(第1実施形態)
以下、モータユニットの第1実施形態を説明する。
図1に示すように、モータユニットは、モータ軸11を有するモータ12と、モータ12の回転動作を制御するモータコントローラ13とをユニット化したものである。なお、本実施形態のモータユニットは、例えば、車両における電動パワーステアリング装置に搭載される。電動パワーステアリング装置は、車両の運転者がステアリングホイールを操作するときの操舵トルクに応じたアシストトルクが生じる(運転者のステアリング操作を補助する)ようにモータユニットを制御する。モータ12及びモータコントローラ13は、円筒状のモータハウジング14に収容されている。なお、モータハウジング14には、外部電源とモータコントローラ13とを電気的に接続するための電源コネクタ14aと、外部制御部とモータコントローラ13とを電気的に接続するための複数(本実施形態では2つ)の制御コネクタ14bとが設けられている。
以下の説明において、「軸方向」はモータ軸11の軸長方向を意味し、「径方向」は「軸方向」に直交する方向(モータ軸11を含む面に垂直な方向)を意味し、「周方向」は「軸方向」を中心に回転する方向を意味する。
モータ12は、複数のティースが設けられた円筒状のステータを有している。なお、ステータは、モータハウジング14の内周に固定されている。ステータの各ティースには、対応する各相(U相、V相、W相の3相)のモータ側バスバーにそれぞれ接続されるモータコイルがそれぞれ巻装されている。ステータの内周側にはモータ軸11が配置され、モータ軸11には当該モータ軸11と一体回転する円筒状のロータが外嵌されている。ロータの外周には、当該ロータの周方向に異なる極性(N極、S極)が交互に並んで配置される複数の永久磁石が固定されている。
モータ軸11について、モータコントローラ13側の軸端部11aには、強磁性体等の検出用磁石15が設けられている。検出用磁石15は、取付具によってモータ軸11と一体回転するように固定されている。なお、検出用磁石15は、モータ12(ロータ)の回転角を演算するために用いられる物理量である磁力の発生源となる。検出用磁石15が発生させる磁力は、その変化が該検出用磁石15に対向して設けられる磁気センサ16で検出される。
モータ12では、磁気センサ16における検出結果を用いて演算される回転角に応じた三相の駆動電力が各モータコイルに供給されることにより回転磁界が発生される。そして、ロータは、モータ12において発生される回転磁界と各永久磁石との関係に基づき回転する。
図1及び図2に示すように、モータコントローラ13は、モータユニットを構成する各種部品の放熱を促す機能を有する凸状のベース部材としてのヒートシンク20を備えている。ヒートシンク20は、円板状の土台部21と、当該土台部21から軸方向に沿って延びる直方体状の設置部22とを有している。土台部21は、モータハウジング14に圧入されている。
設置部22は、土台部21を境界としてモータ12に対して反対側に配置される。設置部22の径方向及び軸方向の外面には、モータコントローラ13を構成する各種部品を設置可能な複数(本実施形態では、4つ)のベース面23〜26が設けられている。
なお、土台部21には、当該土台部21を境界としたモータ12側とモータコントローラ13側とを軸方向に連通させる連通口21aが設けられている。連通口21aは、設置部22のベース面23に対向して配置されている。
ヒートシンク20には、土台部21と設置部22とを軸方向に貫通する貫通孔28が設けられている。貫通孔28は、土台部21のモータ12側からベース面23〜26のうちの土台部21に対して平行な平面として設けられるベース面26に至る。貫通孔28には、モータ軸11が挿通される。こうしたモータ軸11は、その軸端部11aに固定される検出用磁石15がベース面26から軸方向に突出する可能な長さに設定されている。
土台部21に対して垂直に交差する平面として設けられるベース面23には、モータ12への電源供給(例えば、3相(U相、V相、W相)の駆動電力の供給)を制御するモジュール30が設けられている。また、ベース面23と周方向で隣り合い、当該ベース面23と同様の平面として設けられるベース面24には、モジュール30の動作を制御する制御基板40が設けられている。ベース面23と周方向に隣り合い、ベース面24に対向し、当該ベース面23と同様の平面として設けられるベース面25には、モータ12等への電源供給の電源供給路となる配線部50が設けられている。また、土台部21に対して平行な平面として設けられる上述のベース面26には、制御基板40によるモジュール30の動作の制御に必要な情報としてモータ12の回転角を演算するセンサ基板60が設けられている。
このように、モジュール30、制御基板40、及び配線部50は、モータユニット(ヒートシンク20)に対してモータ軸11の径方向外側であって、モータ軸11の軸方向に沿って配置されている。また、モジュール30は、制御基板40及び配線部50とそれぞれ隣接する。また、センサ基板60は、モータユニット(ヒートシンク20)に対してモータ軸11の軸方向の軸端部11a側の延長上に配置されている。また、センサ基板60は、モジュール30、制御基板40、及び配線部50とそれぞれ隣接する。
以下、モータコントローラ13の構成について、詳しく説明する。
まずモジュール30について説明する。
モジュール30は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)をなしている。モジュール30は、半導体素子としてFET等の複数のスイッチング素子が集積されたインバータ等からなる駆動回路である。モジュール30は、ベース面23に対向する側、すなわち径方向の外側であってベース面23から離間する側からヒートシンク20に取り付けられる固定クリップ70により固定されている。固定クリップ70は、ヒートシンク20との係合を通じてモジュール30をベース面23との間に挟み込む態様で固定する。なお、固定クリップ70の構成については後で詳しく説明する。
モジュール30の長辺の制御基板40側には、制御基板40に電気的に接続される複数の制御端子31が設けられている。制御端子31は、モジュール30の長辺からその短手方向(径方向)に延びている。
また、モジュール30の長辺の配線部50側には、配線部50に電気的に接続される複数の入力端子32と、モータ12に電気的に接続される複数の出力端子33とが設けられている。入力端子32及び出力端子33は、モジュール30の長辺からその短手方向(径方向)に延びている。なお、出力端子33は、上述のモータ側バスバーとの電気的な接続をなすモジュールバスバー34に溶接によって接合されている。モジュールバスバー34は、土台部21の連通口21aを通ってヒートシンク20の軸方向に延びることによって出力端子33と上述のモータ側バスバーとを電気的に接続する。
次に制御基板40について説明する。
制御基板40は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)をなしている。制御基板40は、マイクロプロセッサやROM等の電子部品からなるモジュール30の動作を制御する制御回路である。制御基板40は、ベース面24に対してヒートシンク20側、すなわちベース面25側からヒートシンク20に取り付けられる固定部材としての固定ベース80により固定されている。固定ベース80は、制御基板40との係合を通じて当該制御基板40をベース面24との間に挟み込む態様で固定する。なお、固定ベース80の構成については後で詳しく説明する。
制御基板40の長辺のモジュール30側には、モジュール30の制御端子31が挿通される端子孔41が設けられている。制御端子31は、端子孔41に半田によって接合されている。これにより、モジュール30及び制御基板40は、駆動回路のスイッチング素子の動作(切り替え)を指示する制御信号や駆動回路で監視する電流値を示す信号等を授受する。
また、制御基板40の短辺のセンサ基板60側には、センサ基板60との電気的な接続をなす接続端子90が挿通される端子孔42が設けられている。接続端子90は、端子孔42に半田によって接合されている。
次に配線部50について説明する。
配線部50は、バスバー51等が長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)の樹脂材料からなる固定ベース80にモールドされてなる。なお、固定ベース80を構成する樹脂材料としては、モジュール30の制御端子31等の接合に用いられるろう合金等の半田に対して軟らかい物、すなわち弾性変形し易い物を成形可能な材料が選択される。固定ベース80は、ベース面25にねじ25aによって固定されている。固定ベース80の両側の長辺には、それぞれの端部からベース面24側に向かって延びて、ベース面24に対向する側、すなわち径方向の外側であってベース面24から離間する側において制御基板40と係合する板ばね部81が2つずつ設けられている。
バスバー51は、その一端が電源コネクタ14aを介して外部電源に接続されている。一方、バスバー51の他端の一部は、モジュール30に設けられる入力端子32に溶接によって接合されている。これにより、モジュール30には、配線部50を介して電源(駆動電力)が供給される。また、バスバー51の他端において、入力端子32に接合される以外の他端は、センサ基板60に電気的に接続されている。
次にセンサ基板60について説明する。
センサ基板60は、長辺及び短辺を有する長方形状(矩形状)をなしている。センサ基板60は、マイクロプロセッサやROM等の電子部品からなるモータ12の回転角を演算する演算回路である。こうした電子部品には、磁気抵抗素子等の磁気センサ16が含まれている。磁気センサ16は、モータ軸11の軸端部11aに固定された検出用磁石15に対向して配置される。これにより、磁気センサ16は、検出用磁石15が発生させる磁力の変化を検出する。センサ基板60は、ベース面26にねじ26aによって固定されている。
センサ基板60の長辺の制御基板40側には、制御基板40との電気的な接続をなす接続端子90が挿通される端子孔61が設けられている。接続端子90は、端子孔61に半田によって接合されている。これにより、制御基板40及びセンサ基板60は、外部制御部からの制御信号やモータ12の回転角を示す信号等を授受する。
また、センサ基板60の長辺の配線部50側には、当該配線部50のバスバー51の外部電源に接続される他端が挿通される端子孔62が設けられている。バスバー51の他端は、端子孔62に半田によって接合されている。これにより、センサ基板60には、配線部50を介して電源(駆動電力)が供給される。なお、センサ基板60に供給される電源は、さらに制御基板40にも供給される。
また、センサ基板60の両側の短辺のそれぞれには、制御コネクタ14bを介して外部制御部に接続される外部接続端子部63が設けられている。これにより、センサ基板60及び外部制御部は、各種制御信号等を授受する。
次に、固定クリップ70の構成について詳しく説明する。
図3及び図4に示すように、モジュール30は、ベース面23と固定クリップ70との間に挟み込まれた状態でヒートシンク20に固定されることによってモータユニットの一部を構成する。この場合、固定クリップ70は、ヒートシンク20、より詳しくは設置部22に係合している。なお、図4は、ベース面23に直交する断面のうち、固定クリップ70の幅方向の中心を含む断面を現している。
図5に示すように、固定クリップ70は、長辺及び短辺を有する矩形状の金属板をU字に湾曲させて形成されている。すなわち、固定クリップ70は、その長手方向の両側がそれぞれ対向するように略90°(直角)に折り曲げられた折り曲げ部71を有する。折り曲げ部71は、その延びる方向がさらに略180°折り返されるように湾曲された規制部としての折り返し部71aを有する。折り返し部71aは、その先端面が折り曲げ部71の根元の方向を向いている。
各折り曲げ部71は、板部72によって連結されている。各折り曲げ部71を含み、各折り曲げ部71と板部72とが連結される近傍の部位は、その一部がU字に切り抜かれており、その残った部位によってばね体73がそれぞれ構成されている。ばね体73としての折り曲げ部71の部位は、折り曲げ部71と板部72とが連結される部位を中心として、折り曲げ部71の厚み方向に弾性変形可能に構成されている。また、ばね体73としての板部72の部位は、板部72の厚み方向に弾性変形可能に構成される押さえ部74を有している。押さえ部74は、折り曲げ部71が折り曲げられている方向に荷重を作用させることができるように湾曲されている。このように固定クリップ70は、その長手方向の両側に構成される2つのばね体73が一体化されてなる。
また、固定クリップ70の板部72の幅方向(短手方向)の両側の端部には、当該板部72に対して折り曲げ部71が折り曲げられるのと反対側に突出する位置決め部75が設けられている。なお、位置決め部75は、固定クリップ70に一体化されている。位置決め部75は、板部72の幅方向の両側の端部に沿って、少なくとも一方の押さえ部74(ばね体73)から他方の押さえ部74(ばね体73)に至るまでの範囲を含むように延びている。位置決め部75は、モジュール30の設置部22に対する位置決めと、固定クリップ70の設置部22に対する位置決めとを行うための治具100を取り付けるためのものである。
図3及び図4に示すように、固定クリップ70は、ヒートシンク20の設置部22の軸方向の両側において、各折り曲げ部71の折り返し部71aがそれぞれ嵌め込まれることによってヒートシンク20に係合されている。
設置部22のベース面26には、貫通孔28に連通するように矩形状の係合凹部22aが凹設されている。また、設置部22のベース面26の反対側、すなわち土台部21側には、連通口21a及び貫通孔28に連通するように矩形状の係合凹部22bが凹設されている。係合凹部22a,22bは、固定クリップ70のばね体73のうち、折り曲げ部71の折り返し部71aが嵌め込み可能な大きさ及び形状をなしている。
そして、固定クリップ70の折り返し部71aは、設置部22のベース面26側において、軸方向から係合凹部22aに嵌め込まれている。また、固定クリップ70の折り返し部71aは、設置部22の土台部21側において、軸方向から係合凹部22bに嵌め込まれている。
この場合、固定クリップ70における各ばね体73の押さえ部74は、モジュール30の径方向の外側で当接している。すなわち、各押さえ部74は、モジュール30をベース面23側に押し付けている。また、各折り曲げ部71は、設置部22の軸方向でそれぞれ当接している。また、固定クリップ70における各ばね体73の折り返し部71aの先端面は、係合凹部22a,22bを画成する壁部のうち、ベース面23側の壁面に当接している。すなわち、各折り返し部71aは、ベース面23の径方向の外側への押さえ部74の移動を規制している。また、位置決め部75は、モジュール30のベース面23から離間する側に突出している。こうした位置決め部75は、固定クリップ70に当接するモジュール30の放熱を促す機能も有している。
次に、固定ベース80の構成について詳しく説明する。
図6及び図7に示すように、制御基板40は、固定ベース80との間にヒートシンク20を挟み込んだ状態でヒートシンク20に固定されることによってモータユニットの一部を構成する。この場合、固定ベース80は、制御基板40に係合している。また、この場合、固定ベース80は、ベース面25にねじ25aによって固定されている。
図8に示すように、固定ベース80は、その外郭が長辺及び短辺を有する矩形状に形成されている。固定ベース80は、その両側の長辺の端部80aの隅(角)近傍から配線部50が取り付けられる側とは反対側に延びる板状の板ばね部81を有している。板ばね部81は、板ばね部81が延びる方向に直交する方向、すなわち板ばね部81の厚み方向や幅方向に弾性変形可能に構成されている。各板ばね部81の先端には、固定ベース80の短手方向において対向する板ばね部81側に突出する爪状の凸部82がそれぞれ設けられている。凸部82は、板ばね部81の厚み方向に略平行な平面82aと、平面82aに対して傾斜する傾斜面82bとを有している。固定ベース80の短手方向に対向する一対の板ばね部81の間隔は、各凸部82の間に物(本実施形態では、制御基板40)を挟持することができる間隔に設定されている。また、各板ばね部81の長さは、それぞれの平面82a側に荷重を作用させることができる長さに設定されている。
図6及び図7に示すように、固定ベース80は、制御基板40の外縁のうち、両側の長辺において、各板ばね部81の凸部82がそれぞれ嵌め込まれる、所謂、スナップフィットによって制御基板40に係合されている。
制御基板40の両側の長辺の隅(角)近傍には、矩形状に切り欠かれた凹部43が設けられている。各凹部43は、固定ベース80のうち、各板ばね部81の凸部82が嵌め込み可能な大きさ及び形状をなしている。
そして、固定ベース80の各凸部82は、制御基板40の短手方向からそれぞれに対応する各凹部43に嵌め込まれている。
この場合、固定ベース80における各凸部82の平面82aは、制御基板40の径方向の外側の面に当接している。すなわち、各凸部82は、制御基板40をベース面24側に押し付けているとともに、ベース面24の径方向の外側への制御基板40の移動を規制している。
次に、モータユニットについて、モータ12と、モータコントローラ13とをユニット化する際にモータコントローラ13をユニット化する流れについて説明する。
モータコントローラ13のユニット化においては、まずヒートシンク20のベース面23にモジュール30が固定される。
図9(a)〜(c)に示すように、モジュール30は、ベース面23と固定クリップ70との間に配置された状態で、ベース面23の径方向の外側から固定クリップ70がヒートシンク20に係合するように取り付けられる挟み込み工程を経てベース面23に固定される。
具体的に、図9(a)に示すように、固定クリップ70には、各折り曲げ部71が折り曲げられている側から各押さえ部74に当接するようにモジュール30が、位置決め部75に取り付けられる治具100を利用して組み付けられて一体化するように保持されている。この場合、モジュール30の長手方向、すなわち制御端子31や入力端子32及び出力端子33の配列方向が、固定クリップ70の板部72の延びる方向と一致するように組み付けられる。こうした固定クリップ70は、ヒートシンク20のベース面23に対向する側において、モジュール30がベース面23に対向するように配置される。
そして、図9(b)に示すように、固定クリップ70がベース面23に近付けられると、折り曲げ部71の折り返し部71aがベース面23に当接する。固定クリップ70がベース面23にさらに近付けられると、折り返し部71aがベース面26に乗り上げ、図中矢印で示すように折り曲げ部71がその厚み方向に弾性変形する。なお、こうした固定クリップ70の動きは、土台部21側においても同様に現れる。
続いて、図9(c)に示すように、固定クリップ70がベース面23にさらに近付けられると、モジュール30が当該ベース面23に当接する。その後、さらに固定クリップ70がベース面23側に押し込まれると、図中矢印で示すように折り曲げ部71の弾性変形が復元し、これまでベース面26に乗り上げていた折り返し部71aが係合凹部22aに嵌り込む。この場合、折り返し部71aの先端面が係合凹部22aのベース面23側の壁面に当接する。これにより、固定クリップ70は、押さえ部74を通じてモジュール30をベース面23に押し付ける荷重F1を発生させる。なお、こうした固定クリップ70の動き、固定クリップ70が発生させる荷重F1は、土台部21側においても同様に現れる。
このように、固定クリップ70は、上述した挟み込み工程を経て、各ばね体73の折り返し部71aと押さえ部74との間で、ベース面23との間にモジュール30を挟み込んでヒートシンク20に固定する。すなわち、本実施形態では、モジュール30をヒートシンク20に固定する際にねじを用いる必要がなくなる。
ヒートシンク20にモジュール30が固定されることに続き、モータコントローラ13のユニット化においては、ヒートシンク20のベース面25に固定ベース80が固定されるとともに、ヒートシンク20のベース面24に制御基板40が固定される。
図10(a)〜(c)に示すように、制御基板40は、ベース面24に対向する側に配置された状態で、ベース面24の径方向の外側から固定ベース80の各凸部82が各凹部43に係合するように取り付けられるスナップフィット工程を経てベース面24に固定される。
具体的に、図10(a)に示すように、固定ベース80の各板ばね部81の凸部82は、ベース面25側からベース面24を通過してベース面24の径方向の外側にまで至る。この場合、ベース面23側において、各板ばね部81は、モジュール30及び固定クリップ70の径方向の外側を通過する。これにより、モータコントローラ13がユニット化された状態において、ベース面23側の各板ばね部81は、モジュール30及び固定クリップ70がヒートシンク20の径方向の外側へ脱落等しようとする際に引っ掛かる等の押さえとしても機能する。こうした固定ベース80に対し、制御基板40は、ヒートシンク20のベース面24に対向する側において、ベース面24側に端子孔41が配置されるとともにベース面26側に端子孔42が配列された状態でベース面24に対向するように配置される。
そして、図10(b)に示すように、制御基板40がヒートシンク20のベース面24に近付けられると、各凹部43が固定ベース80の各凸部82の傾斜面82bに当接する。制御基板40がベース面24にさらに近付けられると、各凹部43に固定ベース80の各凸部82の傾斜面82bが乗り上げ、図中矢印や拡大図で示すように各板ばね部81がその厚み方向に弾性変形する。この場合、制御基板40の端子孔41には、モジュール30の制御端子31が挿通される。
続いて、図10(c)に示すように、制御基板40がベース面24側にさらに押し込まれると、図中矢印や拡大図で示すように各板ばね部81の弾性変形が復元し、これまで各凹部43に乗り上げていた各凸部82が各凹部43に嵌り込む。この場合、各凸部82の平面82aが制御基板40のベース面24の径方向の外側の面に当接する。これにより、固定ベース80は、制御基板40の四隅に位置する各凸部82を通じて制御基板40をベース面24に押し付ける荷重F2とともに、制御基板40を短手方向から挟持する荷重F3を発生させる。
このように、固定ベース80は、上述したスナップフィット工程を経て、各板ばね部81(各凸部82)がベース面24との間に制御基板40を挟み込んでヒートシンク20に固定する。すなわち、本実施形態では、制御基板40をヒートシンク20に固定する際にねじを用いる必要がなくなる。
その後、ヒートシンク20のベース面26にセンサ基板60が固定され、センサ基板60の端子孔62に配線部50のバスバー51の他端が挿通される。そして、モジュール30の制御端子31が制御基板40の端子孔41に半田によって接合されるとともに、接続端子90が制御基板40の端子孔42及びセンサ基板60の端子孔61にそれぞれ半田によって接合される。また、配線部50のバスバー51の他端がセンサ基板60の端子孔62に半田によって接合される。また、モジュール30の入力端子32が配線部50のバスバー51の他端に溶接によって接合されるとともに、モジュール30の出力端子33がモジュールバスバー34に溶接によって接合される。これにより、モータコントローラ13がユニット化される。
以上に説明した本実施形態のモータユニットによれば、以下に示す作用及び効果を奏する。
(1)制御基板40やモジュール30においては、冷熱による温度変化があると、膨張、収縮を伴うことによる応力によって、半田と比較して変形し易い材料からなる固定ベース80の各板ばね部81が、その厚み方向や幅方向へと弾性変形する。こうした固定ベース80の弾性変形によっては、半田、すなわち制御基板40の端子孔41とモジュール30の制御端子31とが接合される部位に作用する上記応力の一部が吸収されることとなる。
したがって、制御基板40やモジュール30においては、上記応力を半田、すなわち制御基板40の端子孔41とモジュール30の制御端子31とが接合される部位にのみ集中させるのではなく、当該応力の一部を当該半田と比較して変形し易い材料からなる固定ベース80に分散させることができる。これにより、端子孔41と制御端子31とが半田によって接合される部位に発生する応力を緩和することができる。
(2)本実施形態では、固定ベース80の弾性変形によっては、制御基板40の端子孔42と接続端子90とが接合される部位、すなわちセンサ基板60の端子孔61と接続端子90とが接合される部位に作用する上記応力の一部も吸収されるようになる。同じくモジュール30の入力端子32と配線部50のバスバー51の他端とが接合される部位、モジュール30の出力端子33とモジュールバスバー34とが接合される部位、配線部50のバスバー51の他端とセンサ基板60の端子孔62とが接合される部位に作用する上記応力の一部も吸収されるようになる。これにより、モータコントローラ13において半田によって接合される部位に発生する応力を緩和することができる。
(3)固定ベース80の実現にあたっては、設計や製造の容易性の観点から具体的には樹脂材料であって、特に上述の制御端子31等の接合に用いられるろう合金等の半田に対して軟らかい物、すなわち弾性変形し易い物を成形可能な材料を選択することとした。
これにより、固定ベース80は、冷熱による温度変化に基づく膨張、収縮を伴うことによる応力として、より多くの応力を吸収することができる。これにより、半田によって接合される部位に発生する応力をより好適に緩和することができる。
(4)図10(b)及び図10(c)に示すように、固定ベース80と制御基板40とは、固定ベース80の各凸部82と制御基板40の各凹部43との係合、所謂、スナップフィットにより係合されることとした。こうしたスナップフィットは、固定ベース80の各凸部82を制御基板40の凹部43に嵌め込むだけで制御基板40をヒートシンク20に固定することができる。すなわち、上記[背景技術]における従来例のように、制御基板40をヒートシンク20に固定する際にねじを用いる必要がなくなる。これにより、ねじを用いる必要がないことによる部品点数の減少、さらにはスナップフィットによる工程の簡素化を実現することができる。したがって、部品及びモータユニットの組み立て(特にモータコントローラ13のユニット化)に係るコストを低減することができる。
(5)本実施形態において、固定ベース80は、制御基板40をヒートシンク20に固定するための機能と、配線部50をヒートシンク20に固定するための機能とを有することとした。これにより、それぞれの機能を別々の部材によって構成する場合と比較して、部品点数を減少させ構造を簡素化することができる。したがって、モータユニットの製造に係るコストをさらに低減することができる。
(6)本実施形態において、制御基板40がヒートシンク20に固定される場合、ねじを用いて固定される場合と比較して、当該固定の際に発生させる荷重(ここでは、荷重F2や荷重F3)を低くすることができ、半田によって接合される部位に発生する応力自体を緩和することができる。
(第2実施形態)
次に、モータユニットの第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成などは、同一の符号を付すなどして、その重複する説明を省略する。本実施形態において、第1実施形態と異なる主な点は、制御基板の固定に関わる構成である。
図11に示すように、本実施形態のヒートシンク20は、その設置部22の各ベース面24,25と周方向で隣り合う側(いずれの部品も設けられていない側)において、当該ヒートシンク20から制御基板40が固定されるベース面24側に向かって延びる略円柱状の支持部材27を有している。支持部材27は、ヒートシンク20と一体に設けられており、ヒートシンク20における土台部21側とベース面26側とに一つずつ設けられている。
土台部21側に設けられる支持部材27は、その先端部27aが土台部21において制御基板40を固定する際の台座となる部位からベース面24を超えて制御基板40にまで至る。また、ベース面26側に設けられる支持部材27は、その先端部27aがベース面26においてセンサ基板60を固定する際の台座であって、ねじ26aが挿通される部位からベース面24を超えて制御基板40にまで至る。各支持部材27は、ヒートシンク20と同一材料からなり、各支持部材27が延びる方向に直交する方向以外に弾性変形し難くなるようにその太さ等が構成されている。
そして、制御基板40の両側の長辺のうち、一方(図11中、左側)の長辺には各凹部43が設けられているとともに他方(図11中、右側)の長辺には半円状に切り欠かれた嵌込部44が設けられている。なお、嵌込部44は、長辺の隅(角)近傍に一つずつ設けられている。各嵌込部44は、ヒートシンク20のうち、各支持部材27の先端部27aが嵌め込み可能な大きさ及び形状をなしている。
また、図11及び図12に示すように、本実施形態の固定ベース80は、その両側の長辺のうち、各支持部材27が配されていない側(図11中、左側、または図12中、右側)の長辺にのみ板ばね部81を有している。
また、図11に示すように、制御基板40には、各嵌込部44が設けられている長辺において、当該各嵌込部44に各支持部材27の先端部27aがそれぞれ嵌め込まれている。各支持部材27は、各嵌込部44に先端部27aがそれぞれ嵌め込まれた状態で制御基板40の一方の長辺側を支持する。
また、固定ベース80は、各凹部43が設けられている長辺、すなわち制御基板40が各支持部材27により支持される反対側の長辺において、当該各凹部43に各板ばね部81の凸部82がそれぞれ嵌め込まれることによって制御基板40に係合されている。
そして、ヒートシンク20にモジュール30が固定されることに続き、モータコントローラ13のユニット化においては、ヒートシンク20のベース面25に固定ベース80が固定されるとともに、以下のようにしてヒートシンク20のベース面24に制御基板40が固定される。
具体的に、図13(a)に示すように、制御基板40は、各嵌込部44に各支持部材27の先端部27aが嵌り込むように位置調整され、ベース面24に近付けられる。すなわち、各支持部材27は、ベース面24(設置部22)に対して制御基板40を固定する位置を位置決めする。
そして、図13(b)に示すように、制御基板40がベース面24に近付けられると、各支持部材27の先端部27aが各嵌込部44に嵌り込む。この場合、各凹部43が固定ベース80の各凸部82の傾斜面82bに当接し、図中矢印や拡大図で示すように各板ばね部81がその厚み方向に弾性変形する。
続いて、図13(c)に示すように、制御基板40がベース面24側にさらに押し込まれると、図中矢印や拡大図で示すように各板ばね部81の弾性変形が復元する。この場合、固定ベース80は、各凸部82を通じて制御基板40をベース面24に押し付ける荷重F2とともに、制御基板40を各支持部材27側に押し付ける荷重F3を発生させる。
以上に説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(6)の作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果を得ることができる。
(7)図13(c)に示すように、制御基板40は、その一方の長辺側から各支持部材27により支持されるとともに、各支持部材27と各板ばね部81との間で両側の長辺から挟み込まれるようにしてベース面24に固定される。すなわち、制御基板40がベース面24に固定される場合、各支持部材27の先端部27aが各嵌込部44に嵌め込まれた状態となる。そのため、制御基板40は、ベース面24に固定されると、各支持部材27により当該制御基板40の各辺に沿った方向、すなわち軸方向及び周方向への移動が規制されるようになる。これにより、制御基板40を固定した後の当該制御基板40の位置ずれを抑制することができる。また、制御基板40は、ベース面24に固定される際の位置が各支持部材27により調整される。したがって、制御基板40を固定する際の当該制御基板40の位置決めもすることができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・第1実施形態において、固定ベース80には、複数の板ばね部81が設けられていればよく、2つや3つに減らしたり、5つ以上に増やしたりしてもよい。これにより、制御基板の大きさや形状に応じて板ばね部81を設ける数を変更することができる。
・第1実施形態において、制御基板40の両側の長辺には、少なくとも一の板ばね部81が対応付けられていればよい。例えば、長辺のそれぞれで異なる数の板ばね部81が対応付けられていてもよく、この場合には板ばね部81の配置についても変更してもよい。これにより、制御基板の大きさや形状に応じて板ばね部81の配置を変更することができる。
・第1実施形態において、板ばね部81は、固定ベース80の端部80aに設けていたが、固定ベース80の大きさや形状によっては設ける位置を変更してもよい。例えば、板ばね部81は、端部80aから奥まった位置に設けてもよい。
・各実施形態では、固定ベース80に配線部50を取り付けていたが、モジュール30やその他の部品を取り付けるようにしてもよい。また、固定ベース80は、制御基板40をヒートシンク20に固定するのみのために設けるようにしてもよい。
・第1実施形態において、固定ベース80は、制御基板40に係合される構成を有していればよく、その係合の態様は適宜変更可能である。例えば、制御基板40との係合は、板ばね部81の幅方向の弾性変形を通じてなされるようにしてもよい。また、板ばね部81は、固定ベース80の両側の長辺の端部80aから延びる一方で、制御基板40との係合については制御基板40の長手方向で実現されるものであってもよい。また、制御基板40に設けられた貫通孔に板ばね部81の凸部82を嵌め込むようなものであってもよい。この場合には制御基板40には凹部43を設けないように構成し、制御基板40の両側の長辺に板ばね部81の凸部82を引っ掛けるように構成してもよい。また、固定ベース80と制御基板40との間において、凸部82の構成と凹部43の構成とを入れ替えて構成してもよいし、入れ替えてない部位と入れ替えて構成した部位とが混在していてもよい。これにより、応力の分布に応じて係合の態様を変更することができる。
・各実施形態において、固定ベース80は、ベース面24に固定される制御基板40に対して、隣り合うベース面23やベース面26等に取り付けられるものとして実現することもできる。
・各実施形態では、固定ベース80によって固定する対象を制御基板40としたが、制御基板40に加えてその他のモータコントローラ13の構成要素も固定の対象としてもよい。
・各実施形態において、固定ベース80は、その全体が樹脂材料で構成されていなくてもよく、板ばね部81や凸部82の少なくとも一部が樹脂材料で構成されていればよい。また、固定ベース80は、モジュール30の制御端子31等の接合に用いられるろう合金等の半田に対して硬い材料で構成されていたとしても、モジュール30の制御端子31等の接合される部位と比較して弾性変形し易い形状を有していればよい。この場合には、樹脂材料ではなく比較的に柔らかい金属で固定ベース80を構成してもよい。
・第2実施形態において、ヒートシンク20には、支持部材27が少なくとも一つ設けられていればよく、1つに減らしたり、3つ以上に増やしたりしてもよい。これにより、制御基板の大きさや形状に応じて支持部材27を設ける数を変更することができる。
・第2実施形態において、支持部材27の形状は、変更してもよく、例えば、角柱状をなしていてもよい。このように支持部材27の形状を変更する場合、変更した支持部材27(先端部27a)を嵌め込み可能なように嵌込部44の形状も変更すればよい。
・第2実施形態において、支持部材27は、制御基板40を一方の長辺側で支持可能であればよく、設置部22に沿って延びる壁状に設けられていてもよい。
・第2実施形態において、支持部材27は、板ばね部81に対して制御基板40の反対側の長辺に少なくとも設けられていればよく、他の長辺や短辺に追加して設けられていてもよい。
・第2実施形態では、ヒートシンク20(設置部22)においていずれの部品も設けられていない側に支持部材27を設けていたが、設置部22の大きさや形状、部品の設置態様によっては支持部材27を設ける位置を変更してもよい。例えば、支持部材27は、各ベース面23,24,25のいずれかに設けられていてもよい。
・第2実施形態では、ヒートシンク20に支持部材27を設けるようにしたが、ヒートシンク20にねじ等によって固定される別部材として支持部材27を構成してもよい。本変形例では、例えば、支持部材27を樹脂材料で構成することができる。この場合、支持部材27は、冷熱による温度変化に基づく膨張、収縮を伴うことによる応力を吸収することができる。これにより、半田によって接合される部位に発生する応力をより好適に緩和することができる。
・第2実施形態において、支持部材27は、制御基板40に係合される構成を有していればよく、その係合の態様は適宜変更可能である。例えば、制御基板40に設けられた貫通孔(嵌込部)に支持部材27の先端部27aを嵌め込むようなものであってもよい。
・各実施形態のモータユニットでは、ヒートシンクの構成(形状)、モジュール、制御基板、配線部、センサ基板の配置の仕方、さらにはモータの回転角の検出の仕方等を適宜変更したものに適用することもできる。例えば、ヒートシンク20の設置部22は、円柱状であってもよいし、モータ軸11の径方向の断面が、例えば、三角形や五角形等の多角形であってもよい。また、ヒートシンク20の設置部22には、球面状の設置面が混在していてもよい。また、モータ12の回転角の検出には、レゾルバを用いるようにしてもよい。また、磁気センサ16は、ホールIC等を用いたセンサであってもよい。また、モータユニットでは、ヒートシンク20に替えて、例えば、送風機(ファン)による空冷等の冷却構造を用いてもよい。すなわち、設置部22は、放熱機能を有していなくてもよい。また、モータコントローラ13を構成する部品(ヒートシンク20、モジュール30、制御基板40、配線部50、センサ基板60等)の少なくとも一部は、モータ軸11の軸方向に積層して構成されていてもよい。