[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
(複合ケーブルを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両100には、電動式の制動装置として、電動パーキングブレーキ(以下、EPBという)101が備えられている。
EPB101は、EPB用電気モータ101aと、EPB制御部101bと、を備えている。
EPB用電気モータ101aは、車両100の車輪102に搭載されている車輪側装置である。EPB制御部101bは、車両100の車体側装置であるECU(電子制御ユニット)103に搭載されている。なお、EPB制御部101bは、ECU103以外のコントロールユニットに搭載されていてもよく、専用のハードウェアユニットに搭載されていてもよい。
図示していないが、EPB用電気モータ101aには、ブレーキパッドが取り付けられたピストンが設けられており、当該ピストンをEPB用電気モータ101aの回転駆動により移動させることで、ブレーキパッドを車輪102の車輪のディスクロータに押し付け、制動力を発生させるように構成されている。EPB用電気モータ101aには、EPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線として1対の第1電線5が接続されている。
EPB制御部101bは、車両100の停止時に、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフ状態からオン状態に操作されたとき、所定時間(例えば1秒間)にわたってEPB用電気モータ101aに駆動電流を出力することにより、ブレーキパッドを車輪102のディスクロータに押し付けた状態とし、車輪102に制動力を発生させるように構成されている。また、EPB制御部101bは、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオン状態からオフ状態に操作されたとき、あるいは、アクセルペダルが踏込操作されたときに、EPB用電気モータ101aに駆動電流を出力し、ブレーキパッドを車輪のディスクロータから離間させて、車輪102への制動力を解除するように構成される。つまり、EPB101の作動状態は、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオンされてから、パーキングブレーキ作動スイッチ101cがオフされるかアクセルペダルが踏み込まれるまで維持されるように構成されている。なお、パーキングブレーキ作動スイッチ101cは、レバー式又はペダル式のスイッチであってもよい。
また、車両100には、ABS装置104が搭載されている。ABS装置104は、ABSセンサ104aと、ABS制御部104bと、を備えている。
ABSセンサ104aは、走行中の車輪102の回転速度を検出する回転速度検出センサであり、車輪102に搭載されている。ABS制御部104bは、急停止時に車輪102がロックされないように、ABSセンサ104aの出力に基づいて制動装置を制御し、車輪102の制動力を制御するものであり、ECU103に搭載されている。ABSセンサ104aには、信号線として1対の第2電線6が接続されている。
第1電線5と第2電線6とを一括して外皮4(図2(a)および図2(b)参照)で被覆したものが、本実施の形態に係る複合ケーブル1である。車輪102側から延出された複合ケーブル1は、車体105に設けられた中継ボックス106内にて電線群107に接続され、電線群107を介してECU103やバッテリ(不図示)に接続されている。
図1では、図の簡略化のために1つの車輪102のみを示しているが、EPB用電気モータ101a、およびABSセンサ104aは、車両100の各車輪102に搭載されていてもよく、例えば、車両100の前輪のみ、あるいは後輪のみに搭載されていてもよい。
(複合ケーブル1の説明)
図2(a)は、本実施の形態に係る複合ケーブル1の横断面図であり、図2(b)は外皮とテープ部材とを断面で表した破断面図である。
図2(a)および図2(b)に示すように、複合ケーブル1は、一対の第1電線5と、第1電線5よりも外径が小さい一対の第2電線6が撚り合されてなる対撚線8と、一対の第1電線5と対撚線8とが撚り合された集合体9の周囲に、螺旋状に巻き付けられているテープ部材3と、テープ部材3の外周に被覆されている外皮4と、を備えている。
本実施の形態では、一対の第1電線5は、車両100の車輪102に搭載されたEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給するための電源線からなる。また、本実施の形態では、一対の第2電線6は、車輪102に搭載されたABSセンサ104a用の信号線からなる。
第1電線5は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた第1導体51の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1絶縁体52を被覆して構成される。
第1導体51に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合は十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下するおそれがあり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合、複合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。
第1電線5の第1導体51の外径、および第1絶縁体52の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。本実施の形態では、第1電線5がEPB101用の電気モータ101aに駆動電流を供給する電源線であることを考慮し、第1導体51の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定すると共に、第1電線5の外径を2.0mm以上4.0mm以下に設定した。
第2電線6は、銅等の良導電性の素線を撚り合わせた第2導体61の周囲に、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第2絶縁体62を被覆して構成された絶縁電線である。第2導体61に用いる素線としては、第1導体51と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
第2電線6の外径は、第1電線5の外径よりも小さい。本実施の形態では、一対(2本)の第2電線6を撚り合わせた対撚線8と一対の第1電線5とを撚り合わせるため、複合ケーブル1の外径を円形状に近づけるという観点から、第2電線6として、第1電線5の外径の半分程度のものを用いることが望ましいといえる。具体的には、第2電線6としては、外径1.0mm以上1.8mm以下、第2導体61の外径が0.4mm以上1.0mm以下のものを用いることができる。
対撚線8の撚りピッチは、第2電線6の外径を考慮し、第2電線6に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、対撚線8の撚りピッチを約30mmとしたが、対撚線8の撚りピッチはこれに限定されるものではない。なお、対撚線8の撚りピッチとは、任意の第2電線6が対撚線8の周方向において同じ位置となる対撚線8の長手方向に沿った間隔である。
集合体9は、1対の第1電線5と対撚線8とを撚り合わせて構成される。本実施の形態では、1対の第1電線5を接触させるとともに、1対の第2電線6を接触させ、さらに1対の第1電線5と第2電線6(対撚線8)とを接触させて、集合体9を構成した。このとき、1対の第1電線5間の内方の谷間部分には、第2電線6の少なくとも一部が配置される。
なお、EPB101では、基本的に車両の停止時に電気モータ101aに駆動電流を供給する。これに対して、ABSセンサ104aは車両の走行時に使用されるものであり、通常の使用時において第1電線5に駆動電流が供給されているときにABSセンサ104aが使用されることはない。そこで、本実施の形態では、対撚線8の周囲に設けられるシールド導体を省略している。シールド導体を省略することで、シールド導体を設けた場合と比較して複合ケーブル1の外径を小さくすることができ、また部品点数を削減してコストを抑制することも可能になる。
また、ここでは第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給する場合を説明しているが、第1電線5は、例えば、車輪102に設けられた電気機械式ブレーキ(以下、EMBという)の電気モータに駆動電流を供給するために用いられてもよい。この場合、車両100の走行中にも第1電線5に電流が流れることになるため、ノイズによるABS装置104の誤動作を抑制するために、対撚線8及び1対の第1電線5のいずれか一方の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。また、1対の第1電線5のそれぞれの導体の外周側にシールド導体を設けて1対の第1電線5それぞれをシールド電線とすることも可能であるし、1対の第2電線6のそれぞれの導体の外周側にシールド導体を設けて1対の第2電線6それぞれをシールド電線とすることも可能である。
さらに、ここでは第2電線6がABSセンサ104a用の信号線である場合を説明しているが、第2電線6は、車輪102に設けられる他のセンサ、例えば温度センサやタイヤの空気圧を検出する空気圧センサ等に用いられる信号線であってもよいし、車両100の制振装置の制御に用いられるダンパ線であってもよく、さらにはEMB制御用の信号線(CANケーブル等)であってもよい。第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものである場合であっても、第2電線6が車両100の停車中に使用される場合には、ノイズによる誤動作を抑制するために、対撚線8の周囲にシールド導体を設けることが望ましいといえる。
一対の第1電線5と対撚線8とを撚り合わせた集合体9の外径は、例えば、5mm〜9mm程度である。集合体9の撚りピッチは、集合体9の外径を考慮し、第1電線5と対撚線8に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、集合体9の撚りピッチを約50mmとした。なお、集合体9の撚りピッチとは、任意の第1電線5または対撚線8が集合体9の周方向において同じ位置となる集合体9の長手方向に沿った間隔である。
集合体9の周囲には、テープ部材3が螺旋状に巻き付けられており、テープ部材3は、集合体9を構成する全ての電線(1対の第1電線5および対撚線8(1対の第2電線6))に接触している。テープ部材3は、集合体9と外皮4との間に介在し、屈曲時に集合体9(電線5,6)と外皮4間の摩擦を低減する役割を果たすと共に、端末処理時に外皮4から第1電線5および対撚線8を剥がし易くする役割を果たす。すなわち、テープ部材3を設けることで、従来のようにタルク粉体等の潤滑剤を用いることなく、集合体9と外皮4間の摩擦を低減し、屈曲時に電線5,6にかかるストレスを低減して耐屈曲性を向上させることが可能になると共に、端末処理時の作業性を向上できる。
テープ部材3としては、第1電線5の第1絶縁体52、および第2電線6の第2絶縁体62に対して滑りやすいもの(摩擦係数が小さいもの)を用いることが望ましく、例えば、不織布や紙、あるいは樹脂(樹脂フィルム等)からなるものを用いることができる。より具体的には、テープ部材3としては、テープ部材3と第1絶縁体52及び第2絶縁体62間の摩擦係数(静摩擦係数)が、テープ部材3を設けなかった際における外皮4と第1絶縁体52及び第2絶縁体62間の摩擦係数(静摩擦係数)よりも小さい部材を用いるとよい。
なお、テープ部材3としては、2層以上の積層構造となっているものも用いることができる。この場合、テープ部材3の集合体9と接触する面が、不織布、紙、樹脂層のいずれかからなるものを用いればよい。例えば、テープ部材3として、紙の一方の面に樹脂層を形成したものを用い、より摩擦係数が小さい樹脂層を集合体9側として巻き付けるように構成することもできる。
本実施の形態では、厚さ0.07mmのポリエステル系の不織布からなるテープ部材3を用いた。テープ部材3として用いる不織布の厚さは、0.03mm以上0.10mm以下とすることが望ましい。これは、不織布の厚さが0.03mm未満であると、外皮4を被覆する際に外皮4の一部がテープ部材3を透過して集合体9側に到達する可能性があり、端末処理時の作業性が低下するおそれがあり、不織布の厚さが0.10mmを超えると、テープ部材39の剛性が高くなり複合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがあるためである。
テープ部材3は、その幅方向(テープ部材3の長手方向および厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体9に巻き付けられる。テープ部材3が重なり合う幅は、例えば、テープ部材3の幅の1/4以上1/2以下である。なお、本実施の形態において、テープ部材3が重なり合う部分は、接着剤等により接着されていない。
テープ部材3の幅は、テープ部材3を巻き付けた際にテープ部材3に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体9全体の外径が小さくなるほど幅の狭いテープ部材3を用いることが望ましい。具体的には、集合体9の外径が5mm〜9mmである場合、テープ部材3の幅は、20mm〜50mm程度とすればよい。
テープ部材3の巻きピッチ、すなわちテープ部材3が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、テープ部材3の幅および重なり幅により調整することが可能である。なお、テープ部材3の幅を大きくし、巻きピッチを大きくしていくと、テープ部材3を縦添えした状態に近くなり、複合ケーブル1の柔軟性が失われて曲げにくくなり複合ケーブル1の可撓性が低下するおそれがある。そのため、本実施の形態では、テープ部材3の巻きピッチを約40mmとし、集合体9の撚りピッチよりも小さくしている。これにより、たとえテープ部材3として剛性が高いものを用いたとしても、複合ケーブル1の可撓性の低下を低減することが可能となる。
テープ部材3の周囲には、外皮4が設けられる。外皮4は、例えばウレタン樹脂からなる。本実施の形態では、第1電線5がEPB用電気モータ101aに駆動電流を供給するものであり、第1電線5に駆動電流が流れる時間が比較的短いためシールド導体を省略しているが、第1電線5の用途等に応じて、テープ部材3と外皮4との間、あるいは外皮4の外周にシールド導体を設けてもよい。
さて、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、テープ部材3と外皮4は、両第1電線5の間の谷間部分、または第1電線5と対撚線8との間の谷間部分の少なくとも1箇所に内方に入り込むように形成されており、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部10を有している。
ここでは、両第1電線5の間の谷間部分、一方の第1電線5と対撚線8との間の谷間部分、および、他方の第1電線5と対撚線8との間の谷間部分のそれぞれに内方突出部10を形成した場合を示しているが、これら谷間部分の少なくとも1箇所に内方突出部10が形成されていればよい。なお、複合ケーブル1の座屈を抑制しテープ部材3の移動を抑制するという観点からは、すべての谷間部分に内方突出部10が形成されていることが望ましいといえる。
複合ケーブル1では、第1電線5と第1電線5との間における谷間部分において、両第1電線5とテープ部材3とが接触していると共に、テープ部材3と外皮4とが接触している。また、ケーブル1では、第1電線5と対撚線8との間における谷間部分において、第1電線5および対撚線8(少なくとも一方の第2電線6)とテープ部材3とが接触していると共に、テープ部材3と外皮4とが接触している。
内方突出部10は、当該内方突出部10を挟んで周方向に隣り合う第1電線5同士または第1電線5と対撚線8の外周を通る共通の接線のうち最も外方(複合ケーブル1の径方向における外方)に形成される接線よりも内方に突出するように形成されている。なお、ここでいう共通の接線とは、ケーブル長手方向に対して垂直な方向の接線である。
2本の第1電線5の外周を通る共通の接線は、複合ケーブル1の内周側と外周側に存在するが、両第1電線5間の谷間部分に形成される内方突出部10は、外周側の共通の接線よりも内方に突出するように形成される。図2Aでは、2本の第1電線5の外周を通る共通の接線を符号11で表している。
また、対撚線8の外周とは、撚り合された2本の第2電線6のそれぞれの外周を意味し、第1電線5と対撚線8の外周を通る共通の接線は複数存在する。第1電線5と対撚線8間に形成される内方突出部10は、これら複数の共通の接線のうち最も外周側に形成される共通の接線(断面視において両第2電線6を貫通しない接線)よりも内方に突出するように形成される。図2Aでは、図示左側の第1電線5と対撚線8の外周を通る共通の接線のうち最も外方(外周側)に形成される接線を符号12で表している。説明の簡略化のため、以下では、「共通の接線」とは、最も外方(外周側)に形成される共通の接線を意味することとする。
内方突出部10を形成することにより、第1電線5や対撚線8の周囲に形成される中空部を小さくし、複合ケーブル1に曲げや捩じれが加えられた際であっても座屈が生じにくくなる。また、テープ部材3が周方向に隣り合う第1電線5間または第1電線5と対撚線8間の谷間部分に入り込んでおり、かつ外皮4により径方向外方への移動が規制された状態となっているため、テープ部材3がケーブル長手方向に移動しにくくなる。すなわち、第1電線5と第1電線5との間における谷間部分、および第1電線5と対撚線8との間における谷間部分において、図2(b)に示す通りケーブル長手方向において前後方向にテープ部材3が外皮4と集合体9(第1電線5や対撚線8)とに挟まれた状態となり、テープ部材3のケーブル長手方向の相対移動を抑制することが可能になる。
本実施の形態では、内方突出部10は、その当該内方突出部10を挟んで周方向に隣り合う第1電線5同士または第1電線5と対撚線8の外周を通る共通の接線から内方への突出長d(共通の接線と内方突出部10の先端部との距離)が、第1電線5の外径の3%以上とされる。
これは、内方突出部10の突出長dが第1電線5の外径の3%未満と短いと、座屈抑制の効果およびテープ部材3の移動を抑制する効果が十分に得られないおそれがあるためである。座屈抑制の効果およびテープ部材3の移動を抑制する効果を十分に得るために、内方突出部10の突出長dを第1電線5の外径の10%以上とすることがより好ましい。
例えば、第1電線5の外径を3mmとする場合には、突出長dは少なくとも0.1mm以上とすることが望ましいといえる。使用する電線5,6の外径にもよるが、内方突出部10を有することによる効果を得るためには、突出長dが少なくとも0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上であることが望ましいといえる。なお、突出長dは常に一定である必要はなく、多少の変動は許容される。
さらに、内方突出部10の突出長dが大きすぎると、端末処理時(例えば外皮4を除去するストリップ作業時)の作業性が低下してしまうおそれがあるため、突出長dは複数の第1電線5の外径の40%以下、好ましくは35%以下とすることが望ましい。使用する電線5,6の外径にもよるが、外皮4を容易に除去するという観点からは、突出長dを1mm以下とすることが望ましいといえる。
集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とが異なると、テープ部材3が第1電線5間または第1電線5と対撚線8間の谷間部分に入り込みにくくなるため、集合体9の撚り方向と、テープ部材3の巻き付け方向とは、同じ方向とされる。これにより、テープ部材3を集合体9に巻き付ける際に適宜な張力を付与しつつ巻き付けることで、テープ部材3を容易に第1電線5間または第1電線5と対撚線8間の谷間部分に入り込ませることが可能になる。その後、押出被覆によりテープ部材3の周囲に外皮4を設ければ、内方突出部10が形成されることになる。
なお、ここでいう集合体9の撚り方向とは、複合ケーブル1を先端側(テープ部材3の重なりが上となる側)から見たときに、第1電線5および対撚線8が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。また、テープ部材3の巻き付け方向とは、複合ケーブル1を先端側(テープ部材3の重なりが上となる側)から見た時に、テープ部材3が基端側から先端側にかけて回転している方向をいう。
また、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを同じ方向とすることで、端末加工をする際に、テープ部材3をほどくと集合体9の撚りが自然にほぐれることになり、電線5,6をほぐし易くなる。これにより、複合ケーブル1の解体性が向上する。
また、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを同じ方向とすることで、複合ケーブル1に捩れが加わった際に、集合体9とテープ部材3とが同調して開いたり閉じたりすることになり、捩れによる負荷を分散して複合ケーブル1の一部分に過大な負荷が加わることを抑制でき、捩れに対する耐久性を向上させることが可能になる。
これに関し、例えば、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向が逆方向の場合、集合体9が開く(集合体9の径が大きくなる)方向に複合ケーブル1に捩じれが加わった際、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向が逆方向であるためテープ部材3は逆に閉じてしまう(テープ部材3の径が小さくなってしまう)。このとき、集合体9が開こうとするのをテープ部材3におさえつけられてしまい、集合体9にストレスが加わり、1対の第1電線5や対撚線8の一部分に過大な負荷が加わってしまう場合がある。本実施の形態では、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向を同じ方向とすることで、集合体9とテープ部材3とが同調して開いたり閉じたりし、これにより、複合ケーブル1の捩じれに対する耐久性を向上させることが可能となる。
なお、集合体9の撚りピッチを小さくすると、複合ケーブル1を曲げやすくなり可撓性が向上するが、撚りに余裕がなくなり捩れに対する耐久性は低下してしまう。逆に、集合体9の撚りピッチを大きくすると、捩じれに対する耐久性は向上するが可撓性は低下する。本実施の形態では、捩れが加わった際に、集合体9とテープ部材3とが同調して開いたり閉じたりして負荷を分散できるため、集合体9の撚りピッチを小さくして可撓性を向上させた場合であっても、捩れに対する耐久性を十分に確保することが可能である。
内方突出部10は、複合ケーブル1の長手方向全体にわたって形成されていることが望ましいが、内方突出部10が途中で途切れていてもよい。つまり、複合ケーブル1は、その長手方向の一部において、内方突出部10が形成されていなくてもよい。例えば、複合ケーブル1の端末部分(端末から所定距離)においてテープ部材3の巻きピッチを変化させるなどして、内方突出部10を形成しない(あるいは内方突出部10の突出長dを小さくする)ようにし、端末処理時の作業性を向上させることも可能である。
また、本実施の形態では、テープ部材3と外皮4の両方が、周方向に隣り合う第1電線5同士または第1電線5と対撚線8の外周を通る共通の接線から内方に突出するように構成したが、これに限らず、例えばテープ部材3として比較的厚いものを用いる場合等は、テープ部材3のみが共通の接線よりも内方に突出する構成であってもよい。ただし、内方突出部10において外皮4が内方に突出するように(テープ部材3の外周面に密着するように)形成されている必要がある。
また、本実施の形態では、対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向とは、同じ方向である。なお、対撚線8の撚り方向とは、複合ケーブル1を先端側(テープ部材3の重なりが上となる側)から見たときに、基端側から先端側にかけて第2電線6が対撚線8の周方向に沿って回転している方向をいう。
対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向を同じ方向とすることで、端末加工をする際に、集合体9の撚りをほぐすと対撚線8の撚りが自然にほぐれることになり、電線5,6をほぐし易くなる。これにより、複合ケーブル1の解体性が向上する。また、対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向を同じ方向とすることにより、集合体9を撚り合わせる際に、2本の第2電線6を撚ることにより対撚線8に付与される曲がり癖に沿った方向に対撚線8と第1電線5を撚り合せることになる。このため、複合ケーブル1が屈曲する際に、1対の第1電線5と対撚線8とが同調して複合ケーブル1の長手方向に伸縮するため、複合ケーブル1が曲がりやすくなり、複合ケーブル1の可撓性を向上させることが可能になる。
また、対撚線8の撚り方向、集合体9の撚り方向、及びテープ部材3の巻き付け方向の全てが同じ方向となるため、複合ケーブル1に捩じれが加わった際に、対撚線8、集合体9、及びテープ部材3が同調して開いたり閉じたりし、これにより、複合ケーブル1の捩じれに対する耐久性をさらに向上させることが可能となる
さらに、対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向を同じ方向とすることで、対撚線8の曲がり癖に沿った方向に撚り合せて集合体9を形成することになるため、外皮4を手作業でほどかずに、専用のストリップ装置等で外皮4とテープ部材3とを同時に除去した場合に、対撚線8の曲がり癖の影響により、第1電線5と対撚線8とが撚られた状態のまま維持され易くなる。端末加工時に外皮4の除去長を長くする場合には、複数回に分けてストリップ作業を行うが、対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向を同じ方向とすることで、1度ストリップ作業を行った後にも第1電線5と対撚線8とが撚られた状態で維持されるため、複数回のストリップ作業を容易に行うことが可能になる。
なお、対撚線8の撚り方向と集合体9の撚り方向を同じ方向とする場合、対撚線8の撚りピッチと集合体9の撚りピッチが同じであると、第1電線5と第2電線6の位置関係が長手方向で常に同じとなり、複合ケーブル1の外観がいびつになってしまう可能性がある。そのため、対撚線8の撚りピッチと集合体9の撚りピッチとを異ならせること(具体的には、集合体9の撚りピッチの10%以上80%以下異ならせる(小さくする)こと)が望ましい。対撚線8の撚りピッチを集合体9の撚りピッチよりも大きくすると、集合体9を撚り合わせる際に対撚線8の撚りピッチが変動してしまうおそれがあるため、対撚線8の撚りピッチは、少なくとも集合体9の撚りピッチよりも小さいことが望ましい。
また、対撚線8の撚りピッチは、テープ部材3の巻きピッチ以下(すなわち、テープ部材3の巻きピッチが対撚線8の撚りピッチ以上)であることが望ましく、より好ましくは、対撚線8の撚りピッチは、テープ部材3の巻きピッチよりも小さい(すなわち、テープ部材3の巻きピッチが対撚線8の撚りピッチよりも大きい)ことが望ましい。このようにし、テープ部材3を集合体9に巻き付ける際におけるテープ部材3の張力を調整することで、対撚線8と接触している部分におけるテープ部材3の歪みを低減することが可能となる。また、対撚線8の屈曲耐久性の低下を低減することが可能となる効果を奏する。
(複合ケーブル1を用いた複合ハーネスの説明)
図3は、本実施の形態に係る複合ハーネスの概略構成図である。
図3に示すように、複合ハーネス20は、本実施の形態に係る複合ケーブル1と、第1電線5と第2電線6の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えて構成される。
図3では、図示左側が車輪102側の端部を示し、図示右側が車体105側(中継ボックス106側)の端部を示している。以下の説明では、複合ハーネス20の車輪102側の端部を「一端部」、車体105側(中継ボックス106側)の端部を「他端部」という。
1対の第1電線5の一端部には、EPB用電気モータ101aとの接続のための車輪側電源コネクタ21aが取り付けられ、1対の第1電線5の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側電源コネクタ21bが取り付けられている。
1対の第2電線6(対撚線8)の一端部には、樹脂モールドにより形成された一体成型品であるABSセンサ104aが取り付けられ、1対の第2電線6(対撚線8)の他端部には、中継ボックス106内における電線群107との接続のための車体側ABS用コネクタ22が取り付けられている。
なお、ここでは、第1電線5と第2電線6(対撚線8)に個別にコネクタを設ける場合を説明したが、両電線5,6を一括して接続する専用のコネクタを備えるようにしても構わない。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とが同じ方向であり、テープ部材3と外皮4は、両第1電線5の間の谷間部分、または第1電線5と対撚線8との間の谷間部分の少なくとも1箇所に内方に入り込むように形成されており、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部10を有し、対撚線8の撚りピッチは、集合体9の撚りピッチよりも小さく、テープ部材3の巻きピッチは、集合体9の撚りピッチよりも小さく、対撚線8の撚りピッチ以上である。
両第1電線5の間の谷間部分、または第1電線5と対撚線8との間の谷間部分に入り込む内方突出部10を有することにより、内方突出部10を有さない場合と比較して第1電線5や対撚線8の周囲の中空部を小さくし、複合ケーブル1に曲げや捩じれが加えられた場合であっても、複合ケーブル1(外皮4)が座屈してしまうことを抑制可能になる。
また、内方突出部10がテープ部材3の移動を抑制するため、テープ部材3がケーブル長手方向に移動してしまうことを抑制でき、複合ケーブル1の一部でテープ部材3が重なり合い可撓性が低下してしまう等の不具合を抑制することが可能になる。
さらに、内方突出部10の突出長dを第1電線5の外径の3%以上とすることにより、複合ケーブル1の座屈やテープ部材3の移動を抑制することをさらに向上することが可能になる。
さらにまた、集合体9の撚り方向とテープ部材3の巻き付け方向とを同じ方向とすることにより、テープ部材3を巻き付ける際に、テープ部材3を両第1電線5の間の谷間部分や、第1電線5と対撚線8との間の谷間部分に容易に入り込ませることが可能になり、内方突出部10を有する複合ケーブル1を容易に製造可能になる。
(変形例)
上記実施の形態では、2本の第1電線5と対撚線8とを撚り合わせて集合体9を形成する場合を説明したが、図4に示す複合ケーブル41のように、周方向における対撚線8の両側に配置されている一対の線状の介在(線状体、ダミー線)42を備え、一対の第1電線5と対撚線8と一対の介在42とが撚り合されて集合体9が形成されるように構成してもよい。
一対の介在42を備えることで、複合ケーブル41の断面形状をより円形状に近づけることが可能になり、外観を良好にすると共に、複合ケーブル41を特定の方向に曲げにくくなるといった不具合を抑制できる。介在42は、例えばテフロン(登録商標)などからなる。一対の介在42は、同じ外径に形成されており、第1電線5および対撚線8に接触して配置されている。介在42の外径は、第1電線5の外径よりも小さい。
介在42を備える場合、介在42と当該介在42と隣り合う第1電線5との間の谷間部分、または、介在42と対撚線8との間の谷間部分に、内方突出部10が形成されていてもよい。この場合、介在42と第1電線5間の谷間部分に形成される内方突出部10は、介在42と第1電線5の外周を通る共通の接線43よりも内方に突出するように形成され、介在42と対撚線8間の谷間部分に形成される内方突出部10は、介在42と対撚線8の外周を通る接線44よりも内方に突出するように形成される。
また、上記実施の形態では、外皮4を1層の構成としたが、2層以上の構成としてもよい。外皮4を2層以上の構成とし、押出被覆を複数回行うことで、複合ケーブル1の断面形状をより円形状に近づけて外観を向上することが可能になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]一対の第1電線(5)と、前記第1電線(5)よりも外径が小さい一対の第2電線(6)が撚り合されてなる対撚線(8)と、前記一対の第1電線(5)と前記対撚線(8)とが撚り合された集合体(9)の周囲に、螺旋状に巻き付けられているテープ部材(3)と、前記テープ部材(3)の外周に被覆されている外皮(4)と、を備え、前記集合体(9)の撚り方向と前記テープ部材(3)の巻き付け方向とが同じ方向であり、前記テープ部材(3)と前記外皮(4)は、前記両第1電線(5)の間の谷間部分、または前記第1電線(5)と前記対撚線(8)との間の谷間部分の少なくとも1箇所に内方に入り込むように形成されており、ケーブル長手方向に沿って螺旋状に形成されている内方突出部(10)を有し、前記対撚線(8)の撚りピッチは、前記集合体(9)の撚りピッチよりも小さく、前記テープ部材(3)の巻きピッチは、前記集合体(9)の撚りピッチよりも小さく、前記対撚線(8)の撚りピッチ以上である複合ケーブル(1)。
[2]前記内方突出部(10)は、当該内方突出部(10)を挟んで周方向に隣り合う前記第1電線(5)同士または前記第1電線(5)と前記対撚線(8)の外周を通る共通の接線のうち最も外方に形成される接線から内方への突出長が、前記第1電線(5)の外径の3%以上である、[1]に記載の複合ケーブル
[3]前記内方突出部(10)の前記突出長が、0.1mm以上である、[2]に記載の複合ケーブル(1)。
[4]前記内方突出部(10)は、前記両第1電線(5)の間の谷間部分、一方の前記第1電線(5)と前記対撚線(8)との間の谷間部分、および、他方の前記第1電線(5)と前記対撚線(8)との間の谷間部分のそれぞれに形成されている、[1]乃至[3]の何れか一つに記載の複合ケーブル(1)。
[5]前記第1電線(5)が、車両(100)の車輪(102)に搭載された電動パーキングブレーキ(101)用の電気モータ(101a)に駆動電流を供給するための電源線からなる、[1]乃至[4]の何れか一つに記載の複合ケーブル(1)。
[6]前記第2電線(6)は、車両(100)の車輪(102)に搭載されたセンサ用の信号線からなる、[1]乃至[5]の何れか一つに記載の複合ケーブル(1)。
[7]周方向における前記対撚線(8)の両側に配置されている一対の線状の介在(42)を備え、前記一対の第1電線(5)と前記対撚線(8)と前記一対の介在(42)とが撚り合されて前記集合体(9)が形成されている、[1]乃至[6]の何れか一つに記載の複合ケーブル(41)。
[8]前記介在(42)と当該介在(42)と隣り合う前記第1電線(5)との間の谷間部分、または、前記介在(42)と前記対撚線(8)との間の谷間部分に、前記内方突出部(10)が形成されている、[7]に記載の複合ケーブル(41)。
[9]前記一対の第1電線(5)間の内方の谷間部分には、前記第2電線(6)の少なくとも一部が配置されており、前記テープ部材(3)は、前記集合体(9)を構成する全ての前記一対の第1電線(5)及び前記一対の第2電線(6)と接触している、[1]乃至[8]の何れか一つに記載の複合ケーブル(1)。
[10][1]乃至[9]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)と、前記第1電線(5)と前記第2電線(6)の端部のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、複合ハーネス(20)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。