JP6627536B2 - 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents

溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法に関するものである。
近年、エレクトロガスアーク溶接法等のような大入熱溶接の採用が望まれている。このような大入熱溶接では、溶接熱影響部が1400℃以上の高温に加熱される。高温に加熱されると、オーステナイト粒(γ粒)が粗大化し、溶接熱影響部の靱性が低下する。
従来、大入熱溶接の溶接熱影響部において、オーステナイト粒の粗大化を防止するために、微細な酸化物、炭化物、窒化物などによって粒界をピン止め(ピンニングともいう。)するとともに、IGF(粒内フェライト)変態核となる酸化物を分散させる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許第3699630号公報 特許第3728130号公報 特許第3752076号公報
ところで、最近では、鋼材への要求品質が厳しくなっており、溶接熱影響部のさらなる靭性の向上が求められている。
ここで、特許文献1〜3に記載された鋼材においては、IGF変態核となる酸化物が十分に形成されておらず、溶接影響部における結晶粒径を十分に微細化できないおそれがあった。また、Caを含有している場合には、IGF変態核となる酸化物においてフェライトの析出が促進されないおそれがあった。
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、粒内フェライト変態を促進させることにより溶接熱影響部の靭性をさらに向上させた溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、IGF変態核となる酸化物粒子中のMg含有量を増加させるとともに、この酸化物粒子の個数密度を高めることにより、IGF変態核を効果的に作用させることができ、溶接熱影響部における結晶粒径を微細化させて靭性を大幅に向上可能であるとの知見を得た。
本発明は、上記知見を基になされたものであって、本発明に係る溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材は、質量%で、
C:0.03%以上0.2%以下、
Si:0.4%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、
P:0.015%以下、
S:0.006%以下、
Al:0.001%以上0.01%以下、
Ti:0.007%以上0.02%以下、
Mg:0.001%超え0.006%以下、
O:0.001%以上0.004%以下、
N:0.0025%以上0.006%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在するとともに、Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子が、50個/mm以上の個数密度で存在することを特徴としている。
この構成の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材によれば、MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在するので、粒界のピン止め効果により、オーステナイト粒の粗大化を確実に抑制することができる。
そして、IGF変態核となる粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子がMgを質量%で50%以上含んでいるので、このMg含有酸化物粒子を核としたフェライトの析出が促進される。また、このMg含有酸化物粒子が50個/mm以上の個数密度で存在しているので、粒内フェライトの析出が促進され、溶接熱影響部における結晶粒径をさらに微細化することができる。
よって、溶接熱影響部における靭性を大幅に向上させることが可能となる。
ここで、本発明の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、さらに、〔O〕、〔Mg〕、〔Al〕、〔Ti〕、〔N〕をそれぞれの元素の質量%とした場合に、下記の(1)式あるいは(2)式で計算される有効Ti量が、−0.01%以上+0.005%以下の範囲内であることが好ましい。
〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕≧0の場合、
有効Ti量=〔Ti〕−2×(〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕)−3.4×〔N〕・・・(1)
〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕<0の場合、
有効Ti量=〔Ti〕−3.4×〔N〕・・・(2)
この場合、上述の(1)式及び(2)式で定義される「有効Ti量」が、−0.01%以上+0.005%以下の範囲内に設定されているので、N量に応じてTi量を適正化することができ、固溶NやTiCによる溶接熱影響部の脆化を抑制することができる。
また、本発明の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、質量%で、さらに、
Cu:1.5%以下、
Ni:1.5%以下、
Mo:1%以下、
Cr:1%以下、
Nb:0.05%以下、
V:0.05%以下、
B:0.002%以下、
の1種または2種以上を含有していてもよい。
これらの元素は、母材や熱影響部等の特性を向上させる作用を有する元素であることから、適宜選択して添加してもよい。ただし、添加量が多すぎると、溶接熱影響部の靭性が劣化することから、各元素は、上述の範囲内に規制することが好ましい。
本発明の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法は、上述の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材を製造する溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法であって、溶鋼中にMgを添加し、Mg濃度を質量%で0.002%超えて0.007%以下の範囲内とするMg添加工程と、質量%で0.001%以上のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する酸素源添加工程と、を備えていることを特徴としている。
この構成の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法によれば、溶鋼中にMgを添加し、Mg濃度を質量%で0.002%超えて0.007%以下の範囲内とするMg添加工程と、質量%で0.001%以上のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する酸素源添加工程と、を備えているので、Mg含有量の高いMg含有酸化物粒子を確実に形成することが可能となる。よって、Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子を50個/mm以上の個数密度で存在させることができる。
なお、酸素源添加工程後におけるMg量が0.001%を超えて0.006%以下となるように、Mg添加工程におけるMg添加量及び酸素源添加工程における酸素源添加量をそれぞれ調整することになる。
また、本発明の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法においては、前記酸素源添加工程では、スラグ中にSiOを添加することで、質量%で0.001%以上のMgを酸化させることが好ましい。
この場合、スラグ中にSiOを添加して、スラグ中のSiOの存在比を上昇させることにより、スラグと溶鋼との反応によってMg酸化物が緩やかに形成されることになり、粒径0.5μm以上5μm以下の比較的微細なMg含有酸化物粒子を確実に形成することができる。
上述のように、本発明によれば、粒内フェライト変態を促進させることにより溶接熱影響部の靭性をさらに向上させた溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法のフロー図である。
以下に、本発明の実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
まず、本実施形態において製造される溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材について説明する。
本実施形態における溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材は、質量%で、
C:0.03%以上0.2%以下、
Si:0.4%以下、
Mn:0.5%以上2.0%以下、
P:0.015%以下、
S:0.006%以下、
Al:0.001%以上0.01%以下、
Ti:0.007%以上0.02%以下、
Mg:0.001%超え0.006%以下、
O:0.001%以上0.004%以下、
N:0.0025%以上0.006%以下、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有する。
また、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、〔O〕、〔Mg〕、〔Al〕、〔Ti〕、〔N〕をそれぞれの元素の質量%とした場合に、下記の(1)式あるいは(2)式で計算される有効Ti量が、−0.01%以上+0.005%以下の範囲内とされている。
〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕≧0の場合、
有効Ti量=〔Ti〕−2×(〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕)−3.4×〔N〕・・・(1)
〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕<0の場合、
有効Ti量=〔Ti〕−3.4×〔N〕・・・(2)
さらに、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、質量%で、さらに、
Cu:1.5%以下、
Ni:1.5%以下、
Mo:1%以下、
Cr:1%以下、
Nb:0.05%以下、
V:0.05%以下、
B:0.002%以下、
の1種または2種以上を含有していてもよい。
そして、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在するとともに、Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子が、50個/mm以上の個数密度で存在する。
以下に、化学成分、及び、TiN粒子、Mg含有酸化物粒子を上述のように規定した理由について説明する。
(C:炭素)
Cは、母材及び溶接部の強度、靭性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Cの含有量が0.03%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Cの含有量が0.2%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Cの含有量を0.03%以上0.2%以下の範囲内に限定している。
(Si:ケイ素)
Siは、溶鋼の脱酸のために添加されるが、その含有量が0.4%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性も劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Siの含有量を0.4%以下の範囲内に限定している。
(Mn:マンガン)
Mnは、母材及び溶接部の強度及び靭性を向上させる作用効果を有する元素である。ここで、Mnの含有量が0.5%未満では、上述の作用効果を奏功せしめることができない。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化するとともに、溶接性が劣化してしまう。
以上のことから、本実施形態では、Mnの含有量を0.5%以上2.0%以下の範囲内に限定している。
(P:リン)
Pは、母材の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に含有されることから、本実施形態では、その上限値を0.015%に規定している。
(S:硫黄)
Sは、母材の靭性に影響を与える元素であるが、不可避的に含有されることから、本実施形態では、その上限値を0.006%に規定している。
(Al:アルミニウム)
Alは、溶鋼の脱酸を促進するために投入される元素である。さらに、粒界をピンニングするTiN粒子の析出核となる酸化物に含有される元素である。ここで、Alの含有量が0.001%未満では、十分に脱酸をすることができないとともに、TiN粒子の析出核となる酸化物を十分に生成することができないおそれがある。一方、Alの含有量が0.01%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Alの含有量を0.001%以上0.01%以下の範囲内に限定している。
(Ti:チタン)
Tiは、ピンニング粒子を形成し、オーステナイト相の粗大化を抑制する作用効果を有する元素である。ここで、Tiの含有量が0.007%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Tiの含有量が0.02%を超えると、炭化物等が過剰に生成し、溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Tiの含有量を0.007%以上0.02%以下の範囲内に限定している。
(Mg:マグネシウム)
Mgは、上述のピンニング粒子の析出核となる酸化物、及び、IGF変態核となるMg含有酸化物粒子を形成する元素である。ここで、Mgの含有量が0.001%以下では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Mgの含有量が0.006%を超えると、酸化物が多量に発生し、介在物起因による製品欠陥が多発するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Mgの含有量を0.001%超え0.006%以下の範囲内に限定している。
(O:酸素)
Oは、上述のピンニング粒子の析出核となる酸化物、及び、IGF変態核となるMg含有酸化物粒子を形成する元素である。ここで、Oの含有量が0.001%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Oの含有量が0.004%を超えると、溶鋼の清浄度が低下して機械的特性が低下するとともに、介在物起因による製品欠陥が多発するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Oの含有量を0.001%以上0.004%以下の範囲内に限定している。
(N:窒素)
Nは、Tiとともにピンニング粒子を形成し、オーステナイト相の粗大化を抑制する作用効果を有する元素である。ここで、Nの含有量が0.0025%未満では、上述の作用効果を奏することができないおそれがある。一方、Nの含有量が0.006%を超えると、炭化物等が過剰に生成し、溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Nの含有量を0.0025%以上0.006%以下の範囲内に限定している。
(Cu、Ni)
Cu及びNiは、母材の強度及び靭性を向上させる作用効果を有する元素であることから、適宜添加してもよい。ただし、Cuの含有量及びNiの含有量がそれぞれ1.5%を超えると、溶接性及び溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、Cu及びNiを添加する場合には、それぞれの含有量を1.5%以下に制限することが好ましい。
(Mo,Cr)
Mo及びCrは、母材の強度及び靭性を向上させる作用効果を有する元素であることから、適宜添加してもよい。ただし、Moの含有量及びCrの含有量がそれぞれ1.0%を超えると、母材の靭性、溶接性及び溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、Mo及びCrを添加する場合には、それぞれの含有量を1.0%以下に制限することが好ましい。
(Nb)
Nbは、母材の結晶粒を微細化させる作用効果を有する元素であることから、適宜添加してもよい。ただし、Nbの含有量が0.05%を超えると、溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、Nbを添加する場合には、Nbの含有量を0.05%以下に制限することが好ましい。
(V)
Vは、母材の強度を向上させる作用効果を有する元素であることから、適宜添加してもよい。ただし、Vの含有量が0.05%を超えると、溶接性及び溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、Vを添加する場合には、Vの含有量を0.05%以下に制限することが好ましい。
(B)
Bは、焼き入れ性を高めて母材や溶接熱影響部の機械的性質を向上させる作用効果を有する元素であることから、適宜添加してもよい。ただし、Bの含有量が0.002%を超えると、溶接性及び溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、Bを添加する場合には、Bの含有量を0.002%以下に制限することが好ましい。
(有効Ti量)
Tiは、まず酸素と結合してTi酸化物を形成し、その後ピンニング粒子となるTiN(Ti窒化物)を形成する。そして、Ti酸化物及びTi窒化物を形成した後に過剰にTiが存在すると、TiCを形成して析出脆化するおそれがある。また、Ti量が少なく未反応のNが存在する場合には、固溶Nとなって脆化をもたらす。そこで、本実施形態では、酸化物及び窒化物を形成した後のTi量を上述の(1)式及び(2)式によって「有効Ti量」を定義しているのである。なお、(1)式及び(2)式の各元素の係数は、想定される酸化物及び窒化物から化学量論的に決定された値である。
ここで、有効Ti量が−0.01%未満の場合には固溶N量が過剰となり、有効Ti量が+0.005%を超える場合にはTiC析出量が過剰となり、いずれも溶接熱影響部の靭性が劣化するおそれがある。このため、本実施形態では、有効Ti量を−0.01%以上+0.005%以下の範囲内に規定している。
(TiN粒子)
TiN粒子は、粒界をピン止めしてオーステナイト相の粗大化を抑制するピンニング粒子である。
ここで、MgとAlからなる酸化物は、TiN粒子の析出核となる。そして、MgとAlからなる酸化物に析出して形成されTiN粒子は、1400℃以上の高温域で非常に強力なピンニング力を発揮する。また、MgとAlからなる酸化物は、非常に微細であることから、このMgとAlからなる酸化物を析出核として形成されたTiN粒子は、粒径0.01μm以上0.5μm未満と微細となり、ピンニング効果を十分に発揮させることが可能となる。
以上のことから、本実施形態においては、MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在する構成としている。
(Mg含有酸化物粒子)
Mg含有酸化物粒子は、IGF変態核(粒内フェライトの析出核)として作用する粒子である。
ここで、Mgを質量%で50%以上含む場合には、フェライトの析出が促進されることになる。また、粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子は、粒内変態を促進させるのに効果的である。
以上のことから、本実施形態においては、Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子が、50個/mm以上の個数密度で存在する構成としている。
以下に、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法について、図1を参照して説明する。
まず、転炉吹錬を行い、所定の組成の溶鋼を溶製する(溶製工程S01)。
次に、転炉から取鍋に溶鋼を移送し、真空脱ガスを行う(真空脱ガス工程S02)。
次に、溶鋼中にMgを添加し、Mg濃度を質量%で0.002%超え0.007%以下の範囲内とする(Mg添加工程S03)。
このMg添加工程S03においては、Mgを、例えば、Si−Mg合金、Fe−Si−Mg合金等のMg含有合金として添加することが好ましい。
次に、質量%で0.001%以上のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する(酸素源添加工程S04)。
この酸素源添加工程S04においては、スラグ中にSiOを添加することによって、Mgを酸化させている。なお、この酸素源添加工程S04前後のスラグの具体的な組成は、例えば、SiO添加前のスラグ組成は、質量%で10〜20%、SiO添加後のスラグ組成が、20〜25%となる。
ここで、本実施形態では、酸素源添加工程S04において、質量%で0.001%以上
0.003%以下のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する。
なお、これらMg添加工程S03におけるMg添加量及び酸素源添加工程S04における酸化源添加量を調整することで、溶鋼中のMgの含有量を0.001%超え0.006%以下の範囲内に制御することになる。
このようにして成分調整された溶鋼を、タンディッシュを介して連続鋳造装置の鋳型内に注湯して連続鋳造を行う(鋳造工程S05)。
以上のような工程により、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材によれば、MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在するので、粒界のピン止め効果により、オーステナイト粒の粗大化を確実に抑制することができる。
また、本実施形態では、Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子が、50個/mm以上の個数密度で存在する構成とされているので、このMg含有酸化物粒子を核として粒内フェライトの析出を促進することができ、溶接熱影響部における結晶粒径をさらに微細化することができる。
よって、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、溶接熱影響部における靭性を大幅に向上させることが可能となる。
また、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、上述の(1)式及び(2)式で定義される「有効Ti量」が、−0.01%以上+0.005%以下の範囲内に設定されているので、N量に応じてTi量を最適化することができ、固溶NやTiCの析出による溶接熱影響部の靭性の劣化を抑制することができる。
本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材においては、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、Cr、Nb、V、Bを添加し、その含有量が上述の範囲内に規定されているので、溶接熱影響部の靭性を劣化させることなく、各種特性を向上させることが可能となる。
本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法によれば、溶鋼中にMgを添加し、Mg濃度を質量%で0.002%超えて0.007%以下の範囲内とするMg添加工程S03と、質量%で0.001%以上のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する酸素源添加工程S04と、を備えているので、Mgを質量%で50%以上含むMg含有酸化物粒子を確実に形成することが可能となる。
また、本実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法によれば、酸素源添加工程S04において、スラグ中にSiOを添加しているので、スラグと溶鋼との反応によってMg酸化物が緩やかに形成されることになり、粒径0.5μm以上5μm以下の比較的微細なMg含有酸化物粒子を確実に形成することができる。
以上、本発明の実施形態である溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、及び、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
(実施例1)
表1に鋼材の化学成分と介在物の分散状態を、表2に鋼材の製造条件と機械的性質を示す。
表1のピンニング粒子の個数の測定は、鋼材母材の板厚中心部から抽出レプリカ試料を作製し、これを、30000倍の倍率で2000μmの面積に渡ってTEM 観察することで行った。
表1の0 .5〜5μmの大きさの酸化物の個数の測定は、同じく、鋼材母材の板厚中心部から小片を切り出して1400℃で20分間保定した後に水冷し、鏡面研磨面を1000倍の倍率で4mmの面積に渡って光学顕微鏡観察することで行った。
表1の0 .5〜5μmの大きさの酸化物のMg量は、EPMA−WDSによって、0.5〜5μmの20個の酸化物について組成を分析し、地鉄(Fe)の分析値を差し引いて平均組成を求めた。
Figure 0006627536
Figure 0006627536
本発明鋼は溶接入熱量が20〜100kJ/mmのエレクトロガス溶接部あるいはエレクトロスラグ溶接部の溶融線において従来にない良好なHAZ靭性を有する。本発明鋼は、Al、Ti、Mg、O、Nの量を厳密に制御し、有効Ti量なる概念を用いてHAZにおけるTiとNの存在形態を適正化し、さらに、γ粒成長抑制に有効な酸化物の分散状態を有することで大入熱溶接においても良好なHAZ靭性を達成している。一方、比較鋼は化学成分や酸化物の分散状態が適正でないため、母材およびHAZの機械的性質が劣っている。
鋼12は、Cの量が低すぎるために、鋼13はC量が高すぎるために、母材およびHAZ の靭性が劣る。鋼14は、Si量が高すぎるためにHAZ靭性が劣る。鋼15はMn量が低すぎるために、鋼16はMn量が高すぎるために、母材およびHAZの靭性が劣る。鋼17はP量が高すぎるために、母材およびHAZの靭性が劣る。鋼18は、Sが高すぎるために、母材およびHAZの靭性が劣る。鋼19は、Al量が低すぎるためにピンニング粒子の個数が少なく、γ粒が粗大化してHAZ靭性が劣る。鋼20は、Al量が高すぎるために0 .5〜5μmの酸化物中のMgが低く、ピンニング粒子の個数が少ないため, HAZ靭性が劣る。
鋼21はTi量が低すぎるため、ピンニング粒子であるTiNの個数が少なく、HAZ組織が著しく粗大化してHAZ靭性が劣る。鋼22はTi量が高すぎるため、TiC析出脆化によってHAZ靭性が劣る。鋼23はMg量が低すぎるため, TiNの析出核であるのMg含有酸化物粒子の個数が少なく、γ粒が粗大化してHAZ靭性が劣る。
鋼24は、O量が低すぎるため、Mg含有酸化物粒子の個数が少なく、γ粒が粗大化してHAZ靭性が劣る。鋼25はO量が高すぎるため、鋼の清浄度が悪くなり、破壊起点が増えてHAZ靭性が劣る。鋼26はN量が低すぎるためピンニング粒子であるTiNの個数が少なく、HAZ組織が著しく粗大化してHAZ靭性が劣る。鋼27はN量が高すぎるため、有効Ti量の適正範囲から外れ、固溶Nが過剰となりHAZ靭性が劣る。鋼28はTi量が高すぎるため、鋼29はTi量が低すぎるため、有効Ti量が不適当である。また、Mg含有酸化物粒子の個数も少ない。このため、HAZ靭性が劣る。
(実施例2)
表1の本発明鋼1の組成の鋼を溶製するに際して、Mgを添加しMg濃度を質量%で0.006%とした後、取鍋スラグにSiO源を添加して、スラグ中のSiO濃度を質量%で17%から22%に増加させた。その後、連続鋳造した鋳片を圧延し、板厚70mmの鋼板を製造した。
比較として、表1の本発明鋼1の組成の鋼を溶製するに際して、Mgを添加しMg濃度を質量%で0.005%とした後、取鍋スラグにSiO源を添加せず、スラグ中のSiO濃度を質量%で17%としたまま、連続鋳造した鋳片を圧延し、板厚70mmの鋼板を製造した。このときの0 .5〜5μmの大きさの酸化物の個数と平均組成を測定した。
これらの測定は、鋼材母材の板厚中心部から小片を切り出して1400℃で20分間保定した後に水冷し、鏡面研磨面を1000倍の倍率で4mmの面積に渡って光学顕微鏡観察することによって求めた。さらに、EPMA−WDSによって、0.5〜5μmの20個の酸化物について組成を分析し、地鉄(Fe)の分析値を差し引いて平均組成を求めた。
スラグ中のSiO濃度を増大させた本発明では、0.5〜5μmの大きさの酸化物の個数が60個/mm、Mg濃度が60%となったのみ対して、スラグ中のSiO濃度を増大させない場合は、0.5〜5μmの大きさの酸化物の個数が50個/mm、Mg濃度が56%となった。スラグ中のSiO濃度を増大させることにより、フェライトの生成核として有効に作用する酸化物個数を増大させることができた。
S03 Mg添加工程
S04 酸素源添加工程

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.03%以上0.2%以下、
    Si:0.4%以下、
    Mn:0.5%以上2.0%以下、
    P:0.015%以下、
    S:0.006%以下、
    Al:0.001%以上0.01%以下、
    Ti:0.007%以上0.02%以下、
    Mg:0.001%超え0.006%以下、
    O:0.001%以上0.004%以下、
    N:0.0025%以上0.006%以下、
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有し、
    MgとAlからなる酸化物を内包する粒径0.01μm以上0.5μm未満のTiN粒子が、10000個/mm以上の個数密度で存在するとともに、
    Mgを質量%で50%以上含む粒径0.5μm以上5μm以下のMg含有酸化物粒子が、50個/mm以上の個数密度で存在することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
  2. さらに、〔O〕、〔Mg〕、〔Al〕、〔Ti〕、〔N〕をそれぞれの元素の質量%とした場合に、下記の(1)式あるいは(2)式で計算される有効Ti量が、−0.01%以上+0.005%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
    〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕≧0の場合、
    有効Ti量=〔Ti〕−2×(〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕)−3.4×〔N〕・・・(1)
    〔O〕−0.66×〔Mg〕−0.89×〔Al〕<0の場合、
    有効Ti量=〔Ti〕−3.4×〔N〕・・・(2)
  3. 質量%で、さらに、
    Cu:1.5%以下、
    Ni:1.5%以下、
    Mo:1%以下、
    Cr:1%以下、
    Nb:0.05%以下、
    V:0.05%以下、
    B:0.002%以下、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材を製造する溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法であって、
    溶鋼中にMgを添加し、Mg濃度を質量%で0.002%超えて0.007%以下の範囲内とするMg添加工程と、
    質量%で0.001%以上のMgを酸化させる酸素源を溶鋼中に添加する酸素源添加工程と、
    を備えていることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  5. 前記酸素源添加工程では、スラグ中にSiOを添加することで、質量%で0.001%以上のMgを酸化させることを特徴とする請求項4に記載の溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法。
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