JP6630203B2 - 変位計測装置 - Google Patents
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Description
実振動の波形データを収集する際に、変位計を用いて対象物の変位量を計測する場合、測定対象物の変位量に応じて、変位計が大きくなるとともに、計測のために変位量の大きさに応じた大きな計測空間が必要となることがある。
このため、車両内部等の限られた空間内で変位量を計測する際に、変位計を設置できない場合が出てくる。そこで、加速度検出手段の出力から変位量を算出することが行われている。
たとえば、特許文献1では、車両に設置された加速度検出手段の出力信号について、時間積分を2回行うことで変位量(路面の凹凸)を算出している。加速度検出手段は、センサ自体が小さく、加速度を計測するために、センサの周囲に広い計測空間を必要としないため、変位計を設置できないような場所にも設置することが可能である。
本実施形態の変位計測装置1は、加速度検出手段2、記憶手段3、および演算手段4を備えている。
加速度検出手段2は、加速度センサで構成され、試験体11(測定対象物)に設置される。加速度センサの加速度を検出する方法として、圧電素子型、静電容量型、ひずみゲージ型等、様々な検出方法が提案されているが、本実施形態では、試験体11の計測箇所に設置可能な外形寸法であること、計測箇所に確実に固定できること等の計測条件を満足できれば、検出方法を問わず、採用が可能である。なお、加速度から変位量を算出する手法は、直接変位を計測するよりもセンサの小型化、低コスト化が可能である。
記憶手段3は、加速度検出手段2から出力された出力信号、および演算手段4の算出結果を記録しておくものである。
演算手段4は、加速度検出手段2の出力信号を時間領域から周波数領域へフーリエ変換した後、2階積分を行い、周波数領域から時間領域へ逆フーリエ変換することで、変位する試験体11の変位量を算出する。
つまり、演算手段4は、加速度検出手段2の出力信号から試験体11の変位量を算出する。
なお、図1に示すハンマリング試験では、本実施形態の変位計測装置1との比較のために、ハンマリングによる変位を計測する変位計13が試験体11に設置されている。
まず、試験体11に、加速度検出手段2を設置する。
次に、試験体11に、ハンマ12で打撃を加えて、振動させ、加速度検出手段2から出力される出力信号を記憶手段3に記録する。
演算手段4は、記憶手段3に記録された加速度検出手段2の出力信号を読込み、出力信号の離散化(A/D変換)を行う。ここで、離散化された出力信号を算出加速度とする。なお、出力信号を記憶手段3に記録する際に、演算手段4が出力信号の離散化(A/D変換)を行う構成としても良い。
数式1:
演算手段4は、数式2によって、算出加速度を時間領域から周波数領域にフーリエ変換する。なお、角振動数ω=2πn/τとする。
数式2:
次に、演算手段4は、数式3によって、周波数領域に変換された算出加速度の2階積分を行い、周波数領域における変位量を算出する。
数式3:
さらに、演算手段4は、数式4によって、周波数領域における変位量に対して逆フーリエ変換を行い、時間領域における変位量(算出変位量)に変換する。
数式4:
演算手段4は、上記の各数式2〜4について、算出加速度、および各計算式の計算結果を用いてそれぞれの計算を行い、算出加速度から変位量(算出変位量)を算出する。
なお、参考として、算出加速度を時間領域のまま2階積分し、得られた変位量(時間領域算出変位量)も図中に描画している。時間領域算出変位量では、たとえば「打撃を加える前は、変位量がゼロである」というような条件を加えて、一部分の領域について合わせ込まれているが、計算範囲全体では、計算が発散しているのは明らかである。
車両Sは、車体SSから延設される車軸S2と、車軸S2に軸支される車輪S1と、車体SSと車輪S1との間に配設されるサスペンションS3とを備えている。
車輪S1は、車軸S2によって回転可能に軸支されており、その外周には、弾力性を備え、路面Rとの設置面を構成するタイヤS1aが嵌め込まれている。
スプリングS3aは、円筒状に巻かれた巻きバネによって構成されている。
ダンパS3bは、スプリングS3aの筒内に配置されている。
ダンパS3bは、シリンダ(図示せず)内をサスペンションS3の伸縮に合わせて移動するピストン(図示せず)を備えるとともに、シリンダ内にオイルなどの液体が封入されている。また、ピストンには、オリフィス(図示せず)が設けられている。
そして、スプリングS3aとダンパS3bは、サスペンションS3の車体側固定部S3cと車輪側固定部S3dとの間に伸縮自在に配置されている。
車体側固定部S3cは、サスペンションS3の上端部に位置し、車体SSに固定される。
車輪側固定部S3dは、サスペンションS3の下端部に位置し、車輪S1の中心を軸支する車軸S2に固定される。
上記構成のサスペンションS3は、スプリングS3aが伸縮することで、路面Rからの衝撃を吸収する。また、スプリングS3aの伸縮に同期して、ピストンがシリンダ内を移動し、ピストンの移動によって、液体がオリフィスを通過する。そして、液体がオリフィスを通過する際に生じる抵抗によって、ダンパS3bがスプリングS3aの振動を減衰する。
車輪側加速度センサ2Aaは、サスペンションS3が伸縮する際の伸縮する方向に沿った加速度を計測する。
車体側加速度センサ2Abは、サスペンションS3自身が上下方向に移動する(車体SSが上下に移動する)際の、サスペンションS3が伸縮する方向に沿った加速度を計測する。
そして、各加速度センサ2Aa、2Abから出力される加速度信号は、記憶手段3に出力される。
なお、サスペンションS3のスプリングS3aとダンパS3bが別体式の場合には、それぞれに車体側加速度センサと車輪側加速度センサを設置し、上下方向の加速度を計測する。
サスペンションS3は、垂直方向に対して斜めに伸縮するように車体SSに設置されているために、各加速度センサ2Aa、2Abから出力される加速度信号は、垂直方向に対して斜めに傾いたものである。また、車輪S1は、サスペンションS3とは異なる構成で車体SSに支持されているために、サスペンションS3とは異なった動きをする。このため、車輪S1の変位量を算出するには、各加速度センサ2Aa、2Abから出力される加速度信号を、車輪S1の動く方向に合わせて変換しなければならない。
また、算出した変位量が垂直方向の変位量に変換されていれば、後述する台上試験機101に、算出した変位量を適用する場合に、サスペンションS3の向きに合わせて、加振機102の位置を調整する必要がなくなるため、都合がよい。
さらに、車両走行中には、路面Rの凹凸による振動が、車輪S1を通じて車体SSに入力されるが、車輪S1と車体SSの間に配設されるサスペンションS3が伸縮して、振動を吸収する。しかしながら、サスペンションS3の伸縮では、路面Rの凹凸による振動を完全には吸収できないため、車体SSが上下方向に振動する。
つまり、車両走行中のサスペンションS3は、伸縮しつつ、上下方向に変位している。このため、車輪側加速度センサ2Aaの出力信号だけでは、変位する車輪S1の加速度を正確に測定できない。そこで、演算手段4は、車輪側加速度センサ2Aaの出力信号に、車体側加速度センサ2Abの出力信号を加算し、車体SSの振動を考慮した車輪S1の加速度(算出加速度)を算出する。
まず、車輪側加速度センサ2Aaを各サスペンションS3の車輪側固定部S3dに設置するとともに、車体側加速度センサ2Abを各サスペンションS3の車体側固定部S3cに設置する。
そして、設定された試験路に車両Sを走らせて、各加速度センサ2Aa、2Abから出力される出力信号を記憶手段3に記録する。
なお、演算手段4は、出力信号を記憶手段3に記録する際、または算出加速度を算出する際に、出力信号の離散化(A/D変換)を行う。
つまり、車輪側加速度センサ2Aaの出力信号と、車体側加速度センサ2Abの出力信号の2つの出力信号とを同期させ、同じタイミングでサンプリングを行う。そして、サンプリングした車輪側加速度センサ2Aaの出力信号と、車体側加速度センサ2Abの出力信号から車輪S1の垂直方向の加速度(算出加速度)を算出する。
そのために、まず演算手段4は、算出加速度を時間領域から周波数領域にフーリエ変換する。
次に、演算手段4は、周波数領域に変換された算出加速度の2階積分を行い、周波数領域における変位量を算出する。
さらに、演算手段4は、周波数領域における変位量に対して逆フーリエ変換を行い、時間領域における変位量に変換する。
台上試験機101は、車輪S1に振動を加える加振機102と、加振機102の制御を行う加振制御手段103とを備えている。なお、試験対象となる車両Sは、4輪自動車である。
加振制御手段103は、各加振機102の制御を行い、各加振部102aの位置(高さ)を変動する。加振制御手段103は、演算処理部103aと記憶部103bとを備えている。
演算処理部103aは、算出変位量を元に、加振機102を制御する加振制御信号を算出する。
記憶部103bは、算出された制御信号が記録される。
なお、算出変位量を台上試験機101の路面データとして利用する場合、垂直方向の変位量だけでは、走行状態を再現するには不十分なので、車体の6軸加速度(X軸、Y軸、Z軸、ロール、ピッチ、ヨー)や車速等の物理量も合わせて計測する。また、X軸(前後方向)、Y軸(左右方向)、Z軸(垂直)の3軸方向の加速度を計測する際に、本実施形態のように、サスペンションS3の伸縮する方向に加速度センサを設置し、計測した加速度を各軸方向の加速度に変換する方法を用いても良いが、軸方向毎に加速度センサを設置する構成としても良い。このような構成とすることで、各軸方向の加速度の計測をより正確に行うことができる。
上述の手法によって算出された算出変位量は、車輪S1(車軸S2)の垂直方向の変位量である。
車輪S1には、弾力性を有するタイヤS1aが装着されており、タイヤS1aでも路面Rの凹凸が吸収される。このため、算出変位量を路面Rの凹凸を表す路面データとして考えた場合には、誤差が含まれている。
そこで、より現実に近い走行状態を再現するために、算出変位量の精度を高める作業を行う。
そして、演算処理部103aは、算出された加振制御信号を用いて加振機102を制御し、加振部102aから車両Sに振動を加える。車両Sに設置された加速度検出手段2Aが、振動によって変位する車輪S1の加速度を計測する(応答計測)。
演算処理部103aは、実際に走行して計測した加速度(ターゲット)と、台上試験機101上で再現した振動による加速度(再現加速度)とを比較し、ターゲットと再現加速度との残差を算出する(ターゲットとの残差算出)。
演算処理部103aは、残差が小さくなるように、応答関数を元に、変位量の補正を行う(変位量の更新)。
新たな加振制御信号で加振された車輪S1の加速度を計測し(応答計測)、タ−ゲットとの残差を求める(ターゲットとの残差算出)。
ここで、残差が要求される精度に収まっていれば、演算処理部103aは計算を終了し、算出した算出変位量を路面データとして、記憶部103bに記録する。
また、残差が要求される精度に収まっていなければ、演算処理部103aは、応答関数を再度算出し、応答関数を元に変位量の補正を行い(変位量の更新)、加振試験を再度行う。
演算処理部103aは、(制御信号の入力)→(応答計測)→(ターゲットとの残差算出)→(変位量の更新)→(制御信号の入力)→ … を繰り返す事でターゲットとの残差を要求される精度まで小さくしていき、路面データを算出する。
なお、時間軸から周波数軸へ変換する方法として、本実施形態では、フーリエ変換を用いているが、これに限定されるものではない。計測する振動の周波数特性に応じて、ウェーブレット変換等、様々な変換方法を用いることが可能である。
2A 加速度検出手段
2Aa 車輪側加速度センサ
2Ab 車体側加速度センサ
4 演算手段
11,S1 測定対象物
SS 車体
S2 車軸
S3 サスペンション
S3c 車体側固定部
S3d 車輪側固定部
Claims (3)
- 変位する測定対象物の加速度を検出する加速度検出手段と、
該加速度検出手段の出力信号から該測定対象物の変位量を算出する演算手段とを備え、
該演算手段は、
該出力信号を時間軸上から周波数軸上へ変換した後、2階積分を行い、周波数軸上から時間軸上へ逆変換することで、該測定対象物の変位量としての算出変位量を算出し、
該出力信号、該算出変位量から該測定対象物の変位に対する応答関数を求め、
該加速度検出手段によって計測した加速度と該算出変位量から再現した加速度としての再現加速度との残差を算出し、
該応答関数を元に、該残差が要求される精度に収まるまで該算出変位量の補正を繰り返し行い、
該残差が要求される精度に収まった際の該算出変位量を該測定対象物の変位量とする
ことを特徴とする変位計測装置。 - 前記出力信号を時間軸上から周波数軸上へ変換する際に、フーリエ変換を行い、
周波数軸上から時間軸上へ逆変換する際に逆フーリエ変換を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の変位計測装置。 - 前記測定対象物は、
車体を構成する車輪であり、
前記加速度検出手段は、
該車体と、該車輪を軸支する車軸との間に設置されるサスペンションの車体側固定部に設置される車体側加速度センサと、
該サスペンションの車輪側固定部に設置される車輪側加速度センサと
を備え、
前記演算手段は、
該車輪の垂直方向の変位量を算出する
ことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の変位計測装置。
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