JP6629088B2 - 歯科用粘膜調整材 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科治療において口腔粘膜の変形や炎症などを有する義歯装着患者に用いる歯科用粘膜調整材に関する。
義歯使用者が義歯を長期に亘って使用していると、顎堤を形成する歯槽骨の吸収等が原因となり、口腔の形状が次第に変化することが知られている。口腔の形状の変化に起因して義歯床下粘膜と口腔粘膜との適合性が悪化し、義歯が不安定になる。このような義歯をそのまま使用し続けると、義歯床下粘膜に不均一な圧力が加わるため、該粘膜に潰瘍や炎症が発生したり、咬合圧による疼痛が引き起こされたりするようになる。
上記のように、義歯床下粘膜と口腔粘膜との適合性が悪化した場合には、新しい義歯を作製するか、使用中の義歯を裏装するなどして、義歯床下粘膜と口腔粘膜との適合性を回復させる必要がある。
しかし、著しい潰瘍や炎症が発生している口腔粘膜は極めて不安定な状態であるため、新しい義歯の作製や裏装の前に、口腔粘膜が健全な状態になるのを待つ必要がある。
このような場合に使用される材料が、歯科用粘膜調整材(以下、単に「粘膜調整材」ともいう)である。即ち、歯科用粘膜調整材は義歯床下粘膜の形態、色調が正常な状態に回復するまで、使用中の義歯床の粘膜面に裏装して用いられる治療用材料である。即ち、義歯床下粘膜の歪み、圧痕を開放し、各部の被圧変位性に対応した機能的な形態を印記するために、義歯床下粘膜面に用いられる軟性高分子材である。
使用時に粉末と液とを練和する粘膜調整材は、練和直後は流動性の高いペーストとなる。該ペーストは、ペースト中の液状成分が粉末に浸透することによって粘弾性が発現してくる。該ペーストは、流動性のあるうちに義歯床粘膜面に盛り付けて口腔内に挿入し、口腔内で賦形する。
粘膜調整材の使用期間は、口腔粘膜が健全な状態に回復するまでの1週間〜数週間である。その目的からして、粘膜調整材は、咬合時に義歯と口腔粘膜との間から押し出されることなく粘膜面に保持されながらも、柔軟でかつ口腔粘膜の回復に伴う形状変化に追従する程度の微小変形が可能でなければならない。
より詳細には、粘膜調整材を適合不良となった義歯の粘膜面に裏装することで、義歯と口腔粘膜との適合性を回復させて疼痛を緩和させつつ、口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するのを待つ。口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するに伴い、口腔粘膜の形態も経時的に本来あるべき状態へと回復していく。このとき、該粘膜調整材は口腔粘膜の形状変化に合わせて塑性変形する必要がある。なぜならば、粘膜調整材が上記のような形状変化に追従して変形しない場合には、口腔粘膜が回復するに伴って粘膜調整材と口腔粘膜との適合性が失われていくことになり、再度の疼痛を生じる原因となるためである。
特許文献1には、アクリル系又はメタアクリル系(以下、「(メタ)アクリル系」と略記する)の非架橋ポリマーとフタル酸系可塑剤とからなる粘膜調整材が開示されている。特許文献2には、(メタ)アクリル系非架橋ポリマーとフタル酸系可塑剤と有機溶媒とからなる粘膜調整材が開示されている。これらの粘膜調整材は、短期間のうちに可塑剤が溶出して粘弾性が経時的に失われ硬くなり、長期間に亘って使用することができない。
特許文献3には、(メタ)アクリル系非架橋ポリマーと重合開始剤とを含む粉材と、フタル酸系又はセバシン酸系の可塑剤と(メタ)アクリル系モノマーと有機溶媒とを含む液材とからなる粘膜調整材が開示されている。この粘膜調整材は、練和後に一部を重合させるため、可塑剤の溶出は抑制されるが、重合後の粘膜調整材は硬くなり、長期間に亘って使用し難い。さらに、長期間に亘り使用するために十分な強度が得られる程度の(メタ)アクリル系モノマーを配合すると、相対的に可塑剤の割合が減少し、十分な柔軟性が得られず、軟らかさと耐久性の両立が難しい。
特許文献4、5には、(メタ)アクリル系非架橋ポリマーと液状ポリマーと有機溶媒とからなる粘膜調整材が開示されている。この粘膜調整材は、可塑剤として液状ポリマーを用いることにより、粘膜調整材から可塑剤が溶出することを抑制するが、耐久性が十分ではない。
一方、(メタ)アクリレート系重合性単量体は、歯科用硬化性組成物あるいは歯科用接着剤といった歯科材料で使用されており、特に、機械的強度に優れた硬化物が得られる(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、特許文献6、7に例示されるビスフェノールAジグリシジルジ(メタ)アクリレート(Bis−GMA)に代表されるビスフェノールA骨格を有する重合性単量体や、特許文献8、9に例示されるビフェニル骨格を有する重合性単量体が知られている。
重合性単量体の取り扱い性を容易とする観点では、重合性単量体は室温環境下において低粘度の液体あるいは液状物質であることが有利である。たとえば、一般的に多くの場合、重合性単量体は、単独で用いるよりも、種々の使用用途に応じて他の成分と混合した混合組成物として用いられることが多い。このような場合に、重合性単量体が低粘度の液体あるいは液状物質であれば、他の成分とのブレンドも極めて容易である。
しかしながら、特許文献6、7に例示されるBis−GMAは室温環境下において極めて高粘度であり、特許文献8に例示される重合性単量体に至っては、室温環境下において固体である上、機械的強度に劣る。また、特許文献9に例示される重合性単量体は比較的低粘度であるものの、やはり機械的強度に劣る。
特開平03−020204号 特開平02−297358号 特開2002−104913号 特開2006−225281号 特開2009−294362号 特開2007−126417号 特開平09−157124号 特開平05−170705号 特開昭63−297344号公報
本発明が解決しようとする課題は、粉材と液材とを練和する粘膜調整材において、練和時の練和直後の操作性及び取扱い性が高く、かつ十分な厚さで義歯床の粘膜面に層形成でき、長期間に亘って厚さが保持され、さらに引き裂き強度が高く、長期間使用することができる粘膜調整材を提供することにある。
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、下記一般式(1)で示される、硬化物の機械的強度に優れると共に、室温環境下においても低粘度で取扱い性に優れた特定の重合性単量体と重合開始剤を配合することで上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
Figure 0006629088
〔前記一般式(1)中、Xは−O−を表し、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ非置換の芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、m1、m2、n1およびn2は、各々、1〜3の範囲から選択される整数である。〕
上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
〔1〕i)可塑剤、及び下記一般式(1)されるラジカル重合性単量体を含む液材と、ii)(メタ)アクリル系非架橋ポリマーを含む粉材と、に分割して包装、保存されており、重合開始剤が前記i)液材及び前記ii)粉材の双方、又はいずれか一方に含まれ、使用時には両材を混和したペーストとして用いる歯科用粘膜調整材。

Figure 0006629088
〔前記一般式(1)中、Xは−O−を表し、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ非置換の芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、m1、m2、n1およびn2は、各々、1〜3の範囲から選択される整数である。〕
〔2前記一般式(1)におけるおよびLの少なくともいずれかが水酸基を含んでなる前記〔1〕記載の歯科用粘膜調整材。
前記一般式(1)に示すラジカル重合性単量体が下記一般式(2)で示される重合性単量体であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の歯科用粘膜調整材。

Figure 0006629088
〔前記一般式(2)中、X、L、L、RおよびRは、前記一般式(1)中に示すものと同様である。〕
前記可塑剤が質量平均分子量が1000〜10000の範囲にある液状ポリマーである前記〔1〕乃至〔〕の何れかに記載の歯科用粘膜調整材。
前記(メタ)アクリル系非架橋ポリマーのガラス転移温度が0〜60℃の範囲である〔1〕乃至〔〕の何れかに記載の歯科用粘膜調整材。
前記ii)粉材が、無機粉末をさらに含む〔1〕乃至〔〕の何れかに記載の歯科用粘膜調整材。
前記i)液材が、水溶性有機溶媒をさらに含むものであることを特徴とする〔1〕乃至〔〕の何れかに記載の歯科用粘膜調整材。
本発明の粘膜調整材は、初期粘度が低く操作性に優れ、且つ、可塑剤の溶出が抑制され耐久性(引き裂き強度)が向上することで、柔らかさを持続したまま長期間使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の歯科用粘膜調整材(以下、「本粘膜調整材」ともいう)は、以下に説明するi)液材とii)粉材とからなる。本粘膜調整材は、使用時にi)液材とii)粉材とを練和して用いられる。
i)液材
液材は、可塑剤と、下記一般式(1)に示すラジカル重合性単量体と、を含んでなる。
Figure 0006629088
〔前記一般式(1)中、Xは2価の基を表し、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、m1、m2、n1およびn2は、各々、1〜3の範囲から選択される整数である。〕
可塑剤としては、エチルフタレート、ブチルフタレート、オクチルフタレート等のフタル酸エステルや、エチルセバケート、ブチルセバケート、オクチルセバケート等のセバシン酸エステル、及び以下に説明する液状ポリマーが例示される。これらの内、液状ポリマーを用いることが特に好ましい。液状ポリマーを用いることにより、硬化後の歯科用粘膜調整材の柔軟性が高くすることができ、かつ口腔内の使用に際して柔軟性が長く維持される。また、液状ポリマーは義歯床へ移行しないため、義歯床を傷めない。
前記液状ポリマーは、質量平均分子量が1000〜10000であって、分子量500以下のオリゴマーの割合が10質量%以下の非水溶性の液状のポリマーが好ましい。
本発明において液状とは、室温〜口腔内温度、即ち18〜40℃で液状であることをいう。該温度範囲内で液状でない場合には、粉材との練和ができなかったり、粘膜調整材がペーストにならなかったり、適度な粘弾性が得られなかったりする。
本発明において非水溶性とは、平均的な口腔内温度である37℃における水に対する溶解度が5質量%以下であることをいう。本発明において、液状ポリマーの水に対する溶解度は3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
液状ポリマーの質量平均分子量が1000未満の場合や水溶性の可塑剤の場合、粘膜調整材使用時に該可塑剤が口腔内で溶出して、短時間で粘膜調整材の粘弾性や柔軟性が失われる場合がある。液状ポリマーの質量平均分子量が10000を超える場合、適度の柔軟性を付与することができず、粘膜調整材として使用することが困難になる場合がある。練和性が良好な液状ポリマーの質量平均分子量は1200〜7000であり、1500〜5000であることがより好ましい。
一般的に、液状ポリマーは分子量が大きくなるほど、他の成分との相溶性が低下する傾向にある。そのため、液状ポリマーの分子量分布は、分子量が10000を越える部分が10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。また、分子量が500以下の液状ポリマーは口腔内で溶出しやすく、義歯床への移行も起きやすいため、長期間使用することが困難になる場合がある。従って、液状ポリマーの分子量分布は、分子量が500以下の部分が10質量%未満であることが好ましく、7質量%未満であることがより好ましい。
当該液状ポリマーの材質は特に限定されないが、前記粉材に配合される(メタ)アクリル系非架橋ポリマー粒子との親和性がよく、練和性や得られるペーストの各種物性に優れる点で、(メタ)アクリル系の液状ポリマーが好ましい。この内、上記分子量の範囲の液状のポリマーが得られ易い点で、(メタ)アクリル酸エステル系(以下、「(メタ)アクリレート系」ともいう)のポリマーが特に好ましい。
なお、液材に配合される(メタ)アクリル系の液状ポリマーは、平均分子量が上記範囲に限定され、かつその性状が液状である点で、粉材に配合されるa)(メタ)アクリル系非架橋ポリマーとは異なる。
質量平均分子量が1000〜10000の液状ポリマーは、一般的な重合反応によって得ることができる。即ち、モノマーと重合開始剤との配合比を制御することで、所望の平均分子量を有する液状ポリマーを得ることができる。平均分子量の制御が容易なイオン重合やリビングラジカル重合が好適に用いられる。特に、アニオン重合によれば、分子量分布が非常にシャープで、質量平均分子量/数平均分子量が2以下の単分散に近いポリマーを得ることができる。また、分子量500以下のポリマーの含有量を少なくすることが容易である。
例えば、(メタ)アクリル系モノマー又は(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、質量平均分子量1000〜10000の範囲となるように重合させればよい。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、炭素数が1〜10のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。
中でも、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートより1種選んで重合させたホモポリマー、若しくはこれらのうちの2種又はそれ以上の種類のモノマーを重合させたコポリマーが特に好適に使用される。これらの液状ポリマーは、粉材に用いられる前記(メタ)アクリル系非架橋ポリマーとの相溶性が良好である。
また、(メタ)アクリレート系のモノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。この場合、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート系モノマーと、1種又はそれ以上のその他の共重合可能なモノマーと、を共重合させて得られるコポリマーを用いることが可能である。溶解性、膨潤性の面から前記(メタ)アクリレート系モノマーに由来するモノマー単位を50モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましい。
好ましい液状ポリマーの具体例としては、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリ{2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−メトキシエチル(メタ)アクリレート}、ポリ{エチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート}、ポリ{ブチル(メタ)アクリレート−メトキシエチル(メタ)アクリレート}、ポリ{ブチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレート}が挙げられる。
液状ポリマーは、分子量分布の異なる2種以上のポリマーを併用してもよい。さらに、ポリマーを構成する単量体単位の種類や割合の異なる2種以上の液状ポリマーを併用してもよい。
液材に含まれるラジカル重合性単量体は下記一般式(1)で示される。
Figure 0006629088
ここで、一般式(1)中、Xは2価の基を表し、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、m1、m2、n1およびn2は、各々、1〜3の範囲から選択される整数である。なお、一般式(1)に示される重合性単量体は、2種類以上の異性体を含む異性体混合物であってもよい。
本実施形態の重合性単量体は、硬化物の機械的強度に優れると共に、室温環境下においても低粘度であるため取扱い性に優れる。このような効果が得られる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推定している。まず、硬化物の機械的強度に優れる理由は、分子の中心部分に、剛直性の高い芳香族基を含む構造(Ar−X−Ar)を有するためであると考えられる。
また、室温環境下においても低粘度を示す理由としては、まず、分子中心部の構造として、ビフェニル構造などのように、芳香族基Arと芳香族基Arとがσ結合を介して直接結合した構造(Ar−Ar)ではなく、芳香族基Arと芳香族基Arとを2価の基Xを介して結合させた構造(Ar−X−Ar)を採用したことが挙げられる。構造(Ar−Ar)は分子構造の対称性が高いため結晶化し易いものの、このような構造に2価の基Xをさらに導入した構造(Ar−X−Ar)では、分子構造の柔軟性が増大して対称性が低下するため、結果的に結晶性を低下させて低粘度化するものと考えられる。これに加えて、本実施形態の重合性単量体では、芳香族基Ar、Arに接続されたエステル結合が粘度の低下に大幅に寄与しているものと考えられる。
また、上述したように、構造(Ar−Ar)よりも、構造(Ar−X−Ar)がの方が分子構造の柔軟性がより大きい。このため、本実施形態の重合性単量体は、分子中心部に構造(Ar−Ar)を導入した重合性単量体と比べると、硬化物が脆くなり難く、曲げ強度にも優れる。
次に、一般式(1)に示す重合性単量体についてより詳細に説明に説明する。まず、一般式(1)中、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよい。
芳香族基Ar、Arの具体例としては、下記構造式Ar−a1〜Ar−a3に示す2価〜4価のベンゼン、下記構造式Ar−a4〜Ar−a6に示す2価〜4価のナフタレン、あるいは、下記構造式Ar−a7〜Ar−a9に示す2価〜4価のアントセランが挙げられる。なお、これら構造式中、結合手は、芳香族基Ar、Arを構成するベンゼン環の任意の炭素(但し、ベンゼン環とベンゼン環との縮合部を形成する炭素を除く)に設けることができる。たとえば、構造式Ar−a1(2価のベンゼン)であれば、2本の結合手は、オルト位、メタ位、あるいは、パラ位のいずれかに設けることができる。
Figure 0006629088

なお、芳香族基Arの価数は、m1の数に応じて決定され、m1+1で表される。同様に、芳香族基Arの価数は、m2の数に応じて決定され、m2+1で表される。
また、芳香族基Ar、Arは、各々、置換基を有していてもよく、この場合、芳香族基Ar、Arを構成するベンゼン環の水素を他の置換基に置き換えることができる。芳香族基Ar、Arの置換基としてはその末端に一般式(1)の左辺に示される反応性基(すなわち、アクリル基またはメタクリル基)を含まないものであれば特に限定されず、置換基を構成する原子の総数(原子数)が1〜60の範囲内のものを適宜選択できる。具体的には、炭素数1〜20の1価の炭化水素基や、−COOR、−OR、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基などを挙げることができる。なお、Rは、炭素数1〜20の1価の炭化水素基と同様である。また、炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基等の直鎖状または分岐状の炭化水素基、シクロヘキシル基等の脂環炭化水素基、フェニル基、1価のフランなどの複素環基などを挙げることができる。
Xは2価の基を表し、具体的には、下記構造式X−1〜X−13に例示されるような芳香族基Arと芳香族基Arとを架橋する主鎖の原子数が1〜3の2価の基である。
Figure 0006629088

なお、2価の基Xの主鎖の原子数は1または2がより好ましく、1が最も好ましい。また、2価の基Xは、芳香族基Ar(あるいはAr)とこれに接続されたエステル結合とからなるベンゾエート構造(電子吸引基)に対して電子を供与できる電子供与性基であることが好ましい。このような電子供与性の2価の基Xとしては、−O−、−CH−、−CH(R)−あるいは−S−が挙げられ、これらの中でも−O−あるいは−CH−がより好ましく、−O−が特に好ましい。ここで、Rは、炭素数1〜6のアルキル基である。電子供与性の2価の基Xでは、下記共鳴構造式に例示するような共鳴構造を取り得るため、分子中央部の極性が比較的高くなる。このため、極性の高い親水性材料との親和性をより向上させることができ、結果的に、親水性材料との相溶性を向上させたり、親水性の表面に対する親和性・接着性を向上させることが容易になる。なお、下記共鳴構造式は、2価の基Xが−O−であり、芳香族基Ar、Arがフェニレン基(但し、2本の結合手はパラ位に設けられる)である場合における本実施形態の重合性単量体の分子中央部について示したものである。
Figure 0006629088
およびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよい。なお、主鎖の原子数は2〜12の範囲内が好ましく、2〜10の範囲内がより好ましく、2〜6の範囲内がさらに好ましく、2〜3の範囲内が特に好ましい。特に主鎖の原子数を2〜3の範囲内とした場合には、硬化物の曲げ強度をより高めることが容易になる。
なお、主鎖を構成する原子は、基本的には炭素原子から構成され、全ての原子が炭素原子であってもよいが、主鎖を構成する炭素原子の一部をヘテロ原子に置き換えることもできる。このヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子を挙げることができる。なお、主鎖がヘテロ原子として酸素原子を含む場合、主鎖中には、エーテル結合またはエステル結合を導入することができる。主鎖に導入できるヘテロ原子の数は、主鎖の原子数の約半分以下とすることが好ましく、主鎖の原子数が2の場合、主鎖に導入できるヘテロ原子の数は1つである。
また、主鎖を構成する原子のうち、少なくともいずれか1つの原子(通常は炭素原子)には、置換基が結合していてもよい。このような置換基としては、メチル基等の炭素数1〜3のアルキル基、水酸基、水酸基を有する1価の炭化水素基、ハロゲン、−COOR、−ORなどを挙げることができる。なお、Rは、炭素数1〜3のアルキル基と同様である。また、水酸基を有する1価の炭化水素基は、その炭素数が1〜3の範囲が好ましく、1〜2の範囲がより好ましい。水酸基を有する1価の炭化水素基の具体例としては、−CHOH、−CHCHOH、−CH(CH)OHなどが挙げられる。
なお、親水性材料との相溶性を向上させたり、親水性の表面に対する親和性を向上させたい場合には、LおよびLの少なくともいずれかが水酸基を含む、言い換えれば、LおよびLの少なくともいずれかにおいて、その置換基は水酸基および/または水酸基を有する1価の炭化水素基であることが好ましい。なお、LおよびLの各々に含まれる水酸基の数は、少なくとも1つ以上であればよいが、通常は、1つであることが好ましい。また、水酸基は、LおよびLの各々に1つ含まれることがより好ましく、この場合において、m1、m2=1であれば分子内には2つの水酸基が含まれることになる。
なお、一般的に、分子内に複数の水酸基を有する化合物は、分子間水素結合を形成し、結果として粘度が上昇し易い。それゆえ、本実施形態の重合性単量体が分子内に水酸基を有する場合も、粘度が上昇し易い傾向がある。しかし、芳香族基Ar、Arに直接結合するエステル結合の近傍に水酸基が存在する場合は、比較的粘度の上昇が抑えられるため、より好ましい。ここで、“エステル結合の近傍に水酸基が存在する場合”とは、具体的には、LおよびLのいずれかまたは双方が水酸基を有する場合において、水酸基を有するLおよびLの主鎖の原子数が2〜10の範囲を意味し、主鎖の原子数は特に好ましくは2〜3の範囲であるなお、上述した効果が得られる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
芳香族基Ar、Arに直接結合するエステル結合の近傍に水酸基が存在する場合、下記にされる構造式に示すように2価の基L、Lに存在する水酸基の水素が芳香族基Ar、Arに直接結合するエステル結合のカルボニル基の酸素との間に分子内水素結合を形成し易いと予想される。なお、下記に例示される構造式は、一般式(1)中において、Ar、Ar=フェニレン基、X=−O−、L、L=−CHCH(OH)CH−、R、R=メチル基、m1、m2、n1およびn2=1とした例である。
Figure 0006629088
すなわち、分子内水素結合が形成された場合、分子間水素結合の形成が抑制されることになる。このため、本実施形態の重合性単量体において、分子内に水酸基が含まれない場合を基準とすると、分子内に水酸基を含む場合には、粘度は増大するものの、従来の分子内に水酸基を有する重合性単量体(Bis−GMAなど)と同程度の粘度まで、粘度が著しく増大することは抑制される。
これに加えて、分子間水素結合が形成されない状態を基準とした場合と比べて、分子内水素結合が形成された場合では、芳香族基Ar、Arを構成するベンゼン環とこれに直接結合するエステル結合とからなるベンゾエート構造に歪みが生じて、分子中心部分の分子構造の対称性が低下する。それゆえ、分子の結晶性が低下して、粘度の著しい増大がさらに抑制されると考えられる。なお、分子内水素結合の形成は、分子間の結合を弱めるため、硬化物の機械的強度の低下を招くおそれもある。しかし、本実施形態の重合性単量体が、芳香族基Ar、Arに直接結合するエステル結合の近傍に水酸基を有する場合、水酸基は、より正確には、分子間水素結合よりも分子内水素結合に寄与する度合いが相対的により高くなっていると考えられ、分子間の緩やかな水素結合ネットワークの形成にも寄与していると考えられる。さらに、LおよびLの双方が水酸基を有する場合などのように、分子内に複数の水酸基が含まれる場合には、分子間で密度の高い水素結合ネットワークを形成し易くなる。この場合、分子内に水酸基を有さない本実施形態の重合性単量体と比べて、硬化物の機械的強度をより高くできると考えられる。
、Lの具体例としては、n1、n2=1の場合(L、Lが2価の炭化水素基の場合)において、下記構造式L−b1〜L−b14を挙げることができる。なお、これらの構造式中に示す2つの結合手のうち、*の付された結合手は、分子中心部のベンゾエート構造を構成するエステル結合の酸素原子に結合する結合手を意味する。ここで、下記構造式L−b1〜L−b14中、aは1〜11の範囲から選択される整数を表し、bは1〜19の範囲から選択される整数を表し、cは0〜11の範囲から選択される整数を表し、dは0〜5の範囲から選択される整数を表し、eは2〜5の範囲から選択される整数を表し、fは1〜6の範囲から選択される整数を表す。なお、a〜fの値は、構造式L−b1〜L−b14において、主鎖の原子数が12以下となる範囲で選択されることが好ましい。
Figure 0006629088
Figure 0006629088
一方、n1、n2=2の場合(L、Lが3価の炭化水素基の場合)は、構造式L−b1〜L−b14において、主鎖を構成する炭素原子のうち、*の付された結合手を持つ炭素原子から最も離れた位置の炭素原子が2本の結合手を有する。また、n1、n2=3の場合(L、Lが4価の炭化水素基の場合)は、構造式L−b1〜L−b2、L−b6〜L−b8、L−b10〜L−b14において、主鎖を構成する炭素原子のうち、*の付された結合手を持つ炭素原子から最も離れた位置の炭素原子が3本の結合手を有する。
なお、一般式(1)で示される重合性単量体は、下記一般式(2)で示される重合性単量体であることが特に好ましい。なお、一般式(2)は、一般式(1)において、m1、m2、n1、n2=1、Ar、Ar=−C−(構造式Ar−a1)とした場合の構造を示すものである。
Figure 0006629088
また、本実施形態の重合性単量体は、下記一般式(3)に示される重合性単量体であることが好ましい。ここで、一般式(3)中、Xは、一般式(1)に示すものと同様であり、ArおよびArは、価数が2価のみを取りえることを除いて一般式(1)中に示すものと同様であり、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が1〜8の範囲内の2価の炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、jは0、1または2であり、kは0、1または2であり、j+k=2である。なお、一般式(3)は、一般式(1)において、m1、m2、n1、n2=1、L=−L−CH(OH)CH−または−CH(CHOH)−L−、L=−L−CH(OH)CH−または−CH(CHOH)−L−、RはRまたはRに対応し、RはRまたはRに対応する、とした場合の構造(2官能型構造)を示すものである。また、一般式(3)中、左右両側の括弧内に示す基は、中央に示す基;−Ar−X−Ar−の2つの結合手のいずれに対しても結合可能である。すなわち、jおよびkの値に応じて、一般式(3)中の左側の括弧内に示す基が、中央に示す基の両側に結合する場合もあれば、一般式(3)中の右側の括弧内に示す基が、中央に示す基の両側に結合する場合もある。
Figure 0006629088
なお、LおよびLにおいて、主鎖を構成する原子は、基本的には炭素原子から構成され、全ての原子が炭素原子であってもよいが、主鎖を構成する炭素原子の一部をヘテロ原子に置き換えることもできる。このヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子を挙げることができる。なお、主鎖がヘテロ原子として酸素原子を含む場合、主鎖中には、エーテル結合またはエステル結合を導入することができる。主鎖に導入できるヘテロ原子の数は1つまたは2つが好ましい。但し、主鎖の原子数が2の場合、主鎖に導入できるヘテロ原子の数は1つである。
また、LおよびLにおいて主鎖の原子数は、1〜8であればよいが、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が最も好ましい。LおよびLの具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基などのような主鎖の炭素数1〜8のアルキレン基や、当該アルキレン基の主鎖の一部または全部をエーテル結合あるいはエステル結合(但し、アルキレン基の主鎖の原子数が2以上の場合に限る)に置換した基などが挙げられる。
一般式(3)に示す値j、kの組み合わせ(j、k)としては、(2、0)、(1、1)および(0、2)が挙げられるが、これらの中でも重合性単量体分子の分解の抑制が期待できる観点から(1、1)および(0、2)がより好ましい。
また、本実施形態の重合性単量体は、一般式(3)に示す値j、kの組み合わせ(j、k)が、(2、0)、(1、1)および(0、2)からなる群より選択されるいずれか2種類以上の構造異性体を含むものであることが好ましい。重合性単量体が、一般式(3)に示す(j,k)の組み合わせについて、2種類以上の構造異性体を含むものである場合、硬化物の機械的強度と、保存安定性とをバランスよく向上させることが容易となる。この場合、全ての重合性単量体分子における値kの平均値が0.05以上2.0未満の範囲(言い換えれば値jの平均値が0を超え1.95以下の範囲)であることが好ましい。さらに、値kの平均値の下限は0.1以上であることが好ましく、値kの平均値の上限は、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、0.4以下であることが特に好ましい。なお、硬化物の機械的強度と、保存安定性とをバランスよく向上させるためには、値k=2(構造異性体を含まない状態)も、値kの平均値が0.05以上2.0未満の範囲とした場合と同様に好適である。但し、値k=2(構造異性体を含まない状態)よりも、2種類以上の構造異性体を含む状態の方が、一定の保存期間を経ない初期状態での機械的強度をより高くすることができる。この点では、値kの平均値が0.05未満とならない範囲で、値kの平均値は小さい方がより有利である。
本実施形態の重合性単量体は、公知の出発原料および公知の合成反応法を適宜組み合わせて合成することができ、その製造方法は特に限定されるものではない。たとえば、一般式(3)に示す重合性単量体を製造する場合、下記一般式(4)に示す化合物と、下記一般式(5)に示す化合物とを反応させる反応工程を少なくとも含む製造方法を利用してもよい。この場合、下記一般式(6)〜(8)に示す化合物からなる群より選択される2種類以上の構造異性体を含む重合性単量体を製造することができる。
Figure 0006629088
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Figure 0006629088
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ここで、一般式(4)〜(8)中、X、ArおよびAr、は一般式(3)中に示すものと同様であり、Lは主鎖の原子数が1〜7の2価の炭化水素基を表す。また、pは0または1である。ここで、値kの平均値、言い換えれば、一般式(6)〜(8)に示される構造異性体の存在比率は、合成条件を適宜選択することにより容易に調整することができる。また、必要に応じて合成後に精製処理を行うことで、値kの平均値(一般式(6)〜(8)に示される構造異性体の存在比率)を所望の値により近づくように調整してもよい。
一般式(4)〜(8)に示すLにおいて、主鎖を構成する原子は、基本的には炭素原子から構成され、全ての原子が炭素原子であってもよいが、主鎖を構成する炭素原子の一部をヘテロ原子に置き換えることもできる。このヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子を挙げることができる。なお、主鎖がヘテロ原子として酸素原子を含む場合、主鎖中には、エーテル結合またはエステル結合を導入することができる。主鎖に導入できるヘテロ原子の数は1つまたは2つが好ましい。但し、主鎖の原子数が2の場合、主鎖に導入できるヘテロ原子の数は1つである。
また、Lにおいて主鎖の原子数は、1〜7であればよいが、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。LおよびLの具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基などのような主鎖の炭素数1〜7のアルキレン基や、当該アルキレン基の主鎖の一部または全部をエーテル結合あるいはエステル結合(但し、アルキレン基の主鎖の原子数が2以上の場合に限る)に置換した基などが挙げられる。
一般式(6)において、各々のLは同一であってもよく、異なっていてもよい。これは、一般式(7)および(8)においても同様である。なお、各々のLを互いに異なるものとする場合には、合成に用いる一般式(5)に示す化合物として、Lが互いに異なる2種類以上の化合物を用いることができる。また、pは0であることが好ましい。
なお、必要であれば、上述した製造方法により2種類以上の構造異性体を含む重合性単量体を得た後、構造異性体を実質的に含まない重合性単量体(たとえば、一般式(6)に示す重合性単量体)のみを単離精製してもよい。しかしながら、単離精製して得られる重合性単量体は、単離精製処理前の2種類以上の構造異性体を含む重合性単量体と比べると、硬化物の機械的強度と、保存安定性との両立という点で劣る傾向にある。これに加えて、重合性単量体の製造に際して、さらに単離精製処理が必要となるため、コスト面でも不利になり易い。よって、これらの観点からは、単離精製処理は省略することが好ましい。
上記ラジカル重合性単量体の配合量は、可塑剤100質量部に対して、引き裂き強度向上の観点から1質量部以上であることが好ましく、組成物の取り扱い性や粘膜調整材としての柔軟性付与の観点から30質量部以内であることが好ましく、特に良好な操作感と耐久性を得ることができる3〜20質量部が特に好ましい。
本発明の粘膜調整材における液材には、本発明の効果を妨げない範囲で、一般式(1)に示す重合性単量体以外のラジカル重合性単量体を配合してもよい。ラジカル重合性単量体としては一般に歯科材料で使用可能な公知のものが使用できる。具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルプロピオネート等の単官能性(メタ)アクリル系重合性単量体、2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン)、およびこれらのメタクリレートに対応するアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二官能性(メタ)アクリル系重合性単量体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の三官能性(メタ)アクリル系重合性単量体等が挙げられる。
上記重合性単量体の配合量は、可塑剤100質量部に対して、粘膜調整材としての柔軟性付与の観点から一般式(1)に示す重合性単量体との合計量が30質量部以内であることが好ましい。また、引き裂き強度向上の観点から一般式(1)に示す重合性単量体と上記その他の重合性単量体との比が8/2〜10/0であることが好ましい。
本発明の粘膜調整材における液材には、さらに水溶性有機溶媒が配合されていることが好ましい。水溶性有機溶媒を配合することにより、液材の流動性が向上して取り扱いやすくなる。また、粉材と液材とを混合、練和する際の操作性が向上する。さらには、粉材と液材とを混合した後の組成物の初期流動性が向上する。これは、水溶性有機溶媒を配合することにより、上記可塑剤が、粉材に配合される(メタ)アクリル系非架橋ポリマーを溶解したり膨潤させたりする際における可塑剤の浸透しやすさ、なじみやすさ等を向上させるためであると考えられる。なお、本発明の粘膜調整材は、比較的長期に渡って口腔内で使用されるものであるため、人体への有害性が懸念される非水溶性有機溶媒は好ましくない。
水溶性有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類が例示される。特に生体への為害性、臭気等の面からエタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類が好ましく、エタノールが特に好ましい。
上記水溶性有機溶媒の配合量は、本発明の効果を害さない範囲であれば特に制限はないが、可塑剤100質量部に対して、上記操作性向上の観点から1質量部以上が好ましく、組成物の取り扱い性や組成物から有機溶媒が溶出した後における組成物の物性変化の観点から30質量部以下であることが好ましく、特に良好な操作感を得ることができる3〜20質量部であることが特に好ましい。
ii)粉材
粉材は(メタ)アクリル系非架橋ポリマーを含んでなる。
(メタ)アクリル系非架橋ポリマーとしては、重合性基としてアクリル基又はメタクリル基を有する重合性単量体(以下、(メタ)アクリル系単量体)を単独重合させて得られるホモポリマー、2種以上の異なる(メタ)アクリル系単量体を共重合させて得られるコポリマー、及び(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系単量体以外の重合性単量体とを共重合させて得られるコポリマー(ただし、(メタ)アクリル系単量体に基づく単量体単位の割合は50mol%以上)が挙げられる。(メタ)アクリル系のポリマーは、(メタ)アクリル系義歯床とのなじみがよく、適度な粘弾性を得やすい。
また、本粘膜調整材は粉材と液材とを練和して得られる組成物が適度の粘性を有するペースト状になることが必要である。よって、(メタ)アクリル系非架橋ポリマーは、液材成分に溶解可能な非架橋ポリマーである必要がある。
(メタ)アクリル系単量体を単独重合させて得られるホモポリマーとしては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(イソ‐プロピルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(ジシクロペンテニルアクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ウレタンアクリレート)、ポリ(ベンジルアクリレート)、ポリ(4−ブトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ{3−クロロ−2,2−ビス(クロロメチル)プロピルアクリレート}、ポリ(2−クロロフェニルアクリレート)、ポリ(4−クロロフェニルアクリレート)、ポリ(4−メトキシフェニルアクリレート)、ポリ(2,4−ジクロロフェニルアクリレート)、ポリ(シクロヘキシルアクリレート)、ポリ(シクロドデシルアクリレート)、ポリ(2−メトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ(3−メトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ(2−エトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ(3−エトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ(4−エトキシカルボニルフェニルアクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロ−2−プロピルアクリレート)、ポリ(ヘキサデシルアクリレート)、ポリメチルアクリレート、ポリネオペンチルアクリレート、ポリフェニルアクリレート、ポリ(m−トリルアクリレート)、ポリ(o−トリルアクリレート)、ポリ(p−トリルアクリレート)、ポリ(N−ブチルアクリルアミド)、ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(i−ブチルメタクリレート)、ポリ(ネオペンチルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(オクタデシルメタクリレート)、ポリ(3−オキサブチルメタクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ブチルブトキシカルボニルメタクリレート)、ポリ(1H,1H−ヘプタフルオロブチルメタクリレート)、ポリ(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート)、ポリ(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート)が例示される。
(メタ)アクリル系単量体のみを共重合させるコポリマーとしては、ポリ(メチルメタクリレート‐エチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート‐n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソ‐プロピルメタクリレート‐ブチルアクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート‐ブチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート‐ブチルアクリレート)、ポリ(ウレタンアクリレート‐メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート−n−ブチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)、ポリ(i−ブチルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート)が例示される。
(メタ)アクリル系単量体と他の重合性単量体とを共重合させるコポリマーとしては、ポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−エチルメタクリレート)ポリ(スチレン−n−ブチルメタクリレート)が例示される。
これらのコポリマー(共重合体)は、前記条件を満たす限り、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体等の如何なる共重合体でもよい。
上記の(メタ)アクリル系非架橋ポリマーのなかでも、溶解性や取扱いの容易さ等の点で、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートのような(メタ)アクリル酸エステル系のモノマー単位で構成される非架橋ポリマーが好ましい。
(メタ)アクリル系非架橋ポリマーは、Tg(ガラス転移温度)が0〜60℃であることが好ましく、10〜50℃であることが特に好ましい。Tgが0℃未満のポリマーは、室温(使用前の粘膜調整材が保存される環境温度である18〜35℃程度)で粉材を保存する間に、該非架橋ポリマー粒子同士が極めて強く凝集するため、液材と練和して得られる組成物がペースト状にならない場合がある。Tgが60℃を超えるポリマーは、液材と練和して得られる組成物が硬くなり、粘膜調整材に適度の柔軟性を付与できない場合がある。なお、本発明において適度の柔軟性とは、ショアA硬度が20以下であることを意味する。
上記の(メタ)アクリル系非架橋ポリマーは、粉末状であればその形状及び大きさは特に限定されないが、粉材としての取扱い易さ(流動性、凝集性)や、液材との混合・練和性などの点から、体積平均粒子径が0.1〜100μmであることが好ましく、1〜90μmであることがより好ましく、5〜50μmであることが特に好ましい。
上記の(メタ)アクリル系非架橋ポリマーは、粉末状であればその平均分子量や分子量分布は特に限定されないが、合成又は入手の容易性、及び液材と練和して得られるペーストの操作性の観点から、質量平均分子量が2万〜500万のものが好ましく、5万〜100万のものがより好ましい。
なお、本明細書において質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある)により測定される標準ポリスチレン換算分子量をいう。
本粘膜調整材に配合される(メタ)アクリル系非架橋ポリマーは、該ポリマーを構成するモノマーの種類及び割合、並びに平均分子量及び分子量分布、並びに平均粒子径等が異なる2種以上の粉末状ポリマーを併用してもよい。
さらに本発明の歯科用粘膜調整材におけるii)粉材には、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、無機粉末を加えてもよい。無機粉末を加えることにより、最終的な組成物の粘弾性などを調整することができる。即ち、無機粉末が配合されることにより、最終的な硬度が高くなる。従って、得られる粘膜調整材の硬度が柔らかくなりすぎる場合には、無機粉末を加えて適切な所望の硬度にすることができる。一般的には、無機粉末の配合量は、(メタ)アクリル系非架橋ポリマー100質量部に対して、5質量部以下、より好適には2質量部以下に留めるのが望ましい。
このような無機粉末の種類は特に制限されるものではなく、一般的な樹脂組成物に添加されている補強材、充填材の中から選択することが可能である。具体的に例示すると、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硅石粉末、ガラス粉末、珪藻土、シリカ、珪酸カルシウム、タルク、アルミナ、ベントナイト、ゼオライト、カオリンクレー、マイカ、石英ガラスなどが挙げられる。取扱の容易さ、液材とのなじみ、唾液への溶解性(溶出)等の観点からシリカやアルミナが好適に用いられる。
これら無機粉末の粒径は特に限定されるものではないが、保存安定性、練和性等の観点から体積平均粒子径が1μm以下のものが好ましく、0.1μm以下のものがより好ましい。このような粒径の無機粒子の入手の容易さ等を考慮すると、ヒュームドシリカが最も好ましい。むろん、材質や平均粒径等の異なる2種以上の無機粉末を併用しても構わない。なお、粉材には、架橋ポリマーも本発明の効果に影響しない少量であれば配合しても一向に構わない。
i)液材及びii)粉材の双方、又はいずれか一方に含まれる重合開始剤としては、i)液材に含まれる一般式(1)で示される重合性単量体を重合、硬化させることができるものであれば何ら制限なく使用可能であり、公知の重合開始剤が使用可能である。例えば、歯科分野で用いられるラジカル重合開始剤としては、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)、光重合開始剤、熱重合開始剤等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合開始剤及び/又は光重合開始剤が好ましい。
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物系のものが代表的である。
このような化学重合開始剤として使用される有機過酸化物の代表的なものには、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートなどがあり、具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノパーオキサイド、P−メタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等を例示することができる。
これら有機過酸化物の好適な使用量は、用いられる有機過酸化物の種類によって異なるため一概に限定できないが、一般式(1)で示される重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の範囲である。
また、これら有機過酸化物と接触してラジカルを発生させるための第3級アミンとしては公知の化合物が特に制限されず使用される。好適に使用される第3級アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N−メチル,N−β−ヒドロキシエチルアニリン等のアニリン類、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジプロピル−p−トルイジン、N,N−ジブチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、p−トリルジプロパノールアミン等のトルイジン類、N,N−ジメチル−アニシジン、N,N−ジエチル−p−アニシジン、N,N−ジプロピル−p−アニシジン、N,N−ジブチル−p−アニシジン等のアニシジン類、N−フェニルモルフォリン、N−トリルモルフォリン等のモルフォリン類、ビス( N,N−ジメチルアミノフェニル)メタン、ビス(N,N−ジメチルアミノフェニル)エーテル等が挙げられる。これらのアミン化合物は、塩酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸などとの塩として使用してもよい。上記第3級アミン化合物の内、重合活性が高く、なおかつ低刺激、低臭という観点から、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジプロピル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン、p−トリルジプロパノールアミンが好適に使用される。
第3級アミン化合物の使用量は一般式(1)で示される重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0 .05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の範囲である。
上記、有機過酸化物と第3級アミン化合物の組合せのうち、好適なものを具体的に例示すると、BPO/N,N−ジエチル−p−トルイジン、BPO/N,N−ジプロピル−p−トルイジン、BPO/p−トリルジエタノールアミン、BPO/p−トリルジプロパノールアミン等の組合せが挙げられる。中でも、第3級アミン化合物をラジカル重合性単量体と混合した状態で長期保存が必要となる場合には、保存安定性の観点からBPO/N, N−ジエチル−p−トルイジン、BPO/N,N−ジプロピル−p−トルイジンの組合せが最も好ましい。
このような有機過酸化物とアミン化合物からなる化学重合開始剤にさらに、ベンゼンスルフィン酸やp−トルエンスルフィン酸及びその塩などのスルフィン酸、或いは5−ブチルバルビツール酸などのバルビツール酸系開始剤を配合しても何ら問題なく使用できる。
また、光重合開始剤としてはα-ジケトン−還元剤、ケタール−還元剤、チオキサントン−還元剤などの公知の開始剤系が好ましく用いられる。A−ジケトンとしてはカンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタジオン、3,4−ヘプタジオンなどを挙げることができる。ケタールとしてはベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)などを挙げることができる。チオキサントンとしてはチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどを挙げることができる。光重合開始剤の一成分としての還元剤は、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N−メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン類、ラウリルアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどのアルデヒド類、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸、チオ安息香酸などを挙げることができる。
これら光重合開始剤の好適な使用量は、用いられる光重合開始剤の種類によって異なるため一概に限定できないが、一般式(1)で示される重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部の範囲である。
上記、有機過酸化物と第3級アミン化合物は、それぞれi)液材とii)粉材に分けて使用されるが、どちらにどちらを使用してもよく、取り扱い性の観点からi)液材に有機過酸化物を、ii)粉材に第3級アミン化合物を配合することが好ましい。光重合開始剤を使用する場合は、i)液材とii)粉材とに分けて使用、もしくはいずれか一方に使用しても良い。また、化学重合開始剤と光重合開始剤とを合わせて使用しても良い。
本発明の粘膜調整材において、粉材と液材との混合比は、特に制限されるものではないが、(メタ)アクリル系非架橋ポリマー100質量部に対して、液材に配合される可塑剤が50〜300質量部となる範囲が好ましい。また、粉材と液材との割合に大きく差があると、双方を混合してもペーストとならない場合がある。そのため、粉材と液材とが質量比で粉/液=0.5〜2.5であることが好ましく、使用時の計量や混合も容易である観点からは、質量比で粉/液=0.8〜2.0程度であるのがより好ましい。また、粉材と液材との練和は、両者が均一なペーストになるまで行えば良いが、通常は5〜100秒の範囲で均一化する。
本発明の歯科用粘膜調整材には、上記各成分に加えて、必要に応じ、染料、顔料等の着色材料、香料、抗菌剤、防黴剤等を配合してもよい。
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例における各種物性の評価方法は以下の通りである。
(1)ガラス転移点(Tg)の測定方法
Tgは示差走査熱量測定装置(DSC6200/セイコー社製)を用いて測定した。およそのTgよりも30℃ほど高温まで10℃/分で初期昇温を続け、そこで5分間保持後、50℃/分で降温した。次いで直ちに最昇温して得られたシグナルにおいて得られる3本の接線の交点の温度を求め、それらの中間の温度をTgとした。
(2)練和時間の測定方法
予め液材を計りとっておいたラバーカップに、1.1質量倍の粉材を加えて練和を開始し、加えた粉材が液材になじみ均一なペースト状になるまでスパチュラで練和し続けた。練和開始から均一なペーストが得られるまでの時間を計測し、練和時間とした。
(3)練和時の初期粘度測定方法
動的粘弾性測定装置CSレオメーター「CVO120HR」(ボーリン社製)を用いて測定した。直径20mm、1°コーンを使用し、測定温度(プレート温度)23℃、ショアレート10(1/sec)の条件で測定した。上記(3)練和時間の測定方法に記載した方法で練和し、均一なペーストが得られた時点(練和時間)から30秒後の粘度を測定した。なお、おいて操作に十分な余裕を持たすためには、初期粘度を300Pas以下に抑えられることが望ましい。
(4)稠度の測定方法
JIS−T6519(義歯床用短期弾性裏装材)に基づいて測定した。測定は、(3)練和時間の測定方法に記載した方法で練和し、試料2mlを計量し、1枚のガラス板上に置いた。混和終了から30秒後に、この試料の上にもう1枚カバーガラス板(100g)を静かに乗せ、直ちに試料を37℃に保ったインキュベーターに入れた。混和終了から120秒後にカバーガラス板の上に1000gのおもりを静かに垂直に乗せ、60秒後におもりを除いた。混和終了から8分後に広がった試料の平行接線間の最大部と最小部の長さを測定し、その平均値を求め、稠度とした。この測定時点での稠度が小さい(目安60以下)ことは、粉材と液材とを練和して得たペーストを義歯床粘着面に盛り口腔内に挿入する時間帯のペーストが、粘弾性が大きく、装着圧がかかっても押し出され難いことを意味する。
(5)硬度の測定方法
柔軟性の指標であるショアA硬度は、JIS−K7215(デュロメータ タイプA)に基づいて測定した。測定は、練和後37℃で一晩静置した時点と、そのまま37℃で1ヶ月間、水中浸漬させた時点でそれぞれ行った(以下、それぞれ「初期硬度」、「1ヶ月後硬度」ともいう)。
(6)厚さ変化率の測定方法
義歯床樹脂材料(「アクロン」(ジーシー社製))を用いて作製した一辺が約30mm、厚さ約2mmの正方形のアクリル板上に30×30×2mmの孔を有する型を設置し、(2)練和時間の測定方法に記載した方法で練和し、均一なペーストが得られた時点から10秒経過後のペーストを流し込み、その上からもう1枚のアクリル板で圧接した。混和開始から30分後に型をはずし、37℃で1日間水中浸漬させた後、マイクロメーターを使用して試験片の厚みを測定した。試験片の厚みから2枚のアクリル板の厚みを除いた分を粘膜調整材層の試験前厚さとした。厚み測定後、疲労試験機「エレクトロパルス」(インストロン製)を用いて、以下の条件で繰り返し荷重試験を行った。
<試験条件>
最大荷重 :27kgf
荷重 :サインカーブに基づく荷重負荷
周波数 :1Hz
繰り返し回数:2700回
温度 :37℃(水中)
試験後、マイクロメーターを使用して試験片の厚みを測定した。試験片の厚みから2枚のアクリル板の厚みを除いた分を粘膜調整材層の試験後厚さとし、下記式で変化率を求めた。
粘膜調整材層の厚さ変化率[%]=(試験前厚さ−試験後厚さ)[mm]/2[mm]×100
(7)引き裂き強度
JIS K6252「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム‐引裂強さの求め方」に基づいて試験した。アングル形(厚さ2mm)の試験片を作製し、37℃水中に一晩浸漬後、オートグラフ(島津製作所製AG-1)を用い、ロードセル容量5kgf、クロスヘッドスピード10mm/minで破断時の応力を測定し、引き裂き強度を算出した。
各実施例及び比較例で使用した各種化合物は以下の通りである。
1.液材成分
実施例、比較例に用いた液材中の可塑剤は、表1に示す通りである。これらは以下の製造例1〜3に記載の方法で得た。
Figure 0006629088
(製造例1)
PBA−1:トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)3.0ml(3.0mmol)をトルエン40mlと混合し、−78℃に冷却した。これにt−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)7.4ml(7.4mmol)を加え、数分間攪拌させた後、ブチルアクリレート16.1g(126mmol)を、反応系中の温度が上がらないように注意しながら加えた。この反応は窒素雰囲気下、標準的なシュレンク管中で行い、試薬の移動は注射器を用いて行った。トルエンはナトリウム上で還流した後、窒素雰囲気下で蒸留した。ブチルアクリレートは塩基性アルミナカラム及びモレキュラーシーブス4Aのカラムを通して精製した。24時間攪拌させた後、メタノールを加えて反応を停止させた。分液漏斗を用いて50%メタノール水溶液で洗浄した後120℃で真空乾燥して、11.6gの無色透明の液状化合物を得た(収率72%)。GPC測定したところ質量平均分子量が2000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.15であり、分子量500未満のものが5質量%含まれていた。
(製造例2)
PBA−2:トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)1.0ml(1.0mmol)、t−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)2.5ml(2.5mmol)を用いて製造例3と同様の方法で合成し、10.1gの無色透明の液状化合物を得た(収率63%)。GPC測定したところ質量平均分子量が6000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.12であり、分子量500未満のものが1質量%未満であった。
(製造例3)
PPA:トリ(n−ブチル)アルミニウムのトルエン溶液(1.0mol/l)3.0ml(3.0mmol)をトルエン40mlと混合し、−78℃に冷却した。これにt−ブチルリチウムのトルエン溶液(1.0mol/l)7.4ml(7.4mmol)を加え、数分間攪拌させた後、プロピルアクリレート14.8g(130mmol)を、反応系中の温度が上がらないように注意しながら加えた。この反応は窒素雰囲気下、標準的なシュレンク管中で行い、試薬の移動は注射器を用いて行った。トルエンはナトリウム上で還流した後、窒素雰囲気下で蒸留した。プロピルアクリレートは塩基性アルミナカラム及びモレキュラーシーブス4Aのカラムを通して精製した。24時間攪拌させた後、メタノールを加えて反応を停止させた。分液漏斗を用いて50%メタノール水溶液で洗浄した後120℃で真空乾燥して、10.2gの無色透明の液状化合物を得た(収率69%)。GPC測定したところ質量平均分子量が2000(ポリスチレン換算)、Mw/Mn=1.15であり、分子量500未満のものが5質量%含まれていた。
実施例に用いた液材中の一般式(1)に示すラジカル重合性単量体は、以下に示す通りである。これらは以下の製造例4〜10に記載の方法で得た。
Figure 0006629088
Figure 0006629088
Figure 0006629088
Figure 0006629088
Figure 0006629088
Figure 0006629088
なお、4−DPEGMAは下記化合物(a)、(b)、(c)の混合物として得られ、その比率はモル比で65:30:5である。また、上記構造式と共に示す値g、hは化合物(a)、(b)、(c)の混合物の平均値である。なお、上記構造式および以下に示す構造式と共に示す値g、hは平均値を意味するが、個々の分子においてはg、hの値は0、1または2の整数値を取り得るものである。また、値gおよびhの平均値が0または2である場合を除き、値g,hの平均値が示される構造式は、整数値(g、h)の組み合わせが異なる2種類または3種類の構造異性体の混合物を意味する。さらに、一般式(3)において、Ar=Ar=フェニレン基である場合、値gは、一般式(3)中に示す値jに対応する値であり、値hは、一般式(3)中に示す値kに対応する値である。
Figure 0006629088
Figure 0006629088
Figure 0006629088
(製造例4)
<酸クロライド物(A)の合成>
4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸25.3g(0.096mol)、ジメチルホルムアミド0.85g(0.012mol)およびトルエン80mlの第一の混合液を作製した。攪拌状態の第一の混合液に対して、塩化チオニル58.4g(0.46mol)およびトルエン20mlからなる第二の混合液を室温下で徐々に滴下した。滴下終了後に得られた液体を95℃に昇温し、3h還流した。そして加温・還流後に得られた黄色透明液体を放冷することで、下記に示す分子構造を有する4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド(以下、「酸クロライド物(A)」と称す場合がある)のトルエン溶液を得た。さらに、このトルエン溶液をロータリーエバポレーターにかけ、40℃でトルエン、塩化チオニルおよび塩化水素を除去し、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライドの固体26.9g(0.091mol、収率95%)を得た。
<4−DPEHEの合成>
酸クロライド物(A)15.3g(0.052mol)に塩化メチレン120mlを加えることで、酸クロライド物(A)を含む分散液を得た。2−ヒドロキシエチルメタクリレート16.9g(0.13mol)、トリエチルアミン7.7g(0.13mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.16g(0.0013mol)、BHT0.002gおよび塩化メチレン10mlを混合した混合液を滴下ロートを利用して上記の酸クロライド物(A)の分散液に−78℃で徐々に滴下し、さらに5時間攪拌した。滴下・撹拌後に得られた液体に水を加え、ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒を除去した。溶媒除去後に得られた残さを100mlのトルエンに溶解し、0.5規定塩酸溶液で洗浄、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ別した。得られたろ液をロータリーエバポレーターで濃縮後、濃縮液をさらに真空乾燥して、4−DPEHE(収量19.0g、収率76%、HPLC純度97%)を得た。なお、得られた4−DPEHEのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.93(s,6H),4.58(t,4H),4.63(t,4H),5.59(s,2H),6.14(s,2H),7.06(d,4H),7.96(d,4H)
(製造例5)
<2−DPEHEの合成>
4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸25.3gの代わりに2,2’−ジフェニルエーテルジカルボン酸25.3g(0.096mol)を用いた以外は酸クロライド物(A)を合成する場合と同様の方法で、2,2’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド27.8g(0.094mol、収率98%)を得た。
酸クロライド物(A)15.3g(0.052mol)の代わりに2,2’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド15.3g(0.052mol)を用いた以外は4−DPEHEを合成する場合と同様の方法で、2−DPEHE(19.5g、収率78%、HPLC純度97%)を得た。なお、得られた2−DPEHEのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.93(s,6H),4.54(t,4H),4.62(t,4H),5.58(s,2H),6.16(s,2H),7.06(d,4H),7.45(d,2H),7.96(d,2H)
(製造例6)
<4−DPEHHの合成>
−プロセス1−
メタクリル酸8.6g(0.1mol)、1,6−ヘキサンジオール23.6g(0.2mol)、p−トルエンスルホン酸0.86g(0.005mol)、および、重合禁止剤としてBHT0.1gをガラス容器に入れ、85℃に加熱、攪拌した。次に、この加熱撹拌状態の反応系中を減圧状態にし、反応系中から水分を除去しながら5時間攪拌を続けた。その後、得られた液体を冷却し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製、濃縮後、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート19.7g(収率53%)16.0g(収率43%)を得た。
−プロセス2−
次に、別のガラス容器に酸クロライド物(A)3.0g(0.01mol)、塩化メチレン70ml、ジ−tertブチルメチルフェノール0.001gを入れた溶液を攪拌しながら、この溶液に対して、上記の6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート4.1g(0.022mol)、トリエチルアミン2.0g(0.02mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.025g(0.0002mol)を10ml塩化メチレンに溶解させた溶液を1時間かけて、ゆっくり滴下した。滴下終了後に得られた溶液を、室温で1時間撹拌した後に、水を加え、ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒を除去した。溶媒除去後に得られた残さを100mlのトルエンに溶解し、0.5規定塩酸溶液で洗浄、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ別した。得られたろ液を再びロータリーエバポレーターで濃縮後、濃縮液をさらに真空乾燥して、4−DPEHH(収量4.6g、収率78%、HPLC純度98%)を得た。なお、得られた4−DPEHHのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.29(m,8H),1.57(t,4H),1.77(t,4H),1.93(s,6H),4.16(t,4H),4.22(t,4H),5.58(s,2H),6.14(s,2H),7.04(d,4H),7.96(d,4H)
(製造例7)
<4−DPEUEの合成>
エチレングリコール50.0g(0.8mol)、トリエチルアミン40.5g(0.4mol)、N,N−ジメチルアミノピリジン0.49g(4mol)を100ml塩化メチレンに溶解して得られた溶液を撹拌しながら、0℃に冷却した。次に、この溶液に対して、酸クロライド物(A)44.8g(0.2mol)を塩化メチレン(200ml)に溶解した溶液を2時間かけてゆっくり滴下した。滴下後に得られた溶液をさらに1時間撹拌した後に、水を加え、ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒を除去した。溶媒除去後に得られた残さを100mlのトルエンに溶解し、0.5規定塩酸溶液で洗浄、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ別した。得られたろ液を再びロータリーエバポレーターで濃縮後、濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ジフェニルエーテル41.6g(収率60%)を得た。
得られた4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)ジフェニルエーテル34.6g(0.1mol)およびジブチルチンジラウレート3.2g(5mmol)を100mlの無水ジメチルホルムアミドに溶解して得られた溶液に、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート39.8g(0.2mol)をさらに加え、室温で3時間撹拌した。撹拌後の溶液に、塩化メチレン100mlを加えて、分液ロートを用いて蒸留水で3回洗浄し、塩化メチレン層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮物をさらに真空乾燥して、4−DPEUE(収量70.3g、収率95%、HPLC純度96%)を得た。なお、得られた4−DPEUEのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.93(s,6H),3.10(m,4H),3.66(m,8H),4.33(t,4H),4.54(m,8H),5.58(s,2H),6.14(s,2H),7.06(d,4H),7.96(d,4H),8.02(s,2H)
(製造例8)
<4−DPEGMAの合成>
12.8gのメタクリル酸グリシジル(0.09モル)に4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸12.9g(0.05モル)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.02g(0.00009モル)、BHT0.02g(0.00009モル)、ジメチルホルムアミド20gを加えた混合液を、100℃で4時間反応させた。反応により得られた液体に酢酸エチル40mlを加えて、均一な溶液にした。次に、この溶液を分液ロートに移し、10wt%炭酸カリウム水溶液40mlで3回洗浄し、さらに蒸留水で3回洗浄した後、酢酸エチル層を回収した。その後、回収した酢酸エチル層に硫酸マグネシウムを加えて、酢酸エチル層中に含まれる水分を除去した。続いて、酢酸エチル層から硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮して濃縮物を得た。この濃縮物を更に真空乾燥して、4−DPEGMA(収量22.8g、収率84%、HPLC純度95%)を得た。なお、得られた4−DPEGMAのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.93(s,6H),3.90(d,0.8H),4.30〜4.70(m,9.2H),5.59(s,2H),6.16(s,2H),7.07(d,4H),8.07(d,4H)
(製造例9)
<4−DPSHEの合成>
t−ブタノール200mlおよび水50mlに対して、特開2005−154379号公報に記載の合成方法により合成した4,4−ジホルミルジフェニルスルフィド48.4g(0.2mol)を溶解させた後、リン酸水素ナトリウム水溶液50mlおよび2−メチル−2−ブテン140g(2mol)加え、さらに亜塩素酸ナトリウム36g(0.4mol)を加えることで反応溶液を準備した。次に、この反応溶液を5時間撹拌後、1規定塩酸溶液を用いて、反応溶液を酸性にすることで、固体を析出させた。続いて固体が析出した反応溶液を、吸引ろ過後、水を用いて、析出した固体を洗浄した。洗浄後に得られた固体(化合物)を真空乾燥することにより、4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド(収量45.5g,収率83%)を得た。
次に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸25.3g(0.096mol)の代わりに4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフィド26.4g(0.096mol)を用いた以外は、酸クロライド物(A)の合成方法と同様の方法で、4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸クロライド28.4g(0.091mol)を合成した。
次いで、酸クロライド物(A)15.3gの代わりに4,4’−ジフェニルスルフィドジカルボン酸クロライド16.1g(0.052mol)を用いた以外は4−DPEHEの合成方法と同様の方法で、4−DPSHE(収量18.9g、収率73%、HPLC純度91%)を得た。なお、得られた4−DPSHEのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.93(s,6H),4.52(t,4H),4.63(t,4H),5.58(s,2H),6.11(s,2H),7.30(d,4H),7.81(d,4H)
(製造例10)
<4−DPAHEの合成>
4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸25.3gの代わりに英国特許GB753384に記載の合成方法により合成された2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン27.2g(0.096mol)を用いた以外は、酸クロライド(A)の合成方法と同様の方法で2,2−ビス(4−クロロカルボニルフェニル)プロパン29.6g(収率96%)を得た。
次いで、酸クロライド物(A)15.3gの代わりに2,2’−ビス(4−クロロカルボニルフェニル)プロパン16.7g(0.052mol)を用いた以外は4−DPEHEの合成方法と同様の方法で、4−DPAHE(収量19.3g、収率73%、HPLC純度92%)を得た。なお、得られた、4−DPAHEのH NMRスペクトルのデータは、次の通りであった。
H NMR δ1.64(s,6H),1.93(s,6H),4.53−4.64(m,8H),5.59(s,2H),6.12(s,2H),7.22(d,4H),7.90(d,4H)
2.粉材成分
実施例、比較例に用いた粉材中の非架橋ポリマーは、表3に示す通りである。
Figure 0006629088
3.重合開始剤
実施例、比較例に用いた重合開始剤は、以下の通りである。
・BPO:過酸化ベンゾイル
・CQ:カンファーキノン
・DEPT:N,N−ジエチル−p−トルイジン
・DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン
4.その他
実施例、比較例に用いたその他成分は、以下の通りである。
・シリカ:ヒュームドシリカ(モノメチルトリクロロシラン処理、平均粒子径0.012μm)
・エタノール
(実施例1)
PBA−1が100質量部、M1が10質量部、DEPTが0.1質量部からなる液材と、
PBMAが100質量部とBPOが0.1質量部とからなる粉材と、
を練和して粘膜調整材を得た。練和時間は80秒間、初期粘度(30秒)は80Pas、初期粘度(90秒)は460Pas、稠度は35、初期硬度及び1ヶ月後硬度はともに11、厚さ変化率は35%、引き裂き強度は6.2N/mmである。本発明の歯科用粘膜調整材の好ましい物性としては、練和時間が100秒以内、初期粘度が300Pas以下、稠度が60以下、硬度が20以下、変化率が50%以下、引き裂き強度が4.5N/m以上であり、実施例1の粘膜調整材は初期粘度が低いため、初期の流動性が良く、操作性が良好である。さらに、引き裂き強度が高く、厚さの変化率が小さいことから、耐久性に優れる。
(実施例2〜9)
ラジカル重合性単量体の種類と配合量を表4に記載する通り変化させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
(実施例10〜13)
可塑剤の種類を表4に記載する通り変化させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
(実施例14〜15)
(メタ)アクリル系非架橋ポリマーの種類を表4に記載する通り変化させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
(実施例16〜17)
シリカを表4に記載する通り配合させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
(実施例18〜20)
エタノールを表4に記載する通り配合させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
(実施例21)
重合開始剤を表4に記載する通り変更させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表5に示した。
Figure 0006629088
Figure 0006629088
実施例2〜21の粘膜調整材は、初期粘度が低いため、初期の流動性が良く、操作性が良好である。さらに、引き裂き強度が高く、厚さの変化率が小さいことから、耐久性に優れる。
(比較例1)
ラジカル重合性単量体を配合しない以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。この組成及び評価結果は表6、7に示した。
(比較例2)
ラジカル重合性単量体を配合しない以外は実施例12と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。この組成及び評価結果は表6、7に示した。
(比較例3〜4)
ラジカル重合性単量体を表6に記載する通り変更させた以外は実施例1と同様にして粘膜調整材を調製し、評価した。評価結果は表7に示した。
Figure 0006629088
Figure 0006629088
比較例1〜2の粘膜調整材は、ラジカル重合性単量体を含まないため、引き裂き強度が低く、耐久性に劣る。さらに、比較例2の粘膜調整材は、経過時間的な可塑剤の溶出により、初期硬度から1ヶ月後硬度の変化が大きく柔らかさが持続されない。比較例3の粘膜調整材は従来のラジカル重合性単量体を使用している。このラジカル重合性単量体は低粘度であるため、初期の流動性が良く、操作性が良好である一方、機械的強度に劣るため、引き裂き強度が低く、耐久性に劣る。比較例4の粘膜調整材は従来のラジカル重合性単量体を使用している。このラジカル重合性単量体は機械的強度に優れるため、引き裂き強度が低く、耐久性に優れる一方、高粘度であるため、初期の流動性が悪く、操作性に劣る。

Claims (7)

  1. i)可塑剤、及び下記一般式(1)されるラジカル重合性単量体を含む液材と、ii)(メタ)アクリル系非架橋ポリマーを含む粉材と、に分割して包装、保存されており、
    重合開始剤が前記i)液材及び前記ii)粉材の双方、又はいずれか一方に含まれ、
    使用時には両材を混和したペーストとして用いる歯科用粘膜調整材。
    Figure 0006629088
    〔前記一般式(1)中、Xは−O−を表し、ArおよびArは、各々、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ非置換の芳香族基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、LおよびLは、各々、主鎖の原子数が2〜60の範囲内であり、かつ、2価〜4価から選択されるいずれかの価数を持つ炭化水素基を表し、各々同一であっても異なっていてもよく、RおよびRは、各々、水素またはメチル基を表す。また、m1、m2、n1およびn2は、各々、1〜3の範囲から選択される整数である。〕
  2. 前記一般式(1)におけるおよびLの少なくともいずれかが水酸基を含んでなる請求項1記載の歯科用粘膜調整材。
  3. 前記一般式(1)に示すラジカル重合性単量体が下記一般式(2)で示される重合性単量体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用粘膜調整材
    Figure 0006629088
    〔前記一般式(2)中、X、L、L、RおよびRは、前記一般式(1)中に示すものと同様である。〕
  4. 前記可塑剤が質量平均分子量が1000〜10000の範囲にある液状ポリマーである請求項1乃至3の何れか一項に記載の歯科用粘膜調整材。
  5. 前記(メタ)アクリル系非架橋ポリマーのガラス転移温度が0〜60℃の範囲である請求項1乃至4の何れか一項に記載の歯科用粘膜調整材。
  6. 前記ii)粉材が、無機粉末をさらに含む請求項1乃至5の何れか一項に記載の歯科用粘膜調整材。
  7. 前記i)液材が、水溶性有機溶媒をさらに含むものであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の歯科用粘膜調整材。
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