図1は第1の実施の形態及び第2の実施の形態にかかる判断方法が適用可能な構成を例示する回路図である。当該構成は電力変換器100と、アクティブフィルタ200とを備える。
電力変換器100は、一対の直流母線LH,LLと、整流回路2と、インバータ4とを有する。アクティブフィルタ200は並列型アクティブフィルタであり、インバータ21とコンデンサ22とを有する。
電力変換器100及びアクティブフィルタ200は、いずれも三本の電源線Lr,Ls,Ltを介して三相の電源1に接続される。電源線Lr,Ls,Ltには、それぞれ電源1が出力する周期Tの三相の交流電圧Vr,Vs,Vtが印加される。以下では便宜上、交流電圧Vrは交流電圧VsよりもT/3で進み、交流電圧Vsは交流電圧VtよりもT/3で進む場合について説明する。
電力変換器100は、例えばノイズフィルタ5を電源線Lr,Ls,Lt上に有し、整流回路2がノイズフィルタ5を介して電源1に接続される。
インバータ21はコンデンサ22から入力される電流を三相の補償電流Iaに変換して出力する。アクティブフィルタ200は連系リアクトル26を更に有する。連系リアクトル26は三相分のリアクトルで実現される。インバータ21は連系リアクトル26を介して、電源1と整流回路2との間で電源線Lr,Ls,Ltに接続される。
例えばノイズフィルタ5は、アクティブフィルタ200が(上述の例では連系リアクトル26を介してインバータ21が)電源線Lr,Ls,Ltと接続される位置よりも電源1に近い側に設けられる。
電源1からは電源線Lr,Ls,Ltへ三相の電源電流Ihが出力される。アクティブフィルタ200からは電源線Lr,Ls,Ltへ補償電流Iaが出力される。よって整流回路2には電源電流Ihと補償電流Iaとの和である三相の負荷電流Iiが入力される。負荷電流Iiの正方向を、整流回路2へ向かう方向とする。
以下、説明の便宜上、負荷電流Iiを、電源線Lr,Ls,Ltをそれぞれ流れる電流Ir,Is,Itと分けて説明することがある。同様に、補償電流Iaを、電源線Lr,Ls,Ltに流れる電流Iu,Iv,Iwと分けて説明することがある。
整流回路2は交流電圧Vr,Vs,Vtを整流して得る直流電圧を直流母線LH,LLに印加する。直流母線LHは直流母線LLよりも高電位となる。整流回路2は例えばダイオードブリッジで実現される。
電源線Lr,Ls,Ltには二つの電流検出器CT1,CT2が設けられる。電流検出器CT1,CT2は自身の検出結果を、それぞれ電流i1,i2として出力する。
図1では電流検出器CT1,CT2がそれぞれ電源線Lr,Ltに取り付けられている状態が例示される。この場合、電流i1,i2はそれぞれ電流Ir,Itに相当する。
但し、後述するように、電流検出器CT1,CT2のいずれもが一つの電源線に取り付けられたり、電流検出器CT1,CT2の少なくともいずれか一つがいずれの電源線にも取り付けられなかったりする状態も想定される。
電力変換器100は更に、直流母線LH,LLに設けられる平滑フィルタ6を有している。平滑フィルタ6は例えばチョークインプット型のLCフィルタであり、インダクタL6とコンデンサC6とを有して構成される。平滑フィルタ6は整流回路2が直流母線LH,LLに印加する直流電圧を平滑化し、平滑化された直流電圧をインバータ4に入力する。
インバータ4は当該直流電圧を他の交流電圧Vu,Vv,Vwに変換して出力する。例えばインバータ4は交流電圧Vu,Vv,Vwを電力変換器100に接続される負荷9へと印加する。
インバータ4の動作はインバータ制御部7で制御される。例えばインバータ4では、各々が上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子とを有する三本の電流経路同士が直流母線LH,LL間に並列に接続されている。インバータ制御部7は三対の上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の開閉を制御する駆動信号Giをインバータ4に与える。インバータ制御部7が駆動信号Giを生成する技術は周知であるので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
アクティブフィルタ200は電圧検出器24,28,29を更に有する。電圧検出器24は電圧Vdcを検出する。電圧検出器28,29はそれぞれ線間電圧Vrs,Vstを検出する。電圧Vdcはコンデンサ22が支える電圧である。線間電圧Vrsは交流電圧Vrを基準とした交流電圧Vsである。線間電圧Vstは交流電圧Vsを基準とした交流電圧Vtである。
アクティブフィルタ200は電流検出器CT3,CT4を更に有する。電流検出器CT3,CT4は、それぞれ電流Iu,Iwを検出する。
かかる電圧検出器24,28,29、電流検出器CT1,CT2,CT3,CT4の構成自体は、周知の技術で実現できるので、ここではその説明を省略する。
アクティブフィルタ200はゼロクロス検出器25rs,25stを更に有する。ゼロクロス検出器25rs,25stはそれぞれ線間電圧Vrs,Vstのゼロクロス、例えば極性が負から正に変化した時点(及び/または極性が正から負に変化した時点)を検出し、その時点をゼロクロス信号Xrs,Xstとして出力する。ゼロクロス検出器25rs,25stの機能は例えば特許文献1で公知である。
アクティブフィルタ200の動作はアクティブフィルタ制御部27で制御される。例えばインバータ21では、各々が上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子とを有する三本の電流経路同士が直流母線LH,LL間に並列に接続されている。アクティブフィルタ制御部27は三対の上アームスイッチング素子と下アームスイッチング素子の開閉を制御する駆動信号Gaをインバータ21に与え、電圧Vdcを維持する。
電流Iu,Iv,Iwは駆動信号Gaによるインバータ21の駆動によって得られる。駆動信号Gaはゼロクロス信号Xrs,Xstと、電圧Vdc並びに負荷電流Iiの内の二つ(例えば電流Ir,Is)及び補償電流Iaの内の二つ(例えば電流Iu,Iw)(より具体的にはこれらの値:以下同様)とに基づいて生成される。アクティブフィルタ制御部27が駆動信号Gaを生成する技術それ自体は周知であるので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
但し電流Ir,Isが検出されなければ駆動信号Gaが正しく得られないことは明白である。よって、電源線Lr,Ls,Ltのいずれかに対して電流検出器CT1,CT2が一つずつ取り付けられているのかを判断することは望ましい。もちろん、かかる判断が望ましい状況は、アクティブフィルタ200を採用する状況には限定されない。
図2〜図4は交流電圧Vr、電流Ir,Is,Itの波形を示すグラフである。当該グラフにおいて、横軸には時間(単位は秒)を採用し、縦軸には任意単位を採用する。例えば交流電圧Vrの縦軸の単位はボルト(V)である。例えば電流Ir,Is,Itの縦軸の単位は共通しており、例えばアンペア(A)である。また、位相については交流電圧Vrが負から正へ遷移するときの位相を基準とし、交流電圧Vrの周期Tが位相360度に対応するとして説明する。電圧、電流の単位及び位相については以下、同様に採用される。
図2は電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあり、かつ負荷9がその定格電力を消費する場合を例示する。電流Irは交流電圧Vrの正負に対してそれぞれ正負となる120度の区間で流れる、いわゆる120度通電の状態が例示される。電流Isは電流Irよりも120度遅れ、電流Itは電流Isよりも120度遅れ、いずれも120度通電の状態が例示される。
図2で示されるように、電流Ir,Is,Itが120度通電の状態にあるとき、電流検出器CT1,CT2が正常に取り付けられているのかを判断することは、ゼロクロス信号Xrs,Xstから、例えば交流電圧Vrの位相を知ることにより行われる(例えば特許文献1等)。
図3は電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあるものの、定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示する。電流Irの正負が交流電圧Vrの正負にそれぞれ対応する点では、図3の電流Irの波形は図2のそれと共通する。しかし図3で示される電流Ir,Is,Itの振幅は、図2で示されるそれらよりも小さい。
図4は電流Ir,Is,Itが三相非平衡の状態(交流電圧のT相がR,S相に対して100/97)にあり、かつ定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示する。
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、電流が平衡であること及び電流が120度通電の波形を呈することの少なくともいずれか一方は前提とせず、電流検出器の取り付け状態の判断を行う。
図5〜図10はいずれも第1の実施の形態の動作を説明するグラフであり、交流電圧Vr、絶対値|i1|,|i2|,|i3|及びそれぞれの平均値|i1|^,|i2|^,|i3|^(図では記号「^」に代えて上線で示す)の波形を示す。
絶対値|i1|,|i2|はそれぞれ電流i1,i2の絶対値である。絶対値|i3|は絶対値|i1|,|i2|の差の絶対値である。平均値|i3|^は絶対値|i3|の平均値であり、平均値|i1|^,|i2|^の差の絶対値と一致するとは限らない。
図5〜図10のいずれにおいても平均値|i1|^,|i2|^,|i3|^はほぼ一定値を採って示される。
図5〜図7は電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあるものの、定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示する。図5〜図7においては図示されないが、図3で示された波形を有する電流Ir,Is,Itが流れている場合に相当する。
図8〜図10は電流Ir,Is,Itが三相非平衡の状態(ここではT相がR,S相に対して100/97の場合が例示される)にあり、かつ定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示する。図8〜図10においては図示されないが、図4で示された波形を有する電流Ir,Is,Itが流れている場合に相当する。
図5及び図8は電流検出器CT1,CT2が正常に、ここではそれぞれ電源線Lr,Ltに取り付けられている場合を例示する。
図6及び図9は電流検出器CT1が正常に、ここでは電源線Lrに取り付けられているものの、電流検出器CT2が電源線Lr,Ls,Ltのいずれにも取り付けられていない(電流検出器CT2が取り付けられずに外れている:従って正常な取り付けは行われていない:以下「外れ状態」と仮称)の場合を例示する。図6及び図9において絶対値|i2|と平均値|i2|^とはいずれもほぼ値0を採っている。
図7及び図10は電流検出器CT1,CT2が取り付けられてはいるものの、重複して(従って正常な取り付けは行われていない:以下「重複取り付け」と仮称)、ここではいずれもが電源線Lrに取り付けられている場合を例示する。図7及び図10において絶対値|i3|と平均値|i3|^とはいずれもほぼ値0を採っている。
図11は第1の実施の形態の動作の一例である判断ルーチンを説明するフローチャートである。当該判断ルーチンは例えば不図示のメインルーチンに対する割り込み処理であり、割り込み処理によって開始し、当該判断ルーチンの終了により処理は当該メインルーチンに復帰する。当該判断ルーチンは、例えば当該メインルーチンと共に、アクティブフィルタ制御部27あるいはインバータ制御部7で行われる。図1では、電流i1,i2の値がアクティブフィルタ制御部27に与えられる場合が例示され、この場合には当該判断ルーチンがアクティブフィルタ制御部27において行われることができる。
判断ルーチンが開始した後、ステップS11では絶対値|i1|,|i2|のいずれもが正の第1閾値εよりも大きいか否かが判断される。
なお、図5〜図10を参照して、電流検出器CT1,CT2が負荷9で消費される電力が小さい場合には、三相平衡が得られているか否かによらず、例えば交流電圧Vrが90度、180度、270度、360度の時点では絶対値|i1|,|i2|は零である。よってこれらの時点のみでの絶対値|i1|,|i2|を用いて判断ルーチンのステップを実行することは、正常な取り付けと、外れ状態と、重複取り付けとの区別を判断する観点で望ましくない。この観点からは、絶対値|i1|,|i2|の瞬時値を用いて判断ルーチンを行う場合には、その瞬時値を得るタイミングを適切に設定すること、例えば位相45度や135度近傍での絶対値|i1|,|i2|を用いることが望ましい。図3、図4を参照して、これらの位相において、電流Ir,Is,Itの振幅がその極大値に近いからである。
判断ルーチンの全てのステップにおいて、絶対値|i1|,|i2|,|i3|に代えて、それらの平均値|i1|^,|i2|^,|i3|^を採用してもよい。あるいはそれぞれ絶対値|i1|,|i2|,|i3|の実効値もしくは波高値を採用してもよい。これらの値を採用することにより、絶対値|i1|,|i2|の瞬時値を採用する場合よりも、絶対値|i1|,|i2|を取得するタイミングを選定する必要性が低い。
もちろん、例えばタイミングを適切に設定して、絶対値|i1|,|i2|の瞬時値を用いて各ステップの判断をおこなってもよい。
図11に示された判断ルーチンでは絶対値|i1|,|i2|,|i3|を用いた場合を例に採っているが、図5〜図10では絶対値|i1|,|i2|,|i3|の他、平均値|i1|^,|i2|^,|i3|^についても併記した。
電流検出器CT1,CT2が外れていればいずれの時点においてもそれぞれ電流i1,i2は、理想的には零である。よって第1閾値εは、電流検出器CT1,CT2が外れ状態にあるか否かを判断するための閾値である。よってその値は電流検出器CT1,CT2が電流を検出できる最小値や、電源線Lr,Ls,Ltに引加されるノイズ等よりも大きく設定してもよい。
ステップS11において肯定的な判断、即ち絶対値|i1|,|i2|のいずれもが正の第1閾値εよりも大きいと判断された場合、電流検出器CT1,CT2はいずれも外れ状態にはないことに相当する。図5、図7、図8、図10がこの場合を例示する。この場合、ステップS12が実行される(ステップS11からステップS12へ向かう「Yes」の経路)。
ステップS12では、絶対値|i3|が正の第2閾値δよりも小さいか否かが判断される。
電流検出器CT1,CT2が同じ電流を検出していればいずれの時点においてもそれぞれ電流i1,i2は、理想的には等しい。よって第2閾値δは、電流検出器CT1,CT2が同じ電流を検出しているか否かを判断するための閾値である。その値は電流検出器CT1,CT2が電流を検出できる最小値や、電源線Lr,Ls,Ltに引加されるノイズ等よりも大きく設定してもよい。
ステップS12において肯定的な判断、即ち絶対値|i3|が正の第2閾値δよりも小さいと判断された場合、電流検出器CT1,CT2は同じ電流を検出していることに相当する。図7、図10がこの場合を例示する。よって重複取り付けが行われているという判断D3を行う(ステップS12から判断D3へ向かう「Yes」の経路)。
ステップS12において否定的な判断、即ち絶対値|i3|が正の第2閾値δ以上であると判断された場合、電流検出器CT1,CT2は異なる電流を検出していることに相当する。図5、図8がこの場合を例示する。よって正常取り付けが行われているという判断D0を行う(ステップS12から判断D0へ向かう「No」の経路)。
ステップS11において否定的な判断、即ち絶対値|i1|,|i2|のいずれかが第1閾値ε以下であると判断された場合、電流検出器CT1,CT2のいずれかもしくは両方が外れ状態にあることに相当する。図6、図9がこの場合に相当する。より具体的には図6、図9はいずれも、電流検出器CT2のみが外れ状態にある場合を例示する。
ステップS11において否定的な判断がなされた場合、ステップS13が実行される(ステップS11からステップS13へ向かう「No」の経路)。ステップS13では絶対値|i1|が正の第1閾値ε以下であるか否かが判断される。
電流検出器CT1が外れていればいずれの時点においても電流i1は理想的には零である。よって当該判断に代えて、絶対値|i1|が正の第3閾値ε’より小さいか否かが判断されてもよい。
ステップS13の判断結果が肯定的であれば(ステップS13から出る「Yes」の経路)、電流検出器CT1が外れ状態にあることに相当する。よって電流検出器CT1が外れ状態にあるという判断D1(図中で「CT1外れ」と表記)を行う。
ステップS13の判断結果が否定的であっても(ステップS13から出る「No」の経路)、ステップS13の判断結果が肯定的であって判断D1が行われた後であっても、ステップS14が実行される。ステップS14では絶対値|i2|が正の第1閾値ε以下であるか否かが判断される。
電流検出器CT2が外れていればいずれの時点においても電流i2は理想的には零である。よって当該判断に代えて、絶対値|i2|が正の第4閾値ε”より小さいか否かが判断されてもよい。
ステップS14の判断結果が肯定的であれば(ステップS14から出る「Yes」の経路)、電流検出器CT2が外れ状態にあることに相当する。よって電流検出器CT2が外れ状態にあるという判断D2(図中で「CT2外れ」と表記)を行う。図6、図9がこの場合を例示する。
図11の判断ルーチンでは判断D1,D2の少なくともいずれか一方、判断D0、判断D3のいずれかがなされ、処理がメインルーチンに復帰する。かかる判断D0〜D3は、例えばアクティブフィルタ制御部27によるアクティブフィルタ200の制御に供される。
上記判断ルーチンは以下のように纏めることができる。当該判断ルーチンは、電力変換器100に三相の電流Ir,Is,Itを入力する電源線Lr,Ls,Ltに対し、電流検出器CT1,CT2が取り付けられる状態を判断する。当該判断ルーチンでは次の二つの条件が採用される:
(i)第1条件「電流検出器CT1で検出された電流i1の絶対値|i1|と、電流検出器CT2で検出された電流i2の絶対値|i2|とのいずれもが、正の第1閾値εよりも大きい(ステップS11に対応)」;
(ii)第2条件「絶対値|i1|と絶対値|i2|との差の絶対値|i3|=||i1|−|i2||が、正の第2閾値δよりも小さい(ステップS12に対応)」。
そして第1条件と第2条件のいずれもが満足されるとき、電流検出器CT1,CT2のいずれもが一の電源線に取り付けられていると判断する(判断D3に対応)。
第1条件が満足され、第2条件が満足されないときには、電流検出器CT1,CT2は互いに異なる二つの電源線に取り付けられていると判断する(判断D0に対応)。図3、図5及び図8に即して言えば電流i1,i2はそれぞれ電流Ir,Itを測定しており、電流検出器CT1は電源線Lrに取り付けられ、電流検出器CT2は、(電源線Lrとは異なる)電源線Ltに取り付けられていると判断される。
第1条件が満足されず、かつ絶対値|i1|が正の第3閾値ε’よりも小さいとき(例えば第1閾値ε以下のとき)、電流検出器CT1は電源線Lr,Ls,Ltのいずれにも取り付けられていないと判断する(判断D1に対応)。
第1条件が満足されず、かつ絶対値|i2|が正の第4閾値ε”よりも小さいとき(例えば第1閾値ε以下のとき)、電流検出器CT2は電源線Lr,Ls,Ltのいずれにも取り付けられていないと判断する(判断D2に対応)。
これらの判断ルーチンにおいて、絶対値|i1|,|i2|,|i3|に代えて、それぞれの平均値|i1|^,|i2|^,|i3|^、あるいはそれぞれの実効値もしくは波高値を採用してもよい。この場合は、絶対値|i1|,|i2|,|i3|の瞬時値を用いた場合と比較して、電流i1,i2の検出タイミングを考慮する必要性が低い観点で望ましい。
<第2の実施の形態>
図12は電流検出器の取り付け状態の第2の判断を実行する際に採用される取り付け判断部270の構成を例示するブロック図である。取り付け判断部270は例えばアクティブフィルタ制御部27が備えることができる。またインバータ制御部7に設けてもよい。
図12の例示では、取り付け判断部270は閾値生成回路271、比較器272,276、モード判定回路273、カウンタ制御回路274、カウンタ群2751,2752を含む。
閾値生成回路271には電流i1,i2の値が入力され、閾値生成回路271は閾値Ip1,Im1,Ip2,Im2を生成し、比較器272は比較結果Q1,Q2を出力する。
閾値Ip1,Im1は電流i1についての、閾値Ip2,Im2は電流i2についての、それぞれの閾値である。但しIp1>Im1,Ip2>Im2の関係がある。
例えば閾値Ip1としては絶対値|i1|の平均値若しくは実効値を採用することができ、閾値Im1は値(−Ip1)を採用することができる。同様にして閾値Ip2としては絶対値|i2|の平均値若しくは実効値を採用することができ、閾値Im2は値(−Ip2)を採用することができる。以下では、閾値Ip1,Im1は、それぞれ絶対値|i1|,|i2|の実効値を採用する場合を例にとって説明する。
比較結果Q1は電流i1と閾値Ip1,Im1とを比較した結果を示し、比較結果Q2は電流i2と閾値Ip2,Im2とを比較した結果を示す。比較結果Q1は、電流i1が閾値Ip1を超えるか、閾値Im1未満であれば論理値“H”を採り、閾値Im1以上閾値Ip1以下であれば論理値“L”を採る。比較結果Q2は、電流i2が閾値Ip2を超えるか、閾値Im2未満であれば論理値“H”を採り、閾値Im2以上閾値Ip2以下であれば論理値“L”を採る。
図13は電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあるものの、定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示するグラフである。交流電圧Vrと電流Ir,Is,Itとの関係は図3のそれと同じである。ここでは閾値Ipとして電流Irの絶対値の実効値を採用し、閾値Imは値(−Ip)を採用した。電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあるので、電流Ir,Is,Itのいずれについても共通して閾値Ip,Imを採用した。つまりIp=Ip1=Ip2,Im=Im1=Im2である。
図13にはIr>Ipとなる期間Zrp1,Zrp2、Ir<Imとなる期間Zrm1,Zrm2、Is>Ipとなる期間Zsp1,Zsp2、Is<Imとなる期間Zsm1,Zsm2、It>Ipとなる期間Ztp1,Ztp2、It<Imとなる期間Ztm1,Ztm2も付記した。
電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にあるので、期間Zrp1と期間Zsm2とが一致し、期間Zrp2と期間Ztm1とが一致し、期間Zsp1と期間Ztm2とが一致し、期間Zsp2と期間Zrm1とが一致し、期間Ztp1と期間Zrm2とが一致し、期間Ztp2と期間Zsm1とが一致する。
第2の判断では、電流検出器CT1,CT2が電源線Lr,Ls,Ltのいずれに対してどの向きで取り付けられているかを判断する。例えば電流i1として電流Irが検出されるのであれば、電流検出器CT1は電源線Lrに取り付けられており、その取り付けられる向きは正方向であると捉える。例えば電流i2として電流Isと正負が逆の値、即ち電流−Isが検出されるのであれば、電流検出器CT2は電源線Lsに取り付けられており、その取り付けられる向きは負方向であると捉える。
図3や図13から明白なように、電流Irが正値を採り得る期間は交流電圧Vrの位相に換算して30〜150度の120度の区間に限定され、電流Irが負値を採り得る期間は交流電圧Vrの位相に換算して210〜330度の120度の区間に限定される。電流Isは電流Irよりも120度遅れた120度の区間で、電流Itは電流Isよりも120度遅れた120度の区間で、それぞれ正値、負値を採る期間が限定される。
よって特定の120度の区間における比較結果Q1から、電流i1が電流Ir,Is,It,−Ir,−Is,−Itのいずれに該当するのか、換言すれば電流検出器CT1が電源線Lr,Ls,Ltのいずれに対してどの向きで取り付けられているかが判断できる。同様にして比較結果Q2から電流検出器CT2の取り付け状態が判断できる。
このような特定の120度の区間を二分する60度の区間を「モード」として取り扱う。モード判定回路273にはゼロクロス信号Xrs,Xstの少なくとも一方が入力され、モード判定回路273はゼロクロス信号Xrs,Xstの少なくとも一方から、電流i1,i2が測定される時点の位相を6種のモードとして判定し、このモードの値modeを出力する。具体的には交流電圧Vrの位相に換算して、値modeを、90〜150度の区間において0、150〜210度の区間において1、210〜270度の区間において2、270〜330度の区間において3、330〜360度及び0〜30度の区間において4、30〜90度の区間において5、と設定する。図13においても値modeを付記した。
以下、便宜状、電流検出器CT1,CT2のいずれについても同様に取り扱える場合、これらを総称して電流検出器CTkとして表すことがある。同様に、電流i1,i2のいずれについても同様に取り扱える場合、これらを総称して電流ikとして表すことがある。同様に、比較結果Q1,Q2のいずれについても同様に取り扱える場合、これらを総称して比較結果Qkとして表すことがある。
表1は三相平衡の状態において、モードと、電流検出器CTkが取り付けられる状態との関係を示す対応表である。最上段での記載「mode0」「mode1」「mode2」「mode3」「mode4」「mode5」はモードの種類を示す。上から二段目の記載「R相電圧位相」は、R相の交流電圧Vrの位相とモードの種類との関係を示す。当該関係は上述した値modeの設定を表している。以下、簡単のため、値modeが0,1,2,3,4,5に設定されるモードに対応する60度の区間を、それぞれ第0モード、第1モード、第2モード、第3モード、第4モード、第5モードとも称す。
上から三段目以降の記載は、対応するモードにおいて、電流ikがどのような値を採れば、どの相の電源線に対してどの向きに設けられているかを表している。
「正」は電流ikから閾値Ip,Imのいずれを差し引いた値も正であることを、「負」は電流ikから閾値Ip,Imのいずれを差し引いた値も負であることを、「0」は、電流ikが閾値Ip,Imの間にあることを、それぞれ示す。いわば、閾値Imから閾値Ipまでの値の幅を不感帯とした閾値と電流ikとの大小関係が「正」「負」「0」として表されている。
例えば、図13も参照して、電流ikとして電流Irが検出されるのであれば、第0モードでは期間Zrp2が存在し、第5モードでは期間Zrp1が存在し、第2モードでは期間Zrm1が存在し、第3モードでは期間Zrm2が存在し、第1モード及び第4モードでは常にIp≧Ir≧Imである。このようなパターンは表1において「R相正向き」に相当し、電流ikを検出した電流検出器CTkは電源線Lrについて正方向、つまり整流回路2へ向かう電流を正とする向きに取り付けられていると判断される。
もし、電流検出器CTkが電源線Lrについて負方向、つまり整流回路2へ向かう電流を正とする向きとは反対向きに取り付けられている場合には、当該電流検出器CTkが検出する電流ikは、「R相正向き」で示されるパターンとは正負が逆となり、「R相負向き」で示される結果となる。
上述の期間Zrp1,Zrp2が存在することはIr>Ipが、期間Zrm1,Zrm2が存在することはIr<Ipが、それぞれ複数回の測定で得られることで確認できる。
図12に戻り、カウンタ制御回路274は値modeと判定結果Q1,Q2とに基づいて、後述するフローチャートでカウントを行なう。電流i1についてのカウントにはカウンタ群2751が、電流i2についてのカウントにはカウンタ群2752が、それぞれ用いられる。
カウンタ群2751はカウンタRpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,SpCNT,SmCNTを有しており、電流検出器CT1がそれぞれ「R相正向き」「R相負向き」「S相正向き」「S相負向き」「T相正向き」「T相負向き」に取り付けられている可能性の大小をカウントする。
カウンタ群2752もカウンタ群2751と同様にカウンタRpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,SpCNT,SmCNTを有している。よって電流i1,i2の両方について並行して処理することができる。
比較器276はこれらのカウンタRpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,TpCNT,TmCNTでカウントされる値(以下、便宜的に、これらのカウンタがカウントする値にも当該カウンタの符号を採用する。例えばカウンタRpCNTがカウントする値を「カウント値RpCNT」と表記する)を所定の閾値CAと比較する。これにより、「R相正向き」「R相負向き」「S相正向き」「S相負向き」「T相正向き」「T相負向き」のうち、電流検出器CTkの取り付け状態として最も可能性が高いものが確定される。
図14は電流Ir,Is,Itが三相非平衡の状態(交流電圧のT相がR,S相に対して100/97)にあり、かつ定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合を例示するグラフである。交流電圧Vrと電流Ir,Is,Itとの関係は図4のそれと同じである。
ここでは閾値Im1,Im2が電流i1,i2のそれぞれの絶対値の実効値である場合に対応させ、閾値Ipr,Ips,Iptはそれぞれ電流Ir,Is,Itの絶対値の実効値を示した。また閾値Imr,Ims,Imtはそれぞれ値−Ipr,−Ips,−Iptとした。
上述の三相非平衡の状態に起因して、Ir>Iprとなる期間は第0モードにおいてのみ期間Zrpとして存在し、Ir<Imrとなる期間は第3モードにおいてのみ期間Zmpとして存在する。Is>Ipsとなる期間は第1モードにおいてのみ期間Zspとして存在し、Is<Imsとなる期間は第4モードにおいてのみ期間Zmsとして存在する。It>Ipとなる期間Ztp1,Ztp2はそれぞれ第3モード、第4モードに存在し、It<Imとなる期間Ztm1,Ztm2はそれぞれ第0モード、第1モードに存在する。よって表1に即して言えば、第2モード及び第5モードでは、「R相正向き」「R相負向き」「S相正向き」「S相負向き」「T相正向き」「T相負向き」の全ての欄の表記は「0」となる。
なお、いずれのモードにおいても、Imr≦Ir≦Ipr,Ims≦Is≦Ips,Imt≦It≦Iptのいずれかが成立し、またIr+Is+It=0の関係がある。よって閾値Imtとして値−Ipr,−Ipsのいずれをも、閾値Iptとして値−Imr,−Imsのいずれをも、それぞれ採用できることが分かる。そしてImt=−Iptの関係を考慮すれば、閾値Ipr,Ips,Iptは同じ値を採用できることがわかる。この事情は三相平衡の状態における閾値の性質と同様であり、結局、図12に示された閾値生成回路271は閾値Ip1,Ip2として共通の値、例えば絶対値|i1|の実効値または平均値、もしくは、予め決定した値、例えば上述の実効値または平均値相当の値を閾値Ipとして採用し、閾値Im1,Im2として共通の値−Ipを採用できることが分かる。
図15は第2の実施の形態の動作の一例である判断ルーチンを説明するフローチャートである。当該判断ルーチンは例えば不図示のメインルーチンに対する割り込み処理であり、割り込み処理によって開始し、当該判断ルーチンの終了により処理は当該メインルーチンに復帰する。当該判断ルーチンは、例えば当該メインルーチンと共に、取り付け判断部270で行われる。図1では、電流i1,i2の値がアクティブフィルタ制御部27に与えられる場合が例示され、この場合には当該判断ルーチンが取り付け判断部270を含むアクティブフィルタ制御部27において行われることができる。
当該判断ルーチンは、交流電圧Vrの位相に換算して180度の整数倍の期間において、所定の回数で繰り返し行なわれる。この期間、回数については後述する。
判断ルーチンが開始した後、ステップS9ではカウンタのリセット、具体的にはカウンタ群2751,2752が有するカウンタRpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,SpCNT,SmCNTの全てについてリセットが行なわれる。これにより、カウンタ群2751,2752のいずれにおいてもカウント値RpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,TpCNT,TmCNTは0となる。
ステップS9の終了後、ステップS1が実行される。ステップS1では電流i1,i2の検出が行なわれる。図12に即して言えば、ステップS1は、閾値生成回路271への電流i1,i2の値の入力に相当する。
ステップS1の終了後、ステップS2が実行される。ステップS2では交流電圧Vrの位相が検出される。図12に即して言えば、ステップS2は、モード判定回路273へのゼロクロス信号Xst,Xrsの少なくとも一方の入力およびこれに基づいたモードの設定のための処理に相当する。
ステップS2の終了後、ステップS41,S42が実行される。これらはそれぞれ電流i1,i2の値に基づく処理であり、並行して実行することができる。ステップS41は電流i1の値及びモードの値modeを用いて電流検出器CT1の取り付け状態を判定する処理であり、図15では「CT1取り付け状態判定処理」と表記されている。ステップS42は電流i2の値及びモードの値modeを用いて電流検出器CT2の取り付け状態を判定する処理であり、図15では「CT2取り付け状態判定処理」と表記されている。
ステップS51,S52では、それぞれカウンタ群2751,2752におけるカウント値RpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,TpCNT,TmCNTのいずれかが所定値以上となったか否かが断される。上述の閾値CAがこの所定値に相当する。
ステップS51の判断結果が否定的であれば、即ちカウンタ群2751におけるカウント値RpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,TpCNT,TmCNTのいずれもが閾値CA未満であれば、ステップS3に処理が進む。ステップS52の判断結果が否定的であれば、即ちカウンタ群2752におけるカウント値RpCNT,RmCNT,SpCNT,SmCNT,TpCNT,TmCNTのいずれもが閾値CA未満であれば、ステップS3に処理が進む。
ステップS51の判断結果が肯定的であれば、ステップS61において電流検出器CT1の取り付け状態が確定したと判断される(図15において「CT1の取り付け状態確定」と表記)。ステップS52の判断結果が肯定的であれば、ステップS62において電流検出器CT2の取り付け状態が確定したと判断される(図15において「CT2の取り付け状態確定」と表記)。このように判断される理由については後述する。ステップS61の終了後も、ステップS62の終了後も、ステップS3に処理が進む。
ステップS3では電流検出器CT1,CT2のいずれもについて、ステップS61、S62の処理が行なわれたか否かが判断される(図15において「CT1とCT2との両方の取り付け状態確定?」と表記)。ステップS3における判断結果が肯定的であれば、即ち電流検出器CT1,CT2のいずれもについて、取り付け状態が確定したと判断されれば、処理がメインルーチンに復帰する。ステップS3における判断結果が否定的であれば、即ちステップS61、S62の処理の一方若しくは両方が行なわれていなければ、電流検出器CT1,CT2の一方若しくは両方について、取り付け状態が確定していないので、処理はステップS1へ戻る。
ステップS3の処理により、ステップS51,S52の少なくともいずれか一方における判断結果が否定的であれば、当該判断ルーチンは終了しない。しかし電流i1,i2はそれぞれ異なる電流検出器CT1,CT2によって並行して検出されるので、ステップS61,S62のいずれか一方のみが実行されたままでステップS1が繰り返し実行される期間は短い。
図16及び図17はステップS41,S42のいずれにも採用される取り付け状態判定処理の詳細を分割して示すフローチャートである。図16のフローチャートと図17のフローチャートとは接続子J1,J2で相互に連結される。但し接続子J1,J2は図面のサイズの制限から取り付け状態判定処理が二つのフローチャートに分割されたことを理由として導入されており、その他の意味を有しない。
取り付け状態判定処理ではまずステップS10(図16)が実行される。ステップS10では電流ikが閾値Ipよりも大きいか否かが判断される。閾値Ipとして閾値Ip1,Ip2のいずれを採用してもよいことは上述した。ステップS10の判断結果が否定的な場合、即ちik≦Ipであれば、接続子J1を介して処理がステップS40(図17)に進む。
ステップS40では電流ikが閾値Imよりも小さいか否かが判断される。閾値Imとして閾値Im1,Im2のいずれを採用してもよいことは上述した。ステップS40の判断結果が否定的な場合、即ちik≧Imであれば、接続子J2を介して処理は取り付け状態判定処理から図15のフローチャートに復帰する。即ち当該取り付け状態判定処理がステップS41として採用されていてれば処理はステップS51に復帰し、当該取り付け状態判定処理がステップS42として採用されていてれば処理はステップS52に復帰する。
このように取り付け状態判定処理においてステップS10,S40のみが実行されて、処理がステップS51若しくはステップS52に復帰することは、Im≦ik≦Ipの場合において発生する事象であり、上述の期間Zrp,Zrp1,Zrp2,Zsp,Zsp1,Zsp2,Ztp1,Ztp2,Zrm,Zrm1,Zrm2,Zsm,Zsm1,Zsm2,Ztm1,Ztm2のいずれでもない期間において発生する事象である。よってこの場合にはいずれのカウンタにおいてもカウントアップもリセットも行なわれず、カウント値が維持される。
図16および図17においては、カウント値のカウントアップを「+=1」で、リセットを「=0」で、それぞれ示す。
ステップS10における判断結果が肯定的であった場合、即ちik>Ipであった場合には、期間Zrp,Zrp1,Zrp2,Zsp,Zsp1,Zsp2,Ztp1,Ztp2のいずれかに対応する事象が発生しているので、モードに応じてカウンタのカウントアップとリセットとを行なう。
ステップS10における判断結果が肯定的であった場合、処理はステップS200に進み、電流ikが検出されたタイミングが第0モードであるか否かが判断される。ステップS200の判断結果が否定的であれば、処理はステップS201に進み当該タイミングが第1モードであるか否かが判断される。ステップS201の判断結果が否定的であれば、処理はステップS202に進み当該タイミングが第2モードであるか否かが判断される。ステップS202の判断結果が否定的であれば、処理はステップS203に進み当該タイミングが第3モードであるか否かが判断される。ステップS203の判断結果が否定的であれば、処理はステップS204に進み当該タイミングが第4モードであるか否かが判断される。ステップS204の判断結果が否定的であれば、処理はステップS205に進み当該タイミングが第5モードであるか否かが判断される。ステップS205の判断結果が否定的であれば、処理は取り付け状態判定処理から図15のフローチャートに復帰する。例えば当該タイミングがモード同士の境界(交流電圧Vrの位相が(30+60×N)度(但しNは整数)にあるときにはこのような経路が想定され得る。
ステップS200,S201,S202,S203,S204,S205の判断結果が肯定的な場合、それぞれ処理はステップS300,S301,S302,S303,S304,S305に進む。
ステップS200において肯定的な判断がなされるのは、第0モードにおいて閾値Ipよりも大きな値を有する電流ikが検出されたときであり、その第1の場合としては図13に示された期間Zrp2あるいは図14に示された期間Zrpにおけるタイミングで電流ikが検出されたときである。これは電流Irが電流ikとして検出された場合に相当する。また第0モードにおいて閾値Ipよりも大きな値を有する電流ikが測定されたときの第2の場合としては、図13および図14に示された期間Ztm1におけるタイミングで電流ikが検出されたときである。これは電流−Itが電流ikとして検出された場合に相当する。
即ちステップS200において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「R相正向き」あるいは「T相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS300ではカウント値RpCNT,TmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値RmCNT,TpCNT,SpCNT,SmCNTはリセットされる。
同様に、ステップS201において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「S相正向き」あるいは「T相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS301ではカウント値SpCNT,TmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値SmCNT,TpCNT,RpCNT,RmCNTはリセットされる。
ステップS202において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「S相正向き」あるいは「R相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS302ではカウント値SpCNT,RmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値SmCNT,RpCNT,TpCNT,TmCNTはリセットされる。
ステップS203において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「T相正向き」あるいは「R相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS303ではカウント値TpCNT,RmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値TmCNT,RpCNT,SpCNT,SmCNTはリセットされる。
ステップS204において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「T相正向き」あるいは「S相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS304ではカウント値TpCNT,SmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値TmCNT,SpCNT,RpCNT,RmCNTはリセットされる。
ステップS205において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「R相正向き」あるいは「S相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS305ではカウント値RpCNT,SmCNTはカウントアップされ、それ以外のカウント値RmCNT,SpCNT,TpCNT,TmCNTはリセットされる。
ステップS300,S301,S302,S303,S304,S305のいずれが実行された場合でも取り付け状態判定処理は終了し、処理は図15のフローチャートへ復帰する。
ステップS40における判断結果が肯定的であった場合、即ちik<Imであった場合には、期間Zrm,Zrm1,Zrm2,Zsm,Zsm1,Zsm2,Ztm1,Ztm2のいずれかに対応する事象が発生しているので、モードに応じてカウンタのカウントアップとリセットとを行なう。
ステップS40における判断結果が肯定的であった場合、処理はステップS500に進み、電流ikが検出されたタイミングが第0モードであるか否かが判断される。ステップS500の判断結果が否定的であれば、処理はステップS501に進み当該タイミングが第1モードであるか否かが判断される。ステップS501の判断結果が否定的であれば、処理はステップS502に進み当該タイミングが第2モードであるか否かが判断される。ステップS502の判断結果が否定的であれば、処理はステップS503に進み当該タイミングが第3モードであるか否かが判断される。ステップS503の判断結果が否定的であれば、処理はステップS504に進み当該タイミングが第4モードであるか否かが判断される。ステップS504の判断結果が否定的であれば、処理はステップS505に進み当該タイミングが第5モードであるか否かが判断される。ステップS505の判断結果が否定的であれば、処理は取り付け状態判定処理から図15のフローチャートに復帰する。例えば当該タイミングがモード同士の境界(交流電圧Vrの位相が(30+60×N)度(但しNは整数)にあるときにはこのような経路が想定され得る。
ステップS500,S501,S502,S503,S504,S505の判断結果が肯定的な場合、それぞれ処理はステップS600,S601,S602,S603,S604,S605に進む。
ステップS500において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「T相正向き」あるいは「R相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS600の処理はステップS303の処理と同じである。
ステップS501において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「T相正向き」あるいは「S相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS601の処理はステップS304の処理と同じである。
ステップS502において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「R相正向き」あるいは「S相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS602の処理はステップS305の処理と同じである。
ステップS503において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「R相正向き」あるいは「T相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS603の処理はステップS300の処理と同じである。
ステップS504において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「S相正向き」あるいは「T相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS604の処理はステップS301の処理と同じである。
ステップS505において肯定的な判断がなされるのは、電流検出器CTkが「S相正向き」あるいは「R相負向き」に取り付けられているときである。よってステップS605の処理はステップS302の処理と同じである。
ステップS600,S601,S602,S603,S604,S605のいずれが実行された場合でも取り付け状態判定処理は終了し、処理は図15のフローチャートへ復帰する。
表2及び表3は、定格電力よりも低い電力が負荷9で消費される場合に、電流検出器CTkが「R相正向き」に取り付けられているときの、モードの値modeと各カウンタの動作とを対応づけて示す。カウンタの動作についてはカウントアップを「増加」、カウントアップもリセットもしないときを「維持」として示した。
表2は電流Ir,Is,Itが三相平衡の状態にある場合を例示する。
第5モード(mode=5)では期間Zrp1においてステップS305が実行される。よってカウンタRpCNT,SmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第0モード(mode=0)では期間Zrp2においてステップS300が実行される。よってカウンタRpCNT,TmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第1モード(mode=1)ではステップS10,S40のいずれの判断結果も否定的であるので、全てのカウンタのカウント値が維持される。
第2モード(mode=2)では期間Zrm1においてステップS602が実行される。よってカウンタRpCNT,SmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第3モード(mode=3)では期間Zrm2においてステップS603が実行される。よってカウンタRpCNT,TmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第4モード(mode=4)ではステップS10,S40のいずれの判断結果も否定的であるので、全てのカウンタのカウント値が維持される。
図18は表2に対応しており、電流ikと比較結果Qkとカウント値RpCNTとの関係を示すグラフである。期間Zrp1,Zrp2,Zrm1,Zrm2において、比較結果Q1は“H”となり、カウント値RpCNTが上昇することが示される。
表2から理解されるように、連続する3つのモードをどのように選択しても、カウント値RpCNTは二つのモードにおいて増加し、一つのモードにおいて維持され、リセットされることがない。カウント値SmCNT,TmCNTは一つのモードにおいて増加し、一つのモードにおいて維持され、一つのモードでリセットされる。そのほかのカウント値は二つのモードにおいてリセットされ、一つのモードにおいて維持される。
このように、三相平衡の状態が得られている場合、電流検出器CTkが「R相正向き」に取り付けられている場合にはカウント値RpCNTは全てのカウンタのカウント値において最大となる。電流検出器CTkがどの電源線に対してどの向きで取り付けられているかという取り付け状態は6種類想定できるが、上述のカウント値RpCNTと同様に、それぞれが最大のカウント値を有するカウンタに対応する。よって最大のカウント値を有するカウンタと電流検出器CTkの取り付け状態とは一対一の対応を有している。
三相平衡の状態が得られている場合、ステップS61,S62においては、例えば最大のカウント値を有するカウンタを求め、電流検出器CTkの取り付け状態を当該カウンタに対応して確定することができる。
表3は電流Ir,Is,Itが三相非平衡の状態(交流電圧のT相がR,S相に対して100/97)にある場合を例示する。
第5モード(mode=5)ではステップS10,S40のいずれの判断結果も否定的であるので、全てのカウンタのカウント値が維持される。
第0モード(mode=0)では期間ZrpにおいてステップS300が実行される。よってカウンタRpCNT,TmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第1モード(mode=1)および第2モード(mode=2)ではステップS10,S40のいずれの判断結果も否定的であるので、全てのカウンタのカウント値が維持される。
第3モード(mode=3)では期間ZrmにおいてステップS603が実行される。よってカウンタRpCNT,TmCNTがカウントアップされ、その他のカウンタはリセットされる。
第4モード(mode=4)ではステップS10,S40のいずれの判断結果も否定的であるので、全てのカウンタのカウント値が維持される。
図19は表3に対応しており、電流ikと比較結果Qkとカウント値RpCNTとの関係を示すグラフである。期間Zrp,Zrmにおいて、比較結果Q1は“H”となり、カウント値RpCNTが上昇することが示される。
表3から理解されるように、連続する3つのモードをどのように選択しても、カウント値RpCNT,TmCNTはは一つのモード(第0モード)において増加し、二つのモードにおいて維持され、リセットされることがない。そのほかのカウント値は一つのモードにおいてリセットされ、二つのモードにおいて維持される。
このように、三相非平衡の状態において、電流検出器CTkが「R相正向き」に取り付けられているとき、カウント値RpCNT,TmCNT以外のカウント値はほぼ零となる。カウント値RpCNT,TmCNTはほぼ等しいが、カウント値RpCNTよりもカウント値TmCNTが大きい場合も想定される。このことを考慮すれば、最大のカウント値を有するカウンタを求めるだけでは、電流検出器CTkの取り付け状態を正しく確定できない可能性がある。
例えばステップS61,S62では、最大のカウント値と、その次に大きなカウント値とを比較する。両者の差が所定数以上離れていれば、電流検出器CTkの取り付け状態を、最大のカウント値を有するカウンタに対応して確定することができる。
最大のカウント値と、その次に大きなカウント値との差が上述の所定数未満であれば、ステップS61,S62では更に判断を行う。当該判断は、上述の例でいえば、カウンタRpCNTに対応する「R相正向き」であるか、カウンタTmCNTに対応する「T相負向き」であるかを区別するための判断である。
当該判断を行うため、Ir+Is+It=0の関係から、電流i1,i2を用いて、電流i3を算出し、この電流i3を用いて、更に判断を行う。
電流検出器CT1が「R相正向き」に取り付けられているならば、電流検出器CT2が「S相正向き」に取り付けられている場合、電流i3=−i1−i2として算出され、「S相負向き」に取り付けられている場合、電流i3=−i1+i2として算出される。電流i3は、図14に示す電流Itであり、ステップS10における判断結果が肯定的である場合、即ちik>Ipである場合、ステップS303とステップS304も実行されて、電流i3は「T相正向き」の電流と判断される。即ち電流i1は、「R相正向き」に取り付けられた電流検出器CT1によって検出されたと確定される。
また、電流検出器CT1が「T相負向き」に取り付けられているならば、電流i3=i1−i2(もしくはi3=i1+i2)として算出される。この場合の電流i3(図示せず)は、ステップS10における判断結果が肯定的である場合、即ちi3>Ipである場合、ステップS300が実行されて、カウント値RpCNTはカウントアップされる。しかしステップS40における判断結果が肯定的である場合、即ちi3<Imである場合、ステップS601が実行されて、カウント値RpCNTはリセットされる。よって電流i3は「R相正向き」の電流とは判断されない。即ち、電流i1は「T相負向き」に取り付けられた電流検出器CT1によって検出されたと確定される。
このように、三相非平衡状態の電流において、非検出相の電流を算出することで、取付け状態を確定する事ができる。
連続する3つのモードに相当する長さが交流電圧Vrの半周期に相当することから、判断ルーチン(図15参照)は少なくとも当該半周期、あるいはその整数倍の長さに亘って実行されることが望ましい。しかし、以下の理由から、判断ルーチンは少なくとも当該半周期の二倍、つまり交流電圧Vrの一周期以上であって半周期の整数倍に亘って実行されることが望ましい。
交流電圧Vrの周波数を50Hzとし、判断ルーチン(図15参照)の実行頻度が周期(1/6000)s(周波数に換算して6kHz)で行われる場合を例に採って説明する。この場合、各モードにおいて20回(=6kHz/50Hz)/6)の判断ルーチンが実行される。
三相平衡が得られていれば、例えば期間Zrp1,Zrp2,Zrm1,Zrm2(図13参照)はそれぞれが存在するモードの長さの約50%の長さを占める。よって期間Zrp1,Zrp2,Zrm1,Zrm2においてカウント値RpCNTは10回のカウントアップを受ける。表2に鑑みれば、連続する3つのモードに亘って取り付け状態判定処理(図16、図17参照)が実行されることが望ましい。よって1回のカウントアップでカウント値が1増加するとして、ステップS51,S52での判断基準となる所定値(図12に即して言えば閾値CA)は値20を採用することができる。
これに対して、三相非平衡であれば期間Zrp,Zmp(図14参照)は、期間Zrp1,Zrp2,Zrm1,Zrm2(図13参照)の半分の長さを占めるに留まる。よって連続する3つのモードに亘って取り付け状態判定処理(図16、図17参照)が実行されるのであれば、所定値として値10を採用することもできる。
しかし三相平衡が得られているか否かは事前に不明であるので、ステップS51,S52での判断基準となる所定値は、三相平衡が得られている場合を想定して設定されることが望ましい。このとき、三相平衡が得られていなければ(即ち三相非平衡であれば)表3に鑑みて、取り付け状態が確定されるまでには連続する6つのモードに相当する長さに亘って取り付け状態判定処理が実行される。よって上述のように判断ルーチンは交流電圧Vrの半周期の整数倍(但し当該整数は2以上)で実行されることが望ましい。
<インバータ制御の効果>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、一般的なインバータ回路として、平滑フィルタ6に大容量のコンデンサを用いたコンデンサインプット型の回路を採用した場合を例に採って説明した。平滑フィルタ6に小容量のコンデンサを用いたいわゆる電解コンデンサレスインバータ回路において、インバータ制御を公知の手法によって行って直流電流の脈流を抑えることにより、交流電圧Vr,Vs,Vtが三相非平衡であっても、電流Ir,Is,Itを三相平衡に近づけることができる。
図20は、三相の電解コンデンサレスインバータ回路で、直流電流の脈流を抑えるようにインバータ21を制御した場合の電流Ir,Is,It及び比較結果Qk、カウント値RpCNTを示すグラフである。負荷9で消費される電力が、定格電力よりも低く、かつ三相非平衡の状態(交流電圧のT相がR,S相に対して100/97)を例示する。図13で示された場合と異なり、図14で示された場合と同様に、第0モードでIr>Irpとなる期間Zrp1のみならず、第5モードでIr>Irpとなる期間Zrp2が存在する。よって表3ではなく表2に基づいて(図15のステップS61,S62に対応した)取り付け状態を確定することができる。
インバータ制御部7、アクティブフィルタ制御部27のいずれも、これらによって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
例えばインバータ制御部7、アクティブフィルタ制御部27のいずれも、マイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成することができる。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。上述の各種の実施形態および変形例は相互に組み合わせることができる。