以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る反発係数測定機1の概略断面図である。なお、説明の便宜上、本明細書では、図1に示された矢印A方向を前方、矢印B方向を後方と定義する。
図1に示される反発係数測定機1は、球状の圧子2を保持するホルダ3と、ホルダ3に保持された圧子2を該ホルダ3から試料8に向けて射出する射出機構5と、圧子2が試料8に衝突する前の該圧子2の速度である衝突速度、および圧子2が試料8に衝突して跳ね返った後の該圧子2の反発速度を測定する速度測定部6と、衝突速度に対する反発速度の比である反発係数を計算する演算部7と、を備える。演算部7は、該演算部7が計算した反発係数を表示する表示部10aを有する表示器10の内部に配置されている。
図1に示されるホルダ3は、円筒形状を有している。ホルダ3の前端は、図2(a)および図2(b)に示されるように、ホルダ3の軸線と平行に延びるスリット3bが形成されることにより、複数の分割部3aから構成されている。図示した例では、ホルダ3の前端は、4つのスリット3bにより、4つの分割部3aから構成されている。ホルダ3の前端を、3つ以下の分割部3aから構成してもよいし、5つ以上の分割部3aから構成してもよい。ホルダ3の内周面の直径は、球状の圧子2の直径よりも僅かに小さく設定されており、ホルダ3の前端を圧子2に押し付けたときに、分割部3aがホルダ3の外周方向に僅かに広がり、圧子2の外周面が複数の分割部3aによって保持される。
ホルダ3の形状は、円筒形状に限られず、筒形状であればよい。例えば、ホルダ3は、四角筒形状、五角筒形状などの多角筒形状であってもよい。ホルダ3が筒形状の場合でも、ホルダ3の先端には、ホルダ3の軸線と平行に延びるスリットが形成され、ホルダ3の先端は、複数の分割部から構成される。筒形状を有するホルダ3の前端を圧子2に押し付けたときに、分割部がホルダ3の外方向に僅かに広がり、圧子2の外周面が複数の分割部によって保持される。
図1に示されるように、本実施形態の射出機構5は、貫通孔13aが形成された内筒13と、内筒13の外周面13bに摺動自在に支持される内周面12aを有する外筒12と、貫通孔13a内を移動可能なストライカ15と、前記外筒12とストライカ15との間に配置され、外筒12の移動によって収縮して圧子押出部材15に付勢力を加える付勢ばね16とを備える。さらに、図1に示される射出機構5は、貫通孔13a内でのストライカ15の移動を制限するストッパ20を備える。図示はしないが、ストッパ20を省略してもよい。例えば、付勢ばね16の前端をストライカ15に固定すれば、貫通孔13a内におけるストライカ15の前方への移動を制限することができる。貫通孔13aの壁面は、内筒13の内周面である。ストライカ15は、後述するように、付勢ばね16の復元力によってホルダ3に保持された圧子2に衝突する圧子押圧部材を構成する。
本実施形態のストライカ15は、棒形状を有する。より具体的には、このストライカ15は、円柱状のストライカ本体15aと、ストライカ本体15aの直径よりも大きい直径を有する、円柱状の本体支持部15bと、を有する。ストライカ本体15aの後端が本体支持部15bの前端に埋設されることにより、ストライカ本体15aは、本体支持部15bに固定される。ストライカ本体15aの中心軸線は、本体支持部15bの中心軸線と一致する。本実施形態のストライカ本体15aは、本体支持部15bと別部材から構成されているが、ストライカ本体15aと本体支持部15bとが一体的に形成されてもよい。例えば、円柱状の部材に研削加工を施すことにより、ストライカ本体15aをストライカ15に形成することができる。
付勢ばね16の前端は、本体支持部15bに形成されたガイド孔15cに挿入される。ガイド孔15cは、本体支持部15bの後端から前端に向かって延び、ガイド孔15cの中心軸線は、本体支持部15bの中心軸線に一致する。外筒12の後端には、該外筒12の開口を塞ぐプラグ18が固定されており、プラグ18に付勢ばね16の後端が支持されている。本実施形態のプラグ18は、円柱形状を有しており、該プラグ18の外周面にはねじが形成されている。外筒12の後端に形成された開口は、プラグ18に形成されたねじが螺合するねじ孔として構成されており、プラグ18のねじを該ねじ孔に係合させることで、プラグ18が外筒12に固定される。プラグ18を回転させることにより、プラグ18を外筒12に対して前進または後進させることができる。その結果、付勢ばね16の長さを容易に変更することができるので、付勢ばね16がストライカ15に加える付勢力を容易に変更することができる。
このような構成で、付勢ばね16は、外筒12とストライカ15との間に配置される。付勢ばね16は、外筒12の移動によって収縮されて、ストライカ15に付勢力を加えることができる。この付勢ばね16の収縮動作については、後述する。図1に示されるように、付勢ばね16が縮められた状態のときに、付勢ばね16は、ストライカ15を射出機構5の前方に向けて移動させる付勢力を該ストライカ15に加えている。このストライカ15の位置がストライカ15の発射位置である。
ストライカ15の本体支持部15bの外面には、ストライカ15の周方向に沿って延びる環状の溝15dが形成されている。溝15dは、ストライカ15の本体支持部15bの外面の一部に形成されていてもよい。ストライカ15が図1に示される発射位置にあるとき、溝15dに係合自在なフック14aを有する発射レバー14が外筒11の外面に固定されている。発射レバー14は貫通孔を有しており、この貫通孔に、外筒11の外面から径方向外側に伸びるブラケット(図示せず)に固定された回動軸17が挿入されている。したがって、発射レバー14は、回動軸17を中心として回動自在に外筒12に固定される。図1に示されるように、外筒12には、該外筒12の側面を貫通する貫通孔12bが形成されており、内筒13には、該内筒13の側面を貫通し、内筒13の長手方向に沿って延びる第1長孔13eが形成されている。発射レバー14のフック14aは、外筒12の貫通孔12bと、内筒13の第1長孔13eを通って、ストライカ15の溝15dに係合する。
図3は、発射レバー14のフック14aとストライカ15の溝15dとの係合を解除したときに、付勢ばね16の復元力によってストライカ15が射出機構5の前方に押し出された状態を示す概略断面図である。図3に示されるように、射出機構5の前方に押し出されたストライカ15は、内筒13の内周面に固定された、円筒形状を有するストッパ20に衝突し、これにより、ストライカ15の移動が制限される。より具体的には、ストッパ20の後端に、ストライカ15の本体支持部15bの前端が衝突することで、ストライカ15の前方への移動が制限される。ストライカ15が図1に示される発射位置から、図3に示されるストッパ20に衝突する衝突位置まで移動する間に、ストライカ本体15aの前端がホルダ3の前端に保持された圧子2に衝突し、該圧子2だけがホルダ3から試料8に向けて射出される。図3に示されるように、ストライカ15が射出機構5の前方に発射された状態では、発射レバー14のフック14aは、外筒12の側面に形成された貫通孔12bと、内筒13の側面に形成された第1長孔13eとを通って、ストライカ15の外面に接触している。
上述したように、付勢ばね16の後端を支持するプラグ18を外筒12に対して前進または後進させることにより、付勢ばね16の長さを調整することができる。したがって、付勢ばね16がストライカ15に加える付勢力を調整することができるので、ストライカ15の衝突によって射出される圧子2の衝突速度を調整することができる。異なる試料の反発係数を比較するときに、圧子2の材料および圧子2の衝突速度は一定であることが好ましい。本実施形態の反発係数測定機1では、圧子2の衝突速度を容易に調整することができる。
上述した実施形態のストライカ15は、棒形状を有しているが、ストライカ15の形状は、棒形状に限定されない。ホルダ3に保持された圧子2に衝突し、圧子2をホルダ3から試料8に向けて射出することができれば、ストライカ15の形状は任意である。
射出機構5の前端、より具体的には内筒13の前端には、ストライカ15によって射出された圧子2が試料8に衝突する前の該圧子2の速度である衝突速度と、圧子2が試料8に衝突して跳ね返った後の該圧子2の反発速度を計測する速度測定部6が固定されている。本実施形態の速度測定部6は、内筒13の前端に取り付けられ、圧子2が通過する圧子通路23aが形成された速度測定本体23と、圧子通路23aに沿って配列された第1通過センサ24および第2通過センサ25と、を備える。圧子通路23aは、内筒13の貫通孔13aに接続される。第1通過センサ24および第2通過センサ25は、圧子通路23aに沿って配列されており、第1通過センサ24は、第2通過センサ25よりも速度測定本体23の前方に位置する。「通過センサ」とは、物体の通過を検知することができるセンサの総称である。この通過センサは、例えば、光センサまたは磁気センサを含む。
本実施形態の第1通過センサ24は、圧子通路23a内に光を照射する第1投光部24a、および第1投光部24aから照射された光を受け取る第1受光部24bを有する光センサである。本実施形態の第2通過センサ25は、圧子通路23a内に光を照射する第2投光部25a、および第2投光部25aから照射された光を受け取る第2受光部25bを有する光センサである。以下では、第1通過センサ24および第2通過センサ25が光センサである実施形態について説明する。
本実施形態の第1投光部24aおよび第2投光部25aには、発光ダイオード(LED)が用いられ、第1受光部24bおよび第2受光部25bには、フォトダイオードが用いられている。第1投光部24aからの光は、圧子通路23aの壁面に配置された投光スリット(図示せず)を通して圧子通路23a内に照射され、第1受光部24bは、圧子通路23aの壁面に配置された受光スリット(図示せず)を通った光を受け取る。同様に、第2投光部25aからの光は、圧子通路23aの壁面に配置された投光スリット(図示せず)を通して圧子通路23a内に照射され、第2受光部25bは、圧子通路23aの壁面に配置された受光スリット(図示せず)を通った光を受け取る。本実施形態では、第1光センサ24の第1投光部24aと第1受光部24bとは、速度測定本体23の前端から10mmの位置に配置され、第2光センサ25の第2投光部25aと第2受光部25bとは、速度測定本体23の前端から20mmの位置に配置されている。
第1光センサ24は、第1投光部24aから照射された光が圧子2の通過によって遮られたことを第1受光部24bが検知し、これにより、圧子2が第1光センサ24を通過したことを検知する。同様に、第2光センサ25は、第2投光部25aから照射された光が圧子2の通過によって遮られたことを第2受光部25bが検知し、これにより、圧子2が第2光センサ25を通過したことを検知する。演算部7は、圧子2が第1光センサ24を通過してから、第2光センサ25を通過するまでの通過時間を計測している。第1光センサ24と第2光センサ25との間の距離は予め決定されている(本実施形態では10mm)。したがって、演算部7は、圧子2が第2光センサ25を通過してから、第1光センサ24を通過するまでの通過時間と、第1光センサ24と第2光センサ25との間の距離とから圧子2の衝突速度を計算することができる。同様に、演算部7は、圧子2が第1光センサ24を通過してから、第2光センサ25を通過するまでの通過時間と、第1光センサ24と第2光センサ25との間の距離とから圧子2の反発速度を計算することができる。
図4は、第1光センサ24の電気回路の構成を示す概略図である。以下、図4を用いて、第1光センサ24の電気回路の構成を説明する。第2光センサ25の電気回路の構成は、第1光センサ24の電気回路の構成と同一であるため、その重複する説明を省略する。
図4に示されるように、フォトダイオードである第1受光部24bには、逆バイアス電位Vrが加えられている。第1受光部24bは、LEDである第1投光部24aからの光を受け取ることにより、電流を発生させることができる。第1受光部24bから発生した電流は、第1オペアンプ30の負入力端子30bに入力される。第1オペアンプ30の正入力端子30aには、電圧VAが入力される。第1オペアンプ30の出力端子30cからは、第1受光部24bから発生した電流が電圧VAを基準として変換抵抗35により変換された電圧Vopaが出力される(電流電圧変換)。
第1オペアンプ30から出力された電圧Vopaは、第2オペアンプ31の負入力端子31bに遅延回路32を経て入力される。第2オペアンプ31の正入力端子31aには、予め定められたベース電圧Vdetが入力される。第2オペアンプ31は、負入力端子31bに入力された電圧Vopaと、正入力端子31aに入力されたベース電圧Vdetとの差分である電圧Vopbを、該第2オペアンプ31の出力端子31cから出力する。第2オペアンプ31の出力端子31cから出力された電圧Vopbは、変換抵抗36によって電流に変換され、この電流が第1発光部24aに加えられる。
図4に示されるように、第1オペアンプ30の出力端子から出力された電圧Vopaは、コンパレータ38の正入力端子38aに入力される。コンパレータ38の負入力端子38bには、予め設定されたしきい値である電圧Vcmpが入力される。コンパレータ38は、正入力端子38aに入力された電圧Vopaと、負入力端子38bに入力された電圧Vcmpとを比較する。コンパレータ38は、電圧Vopaが電圧Vcmpよりも大きいときに、コンパレータ38の出力端子38cから信号VSを出力する。信号VSは、演算部7に入力される。
図4に示す回路構成によれば、圧子2の通過によって第1投光部24aからの光が遮れていないときは、第1オペアンプ30から出力される電圧Vopaが予め設定されたベース電圧Vdetに常に収束するように、第1投光部24aの発光量を自動で調整することができる。すなわち、図4に示す電気回路は、フォトダイオードである第1受光部24bの出力電流が一定になるように、該第1受光部24bの出力電流に応じて、LEDである第1投光部24aの発光量を自動で変更させるフィードバック回路を含んでいる。
LEDである第1投光部24aから照射された光を受け取る、フォトダイオードである第1受光部24bは、圧子2の通過によって第1投光部24aからの光が遮られていないときは、常に一定の電流を出力するのが好ましい。しかしながら、LEDの発光量は、該LEDが配置されている環境(例えば、気温および湿度など)によって異なる。同様に、フォトダイオードが出力する電流は、該フォトダイオードが配置されている環境(例えば、気温および湿度など)によって異なる。さらに、LEDには個体差が存在するので、同一の電流を、同一の構造を有する異なるLEDに流した場合、各LEDの発光量は異なる。同様に、フォトダイオードには個体差が存在するので、同一の構造を有する異なるフォトダイオードが同一の光量を受け取ったときに、各フォトダイオードが出力する電流は異なる。
したがって、図4に示される電気回路を用いない場合、オペアンプ30が出力する電圧Vopaは、反発係数測定機1が用いられる環境によって変動するため、正確な反発係数を測定することができないおそれがある。正確な反発係数を測定するためには、第1投光部24aの発光量および/または第1受光部24bの出力電流を、測定毎に調整する必要がある。同様に、図4に示される電気回路を用いない場合、異なる反発係数測定機1のオペアンプ30が出力する電圧Vopaは、各反発係数測定機1で異なるため、正確な反発係数を測定することができないおそれがある。正確な反発係数を測定するためには、第1投光部24aの発光量および/または第1受光部24bの出力電流を、各反発係数測定機1で調整する必要がある。
図4に示される電気回路を用いた場合、第1オペアンプ30から出力される電圧Vopaが予め設定されたベース電圧Vdetに常に収束するように、第1投光部24aの発光量を自動で調整することができる。したがって、第1投光部24aの発光量および/または第1受光部24bの出力電流を、測定毎に調整する必要がない。同様に、第1投光部24aの発光量および/または第1受光部24bの出力電流を、各反発係数測定機1で調整する必要がない。第2光センサ25の電気回路の構成も、第1光センサ24の電気回路の構成と同一の構成を有するので、第2光センサ25でも同一の利点が得られる。
図5は、圧子2が第1光センサ24を通過してから、第2光センサ25を通過するまでの通過時間T1を計測する方法を説明するための概略図である。すなわち、図5は、試料8に衝突して跳ね返った圧子2の反発速度を測定する方法を説明するための概略図である。図5の上段には、時間経過と共に変化する、第1光センサ24の第1オペアンプ30の出力電圧Vopaおよびコンパレータ38から出力される信号VSを表すグラフが示される。図5の下段には、時間経過と共に変化する、第2光センサ25の第1オペアンプ30の出力電圧Vopaおよびコンパレータ38から出力される信号VSを表すグラフが示される。
試料8に衝突して跳ね返った圧子2は、第1光センサ24の配置位置まで移動する。圧子2が第1光センサ24の第1投光部24aが発する光を遮って、第1受光部24bが受け取る光量が減少すると、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは上昇する。圧子2が第1光センサ24を通過するにしたがって、第1受光部24bが発する光が遮られる量は、徐々に減少していき、その後徐々に上昇する。したがって、第1受光部24bが受け取る光量は、徐々に減少した後で徐々に上昇するので、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは、図5の上段に示されるような凸波形を有する波SAを描く。上述したように、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは、コンパレータ38(図4参照)に入力され、しきい値である電圧Vcmpと比較される。第1オペアンプ30の出力電圧Vopaが電圧Vcmpよりも大きい場合に、コンパレータ38は、信号VSを出力する。第1オペアンプ30の出力電圧Vopaがしきい値電圧Vcmpよりも小さい場合、コンパレータ38は、信号VSの出力を停止する。その結果、演算部7には、凸波形を有する波SAがコンパレータ38によって変換された矩形波RAが入力される。
演算部7は、コンパレータ38からの信号VSが出力された時点Ta、および信号VSの出力が停止した時点Tbを検知する。すなわち、時点Taは、演算部7が第1光センサ24における圧子2の通過の検知を開始した検知開始時点であり、時点Tbは、演算部7が第1光センサ24における圧子2の通過の検知を終了した検知終了時点である。さらに、演算部7は、時点Taを検知してから時点Tbを検知するまでの時間Tcを半分に除算した時点Tdを計算する。時間Tcは、演算部7が第1光センサ24における圧子2の通過を検知している時間に相当する。
圧子2はさらに移動して、第2光センサ25の配置位置まで移動する。圧子2が第2光センサ25の第2投光部25aが発する光を遮って、第2受光部25bが受け取る光量が減少すると、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは上昇する。圧子2が第2光センサ25を通過するにしたがって、第2受光部25bが発する光が遮られる量は、徐々に減少していき、その後徐々に上昇する。したがって、第2受光部25bが受け取る光量は、徐々に減少した後で徐々に上昇するので、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは、図5の下段に示されるような凸波形を有する波SBを描く。上述したように、第1オペアンプ30の出力電圧Vopaは、コンパレータ38(図4参照)に入力され、しきい値である電圧Vcmpと比較される。第1オペアンプ30の出力電圧Vopaが電圧Vcmpよりも大きい場合に、コンパレータ38は、信号VSを出力する。第1オペアンプ30の出力電圧Vopaが電圧Vcmpよりも小さい場合、コンパレータ38は、信号VSの出力を停止する。その結果、演算部7には、凸波形を有する波SBがコンパレータ38によって変換された矩形波RBが入力される。
演算部7は、コンパレータ38からの信号VSが出力された時点Te、および信号VSの出力が停止した時点Tfを検知する。すなわち、時点Teは、演算部7が第2光センサ25における圧子2の通過の検知を開始した検知開始時点であり、時点Tfは、演算部7が第2光センサ25における圧子2の通過の検知を終了した検知終了時点である。さらに、演算部7は、時点Teを検知してから時点Tfを検知するまでの時間Tgを半分に除算した時点Thを計算する。時間Tgは、演算部7が第2光センサ25における圧子2の通過を検知している時間に相当する。
演算部7は、時点Tdと時点Thの間の時間を、圧子2が第1光センサ24を通過してから、第2光センサ25を通過するまでの通過時間T1と決定する。さらに、演算部7は、第1光センサ24と第2光センサ25の間の距離を、通過時間T1で除算することにより、圧子2の反発速度を計算する。
本実施形態では、時点Tdと時点Thの間の時間を、圧子2が第1光センサ24を通過してから、第2光センサ25を通過するまでの通過時間T1として用いる。時点Tdと時点Thの間の時間を通過時間T1として用いた場合、例えば、時点Taと時点Teの間の時間を通過時間として用いる場合と比較して、通過時間T1の測定誤差を小さくすることが可能であり、より正確な反発速度を計算することができる。
圧子2の衝突速度は、同様の方法を利用して、演算部7によって計算される。すなわち、圧子2が第2光センサ25を通過してから、第1光センサ24を通過するまでの通過時間を演算部7が決定することにより、該演算部7によって衝突速度が計算される。演算部7は、さらに、衝突速度に対する反発速度の比である反発係数を計算する。
図示はしないが、第2光センサ25を省略し、第1光センサ24のみを用いて、圧子2の衝突速度と反発速度を演算部7が計算してもよい。例えば、演算部7が圧子2の直径を図5における時点Ta(すなわち、第1光センサ24における圧子2の検知開始時点)と時点Tb(すなわち、第1光センサ24における圧子2の検知終了時点)との間の時間Tcで除算することにより、演算部7は、圧子2の反発速度を計算してもよい。同様に、演算部7は、第1光センサ24のみを用いて圧子2の衝突速度を計算することができる。
このように、第1光センサ24のみを用いて、圧子2の反発速度および衝突速度を測定する場合、速度測定本体23の大きさを小さくすることができる。さらに、第1光センサ24を試料8の表面に近接して配置することができるので、正確な反発係数を測定することができる。
図1に示されるように、ホルダ3は、内筒13の前端から後端に向かって挿入されている。外筒12には、該外筒12の径方向外側に突出する外筒フランジ部12cが形成され、内筒13には、該内筒13の径方向外側に突出する内筒フランジ部13cが形成されている。ホルダ3の外周面には、ホルダフランジ部材40が固定されている。ホルダフランジ部材40は、ホルダ3の後端における外周面に固定される円筒状の固定部40aと、固定部40aからホルダ3の径方向外側に突出する突出フランジ部40bとを有する。内筒13には、該内筒13の側面を貫通し、内筒13の長手方向に沿って延びる第2長孔13dが形成されており、ホルダフランジ部材40の突出フランジ部40bは、第2長孔13dを通って、内筒13の外周面よりも外側に突出している。
反発係数測定機1は、内筒フランジ部13cと外筒フランジ部12cとの間に配置される第1戻しばね43を有し、第1戻しばね43は、内筒フランジ部13cを外筒フランジ部12cから離間する方向に付勢する。さらに、反発係数測定機1は、突出フランジ部40bと外筒フランジ部12cとの間に配置される第2戻しばね44を有し、第2戻しばね44は、突出フランジ部40bを外筒フランジ部12cから離間する方向に付勢する。外筒フランジ部12cには、突出フランジ部40bに形成された第1貫通孔40cを通って該突出フランジ部40bを貫通するまで延びる第1ガイド棒46が固定される。第1ガイド棒46は、第2戻しばね44の内部を通って延びており、該第1ガイド棒46には、第2戻しばね44の付勢力により、突出フランジ部40bが外筒フランジ部12cから離間する方向に移動することを制限する留め具48が固定されている。内筒フランジ部13cには、突出フランジ部40bに形成された第2貫通孔40dを通って該突出フランジ部40bを貫通するまで延びる第2ガイド棒47が固定される。
外筒12の外筒フランジ部12c、第1ガイド棒46、第2戻しばね44、ホルダフランジ部材40、および留め具48は、ホルダ3を外筒12に連結する連結機構39を構成する。
図6は、反発係数を測定した後の圧子2をホルダ3に再び保持させる様子を示す概略図である。図6に示されるように、圧子2をホルダ3に再び保持させるために、作業者は、第1戻しばね43の付勢力に抗して、発射レバー14のフック14aがストライカ15の外面に形成された溝15dに係合するまで、外筒12を内筒13に向けて押し込む。このとき、連結機構39によって外筒12に連結されたホルダ3は、速度測定部6の圧子通路23a内を前進する。ホルダフランジ部材40の突出フランジ部40bは、内筒12の側面に形成された第2長孔13dに沿って移動できるので、ホルダフランジ部材40も、反発係数測定機1の前方に向かって移動することができる。ホルダ3に固定されたホルダフランジ部材40は、第2戻しばね44によって付勢力を加えられているので、ホルダ3は、該ホルダ3と外筒12との間の距離を維持したまま、反発係数測定機1の前方に向かって移動する。反発係数測定機1の前方に向かって移動するホルダ3は、速度測定部6の速度測定本体23に形成された圧子通路23a内を前進して、圧子通路23aの前端まで達し、その結果、圧子2はホルダ3の先端で保持される。
ストライカ15は、ストッパ20によって反発係数測定機1の前方に向かう移動が制限されているので、外筒12を内筒13に押し込んだときに、ストライカ15は移動できない一方で、付勢ばね16が収縮される。外筒12に固定された発射レバー14のフック14aは、内筒12の側面に形成された第1長孔13eに沿って移動し、ストライカ15の外面に形成された溝15dに係合する。外筒12を内筒13に向けて押し込む押圧力を解除すると、第1戻りばね43の付勢力によって、外筒12が反発係数測定機1の後方に向かって移動する。このとき、フック14aが係合するストライカ15も後方に移動して、ストライカ15は、図1に示される発射位置に待機する。
外筒12を内筒13に押し込むときに、ホルダ3は、第1ガイド棒46によって案内される。同様に、外筒12を内筒13に押し込むときに、ホルダ3は、第2ガイド棒47によって案内される。したがって、外筒12および内筒13に対するホルダ3の回転が阻止される。
このような構成によれば、外筒12を内筒13に対して押し込むだけの簡単な操作で、圧子2をホルダ3に再び保持させることができる。したがって、連続して反発係数を測定するときに、作業者の負担を軽減することができる。
本実施形態の反発係数測定機1によれば、反発係数を測定するために試料8に衝突させる衝突体(物体)は、球状の圧子2のみである。すなわち、試料8に衝突させる衝突体は、例えば、ショア硬さ試験のハンマーやリープ硬さ試験のインパクトボディとは相違して、圧子2が固定される圧子支持体を含まない。その結果、試料に衝突させる衝突体(物体)の質量を大幅に低減できるので、反発係数を測定する際に発生する質量効果が大幅に低減され、試料の反発係数を正確に測定することができる。また、球状の圧子2はホルダ3に保持され、射出機構5により該ホルダ3から試料8に向けて射出される。したがって、圧子2を射出する方向に制限がないので、自由な方向に試験を行うことができる。さらに、本実施形態の反発係数測定機1によれば、プラグ18を外筒12に対して前進または後進させることにより、圧子2の衝突速度を容易に調整することができる。
質量効果が大幅に低減でき、かつ自由な方向に試験を行える本実施形態の反発係数測定機1によれば、様々な試料8の反発係数を測定することができる。例えば、金属材料の反発係数だけでなく、チョコレートや鰹節のような食品、あるいはセラミック、大理石、ガラスなどの非金属材料の反発係数を測定することができる。さらに、試料8に衝突させる衝突体は球状の圧子2のみであり、衝突体の体積が非常に小さい。したがって、衝突体が有する熱容量が小さい。また、試料8に圧子2が接触する時間は一瞬である。その結果、試験に起因する試料8の表面温度の変化量を大幅に抑制することができるので、高温、または低温の試料8の反発係数を正確に測定することができる。
さらに、本実施形態の反発係数測定機1では、圧子2の直径に応じて、ホルダ3の大きさおよびストライカ本体15aの直径などを適宜選定することにより、様々な直径を有する圧子2を使用することができる。したがって、非常に小さな直径を有する圧子2を本実施形態の反発係数測定機1で用いることができるので、質量効果をさらに低減することができる。
試験時に発生する質量効果を低減する観点から、できるだけ小さい直径を有する圧子2を用いるのが好ましい。一方で、表面に微小な凹凸が形成された試料8の反発係数を測定するときに、試料8からの圧子2の跳ね返り方向が、射出機構5からの圧子2の射出方向に対して大きく逸れて(傾いて)しまう場合がある。この理由は、試料8の表面に形成された凹凸の大きさに対して圧子2の直径が小さすぎるためである。したがって、質量効果の発生を抑制しながら、圧子2の跳ね返り方向を安定させるためには、圧子2の直径は5mm以下であるのが好ましい。
圧子2の直径が小さくなるにつれて、反発係数を測定する作業者の負担が増加する。例えば、非常に小さい直径を有する圧子2を用いる場合、作業者が圧子2を紛失しやすくなる。したがって、作業効率の観点から、圧子2の直径は0.5mm以上であるのが好ましい。さらに、反発係数を測定する前に、圧子2の破損および/または欠損を確実に確認するために、圧子2の直径は、2mm以上の直径を有するのがより好ましい。すなわち、圧子2の直径の範囲は、0.5mm以上5mm以下が好ましく、2mm以上5mm以下がより好ましい。
本実施形態の反発係数測定機1の速度測定部6は、光センサ24,25を用いて圧子2の衝突速度および反発速度を測定する。したがって、圧子2の材質に制限はなく、例えば、圧子2は、超硬合金などの金属材料から構成されてもよいし、セラミックおよびダイアモンドなどの非金属材料から構成されてもよい。好ましくは、圧子2は、セラミックであるアルミナから構成された軸受用ボールである。アルミナから構成された軸受用ボールは、高い真球度を有するので、反発係数測定機1は、正確な反発係数を高い再現性で測定することができる。アルミナから構成された軸受用ボールは、安価であり、かつ容易に市場で入手することができる。
速度測定部6の速度測定本体23に、速度測定部6が試料8に接触するときに速度測定本体23の圧子通路23aの開口を開き、速度測定部6が試料8から離れるときに速度測定本体23の圧子通路23aの開口を閉じるシャッター機構50をさらに設けてもよい。図7は、シャッター機構50が設けられた速度測定本体23の一例を示した概略断面図である。図7に示されるように、本実施形態のシャッター機構50は、圧子通路23aの開口に配置された扉51と、速度測定本体23から先端が突出する開閉棒54と、開閉棒54の動きを扉51の開閉動作に変換するリンク機構55とを備える。本実施形態の速度測定本体23は、圧子通路23aが形成され、扉51が配置される第1部材23bと、開閉棒54が配置される第2部材23cとで構成される。
図8(a)は、図7のD線矢視図であり、図8(b)は、図8(a)のF−F線断面図であり、図8(c)は、図8(b)のG−G線断面図である。図8(a)に示されるように、本実施形態の扉51は、速度測定本体23の圧子通路23aの開口をリンク機構55によって開閉する第1扉51aと第2扉51bとを有する。リンク機構55については、後述する。第1扉51aおよび第2扉51bが互いに当接するときに、圧子通路23aの開口が閉じられ、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに離間するときに、圧子通路23aの開口が開かれる。図8(a)は、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに当接して、圧子通路23aの開口が閉じられている状態を示している。
図8(a)および図8(b)に示されるように、第1扉51aの側面には、第1円弧面52aを有する第1開閉ガイド52が固定され、第2扉51bには、第2円弧面53aを有する第2開閉ガイド53が固定される。第1開閉ガイド52の第1円弧面52aと、第2開閉ガイド53の第2円弧面53aとは、互いに対向している。第1開閉ガイド52は、第1開閉軸56を介して第1部材23bに回動自在に固定される。すなわち、第1開閉ガイド52は、第1開閉軸56まわりに回動することができ、その結果、第1開閉ガイド52に固定された第1扉51aが第1開閉軸56まわりに回動することができる。第2開閉ガイド53は、第2開閉軸57を介して第1部材23bに回動自在に固定される。すなわち、第2開閉ガイド53は、第2開閉軸57まわりに回動することができ、その結果、第2開閉ガイド53に固定された第2扉51bが第2開閉軸57まわりに回動することができる。
図8(b)および図8(c)に示されるように、第1扉51aの中央領域には、円弧状の第1スロープ面51dが形成された第1収容部51c(図8(b)参照)が形成されている。図8(c)に仮想線(一点鎖線)で描かれた第2扉51bの中央領域にも、円弧状の第2スロープ面51eが形成された第2収容部51fが形成されている。第1扉51aと第2扉51bとが互いに当接しているとき、第1収容部51cと第2収容部51fとで構成される内部空間に圧子2を収容しておくことができる。
図9(a)は、図7のE線矢視図であり、図9(b)は、図9(a)のH−H線断面図である。図9(a)に示されるように、開閉棒54の後端には、開閉ばね58の一端が固定されており、開閉ばね58の他端は、第2部材23cに固定されている。この状態で、開閉棒54の前端は、第2部材23cの前端よりも前方に突出している。図9(a)および図9(b)に示されるように、開閉棒54の側面には、円柱状の第1突起54aおよび第2突起54bが形成されており、第1突起54aは、第2突起54bよりも開閉棒54の前方に位置する。第1突起54aおよび第2突起54bは、第1部材23bに向かって、開閉棒54の側面から突出する。
シャッター機構50のリンク機構55は、第1開閉ガイド52、第2開閉ガイド53、開閉棒54に形成された第1突起54aおよび第2突起54b、および開閉ばね58により構成される。図10は、リンク機構55により、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに離間する方向に回動して、圧子通路23aの開口が開かれた状態を示す模式図である。図11は、リンク機構55により、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに当接して、圧子通路23aの開口が閉じられた状態を示す模式図である。
図10に示されるように、速度測定部6の速度測定本体23を試料8の表面に接触させたとき、開閉棒54は、開閉ばね58の付勢力に抗して、該開閉棒54の先端が速度測定本体23の内部に収容されるまで押し込まれる。このとき、開閉棒54に形成された第1突起54aが第1開閉ガイド52の第1円弧面52aと、第2開閉ガイド53の第2円弧面53aとに接触し、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに離間する方向に、第1開閉ガイド52および第2開閉ガイド53を第1開閉軸56および第2開閉軸57まわりにそれぞれ回動させる。その結果、速度測定本体23の圧子通路23aの開口が開いて、圧子2を材料8の表面に衝突させることができる。
図11に示されるように、速度測定部6の速度測定本体23を試料8の表面から離間させたとき、開閉棒54は、開閉ばね58の復元力により、該開閉棒54の先端が速度測定本体23の前端から突出するまで前進する。このとき、開閉棒54に形成された第2突起54bが第1開閉ガイド53の第1円弧面52aと、第二開閉ガイド53の第2円弧面53aとに接触し、第1扉51aおよび第2扉51bが互いに当接する方向に、第1開閉ガイド52および第2開閉ガイド53を第1開閉軸56および第2開閉軸57まわりにそれぞれ回動させる。その結果、速度測定本体23の圧子通路23aの開口が閉じて、第1収容部51cと第2収容部51fとで構成される内部空間に圧子2が収容される(図8(c)参照)。このとき、圧子2は、第1収容部51cに形成された第1スロープ面51dと、第2収容部51fに形成された第2スロープ面51eとに案内されるので、圧子2が第1扉51aと第2扉51bとに挟まれることが防止される。
本実施形態のシャッター機構50によれば、試料8に速度測定本体23を接触させたときにだけ、圧子通路23aの開口が開かれる。一方で、速度測定本体23を試料8から離間させたときは、圧子通路23aの開口が閉じられる。したがって、射出機構5から射出された圧子2の紛失を効果的に防止することができるので、作業者の負担を軽減することができる。
図12は、別の実施形態に係る速度測定部6を示す概略図である。図12に示される速度測定部6は、上述した第1通過センサ24および第2通過センサ25に加えて、第3通過センサ26を有する。上述したように、「通過センサ」とは、物体の通過を検知することができるセンサの総称であり、この通過センサは、例えば、光センサまたは磁気センサを含む。以下では、第1通過センサ24、第2通過センサ25、および第3通過センサ26が光センサである実施形態について説明する。
第1光センサ24、第2光センサ25、および第3光センサ26は、圧子通路23aに沿って配列されており、第1光センサ24は、第2光センサ25および第3光センサ26よりも速度測定本体23の前方に位置し、第2光センサ25は、第3光センサ26よりも速度測定本体23の前方に位置する。
第3光センサ26は、第1光センサ24および第2光センサ25と同一の構成を有する。すなわち、第3光センサ26は、圧子通路23a内に光を照射する第3投光部26a、および第3投光部26aから照射された光を受け取る第3受光部26bを有し、第3投光部26aはLEDであり、第3受光部26bはフォトダイオードである。第3光センサ26の電気回路の構成は、図4を用いて説明された第1光センサ24の電気回路の構成と同一である。すなわち、第3光センサ26の電気回路に設けられた第1オペアンプ30から出力される電圧Vopaが予め設定されたベース電圧Vdetに常に収束するように、第3投光部26aの発光量が自動で調整される。
これまで説明してきた実施形態に係る反発係数測定機1は、自由な方向に向けて試験を行うことができる。例えば、圧子2を上向きに射出することもできるし、下向きに射出することもできる。圧子2が射出される方向が異なる場合、圧子2には異なる方向の重力が作用する。したがって、圧子2の射出方向によって、測定された反発係数に微小な誤差が生じるおそれがある。特に、圧子2の衝突速度および反発速度が遅い場合、重力の影響が大きくなる。したがって、圧子2が試料8の表面に衝突する瞬間の圧子2の速度を衝突速度として用い、圧子2が試料8の表面から跳ね返った瞬間の圧子2の速度を反発速度として用いて、反発係数を計算するのが好ましい。以下、図13を用いて、圧子2が試料8に衝突する瞬間の圧子2の衝突速度、および圧子2が試料8から跳ね返った瞬間の圧子2の反発速度を計算により求める方法を説明する。
図13は、圧子2が試料8の表面に衝突する瞬間の該圧子2の衝突速度、および圧子2が試料8から跳ね返った瞬間の反発速度を計算により求める方法の説明図である。図13において、点Psは試料8の表面を表し、点P1は第1光センサ24の位置を表し、点P2は第2光センサ25の位置を表し、点P3は第3光センサ26の位置を表す。以下では、圧子2が点P3、点P2、点P1をこの順に通過して点Psに到達する瞬間の、該圧子2の衝突速度を計算する方法が説明される。
点P3(すなわち、第3光センサ26)を通過する圧子2の速度をv3、点P2(すなわち、第2光センサ25)を通過する圧子2の速度をv2、点P1(すなわち、第1光センサ24)を通過する圧子2の速度をv1とし、圧子2が点Ps(すなわち、試料8の表面)に到達する瞬間の速度をvsとする。さらに、点P3と点P2との間の平均速度をv23とし、点P2と点P1との間の平均速度をv12とし、点P3と点P1との間の平均速度をv13とする。点P3から点P2までの距離はL23であり、点P2から点P1までの距離はL12であり、点P3から点P1までの距離はL13であり、点P3から点Psまでの距離はLsである。制御部7は、図5を参照して説明された方法で、圧子2が点P3を通過してから点P2を通過するまでの時間T23、圧子2が点P2を通過してから点P1を通過するまでの時間T12、および圧子2が点P3を通過してから点P1を通過するまでの時間T13を測定する。
点P3と点P2との間の平均速度v23は、制御部7が計測した時間T23と既知であるL23から以下の式(1)により計算することができる。
v23=L23/T23 ・・・(1)
同様に、平均速度v12は、以下の式(2)により計算することができ、平均速度v13は、以下の式(3)により計算することができる。
v12=L12/T12 ・・・(2)
v13=L13/T13 ・・・(3)
圧子2が加速度αの等加速度運動をしていると仮定すると、速度v23、速度v2、および速度v3には以下の式(4)の関係が成り立つ。
v23=(v2+v3)/2 ・・・(4)
同様に、速度v12、速度v1、および速度v2には以下の式(5)の関係が成り立ち、速度v13、速度v1、および速度v3には以下の式(6)の関係が成り立つ。
v12=(v1+v2)/2 ・・・(5)
v13=(v1+v3)/2 ・・・(6)
式(4)、式(5)、および式(6)から、以下の式(7)、式(8)、および式(9)が得られる。
v1=−v23+v12+v13 ・・・(7)
v2=v23+v12−v13 ・・・(8)
v3=v23−v12+v13 ・・・(9)
圧子2の加速度αは、以下の式(10)から求めることができる。
α=(v1−v3)/T13 ・・・(10)
演算部7は、上述した計算式(1),(2),(3)によって、速度v23,速度v12,速度v13を得ているので、演算部7は、式(7)、式(8)、および式(9)により速度v1、速度v2、および速度v3を計算することが可能である。その結果、演算部7は、式(10)から圧子2の加速度αを計算することができる。
圧子2が加速度αで等加速度運動をしていると仮定した場合、点Ps(すなわち、試料8の表面)に衝突する瞬間の圧子2の衝突速度vsは、以下の式(11)または式(12)から求めることができる。
vs=(v32+2Ls・α)1/2 ・・・(11)
vs=v3・(1+((v1/v3)2−1)(Ls/L13)))1/2
・・・(12)
上述したように、演算部7は、計算により速度v3、速度v2、速度v1、および加速度αを得ており、距離Lsおよび距離L13は既知であるため、演算部7は、圧子2が試料8の表面に衝突する瞬間の衝突速度vsを計算することができる。
次に、圧子2が試料8の表面から跳ね返った瞬間の反発速度を計算により求める方法を、図13を用いて説明する。図13において、点Psは試料8の表面を表し、点P1は第1光センサ24の位置を表し、点P2は第2光センサ25の位置を表し、点P3は第3光センサ26の位置を表す。試料8の表面(すなわち点Ps)から跳ね返った圧子2は、点P1、点P2、点P3をこの順に通過する。
点Psから跳ね返った圧子2が点P1(すなわち、第1光センサ24)を通過するときの速度をv1’とし、点Psから跳ね返った圧子2が点P2(すなわち、第2光センサ25)を通過するときの速度をv2’とし、点Psから跳ね返った圧子2が点P3(すなわち、第3光センサ26)を通過するときの速度をv3’とする。さらに、点P1と点P2との間の平均速度をv12’とし、点P2と点P3との間の平均速度をv23’とし、点P1と点P3との間の平均速度をv13’とする。点P1から点P2までの距離はL12であり、点P2から点P3までの距離はL23であり、点P1から点P3までの距離はL13であり、点Psから点P3までの距離はLsである。制御部7は、図5を参照して説明された方法で、点Psから跳ね返った圧子2が点P1から点P2を通過するまでの時間T12’、点Psから跳ね返った圧子2が点P2から点P3を通過するまでの時間T23’、および点Psから跳ね返った圧子2が点P1から点P3を通過するまでの時間T13’を測定する。
点P1と点P2との間の平均速度v12’は、制御部7が計測した時間T12’と既知であるL12から以下の式(13)により計算することができる。
v12’=L12/T12’ ・・・(13)
同様に、平均速度v23’は、以下の式(14)により計算することができ、平均速度v13’は、以下の式(15)により計算することができる。
v23’=L23/T23’ ・・・(14)
v13’=L13/T13’ ・・・(15)
圧子2が加速度α’の等加速度運動をしていると仮定すると、速度v12’、速度v1’、および速度v2’には以下の式(16)の関係が成り立つ。
v12’=(v1’+v2’)/2 ・・・(16)
同様に、速度v23’、速度v2’、および速度v3’には以下の式(17)の関係が成り立ち、速度v13’、速度v1’、および速度v3’には以下の式(18)の関係が成り立つ。
v23’=(v2’+v3’)/2 ・・・(17)
v13’=(v1’+v3’)/2 ・・・(18)
式(16)、式(17)、および式(18)から、以下の式(19)、式(20)、および式(21)が得られる。
v1’=−v23’+v12’+v13’ ・・・(19)
v2’=v23’+v12’−v13’ ・・・(20)
v3’=v23’−v12’+v13’ ・・・(21)
圧子2の加速度α’は、以下の式(22)から求めることができる。
α=(v3’−v1’)/T13’ ・・・(22)
演算部7は、上述した計算式(13),(14),(15)によって、速度v12’,速度v23’,速度v13’を得ているので、演算部7は、式(19)、式(20)、および式(21)により速度v1’、速度v2’、および速度v3’を計算することが可能である。その結果、演算部7は、式(22)から、点Psから跳ね返った圧子2の加速度α’を計算することができる。
圧子2が加速度α’で等加速度運動をしていると仮定した場合、点Ps(すなわち、試料8の表面)から跳ね返った瞬間の圧子2の反発速度vs’は、以下の式(23)または式(24)から求めることができる。
vs’=(v1’2+2Ls・α)1/2 ・・・(23)
vs’=v1’・(1+((v3’/v1’)2−1)・
((L13−Ls)/L13))1/2 ・・・(24)
上述したように、演算部7は、計算により速度v1’、速度v2’、速度v3’、および加速度α’を得ており、距離Lsおよび距離L13は既知であるため、演算部7は、圧子2が試料8の表面から跳ね返った瞬間の反発速度vs’を計算することができる。
このように、演算部7は、圧子2が試料8に衝突する瞬間の圧子2の衝突速度vs、および圧子2が試料8の表面から跳ね返った瞬間の圧子2の反発速度vs’を計算により求めることができる。圧子2が試料8に衝突する瞬間の圧子2の衝突速度vs、および圧子2が試料8の表面から跳ね返った瞬間の圧子2の反発速度vs’に基づいて、演算部7が反発係数を計算した場合、演算部7は、重力が圧子2に与える影響が排除された反発係数を得ることができる。
図14は、さらに別の実施形態に係る速度測定部6を示す概略図である。図14に示される速度測定部6の第1光センサ24の第1投光部24aおよび第1受光部24bと、第2光センサ25の第2投光部25aおよび第2受光部25bは、演算部7の内部に配置される。すなわち、第1光センサ24および第2光センサは、演算部7に配置されている。速度測定本体23には、該速度測定本体23の側面から圧子通路23aの壁面まで延びる4つの貫通孔23d,23e,23f,23gが形成される。図14では、貫通孔23d,23fのみが示されているが、貫通孔23eは、貫通孔23dに対向する位置に形成されており、貫通孔23gは、貫通孔23fに対向する位置に形成されている。
貫通孔23dには、第1投光部24aから延びる第1光ファイバー60が嵌装され、第1投光部24aが発した光は、第1光ファイバー60を通って、圧子通路23aの内部に照射される。貫通孔23eには、第1受光部24bから延びる第2光ファイバー61が嵌装され、第1投光部24aから照射された光は、第2光ファイバー61を通って第1受光部24bに受け取られる。すなわち、第1光センサ24の第1投光部24aは、第1光ファイバー60を介して圧子通路23a内部に光を照射し、第1光センサ24の第1受光部24bは、第2光ファイバー61を介して圧子通路23a内部に照射された光を受け取る。同様に、貫通孔23fには、第2投光部25aから延びる第3光ファイバー62が嵌装され、第2投光部25aが発した光は、第3光ファイバー62を通って、圧子通路23aの内部に照射される。貫通孔23gには、第2受光部25bから延びる第4光ファイバー63が嵌装され、第2投光部25aから照射された光は、第4光ファイバー63を通って第2受光部25bに受け取られる。すなわち、第2光センサ25の第2投光部25aは、第3光ファイバー62を介して圧子通路23a内部に光を照射し、第2光センサ25の第2受光部25bは、第4光ファイバー63を介して圧子通路23a内部に照射された光を受け取る。
図14に示されるような構成によれば、速度測定本体23の大きさを小さくすることができる。したがって、速度測定本体23を小さな隙間に挿入することができる。例えば、図14に示されるように、歯車65の隣接する2つの歯65a、65a間に形成された歯底面65bの反発係数を測定することができる。
図15は、別の実施形態に係る反発係数測定機1の概略断面図である。図15に示される反発係数測定機1では、図1に示されるストライカ15に代えて、圧子押出部材としてピストンロッド19が用いられる。ピストンロッド19は、ホルダ3に保持された圧子2に空気圧を与え、この空気圧の作用により圧子2をホルダ3から材料8に向けて射出する。ピストンロッド19が用いられている以外の、本実施形態の反発係数測定機1の構成は、これまで説明してきた反発係数測定機1の構成と同一であるため、その重複する説明を省略する。
ピストンロッド19は、円柱状のロッド本体19aと、ロッド本体19aの直径よりも大きい直径を有する、円柱状のロッド支持部19bと、ロッド本体19aの前端に固定された円板形状のピストンヘッド19eと、を有する。ロッド本体19aの後端がロッド支持部19bの前端に埋設されることにより、ロッド本体19aは、ロッド支持部19bに固定される。ロッド本体19aの中心軸線は、本体支持部15bの中心軸線と一致する。ピストンヘッド19eの外周面は、内筒13の内周面と摺動する。ピストンヘッド19eの中心軸線は、ロッド本体19aの中心軸線と一致する。
付勢ばね16の前端は、ロッド支持部19bに形成されたガイド孔19cに挿入される。ガイド孔19cは、ロッド支持部19bの後端から前端に向かって延び、ガイド孔19cの中心軸線は、ロッド支持部19bの中心軸線に一致する。外筒12の後端には、該外筒12の開口を塞ぐプラグ18が固定されており、プラグ18に付勢ばね16の後端が支持されている。本実施形態のプラグ18は、円柱形状を有しており、該プラグ18の外周面にはねじが形成されている。外筒12の後端に形成された開口は、プラグ18に形成されたねじが螺合するねじ孔として構成されており、プラグ18のねじを該ねじ孔に係合させることで、プラグ18が外筒12に固定される。プラグ18を回転させることにより、プラグ18を外筒12に対して前進または後進させることができる。その結果、付勢ばね16の長さを容易に変更することができるので、付勢ばね16がピストンロッド19に加える付勢力を容易に変更することができる。
このような構成で、付勢ばね16は、外筒12とピストンロッド19との間に配置される。図6を参照して説明されたように、付勢ばね16は、外筒12の移動によって収縮されて、ピストンロッド19に付勢力を加えることができる。図15に示されるように、付勢ばね16が収縮された状態のときに、付勢ばね16は、ピストンロッド19を射出機構5の前方に向けて移動させる付勢力を該ピストンロッド19に加えている。このピストンロッド19の位置がピストンロッド19の発射位置である。
ピストンロッド19のロッド支持部19bの外面には、ロッド支持部19bの周方向に沿って延びる環状の溝19dが形成されている。溝19dは、ピストンロッド19のロッド支持部19bの外面の一部に形成されていてもよい。ピストンロッド19が図15に示される発射位置にあるとき、溝19dに係合自在なフック14aを有する発射レバー14が外筒12の外面に固定されている。発射レバー14は貫通孔を有しており、この貫通孔に、外筒12の外周面から径方向外側に伸びるブラケット(図示せず)に固定された回動軸17が挿入されている。したがって、発射レバー14は、回動軸17を中心として回動自在に外筒12に固定される。図15に示されるように、外筒12には、該外筒12の側面を貫通する貫通孔12cが形成されており、内筒13には、該内筒13の側面を貫通し、内筒13の長手方向に沿って延びる第1長孔13eが形成されている。発射レバー14のフック14aは、外筒12の貫通孔12cと、内筒13の第1長孔13eを通って、ピストンロッド19の溝19dに係合する。
図16は、発射レバー14のフック14aとピストンロッド19の溝19dとの係合を解除したときに、付勢ばね16の復元力によってピストンロッド19が射出機構5の前方に押し出された状態を示す概略断面図である。図16に示されるように、射出機構5の前方に押し出されたピストンロッド19は、内筒13の内周面に固定された、円筒形状を有するストッパ20に衝突し、これにより、ピストンロッド19の移動が制限される。より具体的には、ストッパ20の後端に、ピストンロッド19のピストンヘッド19eの前面が衝突することで、ピストンロッド19の前方への移動が制限される。ピストンロッド19が図15に示される発射位置から、図16に示されるストッパ20に衝突する衝突位置まで移動する間に、ピストンヘッド19eは、該ピストンヘッド19eから圧子2まで延びている空間に存在する空気を圧縮する。圧縮された空気圧がホルダ3の前端に保持された圧子2に作用し、該空気圧によって、圧子2が試料8に向けて発射される。ピストンヘッド19eは、ストッパ20により移動が制限されるので、ピストンロッド19は、圧子2に接触しない。このように、圧子2に作用する空気圧で、圧子2を試料8に向けて射出してもよい。
上述したように、付勢ばね16の後端を支持するプラグ18を外筒12に対して前進または後進させることにより、付勢ばね16の長さを調整することができる。したがって、付勢ばね16がピストンロッド19に加える付勢力を調整することができるので、ピストンロッド19によって圧縮された空気によって射出される圧子2の衝突速度を調整することができる。異なる試料の反発係数を比較するときに、圧子2の材料および圧子2の衝突速度は一定であることが好ましい。本実施形態の反発係数測定機1では、圧子2の衝突速度を容易に調整することができる。
図1に示される反発係数測定機1を用いて測定された反発係数に質量効果の影響がないことを確認するための実験を行った。実験に用いた試料は、円柱形状を有するショア硬さ試験の基準片であり、公称硬さがショア硬さ90、ショア硬さ60、およびショア硬さ30である3つの基準片を用いた。これら基準片を5.7kgの質量を有する鋼製アンビルに固定した場合の反発係数と、0.12kgの質量を有する木製アンビルに固定した場合の反発係数を測定した。図17は、実験に用いた基準片の上面図であり、図17に示される5つの測定点Pa,Pb,Pc,Pd,Peで反発係数を測定している。測定点Pcは、基準片の中央部に位置しており、測定点Paと測定点Peは、基準片の外周部に位置している。測定点Pbは、測定点Paと測定点Pcの間に位置しており、測定点Pdは、測定点Pcと測定点Peの間に位置している。比較例として、同一の測定点Pa,Pb,Pc,Pd,Peに対して、D型ショア硬さ試験と、リープ硬さ試験を行った。
実験で用いられた圧子2は、2mmの直径を有するアルミナ製の軸受用ボールである。圧子2の質量は0.055gであった。圧子2は鉛直方向下向きに射出された。第1光センサ24および第2光センサ25を用いて計測される、圧子2の衝突速度が10m/sとなるように、付勢ばね16の長さが調整された。付勢ばね16の長さは、プラグ18を外筒12に対して前進または後進させることにより調整することができる。
図18(a)は、鋼製アンビルに固定された基準片を反発係数測定機1で測定したときの反発係数を示すグラフであり、図18(b)は、木製アンビルに固定された基準片を反発係数測定機1で測定したときの反発係数を示すグラフである。図18(a)および図18(b)に示されるように、本実施形態の反発速度計測機1で測定された反発係数は、鋼製アンビルに基準片を固定した場合と木製アンビルに基準片を固定した場合に差がなく、質量効果の影響を受けていないことが確認された。また、5つの測定ポイントPa,Pb,Pc,Pd,Peの全てで、同一の反発係数が測定されることが確認できた。
図19(a)は、鋼製アンビルに固定された基準片をD型ショア硬さ試験機で測定したときのショア硬さを示すグラフであり、図19(b)は、木製アンビルに固定された基準片をD型ショア硬さ試験機で測定したときのショア硬さを示すグラフである。D型ショア硬さ試験では、ダイアモンド製圧子と、該圧子が先端に固定された圧子支持体を含むハンマーを所定の落下高さから基準片に落下させて、該ハンマーが跳ね返ったときの反発高さを計測する。ショア硬さは、落下高さに対する反発高さの比に所定の比例定数を乗算することにより得られる。D型ショア硬さ試験で用いられるハンマーの質量は、36.2g(圧子の質量が含まれる)であり、落下高さは19mmであった。
図19(a)に示されるように、基準片を鋼製アンビルに固定した場合は、基準片の公称ショア硬さと同一のショア硬さが計測された。一方で、図19(b)に示されるように、木製アンビルに基準片を固定した場合は、測定されたショア硬さは、明確に公称ショア硬さよりも小さく、ハンマーによる質量効果が、計測されたショア硬さに影響を与えていることが確認された。また、測定されたショア硬さが、中央部の測定点から周縁部の測定点に向かって徐々に小さくなる現象が確認された。
図20(a)は、鋼製アンビルに固定された基準片をリープ硬さ試験機で測定したときのリープ硬さを示すグラフであり、図20(b)は、木製アンビルに固定された基準片をリープ硬さ試験機で測定したときのリープ硬さを示すグラフである。リープ硬さ試験は、圧子と、該圧子が先端に固定された圧子支持体を含むインパクボディをばねにより試料に向けて射出して、インパクトボディが試料に衝突する前の衝突速度と、試料に衝突して、跳ね返ったときのインパクトボディの反発速度を測定する硬さ試験方法である。リープ硬さ試験では、インパクトボディが試料に衝突する前の衝突速度に対する、インパクトボディの反発速度が反発係数として測定され、リープ硬さは、この反発係数に所定の比例定数を乗算することで得られる。リープ硬さ試験で用いられるインパクトボディの質量は、5.45g(圧子の質量が含まれる)であり、インパクトボディが試料に衝突する前の衝突速度は、2.1m/sであった。
図20(a)および図20(b)に示されるように、木製アンビルに固定された基準片のリープ硬さは、鋼製アンビルに固定された基準片のリープ硬さよりも小さい。したがって、リープ硬さ試験でも、インパクトボディによる質量効果が測定される硬さに影響を与えることが確認された。また、測定されたリープ硬さが、中央部の測定点から周縁部の測定点に向かって徐々に小さくなる現象が確認された。
図7乃至図11を参照して説明されたシャッター機構50の代わりに、速度測定部6の速度測定本体23の前端に蓋を固定し、該蓋が速度測定本体23に形成された圧子通路23aに接続される蓋貫通孔を有していてもよい。図21(a)は、速度測定本体23の前端に固定された蓋70の一例を示す断面図であり、図21(b)は、図21(a)のI線矢視図である。蓋70以外の本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同一であるため、その重複する記載を省略する。
図21(a)に示されるように、速度測定本体23の前端に固定される蓋70は、速度測定本体23の圧子通路23aに接続される蓋貫通孔71を有している。蓋貫通孔71は、蓋70の前面70aから後面70bまで延びる円筒形状を有している。すなわち、本実施形態の蓋貫通孔71の直径Dは、前面70aから後面70bまで一定である。蓋貫通孔71の中心軸線は、圧子通路23aの中心軸線に一致する。さらに、蓋貫通孔71は、圧子2の直径dよりも小さい直径Dを有する(すなわち、D<d)。したがって、圧子2は蓋貫通孔71を完全に通過することできないので、蓋70によって、圧子2が反発係数測定機1の外部に飛び出すことが防止される。
蓋70の前面70aを試料8の表面に接触させた状態で圧子2を射出機構5から射出すると、圧子2が試料8の表面に衝突する衝突点は、蓋貫通孔71の中心軸線と試料8の表面との交点からわずかにずれることがある。図22は、圧子2が試料8の表面に衝突する衝突点Sの分布の一例を示す模式図である。図22に示されるように、射出機構5から射出された圧子2が試料8の表面に衝突する衝突点Sは、蓋貫通孔71の中心軸線と試料8の表面との交点Xを中心とした半径Rsの円内にある。この半径Rsの大きさは、圧子2の直径dの0.1倍よりも小さいことが実験により確認された。したがって、蓋貫通孔71が少なくとも圧子2の直径dの0.2倍よりも大きい直径Dを有する(すなわち、0.2d<D)場合に、射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突せずに試料8の表面に衝突することができる。
蓋貫通孔71は、圧子2が反発係数測定機1から飛び出さないように、圧子2の直径dよりも小さい直径Dを有する。一方で、射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突すると、蓋70が変形してしまうことがある。したがって、射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突することを確実に防止するために、蓋貫通孔71は、圧子2の直径dよりも小さい範囲内で、できる限り大きい直径Dを有するのが好ましい。蓋貫通孔71の直径Dは、好ましくは、圧子2の直径dの0.5倍以上であり、さらに好ましくは圧子2の直径dの0.7倍以上であり、さらに好ましくは圧子2の直径dの0.9倍以上である。
図21(b)に示されるように、蓋70は、3つのねじ(固定具)73により速度測定本体23に固定される。ねじ73を速度測定本体23に形成されたねじ孔(図示せず)に係合させることにより、蓋70が速度測定本体23に固定される。ねじ73は、該ねじ73が蓋70の前面70aから突出しないように速度測定本体23に形成されたねじ孔にねじ込まれる。これにより、蓋70の前面70aを試料8の表面に直接接触させることができる。ねじ73の数は、3つよりも少なくてもよいし、多くてもよい。蓋70を速度測定本体23に固定させる固定具として、ねじ73に代えて、六角ボルトを用いてもよい。
蓋貫通孔71によって、圧子2の一部が蓋70を通過することが許容されるが、圧子2の全体は蓋70を通過することができない。このような蓋貫通孔71を有する蓋70は、上述したシャッター機構50よりも簡易な構成であるため、シャッター機構50よりも安価に製造することができる。その結果、反発係数測定機1の製作コストを低減することができる。さらに、蓋貫通孔71の直径Dが圧子2の直径dよりも小さいので、射出機構5から射出された圧子2が速度測定本体23の外部に飛び出すことが確実に防止される。その結果、蓋70の前面70aが試料8の表面に接触していない状態で圧子2を射出機構5から射出した場合に、反発係数測定器1の付近にいる作業者に圧子2が衝突することがない。したがって、作業者の安全性を高めることができる。さらに、圧子2の紛失を効果的に防止することができるので、作業者の負担を軽減することができる。
図21(a)に示されるように、速度測定本体23は、該速度測定本体23の側面から圧子通路23aまで延びる空気抜き孔75を有していてもよい。空気抜き孔75を速度測定本体23に設けることにより、圧子通路23aを通過する圧子2によって該圧子通路23a内の空気が圧縮されることが防止される。射出機構5から射出された圧子2によって圧子通路23a内の空気が圧縮されると、圧子2の衝突速度が減少し、圧子2の反発速度が増加するおそれがある。空気抜き孔75を速度測定本体23に設けることにより、圧子通路23aを、速度測定本体23の外部と連通させることができる。空気抜き孔75は、好ましくは、速度測定本体23の前端に近い位置に設けられる。したがって、圧子通路23aを通過する圧子2によって、圧子通路23a内の空気が圧縮されないので、試料8のより正確な反発係数を測定することができる。本実施形態では、2つの空気抜き孔75が速度測定本体23に形成されているが、空気抜き孔75の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
空気抜き孔75の断面形状を任意に決定することができる。例えば、空気抜き孔75は、円形の断面形状を有してもよいし、矩形の断面形状を有してもよい。空気抜き孔75の大きさは、好ましくは、圧子2の大きさよりも小さい。この場合、圧子2が空気抜き孔75を通って速度測定本体1の外部に飛び出すことが防止される。
図23は、速度測定本体23の前端に固定された蓋70の変形例を示す断面図である。図23に示される実施形態では、蓋70の蓋貫通孔71の壁面71aは、曲面状に構成される。蓋貫通孔71の壁面71aの曲率半径rcは、蓋70の前面70aから後面70bまで一定であり、かつ圧子2の外面の曲率半径rdよりも大きい。圧子2は球形状を有するので、圧子2の外面の曲率半径rdは圧子2の半径(=d/2)と同一である。
蓋貫通孔71の壁面71aが一定の曲率半径rcを有する曲面により構成されるので、蓋貫通孔71の直径Dは、蓋70の後面70bから前面70aに向かって徐々に減少する。したがって、蓋貫通孔71の最小直径Dminは、蓋70の前面70aに開口した蓋貫通孔71の直径である。蓋貫通孔71の最小直径Dminは、圧子2の直径dよりも小さい。したがって、圧子2は蓋貫通孔71を完全に通過することできないので、蓋70によって、圧子2が反発係数測定機1の外部に飛び出すことが防止される。さらに、蓋貫通孔71の最小直径Dminは、圧子2の直径dの少なくとも0.2倍以上である。したがって、射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突せずに試料8の表面に衝突することができる。このような曲面状の壁面71aによって、射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突することが効果的に防止される。
射出機構5から射出された圧子2が蓋70に衝突することを確実に防止するために、蓋貫通孔71の最小直径Dminは、好ましくは、圧子2の直径dの0.5倍以上であり、さらに好ましくは圧子2の直径dの0.7倍以上であり、さらに好ましくは圧子2の直径dの0.9倍以上である。
図24は、速度測定本体23の前端に固定された蓋70の別の変形例を示す断面図である。図24に示される実施形態では、速度測定本体23の前端に円筒部23hが形成され、圧子通路23aは、円筒部23hの前端まで延びる。蓋70は、円筒部23hが嵌め込まれる円筒状の段差部70cを有する。本実施形態の蓋貫通孔71は、円筒形状を有しているが、図23に示されるように、蓋貫通孔71の壁面71aが一定の曲率半径rcを有する曲面により構成されてもよい。速度測定本体23の円筒部23hに、蓋70の段差部70cを嵌め込むことにより、蓋貫通孔71の中心軸線を圧子通路23aの中心軸線に容易に一致させることができる。
本実施形態では、空気抜き孔75は、蓋70の側面から圧子通路23aまで延びている。この空気抜き孔75は、速度測定本体23の円筒部23hを貫通している。図23に示されるように、空気抜き孔75は、蓋70の側面から円筒部23hを貫通して、圧子通路23aまで延びてもよい。
図21に示される蓋70が速度測定本体23の前端に固定された反発係数測定機1を用いて、反発係数を測定する実験を行った。実験に用いた試料は、円柱形状を有するショア硬さ試験の基準片であり、公称硬さがショア硬さ95、ショア硬さ80、およびショア硬さ30である3つの基準片を用いた。さらに、同じ反発係数測定機1を用いて、円柱形状を有するロックウエル硬さ試験の基準片の反発係数も測定した。実験では、圧子2の直径dに対する圧子通路23aの直径da(図21参照)の比を変更して、圧子通路23aの直径daと圧子2の直径dの関係が反発係数の測定結果に及ぼす影響も評価した。なお、シャッター機構50が速度測定本体23に設けられた反発係数測定機1を用いて同じ基準片の反発係数を測定し、得られた測定結果を基準値とした。
第1の実験で用いられた圧子2は、アルミナ製の軸受用ボールであり、圧子2の直径dは3mmである。蓋貫通孔71の直径Dは2.8mmである。したがって、蓋貫通孔71は、圧子2の直径dの0.93倍である直径Dを有する。圧子通路23aの直径daは5mmである。したがって、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.67倍の直径daを有する。圧子2の衝突速度が10m/sとなるように、付勢ばね16の長さが調整された。
第2の実験で用いられた圧子2は、アルミナ製の軸受用ボールであり、圧子2の直径dは3mmである。蓋貫通孔71の直径Dは2.8mmである。したがって、蓋貫通孔71は、圧子2の直径dの0.93倍である直径Dを有する。圧子通路23aの直径daは4mmである。したがって、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.33倍の直径daを有する。圧子2の衝突速度が10m/sとなるように、付勢ばね16の長さが調整された。
第3の実験で用いられた圧子2は、アルミナ製の軸受用ボールであり、圧子2の直径dは5mmである。蓋貫通孔71の直径Dは4.7mmである。したがって、蓋貫通孔71は、圧子2の直径dの0.94倍である直径Dを有する。圧子通路23aの直径daは7mmである。したがって、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.4倍の直径daを有する。圧子2の衝突速度が10m/sとなるように、付勢ばね16の長さが調整された。
第1の実験、第2の実験、および第3の実験で得られた反発係数を比較するための基準値を得るために、シャッター機構50が速度測定本体23に設けられた反発係数測定機1を用いて同じ基準片の反発係数を測定した。基準値を得るための実験で用いられた圧子2は、アルミナ製の軸受用ボールであり、圧子2の直径dは3mmである。圧子通路23aの直径daは5mmである。したがって、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.67倍の直径daを有する。圧子2の衝突速度が10m/sとなるように、付勢ばね16の長さが調整された。
第1の実験、第2の実験、および第3の実験で得られた反発係数と基準値として計測された反発係数が表1に示される。表1に示される反発係数および基準値は、試料の異なる位置で測定された7つの反発係数の平均値である。
表1から明らかなように、第1の実験、第2の実験、および第3の実験で得られた反発係数は、基準値として測定された反発係数とほぼ同一である。したがって、蓋70が速度測定本体23の前端に固定された反発係数測定機1は、従来の反発硬さ試験機で発生する質量効果の影響を受けずに、反発係数を測定することができる。また、第1の実験の結果と第3の実験の結果から、直径dが異なる圧子2を用いても、圧子2の衝突速度を一定にすれば、同一の反発係数が得られることが確認された。
第2の実験で得られた反発係数は、第1の実験で得られた反発係数および第3の実験で得られた反発係数よりもわずかに低い。一方で、第1の実験で得られた反発係数と第3の実験で得られた反発係数は、基準値と同一である。この理由は、圧子通路23aの壁面と圧子2の外面とが近すぎるためであると考えられる。したがって、より正確な反発係数を得るために、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.4倍以上の直径daを有するのが好ましい。シャッター機構50が速度測定本体23に設けられた反発係数測定機1の場合も、圧子通路23aは、圧子2の直径dの1.4倍以上の直径daを有するのが好ましい。
このように、上述した実施形態に係る反発係数測定機1によれば、従来の反発硬さ試験機で発生する質量効果の影響を受けずに、反発係数を測定することができる。また、上述した実施形態に係る反発係数測定機1によれば、圧子2がホルダ3に保持されるので、圧子2を射出する方向に制限がなく、その結果、質量効果の影響を受けずに自由な方向に試験を行うことができる。
上述した実施形態に係る反発係数測定機1を硬さ測定機として使用することができる。すなわち、硬さ測定機は、球状の圧子2を保持するホルダ3と、ホルダ3に保持された圧子2を該ホルダ3から試料8に向けて射出する射出機構5と、圧子2が試料8に衝突する前の該圧子2の速度である衝突速度、および圧子2が試料8から跳ね返った後の該圧子2の速度である反発速度を測定する速度測定部6と、を備える。さらに、硬さ測定機は、演算部7を有し、該演算部7は、圧子2の衝突速度に対する、圧子2の反発速度の比(すなわち、上述した反発係数に相当する)に基づいて試料8の硬さを決定する。
この硬さ測定機では、上述したように、ホルダ3に保持された圧子2が、射出機構5により該ホルダ3から試料に向けて射出される。速度測定部6は、圧子2が試料8に衝突する前の該圧子2の速度である衝突速度と、圧子2が試料8から跳ね返った後の該圧子2の反発速度とを測定する。さらに、演算部7は、圧子2の衝突速度に対する、圧子2の反発速度の比に基づいて試料8の硬さを決定する。例えば、演算部7は、圧子2の衝突速度に対する圧子2の反発速度の比に所定の比例定数(例えば、100または1000)を乗算することにより試料8の硬さを決定する。
この硬さ測定機で試料8の硬さを測定する場合、圧子2が試料8に衝突する前の該圧子2の速度である衝突速度を一定に制御し、かつ同じ材料で作られた圧子2を使用することで、異なる試料8が有する硬さを比較することができる。圧子2の衝突速度は、上述したように、プラグ18を外筒12に対して前進または後進させることにより、容易に調整することができる。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。