以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。尚、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
図1は、本発明の実施例に係る電動工具1の上面図である。ここでは電動工具1の一例として、モータ5の回転軸6と直交方向に回転するスピンドル24を設け、スピンドル24に接続される作業機器が円形の砥石30であるディスクグラインダを示している。電動工具1のハウジング(外枠又は筐体)は、動力伝達機構を収容するギヤケース21と、モータ5を収容する筒形状のモータハウジング2と、モータハウジング2の後方に取り付けられ電気機器類を収容するリヤカバー3の3つの主要部品により構成される。ハウジングの形成の仕方は任意であり、本実施例のように前後方向に3つに分割された部分により構成しても良いし、その他の分割形状で形成しても良い。モータハウジング2は樹脂又は金属の一体構成であって、前方側に開口を有する略円筒形に構成される。モータハウジング2の内径はモータ5のステータコア9の外径よりも僅かに大きい径を有し、モータハウジング2の外面側は作業者が片手で把持する部分(把持部)を構成する。モータハウジング2の後方には、リヤカバー3が取り付けられる。リヤカバー3は、長手方向中心軸(モータの回転軸の延長線)を通る鉛直面で左右方向に分割可能に構成され、モータハウジング2の後方側開口部を挟む位置にて左右の部品が図示しないネジによって固定される。また、リヤカバー3の外径はモータハウジング2の外径と比較して、ほぼ同等もしくは僅かに小さい外径となっている。
モータ5はモータハウジング2の中心軸方向(前後方向)に沿うように回転軸6が配置され、演算部がロータコア7の回転位置をホールICから構成される回転位置検出素子69にて検出し、複数のスイッチング素子Q1〜Q6(後述する図2参照)で構成されるインバータ回路80を制御することにより、モータ5の所定のコイル13に順次駆動電力を供給することにより回転磁界を形成してロータを回転させる。モータ5は3相ブラシレスDCモータであり、略円筒状の形状をもつステータコア9の内周側空間内にてロータが回転するもので、いわゆるインナーロータタイプである。ステータコア9は、プレス加工によって製造された円環状の薄い鉄板を軸方向に多数枚積層した積層構造で製造される。ステータコア9の内周側には6つのティース(図示せず)が形成され、各ティースの軸方向前後方向には、樹脂製のインシュレータ11、12が装着され、インシュレータ11、12間にティースを挟んだ形で銅線が巻かれてコイル13が形成される。本実施例では、コイル13をU、V、W相の3相を有するスター結線とすることが好ましく、コイル13へ駆動電力を供給するためのU、V、W相用の3本のリード線(図示せず)が回路基板60に接続される。ステータコア9の内周側では、回転軸6にロータコア7が固定される。ロータコア7はプレス加工にて製造した円環状の薄い鉄板を軸方向に多数枚積層したロータコアに、軸方向と平行して形成され、その断面形状が長方形のスロット部分にN極およびS極を有する平板状の永久磁石8が挿入される。
回転軸6は、モータハウジング2に固定される後方側の軸受(第一の軸受)14aと、ギヤケース21とモータハウジング2との接続部付近で固定される前方側の軸受(第二の軸受)14bとにより回転可能に保持される。回転軸6の軸方向に見て軸受14bとモータ5の間には冷却ファン15が設けられる。冷却ファン15は例えばプラスチック製の遠心ファンであって、モータ5が回転すると回転軸6と同期して回転することにより、ハウジングの内部において複数の黒矢印で示す方向に、モータ5や制御回路等を冷却するための風の流れ(冷却風)を発生させる。冷却風は、回路基板60の後端付近においてリヤカバー3の左右両側面に設けられた吸入口(図1では断面位置の関係で図示されない)から吸引され、回路基板60を収容するケース40の周囲を後方から前方側に流れて、モータハウジング2の軸受ホルダ部20に設けられた開口(後述する図3参照)を通過して、モータ5の収容空間内に流入する。モータ5の収容空間に流入した冷却風は、ステータコア9の外周側であってモータハウジング2との間の隙間(図中の黒矢印参照)やステータコア9の内側空間を通って冷却ファン15によって吸引され、ファンカバー16の貫通穴を通ってギヤケース21の貫通穴21bから前方側に、又はファンカバー16の下側の穴21cから前方に排出される。本実施例では、モータ5の回転軸6の軸線上に見て、後方(風上側)から前方側にかけて、回路基板60、センサ磁石18、軸受14a、モータ5、冷却ファン15、及び、軸受14bが軸方向に直列(一直線上)に配置される。そして、外気を吸入する吸入口たる風窓(図示せず)は、回路基板60の周囲であって発熱の大きい素子、特にダイオードブリッジ72やスイッチング素子Q1〜Q6(後述する図2参照)よりも後方側に配置される。このように、本実施例ではモータ5の回転軸方向にみて、ハウジングの後方側から前方側の全外周面にほぼ接するようにして冷却風が流れるものである。
ギヤケース21は、例えばアルミニウム等の金属の一体成形により構成され、1組の傘歯車機構(22、23)を収容すると共に、出力軸となるスピンドル24を回転可能に保持する。スピンドル24は、モータ5の回転軸の軸線方向(ここでは前後方向)とは略直交方向(ここでは上下方向)に延びるように配置され、回転軸6の前端部分には第1の傘歯車22が設けられ、第1の傘歯車22はスピンドル24の上側端部に取り付けられた第2の傘歯車23に噛合する。第2の傘歯車23は直径が大きく、第1の傘歯車22に比べて歯車数が多いので、これらの動力伝達手段は減速機構として作用する。スピンドル24の上端側はメタル25によって回転可能にギヤケース21に軸支され、中央付近にはボールベアリングによる軸受26によって軸支される。軸受26はスピンドルカバー27を介してギヤケース21に固定される。
スピンドル24の先端には取付ベース28が設けられ、ワッシャナット31によって砥石30等の先端工具が装着される。砥石30は、例えば直径100mmのレジノイドフレキシブルトイシ、フレキシブルトイシ、レジノイドトイシ、サンディングディスク等であり、用いる砥粒の種類の選択により金属、合成樹脂、大理石、コンクリートなどの表面研磨、曲面研磨が可能である。砥石30の後方側の径方向外側及び上側はホイールガード32にて覆われる。尚、電動工具1に装着される先端工具としては、砥石30だけに限られず、ベベルワイヤブラシ、不織布ブラシ、ダイヤモンドホイール等のその他の工具を取り付けるようにしても良い。
モータ5の回転軸6の後端には、回転方向に磁極が異なる磁性体であるセンサ磁石18が取り付けられる。センサ磁石18はロータコア7の回転位置の検出のために取り付けられる薄い円柱形の永久磁石であって、周方向に90度ずつ隔ててNSNS極が順に形成される。センサ磁石18の後ろ側であってケース40の内側部分には、回転軸6と垂直方向に配置される略半円形のセンサ基板68が設けられ、センサ基板68にはセンサ磁石18の位置を検出する回転位置検出素子69が設けられる。回転位置検出素子69は、回転するセンサ磁石18の磁界の変化を検出することにより、ロータコア7の回転位置を検出するものであり、回転方向に所定角度毎、ここでは60°毎に3つ設けられる。
略円筒形に形成されるリヤカバー3の内部には、モータ5の回転制御を行う演算部(後述)と、モータ5を駆動させるためのインバータ回路80と、外部から図示しない電源コードにて供給される交流を直流に変換するための電源回路70が収容される。本実施例では、これらの回路は共通する回路基板60に搭載しているが、これらを分割した回路基板に搭載するようにしても良い。回路基板60は電動工具1の長手方向中心軸(モータ5の回転軸6と同軸)に対して平行になるように配置される。ここでは、基板の表及び裏面が、前後及び左右方向に延びるように配置される。回路基板60は、一面が開口部40aとなっている容器状のケース40の内部に配置され、液体状の樹脂を硬化させる硬化性樹脂によって全体が固められる。ここでは電動工具1の砥石30が下になる時(図1の向きの時)に、ケース40の開口部40aが下側を向くように配置され、インバータ回路80に含まれる複数のスイッチング素子Q1〜Q6が、回路基板60から下側に延びるように配置される。硬化した後の樹脂の液面は矢印48の位置となり、スイッチング素子Q1〜Q6は略半分程度が樹脂の内部に位置し、半分程度が樹脂に覆われずに露出する。ここで、本発明の実施例であるグラインダは、スピンドル24に取り付けられた砥石30を回転させて加工材を研磨・研削して加工する作業を主とする工具であり、加工時には切粉や粉塵が発生する。このため作業者は、できる限り加工材を自分より下に位置させることで粉塵などが自分に降りかからないようにする。従って通常であれば、作業者はスピンドル24を上には向けず、好ましくはスピンドル24を左右方向よりも下を向くようにして作業する。このとき、本発明を適用した電動工具1(グラインダ)においては、ケース40の開口部40aの開口方向がスピンドル24の向き(ギヤケース21からの突出方向)と同方向としているため、作業時の開口部40aの開口方向は概ね下を向くことになり、加工時に発生する粉塵が風窓からリヤカバー3の内部に侵入したとしてもケース40内に溜まっていくことが抑制される。また作業者は、作業を完了した際には持っている電動工具1を地面等の載置箇所に載置するが、特別な事情が無ければ持ったままの向きで電動工具1を載置する。すなわちスピンドル24が下向きの状態で、電動工具1を載置する。このため、例えば冷却風の影響によってケース40内に粉塵等が入り込んだとしても、載置時には重力等の影響でケース40内の粉塵が除去される。
インバータ回路80は、コイル13に大駆動電流を通電する必要があるため、スイッチング素子Q1〜Q6として、例えばFET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のような大容量の出力トランジスタが用いられる。これらスイッチング素子Q1〜Q6は発熱が大きいので冷却効果を向上させるための放熱構造が考慮され、本実施例ではスイッチング素子Q1〜Q6の放熱板に冷却用の金属板が更に取り付けられる。放熱板と金属板は、吸入口となる図示しない風窓よりも風下側(モータ側)に配置されるので、黒矢印で示す冷却風に直接晒されることになる。スイッチング素子Q1〜Q6の後方側には電源回路が設けられる。本実施例の電源回路70は、外部から供給される商用電源(交流)を直流に変換する整流回路を含んで構成される。電源回路70は配線の効率性から、リヤカバー3の後端面から外部に伸びるように配線される電源コード(図示せず)に近いようにケース40の後方側であって、スイッチング素子Q1〜Q6よりも後方側(モータ5から遠い反モータ側)に搭載される。
ケース40により画定される空間内(容器内)には、回路基板60に加えてさらに、回転位置検出素子69を搭載するセンサ基板68が設けられる。また、ケース40の容器部分の外側であって後方側にはスイッチ基板65が搭載され、変速ダイヤル17により調整される可変抵抗66が設けられる。センサ基板68はモータ5の回転軸方向と直交するように配置され、スイッチ基板65は回転軸方向と平行になるように配置される。
図2は図1の矢印Aの方向から見た矢視図であって、ケース40及び回路基板60を示す図である。ケース40の内部に収容される回路基板60の形状は、ケース40の内形とほぼ同等の外側輪郭をもって形成される。図では示していないが、回路基板60は液体状態から硬化させて固める樹脂48にて浸漬される。回路基板60に搭載されるのは、主に、整流回路71と平滑回路75から主に構成される電源回路70と、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を含むインバータ回路80と、インバータ回路80を制御するものであってマイコン101を含む制御部と、制御部用の定電圧の直流を生成する定電圧電源回路(図示せず)である。回路基板60の入力側には、電動工具1の外部から図示しない電源コードが接続され、商用交流が電源回路70に入力される。コンデンサ79は雑防用であって、整整流回路71の前に並列に接続される。電源コードは電源コード保持部43によって固定される。回路基板60の出力側は、端子84a〜84cであって、モータ5のコイル13に接続される3本の図示しないリード線(V相、U相、W相)がそれぞれ半田付けされる。
回路基板60においては、入力及び出力点に近いという配線上の利点と、冷却風の流れに沿う点から、電源回路70が回路基板60の後方側に配置され、インバータ回路80が回路基板の前方側に配置される。回路基板60は、単層又は多層のプリント基板であって、ここでは多層のガラスコンポジット基板が用いられる。電源回路70は、整流回路71と平滑回路75を含んで構成され、整流回路71はダイオードブリッジ72と、チョークコイル73と、バリスタ74と、を有し、平滑回路75は電解コンデンサ76aと、フィルムコンデンサ76bと、後述する抵抗78を有している。電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bは、その端子を回路基板60に直接半田づけするのではなく、リードワイヤ又はリード線等の延長線を用いて配線した上で、回路基板60の上側の開いたスペースに固定したものである。
インバータ回路80は3個のスイッチング素子Q1〜Q3、Q4〜Q6がそれぞれ軸方向に一列に並ぶように配置される。スイッチング素子Q1〜Q6は、半導体素子がセラミック等の略直方体のパッケージに封入され、3本の金属端子がパッケージの下側から延びるものであって、パッケージの背面側には金属製の放熱板が埋め込まれる。この放熱板は面状であって面の広がり方向が、回路基板60の長手方向(図2では前後方向)と水平かつ直交方向となるようにスイッチング素子Q1〜Q6が配置される。また、パッケージ背面の放熱板には、放熱用の金属板82がさらに設けられる。通常、IGBTのコレクタ端子、FETのドレイン端子がパッケージ背面側の放熱板と導通されているので、回路構成上、コレクタ端子又はドレイン端子が共通接続の場合には、複数のスイッチング素子Q1〜Q3に共通の金属板82、83a〜83cが設けられる。他方、インバータ回路80の残りの3個のスイッチング素子Q4〜Q6は一列に並ぶように配置され、かつ、スイッチング素子Q1〜Q3と平行になるように配置される。スイッチング素子Q4〜Q6のパッケージ背面の放熱板には、放熱用の金属板が設けられるが、これらのコレクタ端子又はドレイン端子は共通接続ではないため、互いに独立した金属板83a〜83cが設けられる。この金属板83a〜83cの面は、回路基板60の長手方向(前後方向、モータの回転軸方向)と水平かつ直交方向となるように配置される。このようにスイッチング素子Q1〜Q6の放熱板の面方向が冷却風の流れる方向に沿うように配置したため、金属板83a〜83cのスイッチング素子と反対側の面が冷却風の流れる方向(図1中の黒矢印参照)と平行に向くので、放熱効果を高めることができる。
回路基板60には更に、モータ5の回転制御を行う演算部(図示せず)が搭載される。演算部は、図示しないマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)を含んで構成されるものであって、インバータ回路80を駆動することによりモータ5の起動及び停止と回転速度の制御を行う。回路基板60には更に、後述する定電圧電源回路、図示しないトリガレバーと連動して動作するトリガスイッチ64が搭載される。これらは回路基板60上の任意のスペースに搭載することができる。本実施例ではマイコン101は、電解コンデンサ76aと回路基板60の間付近に搭載される。回路基板60の前方側には、3つの回転位置検出素子69(図1参照)を搭載するセンサ基板68が、回路基板60と直交するように配置される。回路基板60とセンサ基板68は、仕切り部材50によって固定される。仕切り部材50は、回路基板60をケース40に保持させるための固定部材と、スイッチング素子Q1〜Q6の間にスイッチング素子同士の短絡を抑制する仕切り板を設けるための区画部材を兼ねるものであって、合成樹脂等の絶縁材にて製造され、左右方向に延びる両端側のネジボス部分で、2つのネジ59a、59bによってケース40にネジ止めされる。回路基板60はケース40に対して後方側のネジ穴67にてネジ止めされ、前方側にて仕切り部材50によって挟持されることによりケース40に保持される。
ケース40の後方側には可変抵抗66を搭載するスイッチ基板65が設けられる。スイッチ基板65はケース40の容器状の部分から後方側に突出する独立した部分に設けられ、可変抵抗66の回転軸にはリヤカバー3の開口部3b(図1参照)から一部が露出する変速ダイヤル17が設けられる。回路基板60とスイッチ基板65は、リード線87によって配線される。
図3は図2のB−B部の断面図である。リヤカバー3の図示は省略している。ケース40は開口部40aを有する容器状であって、内部空間に液体を入れてもこぼれないように形成されるが、前述したように、電動工具1に配置する際には開口部40aの法線方向が下側(スピンドル24のギヤケース21からの突出方向)を向くように倒立した状態で配置される。これは、冷却風と共に内部に水滴や塵埃が流入した際に、ケース40の内部にたまることを極力防止するためである。このように容器状のケース40が倒立した状態で電動工具のハウジング内に配置したことで、スイッチング素子Q1〜Q6等を樹脂で完全に覆わないで、半分程度だけ覆うようにしても耐久性を高めることが可能となった。特に、スイッチング素子Q1〜Q6の間にたまった鉄粉等が、電動工具1を図1の方向に置く際に、その衝撃によってゴミや水滴がリヤカバー3の内部の下面に落ちやすくなる。
ケース40の前方側の端部には、モータハウジング2に図示しないネジにて固定するためのネジ穴42a、42bが形成される。モータハウジング2の軸受ホルダ部20は、軸受14a(図1参照)の外輪部分を保持する円筒部分から外側に向けて複数の支柱20a〜20fが形成され、支柱以外の場所では空洞となっているので、ケース40が収容される空間からモータ5側が収容される空間へ冷却風が流れる構造となっている。回路基板60は両面基板であって、その表側(図3でみると下面)にはダイオードブリッジ72とその放熱板72a、チョークコイル73等が搭載される。電解コンデンサ76aは略円柱状であり、フィルムコンデンサ76bは略直方体状であるが、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの形状は任意であり、必要とされる容量を有し、限られたスペースに配置するのに好適なサイズ、形状のものが選択される。
電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bは回路基板60の表面に絶縁シート98を介して固定される。この固定はケース40内に充填されるウレタン等の樹脂48によって固定される。このとき、回路基板60には比較的サイズの小さな抵抗などの電子素子が複数搭載されており、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bはそれら複数の電子素子を覆うようにして固定される。換言すれば、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bと回路基板60に挟まれるようにして複数の電子素子が回路基板60上に配置される。こうしてケース40内のデッドスペースを利用する配置とすることで、回路基板60において、回路を構成する素子を効率よく実装できる。また、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bと電子素子との間には絶縁シート98が介在しているので、両者間の電気的接続を抑制できる。尚、本発明では複数の電子素子が電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bと回路基板60に挟まれるよう構成したが、電子素子の少なくとも一部が挟まれていれば上記効果を奏するのは明らかである。
電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bは、開口部40aの法線方向矢視図で見た際(図2のように見えた場合)にケース40の内側領域に収まるように配置され、好ましくは、回路基板60の基板平面の寸法内に配置される。これによって電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bがケース40の外部にはみ出さずに、ケース40を収容するリヤカバー3の大型化を抑制でき、モータハウジング2の外径内にモータ5及びケース40とその収容物をすべて収めることができるので、ハウジングがコンパクトになり、電動工具1の大型化を抑制できる。また、図3のようにハウジングの軸方向断面図で見た際には、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bはハウジングの内部に大部分が位置し、ハウジングの内壁(リヤカバー3の内壁)と所定の距離を隔てるように配置される。この際、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの配置により冷却風の流れを乱さないように配慮すると良い。
樹脂48は、ケース40の開口部40aが上側になるように載置して、ケース40の内部に液体状の樹脂を満たして硬化させるもので、その硬化が完了する前に電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを樹脂48の液面から部分的に浸すように半没させてから樹脂48を硬化させる。従って、ケース40内は底面41e部分から液面(破線部)まで全ての部分が樹脂で満たされており、硬化後は樹脂が強固に固まるので電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bが安定して保持される。通常、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bのパッケージは非絶縁体であり、樹脂48自体も非導電材であるが、ここでは絶縁状態をより完全に保つためにさらなる絶縁部材、ここでは絶縁シート98を介在させている(省略しても良い)。このように電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを回路基板60に対して離間さえて樹脂48にて固定するように搭載すれば、回路基板60の上に搭載される高さの低い電子素子、例えばLSIやマイコン等の素子の上側部分に、フィルムコンデンサを搭載させることが可能となる。
回路基板60の裏面には定電圧電源回路90で用いられる電解コンデンサ94aが搭載される。電解コンデンサ94aは樹脂にて完全に浸され、固定される。回路基板60と電解コンデンサ94aの間には絶縁シート97aを介在させて、その絶縁性を高めているが、絶縁シート97aを省略しても良い。ケース40の底面41eの形状は、回路基板60のすぐ下に僅かな距離を隔ててほぼ平行になるようにしても良い。本実施例では下側に円筒形の電解コンデンサ94aを収容できるようなスペースを確保した。尚、電解コンデンサ94aは左側にだけ配置されているが、右側の空間にもコンデンサを配置するようにしても良い。また、回路基板60の表面(下側)に配置した電解コンデンサ76a、フィルムコンデンサ76bを、回路基板60の裏面に配置するように構成しても良い。しかし、本構成においてはインバータ回路80に流れる電流よりも、演算部100に出力する電流が小さいため、電解コンデンサ94a、94bは電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bに比べ発熱せず、冷却の必要性が低い。このため優先的に冷却させたい電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを外部に露出させている。換言すれば、発熱量が高いコンデンサを外部に露出させ、比較的発熱量が低いコンデンサを樹脂48に完全に埋めることで合理的なコンデンサの配置を実現している。このように、回路基板60と底面41eとの間の空間は、樹脂48が充填されて硬化する部分なので、発熱の度合いや冷却効果を考えてその搭載位置やその搭載方法を決定することが好ましい。
次に図4を用いてモータ5の駆動制御系の回路構成を説明する。電源回路70にはダイオードブリッジ72(図2参照)等によって構成される整流回路71が含まれる。電源回路70の出力側であって、インバータ回路80との間には平滑回路75が接続される。インバータ回路80は6つのスイッチング素子Q1〜Q6を含んで構成され、演算部100から供給されるゲート信号H1〜H6によってスイッチング動作が制御される。インバータ回路80の出力は、モータ5のコイル13のU相、V相、W相に接続される。電源回路70の出力側には定電圧電源回路90が接続される。ここでは、電源回路70、平滑回路75、インバータ回路80、定電圧電源回路90、演算部100の回路は同一の回路基板60上にまとめて搭載される。
電源回路70は、ダイオードブリッジ72(図2参照)によって主に構成される整流回路71を含み、整流回路71の入力側が例えば商用交流電源35に接続され、出力側が平滑回路75に接続される。整流回路71は、商用交流電源35から入力される交流を全波整流し、平滑回路75へ出力する。平滑回路75は、整流回路71とインバータ回路80との間に配置され、整流回路71によって整流された電流の中に含まれている脈流を、直流に近い状態に平滑化してインバータ回路80へ出力する。平滑回路75は、電解コンデンサ76aとフィルムコンデンサ76bと放電用の抵抗78を含んで構成される。電動工具1がディスクグラインダの場合は、他の電動工具(例えばインパクトドライバ等)に比較して大きな出力が必要となることから、電源回路70から平滑回路75に入力される電圧値も高くなっている。従って、平滑回路75に設けられるコンデンサ(電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76b)は静電容量が大きいものが要求される。本実施例では回路基板60への固定方法を工夫したことにより、大型の電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを用いることを可能とした。
電解コンデンサ76aは極性のあるコンデンサであり、フィルムコンデンサ76bは無極性のコンデンサであり、これらを並列に接続することで回路の平滑性能を向上させている。2つのコンデンサは、整流回路71の出力側とインバータ回路80の入力側の間に配置される。インバータ回路80は、3相ブリッジ形式に接続された6個のスイッチング素子Q1〜Q6を含んで構成される。ここで、スイッチング素子Q1〜Q6は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いても良い。
モータ5のステータコア9の内側では、永久磁石8を有するロータが回転する。ロータの回転軸6には位置検出用のセンサ磁石18が接続され、センサ磁石18の位置をホールIC等の回転位置検出素子69にて検出することにより演算部100はモータ5の回転位置を検出する。
演算部100は、モータのオン・オフ及び回転制御を行うための制御手段であって、マイコン101を用いて主に構成される。演算部100は回路基板60に搭載され、トリガスイッチ64の操作に伴い入力される起動信号と、変速ダイヤル17によって設定された可変抵抗66の信号に基づき、モータ5の回転速度を制御し、コイルU、V、Wへの通電時間と駆動電圧を制御する。演算部100は、インバータ回路80の6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ゲートに接続され、各スイッチング素子Q1〜Q6をオン・オフするための駆動信号H1〜H6を供給する。
インバータ回路80の6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ドレイン又は各ソースは、スター接続されたコイル13のU相、V相、W相に接続される。スイッチング素子Q1〜Q3のドレイン端子が電源回路70の正極側に共通に接続されているので、これらには共通の放熱用の金属板82を設けることができる。一方、スイッチング素子Q4〜Q6のドレイン端子はモータのV相、U相、W相の端子にそれぞれ接続されるため、スイッチング素子Q4〜Q6用の放熱用の金属板83a〜83cは個別に設けられる。
スイッチング素子Q1〜Q6は、演算部100から入力される駆動信号H1〜H6に基づきスイッチング動作を行い、商用交流電源35から電源回路70及び平滑回路75を介して供給された直流電圧を、3相(U相、V相、W相)電圧Vu、Vv、Vwとして、モータ5に供給する。モータ5に供給される電流の大きさは、平滑回路75とインバータ回路80との間に接続された電流検出抵抗102の両端の電圧値を検出することにより演算部100によって検出される。演算部100には、モータ5の設定回転に応じた所定の電流閾値が予め設定されており、検出した電流値が閾値を超えると、モータ5の駆動を停止すべく、インバータ回路80のスイッチング動作を停止させる。これにより、過電流がモータ5に流れることによる焼損等の発生が防止される。
定電圧電源回路90は、電源回路70の出力側に直接接続され、マイコン等により構成される演算部100への安定化した基準電圧(低電圧)の直流を供給するための電源回路である。定電圧電源回路90は、ダイオード96、平滑用の電解コンデンサ94a、94b、IPD回路91、コンデンサ93及びレギュレータ92を含んで構成される。定電圧電源回路90の各部は、図2には図示していないが回路基板60に搭載される。電解コンデンサ94a、94bは回路基板60の裏面側に搭載される。尚、電解コンデンサ94a、94bは容量的に可能ならば1つの電解コンデンサとしても良い。
図5は図1の回路基板60単体の表面図であって、2つの電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの配線方法を説明するための図である。ここでは回路基板60上の端子61から2本のリード線62a、62bが伸ばされ、リード線62a、62bの先端に電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの端子がまとめて半田付け77a、77bされる。リード線62a、62bは、単線またはより線にビニールの被覆を施して絶縁したビニール線(ビニール被覆電線)が用いられる。リード線62a、62bに電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを並列接続したあとに、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを回路基板60の表側面(スイッチング素子Q1〜Q6が配置される面)の空いているスペース付近、ここでは、マイコン101が搭載される付近に電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを固定するようにした。
以上のように、本実施例に係る電動工具1では、大きめの電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bが平滑回路75に設けられるので、ピーク電流の効率的な抑制が可能となる。また、回路基板60からのリード線をもって配線を延長するので、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの固定位置の自由度が高くなり、回路基板60の実装効率を高めることができる。
図6は図1の回路基板60単体の裏面図であって、2つの電解コンデンサ94a、94bの配線方法を説明するための図である。電解コンデンサ94a、94bの端子は回路基板60の裏側の端子63a、64bに直接半田付けされる。この際、電解コンデンサ94a、94bの端子を長めにとって、電解コンデンサ94a、94bの筒状の中心軸が、回路基板60の長手方向(前後方向)と一致するように端子を曲げて電解コンデンサ94a、94bの位置を仮固定する。この状態は、電解コンデンサ94a、94bがケース40の曲面状の底面に沿うような位置である。このように回路基板60の裏面側のスペースをうまく利用することにより定電圧電源回路90用の電解コンデンサ94a、94bを配置することができる。尚、回路基板60の裏面とケース40の底面41eの間にはさらにスペースがあるので、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bの全部又は一部をそこに収容するようにしても良い。但し、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bは大電流により少なからず熱を持つので、放熱性を重視するならば回路基板60の表面側であって、樹脂48から部分的に冷却風に露出するように搭載する方が有利である。
次に図7、図8を用いてケース40の形状と仕切り部材50の形状を説明する。ケース40及び仕切り部材50は非導電材料により製造され、例えばプラスチック等の合成樹脂の一体成形で製造される。図7、図8では開口部40aが上方向になるように示した斜視図である。ケース40は回路基板60を電動工具1のハウジングに固定するために用いられる取り付け基台の役割を果たすもので、容器状に形成されるケース40は前面41a、後面41b、側面41c、41dと底面41eを有し、残りの一面が開口部40aとなっている底面41eは回路基板60の裏面(底面41eに面する側)に搭載される電子素子(ここでは電解コンデンサ94a、94b)に適する形状とされ、曲面状に窪む部分が形成される。また、側面41c、41dと底面41eの接合部は、直角に形成されるのでは無く、リヤカバー3の円筒形の内壁形状に沿った形状とされ、ここでは斜めに形成されるさらなる面にて接続した。前面41aの外側部分には円筒形の筒部42が形成される。筒部42は内部にセンサ磁石18を収容させるための窪み部分であって、センサ磁石18から見て前面41aを隔てたケース40の内部側にセンサ基板68が配置されることになる。円筒形の筒部42には径方向に突出する突出部分が形成され、そこにそれぞれネジ穴42a、42bが形成される。ケース40の内部であって側面41cには、回路基板60を支持すると共に位置合わせをするための段差部45a、45bが形成される。尚、図7にて見えない側面41dの内壁部分にも、同様にして回路基板60の位置合わせをするための段差部が形成される。ケース40の後面41bの外側には、電源コード保持部43とスイッチ基板保持部44が形成される。
このような形状のケース40における回路基板60の取り付け方法を説明する。まず、図5、図6で示したように回路基板60に必要な電子素子を搭載して半田付けを行う。電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bについてはリード線62a、62bにて接続した状態としておく。次に、電子素子を搭載された回路基板60をケース40の中に収容し、ネジ穴67(図2参照)とネジを用いて回路基板60にネジ止めする。図7では見えない位置になるが、底面41eのネジ穴67に相当する位置にはネジ穴が形成されている。この際、図示しないリード線にて配線されたセンサ基板68もケース40の前面41aの内側に形成された案内レール部47にはめ込まれる。同様にして、ケース40の後方側のスイッチ基板保持部44にスイッチ基板65が取り付けられる。次に、回路基板60の前側の辺部を押えつけて固定するように、仕切り部材50が取り付けられる。
仕切り部材50は、長手方向仕切り板51と、長手方向仕切り板51から横方向に延在する2枚の横方向仕切り板52a、52bを有し、長手方向仕切り板51の前方側には平面状であって長手方向仕切り板51及び回路基板60と直交する方向に延びる押さえ板53が形成される。押さえ板53の回路基板60と接する部分には、左右方向に延びるアーム部54a、54bが形成され、アーム部54a、54bの両端部にはネジ穴55a、55bが形成される。押さえ板53の回路基板60から離れた辺から前方側に延びるように、センサ基板68が案内レール部47から脱落しないように保持する押さえ片56が設けられる。この仕切り部材50を回路基板60及びセンサ基板68のケース40内への装着後にネジ止めすることによって、回路基板60及びセンサ基板68はケース40に固定されることになる。ネジ止め後には長手方向仕切り板51、横方向仕切り板52a、52bはそれぞれスイッチング素子Q1〜Q6の放熱板、及び、金属板82、83a〜83cとは非接触状態にて固定される。
次に、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bをケース40の外側に仮置きした状態で、ケース40の開口部40aが上側を向くように、即ち、図7のようにしたままケース40の内部に樹脂48を流し込む。流し込む樹脂48は、液体状態から硬化する硬化性樹脂、例えばウレタン樹脂を用い、固定された回路基板60の表面及び裏面が完全に浸漬する量の樹脂48が流し込まれる。ここで樹脂48を開口部40aの開口面と同一になるまで満たす事も可能であるが、必要最小限に留めることで軽量化及び低コスト化を図っている。本実施例では回路基板60の表面に搭載されるスイッチング素子Q1〜Q6のパッケージの上下方向位置の途中くらいに樹脂48の液面がなる程度とした。この液面位置においては、仕切り部材50の高さ方向(H1、H2)にみて、半分程度が液面に浸る程度になる。次に、樹脂48が液体状態のうちに、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bを所定の位置に位置合わせをして、液体状の樹脂に半没させ、その状態にて樹脂48を固化させる。ここで所定の位置とは、容器状のケース40の開口部40aの開口面の法線方向(図1の矢視A)から見た際にケース40の領域内(内部空間内)に位置することを意味し、好ましくは、回路基板60の領域内に完全に収まるように配置する。
図8はケース40の別の角度から見た斜視図である。仕切り部材50のネジ穴55aが当たる部分には、ネジボス46aが形成される。図8では見えないが、仕切り部材50のネジ穴55bに当接する部分にも同様のネジボスが形成される。ケース40に固定される仕切り部材50(図7参照)の長手方向仕切り板51の高さH1部分の下端位置は、押さえ板53の高さH2部分の下面位置よりも上方になる。これは、長手方向仕切り板51、横方向仕切り板52a、52bが回路基板60の上に所定の距離をもって配置されるのに対して、押さえ板53、アーム部54a、54bは回路基板60の前端部にて直接ケース40の上に載置されるためである。従って、回路基板60は押さえ板53とケース40によって挟持されることになる。尚、仕切り部材50とケース40によって回路基板60を挟み込むようにして固定するのでは無く、回路基板60を仕切り部材50と共に共通のネジによってケース40に共締めして固定しても良い。
次に図9を用いて、スイッチング素子Q1〜Q6と仕切り部材50の高さと樹脂48の充填量との関係を説明する。スイッチング素子Q4の背面には、回路基板60の表面からの高さHが同じとなる金属板83aがネジ止めされる。まず、図示しないネジを用いて金属板83aをスイッチング素子Q4に固定し、その後にスイッチング素子Q4の3本の足81aを回路基板60のスルーホールに通した後に半田付けされる。同様にして、スイッチング素子Q5、Q6にも金属板83b、83cがネジ止めされ、3本の足81b、81cが回路基板60のスルーホールに通した後に半田付けされる。ここで、金属板83a〜83cの高さ方向に見た下端は、回路基板から所定の距離S2だけ隔てるようした。仕切り部材50に関しては、長手方向仕切り板51及び横方向仕切り板52a、52bの高さH1が、スイッチング素子Q4〜Q6の回路基板60への取り付け後の高さHよりも小さくなるように構成される。尚、長手方向仕切り板51及び横方向仕切り板52a、52bの高さ方向の下面が回路基板60の表面よりも所定の距離S1だけ隔てるようにした。これは、スイッチング素子Q4と放熱板83aの組、スイッチング素子Q5と放熱板83bの組、スイッチング素子Q6と放熱板83cの組の間を仕切ることが必要なのは、樹脂48の満たされる高さDよりも高さ方向の上側の部分であるからである。また、長手方向仕切り板51及び横方向仕切り板52a、52bの高さ方向上端位置が、スイッチング素子Q4〜Q6の高さよりも低くしているのは、冷却風に当たり易くすることで放熱性を向上させるのと、水分や塵埃等が堆積しやすいのは樹脂48の液面部分に集中するからである。もちろん。長手方向仕切り板51及び横方向仕切り板52a、52bの高さ方向上端位置と、スイッチング素子Q4〜Q6の高さを一致させるようにしても良いが、仕切る度合いを高くすると金属板83a〜83cが冷却風に晒される効果が低減するため冷却性が低下するので、それらのバランスを考えた上で仕切り板の高さH1と、高さH1が高さHのうちどの付近を占めるように構成するかを考えると良い。
本実施例ではスイッチング素子Q1〜Q6の端子部分が樹脂48によって覆われる一方で、金属板83a〜83cを高さ方向に見て約半分が樹脂48の外部に露出し、その上端位置が仕切り板の上端位置よりも高くなるので、良好な冷却効果を得ることができる。また、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bも同時に樹脂の外部に露出するので、電解コンデンサ76a及びフィルムコンデンサ76bに対しても良好な冷却効果を得ることができる。さらに、電動工具1のハウジング内に回路基板60を収容する際に、スイッチング素子Q1〜Q6が倒立するように配置したので、長手方向仕切り板51及び横方向仕切り板52a、52bによって仕切られる区画内に水分や鉄粉等の塵埃が堆積する恐れが低減するので、信頼性の高くて寿命の長い電動工具を実現できる。
以上、本実施例によれば、回路基板60を容器状のケース40内に収容し、その中に樹脂48を充填して回路基板60が完全に又はほぼ完全に浸漬するようにしたので、回路基板60の防水性、防塵性を著しく高める事ができる。また、コンデンサを基板上に配置し、硬化性の樹脂48によって固定することで、大型で重量のあるコンデンサであってもケース40内で安定して固定することができる。その際、コンデンサの一部が樹脂48から露出しているので、冷却風に晒してコンデンサを冷却できる。また、コンデンサを、リード線を介して基板上に配置しているので、コンデンサの配置の自由度が増し、回路基板60上の素子配置の自由度が増加する。また、回路基板60とコンデンサとの間にはマイコンなどの別の回路素子が配置されるため、空間を有効活用した無駄のない素子配置とすることができる。また、液体状の樹脂を流し込んで硬化させるので、ジェル状の樹脂を塗布する作業に比べて塗りムラが発生する恐れがない。さらに、発熱の大きいスイッチング素子Q1〜Q6が樹脂48から部分的に外部に露出させるので、冷却風の風路内に良好に晒すことができ、冷却効果を維持することができる。その際、金属粉等で短絡すると好ましくない部材の間に絶縁体の仕切り部材を介在させるようになったので、耐久性及び信頼性が高い電動工具を実現できる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例においては、コンデンサの端子を延長させる目的でリード線を介して基板に接続するようにしたが、コンデンサ本体の端子を長く延長することで対応しても良い。また、仕切り板は少なくとも2つのスイッチング素子間に介在すれば良く、Q1〜Q3とQ4〜Q6間のみを仕切るような一枚板にしても良い。こうすることで冷却風がより効率よくスイッチング素子に流れる。また、上述の実施例においては、図示せぬ風窓から、ハウジングの全内周面にほぼ接するようにして冷却風が流れるよう構成したが、ケース収容部分においては開口部側のみ冷却風が流れるように構成しても良い。こうすることで、スイッチング素子に冷却風を集中させることができる。また、上述の実施例においては、ケースの開口方向をスピンドルの突出方向と同方向としたが、電動工具が載置状態であるときにケースの開口方向が下方向を向くように構成であればよい。また、上述の実施例においては電動工具1の例としてグラインダに用いられる回路基板の搭載例で説明したが、同様の回路基板をグラインダだけに限られずその他の電動工具においても同様に適用でき、例えばセーバソーやマルチカッタ、筒状のハウジングを有するハンドドライバやインパクトドライバなどにおいても同様に適用できる。