以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る送電装置及び非接触給電システムの適用例を示す図である。図1に示されるように、非接触給電システム1は、送電装置2と受電装置3とを備えており、送電装置2から受電装置3に電力を供給するためのシステムである。送電装置2及び受電装置3は、例えば上下方向に離間している。送電装置2は、例えば駐車場等に設置されている。受電装置3は、電気自動車EVに搭載されている。非接触給電システム1は、駐車場等に到着した電気自動車EVに対し、磁界共鳴方式又は電磁誘導方式等のコイル間の磁気結合を利用して、電力を供給するように構成されている。なお、受電装置3は、電気自動車EVではなく、プラグインハイブリッド車及び水中航走体などの各種移動体に搭載されてもよい。
送電装置2は、非接触給電のための電力を供給する装置である。送電装置2は、電源PS(図2参照)によって供給された電力から所望の交流電力を生成し、受電装置3に送る。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rに設置される。送電装置2は、例えば駐車場等の路面Rから上方に突出するように設けられた送電コイル装置4を備えている。送電コイル装置4は、第1コイル21(図2参照)を含み、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。送電装置2は、交流電源から所望の交流電力を生成する。生成された交流電力が送電コイル装置4に送られることによって、送電コイル装置4は磁束を発生させる。
受電装置3は、送電装置2から電力を受け取り、負荷L(図2参照)に電力を供給する装置である。受電装置3は、例えば電気自動車EVに搭載される。受電装置3は、例えば電気自動車EVの車体(シャーシ等)の底面に取り付けられた受電コイル装置5を備えている。受電コイル装置5は、第2コイル31(図2参照)を含み、電力供給時において送電コイル装置4と上下方向に離間して対向する。受電コイル装置5は、例えば扁平な錘台状又は直方体状をなしている。送電コイル装置4で発生した磁束が受電コイル装置5に鎖交することによって、受電コイル装置5は誘導電流を発生させる。これにより、受電コイル装置5は、非接触(つまりワイヤレス)で送電コイル装置4からの電力を受け取る。受電コイル装置5が受け取った電力は、負荷に供給される。
図2を参照して、非接触給電システム1の回路構成を詳細に説明する。図2は、非接触給電システム1の回路ブロック図である。図2に示されるように、非接触給電システム1は、電源PSから入力電力P1を受け、負荷Lに負荷電力Poutを供給するシステムである。電源PSは、交流電源であってもよいし、直流電源であってもよい。交流電源の種類はとくに限定されないが、例えば商用電源であってもよい。直流電源の種類はとくに限定されないが、例えば太陽光発電装置及び蓄電装置等であってもよい。負荷Lは、直流負荷であってもよいし、交流負荷であってもよい。直流負荷の種類はとくに限定されないが、例えば蓄電池であってもよい。交流負荷の種類はとくに限定されないが、例えばモータであってもよい。
送電装置2は、電源PSから入力電力P1を供給される。送電装置2は、第1コイル21と、第1変換器22と、第1検出器23と、第1通信器24と、第1制御器25と、を備えている。
第1変換器22は、電源PSから供給される入力電力P1を、所望の交流電力Pac2に変換し、変換した交流電力Pac2を第1コイル21に供給する回路である。第1変換器22は、電力変換器26と、直流交流変換器(DC/AC converter)27と、を備えている。
電力変換器26としては、例えば入力電力P1に応じて次のような構成が採用され得る。入力電力P1が交流電力の場合、電力変換器26は、例えば交流直流変換器(AC/DC converter)であってもよい。交流直流変換器は、例えば整流回路である。整流回路は、ダイオード等の整流素子で構成されてもよいし、トランジスタ等のスイッチング素子によって構成されてもよい。直流交流変換器は、PFC(Power Factor Correction)機能及び昇降圧機能を有していてもよい。
入力電力P1が直流電力の場合、電力変換器26は、例えば直流直流変換器(DC/DCconverter)であってもよい。直流直流変換器は、例えばチョッパ回路を用いた非絶縁型の回路であってもよいし、トランスを用いた絶縁型の回路であってもよい。
いずれの場合も、第1制御器25によって、電力変換器26から出力される直流電力Pdcの大きさが制御される。直流電力Pdcの大きさは、例えば、電力変換器26から出力される直流電圧の変更により、制御される。電力変換器26は、変換した直流電力Pdcを直流交流変換器27に供給する。
直流交流変換器27は、電力変換器26によって変換された直流電力Pdcを交流電力Pac2に変換する。直流交流変換器27は、例えばインバータ回路である。第1変換器22は、直流交流変換器27の出力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。直流交流変換器27から出力される交流電力Pac2の大きさは、第1制御器25によって制御される。交流電力Pac2の大きさは、例えば、周波数制御、及び位相シフト制御によって制御され得る。直流交流変換器27は、変換した交流電力Pac2を第1コイル21に供給する。
なお、第1変換器22の構成は、図2に示される例に限定されない。例えば、第1変換器22は、電力変換器26及び直流交流変換器27に代えて、交流交流変換器(AC/AC converter)を含んでもよい。交流交流変換器は、例えば、マトリクスコンバータ及びサイクロコンバータ等である。この場合、第1変換器22は、電源PSからの交流電力を受けて交流電力に変換する。また、電力変換器26は、交流直流変換器と、交流直流変換器の出力に設けられた直流直流変換器(DC/DC converter)とで構成されてもよい。
第1コイル21は、受電装置3に非接触で給電するためのコイルである。第1コイル21は、第1変換器22から交流電力Pac2が供給されることによって、磁束を発生する。第1コイル21と第1変換器22との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第1検出器23は、直流電力Pdcの大きさを検出するためのセンサを含む。第1検出器23は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。
第1通信器24は、後述する受電装置3の第2通信器34と無線で通信を行うための回路である。第1通信器24は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子である。第1通信器24は、受電装置3から受信した情報を第1制御器25に出力する。
第1制御器25は、CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)等の処理装置である。第1制御器25は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び送電装置2の各部と接続するインターフェース回路等を有してもよい。第1制御器25は、第1変換器22を制御することによって、交流電力Pac2の大きさを制御し、負荷Lに供給される負荷電力Poutの大きさを制御する電力制御を実行する。第1制御器25は、電力制御として、例えば、第1通信器24を介して受電装置3から受信した測定値及び電力指令値(後述)に基づいて、測定値が電力指令値に近づくように第1変換器22を制御する。
電力制御は、次に説明する、周波数制御、位相シフト制御、及び直流電力Pdcの制御の少なくとも1つを用いて行われる。各制御において、交流電力Pac2の大きさを制御するためのパラメータが変更される。
周波数制御について説明する。交流電力Pac2の周波数に応じて、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが変更される。交流電力Pac2の周波数としては、例えば81.38kHz〜90kHzが利用可能である。周波数が変わることにより、コイル及びキャパシタ等のリアクタンス素子のインピーダンスが変わり、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが変化する。以下、本実施形態では、周波数が大きくなるにつれて、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさが小さくなるとする。第1制御器25は、交流電力Pac2の周波数を変更することによって、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさを変更する周波数制御を実施する。周波数制御における上述のパラメータは、交流電力Pac2の周波数である。交流電力Pac2の周波数とは、第1変換器22から出力される交流電流又は交流電圧の周波数である。
周波数制御の具体的な手法は限定されない。例えば、直流交流変換器27がインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれる各スイッチング素子に供給される駆動信号を用いて、各スイッチング素子のスイッチング周波数を調整し、交流電力Pac2の周波数を変更する。スイッチング素子は、例えば、FET(Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であり、この場合、駆動信号はスイッチング素子のゲートに印加される。なお、周波数制御の詳細については、後に図3を用いてさらに説明する。
位相シフト制御について説明する。直流交流変換器27が図10に示されるようなインバータ回路である場合には、第1制御器25は、インバータ回路に含まれるスイッチング素子a〜dへの駆動信号Sa〜Sdの供給時間を調整して、各スイッチング素子a〜dがオンとなる時間を調整する。スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とが同じであり、スイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とが同じであるときが、インバータ回路の通電期間が最も長くなる。スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とがずれるほど(スイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とがずれるほど)、インバータ回路の通電期間が短くなる。インバータ回路の通電期間が短くなるほど、交流電力Pac2は小さくなる。位相シフト制御における上述のパラメータは、スイッチング素子aの駆動時間とスイッチング素子dの駆動時間とのずれ量(又はスイッチング素子bの駆動時間とスイッチング素子cの駆動時間とのずれ量)である。
直流電力Pdcの制御について説明する。直流電力Pdcの制御では、直流電力Pdcの電圧の大きさが変更される。直流電力Pdcの電圧の変更は、例えば先に説明した電力変換器26の有する昇降圧機能を利用して行われる。例えば、直流電力Pdcの電圧が大きくなるにつれて交流電力Pac2も大きくなり、直流電力Pdcの電圧が小さくなるにつれて交流電力Pac2も小さくなる。よって、直流電力Pdcの制御における上述のパラメータは、直流電力Pdcの電圧の大きさである。
なお、本明細書では、主に、電力制御として周波数制御を用いる例について詳細に説明する。位相シフト制御及び直流電力Pdcの制御についても、周波数制御と同様の原理で説明され得る。また、以後、交流電力Pac2の周波数を「駆動周波数f」という場合もある。周波数制御によって変化する(制御される)駆動周波数fの変化量を「周波数制御量Δf」という場合もある。
受電装置3は、第2コイル31と、第2変換器32と、第2検出器33と、第2通信器34と、第2制御器35と、を備えている。
第2コイル31は、送電装置2から非接触で供給される電力を受け取るためのコイルである。第1コイル21によって発生された磁束が第2コイル31に鎖交することによって、第2コイル31に交流電力Pac3が生じる。第2コイル31は、交流電力Pac3を第2変換器32に供給する。第2コイル31と第2変換器32との間には、キャパシタ及びインダクタ(例えば、リアクトル)が接続されていてもよい。
第2変換器32は、第2コイル31が受け取った交流電力Pac3を負荷Lにとって所望の負荷電力Poutに変換する回路である。負荷Lが直流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流の負荷電力Poutに変換する交流直流変換器(整流回路)である。この場合、第2変換器32は、負荷Lにとって所望の負荷電力Poutを出力するために昇降圧機能を含んでいてもよい。この昇降圧機能は、例えばチョッパ回路又はトランスで実現され得る。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。
負荷Lが交流負荷である場合、第2変換器32は、交流電力Pac3を直流電力に変換する交流直流変換器に加えて、さらに直流交流変換器(インバータ回路)を含む。直流交流変換器は、交流直流変換器によって変換された直流電力を交流の負荷電力Poutに変換する。第2変換器32は、交流直流変換器の入力に設けられたトランスをさらに備えていてもよい。なお、第2コイル31から供給される交流電力Pac3が負荷Lにとって所望の交流電力である場合には、第2変換器32は省略され得る。
第2検出器33は、負荷Lに供給される負荷電力Poutに関する測定値を取得する。第2検出器33は、負荷Lに供給される負荷電圧、負荷電流又は負荷電力Poutを測定する。第2検出器33は、例えば、電圧センサ、電流センサ、又はその組み合わせである。第2検出器33は、取得した測定値を第2制御器35に出力する。負荷Lは、電力指令値を第2制御器35に出力する。電力指令値は、負荷Lに供給すべき所望の電力の大きさを示す。例えば負荷Lが蓄電池の場合には、電力指令値は、負荷LのSOC(State Of Charge)に応じて定められた電流、電圧、又は電力の指令値であってもよい。
第2通信器34は、送電装置2の第1通信器24と無線で通信を行うための回路である。第2通信器34により、受電装置3は、送電装置2と通信可能である。第2通信器34は、例えば、電波を利用する通信方式用のアンテナ、光信号を利用する通信方式用の発光素子及び受光素子である。第2通信器34は、第2制御器35から受信した情報を送電装置2に送信する。
第2制御器35は、CPU及びDSP等の処理装置である。第2制御器35は、ROM,RAM及び受電装置3の各部と接続するインターフェース回路等を含んでいてもよい。第2制御器35は、第2検出器33から受信した測定値及び負荷Lから受信した電力指令値を第2通信器34を介して送電装置2に送信する。
なお、例えば、送電装置2に、電源PSに代えて電気自動車の蓄電池が接続され、受電装置3に、負荷Lに代えて電源PSが接続されることによって、受電装置3から送電装置2に電力を伝送することも可能である。
次に、送電装置2の第1制御器25による周波数制御の詳細について、図3を用いて説明する。
図3のグラフの横軸は周波数を示し、縦軸は電力(の大きさ)を示す。周波数は、上述の駆動周波数f、すなわち第1コイル21に供給される交流電力Pac2の周波数である。電力は、上述の負荷電力Pout、すなわち負荷Lに供給される電力である。
図3のグラフによって示される駆動周波数fと負荷電力Poutとの関係を示す特性(以下、単に「電力特性」という場合もある)は、第1コイル21と第2コイル31との結合係数kによって変化し得る。結合係数kは、例えば、第1コイル21と第2コイル31との相対的な位置関係に応じて変化する。例えば第1コイル21と第2コイル31との位置関係が変化することによる位置ずれが生じると、結合係数kは変化する。一般に、位置ずれは、結合係数kが最大となる第1コイル21と第2コイル31との位置を基準とした場合の、その位置に対する位置ずれである。このため、位置ずれが大きいほど、結合係数kは小さくなる。異なる結合係数kにおける電力特性として、図3のグラフでは、曲線C1及び曲線C2の2つの曲線が示される。
図3のグラフでは、曲線C1及び曲線C2によって示される電力特性として、先に説明したような、駆動周波数fの増加にともない負荷電力Poutが減少する例が示される。具体的に、駆動周波数fを変えることによって、負荷電力Poutを調整する手法について説明する。
例えば、曲線C1で示される電力特性において、当初、駆動周波数fが周波数fb1であると仮定する。このときの負荷電力Poutは電力Pbである。ここで、例えば、駆動周波数fを、周波数fb1から、周波数fa1をまで減少させる(すなわち周波数制御量Δf=fa1−fb1)。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=fa1に対応する電力Paとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから、電力Paまで増加する。
一方、負荷電力Poutを減少させる場合には、例えば、駆動周波数fを周波数fb1から周波数fc1まで増加させる(すなわち周波数制御量Δf=fc1−fb1)。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=fc1に対応する電力Pcとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから、電力Pcまで減少する。
曲線C2で示される電力特性においても、同様に説明される。すなわち、当初、駆動周波数fが周波数fb2であると仮定する。このときの負荷電力Poutは電力Pbである。ここで、例えば、駆動周波数fを、周波数fb2から、周波数fa2まで減少させる(すなわち周波数制御量Δf=fa2−fb2)。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=fa2に対応する電力Paとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから、電力Paまで増加する。
一方、負荷電力Poutを減少させる場合には、例えば、駆動周波数fを、周波数fb2から、周波数fc2まで増加させる(すなわち周波数制御量Δf=fc2−fb2)。すると、負荷電力Poutは、駆動周波数f=fc2に対応する電力Pcとなる。よって、負荷電力Poutは、電力Pbから、電力Pcまで減少する。
例えば上述のように駆動周波数fを制御することによって、負荷電力Poutを所望の電力(電力Pa,Pc等)に近づけることができる。また、次に説明するように、結合係数kが変化した場合の負荷電力Poutの変動を抑制することもできる。
すなわち、前述したように、第1コイル21と第2コイル31との結合係数kは、両者の位置関係によって変化し得る。例えば図1に示される例において、電気自動車EVに対して非接触給電が行われている時に、乗員の乗り降り及び荷物の積み降ろし等が発生すると、電気自動車EVの重量が変化する。それに応じて受電装置3に含まれる第2コイル31の位置が、図1の上下方向に変化して、第2コイル31の第1コイル21に対する相対的な位置が変化し、位置ずれが発生し得る。
例えば、当初、電力特性が、曲線C1で示される電力特性であると仮定する。また、駆動周波数fが周波数fb1であるとする。このときの負荷電力Poutは電力Pbである。ここで、位置ずれが発生して結合係数kが変化し、電力特性が曲線C2で示される曲線に変化したとする。この場合、駆動周波数fが周波数fb1のままであると、負荷電力Poutが、電力Pbから、電力Paまで増加してしまう。これに対し、駆動周波数fを周波数fb1から周波数fb2に増加させることで(すなわち周波数制御量Δf=fb2−fb1)、負荷電力Poutを再び電力Pbに近づけることができる。
以上説明したように、駆動周波数fを変える(制御する)ことによって、負荷電力Poutの大きさを調整することができる。このような周波数制御が第1制御器25によって実行されることで、負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができる。
ここで、曲線C1及び曲線C2では、駆動周波数fごとに傾きが異なっている。駆動周波数fの変化量は、前述の周波数制御量Δfに相当し得る。そこで、各駆動周波数fにおける傾きを、負荷電力変化率ΔP/Δfとして定義する。
具体的に、負荷電力変化率ΔP/Δfは、基準周波数(例えば周波数fb)からの駆動周波数fの所定の周波数変化量(例えば周波数制御量Δf=fb1−fa1,Δf=fb1−fc1等)に対する、負荷Lに供給される負荷電力Poutの変化量ΔP(例えば変化量ΔP=Pa−Pb,Pc−Pb)を示す。負荷電力変化率ΔP/Δfは、異なる基準周波数(例えば周波数fa1,fb1,fc1等)、にそれぞれ対応して設定され得る。
このような負荷電力変化率ΔP/Δfを用いて周波数制御を実行するために、本実施形態では、非接触給電システム1における負荷電力変化率ΔP/Δfが設定される。
例えば、負荷電力変化率ΔP/Δfは、周波数制御中の駆動周波数fの変化に対する負荷電力Poutの変化に基づきリアルタイムで求められ、設定されてもよい。或いは、負荷電力変化率ΔP/Δfは、送電装置2の外部との通信を介して、受電装置3が設けられた他の装置(例えば給電対象の電気自動車EV等)から受信され、設定されてもよい。この場合、他の装置は受電装置3の特性を把握しているので、受電装置3に対応した適切な負荷電力変化率ΔP/Δfが取得される。よって、例えば車の種類毎に受電装置3の特性等が異なる場合でも、適切な負荷電力変化率ΔP/Δfでもって非接触給電が行われる。なお、負荷電力変化率ΔP/Δfを送電装置2の外部から受信する場合、負荷電力変化率ΔP/Δfを示す数値データが受信されてもよいし、予め定められたいくつかのパターンの電力特性を特定するための情報が受信されてもよい。電力特性のパターンが特定されれば、特定された電力特性に応じて、負荷電力変化率ΔP/Δfが設定され得る。或いは、負荷電力変化率ΔP/Δfは、予め設定されていてもよい。負荷電力変化率ΔP/Δfが予め設定される場合には、負荷電力変化率ΔP/Δfは、実験データに基づいて設定されてもよいし、送電装置2、受電装置3及び負荷Lの設計データからシミュレーション等によって設定されてもよい。
上述のように設定される負荷電力変化率ΔP/Δfは、例えば第1制御器25に含まれる図示しない記憶部(前述のRAM等)に記憶されたデータテーブルによって記述される。
次に、図4〜図7を用いて、上記のデータテーブルの作成手法の一例について説明する。
図4は、非接触給電システム1における電力特性の例を示す図である。図4のグラフでは、結合係数kが0.1,0.2,0.3,0.4及び0.5である場合における電力特性の各々が、曲線C11,C12、曲線C21,C22、曲線C31,C32、曲線C41,42、及び曲線C51,C52としてそれぞれ2つの曲線で示される。曲線C11,C21,C31,C41及びC51は、負荷電力Poutの電圧範囲が比較的高い電圧範囲(例えば、301V〜400V、あるいはそれ以上)の場合の電力特性を示す。曲線C12,C22,C32,C42及びC52は、負荷電力Poutの電力範囲が比較的低い電圧範囲(例えば、100V未満、100V〜200V,201V〜300等)の場合の電力特性を示す。なお、この例では、5つの異なる結合係数kにおける電力特性を用いてデータテーブルを作成する手法について説明するが、さらに多くの異なる結合係数kにおける電力特性を用いてデータテーブルが作成されてもよい。
まず、図4に示されるグラフを複数のエリアに分割する。例えば図4のグラフを、図5において一点鎖線で示されるように負荷電力Poutの範囲で分割し、二点鎖線で示されるように駆動周波数fの範囲で分割することにより、複数のエリアに分割する。
作成しようとするデータテーブルは、分割された複数のエリアごとに、対応する負荷電力変化率ΔP/Δfを数値データで記述するものである。ここで、負荷電力変化率ΔP/Δfは、曲線C11等の曲線によって示される電力特性の傾きであり、エリアを広く設定しすぎると、そのエリアに対応する負荷電力変化率ΔP/Δfの値が適切に表されない可能性もある。そこで、各エリア対応する負荷電力変化率ΔP/Δfの値がより適切に示されるように、電力特性を示す曲線の傾きに応じて、分割されるエリアの大きさ、すなわちそのエリアを定める駆動周波数fの範囲及び負荷電力Poutの範囲が設定される。具体的に、グラフ中の、曲線の傾きの変化が比較的大きい部分は比較的小さいエリアで分割し、曲線の傾きの変化が比較的小さい部分は比較的大きなエリアで分割する。つまり、異なる基準周波数を昇順又は降順に並べた場合、隣り合う基準周波数どうしの間隔は、駆動周波数fに対する負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さいほど広くなるように設定される。換言すると、隣り合う基準周波数どうしの間隔は、駆動周波数fに対する負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が大きいほど狭くなるように設定される。
そして、分割された複数のエリアに対応する負荷電力変化率ΔP/Δfを、数値データとして求める。数値データは、例えば、対応するエリアに含まれる曲線(複数の曲線が含まれてもよい)の傾きのうち、最も急な傾きの大きさとして算出される。ただし、数値データの算出手法はこれに限定されない。例えば、数値データは、対応するエリアに含まれる曲線を一次近似した場合の傾きの大きさとして算出されてもよい。複数の曲線が同じエリアに含まれる場合には、各曲線を一次近似した場合の傾きの値をそれぞれ算出し、そのうちの大きさが最大の傾きの値を、数値データとして算出してもよい。あるいは、算出された各曲線の傾きの平均値が、数値データとして算出されてもよい。
なお、実際に駆動周波数fを変化(増加及び減少)させる制御においては、駆動周波数fをステップ単位で変化させてもよい。ステップは、例えば、第1制御器25であるCPUのクロックの分解能で定まる。1ステップの大きさは、とくに限定されず、例えば数Hz〜数十Hz、数十Hz〜数百H程度であってもよい。よって、データテーブルにおいて記述される負荷電力変化率ΔP/Δfの単位は、W/ステップとされ得る。
データテーブルは、負荷電力Poutの電圧範囲に応じてそれぞれ作成されてもよい。例えば負荷Lが蓄電池の場合には、蓄電池の構成及び蓄電池の充放電状態等によって電圧範囲が異なるためである。例えば、負荷電力Poutの電圧範囲が比較的高い電圧範囲である場合、それに対応するデータテーブルは、曲線C11,C21,C31,C41及びC51を含む複数の曲線で示される電力特性に基づいて作成するとよい。負荷電力Poutの電圧範囲が比較的低い電圧範囲である場合、それに対応するデータテーブルは、曲線C12,C22,C32,C42及びC52を含む複数の曲線で示される電力特性に基づいて作成するとよい。
具体的に、図6は、負荷電力Poutの電圧範囲が比較的高い電圧範囲である場合のデータテーブルの一例を示す。このデータテーブルは、図5において曲線C11,C21,C31,C41,C51及び図5には図示されないそれ以外の曲線で示される電力特性に基づいて作成されている。図5に示されるように、このデータテーブルは、所定の駆動周波数fの範囲及び負荷電力Poutの範囲で定められる各エリアに対応する負荷電力変化率ΔP/Δfを数値データで記述している。
図6に示されるデータテーブルにおいては、駆動周波数fの範囲が二点鎖線で区切られている。駆動周波数fの各範囲に対応する値は、その範囲における駆動周波数fがその値以上にならないことを示す値である。例えば、データテーブルにおいて駆動周波数fが「84」として示される駆動周波数fの範囲は、83.5kHz(すなわち84−0.5kHz)以上、84kHz未満の範囲である。また、データテーブルにおいて駆動周波数fが「85」として示される駆動周波数fの範囲は、84kHz以上、85kHz未満の範囲である。
また、図6に示されるデータテーブルにおいては、負荷電力Poutの範囲が一点鎖線で区切られている。負荷電力Poutの各範囲に対応する値は、その範囲における負荷電力Poutの下限値である。例えば、データテーブルにおいて負荷電力Poutが「1000」として示される負荷電力Poutの範囲は、1000W以上、2000W未満の範囲である。
図7は、負荷電力Poutの電圧範囲が比較的低い電圧範囲である場合のデータテーブルの一例を示す。このデータテーブルは、図5において曲線C12,C22,C32,C42、C52及び図5には図示されないそれ以外の曲線で示される電力特性を用いて作成されている。図7のデータテーブルは、図6のデータテーブルと比較して、数値データが異なる点で相違する。
このように、負荷電力Poutの電圧範囲に応じて、図6に示されるデータテーブル及び図7に示されるデータテーブルのように、異なる数値データを記述するデータテーブルが作成され得る。そして、図6及び図7に示されるようなデータテーブルを参照することにより、各エリアに対応する数値データ、つまりその駆動周波数fの範囲及び負荷電力Poutの範囲における負荷電力変化率ΔP/Δfが得られるので、駆動周波数fを変化させたときの負荷電力Poutの変化量を求めることができる。
具体的に、図7に示されるデータテーブルを例に挙げて説明する。当初、駆動周波数fが84.5kHzであり、負荷電力Poutが3300Wであると仮定する。これに対応するデータテーブルにおけるエリアは、駆動周波数fが「85」として示される範囲及び負荷電力Poutが「3000」として示される範囲で定められる。このエリアに対応する負荷電力変化率ΔP/Δfは、「−63」である。この負荷電力変化率ΔP/Δfは、駆動周波数fを1ステップ増やした場合に、負荷電力Poutの大きさが−63W変化する(63W減少する)ことを意味している。例えば所望の電力が3000Wである場合には、負荷電力Poutを3300Wから3000Wまで300W減少させる必要があるので、負荷電力Poutの変動量ΔPは−300Wである。この負荷電力Poutの変動量ΔPを得るための駆動周波数fの周波数制御量Δfは、Δf=(−300/−63)であるので、約+5ステップとして算出される。
すなわち、この場合には、周波数制御によって駆動周波数fを5ステップ分増加させることで、負荷電力Poutを所望の電力である3000Wに近づけることができる。
一方、当初、駆動周波数fが83.3kHzであり、負荷電力Poutが500Wであると仮定する。これに対応するデータテーブルにおけるエリアは、駆動周波数fが「83.5」として示される範囲及び負荷電力Poutが「500」として示される範囲で定められるエリアである。このエリアに対応する負荷電力変化率ΔP/Δfは、「−61」である。例えば所望の電力が3000Wである場合には、負荷電力Poutを500Wから3000Wまで2500W増加させる必要があるので、負荷電力Poutの変動量ΔPは+2500Wである。この負荷電力Poutの変動量ΔPを得るための駆動周波数fの周波数制御量Δfは、Δf=(2500/−61)であるので、約−41ステップとして算出される。
すなわち、この場合には、周波数制御によって駆動周波数fを41ステップ分減少させることで、負荷電力Poutを所望の電力である3000Wに近づけることができる。
ところで、ここで参照している負荷電力変化率ΔP/Δf「−61」は、負荷電力Poutが例えば500W以上700W未満の場合に最も適した値である。このため、負荷電力Poutが700Wよりも大きくなるように負荷電力Poutを調整する場合には、負荷電力変化率ΔP/Δf「−61」という値は、負荷電力変化率ΔP/Δfを示す値としては、必ずしも最適な値であるとは限らない。また、一度に調整する負荷電力Poutの値が大きすぎることも、制御の安定性等の観点から、かならずしも適切であるとは限らない。
そこで、例えば駆動周波数fを一度に変化させる際のステップ数の上限を定めておいてもよい。例えばステップ数の絶対値の上限を20にしておけば、上述のように駆動周波数fを41ステップ分増加させようとする場合でも、その増加幅を20ステップ分に抑えることができる。そして、駆動周波数fを20ステップ分増加させたのち、再び、対応する負荷電力変化率ΔP/Wに基づいて、周波数制御量Δを算出し、周波数制御を実行するとよい。このような制御サイクルを繰り返すことによっても、負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができる。
次に、図8を参照して、送電装置2の動作について説明する。図8は、送電装置2において実行される処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、負荷Lが蓄電池であり、送電装置2からの電力によって蓄電池が充電される場合を例に挙げて説明する。このフローチャートの処理は、例えば受電装置3側からの充電開始要求を送電装置2が受信したことに応じて開始される。
まず、第1制御器25は、充電開始シーケンスを実行する(ステップS1)。例えば、第1変換器22から第1コイル21側を見たインピーダンスが誘導性を示す(容量性とならない)駆動周波数fにおいて、第1コイル21への交流電力Pac2の供給が開始される。また、例えば第1コイル21に過度に大きな電流が流れることを防ぐための保護機能を作動させないように、第1コイル21への交流電力Pac2の供給が開始される。
続いて、第1制御器25は、電力一定制御による割り込みが有るか否かを判断する(ステップS2)。電力一定制御は、負荷Lに所望の電力が供給されるようにするための制御であり、これまで説明した電力制御によって実現される。割り込みは、例えば所定の周期で発生する。電力一定制御による割り込みが有ると判断された場合(ステップS2でYES)、第1制御器25は、電力指令値と負荷の電力値(負荷Lに供給されている負荷電力Poutの大きさ)との差分に基づく電力値を算出する(ステップS3)。電力指令値は、負荷Lに供給しようとする所望の電力の大きさを示す。負荷Lに供給されている負荷電力Poutの大きさは、前述したように受電装置3から送電装置2に通知されてもよいし、後述するように送電装置2において推定されてもよい。
続いて、第1制御器25は、データテーブルを参照し、周波数制御量Δfの候補値Δf1を決定する(ステップS4)。具体的に、先に図4〜図7を参照して説明したように、データテーブルが参照され、負荷電力Poutを所望の電力に近づけるための周波数制御量Δfが算出される。ただし、ここでの周波数制御量Δfは暫定的な値であり、後述のステップS6,S8において変更され得る。このため、ステップS4において決定されるのは、周波数制御量Δfの候補値Δf1とされる。
続いて、第1制御器25は、候補値Δf1だけ変化させた場合の周波数(駆動周波数f)が上限周波数fmaxより大きいか否かを判断する(ステップS5)。上限周波数fmaxは、駆動周波数fの上限値である。上限周波数fmaxは、例えば、非接触給電システム1が利用可能な駆動周波数fの上限値(例えば90kHz)であってもよいし、第1変換器22から第1コイル21を見たインピーダンスが誘導性を示す駆動周波数fの上限値であってもよい。候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが上限周波数fmaxより大きいと判断された場合(ステップS5でYES)、第1制御器25は、周波数が上限周波数fmaxとなるように周波数制御量Δfを設定する(ステップS6)。これにより、駆動周波数fが上限周波数fmaxを上回らないようにすることができる。
一方、ステップS5において候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが上限周波数fmax以下であると判断された場合(ステップS5でNO)、第1制御器25は、候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが下限周波数fminより小さいか否かを判断する(ステップS7)。下限周波数fminは、駆動周波数fの下限値である。下限周波数fminは、例えば、非接触給電システム1が利用可能な駆動周波数fの下限値(例えば81.38kHz)であってもよいし、第1変換器22から第1コイル21を見たインピーダンスが誘導性を示す駆動周波数fの下限値であってもよい。候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが下限周波数fminより小さいと判断された場合(ステップS7でYES)、第1制御器25は、周波数が下限周波数fminとなるように周波数制御量Δfを設定する。
一方、ステップS7において候補値Δf1だけ変化させた場合の周波数が下限周波数min以上であると判断された場合(ステップS7でNO)、第1制御器25は、周波数制御量Δfを候補値Δf1に設定する(ステップS9)。
以上のステップS6,S8,S9のいずれかにおいて周波数制御量Δfが決定される。そして、周波数制御量Δfが決定された後、第1制御器25は、周波数(駆動周波数f)を周波数制御量Δfだけ変化させる(ステップS10)。
先のステップS2において電力一定制御による割り込みが無いと判断された場合(ステップS2でNO)、又はステップS10において周波数が周波数制御量Δfだけ変化させられた後、第1制御器25は、充電停止要求が有るか否かを判断する(ステップS11)。充電停止要求は、例えば、蓄電池としての負荷LのSOCが十分に高くなり充電が不要となったタイミングで、受電装置3から送電装置2に通知される。充電停止要求が無いと判断された場合(ステップS11でNO)、第1制御器25は、ステップS2に再び処理を戻す。一方、充電停止要求が有ると判断された場合(ステップS11でYES)、第1制御器25は、充電停止シーケンスを実行する(ステップS12)。
図8の処理によれば、第1制御器25によって、負荷Lに所望の電力が供給されるように(ステップS2)、負荷電力変化率ΔP/Δfに基づいて駆動周波数fの周波数制御量Δfが算出されて決定され(ステップS4,S6,S8,S9)、決定された周波数制御量Δfに応じて駆動周波数fが変更(制御)される(ステップS10)。このフローチャートによれば、第1コイル21と第2コイル31との位置ずれを検出することなく、負荷Lに供給される電力が調整される。
ところで、図8に示される処理の例では、駆動周波数fが上限周波数fmaxを上回る可能性のある場合(つまりステップS5でYES)及び下限周波数fminを下回る可能性のある場合(つまりステップS7でYES)を除き、駆動周波数fの周波数制御量Δfは、駆動周波数fを増加させる場合と減少させる場合とで区別せずに設定される(ステップS3、S4,S9)。
ここで、非接触給電システム1の回路特性によっては、負荷電力変化率ΔP/Δfがかなり大きくなり、駆動周波数fをわずかに変化させただけで負荷電力Poutが急激に増加する可能性がある。負荷電力Poutが急激に増加すると、送電装置2及び受電装置3を流れる電力が急激に増加し、例えば、電力制御を安定させることが困難になる。また、第1変換器22、第2変換器32に含まれる種々の回路(インバータ回路及びPFC等)の劣化等を招く可能性もある。これを避けるために、負荷電力Poutを増加させる場合の駆動周波数fの周波数制御量Δfを抑えてもよい。一方で、第1コイル21及び第2コイル31の位置ずれ又は何らかの異常事態により負荷電力Poutが大きくなりすぎた場合には、負荷電力Poutを迅速に減少させなければならない。
そこで、第1制御器25は、負荷電力Poutを増加させる場合には、周波数制御量Δfが算出された値よりも小さくなるように、周波数制御量Δfを補正し、補正した周波数制御量Δfを用いて(に応じて)周波数制御を実行してもよい。
具体的に、図9に示されるフローチャートを用いて説明する。図9に示されるフローチャートは、図8に示されるフローチャートと比較して、ステップS4とステップS5,S7との間に、ステップS41,S42,S43を含む点、及びそれらのステップ間のフローにおいて相違する。
すなわち、図9に示されるように、ステップS4の処理が完了すると、第1制御器25は、候補値Δf1が正の値か否かを判断する(ステップS41)。候補値Δf1が正の値であると判断された場合(ステップS41でYES)、第1制御器25は、候補値Δf1を係数Aで補正する(ステップS42)。この補正は、候補値Δf1の大きさ(つまり絶対値)を、先のステップS4において決定された候補値Δf1の大きさに維持するか、候補値Δf1の大きさよりも大きな値にするための補正である。第1制御器25は、例えば候補値Δf1に係数Aを乗じることによって、候補値Δf1を係数Aで補正する。その場合の係数Aは、1以上の値とされる。ステップS42の処理が完了した後、第1制御器25は、ステップS5に処理を進める。なお、候補値Δf1がゼロの場合及び係数Aが1の場合には、係数Aによる補正によっては候補値Δf1が変化しないので、ステップS42の処理がスキップされてもよい。
一方、ステップS41において候補値Δf1がゼロ又は負の値であると判断された場合(ステップS41でNO)、第1制御器25は、候補値Δf1を係数Bで補正する(ステップS43)。この補正は、候補値Δf1の大きさ(つまり絶対値)を、先のステップS4において決定された候補値Δf1の大きさよりも小さな値にするための補正である。第1制御器25は、例えば候補値Δf1に係数Bを乗じることによって、候補値Δf1を係数Bで補正する。その場合の係数Bは、1未満の値とされる。ステップS43の処理が完了した後、第1制御器25は、ステップS7に処理を進める。
ステップS5及びステップS7の処理自体は、先に図8を参照して説明したとおりである。ただし、候補値Δf1が正の値の場合(ステップS41でYES)には、駆動周波数fが下限周波数fminを下回ることはない。また、候補値Δf1が正の値でない場合(ステップS41でNO)には、駆動周波数fが上限周波数fmaxを上回ることはない。そのため、候補値Δf1が正の場合(ステップS41でYES)には、ステップS42の処理を経た後、ステップS5の処理、すなわち候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが上限周波数fmaxより大きいか否かが判断され、その判断結果に応じてステップS6又はステップS9に処理が進められる。また、候補値Δf1が正の値でない場合(ステップS41でNO)には、ステップS43の処理を経た後、ステップS7の処理、すなわち候補値Δf1だけ変化させた場合の駆動周波数fが下限周波数fminより小さいか否か判断され、その判断結果に応じてステップS8又はステップS9に処理が進められる。ステップS6,S8,S9以降の処理は、先に図8を参照して説明したとおりである。
図9の処理によれば、負荷電力Poutを増加させる場合、つまり駆動周波数fを減少させる場合(ステップS41でNO)には、周波数制御量Δfの大きさが算出された値の大きさよりも小さくなるように補正される(ステップS43)。よって、周波数制御により負荷Lに供給される電力及び送電装置2、受電装置3を流れる電力が急激に増加することも抑制される。一方、負荷電力Poutを減少させる場合、つまり駆動周波数fを増加させる場合(ステップS41でYES)には、周波数制御量Δfの大きさが算出された値の大きさと同じかその値の大きさよりも大きくされる(ステップS42)。よって、負荷電力Poutが迅速に減少される。
次に、第1制御器25の作用効果について説明する。例えば、第1制御器25は、第1コイル21に供給される交流電力Pac2を制御するためのパラメータとして駆動周波数fを採用し、駆動周波数fを変更することによって、負荷Lに供給される負荷電力Poutを所望の電力(電力指令値)に近づけるように、駆動周波数fを変更する。
上記実施形態では、基準周波数からの駆動周波数fの所定の周波数変化量に対する負荷電力の変化量(負荷電力変化率ΔP/Δf)に基づいて、負荷Lに供給される電力が所望の電力に近づくように、駆動周波数fが変更される(周波数制御が実行される)。具体的に、第1制御器25は、負荷Lに供給されている負荷電力Poutと所望の電力(電力指令値)との差分(負荷電力Poutの変化量ΔP)と負荷電力変化率ΔP/Δfとに基づいて、駆動周波数fを変更する。より具体的に、上記差分(負荷電力Poutの変化量ΔP)を負荷電力変化率ΔP/Δfで除することによって駆動周波数fの周波数制御量Δfを算出し、算出した周波数制御量Δfを用いて駆動周波数fを変更する(制御する)することで、負荷Lに供給される負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができる。そして、このように負荷電力変化率ΔP/Δfに基づいて周波数制御を実行することによって、第1コイル21と第2コイル31との位置ずれを検出することなく、負荷Lに供給される負荷電力Poutを調整することができる。
また、上記実施形態では、第1制御器25の記憶部は、負荷電力変化率ΔP/Δfを記憶している。図4〜図7を参照して説明したようにデータテーブルが予め作成され、第1制御器25は、そのデータテーブルを記憶している。第1制御器25は、データテーブルを参照することによって、周波数制御を実行する。つまり、負荷電力変化率ΔP/Δfをリアルタイムで算出する必要がない。そのため、処理時間が短縮され、効率的に負荷Lに供給される負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができる。特に、給電中に位置ずれが発生して、負荷Lに供給される負荷電力Poutが所望の電力からずれても、負荷Lに供給される負荷電力Poutを所望の電力に素早く近づけることができる。つまり、応答性の良い電力制御が実現される。
第1制御器25は、負荷電力変化率ΔP/Δfを、送電装置2の外部から取得してもよい。例えば受電装置3が設けられた他の装置(例えば車等の移動体)から送信された負荷電力変化率ΔP/Δfを受信することによって、負荷電力変化率ΔP/Δfが取得される。この場合、負荷電力変化率ΔP/Δfを送信する車等の移動体は受電装置3の特性を把握しているので、受電装置3に対応した負荷電力変化率ΔP/Δfが取得される。これにより、適切な負荷電力変化率ΔP/Δfに基づいて負荷電力Poutが調整される。よって、種類及び特性の異なる受電装置3に対して電力を供給する場合でも、負荷電力Poutを適切に調整することができる。
また、上記実施形態の図4及び図5に示されるグラフは、異なる複数の結合係数kの各々について、駆動周波数fと負荷電力Poutとの関係を示す複数の曲線を示す。そして、図6及び図7に示されるデータテーブルは、異なる複数の結合係数kに対応した全ての曲線に基づいて作成されている。このため、第1コイル21と第2コイル31との位置ずれによって結合係数kがどのような値に変化しても、その結合係数k(つまり位置ずれの状態)に対応した負荷電力変化率ΔP/Δfが、データテーブルによって記述されることとなる。この場合、図6、図7に示されるデータテーブルを参照し、データテーブルによって記述される負荷電力変化率ΔP/Δfに基づくことで、位置ずれの状態にかかわらず周波数制御を実行することが可能である。よって、位置ずれを検出することなく、負荷Lに供給される電力を所望の電力に近づけるように周波数制御を実行することができる。
また、上述の周波数制御においては、駆動周波数fの周波数制御量Δfが、所望の電力と負荷電力Poutとの差分を埋めるような値として算出される。このため、駆動周波数fを周波数制御量Δf変化させることで、負荷電力Poutが、所望の電力とほぼ同じ、あるいはかなり近い値となることが期待される。よって、短時間で負荷電力Poutを所望の電力に近づけることができる可能性が高い。
ここで、先に説明したように、受電装置3側に設けられた負荷Lに供給されている負荷電力Poutを把握するために、負荷電力Poutの大きさが、電力指令値とともに受電装置3から送電装置2に通知されてもよい。この場合、受電装置3の第2検出器33によって直接検出された負荷電力Poutに基づいて電力制御が行われる。そのため、例えば第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて負荷Lに供給される負荷電力Poutを推定する場合よりも、電力制御の精度を向上させることができる。
また、先に図4〜図7を参照して説明したように、負荷電力変化率ΔP/Δfは、異なる基準周波数ごとにそれぞれ設定される。このため、第1制御器25は、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の駆動周波数fを基準周波数とする負荷電力変化率ΔP/Δfに基づいて、駆動周波数fを変える(制御する)ことができる。これにより、負荷電力変化率ΔP/Δfが基準周波数によって異なる場合であっても、第1コイル21に供給されている交流電力Pac2の駆動周波数fに対応した適切な負荷電力変化率ΔP/Δfに基づく電力制御が可能となる。よって、電力制御の精度を向上させることができる。
ここで、異なる基準周波数どうしの間隔は、駆動周波数fに対する負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さいほど広くなるように設定されてもよい。例えば、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が大きい領域を基準として当該変化量に対する適切な分解能が得られる周波数間隔で各基準周波数を等間隔に設定すると、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さい領域では、負荷電力変化率ΔP/Δfに対する分解能が細かくなり過ぎる。この場合、基準周波数の数、つまり対応する負荷電力変化率ΔP/Δfの数が多くなり過ぎるので、その分、扱うデータ量が必要以上に大きくなってしまう。一方、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さい領域を基準として当該変化量に対する適切な分解能が得られる周波数間隔で各基準周波数を等間隔に設定すると、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が大きい領域では、負荷電力変化率ΔP/Δfに対する分解能が粗くなる。この場合、電力の調整精度を十分に高めることができない可能性がある。上記構成によれば、隣り合う基準周波数どうしの間隔が、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さくなるほど広くなるように設定されるので、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が小さい領域では、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量に対する分解能が細かくなり過ぎないように周波数間隔が設定され、データ量が抑えられる。また、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量が大きい領域では、負荷電力変化率ΔP/Δfの変化量に対する分解能が粗くなり過ぎない様に周波数間隔が設定される。よって、扱うデータ量を低減しつつ、負荷電力Poutの調整精度を維持することができる。
また、先に図4〜図7を参照して説明したように、負荷電力変化率ΔP/Δfは、負荷Lに供給される負荷電力Poutの異なる電圧範囲ごとにそれぞれ設定される。このため、例えば負荷Lが蓄電池等であり、負荷電力変化率ΔP/Δfが負荷Lに供給される負荷電力Poutの電圧範囲によって異なる場合であっても、負荷電力Poutの電圧に対応した適切な負荷電力変化率ΔP/Δfに基づく電力制御が可能となる。よって、電力制御の精度を向上させることができる。
第1制御器25は、負荷Lに供給されている負荷電力Poutと所望の電力(電力指令値)との差分である負荷電力Poutの変化量ΔP及び負荷電力変化率ΔP/Δfに基づいて周波数制御量Δfの候補値Δf1を算出する。ここで、先に図9を参照して説明したように、第1制御器25は、負荷Lに供給される負荷電力Poutを増加させる場合には、算出した候補値Δf1の大きさが小さくなるように補正し、補正後の候補値Δf1を周波数制御量Δfとして、周波数制御量Δfだけ駆動周波数fを変更してもよい。これにより、例えば、負荷Lに供給される負荷電力Pout及び送電装置2等を流れる電力が急激に大きくなり安定した電力制御が困難になることを抑制することができる。
ところで、上記のように受電装置3から送電装置2へ負荷電力Poutの大きさを通知しなくとも、第1制御器25は、負荷Lに供給されている負荷電力Poutを把握し得る。例えば、第1制御器25は、第1変換器22から第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて、負荷電力Poutを推定してもよい。これは、交流電力Pac2と、負荷電力Poutとが関連性を有するためである。例えば、非接触給電システム1による電力伝送においてほとんど電力損失が発生しない場合には、交流電力Pac2及び負荷電力Poutの大きさはほぼ等しいので、第1コイル21に供給される交流電力Pac2の大きさを、負荷Lに供給されている負荷電力Poutとして推定することができる。また、電力損失を考慮する場合には、電力損失の大きさを予め定めた値(例えば5%)としておき、交流電力Pac2の大きさから、電力損失の大きさを差し引いた値を、負荷電力Poutとして推定することができる。このように第1コイル21に供給される交流電力Pac2に基づいて負荷Lに供給される負荷電力Poutを推定するので、例えば、受電装置3から送電装置2への負荷電力Poutの通知を不要とすることができる。その場合、送電装置2及び受電装置3、すなわち非接触給電システム1の構成を簡素化し、コストを削減できる可能性が高まる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、主に、電力制御として周波数制御を用いる場合について説明したが、電力制御として、前述の位相シフト制御、直流電力Pdcの制御が採用されてもよい。
電力制御として位相シフト制御を用いる場合には、第1コイル21に供給される交流電力Pac2を制御するためのパラメータとして、先に図10を参照して説明した、インバータ回路に含まれるスイッチング素子の駆動時間のずれ量が採用されてもよい。この場合、電力変化率は、当該駆動時間のずれ量の変化量に対する負荷電力Poutの変化量とされる。そのような電力変化率を記述するデータテーブルは、周波数制御の場合と同様の手法を用いて作成され得る。
また、電力制御として直流電力Pdcの制御を用いる場合には、第1コイル21に供給される交流電力Pac2を制御するためのパラメータとして、直流電力Pdcの電圧の大きさが採用されてもよい。この場合、電力変化率は、直流電力Pdcの電圧の大きさの変化量に対する負荷電力Poutの変化量とされる。そのような電力変化率を記述するデータテーブルも、周波数制御の場合と同様の手法を用いて作成され得る。
更に、電力制御として、非接触給電システム1のインピーダンスの制御が採用されてもよい。非接触給電システム1の送電装置2を構成する素子のインピーダンスが変わると、非接触給電システム1のインピーダンスが変化し、第1変換器22が供給する交流電力Pac2も変化する。つまり、第1コイル21に供給される交流電力Pac2を制御するためのパラメータとして、非接触給電システム1のインピーダンスが採用されてもよい。例えば、第1コイル21と、第1コイル21に接続され得るキャパシタ又はインダクタンスとの少なくとも1つを可変素子で実現し、この可変素子のインピーダンスを変えることにより、非接触給電システム1のインピーダンスが変化する。この場合、電力変化率は、可変素子のインピーダンスの変化量に対する負荷電力Poutの変化量とされる。そのような電力変化率を記述するデータテーブルも、周波数制御の場合と同様の手法を用いて作成され得る。
また、上記実施形態では、電力変化率に基づいて、負荷Lに供給される電力(負荷電力)を所望の電力に近づける場合について説明したが、電力変化率は電流の変化を規定してもよい。負荷Lに印加される電圧(負荷電圧)が変わらない(又はその変化が極めて小さい)場合、負荷電力は、負荷Lに供給される電流(負荷電流)に比例(ほぼ比例)する。所望の電力を負荷電圧で除算することにより、所望の電力を実現する所望の電流が求まる。この場合、電力変化率は、駆動周波数f(又は位相シフトにおける駆動時間のずれ量、直流電力Pdcの電圧の大きさ、可変素子のインピーダンス)の変化量に対する負荷電流の変化量とされる。この電力変化率に基づいて負荷電流を所望の電流に近づけることにより、負荷電力を所望の電力に近づけることができる。