と、SVR23のタップ切換との組み合わせによれば、図14で説明したような、SVR23のタップ切換のみによって系統電圧の安定化を図る場合と比較して、SVR23の作動(タップ切換)回数を抑制した上で、配電系統16及び宅内配電系統10の交流電圧を安定化することができる。
次に、具体的な動作イメージについて説明する。CEMS15から各需要家に設置された分散電源(太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4)に対して通知される不感帯幅情報は、HEMS7で一旦受信された後、太陽電池用と蓄電池用に加工された上で、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知される。この詳細については、後程説明する。
太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の各々は、HEMS7から不感帯情報を受信すると、電圧制御目標値生成回路2099及び4099より出力される電圧制御目標値、及び、受信した不感帯幅情報から、図15に斜線で示された、系統電圧安定化制御を行わない不感帯幅の上限電圧値及び下限電圧値を算出する。
そして、宅内配電系統10の交流実効電圧が、算出された当該上限電圧値及び下限電圧の範囲内に入っているか否かが判定され、範囲外である場合には、系統電圧安定化制御が開始されることになる。尚、具体的な処理の流れについては、後程説明する。
図16には、タウン内の各需要家の位置に応じた不感帯幅の設定を説明する概念図が示される。図16の横軸は、自動電圧調整器(SVR)23からの距離を示し、縦軸は、宅内配電系統10の交流実効電圧を示す。
図16を参照して、配電系統14(柱上トランス9の2次側)の交流実効電圧は、各需要家の位置に応じて変化し、タウンの入口と比較すると、タウン終端では上昇、あるいは下降する。すなわち、タウン終端に位置する需要家宅18では、配電系統14及び宅内配電系統10での交流実効電圧の変動幅が相対的に大きくなる。
従って、各需要家の分散電源の不感帯幅を同じに設定した場合、系統電圧の振れ幅(上昇あるいは下降幅)が大きいタウン終端の需要家から、有効電力及び無効電力の調整による系統電圧安定化制御が開始される。このため、タウン入口側の需要家と比較すると、太陽電池1の発電電力の抑制量が多くなる。或いは、無効電力を出力する際に発生する電力変換装置の電力損失等による消費電力量が増加する等、タウン内の需要家宅18の位置に依存して、電力変換装置による系統電圧安定化制御の実施回数が異なることに起因する不公平が発生することが懸念される。従って、本実施の形態1では、上記のような問題を抑制するために、需要家毎に、系統電圧安定化制御の開始条件を規定する不感帯幅を変化させる。
具体的には、自動電圧調整器(SVR)23から各需要家宅18までの配電系統のインピーダンス情報を元に、タウン入口の需要家宅18と、他の需要家宅18とで、ほぼ同じタイミングで系統電圧安定化制御が開始されるよう、不感帯幅をCEMS15で計算する。この結果、需要家宅18毎に算出された不感帯幅が、CEMS15から各需要家宅18のHEMS7へ通知される。
例えば、図16に示されるように、タウン入口側では不感帯幅が狭く設定される一方で、系統電圧の振れ幅の大きくなるタウン終端に向かって、不感帯幅は徐々に広く設定することができる。この結果、タウン内の配電系統のどの位置に需要家の分散電源が接続されていても、系統電圧安定化制御をほぼ同じタイミングで開始することが可能となるので、上述した、タウン内の需要家宅18の位置の違いによる不公平を抑制することができる。
図17は、本発明の実施の形態1に係る系統電圧安定化制御に関わる各種機器間の動作シーケンス図である。図17を用いて、CEMS15を中心とした、系統電圧安定化制御のための不感帯情報の生成及び通知の処理の流れを説明する。
図17を参照して、配電系統16に配置された電圧計22a〜22x(図1)の計測結果(交流実効電圧)は、30分周期で配電自動化システム25に収集される。又、自動電圧調整器23のSVR静定値(現在使用している変圧器の巻き線比情報)についても、30分単位で配電自動化システム25に通知される。さらに、配電系統インピーダンス情報、配電系統に設置された電圧計22の情報は、一旦配電自動化システム25で収集されて、CEMS15に通知される。尚、通知周期は30分に限定されず、任意の時間長とすることができる。尚、電圧計22に係る情報と、自動電圧調整器(SVR)23に係る情報との間で、異なる通知周期を設定することも可能である。又、SVR23に係る情報については、一定周期による通知ではなく、上記のタップ切換の実行毎に通知することも可能である。
配電自動化システム25は、電圧計22での電圧計測結果、及び、自動電圧調整器(SVR)23のSVR静定値情報に加え、自身の有する配電系統のインピーダンス情報を30分周期でCEMS15に通知する。一方、CEMS15は、配電自動化システム25から送付される上記情報、及び、各需要家で計測した5分周期で送付される系統電圧制御目標値(具体的には、本実施の形態1では、配電系統の交流実効電圧値の1分間の移動平均値)、需要家に設置された各分散電源の有効・無効電力制御量(有効電力及び無効電力を含む)、無効電力出力時間、有効電力出力抑制情報(本情報は、HEMS7が太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、及び、電力計測回路61から5分周期で収集)に基づき、不感帯幅情報を需要家毎に算出する。不感帯幅の算出方法の詳細については説明を省略するが、任意の算出式又は算出テーブルを予め作成することによって、不感帯幅を算出することができる。CEMS15で算出された各需要家の不感帯幅情報は、30分周期で、各需要家宅18内に設置されたHEMS7に通知される。
又、CEMS15は、タウン蓄電池用電力変換装置21についても、5分周期で収集した系統電圧制御目標値、有効・無効電力制御量(有効電力及び無効電力を含む)、無効電力出力時間、有効電力出力抑制情報、及び、配電自動化システム25より通知される各種情報に基づいて不感帯幅情報を算出し、30分周期で通知する。
次に、図1〜図24を用いて太陽電池用電力変換装置2、蓄電池用電力変換装置4、及び、HEMS7の動作を説明する。
図18は、系統電圧安定化制御に関するHEMS7の制御処理を説明するフローチャートである。
図18を参照して、HEMS7は、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)101で各種計測結果の収集時刻(5分周期で実施)か否かを確認する。収集時間であった場合(S101のYES判定時)は、HEMS7は、S102により、各種の計測結果を収集する。太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4からは、電圧制御目標値生成回路2099(4099)で生成した各々の電力変換装置の電圧制御目標値(目標電圧)、無効電流波形生成回路2093(4093)内の無効電力出力時間計測回路20934で計測した無効電力の出力時間、及び、無効電流制御回路2092(4092)から出力される無効電流振幅情報から生成した無効電力制御量が収集される。さらに、分電盤6内の電力計測回路61からは、電力計測回路61で計測した負荷の消費電力量、太陽電池1の発電電力量、及び、蓄電池3の充放電電力量(5分間)が収集される。
HEMS7は、各種データの収集が完了すると、S103により、宅外通信ネットワーク13を介して、収集した計測結果をCEMS15に通知する。HEMS7は、S103でCEMS15への通知が完了した場合、あるいは、S101のNOの場合、S104により、CEMS15から新たな不感帯情報が通知されていないか確認する。
通知されていない場合(S104のNO判定時)には、処理はS101に戻される。一方で、不感帯情報が通知されている場合(S104のYES判定時)には、HEMS7は、S105により、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知する不感帯幅情報を生成する。
図19には、図18のS105による不感帯幅情報を生成する制御処理の詳細を説明するフローチャートが示される。
図19を参照して、HEMS7は、不感帯幅情報の生成が開始されると、S121により、不感帯幅の電圧範囲が適正であるかを確認する。本実施の形態1では、図15を用いて説明したように、宅内配電系統10の電圧制御目標値は、宅内配電系統10の交流実効電圧の1分間の移動平均値に従って設定されるため、時間経過に応じて変化する。従って、電圧制御目標値が、宅内配電系統10の系統電圧上下限限規定値に近い場合には、不感帯幅の補正が必要となる。
図20は、不感帯幅の補正を説明する概念図である。図20の縦軸は、宅内配電系統10の交流実効電圧を示す。
図20を参照して、宅内配電系統10の交流実効電圧には、系統電圧上限規定値Vsmax及び系統電圧上限規定値Vsminが設定される。従って、不感帯の上限電圧Vdz1及び下限電圧Vdz2についても、Vsmin≦Vdz2<Vdz1≦Vsmaxの範囲内に設定することが必要である。
一方で、CEMS15からは、不感帯幅情報として、電圧制御目標値Vr*に対する、不感帯の上限電圧Vdz1及び下限電圧Vdz2の電圧差(ΔVdz)が通知され、HEMS7では、Vr*±ΔVdzの演算によって、不感帯の上限電圧Vdz1及び下限電圧Vdz2が算出される。
このため、図20中の左側に示されるように、通知された不感帯情報に基づく不感帯の上限電圧(Vr*+ΔVdz)が、系統電圧上限規定値Vsmaxを超えていた場合には、当該上限電圧の補正が必要となる。例えば、図20中の右側に示されるように、Vdz1=Vsmaxに制限するように補正が実行される。一方で、不感帯の下限電圧Vdz2については、補正することなく、Vr*−ΔVdzに設定することができる。
再び図19を参照して、HEMS7は、S121により、通知された不感帯幅情報に従う不感帯が規定値以内であるか否か、具体的には、不感帯幅の上限電圧及び下限電圧が、系統電圧上限規定値Vsmax〜系統電圧下限規定値Vsminの範囲内である否かを判定する。
Vsmax〜Vsminの範囲から外れている場合(S121のNO判定時)には、HEMS7は、ステップS122により、不感帯幅を適正範囲に補正する(図20の右側)。補正後の不感帯幅の上限電圧及び下限電圧は、Vsmax〜Vsminの範囲内に収まる。Vsmax〜Vsminの範囲内である場合(S121のYES判定時)には、S122の処理がスキップされて、通知された不感帯幅が維持される。
次に、HEMS7は、S123及びS124により、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4用の不感帯情報を生成する。
再び図13を参照して、本実施の形態1では、太陽電池1の発電電力に応じて、太陽電池用電力変換装置2で使用する不感帯情報が切り換えられる。具体的には、図12で説明したように、太陽電池用電力変換装置2で無効電力を生成し出力した際に、太陽電池1から出力される発電電力に抑制がかからない場合は、蓄電池用電力変換装置4よりも先に太陽電池用電力変換装置2から無効電力が出力されるように、不感帯幅情報が加工される。
一方で、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力すると太陽電池1の発電電力に抑制がかかる場合は、太陽電池用電力変換装置2よりも先に蓄電池用電力変換装置4から無効電力が出力されるように不感帯幅が加工される。この結果、本実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2については、2種類の不感帯幅情報が作成される。一方で、蓄電池用電力変換装置4については、1種類の不感帯幅情報が作成される。
具体的には、図13に示されるように、「太陽電池の不感帯幅(発電量が基準値以下)」>「蓄電池の不感帯幅情報」>「太陽電池の不感帯幅(発電量が基準値超)」となるように、HEMS7は、S123及びS124により、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4用の不感帯情報を生成する。
再び図19を参照して、HEMS7は、S123及びS124による不感帯幅情報の生成を完了すると、S125により、不感帯幅逸脱時における太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の制御目標電圧を生成する。
本実施の形態1では、系統電圧安定化制御の実行/停止が短期間で連続的に切換わるハンチング動作を抑制するため、HEMS7では、例えば、宅内配電系統10の交流実効電圧の交流実効電圧が不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合は、図13に示すように、電圧制御目標値(宅内配電系統10)と、S123及びS124で設定した不感帯範囲の上限電圧のうちの最小値との間の電圧を、上記不感帯幅逸脱時における目標電圧に設定する。
尚、上述したように宅内配電系統10の交流実効電圧の電圧制御目標値Vr*は、交流実効電圧の移動平均値を取るため、時間経過に応じて変化する。従って、該制御目標電圧は、上記電圧制御目標値に対する電圧差によって規定されるものとする。また、S125では、系統電圧安定化制御の終了条件についても決定される。本実施の形態1では、図13に示すように、HEMS7で無効電力制御終了電圧を生成して、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知する。尚、各分散電源での系統電圧安定化制御の詳細は後述する。
上述のように、HEMS7で不感帯幅情報及び不感帯逸脱時の系統電圧制御目標値、並びに、系統電圧安定化制御の終了条件の1つである無効電力制御終了電圧を生成して、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知する。これにより、太陽電池1の発電量が少なく、太陽電池用電力変換装置2より太陽電池1の発電電力を抑制することなく系統電圧安定化制御を行える場合には、太陽電池用電力変換装置2を優先して系統電圧安定化制御に活用できる。一方で、太陽電池1の発電量が多く、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力すると、太陽電池1の発電電力を抑制する必要がある場合には、蓄電池用電力変換装置4から無効電力を優先して系統電圧安定化制御に活用できる。すなわち、太陽電池1からの発電電力を不必要に抑制することなく、系統電圧安定化制御を行うことができる。
又、太陽電池1の発電電力を抑制することなく系統電圧安定化制御が実行できる場合には、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力して系統電圧の安定化を図るので、蓄電池用電力変換装置4で無効電力を出力する場合に発生する電力損失(スイッチング損失及び待機電力等)を抑制することがさらに可能となる。
さらに、不感帯逸脱時の系統電圧制御目標値、及び、系統電圧安定化制御の終了条件の1つである無効電力制御終了電圧を上述のように生成することにより、系統電圧安定化制御の開始/終了条件にヒステリシスを持たせることができる。この結果、系統電圧安定化制御のハンチング動作を抑えることが可能である。
次に、太陽電池用電力変換装置2の動作を説明する。
再び図1及び図2を参照して、太陽電池1からの発電が開始されると、太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池1から発電される直流電力を宅内配電系統10に供給するため起動する。具体的には、本実施の形態1では、太陽電池1から出力される直流電圧が予め定められた判定値以上になった場合に太陽電池用電力変換装置2を起動するものとする。
再び図3及び図4を参照して、太陽電池用電力変換装置2が起動すると、通常時は、第1の制御回路204中の第5の制御回路2044は、MPPT制御回路2041に対して、太陽電池1からの出力電力が最大になるようにMPPT制御を開始するように指示する。さらに、第5の制御回路2044は、切換回路2043に対して、MPPT制御回路2041の出力を選択するように制御信号を出力する。
一方、図5において、第2の制御回路209中の第6の制御回路2097は、電圧計206から出力される直流母線205の直流電圧が一定になるように、有効電流制御回路2094で有効電流の振幅を算出し、有効電流波形生成回路2095で電流指令値を生成する。
図21には、有効電流及び無効電流を制御するための電流指令値の生成を説明するための概念図が示される。
図21及び図7を参照して、有効電流波形生成回路2095は、位相検出回路2091で検出した交流電圧のゼロクロス点情報を元に、有効電流基準波形を生成する。有効電流基準波形は、交流電圧と同一周波数かつ同一位相の正弦波である。有効電流基準波形に対して、有効電流制御回路2094より出力される有効電流振幅情報を乗算することによって、有効電流指令値が生成される。
同様に、無効電流波形生成回路2093は、位相検出回路2091で検出した交流電圧のゼロクロス点情報を元に、無効電流基準波形を生成する。無効電流基準波形は、有効電流基準波形と(π/2)の位相差を有する余弦波である。無効電流基準波形に対して、無効電流制御回路2092より出力される無効電流振幅情報を乗算することによって、無効電流指令値が生成される。
算出された有効電流指令値及び無効電流指令値が加算器2096で加算されることにより、三角関数の合成に従って、出力電流指令値が生成されて、第6の制御回路2097に入力される。第6の制御回路2097では、入力された出力電流指令値にから、第1のDC/AC変換回路208から出力される皮相電力(皮相電流)を算出する。算出された皮相電力が、定格電力を超えていた場合には、定格電力内に収まるように出力電流指令値が加工される。このように設定された出力電流指令値は、第1のDC/AC変換回路208へ入力される。
図22及び図23には、実施の形態1に係る太陽電池用電力変換装置2の制御処理を説明するフローチャートが示される。図22及び図23に示された各ステップは、太陽電池用電力変換装置2の運転中を通じて、第1の制御回路204及び第2の制御回路209によって継続的に実行される。
図22を参照して、太陽電池用電力変換装置2が起動すると、S201により、各種センサー情報が収集される。具体的には、電圧計201及び電流計202で計測した太陽電池1の電圧及び電流が、第1の制御回路204中のMPPT制御回路2041に入力される。又、電圧計206で収集した直流母線205の直流母線電圧は、第1の制御回路204中の電圧制御回路2042及び第2の制御回路209中の第6の制御回路2097に入力される。さらに、電流計207で計測した直流母線を流れる電流、及び、電流計211で計測した宅内配電系統10を流れる交流電流の計測結果は、第2の制御回路209中の第6の制御回路2097に入力される。又、電圧計210で計測した宅内配電系統10の交流電圧は、第2の制御回路209中の実効電圧算出回路2098、及び、位相検出回路2091に入力される。
各種センサーの計測結果の収集が終了すると、S202により、MPPT制御回路2041で太陽電池1から発電される電力が算出される。算出結果は、第5の制御回路2044に通知される。第5の制御回路2044は、発電電力を受信すると、その受信結果を第2の制御回路209中の第6の制御回路2097に通知する。
一方で、電圧計210の交流電圧の計測結果は、位相検出回路2091及び実効電圧算出回路2098に入力される。位相検出回路2091は、入力された交流電圧のゼロクロス点を検出し、検出結果を無効電流波形生成回路2093、有効電流波形生成回路2095、及び、実効電圧算出回路2098に出力する。S203では、実効電圧算出回路2098は、図10に説明した構成により、入力された交流電圧を元に交流実効電圧を算出する。
実効電圧算出回路2098で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧は、無効電流制御回路2092、有効電流制御回路2094、第6の制御回路2097、及び、電圧制御目標値生成回路2099に入力される。
S204では、電圧制御目標値生成回路2099が、交流実効電圧が入力されると、太陽電池用電力変換装置2の電圧制御目標値を算出する。本実施の形態1では、図11に示したFIRフィルタを使用することで算出された1分間の移動平均値を、宅内配電系統10の電圧制御目標値に設定する。
図11に示されるように、実効電圧算出回路2098から入力された交流実効電圧は乗算器20991で予め定められた係数Mと乗算された後、レジスタ20992a及び加算器20993aに供給される。レジスタ20992及び加算器20993の組は、移動平均を計算するサンプル数分準備されている。レジスタ20992は、図11に示すようにシフトレジスタ構成で接続されている。乗算される係数Mは、移動平均を算出する交流実効電圧のサンプル数の逆数で与えられる。電圧制御目標値生成回路2099で算出された交流電圧制御目標値は、無効電流制御回路2092、有効電流制御回路2094、及び、第6の制御回路2097に入力される。
S204による交流電圧制御目標値の算出が完了すると、S205により、第2の制御回路209中の第6の制御回路2097は、通信インターフェース回路212に対して、HEMS7から該計測結果の送信リクエストを受けたか確認する。送信リクエストを受けていた場合は(S205のYES判定時)、S206により、通信インターフェース回路212を介して、上述した太陽電池1の発電電力、太陽電池1の制御モード(詳細は後述するがMPPT制御モード及び電圧制御モードの2種類)、宅内配電系統10の交流実効電圧、交流電圧制御目標値、並びに、詳細は後述するが、無効電力出力時間の計測結果、無効電力制御量の計測結果、出力した有効電力量、及び、出力抑制を行った時間情報が、HEMS7に通知される。S206による計測データ送信後、無効電力の出力時間の計測結果、無効電力制御量の計測結果、出力した有効電力量、及び、出力抑制を行った時間情報は、一旦クリアされる。
次に、S207により、第2の制御回路209中の第6の制御回路2097は、HEMS7から不感帯幅情報を受信したか否か確認する。不感帯幅情報を受信していた場合は(S207のYES判定時)、S208により、不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の系統電圧制御目標値、及び、無効電力制御終了時電圧が更新される。
不感帯幅情報を受信していない場合(S207のNO判定時)、又は、S208による更新終了時には、S209により、第6の制御回路2097から出力される情報を元に不感帯テーブル生成回路2100によって、不感帯幅、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力による系統安定化制御の終了判定電圧の作成が開始される。実施の形態1では、図13及び図20で説明したように、不感帯電圧範囲は、電圧制御目標値生成回路2099から出力される電圧制御目標値、及び、通知された2種類の無効電力幅情報から生成される。具体的には、太陽電池1の発電電力が基準値以下のときに使用する第1の不感帯幅情報と、太陽電池1の発電電力が基準値を超えた際に使用する第2の不感帯情報から、図13の中央及び右側に示された2種類の不感帯電圧範囲が生成される。
その際に、同時に送付された系統電圧安定化制御を行う際の2種類の系統電圧制御目標値(不感帯電圧範囲を上側に逸脱した場合と下側に逸脱した場合との2種類)、及び、2種類の無効電力制御終了電圧(不感帯電圧範囲を上側に逸脱した場合と下側に逸脱した場合との2種類)が生成される。
図24には、不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の系統電圧制御目標値、及び、無効電力制御終了電圧の算出処理を説明するフローチャートである。図24は、図22のS209での処理の詳細を示すものである。
図24を参照して、S251では、S202で計測した太陽電池1の発電電力が基準値以下であるか否かが判定される。太陽電池1の発電電力が基準値以下の場合(S251のYES判定時)には、S253により、第1の不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の系統電圧制御目標値、無効電力制御終了電圧、及び、電圧制御目標値生成回路2099の出力から、不感帯電圧範囲、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力制御終了を判断する際の交流実効電圧値が算出される。
一方で、太陽電池1の発電電力が基準値を超えている場合(S251のNO判定時)には、S252により、第2の不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の系統電圧制御目標値、無効電力制御終了電圧、及び、電圧制御目標値生成回路2099の出力から、不感帯電圧範囲、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力制御終了を判断する際の交流実効電圧値が算出される。尚、本実施の形態1では、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力制御終了を判断する際の交流実効電圧値は、太陽電池1の発電電力により切換えられる。
再び図22を参照して、S209が終了すると、S210により、第6の制御回路2097は、レジスタ(図示せず)に記憶されたフラグ値に基づき、第1のDC/AC変換回路208が系統電圧安定化制御を行っているかを確認する。系統電圧安定化制御の非実行時には(S210のNO判定時)には、S211に処理が進められて、宅内配電系統10の交流実効電圧が、S209で設定された不感帯電圧範囲を逸脱しているか否かが判定される。
不感帯電圧範囲を逸脱していなかった場合(S211のNO判定時)には、処理はS201に戻される。すなわち、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯電圧範囲内である間は、系統電圧安定化制御が実行されないまま、S201〜S211による処理が繰り返される。
これに対して、交流実効電圧(宅内配電系統10)が不感帯電圧範囲を逸脱していた場合には(S211のYES判定時)、第6の制御回路2097は、S212により、レジスタ(図示せず)に系統電圧安定化制御フラグをセットするとともに、S213により、系統電圧安定化制御を開始する。
系統電圧安定化制御が開始されると(S213)、或いは、実行中であると(S210のYES判定時)、無効電流制御回路2092は、S214により、出力する無効電流の振幅を算出(制御)する。例えば、宅内配電系統10の交流実効電圧を、不感帯幅逸脱時における太陽電池用電力変換装置2の制御目標電圧(図19のS125)に近付けるためのPI(比例積分)制御によって、無効電流の電流振幅値を算出することができる。
有効電流制御回路2094も、直流母線205の電圧を予め定められた目標電圧(例えば、350V)に近付けるためのPI(比例積分)制御によって、有効電流の電流振幅値を算出することができる。図21で説明したように、無効電流及び有効電流の電流振幅値に基づいて、無効電流波形生成回路2093が無効電流指令値を生成するとともに、有効電流波形生成回路2095が有効電流指令値を生成する。さらに、加算器2096による無効電流指令値及び有効電流指令値の加算によって、電流指令値が求められる。
図23を参照して、S215により、第6の制御回路2097は、加算器2096からの電流指令値が予め定められた範囲を超えていないかを確認する。例えば、S215は、電流指令値が最大電流値、具体的には、第1のDC/AC変換回路208の最大電流値(定格値)を超えているときにNO判定とされる一方で、そうでないときにはYES判定とされる。
電流指令値が最大電流値を超えている場合(S215のYES判定時)は、S216により、第6の制御回路2097は、太陽電池1の制御を電圧制御モードに変更するように、第1の制御回路204中の第5の制御回路2044に通知する。その際に、太陽電池1からの発電電力についても通知される。尚、MPPT制御及び電圧制御の動作が短時間で繰り返し切り替わらないように(ハンチングを防止)、本実施の形態1では、MPPT制御及び電圧制御の切換時から予め定められた時間内では、新たな制御の切換をマスクするとともに、S215で判定される最大電流値について、電圧制御モードからMPPT制御モードへの切換を判定する際の最大電流値を、MPPT制御モードから電圧制御モードへの切換を判定するときに最大電流値よりも小さくすることが好ましい。これにより、太陽電池1の制御モード(MPPT制御モードと電圧制御モード)が短時間に頻繁に切換わることを防止して、系統電圧安定化制御を安定的に実行することができる。
第5の制御回路2044は、太陽電池1の制御モードを電圧制御モードに変更する指示を受信すると、MPPT制御回路2041が動作中であれば制御停止指示を出力するとともに、現在の指令値などの情報を取り込む。そして、電圧制御回路2042に対して、第6の制御回路2097から通知された発電電力情報とともに、動作中でなかった場合は、上記MPPT制御回路2041から入手した現在の指令値などの情報を送付する。電圧制御回路2042は、第5の制御回路2044から発電電力情報を受け取ると、受け取った発電電力量になるよう制御指令値を生成する。尚、電圧制御回路2042が起動していなかった場合は、MPPT制御回路2041から入手した現在の指令値などの情報を初期値として制御を開始する。また、第6の制御回路2097は、電圧制御回路2042に発電電力情報などの通知を行うと同時に、切換回路2043に対して、電圧制御回路2042の出力を選択するための制御信号を出力する。
電流指令値が最大電流値を超えていない場合(S215のNO判定時)は、S217により、第6の制御回路2097は、第5の制御回路2044に対してMPPT制御モードで動作するよう指示を出す。第5の制御回路2044は、MPPT制御モードによる動作指示を受信すると、電圧制御モードで動作していた場合は、現在の指令値などの情報を電圧制御回路2042から読み込むとともに、読み込んだ制御情報をMPPT制御回路2041に通知する。さらに、第5の制御回路2044は、通知した情報を初期値としてMPPT制御を開始するよう指示を出すとともに、切換回路2043に対して、MPPT制御回路2041の出力を選択するための制御信号を出力する。MPPT制御で動作していた場合には、そのまま制御を継続する。
S216又はS217での処理を完了すると、第6の制御回路2097は、S218により、加算器2096から出力される電流指令値から皮相電力(皮相電流)を算出する。S219では、S218で算出した皮相電力(皮相電流)が太陽電池用電力変換装置2の容量を超えていないかが判定される。容量を超えていた場合には(S219のNO判定時)、S220に処理を進めて、有効電力の抑制を開始する。具体的には、第6の制御回路2097は、皮相電力(皮相電流)が太陽電池用電力変換装置2の容量を超えていた場合、第5の制御回路2044に対して、太陽電池1からの発電電力を抑制するよう通知する。その際、発電量についても通知する。第5の制御回路2044は、当該通知を受け取ると、太陽電池1の現在の制御モードを確認し、MPPT制御モードであった場合は、電圧制御モードへ移行する。
具体的には上述したように、第5の制御回路2044は、MPPT制御回路2041に対して制御停止指示を出力するとともに、現在の指令値などの情報を取り込む。そして、第5の制御回路2044は、電圧制御回路2042に対して、第6の制御回路2097から通知された発電電力情報とともに、動作中でなかった場合は、上記MPPT制御回路2041から入手した現在の指令値などの情報を送付する。電圧制御回路2042は、第5の制御回路2044から発電電力情報を受け取ると、受け取った発電電力になるよう制御指令値を生成する。その際、電圧制御回路2042が起動していなかった場合は、MPPT制御回路2041から入手した現在の指令値などの情報を初期値として制御を開始する。また、第5の制御回路2044は、電圧制御回路2042に発電電力情報などの通知を行うと同時に、切換回路2043に対して、電圧制御回路2042の出力を選択するための制御信号を出力する。
一方、電圧制御モードで動作していた場合は、第5の制御回路2044は、受け取った発電電力を電圧制御回路2042に通知する。電圧制御回路2042は、受け取った発電電力になるよう制御指令値を生成する。生成した制御指令値は、切換回路2043を介して第1のDC/DC変換回路203へ出力される。
S220での有効電力(太陽電池1の発電電力)の抑制指示を完了、又は、皮相電力が太陽電池用電力変換装置2の容量を超えていない場合(S219のYES判定時)には、第6の制御回路2097は、系統電圧安定化制御の終了条件の確認を行う。
第6の制御回路2097は、S221により、現在の太陽電池1の制御がMPPT制御モードであるか否かを第5の制御回路2044に確認する。MPPT制御モードであった場合には、第6の制御回路2097は、無効電流波形生成回路2093中の無効電力計測回路20935から通知される無効電力の計測結果を、予め定められた終了判定値と比較する。そして、MPPT制御モードで動作していない場合、又は、無効電力の計測結果が終了判定値以上の場合には、S221がNO判定とされて、処理はS201へ戻される。これにより、系統電圧安定化制御が継続される。
一方で、太陽電池1がMPPT制御モードで動作しており、かつ、無効電力の計測結果が終了判定値未満の場合には、S221をYES判定として、S222により、系統電圧安定化制御を終了すると判断する。さらに、S223により、系統電圧安定化制御フラグをクリアした上で、処理がS201に戻される。
次に、上述したように系統電圧安定化制御の終了条件(S221)を判断する理由について説明する。
通常、系統連系運転時には、太陽電池1は発電電力を最大限取り出すために、MPPT制御モードで動作する。従って、太陽電池1が電圧制御動作モードで動作している場合には、宅内配電系統10に回生電力が多く流れることにより、系統電圧が上昇していることが想定される。また、宅内配電系統10及び配電系統14等の系統電圧安定化制御については、系統インピーダンスの構成によっては、無効電力による制御よりも、有効電力による制御のほうが有効である場合もある。具体的には、系統インピーダンスの主要項目がリアクトルやコンデンサの影響による場合は無効電力による系統電圧安定化制御が効果的である一方で、系統インピーダンスの主要項目が抵抗である場合には、有効電力による系統電圧安定化制御が効果的である。従って、実施の形態1では、系統電圧安定化制御の終了条件として、太陽電池1の制御モードと無効電力の計測結果との両方を用いることで、確実に系統電圧安定化制御の終了を判断することが可能となる。
尚、本実施の形態1では、無効電力による系統電圧安定化制御を優先して実施する場合について説明したが、配電自動化システム25より通知される系統インピーダンス情報の主要項目が抵抗成分である場合には、有効電力制御を優先して系統電圧安定化制御を実施することができる。具体的には、系統インピーダンスの主要項目がリアクトルやコンデンサの場合には、有効電力を制御した場合と、無効電力を制御した場合とを比較すると、配電交流系統の電圧振幅に与える影響は無効電力のほうが大きい。一方で、系統インピーダンスの主要項目が抵抗成分である場合は、無効電力を制御しても系統電圧への影響は小さい。このため、系統インピーダンスの主要項目がリアクトルやコンデンサの場合には、図22及び図23に示したように、S216及びS220が、無効電力の出力が許容内の最大値となった場合に実行されることにより、無効電力を優先した系統電圧安定化制御を行うことが好ましい。一方で、系統インピーダンスの主要項目が抵抗成分である場合は、S216及びS220を先に実行して有効電力の抑制を優先した系統電圧安定化制御を行うことが好ましい。
このように、系統インピーダンス情報の構成に従って、無効電力の出力、及び、有効電力の抑制のいずれを優先的に実行するかを切換えることで、さらに効果的に系統電圧安定化制御を行うことができる。例えば、HEMS7は、CEMS15を介して配電自動化システム25より通知される系統インピーダンス情報に基づいて、無効電力の出力による系統電圧の抑制と、有効電力の抑制による系統電圧低下との優先順位を判断することができる。当該判断結果をHEMS7から太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知することにより、配電系統のインピーダンス情報に基づいて、系統電圧安定化制御を効果的に実施できることができる。
次に、蓄電池用電力変換装置4の動作を説明する。
再び図3を参照して、実施の形態1では、蓄電池用電力変換装置4は、通常、HEMS7から通知される運転計画に基づき動作する。具体的には、太陽電池1の発電電力を最大限売電する「売電優先モード」、太陽電池1の発電電力の余剰電力を充電する「充電優先モード」、買電電力を予め定められた上限値以下に抑える「ピークカットモード」、及び、各種センサーの計測結果の収集、計測データの定期的な通信のみを行う「待機モード」の4種類を有するものとする。待機モードは、消費電力が非常に小さいことが特徴である。
蓄電池用電力変換装置4は、電源が投入されると待機モードで起動し、HEMS7からの運転計画を受信するまで待機モードで動作する。待機モードでは、蓄電池用電力変換装置4は、各種センサー情報の収集を行うとともに、HEMS7からの不感帯幅情報の受信、及び、各種センサーの計測結果のHEMS7への送信のみを実施する。
図25及び図26には、実施の形態1に係る蓄電池用電力変換装置4の制御処理を説明するフローチャートが示される。図25及び図26に示された各ステップは、蓄電池用電力変換装置4の運転中を通じて、第3の制御回路404及び第4の制御回路409によって継続的に実行される。
図25並びに、図3〜図5及び図8〜図12を参照して、蓄電池用電力変換装置4が起動すると、S301により、各種センサー情報が収集される。具体的には、電圧計401及び電流計402で計測した蓄電池3の電圧及び電流、並びに、電圧計406で収集した直流母線405の直流母線電圧が、第3の制御回路404中の、第7の制御回路4044、充電制御回路4041、及び、放電制御回路4042に入力される。さらに、電流計407で計測した直流母線を流れる電流、及び、電流計411で計測した宅内配電系統を流れる交流電流の計測結果が、第4の制御回路409中の第8の制御回路4097に入力される。又、電圧計410で計測した宅内配電系統10の交流電圧は、第4の制御回路409中の実効電圧算出回路4098及び位相検出回路4091に入力される。
各種センサーの計測結果の収集が終了すると、S302により、第7の制御回路4044は、電圧計401及び電流計402より出力されるセンサー情報に基づき、蓄電池3からの充放電電力量を算出する。その際、蓄電池3の充電電力量(SOC:State of Charge)についても算出される。尚、本実施の形態1では、蓄電池3の充電電力量が第7の制御回路4044で算出されるものとして説明を続けるが、蓄電池3の充電電力量(SOC)の算出は任意の要素で実行することが可能である。例えば、畜電池3内に設けられた図示しないバッテリマネージメントユニット(BMU)でSOCを算出し、SOCの算出結果を第7の制御回路4044が、蓄電池3内のBMUから受信するように構成することも可能である。
第7の制御回路4044は、充放電電力及び充電電力量(SOC)の算出を完了すると、その受信結果を第4の制御回路409中の第8の制御回路4097に通知する。一方、電圧計410の交流電圧の計測結果は、位相検出回路4091及び実効電圧算出回路4098に入力される。位相検出回路4091は入力された交流電圧のゼロクロス点を検出して、検出結果を無効電流波形生成回路4093、有効電流波形生成回路4095、及び、実効電圧算出回路4098に出力する。
S303により、実効電圧算出回路4098は、入力された交流電圧を元に配電系統の交流実効電圧を算出する。上述のように、実効電圧算出回路4098は、図10に示された実効電圧算出回路2098と同一の構成とすることができる。実効電圧算出回路4098で算出された宅内配電系統10の交流実効電圧は、無効電流制御回路4092、有効電流制御回路4094、第8の制御回路4097、及び電圧制御目標値生成回路4099に入力される。
S304により、電圧制御目標値生成回路4099は、交流実効電圧が入力されると蓄電池用電力変換装置4の電圧制御目標値を算出する。尚、電圧制御目標値生成回路4099の構成及び動作は、電圧制御目標値生成回路2099(図11)と同一であるため詳細な説明は繰り返さない。すなわち、電圧制御目標値生成回路4099は、宅内配電系統10の交流実効電圧(実効電圧算出回路4098)の一定期間(例えば、1分間)の移動平均値を逐次、交流電圧制御目標値として算出する。電圧制御目標値生成回路4099で算出された交流電圧制御目標値は、無効電流制御回路4092、有効電流制御回路4094、及び、第8の制御回路4097に入力される。
S304で交流電圧制御目標値の算出を完了すると、S305により、第8の制御回路4097は、HEMS7から該計測結果の送信リクエストを受けたか否かを、通信インターフェース回路412に確認する。送信リクエストを受けていた場合には(S305のYES判定時)、S306により、通信インターフェース回路412を介して、上述した蓄電池3の充放電電力量、蓄電池3の充電電力量(SOC)、配電系統の交流実効電圧、電圧制御目標値、並びに、太陽電池用電力変換装置2と同様に、無効電力の出力時間の計測結果、無効電力制御量の計測結果、出力した有効電力量、及び、出力抑制を行った時間情報が、HEMS7に通知される。計測データの送信完了後(S306)、無効電力の出力時間の計測結果、無効電力制御量の計測結果、出力した有効電力量、及び、出力抑制を行った時間情報は、一旦クリアされる。
次に、S307により、第8の制御回路4097は、HEMS7から不感帯幅情報を受信したか否かを確認する。不感帯幅情報を受信していた場合は(S307のYES判定時)、S308により、不感帯幅情報、系統電圧安定化制御を行う際の系統電圧制御目標値、及び、無効電力制御終了電圧が更新される。
S307のNO判定時、又は、S308の終了時には、S309により、不感帯テーブル生成回路4100は、第8の制御回路4097から出力される情報に基づいて、不感帯幅、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力制御終了電圧の作成を開始する。実施の形態1では、図13の左側に示したように、不感帯電圧範囲は、電圧制御目標値生成回路4099から出力される電圧制御目標値、及び、通知された無効電力幅情報から生成される。その際に、系統電圧安定化制御を行う際の系統電圧制御目標値及び無効電力制御終了電圧についても生成される。
S309が終了すると、S310により、第8の制御回路4097は、レジスタ(図示せす)に記憶されたフラグ値に基づき、第2のDC/AC変換回路408が系統電圧安定化制御を行っているか否かを確認する。系統電圧安定化制御を行っていなかった場合には(S310のNO判定時)、S311に処理が進められて、宅内配電系統10の交流実効電圧が、S309で設定された不感帯電圧範囲を逸脱しているか否かが確認される。
逸脱していなかった場合には(S311のNO判定時)、処理はS301に戻される。すなわち、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯電圧範囲内である間は、系統電圧安定化制御が実行されないまま、S301〜S311による処理か繰り返される。
これに対して、交流実効電圧(宅内配電系統10)が不感帯電圧範囲を逸脱していた場合には(S311のYES判定時)、第8の制御回路4097は、S312により、上記レジスタ(図示せず)に系統電圧安定化制御フラグをセットするとともに、S313により、系統電圧安定化制御を開始する。
系統電圧安定化制御が開始されると(S313)、或いは、実行中であると(S310のYES判定時)、第8の制御回路4097は、S314により、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の上限値を逸脱しているかを確認する。系統電圧の交流実効電圧が不感帯幅の上限値を逸脱している場合(S314のYES判定時)には、第8の制御回路4097は、第7の制御回路4044に対して、現在の動作状態(充電/放電/待機)を確認する。その際に、蓄電池3からの充放電を行っていた場合は、充放電電力についても確認する。これにより、S315により、蓄電池3の充電電力量を増加させることが可能であるか否かが確認される。
蓄電池3が放電している場合、又は、充電電力を増加させることができる場合は、S315がYES判定とされて、S316に処理が進められる。第8の制御回路4097は、充放電電力を算出して、算出結果を第7の制御回路4044に通知する。第7の制御回路4044は、充放電電力の算出結果を受け取ると、蓄電池3から放電していた場合は、受け取った放電電力を目標値として、放電制御回路4042へ通知する。これにより、S316では、放電制御回路4042は、受信した放電電力目標を目標として蓄電池3からの放電電力を制御する。
一方、放電を行っていたが、第8の制御回路4097から充電電力が通知された場合は、S316により、第7の制御回路4044は、放電制御回路4042に対して放電制御を停止するように指示するとともに、充電制御回路4041に対して充電電力目標を通知する。充電制御回路4041は、充電電力目標を受け取ると充電制御を開始する。その際に、第7の制御回路4044は、切換回路4043に対して、充電制御回路4041の出力を選択するための制御信号を出力する。
本実施の形態1では、上述したように太陽電池用電力変換装置2は、太陽電池1からの発電電力の抑制を最小限に抑えるために無効電力の出力を優先し、無効電力制御でも系統電圧が適正範囲内に押さえ込めない場合には有効電力の抑制を実施した。一方で、蓄電池用電力変換装置4は、宅内配電系統10の交流実効電圧が、不感帯幅の上限電圧値を超えた場合には、蓄電池3から放電する放電電力を抑制する。具体的には、蓄電池3から放電している場合には、放電電力が絞られる、又は、放電から充電への切換えが行われる。特に、充電制御に切り換えることで、系統電圧上昇の主要因である有効電力の逆直流を抑えて、系統電圧の上昇を抑制することができる。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力される太陽電池1の発電電力の抑制を最小限にできるとともに、蓄電池3からの不意必要な放電を抑制することができる。この結果、太陽電池1により発電された電力を効率よく使用できる。
これに対して、S314で、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の上限値を逸脱していない場合には(S314のNO判定時)、S317により、第8の制御回路4097は、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の下限値(下源電圧)を逸脱しているか確認する。
下限値を逸脱していない場合には(S317のNO判定時)、蓄電池3の放電による系統電圧安定化制御を優先して実施することなく、処理はS320(図26)に進められる。下限値を逸脱している場合には(S317のYES判定時)、S318により、蓄電池3からの放電電力を増加できるかが判断される。具体的には、第8の制御回路4097は、第7の制御回路4044に対して現在の動作状態(充電/放電/待機)を確認する。その際、蓄電池3からの充放電を行っていた場合は、充放電電力についても確認される。
確認の結果、蓄電池3が充電している場合、又は、放電電力を増加させることができる場合は、S318がYES判定とされて、S319に処理が進められる。第8の制御回路4097は、充放電電力を算出して、算出結果を第7の制御回路4044に通知する。第7の制御回路4044は、充放電電力を受け取ると、蓄電池3から放電していた場合は、受け取った放電電力を目標値として放電制御回路4042へ通知する。放電制御回路4042は、受けとった放電電力目標を目標として、蓄電池3からの放電電力を制御する。一方、充電を行っていた状態で、第8の制御回路4097から充電電力の抑制が指示された場合は、第7の制御回路4044は、第8の制御回路4097から受け取った充電電力目標を目標電力として充電制御を行うよう充電制御回路4041に指示する。充電制御回路4041は、指示された充電電力目標を目標値として第2のDC/DC変換回路403を制御する。充電を行っていた状態で、第8の制御回路4097から放電を行うように指示が出された場合は、第7の制御回路4044は、充電制御回路4041に対して充電制御を停止するように指示するともに、放電制御回路4042に対して放電電力目標を通知する。放電制御回路4042は、放電電力目標を受け取ると放電制御を開始する。その際、第7の制御回路4044は、切換回路4043に対して、放電制御回路4042の出力を選択するための制御信号を出力する。
S315のNO判定時、S319の終了時、S317のNO判定時、S318のNO判定時、又は、S319の終了時には、第8の制御回路4097は、S320(図26)により、出力する無効電力の振幅を算出する。
図26を参照して、S320では、太陽電池用電力変換装置2の場合と同様に、蓄電池用電力変換装置4でも、宅内配電系統10の交流実効電圧を、不感帯幅逸脱時における蓄電池用電力変換装置4の目標電圧(図19のS125)に近付けるためのPI制御を用いて、無効電流の電流振幅値を算出することができる。図21で説明したように、無効電流の電流振幅が入力されると、無効電流波形生成回路4093は、無効電流指令値を生成する。一方、有効電流制御回路4094は、蓄電池3からの充放電電力を元に有効電流の電流振幅を算出する。有効電流波形生成回路4095では、上記したように有効電流の電流振幅情報に基づいて、有効電流の指令値が生成される。さらに、加算器4098による無効電流指令値及び有効電流指令値の加算によって、電流指令値が求められる。S321では、求められた電流指令値(皮相電流)に基づき、皮相電力が算出される。
S322では、S321で算出された皮相電力が蓄電池用電力変換装置4の容量を超えていないかが判定される。容量を超えていた場合には(S322のNO判定時)、S323に処理を進めて、有効電力の抑制を開始する。具体的には、第8の制御回路4097は第7の制御回路4044に対して充放電電力を削減するよう指示を出す。指示を受け取った第7の制御回路4044は、充電制御回路4041又は放電制御回路4042に対して、充放電電力量を削減するよう指示を出す。この場合、充電動作から放電動作への移行、又は、放電動作から充電動作への移行は行わない。
S323での有効電力(蓄電池3の充放電電力)の抑制指示を完了、又は、皮相電力が蓄電池用電力変換装置4の容量を超えていない場合(S322のYES判定時)には、S324により、第8の制御回路4097は、系統電圧安定化制御の終了条件の確認を行う。
第8の制御回路4097は、S324では、宅内配電系統10の交流実効電圧の現在の値が、無効電力制御終了電圧(図13)以下であるか、又は、無効電力制御終了電圧(図13)以上であるかを確認する。不感帯幅の上限電圧を逸脱することで系統電圧安定化制御が開始された場合には、交流実効電圧が無効電力制御終了電圧以下になると、S324がYES判定とされる。一方で、不感帯幅の下限電圧を逸脱することで系統電圧安定化制御が開始された場合には、交流実効電圧が無効電力制御終了電圧以上になると、S324がYES判定とされる。
S324のNO判定時には、処理はS301に戻されて、系統電圧安定化制御が継続される。一方で、S324のYES判定時には、S325に処理が進められる。S325では、第8の制御回路4097は、無効電流波形生成回路4093中の無効電力計測回路20935から通知される無効電力の計測結果を、予め定められた終了判定値と比較する。そして、無効電力の計測結果が終了判定値より高い場合には(S325のNO判定時)、処理はS301(図25)に戻されて、系統電圧安定化制御が継続される。
一方で、無効電力の計測結果が終了判定値以下の場合には、S325をYES判定として、S326により、系統電圧安定化制御を終了すると判断する。さらに、S327により、系統電圧安定化制御フラグをクリアした上で、処理がS301に戻される。
このように、本実施の形態1による電力変換装置では、第1の制御回路204で算出された指令値は、第1のDC/DC変換回路203に入力されて太陽電池1の出力電圧の制御に用いられ、太陽電池1で発電された電力を取り出す。同様に、第2の制御回路209で算出された指令値は、第1のDC/AC変換回路208に入力されて、第1のDC/DC変換回路203から出力される太陽電池1で発電した電力を交流電力に変換する制御に用いられる。この結果、太陽電池1による発電電力は、交流電力として宅内配電系統10に出力される。
同様に、第3の制御回路404で算出された指令値は、第2のDC/DC変換回路403に入力されて、蓄電池3からの充放電電力の制御に用いられる。第4の制御回路409で算出された指令値は、第2のDC/AC変換回路408に入力されて、第2のDC/DC変換回路403から出力される蓄電池3の充放電電力を交流電力に変換する制御に用いられる。この結果、蓄電池3からの出力電力は、最終的には交流電力として、宅内配電系統10に出力される。
次に、上述したように系統電圧安定化制御の終了条件(S324,S325)を判断する理由について説明する。
通常、系統連系運転時に系統電圧安定化制御を行わない場合、宅内配電系統10の交流実効電圧は、図13に示す電圧制御目標値付近の値となる。よって、日射急変等の影響で現在の自動電圧調整器(SVR)23のタップ選択では、系統電圧がSVRの運用電圧範囲を逸脱する場合(図14参照)でも、上述した系統電圧安定化制御によって系統電圧を制御した場合、日射などの条件が元に戻ると無効電力を出力しなくても宅内配電系統10の系統電圧は、目標電圧に向かって変化するように制御されることにより、電圧制御目標値付近に戻ってくる。
例えば、図13で説明したように、不感帯幅の上限値を逸脱した場合には、系統安定化制御の終了判定電圧(条件)を、系統電圧安定化制御における目標電圧より小さく、かつ、電圧制御目標値(移動平均値)より大きい値に設定する。このような設定にすると、上記日射などの条件が元に戻ると、系統電圧安定化制御を行わなくても(すなわち、無効電力を出力しなくても)、宅内配電系統10の交流実効電圧は、系統電圧安定化制御による目標電圧以下となる。このように、終了条件を設定することで、系統電圧安定化制御の終了を確実に判断することが可能である。又、実施の形態1では、蓄電池用電力変換装置4の終了条件に、無効電力及び終了判定値との比較(S324)及び交流実効電圧と終了判定電圧との比較(S325)の両方を含める一方で、太陽電池用電力変換装置2の終了条件には、無効電力及び終了判定値との比較(S221)は行うが、終了判定電圧との比較が含まれていない。これによっても、太陽電池用電力変換装置2による無効電力出力の終了が、蓄電池用電力変換装置4による無効電力の出力終了よりも早くするように図ることができる。
尚、本実施の形態1では、タウン蓄電池用電力変換装置21の動作については詳細な説明を省略するが、蓄電池用電力変換装置4と同様に、CEMS15から通知される不感帯幅情報の加工(たとえば、図13及び図20で説明した加工)、並びに、系統電圧安定化制御時の系統電圧制御目標値、及び、無効電力制御終了電圧の計算は、CEMS15で実施することができる。さらに、蓄電池用電力変換装置4で計測した各種計測データを同様のタイミングでCEMS15に通知するよう構成すれば、蓄電池用電力変換装置4と同様に、タウン蓄電池用電力変換装置21を制御することができる。又、タウン蓄電池用電力変換装置21の制御についても、CEMS15で不感帯幅情報を生成する際は、配電系統のインピーダンス情報、太陽電池1からの発電量予測、及び、負荷の消費電力予測結果に基づいて決定できる。これにより、需要家側分散電源との通信を伴うことなく、タウン蓄電池用電力変換装置21による系統電圧安定化制御についても自律的に実行することができる。この結果、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4と連動した系統電圧安定化制御によって、宅内配電系統10及び配電系統14の電圧変動を抑制することができるので、個々の需要家宅内に配置する蓄電池3の蓄電容量及びタウン蓄電池20の蓄電容量が可能となる。
以上のように、本実施の形態1による電力変換装置が配置された分散電源システムでは、配電系統電圧(宅内配電系統10又は配電系統14)が日射急変又は負荷急変により一時的に上昇、あるいは下降した場合に、需要家宅内の分散電源を用いて系統電圧の安定化を図ることができる。例えば、ZEH住宅が300戸程度集まりメガソーラが構成された場合でも、高価なSVC等の系統安定化設備を導入することなく、配電系統電圧の安定化を図ることができる。具体的には、配電系統16(柱上トランス9の1次側)に配置された従来の自動電圧調整器(SVR)を活用して、長周期の電圧変動は自動電圧調整器(SVR)で調整する一方で、日射急変や負荷変動に起因する短周期の電圧変動については、各需要家宅18の分散電源(電力変換装置)によって有効電力及び/又は無効電力を制御することで、新たな系統安定化設備を導入することなく、系統電圧の安定化を図ることができる。又、配電系統電圧を安定化させるために導入する配電系統用の蓄電池(タウン蓄電池20)についても、上述のように需要家側の蓄電池3と連携・協調して動作させることで、蓄電池容量の削減を図ることができる。
さらに、配電系統のインピーダンス情報、太陽電池1からの発電量予測、及び、負荷の消費電力予測結果に基づいて、不感帯幅情報を需要家毎に設定することにより、各需要家宅18での分散電源による系統電圧安定化制御の開始及び終了のタイミングを揃えることが可能となり、各需要家の配電系統との連系点の違いに起因して、需要家毎の負担に格差が生じることを防止できる。
さらに、本実施の形態1では、太陽電池1及び太陽電池用電力変換装置2のような創エネ機器である場合には、太陽電池1(創エネ機器)の発電電力に応じて不感帯情報を切換えることで、創エネ機器からの発電電力が不必要に抑制されることを回避できる。具体的には、太陽電池1(創エネ機器)の発電電力が基準値以上であり、創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力すると皮相電力を抑制する必要が生じる場合には、不感帯幅を大きくとって系統電圧安定化制御が開始され難くすることで、蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4等の他の分散電源による系統電圧安定化制御が先に開始されるようにすることができる。
又、太陽電池1(創エネ機器)の発電電力が小さく、創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力しても皮相電力を抑制する必要が生じない場合には、不感帯幅を小さくとって系統電圧安定化制御が開始され易くすることで、蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4等による系統電圧安定化制御が開始され難くすることで、システム全体の消費電力の抑制を図ることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2に通知する不感帯情報幅についてはHEMS7で2種類に加工し、蓄電池用電力変換装置4に通知する不感帯幅情報についてもHEMS7で加工して、合計で3種類の異なる不感帯幅情報が、HEMSから電力変換装置に通知される例を説明した。
実施の形態2では、実施の形態1のような不感帯幅情報の加工が実施されない。さらに、系統電圧安定化制御時の系統電圧(宅内配電系統10)の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧の算出が異なる。尚、実施の形態2の制御構成としては、電圧制御目標値生成回路2099,4099の構成が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、実施の形態1と異なる部分のみを詳細に説明し、実施の形態1と同様の構成及び制御処理については説明を省略する。
図27は、実施の形態2による電圧制御目標値生成回路の構成を説明するブロック図である。実施の形態2においても、電圧制御目標値生成回路2099及び4099の構成は同様であるので、電圧制御目標値生成回路2099について代表的に説明する。
図27を参照して、電圧制御目標値生成回路2099は、第1の乗算器20995、加算器20996、第2の乗算器20997、及び、レジスタ20998を有する。
第1の乗算器20995は、実効電圧算出回路2098にて算出された交流実効電圧を係数K1と乗算する。第1の乗算器20995から出力された乗算値は、加算器20996に入力される。加算器20996は、第1の乗算器20995の出力と、第2の乗算器20997の出力とを加算する。加算器20996の出力は、第6の制御回路2097等へ出力されるとともに、レジスタ20998にも入力されて1サンプル分の時間遅延が付与される。レジスタ20998の出力は、第2の乗算器20997に入力されて、第2の乗算器20997で(1.0−K1)と乗算されて、上述のように、加算器20996へ入力される。
このように、電圧制御目標値生成回路2099は、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いて実効電圧の高周波成分を取り除くことによって、電圧制御目標値を生成する。このように構成することにより、実施の形態1(図11)の構成と比較して、レジスタ及び加算器の数を減少することができる。又、簡易な構成であるため、CPU等を使用して、ソフトウェア(S/W)で実装することも可能となる。
次に、図28〜図30を用いて、実施の形態2における不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の各電力変換装置の系統電圧制御目標(目標電圧)、及び、各電力変換装置の無効電力制御による系統電圧安定化制御の終了判定電圧の算出について説明する。
図28は、実施の形態2によるHEMS7(図1)の制御処理を説明するフローチャートである。
図28を参照して、HEMS7は、図18と同様のS101〜S103を実行する。これにより、HEMSは、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の電圧制御目標値(目標電圧)、無効電流波形生成回路2093(4093)内の無効電力出力時間計測回路20934で計測した無効電力の出力時間、及び、無効電流制御回路2092(4092)から出力される無効電流振幅情報から生成した無効電力制御量、並びに、分電盤6内の電力計測回路61で計測した負荷の消費電力量、太陽電池1の発電電力量、及び、蓄電池3の充放電電力量を、一定の時間周期で収集して、CEMS15へ送信する。
さらに、HEMS7は、図18と同様のS104により、CEMS15から新たな不感帯情報が通知されていないか確認する。通知されていない場合(S104のNO判定時)には、処理はS101に戻される。一方で、不感帯情報が通知されている場合(S104のYES判定時)には、HEMS7は、S501により、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知する不感帯幅情報を生成する。
図29には、図28のS501による制御処理の詳細を説明するフローチャートが示される。又、図30には、実施の形態2における不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧を説明する概念図が示される。
図30を参照して、実施の形態1では、太陽電池用電力変換装置2(2種類)及び蓄電池用電力変換装置4(1種類)の不感帯情報が個別に設定されたのに対して(図13)、実施の形態2では、不感帯情報は、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に対して共通に設定される。
さらに、実施の形態2では、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御を終了する終了判定電圧が、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4で個別に設定される。従って、実施の形態2では、図23に示された、太陽電池用電力変換装置2での系統電圧安定化制御の終了条件(S221)について、図26のS324と同様の、交流実効電圧及び終了判定電圧の比較による条件が付加されることになる。
図29を参照して、HEMS7は、図19と同様のS121により、不感帯幅の電圧範囲が適正であるかを確認する。実施の形態2では上述したように、宅内配電系統10の電圧制御目標値は、宅内配電系統10の交流実効電圧から、図26に示した一次のIIRフィルタによって高周成分を除去することによって算出される。又、電圧制御目標値は、実施の形態1と同様に、時間経過とともに変化する。実施の形態1と同様に、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に対して共通の不感帯幅情報による不感帯の上限電圧及び下限電圧が、系統電圧上限規定値から系統電圧家電規定値までの範囲から外れている場合には、S122により、図20で説明したのと同様に、不感帯の上限電圧及び下限電圧の少なくとも一方が、系統電圧上限規定値及び系統電圧下限規定値の間に入るように補正される。
HEMS7は、S121のYES判定時、又は、S122の終了時には、S521により、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4に共通の不感帯情報を生成する。この際に、CEMS15より通知された不感帯情報は、上述のS121及びS122により、不感帯の上限電圧及び下限電圧が、系統電圧上限規定値及び系統電圧下限規定値の間に収まるように、必要に応じて加工されている。
図30(a)には、不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合における、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4のそれぞれの、系統電圧安定化制御時の目標電圧及び終了判定電圧の設定が示される。
図30(a)に示されるように、不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合には、「不感帯幅の上限電圧」≧「創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2の目標電圧」≧「蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4の目標電圧」≧「創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2の終了判定電圧」≧「蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4の終了判定電圧」≧「宅内配電系統10の電圧制御目標値」の関係が成立するように、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4の目標電圧及び終了判定電圧が設定される。
図30(b)には、不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合における、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4のそれぞれの、系統電圧安定化制御時の目標電圧及び終了判定電圧の設定が示される。
図30(b)に示されるように、不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合には、「不感帯幅の下限電圧」≦「創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2の目標電圧」≦「蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4の目標電圧」≦「創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2の終了判定電圧」≦「蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4の終了判定電圧」≦「宅内配電系統10の電圧制御目標値」の関係が成立するように、太陽電池用電力変換装置2用及び蓄電池用電力変換装置4の目標電圧及び終了判定電圧が設定される。
図30(a),(b)に示すように設定することで、系統電圧安定化制御を創エネ機器である太陽電池用電力変換装置2と、蓄エネ機器である蓄電池用電力変換装置4とで同時に開始することができる。さらに、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合には、蓄電池用電力変換装置4用の目標電圧が、太陽電池用電力変換装置2用の目標電圧より低いため、蓄電池用電力変換装置4から優先的に無効電力が出力される。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。同様に、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合には、蓄電池用電力変換装置4用の目標電圧が太陽電池用電力変換装置2用の目標電圧より高いため、蓄電池用電力変換装置4から優先的に無効電力が出力される。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。
さらに、系統電圧の交流実効電圧が不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合の系統電圧安定化制御の終了判定電圧を、蓄電池用電力変換装置4用の終了判定電圧よりも高く設定するため、太陽電池用電力変換装置2が優先的に無効電力の出力を終了することができる。これにより、太陽電池用電力変換装置2から出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。同様に、系統電圧の実効電圧が不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合の系統電圧安定化制御の終了判定電圧を、蓄電池用電力変換装置4用の終了判定電圧よりも太陽電池用電力変換装置2用の終了判定電圧を低く設定することにより、太陽電池用電力変換装置2が優先的に無効電力の出力を終了することができる。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。
再び図29を参照して、HEMS7は、S522では、図30(a),(b)で説明したように、太陽電池用電力変換装置2に通知する、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力の出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧を生成する。同様に、HEMS7は、S523では、図30(a),(b)で説明したように、蓄電池用電力変換装置4に通知する、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力の出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧を生成する。
再び図28を参照して、HEMS7は、S523を終了すると、S107により、S521〜S523(図29)で生成した、不感帯幅情報、並びに、系統電圧安定化制御時の目標電圧及び終了判定電圧を、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に送信する。
以上説明したように、本実施の形態2では、HEMS7で不感帯幅情報、系統電圧安定化制御時の電圧目標及び終了判定電圧を生成するので、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができる。この結果、太陽電池1の発電電力の抑制を最小限に抑えることが可能である。又、図30(a),(b)に示したような、系統電圧安定化制御の目標電圧、及び、系統電圧安定化制御の終了条件の1つである終了判定電圧の設定により、系統電圧安定化制御を行う際の開始/終了条件にヒステリシスを持たせることができる。これにより、系統電圧安定化制御の開始/停止が短時間で繰り返される、ハンチング動作を防止することが可能となる。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1とは反対に、太陽電池用電力変換装置2に通知する不感帯情報幅をHEMS7で1種類生成し、蓄電池用電力変換装置4に通知する不感帯幅情報についてもHEMS7で2種類生成し、3種類の異なる不感帯幅情報を各電力変換装置に通知する場合について説明する。
図31には、実施の形態3における不感帯幅情報、並びに、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧を説明する概念図が示される。
図31を参照して、実施の形態3では、HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4の不感帯幅を、太陽電池1の発電電力及び基準値の比較に従って2種類に設定する。具体的には、不感帯幅の範囲は、「太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合の蓄電池用電力変換装置4の不感帯幅」<「太陽電池用電力変換装置2の不感帯幅」<「太陽電池1の発電電力が基準値以上の場合の蓄電池用電力変換装置4の不感帯幅」となるように加工される。加工された、各々の不感帯幅情報は、太陽電池用電力変換装置2、及び、蓄電池用電力変換装置4(2種類を通知)に通知される。
尚、太陽電池1の発電電力に係る上記基準値は、実施の形態1の場合と同様に、定格電力の0.85倍とすることができる。また、不感帯幅の種類及び関係は、上記に限るものではない。例えば、太陽電池用電力変換装置2の不感帯幅情報についても、実施の形態1と同様に2種類生成することができる。或いは、太陽電池1の発電電力に応じて不感帯幅情報をさらに多段階に切換えて、系統電圧安定化制御を実施することも可能である。
又、実施の形態3では、実施の形態1と同様に、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御を終了する終了判定電圧は、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4で共通に設定される。
実施の形態3によれば、太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合には、太陽電池用電力変換装置2からの無効電力の出力によって、系統電圧安定化制御を開始することができる。一方で、太陽電池1の発電電力が基準値以上である場合には、蓄電池用電力変換装置4からの無効電力の出力によって、系統電圧安定化制御を開始することができる。
この結果、実施の形態1(図13)で説明したのと同様に、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力しても、太陽電池1の発電電力に抑制がかからないような発電電力(太陽電池1)の場合には、蓄電池用電力変換装置4からの無効電力出力が開始される前に、太陽電池用電力変換装置2から無効電力が出力されるように、不感帯幅情報が加工される。反対に、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力すると太陽電池1の発電電力に抑制がかかるような発電電力(太陽電池1)の場合には、太陽電池用電力変換装置2から無効電力が出力される前に、蓄電池用電力変換装置4から無効電力が出力されるように、不感帯幅が加工される。
以上のように、本実施の形態3によれば、図31に示されるように、蓄電池用電力変換装置4については、太陽電池1の発電電力に応じて2種類の不感帯幅情報を生成することにより、太陽電池1の発電電力の大小に応じて、太陽電池用電力変換装置2からの無効電力の出力、及び、蓄電池用電力変換装置4による無効電力の出力を適切に選択して、太陽電池1の発電電力を不必要に抑制することなく、系統電圧安定化制御を実行することができる。さらに、太陽電池1の発電電力を抑制することなく系統電圧安定化制御が行える場合には、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力するので、蓄電池用電力変換装置4から無効電力を出力する場合に発生する消費電力(スイッチング損失及び待機電力)など)を抑制することが可能である。
又、不感帯逸脱時の系統電圧安定化制御の目標電圧、及び、系統電圧安定化制御の終了条件の1つである終了判定電圧を図31のように設定することで、系統電圧安定化制御を行う際の開始/終了条件にヒステリシスを持たせることができる。この結果、系統電圧安定化制御の開始/停止が短時間で繰り返される、ハンチング動作を防止することが可能となる。
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態2と比較して、系統電圧安定化制御時における蓄電池用電力変換装置4の目標電圧(宅内配電系統10の交流実効電圧)が、太陽電池1の発電電力に応じて2種類に設定される。
図32は、実施の形態4における不感帯幅情報、並びに、系統電圧安定化制御時の目標電圧、及び、無効電力出力による系統電圧安定化制御の終了判定電圧を説明する概念図が示される。
図32を参照して、実施の形態4では、HEMS7は、蓄電池用電力変換装置4の目標電圧を、太陽電池1の発電電力及び基準値の比較に従って2種類に設定する。具体的には、不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合には、「不感帯幅の上限電圧」≧「太陽電池用電力変換装置2(創エネ機器)の目標電圧」、及び、「太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合の蓄電池用電力変換装置4(蓄エネ機器)の目標電圧」≧「太陽電池1の発電電力が基準値以上の場合の蓄電池用電力変換装置4(蓄エネ機器)の目標電圧」≧太陽電池用電力変換装置2(創エネ機器)の終了判定電圧」≧「蓄電池用電力変換装置4(蓄エネ機器)の終了判定電圧」≧「宅内配電系統10の電圧制御目標値」となるように、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の目標電圧及び終了判定電圧が設定される。
一方で、図示は省略するが、不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合には、「不感帯幅の下限電圧」≦「太陽電池用電力変換装置2(創エネ機器)の目標電圧」、及び、「太陽電池1の発電電力が基準値未満の場合の蓄電池用電力変換装置4(畜エネ機器)の目標電圧」≦「太陽電池1の発電電力が基準値以上の場合の蓄電池用電力変換装置4(畜エネ機器)の目標電圧」≦「太陽電池用電力変換装置2(創エネ機器)の終了判定電圧」≦「蓄電池用電力変換装置4(畜エネ機器)の終了判定電圧」≦「宅内配電系統10の電圧制御目標値」となるように、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の目標電圧及び終了判定電圧が設定される。
上記のように設定することで、実施の形態2と同様に、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の上限電圧を逸脱した場合には、太陽電池1の発電電力が基準値以上のときの蓄電池用電力変換装置4用の目標電圧が、太陽電池用電力変換装置2用の目標電圧より低いため、蓄電池用電力変換装置4から優先的に無効電力が出力される。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。
同様に、宅内配電系統10の交流実効電圧が不感帯幅の下限電圧を逸脱した場合に、太陽電池1の発電電力が基準値以上のときの蓄電池用電力変換装置4用の目標電圧が、太陽電池用電力変換装置2の目標電圧よりも高いため、蓄電池用電力変換装置4から優先的に無効電力が出力される。これにより、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1の発電電力の抑制を最低限に抑えることが可能となる。
この結果、実施の形態4によっても、実施の形態2と同様に、太陽電池用電力変換装置2より出力する無効電力を最小限に抑えることができるので、太陽電池1からの発電電力の抑制を最小限に抑えることが可能である。又、実施の形態2と同様に、系統電圧安定化制御を行う際の開始/終了条件にヒステリシスを持たせることができるので、系統電圧安定化制御のハンチング動作を防止することが可能である。
尚、本実施の形態1〜4では、電圧制御目標値生成回路2099(4099)で交流電圧の電圧制御目標値を生成する際は、実効電圧算出回路2098(4098)より出力される交流実効電圧の移動平均値、あるいはIIRフィルタによるLPF(Low Pass Filter)により高周波成分を除去した値を使用するよう構成したが、これに限るものではなく、例えば、FIRフィルタを使用する、或いは、アナログフィルタを通した信号を利用しても、同様の効果を奏することが可能である。又、移動平均値を計算する時間長も1分に限るものではなく、5分、或いは、30秒等の任意の時間長を採用することが可能である。さらに、IIRフィルタ及びFIRフィルタの構成についても、図11や図27に例示した一次の構成に限定されす、二次、或いは、さらに高次のフィルタを使用することも可能である。
さらに、本実施の形態1〜4では、通信インターフェース回路212(412)より出力する分散電源で計測した各種計測結果が、電圧制御目標値生成回路2099(4099)で生成した交流電圧の制御目標電圧、交流電圧を制御するために抑制した有効電力量、有効電力を抑制した時間、第1のDC/AC変換回路208又は第2のDC/AC変換回路408から供給した無効電力量、及び、無効電力を出力した時間うちの少なくとも1つであってもよい。さらに、上記計測結果は、蓄電池3の蓄電電力量(SOC)や太陽電池1で発電した発電電力、負荷の消費電力を含んでもよい。
さらに、本実施の形態1〜4では、HEMS7によって、図13及び図30〜図32に示すように系統電圧安定化制御時の太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の目標電圧を設定したが、電圧制御目標値の設定は、このような例に限定されるものではない。第1のDC/AC変換回路208、又は、第2のDC/AC変換回路408において有効電力及び無効電力を制御する際の交流電圧の電圧制御目標値が、電圧制御目標値生成回路2099(4099)より出力される交流電圧の制御目標電圧と、不感帯幅の上限及び下限電圧のいずれか一方との間に設定される限り、宅内配電系統10の系統電圧をSVRの運用上下限電圧値に対応する範囲内に収めることができるので、同様の効果を奏することができる。
さらに、本実施の形態1〜4では、第2の制御回路209又は第4の制御回路409よって系統電圧安定化制御を行う際に、第2の制御回路209又は第4の制御回路409で交流電圧を制御するための有効電力及び無効電力がともに予め定められた判定値未満になった場合に、系統電圧安定化制御を終了するよう制御しても同様の効果を奏することが可能である。
また、本実施の形態1〜4では、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4等の分散電源が配電系統に複数台接続されており、複数の分散電源が、実施の形態で示すように複数の創エネ機器及び蓄エネ機器を含む場合、創エネ機器及び蓄エネ機器の間で不感帯幅情報を使用するよう構成した。これにより、上述のように、創エネ機器の発電状態、又は、蓄電機器の動作状態(充電、或いは、放電)、蓄熱機器の動作状態(蓄熱或いは待機)で不感帯幅情報を変えることで、不必要な創エネ機器の発電電力の抑制、又は、無効電力の発生を回避することができる。例えば、系統電圧の上昇時に、蓄電機器が動作していた場合は、放電電力を低減する、或いは、充電電力を増加させる、又は、蓄熱機器を起動する等の動作を優先して実施することができる。一方で、系統電圧の低下時には、蓄電機器が動作していた場合は、充電電力を低減する、或いは、放電電力を増加させる、又は、蓄熱機器が動作している場合は停止させる等の動作を優先することができる。
又、本実施の形態1〜4では、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4等の分散電源が配電系統に複数台接続されており、複数の分散電源が実施の形態で示すように複数の創エネ機器及び蓄エネ機器を含む場合には、配電系統の交流実効電圧が不感帯幅情報によって示される電圧範囲を逸脱したときの系統電圧安定化制御の終了条件を、太陽電池用電力変換装置2(第1のDC/AC変換回路208)及び蓄電池用電力変換装置4(第2のDC/AC変換回路408)の間で異なるよう制御する。これにより、無効電力の出力によって皮相電力が増加することで、創エネ機器(太陽電池1)などが発電電力を抑制していた場合は、創エネ機器側(太陽電池用電力変換装置2)による系統電圧安定化制御を優先的に終了するとともに、蓄エネ機器側(蓄電池用電力変換装置4)による系統電圧安定化制御を継続することができる。この結果、系統電圧安定化制御によって系統電圧の安定化を図るとともに、総エネ機器の発電電力が過度に抑制されることを防止できる。
尚、本実施の形態1〜4では、系統電圧が不感帯幅情報によって示される電圧範囲を逸脱した場合に、第1のDC/AC変換回路208及び第2のDC/AC変換回路408によって実行される系統電圧安定化制御の目標電圧を不感帯幅情報内に設定するとともに、系統電圧安定化制御の終了条件には、第1のDC/AC変換回路208又は第2のDC/AC変換回路408より出力する無効電力量が終了判定値以下となることが含まれている。これにより、系統電圧安定化制御の開始及び終了を短時間で繰り返すハンチング動作を防止することができる。
さらに、系統電圧安定化制御の終了条件については、配電系統に接続された複数の分散電源が実施の形態で示すように複数の創エネ機器及び蓄エネ機器を含む構成では、創エネ機器側(太陽電池用電力変換装置2)の無効電力の出力が、蓄エネ機器側(蓄電池用電力変換装置4)の無効電力の出力より先に終了するように設定することにより、創エネ機器の発電電力が過度に抑制されることを防止できる。
尚、本実施の形態1〜4では、太陽電池用電力変換装置2は無効電力の制御による系統電圧安定化制御を優先的に実行したが、これに限るものではなく、例えば、系統のインピーダンスを元に、需要家毎に有効電力制御(図23のS216)及び無効電力制御(S図23の214)の優先順位を決定してもよい。具体的には、系統インピーダンスの主要項目がリアクトルやコンデンサである場合には、実施の形態1〜4で説明したように、無効電力による系統電圧安定化制御を優先する一方で、系統インピーダンスの主要項目が抵抗である場合には、有効電力制御を優先して系統電圧安定化制御を実行することが好ましい。この際に、HEMS7は、CEMS15を介して配電自動化システム25より通知される系統インピーダンス情報に基づき、上述した無効電力制御及び有効電力制御の優先順位を判断することができる。従って、HEMS7による当該判断結果を、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4に通知することで、配電系統のインピーダンス情報に基づき、系統電圧安定化制御を効果的に実行することができる。
又、本実施の形態1〜4では、蓄電池用電力変換装置4の不感帯幅情報を決定する際に、太陽電池用電力変換装置2が無効電力を出力しても太陽電池1の発電電力が抑制されない場合には、太陽電池用電力変換装置2から無効電力を出力するとともに、蓄電池用電力変換装置4は動作させないように、系統電圧安定化制御を実行する。これにより、蓄電池用電力変換装置4を動作させることにより発生する、スイッチング損失や導通損失による電力損失を不必要に発生させることなく、系統電圧の上昇を抑制することが可能である。又、蓄電池用電力変換装置4が充放電を行っていない場合は、待機電力を削減できる待機モードで蓄電池用電力変換装置4を動作させることができるので、不必要な電力消費を抑制することができる。
本実施の形態1〜4では、HEMS7で不感帯幅情報などを加工して、需要家宅18内の蓄電池用電力変換装置4及び太陽電池用電力変換装置2に通知するので、蓄電池用電力変換装置4及び太陽電池用電力変換装置2が、宅内通信ネットワーク11等を介して直接データのやり取りを行うことなく、協調及び連携して宅内配電系統10の電圧上昇を抑制することができる。例えば、太陽電池1の発電電力が基準値以上である場合には、不感帯の加工によって、太陽電池1の発電力が抑制される前に、蓄電池用電力変換装置4が無効電力を出力して系統電圧安定化制御を開始することができる。これにより、蓄電池用電力変換装置4及び太陽電池用電力変換装置2の間の通信を要することなく、太陽電池1の発電電力が過度に抑制されることを防止できる。
同様に、配電自動化システム25より通知される配電系統のインピーダンス情報、太陽電池1からの発電量予測、及び、負荷の消費電力予測結果に基づいて、CEMS15にて不感帯情報を生成するので、各需要家宅18内の分散電源同士が直接通信することなく、各需要家宅18内での分散電源(電力変換装置)が、自律的に協調及び連携して系統電圧安定化制御を実行することができる。尚、実施の形態1〜4では、CEMS15から通知される不感帯情報をHEMS7で加工して各分散電源に通知する制御を説明したが、これに限るものではなく、各分散電源内、すなわち、各需要家宅18の蓄電池用電力変換装置4及び太陽電池用電力変換装置2において、不感帯情報を加工することも可能である。
又、実施の形態1〜4では、太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4での無効電力の出力を制御するために不感帯情報を加工するとともに、系統電圧安定化制御の開始及び終了条件にヒステリシスを持たせている。これにより、系統電池安定化制御の開始及び終了が短時間で繰り返されるハンチング動作を防止できる。特に、蓄電池用電力変換装置4を、待機モード及び他の動作モードとの間でハンチングさせることを防止し、かつ、図示していない主回路の導通用のリレー等を不必要にオンオフすることを防止できるので、機器寿命の低下を防止することができる。
又、本実施の形態1〜4では、太陽電池1からの発電電力が抑制されずに宅内配電系統10に出力可能な場合には、蓄電池用電力変換装置4を利用せずに、太陽電池用電力変換装置2内の第1のDC/AC変換回路208によって無効電力を発生させることができる。このため、上述した不必要な消費電力を発生させることなく、宅内配電系統10の電圧上昇を抑制することができる。さらに、太陽電池1の発電電力が基準値以上の場合には、蓄電池用電力変換装置4を起動し無効電力を発生して宅内配電系統10の電圧上昇を抑制するよう不感帯情報を加工することができる。これにより、太陽電池1等の創エネ機器から出力される発電電力が不必要に抑制されることを回避できる。
又、宅内配電系統10及び配電系統14の電圧上昇を、各需要家宅18内に配置された分散電源の電力変換装置で抑制できるので、配電系統14に、SVCや系統用蓄電池等の高価な系統安定化設備の小容量化、又は、系統安定化設備の配置を不要化することができるので、コスト削減することができる効果がある。尚、本実施の形態1〜4では、系統電圧安定化制御の対象となる交流電圧を宅内配電系統10での電圧としたが、計測が可能であれば、その他の部位の交流電圧、例えば、スマートメータ8の入力側、又は、柱上トランス9の直下などの交流電圧を、系統電圧安定制御の対象とすることが可能である。
又、本実施の形態1〜4では、蓄電池3として需要家宅18での定置型畜電池を想定して説明したが、蓄電池3としては、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグインタイプのハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、又は、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車載蓄電池を用いることも可能である。尚、系統電圧安定化制御の際には無効電力のみが発生されるので、EV、PHEV、FCV等の車載畜電池が蓄電池用電力変換装置4に電気的に接続されていない状態でも、蓄電池用電力変換装置4を用いて系統電圧安定化制御を実行することが可能である。
さらに、実施の形態1では、蓄電池3として1台の定置型バッテリを使用した場合について説明したがこれに限るものではなく、2台以上の複数の蓄電池、あるいは他の分散電源機器と連携して、「畜エネ機器」を構成することも可能である。尚、複数台の蓄電池を連携して使用する場合には、その中の1台又は複数台を上述した車載蓄電池で構成することも可能である。
変形例の説明.
尚、本実施の形態1〜4では、説明を分かりやすくするために太陽電池用電力変換装置2及び蓄電池用電力変換装置4の制御回路を、図3〜図11、及び図27に示すようにハードウェア(H/W)で構成する場合について説明したが、各ブロックに記載された、各ブロック或いは一部のブロックの機能を、CPU(Central Processing Unit)上に実装したソフトウェア(S/W)で実現しても同様の制御機能を実現することが可能である。或いは、少なくとも一部のブロックについて、ソフトウェア及びハードウェアの機能分割によって、同様の制御機能を実現することも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。