抗c−Met抗体に対して効果を示す群(効能群)と効果を示さない群(非効能群)の遺伝子発現水準を比較して、差の大きい遺伝子を選別し、前記選別された遺伝子またはこれによって暗号化されるタンパク質を抗c−Met抗体の効能予測のためのバイオマーカーとして提案する。また、細胞種類によってまたは同一な種類の細胞でも個別細胞で発現水準の差が無いか少ない遺伝子を選別し、前記選別された遺伝子またはこれによって暗号化されるタンパク質を前記目的遺伝子および/または目的タンパク質の発現水準比較時のコントロールとして使用可能な基準マーカーとして提案する。
本発明で提案されるバイオマーカーおよび/または基準マーカーを用いて抗c−Met抗体の適用が適した患者を高い正確度で選別することができ、これによって個々の患者において前記抗−c−Met抗体の効能が最大限発揮されるように患者別に合わせた治療が可能であり、前記抗−c−Met抗体の臨床試験にも有用に用いることができる。
具体的に、一実施形態は、抗c−Met抗体に対する効能群と非効能群で発現差を示す遺伝子の抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別のためのバイオマーカーとしての用途を提供する。
一実施形態において、前記バイオマーカーは、THSD7A、MET、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上であり得る。前記バイオマーカーは、前述の遺伝子の全長DNA、cDNA、mRNA、およびこれらによってコードされるタンパク質からなる群より選択された1種以上であり得る。前記バイオマーカーとして使用可能な遺伝子を下記の表1に整理した:
前記バイオマーカーを効能群と非効能群での発現差が大きいものから降順で羅列すれば、THSD7A、MET、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1である。より正確な効能予測または適用対象選別のために、効能群と非効能群での発現差が大きいものを優先的に選択して前記バイオマーカーとして使用することができる。したがって、一実施形態において、前記バイオマーカーは、前記優先的に選択された遺伝子に追加して残りの遺伝子からなる群より選択された1種以上を追加的に含むものであり得る。
一実施形態において、前記バイオマーカーは、
(1)THSD7A;
(2)THSD7Aと、MET、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(3)MET;
(4)METと、THSD7A、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(5)THSD7AおよびMETの組み合わせ;
(6)THSD7AおよびMETの組み合わせと、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(7)RAB31;
(8)RAB31と、THSD7A、MET、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(9)THSD7A、MET、およびRAB31からなる群より選択された2種以上(このとき、THSD7AおよびMETの組み合わせは除外されてもよい);
(10)THSD7A、MET、およびRAB31からなる群より選択された2種以上と、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(11)FAM126A;
(12)FAM126Aと、THSD7A、MET、RAB31、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ;
(13)THSD7A、MET、RAB31およびFAM126Aからなる群より選択された2種以上(このとき、THSD7A、MET、およびRAB31からなる群より選択された2種以上は除外されてもよい);または
(14)THSD7A、MET、RAB31およびFAM126Aからなる群より選択された2種以上と、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上との組み合わせ、を含むものであり得る。
他の実施形態は、細胞種類が異なっても発現水準の差が少ない遺伝子および/または同一な種類の細胞でも個別細胞での発現水準の差が少ない遺伝子を探索して、これらの目的遺伝子の発現水準比較時の比較基準(リファレンス、コントロール)として使用するための基準マーカー(コントロール遺伝子)としての用途を提供する。前記目的遺伝子は、発現水準を測定しようとする全ての遺伝子であり得る。例えば、前記目的遺伝子は、先に選別された抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別のためのバイオマーカーであり得、この場合、前記基準マーカーは、抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別時の目的遺伝子の発現水準測定のための比較基準として使用することができる。
目的遺伝子の遺伝子発現水準測定において、その比較基準(リファレンス、コントロール)になる遺伝子が細胞の種類によって異なる場合、または同一な種類の細胞でも個々の細胞での発現水準が異なる場合、正確な目的遺伝子の発現水準の測定が困難になる。このため、目的遺伝子の発現水準を正確に測定するために適切な基準マーカーを選定することが重要である。
一実施形態において、前記基準マーカーは、細胞生存に必須な内在的遺伝子(endogenous gens)から選択される。例えば、前記基準マーカーは、EEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1からなる群より選択された1種以上であり得る。RPL23A、TPT1、MATR3、SRSF3、およびHNRNPCの発現量が非常に一定の水準に維持されるので(実施例1参照)、一実施形態において、前記基準マーカーはRPL23A、TPT1、MATR3、SRSF3、およびHNRNPCからなる群より選択された1種以上を含み、任意に、EEF1A1、HUWE1、SMARCA4、WDR90、およびTUT1からなる群より選択された1種以上を追加的に含むことができるが、これらに限定されない。一実施形態において、前記基準マーカーは、RPL23A、TPT1、MATR3、SRSF3、およびHNRNPCを含むものであり得る。あるいは、基準マーカーは、TPT1、EEF1M、TUT1、MATR3、およびSMARCA4を含むものであり得る。
前記基準マーカーは、前述の遺伝子の全長DNA、cDNA、mRNA、およびこれによってコードされるタンパク質からなる群より選択された1種以上であり得る。この時、試験対象細胞は肺癌細胞、例えば、肺腺癌(Lung cancer adenocarcinoma)、非小細胞肺癌(Non−small cell lung cancer)などであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーとして使用可能な遺伝子を下記の表2に整理した:
他の実施形態では、基準マーカーを比較基準として使用する標的遺伝子の発現水準を判断(または評価)する方法であって、前記基準マーカーが、EEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1からなる群から選択される少なくとも一つである方法を提供する。遺伝子の発現水準を判断(または評価)する方法は、生物試料内の標的遺伝子の発現水準を測定し、当該標的遺伝子の発現水準を基準マーカーの発現水準と比較することを含み得る。遺伝子の発現水準を判断(または評価)する方法は、基準マーカーの発現水準を測定することをさらに含み得る。遺伝子の発現水準は、生体から分離された細胞、組織、またはこれらから抽出された遺伝子(DNAまたはRNA)若しくはタンパク質であり得る。発現水準の測定は、生体から分離された生物試料中における遺伝子自体(例えば、全長DNA、cDNA、mRNAなど)の量または前記遺伝子からコードされるタンパク質の量を測定することによって行うことができる。他の実施形態では、生体から分離された生物試料中における標的遺伝子の発現水準を判断(または評価)するための、EEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1からなる群から選択される一つ以上の使用が提供される。
例えば、前記遺伝子の発現水準を判断(または評価)する方法は、生物試料内の標的遺伝子の発現水準を測定する段階;および前記標的遺伝子の発現水準を前記生物試料内の基準マーカーの発現水準と比較する段階を含むことができる。この時、前記方法は、生物試料内の基準マーカーの発現水準を測定する段階を追加的に含むことができる。
前記標的遺伝子は、発現水準を測定しようとする対象遺伝子である。
他の実施形態は、前記バイオマーカーまたは前記バイオマーカーによってコードされるタンパク質の検出手段を含む対象者に対する抗c−Met抗体効能(または抗c−Met抗体に対する対象者の応答性もしくは感度)予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別のための組成物を提供する。前記抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別のための組成物は、前記基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、もしくはmRNA)または基準マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の検出用分子または製剤を追加的に含むものであり得る。
他の実施形態は、前記バイオマーカーまたは前記バイオマーカーによってコードされるタンパク質の検出手段を含む対象者に対する抗c−Met抗体効能(または抗c−Met抗体に対する対象者の応答性もしくは感度)予測および/または抗c−Met抗体適用対象選別のためのキットを提供する。前記抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体適用対象選別のためのキットは、前記基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、もしくはmRNA)または基準マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の検出用分子または組成物を追加的に含むものであり得る。
他の実施形態では、基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、もしくはmRNA)または基準マーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の検出用分子または組成物を含む、基準マーカー組成物または標的遺伝子の発現水準を測定(判断または評価)するためのキットを提供する。一実施形態において、前記標的遺伝子が前述のバイオマーカーである場合、前記組成物またはキットは、対象者に対する抗c−Met抗体効能予測および/または抗c−Met抗体の適用対象選別のために使用され得る。
前記バイオマーカーの検出手段または基準マーカーの検出手段は、前述の遺伝子定量またはタンパク質定量方法に使用される手段(例えば、検出用分子または製剤)であり得る。例えば、前記バイオマーカーの検出手段または基準マーカーの検出手段(検出用分子または製剤)は、前記バイオマーカーまたは基準マーカーの遺伝子に特異的に結合する(ハイブリダイズ可能な)プライマー、プローブもしくはアプタマー、もしくは前記バイオマーカーまたは基準マーカーの遺伝子にコードされるタンパク質に特異的に結合する抗体もしくはアプタマー、またはこれらの組み合わせであり得る。前記プライマーは、前記バイオマーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)もしくは基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の全長、またはこれらの遺伝子の塩基配列中の連続する5〜1000bp、例えば10〜500bp、20〜200bp、または50〜200bpの遺伝子断片を検出することができるものであり得、前記遺伝子全長または遺伝子断片の3’−末端および5’−末端それぞれの連続する5〜100bp、例えば、5〜50bp、5〜30bp、または10〜25bp部位とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するまたはから成るものであり得る。前記プローブまたはアプタマーは、例えば、5〜100bp、5〜50bp、5〜30bp、または10〜25bpのサイズのヌクレオチド配列を有するまたはから成るものであり得、前記バイオマーカー遺伝子または基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列の中の連続する5〜100bp、例えば、5〜50bp、5〜30bp、または10〜25bp部位とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するまたはから成るものであり得る。前記「ハイブリダイズ可能」とは、プライマー、プローブまたはアプタマーの塩基配列と前記遺伝子の特定領域の塩基配列との間で、80%以上、例えば90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有することによって、前記遺伝子特定領域に相補的に結合し得ることを意味する。
一実施形態における、前記バイオマーカーまたは基準マーカーの検出に使用可能なプローブまたはプライマーを下記の表3〜表5に示した。
一実施形態において、前記バイオマーカーTHSD7Aの検出に使用可能なプローブは、配列番号109〜配列番号142からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号109のプローブ、配列番号110〜配列番号120を含むプローブセット、配列番号121〜配列番号131を含むプローブセット、および配列番号132〜配列番号142を含むプローブセットからなる群より選択された1種以上であり得る。前記バイオマーカーTHSD7Aの検出に使用可能なプライマーは、配列番号270のプライマー、配列番号271のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーMETの検出に使用可能なプローブは、配列番号143〜配列番号154からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号143のプローブ、配列番号144〜配列番号154を含むプローブセット、またはこれらの組み合わせであり得る。前記バイオマーカーMETの検出に使用可能なプライマーは、配列番号272のプライマー、配列番号273のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーRAB31の検出に使用可能なプローブは、配列番号155〜配列番号177からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号155のプローブ、配列番号156〜配列番号166を含むプローブセット、および配列番号167〜配列番号177を含むプローブセットからなる群より選択された1種以上であり得る。前記バイオマーカーRAB31の検出に使用可能なプライマーは、配列番号278のプライマー、配列番号279のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーFAM126Aの検出に使用可能なプローブは、配列番号178〜配列番号200および配列番号225〜配列番号235からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号178のプローブ、配列番号179〜配列番号189を含むプローブセット、配列番号190〜配列番号200を含むプローブセット、および配列番号225〜配列番号235を含むプローブセットからなる群より選択された1種以上であり得る。前記バイオマーカーFAM126Aの検出に使用可能なプライマーは、配列番号274のプライマー、配列番号275のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーPHC1の検出に使用可能なプローブは、配列番号201〜配列番号212からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号201のプローブ、配列番号202〜配列番号212を含むプローブセット、またはこれらの組み合わせであり得る。前記バイオマーカーPHC1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号276のプライマー、配列番号277のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーCHMLの検出に使用可能なプローブは、配列番号213〜配列番号224からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号213のプローブ、配列番号214〜配列番号224を含むプローブセット、またはこれらの組み合わせであり得る。前記バイオマーカーCHMLの検出に使用可能なプライマーは、配列番号282のプライマー、配列番号283のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーST8SIA4の検出に使用可能なプローブは、配列番号236〜配列番号247からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号236のプローブ、配列番号237〜配列番号247を含むプローブセット、またはこれらの組み合わせであり得る。前記バイオマーカーST8SIA4の検出に使用可能なプライマーは、配列番号280のプライマー、配列番号281のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記バイオマーカーCAV1の検出に使用可能なプローブは、配列番号248〜配列番号259からなる群より選択された1種以上であり得、例えば、配列番号248のプローブ、配列番号249〜配列番号259を含むプローブセット、またはこれらの組み合わせであり得る。前記バイオマーカーCAV1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号284のプライマー、配列番号285のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーEEF1A1の検出に使用可能なプローブは、配列番号262のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーEEF1A1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号290のプライマー、配列番号291のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーRPL23Aの検出に使用可能なプローブは、配列番号260のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーRPL23Aの検出に使用可能なプライマーは、配列番号286のプライマー、配列番号287のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーTPT1の検出に使用可能なプローブは、配列番号261のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーTPT1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号288のプライマー、配列番号289のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーHUWE1の検出に使用可能なプローブは、配列番号266のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーHUWE1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号298のプライマー、配列番号299のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーMATR3の検出に使用可能なプローブは、配列番号268のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーMATR3の検出に使用可能なプライマーは、配列番号302のプライマー、配列番号303のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーSRSF3の検出に使用可能なプローブは、配列番号263のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーSRSF3の検出に使用可能なプライマーは、配列番号292のプライマー、配列番号293のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーHNRNPCの検出に使用可能なプローブは、配列番号265のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーHNRNPCの検出に使用可能なプライマーは、配列番号296のプライマー、配列番号297のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーSMARCA4の検出に使用可能なプローブは、配列番号269のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーSMARCA4の検出に使用可能なプライマーは、配列番号304のプライマー、配列番号305のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーWDR90の検出に使用可能なプローブは、配列番号267のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーWDR90の検出に使用可能なプライマーは、配列番号300のプライマー、配列番号301のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
前記基準マーカーTUT1の検出に使用可能なプローブは、配列番号264のプローブであり得るが、これに制限されるものではない。前記基準マーカーTUT1の検出に使用可能なプライマーは、配列番号294のプライマー、配列番号295のプライマー、またはこれらを含むプライマー対であり得るが、これに制限されるものではない。
他の実施形態は、生物試料内の前記バイオマーカーの存在有無および発現水準を測定する段階を含む、対象者に対する抗c−Met抗体の効能(または抗c−Met抗体に対する対象者の応答性もしくは感度)予測方法、抗c−Met抗体適用対象の選別(または同定)方法または抗c−Met抗体適用対象の選別に情報を提供する方法を提供する。前記方法では、前記バイオマーカーの存在有無および発現水準を測定する段階は、前記基準マーカーを比較のための参照(コントロール)として用いることにより行われ得る。
例えば、CAV1、FAM126A、MET、RAB31、ST8SIA4、および/またはTHSD7Aの場合、これらの遺伝子の発現水準が高いときは、抗c−Met抗体を用いた治療が効果的であるか、抗c−Met抗体を適用するに適した対象であると判断することができる。また、CMHLおよび/またはPHC1の場合、発現水準が低いときは、抗c−Met抗体を用いた治療が効果的であるか、抗c−Met抗体を適用するに適した対象と判断することができる。
本発明の一実施形態では、生物試料内のバイオマーカーの発現水準を測定する段階;および前記バイオマーカーの発現水準を前記生物試料内の基準マーカーの発現水準と比較する段階を含み、前記バイオマーカーが、THSD7A、MET、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1からなる群より選択された1種以上の遺伝子、または前記遺伝子によってコードされるタンパク質である、抗c−Met抗体もしくはその抗原結合フラグメントの効能または適用対象選別のためのデータを収集する方法が提供される。
前記バイオマーカーの発現水準の評価は、基準マーカーの発現水準と比較して行なうことができる。例えば、前記バイオマーカーの発現水準の評価と抗c−Met抗体の効能および/または抗c−Met抗体の適用に適するかどうかの判断は、PCR(Polymerase Chain Reaction;例えば、競合的PCR(Competitive PCR)、リアルタイムPCR(RT−PCR)、など)を用いて下記表6に記載された通り行うことができる。
(ΔCt(threshold cycle):基準マーカーのCt値(2種以上の基準マーカーを測定する場合は、その平均値)−バイオマーカーのCt値)。
上記表6で、基準マーカーは前述のEEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1からなる群より選択された1種以上を意味する。
抗c−Met抗体の効能予測方法、抗c−Met抗体適用対象の選別方法、抗c−Met抗体の効能予測または抗c−Met抗体適用対象の選別に情報を提供する方法は、各バイオマーカーについて標準基準値(表6参照)を測定する段階を追加的に含むことができる。例えば、前記標準基準値の測定は、(i)抗c−Met抗体感受性であることが分かっている集団(効能群)および抗c−Met抗体非感受性であることが分かっている集団(非効能群)でそれぞれバイオマーカーのΔCtを測定する段階;、ならびに(ii)効能群および非効能群それぞれにおけるバイオマーカーのΔCtを平均して標準基準値を提供する段階によって行うことができる。前記のように、ΔCtは1種以上の基準マーカー(EEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1)のCt値の平均から、標準発現値が産出される所定のバイオマーカーのCt値を引いた数値である。
前記抗c−Met抗体適用対象は、抗c−Met抗体を使用する治療法が適用されるのに適した患者を意味し、全ての哺乳類、例えばヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類であり得、例えば癌患者であり得る。本明細書に使用された生物試料は、患者(例えば、ヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類などを含む哺乳類)、または前記患者から分離されるか人工的に培養された細胞、組織、体液などであり得、例えば癌細胞または癌組織、またはこれらから抽出されたDNAまたはRNA、または分離されたタンパク質であり得る。前記生物試料は、加工されない試料または加工された試料(例えば、RRPE(formalin fixed paraffin embedded)試料など)であり得る。
あるいは、「高発現水準」または「低発現水準」は、患者からの生物試料中のバイオマーカーの発現水準と、基準試料中のバイオマーカーの発現水準とを比較することによって判断され得る。基準試料は、抗c−Met抗体が効果を示さないまたは抗c−Met抗体に対する抵抗性を有するいずれの細胞または組織(例えば、抗c−Met抗体非感受性群または抗c−Met抗体抵抗性群のような、抗c−Met抗体非効能群)でもよい。例えば、基準試料は、細胞株H1373(ATCC, CRL−5866)、HCC1806(ATCC, CRL−2335)、Caki−1(ATCC, HTB−46)、SKBR3(ATCC, HTB−30)、BT474(ATCC, HTB−20)、HT−29(ATCC, HTB−38)、LoVo(ATCC, CCL−229)、HCT116(ATCC, CCL−247)、SW620(ATCC, CCL−227)、Ls174T(ATCC, CL−188)、ならびに抗c−Met抗体の繰り返し投与および/または継続投与によって抗c−Met抗体に対して抵抗性を獲得した細胞からなる群から選択される少なくとも一つであり得る。従って、患者に対する抗c−Met抗体の効能を予測する方法または抗c−Met抗体の適用について患者を選別する(もしくは特定する)方法は、生物試料中のバイオマーカーの発現水準と、基準試料中のバイオマーカーの発現水準とを上記のように比較する工程を更に含み得る。この場合、前記方法は、基準試料中のバイオマーカーの発現水準を測定する工程をさらに含み得る。前記方法は、バイオマーカー(CAV1、FAM126A、MET、RAB31、ST8SIA4、およびTHSD7Aからなる群から選択される少なくとも一つ)の発現水準が基準試料のものよりも高い場合またはバイオマーカー(CMHL、PHC1、もしくはこれらの組み合わせ)の発現水準が基準試料のものよりも低い場合、生物試料もしくは当該生物試料が得られた(分離された)患者に抗c−Met抗体が有効であるまたは生物試料もしくは当該生物試料が得られた(分離された)患者は抗c−Met抗体の適用に適すると判断する(予想する、または選別する)工程を更に含み得る。
抗c−Met抗体の適用対象は癌患者であり得、前記癌は固形癌または血液癌であり得、c−Metの過剰発現または非正常的な活性化に関連する癌であり得る。前記癌は、原発性癌だけでなく転移性癌も含むことができる。一実施形態において、前記抗c−Met抗体の適用対象は、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、皮膚癌、皮膚および眼球内黒色腫、直膓癌、肛門付近癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性および急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝細胞癌、胃癌、すい臓癌、膠芽腫、頸部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜および子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、頭頸部癌、脳癌、ならびに骨肉腫などからなる群より選択された1種以上の癌患者の中から選択される。一実施形態において、前記抗c−Met抗体の適用対象は、肺癌(例えば、肺腺癌(Lung cancer adenocarcinoma)、非小細胞肺癌(Non−small cell adenocarcinoma)など)などからなる群より選択された1種以上の癌患者の中から選択される。
前記バイオマーカーの存在有無および/または前記バイオマーカーおよび/または基準マーカーの発現水準は、通常の遺伝子定量方法、例えば前記遺伝子とハイブリダイズ可能なプローブまたはプライマーを使用する通常のマイクロアレイ法、PCR(例えば、qPCR(定量PCT)またはRT−PCR)、FISH(fluorescent in situ hybridization)などを用いて測定することができるが、これに制限されるものではない。一実施形態において、前記バイオマーカーの存在有無および/または前記バイオマーカーおよび/または基準マーカーの発現水準は、通常の遺伝子定量方法、たとえば、重合酵素連鎖反応法(PCR)によって測定することができる。また、通常のシークエンシングによって前記バイオマーカーの存在有無を確認することができる。一実施形態において、前記プライマーは、前記バイオマーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)または前記基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列の中の連続する5〜1000bp、例えば10〜500bp、20〜200bp、または50〜200bpの遺伝子断片を検出することができるものであって、前記バイオマーカー遺伝子もしくは基準マーカー遺伝子またはこれらの遺伝子断片の3’−末端および5’−末端それぞれの連続する5〜100bp、例えば、5〜50bp、5〜30bp、または10〜25bp部位とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するものであり得る。前記プローブは、前記バイオマーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)または前記基準マーカー遺伝子(全長DNA、cDNA、またはmRNA)の塩基配列の中の連続する5〜100bp、例えば、5〜50bp、5〜30bp、または10〜25bp部位とハイブリダイズ可能な(例えば、相補的な)塩基配列を有するものであり得る。前記「ハイブリダイズ可能」とは、前記バイオマーカー遺伝子もしくは基準マーカー遺伝子の塩基配列と80%以上、例えば90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有することによって相補的結合が可能であることを意味する。
前記バイオマーカーおよび基準マーカーの存在有無および/または水準(level)は、これらがコードするタンパク質の定量を通じても測定可能である。例えば、前記バイオマーカー遺伝子および基準マーカー遺伝子がコードするタンパク質の定量は、当該タンパク質に特異的に結合する抗体、アプタマーなどを用いる通常の酵素反応、蛍光、発光および/または放射線検出を通じて行うことができる。具体的には、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学染色、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウエスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ(microarray)、フローサイトメトリー(flow cytometry)、免疫組織化学法(immunohistochemistry;IHC)、表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance;SPR)などからなる群より選択された方法によって行われるが、これらに制限されるものではない。
他の実施形態は、前記選別された抗c−Met抗体適用対象に抗c−Met抗体を投与する段階を含むc−Met抑制方法、または癌の予防および/または治療方法を提供する。
前記c−Met抑制方法または癌の予防および/または治療方法は、前記投与段階以前に前記選別された抗c−Met抗体適用対象を確認する段階を追加的に含むことができる。前記確認する段階は、前述の抗c−Met抗体適用対象選別方法によって選別された生物試料または患者を確認する段階であって、前記抗c−Met抗体適用対象を選別する方法において説明された段階を行うことによって行われるか、与えられた情報によって前記抗c−Met抗体適用対象を選別する方法によって選別された抗c−Met抗体適用対象であるのを確認することによって行われるものであり得る。
一実施形態において、前記c−Met抑制方法または癌の予防および/または治療方法は、抗c−Met抗体適用対象を確認する段階;および前記抗c−Met抗体適用対象に抗c−Met抗体の有効量を投与する段階を含むことができる。他の実施形態において、前記c−Met抑制方法または癌の予防および/または治療方法は、生物試料内の前記バイオマーカーの存在有無および/または水準を測定して抗c−Met抗体適用対象を選別する段階;前記選別された抗c−Met抗体適用対象に抗c−Met抗体の有効量を投与する段階を含むことができる。
一実施形態において、前記抗c−Met抗体は、c−Metを抗原として認識する全ての抗体またはその抗原結合フラグメント(antigen−binding fragment)であり得る。例えば、前記抗c−Met抗体は、c−Metに特異的に結合して内在化(internalization)および分解(degradation)を誘導する全ての抗体またはそれらの抗原結合フラグメントであり得る。前記抗c−Met抗体は、c−Metの特定部位、例えばSEMAドメイン内の特定部位をエピトープとして認識するものであり得る。
本明細書では、別途の言及がない限り、抗c−Met抗体としては完全な形態の抗c−Met抗体だけでなく前記抗体の抗原結合部位も使用される。
前記「c−Metタンパク質」は、肝細胞成長因子と結合する受容体チロシンキナーゼを意味する。前記c−Metタンパク質は、全ての種に由来するものであり得、例えば、ヒトc−Met(例えば、NP_000236)、サルc−Met(例えば、Macaca mulatta、NP_001162100)などのような霊長類由来のもの、またはマウスc−Met(例えば、NP_032617.2)、ラットc−Met(例えば、NP_113705.1)などのようなげっ歯類由来のものなどであり得る。前記タンパク質は、例えば、GenBank Aceession Number NM_000245に提供されたヌクレオチド配列によってコードされたポリペプチド配列、GenBank Aceession NumberNM_000236にコードされたポリペプチド配列、またはこれらの細胞外ドメインを含み得る。受容体チロシンキナーゼc−Metは、例えば、癌発生、癌転移、癌細胞移動、癌細胞浸潤、新生血管生成過程などの様々な機序に関与する。
HGF(Hepatocyte growth factor)の受容体であるc−Metは、細胞外部位、膜透過部位、細胞内部位の三つの部分に区分され、細胞外部位は、α−サブユニットとβ−サブユニットとがジスルフィド結合によって連結された形態であり、HGF結合ドメインであるSEMAドメイン、PSIドメイン(plexin−semaphorins−integrin homology domain)およびIPTドメイン(immunoglobulin−like fold shared by plexins and transcriptional factors domain)を含む。c−Metタンパク質のSEMAドメインは、配列番号79のアミノ酸配列を有するものであり得、c−Metの細胞外部位に存在するドメインであって、HGFが結合する部位に該当する。SEMAドメイン中の特定部位、例えば、SEMAドメインの106番目から124番目までに該当する配列番号71で示されるアミノ酸配列を有する領域は、SEMAドメイン内のエピトープ中の第2番目と第3番目のプロペラ領域間のループ(loop)領域に該当する。この領域は、本発明で提案される抗c−Met抗体のエピトープとして作用することができる。
用語、「エピトープ(epitope)」は、抗原決定部位(antigenic determinant)であって、抗体によって認識される抗原の一部分を意味すると解釈される。一実施形態によれば、前記エピトープはc−Metタンパク質のSEMAドメイン(配列番号79)内の連続する5個以上のアミノ酸を含む部位、例えば、c−Metタンパク質のSEMAドメイン(配列番号79)内の106番目から124番目までに該当する配列番号71内に位置する連続する5個〜19個のアミノ酸を含むものであり得る。前記「連続するアミノ酸」はタンパク質の1次構造(linear sequence)上で連続するアミノ酸またはタンパク質の立体構造(例えば、2次または3次構造)上で連続するアミノ酸(この場合、必ずしも1次構造上では連続することが要求されない)であり得る。例えば、前記エピトープは、配列番号71のアミノ酸配列において配列番号73(EEPSQ)を含んで連続する5〜19個のアミノ酸からなるものであり得、例えば、配列番号71、配列番号72または配列番号73のアミノ酸配列を有するポリペプチドであり得る。
前記配列番号72のアミノ酸配列を有するエピトープは、c−Metタンパク質のSEMAドメイン内の第2番目と第3番目のプロペラ領域間のループ領域の中の最も外側に位置した部位に該当し、前記配列番号73のアミノ酸配列を有するエピトープは、一実施形態による抗体または抗原結合フラグメントが最も特異的に結合する部位である。
したがって、抗c−Met抗体は、配列番号71のアミノ酸配列において、配列番号73(EEPSQ)を含む連続する5〜19個のアミノ酸を含むエピトープに特異的に結合するものであり得、例えば、配列番号71、配列番号72、または配列番号73のアミノ酸配列を有するエピトープに、特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントであり得る。
一実施形態によれば、前記抗c−Met抗体は、下記(i)〜(iv)のいずれか1つを含むものであってもよい;
(i)下記CDR−H1〜CDR−H3からなる群より選択された一つ以上の重鎖相補性決定領域、または前記一つ以上の重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変部位; 配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR−H1、 配列番号5のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列内の3番目から10番目までのアミノ酸を含む連続する8〜19個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−H2、 および配列番号6のアミノ酸配列、配列番号85のアミノ酸配列、または配列番号85のアミノ酸配列内の1番目から6番目までのアミノ酸を含む連続する6〜13個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−H3
(ii)下記CDR−L1〜CDR−L3からなる群より選択された一つ以上の軽鎖相補性決定領域、または前記一つ以上の軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変部位; 配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR−L1、 配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR−L2、 および配列番号9のアミノ酸配列、配列番号15のアミノ酸配列、配列番号86のアミノ酸配列、 または配列番号89のアミノ酸配列内の1番目から9番目までのアミノ酸を含む9〜17個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有するCDR−L3
(iii)前記重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域の組み合わせ
(iv)前記重鎖可変部位および軽鎖可変部位の組み合わせ。
前記配列番号4〜配列番号9はそれぞれ下記一般式I〜一般式VIで表示されるアミノ酸配列である:
前記一般式Iにおいて、Xaa1は存在しないかProまたはSerであり、Xaa2はGluまたはAspである。前記一般式IIにおいて、Xaa3はAsnまたはLysであり、Xaa4はAlaまたはValであり、Xaa5はAsnまたはThrであり、
前記一般式IIIにおいて、Xaa6はSerまたはThrである。前記一般式IVにおいて、Xaa7はHis、Arg、GlnまたはLysであり、Xaa8はSerまたはTrpであり、Xaa9はHisまたはGlnであり、Xaa10はLysまたはAsnである。前記一般式Vにおいて、Xaa11はAlaまたはGlyであり、Xaa12はThrまたはLysであり、Xaa13はSerまたはProである。前記一般式VIにおいて、Xaa14はGly、AlaまたはGlnであり、Xaa15はArg、His、Ser、Ala、GlyまたはLysであり、Xaa16はLeu、Tyr、PheまたはMetである。
一実施形態において、前記CDR−H1は、配列番号1、配列番号22、配列番号23および配列番号24からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。前記CDR−H2は、配列番号2、配列番号25、および配列番号26からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。前記CDR−H3は、配列番号3、配列番号27、配列番号28、および配列番号85からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。
前記CDR−L1は、配列番号10、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号106からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。前記CDR−L2は、配列番号11、配列番号34、配列番号35、および配列番号36からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。前記CDR−L3は、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号37、配列番号86、および配列番号89からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するものであり得る。
一実施形態において、前記抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号1、配列番号22、配列番号23および配列番号24からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H1)、配列番号2、配列番号25、および配列番号26からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H2)、および配列番号3、配列番号27、配列番号28、および配列番号85からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−H3)を含む重鎖可変部位;および配列番号10、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33および配列番号106からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L1)、配列番号11、配列番号34、配列番号35、および配列番号36からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L2)、および配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号37、配列番号86、および配列番号89からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチド(CDR−L3)を含む軽鎖可変部位を含むものであり得る。
一実施形態によれば、抗c−Met抗体または抗原結合フラグメントにおいて、前記重鎖可変部位は配列番号17、配列番号74、配列番号87、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93または配列番号94のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変部位は配列番号306、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号75、配列番号88、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99または配列番号107のアミノ酸配列を含むものであり得る。
所望の抗原を被免疫動物に免疫させて生産する動物由来抗体は、一般に、治療目的でヒトに投与時、免疫拒絶反応が起こることがある。このような免疫拒絶反応を抑制するためにキメラ抗体(chimeric antibody)が開発された。キメラ抗体は、遺伝子工学的方法を用いて、抗−アイソタイプ(anti−isotype)反応の原因になるとされる動物由来抗体の不変部位をヒト抗体の不変部位に置換したものである。キメラ抗体は、動物由来抗体に比べて抗−アイソタイプ反応において相当部分改善されたが、可変部位は依然として動物由来アミノ酸を有しているため、潜在的な抗−イディオタイプ(anti−idiotypic)反応に対する副作用を内包している。このような副作用を改善するために開発されたものがヒト化抗体(humanized antibody)である。これは、キメラ抗体の可変部位の中の抗原の結合に重要な役割を果たすCDR部位をヒト抗体フレームワーク(framework)に移植して製作される。
ヒト化抗体を製作するためのCDRグラフト(grafting)技術において最も重要なことは、動物由来抗体のCDR部位を最もよく受け入れる最適化されたヒト抗体を選定することであり、このために、抗体データベースの活用、結晶構造の分析、分子モデリング技術などが活用される。しかし、最適化されたヒト抗体の骨格(フレームワーク)に動物由来抗体のCDR部位を移植しても、動物由来抗体の骨格(フレームワーク)に位置しながら、抗原結合に影響を与えるアミノ酸が存在する場合があるため、抗原結合力が保存されない場合が相当数存在するため、抗原結合力を復元するための追加的な抗体工学技術の適用は必須といえる。
一実施形態によれば、前記抗体は、マウス由来抗体、マウス−ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト由来抗体であり得る。前記抗体は、生体から分離されたものまたは自然に発生しないものであり得る。前記抗体は、組換えまたは合成的に製造されたものであり得る。
完全な抗体は、2個の全長軽鎖および2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖とジスルフィド結合で連結されている。抗体の不変部位(Fc)は、重鎖不変部位(CH)と軽鎖不変部位(CL)とに分けられる。重鎖不変部位は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変部位は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
用語「重鎖(heavy chain)」は、抗原に特異性を付与するために十分な可変部位配列を有するアミノ酸配列を含む可変部位ドメインVH、3個の不変部位ドメインCH1、CH2およびCH3、ならびにヒンジ(hinge)を含む全長重鎖、ならびにそのフラグメントを全て含む意味として解釈される。また、用語「軽鎖(light chain)」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変部位配列を有するアミノ酸配列を含む可変部位ドメインVL、および不変部位ドメインCLを含む全長軽鎖、ならびにそのフラグメントを全て含む意味として解釈される。
用語「CDR(complementarity determining region)」は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の高可変部位(hypervariable region)のアミノ酸配列(相補性決定領域)を意味する。重鎖および軽鎖はそれぞれ、3個のCDRを含むことができる(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3およびCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3)。前記CDRは、抗体が抗原またはエピトープに結合するにおいて主な接触残基を提供することができる。一方、本明細書において、用語「特異的に結合」または「特異的に認識」は、当業者に通常知られている意味と同一のものであって、抗原および抗体が特異的に相互作用して免疫学的反応を行なうことを意味する。
用語「抗原結合フラグメント」は、免疫グロブリン全体構造に対するそれのフラグメントで、抗原が結合可能な部分を含むポリペプチドの一部を意味する。一実施形態では、前記抗原結合フラグメントは、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’またはF(ab’)2であり得るが、これに限定されない。前記抗原結合フラグメントの中のFabは、軽鎖および重鎖の可変部位と、軽鎖の不変部位および重鎖の1番目の不変部位(CH1)とを有する構造で、1つの抗原結合部位を有する。
Fab’は、重鎖CH1ドメインのC−末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点からFabと差がある。
F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fvは、重鎖可変部位および軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体片で、Fvフラグメントを生成する組換え技術は当業界に広く公知されている。
二重鎖Fv(two−chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが連結されており、単鎖Fv(single−chain Fv)は、一般に、ペプチドリンカーを通じて重鎖の可変部位と単鎖の可変部位とが共有結合で連結されるか、またはC−末端で直接連結されていて、二重鎖Fvと同様に、ダイマーのような構造を成すことができる。前記ペプチドリンカーは、1〜100個または2〜50個の任意のアミノ酸からなるポリペプチドであり得、その含まれているアミノ酸の種類は制限がない。
前記抗原結合フラグメントは、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すればFabを得ることができ、ペプシンで切断すればF(ab’)2フラグメントを得ることができる)、遺伝子組換え技術によって製作することができる。
用語「ヒンジ領域(hinge region)」は、抗体の重鎖に含まれている領域であって、CH1およびCH2領域の間に存在し、抗体内の抗原結合部位の柔軟性(flexibility)を提供する機能を果たす領域を意味する。
非ヒト動物由来抗体がキメラ化(chimerization)過程を経ると、非ヒト動物由来のIgG1ヒンジはヒトIgG1ヒンジに置換されるが、非ヒト動物由来IgG1ヒンジはヒトIgG1ヒンジに比べてその長さが短く、2個の重鎖の間のジスルフィド結合(disulfide bond)が3個から2個に減少し、ヒンジの硬直性(rigidity)が互いに異なる効果を示す。したがって、ヒンジ領域の変形(modification)はヒト化抗体の抗原結合効率性を増加させることができる。前記ヒンジ領域のアミノ酸配列を変形させるためのアミノ酸の欠失、付加または置換方法は当業者によく知られている。
ここで、本発明の一実施形態において、抗原結合効率性を増進させるために、前記抗c−Met抗体または抗原結合フラグメントは、一つ以上のアミノ酸が欠失、付加または置換されてアミノ酸配列が改変されたヒンジ領域を含むものであり得る。例えば、前記抗体は、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103または配列番号104のアミノ酸配列を有するヒンジ領域、または配列番号105のアミノ酸配列を有するヒンジ領域(非変形ヒトヒンジ領域)を含むものであり得る。より具体的には、前記ヒンジ領域は、配列番号100または配列番号101のアミノ酸配列を有するものであり得る。
一実施形態において、抗c−Met抗体は、受託番号KCLRF−BP−00220のハイブリドーマ細胞から生産される、c−Metタンパク質の細胞外部位(extracellular region)に特異的に結合するモノクローナル抗体であり得る(大韓民国公開特許第2011−0047698号公報参照;前記文献は、本明細書に参照として含まれる)。前記の抗c−Met抗体は、大韓民国公開特許第2011−0047698公報号に定義された抗体を全て含むことができる。
前記抗c−Met抗体の前記定義されたCDR部位または軽鎖可変部位と重鎖可変部位を除いた部位、例えば、軽鎖不変部位と重鎖不変部位は全てのサブタイプの免疫グロブリン(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4など)、またはIgMなど)に由来するもの、例えば、軽鎖不変部位と重鎖不変部位であり得る。
一実施形態によれば、前記抗c−Met抗体は、
配列番号62のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列、配列番号64のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列、配列番号66のアミノ酸配列(このうち、1番目から17番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、および配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む重鎖;ならびに
配列番号68のアミノ酸配列(このうち、1番目から20番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列、配列番号70のアミノ酸配列(このうち、1番目から20番目までのアミノ酸配列はシグナルペプチドである)、配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列、および配列番号108のアミノ酸配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む軽鎖
を含むものであり得る。
例えば、前記抗−c−Met抗体は、
配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;
配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;
配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号68のアミノ酸配列または配列番号68の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;
配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;
配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号70のアミノ酸配列または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;または
配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号70または配列番号70の21番目から240番目までのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体
配列番号62のアミノ酸配列または配列番号62の18番目から462番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;
配列番号64のアミノ酸配列または配列番号64の18番目から461番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体;ならびに
配列番号66のアミノ酸配列または配列番号66の18番目から460番目までのアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体
からなる群より選択されたものであり得る。
一方、前記配列番号70のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖であり、配列番号68のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、前記配列番号70のアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいて36番(カバットナンバリングに従う;配列番号68内の62番目のアミノ酸の位置)ヒスチジン(His)がチロシン(Tyr)に置換された形態のポリペプチドである。前記置換によって、一実施形態による抗体の生産量が増加できる。また、前記配列番号108のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、前記配列番号68のアミノ酸配列の中の1番目から20番目までのシグナルペプチドを除いた21番目から240番目までのアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいてカバットナンバリングによる27e位置(カバットナンバリングに従う;配列番号108内の32番目の位置;CDR−L1の内部)のセリン(Ser)がトリプトファン(Trp)に置換されたものであり、前記置換によって、一実施形態による抗体の活性(例えば、c−Metに対する結合親和性、c−Met分解活性およびAktリン酸化抑制活性など)がより増進できる。
前記抗−c−Met抗体は、薬学的に許容可能な担体と共に製剤化することができ、前記担体は、薬物の製剤化に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどからなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。
前記抗−c−Met抗体は、経口または非経口で投与することができる。非経口投与の場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与または直腸内投与などで投与することができる。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化されなければならない。また、前記抗−c−Met抗体は、標的細胞に移動できる任意の装置によって投与することができる。
前記抗−c−Met抗体は、癌の予防および/または治療に用いることができる。前記癌は固形癌または血液癌であり得、c−Metの過発現または活性化に関連するものであり得る。例えば、前記癌は、これに制限されないが、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜癌、皮膚癌、皮膚または眼球内黒色腫、直膓癌、肛門付近癌、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、慢性または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、すい臓癌、膠芽腫、頸部癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、陰門癌、甲状腺癌、頭頸部癌、脳癌、骨肉腫などからなる群より選択された1種以上であり得る。
前記癌の予防および/または治療効果は、癌細胞の成長を抑制する効果だけでなく、移動(migration)、浸湿(invasion)、転移(metastasis)などを抑制して、これによる癌の悪化を抑制する効果を含む。また、原発性癌だけでなく転移性癌に対する効果を含む。
以下、本発明を実施例および試験例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例および試験例は本発明を例示するためのもので、本発明を制限すると解釈されてはならない。
<参考例1:抗c−Met抗体の作製>
1.1.c−Metに対するマウス抗体‘AbF46’の産生
1.1.1.マウスの免疫化
ハイブリドーマ細胞株の開発に必要な免疫化されたマウスを得るために、5匹のマウスに、1匹当り100μgのヒトのc−Met/Fc融合タンパク質(R&D Systems社)と、同量の完全フロイントアジュバントを混合して、4〜6週齢のBALB/cマウス(日本エスエルシー株式会社)の腹腔内に注射した。2週後に、前記と同様の方法で、前記抗原として使用されたヒトのc−Met/Fc融合タンパク質を、前記注射した量の半分である50μgを同量の不完全フロイントアジュバントと混合して、マウスの腹腔内に注射した。1週間後、最後のブースティング(boosting)が行われ、3日後に、前記マウスの尾から採血して血清を得た。その後、血液を1/1000倍にPBSで希釈して、ELISA法でc−Metを認識する抗体の力価が増加することを確認した。前記結果で抗体の量が十分に得られるマウスを選別し、下記の細胞融合過程を行った。
1.1.2.細胞融合およびハイブリドーマの製造
細胞融合実験3日前に、50μgのPBS内のヒトのc−Met/Fc融合タンパク質と等量のPBSとの混合物を、BALB/cマウス(日本エスエルシー株式会社)の腹腔内に注射して免疫した。免疫化されたマウスを麻酔した後、体の左側に位置した脾臓を摘出した。摘出した脾臓をメッシュで粉砕して細胞を分離し、培養培地(DMEM、GIBCO、インビトロジェン社)と混合して、脾臓細胞懸濁液を調製した。前記懸濁液を遠心分離して細胞層を回収した。前記得られた脾臓細胞1×108個と、骨髄腫細胞(Sp2/0)1×108個とを混合した後、遠心分離して細胞を沈殿させた。前記遠心分離された沈殿物を徐々に分散させ、培養培地(DMEM)に入っている45(w/v)%ポリエチレングリコール(PEG)(1ml)によって37℃で1分間処理した後、培養培地(DMEM)1mlを添加した。以後、培養培地(DMEM)10mlを10分間かけて添加し、37℃のウォーターバスで5分間放置した。その後、培養培地(DMEM)にて50mlに合わせて、再び遠心分離した。細胞沈殿物を選択培地(HAT培地)で1〜2×105/ml程度に再懸濁させ、96ウェル(well)プレートに0.1mlずつ分注した後、37℃の二酸化炭素培養器で培養して、ハイブリドーマ細胞群を作製した。
1.1.3.c−Metタンパク質に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞の選別
前記参考例1.1.2で製造されたハイブリドーマ細胞群のうち、c−Metタンパク質にのみ特異的に反応するハイブリドーマ細胞を選別するために、ヒトのc−Met/Fc融合タンパク質とヒトのFcタンパク質を抗原として用いたELISA分析方法によってスクリーニングした。
マイクロタイタープレートに、ヒトのc−Met/Fc融合タンパク質を、1ウェル当りそれぞれ50μl(2μg/ml)ずつ加えてプレート表面に付着させ、反応しない抗原は洗浄して除去した。c−MetでないFcに結合される抗体を選別して除外させるために、ヒトのFcタンパク質を、前記と同様の方法でプレート表面に付着させた。
前記参考例1.1.2で得られたハイブリドーマ細胞の培養液を、前記用意されたそれぞれのウェルに50μlずつ加えて1時間反応させた後、リン酸緩衝溶液−ツイン20(TBST)溶液で十分に洗浄し、反応しない培養液を除去した。これに、ヤギ抗−マウスIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(goat anti−mouse IgG−HRP)を加えて、1時間、室温で反応させた後、TBST溶液で十分に洗浄した。その次に、ペルオキシダーゼの基質溶液(OPD)を加えて反応させ、その反応の程度は、ELISAリーダー(ELISA Reader)で450nmにおける吸光度を測定して確認した。
前記のような反応程度の確認によって、ヒトのFcには結合せず、ヒトのc−Metタンパク質にのみ特異的に高い結合力を有する抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株を繰り返し選別した。繰り返し選別によって得られたハイブリドーマ細胞株を制限稀釈して、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株1個のクローンを最終的に得た。最終選別されたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、2009年10月6日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である、大韓民国、ソウル、鍾路区、蓮建洞所在の韓国細胞株研究財団に寄託し、受託番号KCLRF−BP−00220が付与された(韓国公開特許第2011−0047698号公報参照)。
1.1.4.モノクローナル抗体の産生および精製
前記参考例1.1.3で得られたハイブリドーマ細胞を無血清培地で培養し、培養液からモノクローナル抗体を産生精製した。
まず、10%(v/v)FBSが含まれている培養培地(DMEM)50mlで培養された前記ハイブリドーマ細胞を遠心分離し、細胞沈殿物を20mlのPBSで2回以上洗浄し、FBSが除去された状態で、前記細胞沈殿物を培養培地(DMEM)50mlに再懸濁させた後、3日間、37℃の二酸化炭素培養器で培養した。
その後、遠心分離して、抗体を産生する細胞を除去し、抗体が分泌された培養液を分離して、4℃に保管するか、直ちに集めて、抗体の分離精製に使用した。親和性カラム(Protein G agarose column;Pharmacia社、USA)を装着したAKTA精製機器(GEヘルスケア社)を用いて、前記用意された培養液50ml〜300mlから抗体を純粋精製した。その後、タンパク質凝集用フィルタ(アミコン)を用いてPBSで上層液を置換し、精製された抗体を保管し、以後の実施例に使用した。
1.2.c−Metに対するキメラ抗体chAbF46の作製
一般に、マウス抗体は、治療目的でヒトに注入された時、免疫拒絶反応(immunogenicity)を示す可能性が高い。これを解決するために、前記参考例1.1.で作製されたマウス抗体AbF46から、抗原の結合に関連する可変部位(variable region)を除いた不変部位(constant region)を、ヒトIgG1抗体の配列に置換するキメラ抗体chAbF46を作製した。
重鎖に該当するヌクレオチド配列は‘EcoRI−signal sequence−VH−NheI−CH−TGA−XhoI’(配列番号38)から構成され、軽鎖に該当するヌクレオチド配列は‘EcoRI−signal sequence−VL−BsiWI−CL−TGA−XhoI’(配列番号39)から構成されるようにそれぞれデザインして遺伝子を合成した。その後、インビトロジェン社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号38)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号39)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いてクローニングすることにより、キメラ抗体の発現のため重鎖を含むベクターおよび軽鎖を含むベクターをそれぞれ構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて増幅され、一過性発現はFreestyleTM MAX 293 Expression System(インビトロジェン社)を用いて行なわれた。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM 293 Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現の1日前に細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した。24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(インビトロジェン社)を用いたliposomal reagent法で形質導入(transfection)を行い、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(インビトロジェン社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した。その後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
その後、10%(v/v)FBSが添加されたDMEM培地で、37℃、5%CO2の条件下で5時間培養した後、FBSが添加されていないDMEM培地で、48時間、37℃、5%CO2の条件下で培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清をそれぞれ100ml取って、AKTA Prime(GEヘルスケア社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GEヘルスケア社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG溶出バッファー(サーモサイエンティフィック社、21004)で溶出させた。得られた溶出物をPBSにバッファー交換し、最終的にキメラ抗体AbF46(以下、chAbF46と名づける)を精製した。
1.3.キメラ抗体chAbF46からヒト化抗体huAbF46の作製
1.3.1.重鎖のヒト化(Heavy chain humanization)
H1−heavyおよびH3−heavyの2つのドメインのデザインのために、まず、Ig Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、前記参考例1.2で精製されたマウス抗体AbF46のVH遺伝子と最も相同性が高いヒトの生殖腺系列(germline)遺伝子を分析した。その結果、VH3−71がアミノ酸レベルで83%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3をカバットナンバリングで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVH3−71のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、30番(S→T)、48番(V→L)、73番(D→N)、78番(T→L)のアミノ酸は、元々、マウスAbF46抗体のアミノ酸配列に逆変異させた。その後、H1は、追加的に83番(R→K)と84番(A→T)のアミノ酸に突然変異を与え、最終的にH1−heavy(配列番号40)とH3−heavy(配列番号41)を構築した。
H4−heavyのデザインのために、ヒト抗体のフレームワーク配列を調べた結果、AbF46抗体のマウスのフレームワーク配列と配列が非常に類似すると同時に、従来の最も安定的と知られているVH3サブタイプを用いて、カバットナンバリングで定義されたマウス抗体AbF46のCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3を導入した。これにより、H4−heavy(配列番号42)を構築した。
1.3.2.軽鎖のヒト化(Light chain humanization)
H1−light(配列番号43)およびH2−light(配列番号44)の2種のデザインのために、Ig Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、マウス抗体AbF46のVL遺伝子と最も相同性が高いヒト生殖腺遺伝子を分析した。その結果、VK4−1がアミノ酸レベルで75%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3をカバットナンバリングで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVK4−1のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、H1−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を逆変異させ、H2−lightは、49番のアミノ酸(Y→I)1個のみを逆変異させて構築した。
H3−light(配列番号45)のデザインのために、Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を通じて、マウス抗体AbF46のVL遺伝子と最も相同性が高いヒト生殖腺遺伝子を分析した結果のうち、前記VK4−1のほか、VK2−40を選定した。マウス抗体AbF46VLとVK2−40は、アミノ酸レベルで61%の相同性を有することを確認し、マウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3をカバットナンバリングで定義し、マウス抗体AbF46のCDR部分がVK4−1のフレームワークに導入されるようにデザインした。この時、H3−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を逆変異させて構築した。
H4−light(配列番号46)のデザインのために、ヒト抗体のフレームワーク配列を調べた結果、従来の最も安定的と知られているVk1サブタイプを用いて、カバットナンバリングで定義されたマウス抗体AbF46のCDR−L1、CDR−L2、CDR−L3を導入した。この時、H4−lightは、36番(Y→H)、46番(L→M)、49番(Y→I)の3個のアミノ酸を追加的に逆変異させて構築した。
その後、インビトロジェン社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(H1−heavy;配列番号47、H3−heavy;配列番号48、H4−heavy;配列番号49)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kitに前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(H1−light;配列番号50、H2−light;配列番号51、H3−light;配列番号52、H4−light;配列番号53)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いて、クローニングすることにより、ヒト化抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて増幅され、一過性発現はFreestyleTM MAX 293 Expression System(インビトロジェン社)を用いて行なわれた。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM 293 Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現の1日前に細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した。24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(インビトロジェン社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行った。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(インビトロジェン社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清各100mlを取って、AKTA Prime(GEヘルスケア社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GEヘルスケア社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG溶出バッファー(サーモサイエンティフィック社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的にヒト化抗体AbF46(以下、huAbF46と名づける)を精製した。一方、以後の実施例で使用したヒト化抗体huAbF46の重鎖、軽鎖の組み合わせは、H4−heavy(配列番号42)およびH4−light(配列番号46)である。
1.4.huAbF46抗体のscFvライブラリーの作製
huAbF46抗体の重鎖可変部位および軽鎖可変部位を用いてhuAbF46抗体のscFvを作製するための遺伝子をデザインした。それぞれの重鎖可変部位および軽鎖可変領域を‘VH−リンカー−VL’の形態となるようにし、前記リンカーは‘GLGGLGGGGSGGGGSGGSSGVGS’(配列番号54)のアミノ酸配列を有するようにデザインした。このようにデザインされたhuAbF46抗体のscFvをコードするポリヌクレオチド(配列番号55)をバイオニア社に依頼して合成し、これを発現させるためのベクターを配列番号56に示した。
以後、前記ベクターから発現した結果物を分析し、c−Metに特異的な結合力を示すことを確認した。
1.5.親和性成熟(affinity maturation)のためのライブラリー遺伝子の作製
1.5.1.標的CDRの選定およびプライマーの作製
huAbF46抗体の親和性成熟(affinity maturation)のために6つの相補性決定領域(CDR)を、前記作製されたマウス抗体AbF46から‘カバットナンバリング’によって定義した。それぞれのCDRは下記の表1の通りである。
抗体CDRのランダム配列導入のために、次のようにプライマーを作製した。従来のランダム配列導入方式は、突然変異を与えようとする部位に同一の割合の塩基(25%A、25%G、25%C、25%T)が導入されるようにNコドンが用いられる。本実施例では、huAbF46抗体のCDRにランダム塩基を導入するために、各CDRのアミノ酸をコードする3個の野生型ヌクレオチド中の1番目および2番目のヌクレオチドの85%はそのまま保存し、残りの3個の塩基をそれぞれ5%ずつ導入する方式を採った。また、3番目のヌクレオチドは、同一に(33%G、33%C、33%T)が導入されるようにプライマーをデザインした。
1.5.2.huAbF46抗体のライブラリーの作製およびc−Metに対する結合力の確認
CDRのランダム配列の導入による抗体ライブラリー遺伝子の構築は、前記参考例1.5.1のような方法で作製されたプライマーを用いて行った。鋳型としてhuAbF46抗体のscFvを含むポリヌクレオチドを用いて、2個のPCR切片を作製し、これを重複拡張重合酵素連鎖反応(overlap extension PCR)方法により、所望のCDRのみそれぞれ突然変異したhuAbF46抗体のscFvライブラリー遺伝子を確保して作製された6つのCDRをそれぞれ標的とするライブラリーを構築した。
このように作製されたライブラリーは、野生型と各ライブラリーのc−Metに対する結合力を確認し、それぞれのライブラリーは、野生型に比べてc−Metに対する結合力が大部分低下する傾向を示したが、一部でc−Metに対する結合力が維持される突然変異を確認した。
1.6.作製されたライブラリーから親和性の改善された抗体の選別
前記構築されたライブラリーからc−Metに対するライブラリーの結合力を向上させた後、それぞれの個別クローンからscFvの遺伝子配列を分析した。確保された遺伝子配列はそれぞれ下記の表8の通りであり、これをIgG形態に変換した。下記のクローンのうち、L3−1、L3−2、L3−3、L3−5から産生された4種の抗体を選別して後続の実験を行った。
1.7.選別された抗体のIgGへの変換
選別された4種の抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドは‘EcoRI−signal sequence−VH−NheI−CH−XhoI’(配列番号38)の構造を有するように設計された。huAbF46抗体の重鎖の場合、親和性成熟の際に抗体のアミノ酸が変更されなかったので、huAbF46抗体の重鎖をそのまま使用した。但し、ヒンジ領域は、ヒトIgG1のヒンジでないU6−HC7ヒンジ(配列番号57)に置換した。軽鎖は‘EcoRI−signal sequence−VL−BsiWI−CL−XhoI’の構造を有するようにそれぞれ遺伝子を設計して合成した。親和性の成熟後に選別された、前記4種の抗体の軽鎖可変部位を含んでコードするポリヌクレオチド(配列番号58〜配列番号61)をバイオニア社に依頼して合成した。その後、インビトロジェン社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(配列番号38)を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当するヌクレオチド配列を有するDNA切片(L3−1由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号58、L3−2由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号59、L3−3由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号60、L3−5由来のCDR−L3を含むDNA切片:配列番号61)を、それぞれEcoRI(NEB社、R0101S)とXhoI(NEB社、R0146S)制限酵素を用いてクローニングすることにより、親和性の成熟した抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて増幅され、一過性発現はFreestyleTM MAX 293 Expression System(インビトロジェン社)を用いて行なわれた。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM 293 Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現の1日前に細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した。24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、一過性発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(インビトロジェン社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行った。すなわち、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意し、OptiProTM SFM(インビトロジェン社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清各100mlを取って、AKTA Prime(GEヘルスケア社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GEヘルスケア社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG溶出バッファー(サーモサイエンティフィック社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的に親和性の成熟した4種の抗体(以下、huAbF46−H4−A1(L3−1由来)、huAbF46−H4−A2(L3−2由来)、huAbF46−H4−A3(L3−3由来)、およびhuAbF46−H4−A5(L3−5由来)と名づける)を精製した。
1.8.不変部位および/またはヒンジ領域の置換されたhuAbF46−H4−A1の製造
前記参考例1.7で選別された4種の抗体のうち、c−Metとの結合親和性が最も高く、Aktのリン酸化およびc−Metの分解の程度が最も低いと測定されたhuAbF46−H4−A1を対象に、ヒンジ領域または不変部位およびヒンジ領域の置換された抗体を作製した。
huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、U6−HC7ヒンジおよびヒトのIgG1不変部位からなる重鎖、ならびにhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位およびヒトのカッパ(kappa)不変部位からなる軽鎖からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(U6−HC7)と名づけた。huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジおよびヒトのIgG1不変部位からなる重鎖、ならびにhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位およびヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖、からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(IgG2ヒンジ)と名づけた。huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトのIgG2ヒンジおよびヒトのIgG2不変部位からなる重鎖、およびhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位およびヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖、からなる抗体を、huAbF46−H4−A1(IgG2 Fc)と名づけた。また、一方、前記3種の抗体は、産生量増大のために、ヒトのカッパ不変部位からなる軽鎖の36番のヒスチジン(His)を全てチロシン(Tyr)に置換した。
前記3種の抗体を作製するために、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、U6−HC7ヒンジ領域およびヒトIgG1不変部位からなるポリペプチド(配列番号62)をコードするポリヌクレオチド(配列番号63)、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトIgG2ヒンジ領域およびヒトIgG1不変部位からなるポリペプチド(配列番号64)をコードするポリヌクレオチド(配列番号65)、huAbF46−H4−A1の重鎖可変部位、ヒトIgG2ヒンジ領域およびヒトIgG2不変部位からなるポリペプチド(配列番号66)をコードするポリヌクレオチド(配列番号67)、36番のヒスチジンがチロシンに置換されたhuAbF46−H4−A1の軽鎖可変部位およびヒトカッパ不変部位からなるポリペプチド(配列番号68)をコードするポリヌクレオチド(配列番号69)をバイオニア社に依頼して合成した。以後、インビトロジェン社のOptiCHOTM Antibody Express Kit(Cat no.12762−019)に含まれているpOptiVECTM−TOPO TA Cloning Kitに前記重鎖に該当する塩基配列を有するDNA切片を、pcDNATM3.3−TOPO TA Cloning Kit(Cat no.8300−01)に前記軽鎖に該当する塩基配列を有するDNA切片を挿入して、前記抗体の発現のためのベクターを構築した。
前記構築されたベクターはそれぞれ、Qiagen Maxiprep kit(Cat no.12662)を用いて増幅され、一過性発現はFreestyleTM MAX 293 Expression System(インビトロジェン社)を用いて行なわれた。使用された細胞株は293F細胞であり、FreeStyleTM 293 Expression Mediumを培地として用いて浮遊培養方式で培養された。一過性発現の1日前に細胞を5×105cells/mlの濃度で用意した。24時間経過後、細胞数が1×106cells/mlとなった時、臨時発現を行なった。FreestyleTM MAX reagent(インビトロジェン社)を用いたliposomal reagent法で形質導入を行い、15mlのチューブに重鎖DNA:軽鎖DNA=1:1の割合でDNAを用意してOptiProTM SFM(インビトロジェン社)2mlと混合し(A)、他の15mlのチューブにFreestyleTM MAX reagent100μlとOptiProTM SFM2mlを混合(B)した後、(A)と(B)とを混合して15分間インキュベートした後、1日前に用意した細胞に混合液を徐々に入れ混ぜた。形質導入完了後、37℃、湿度80%、8%CO2、130rpmの培養器で5日間培養した。
前記培養された細胞を遠心分離して上清各100mlを取って、AKTA Prime(GEヘルスケア社)を用いて精製した。AKTA PrimeにProtein Aカラム(GEヘルスケア社、17−0405−03)を設け、培養液を5ml/minの流速で流した後、IgG溶出バッファー(サーモサイエンティフィック社、21004)で溶出した。これをPBSにバッファー交換し、最終的に3種の抗体(huAbF46−H4−A1(U6−HC7)、huAbF46−H4−A1(IgG2ヒンジ)、huAbF46−H4−A1(IgG2 Fc))を精製した。このうち、本発明による抗c−Met抗体を代表してhuAbF46−H4−A1(IgG2 Fc)を選択して下記の実施例に使用し、便宜上、前記抗体を抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2と名づけた。
<参考例2.異種移植モデルおよび試験試料の用意>
患者由来腫瘍組織(Non−small cell lung cancer:NSCLC、非小細胞肺癌)が腹腔内移植されたマウス異種移植モデル(mouse xenograft model)14種をOncotest社(ドイツ)から入手した。
前記14種のマウス異種移植モデルに候補医薬最終形態(L3−1Y/IgG2)(各モデル毎にn=10)とビヒクル(各モデル毎にn=10)を投与し、腫瘍組織の大きさを測定して、前記抗体に対する反応性の有無を測定した。
前記マウス異種移植モデル内の腫瘍の大きさが500mm3以上に成長した時点から、L3−1Y/IgG2(コントロールの場合はPBSバッファーを投与した)を5mg/kgの量で1週に1回投与し、計6週間実験を行い、腫瘍の大きさが2000mm3以上になった時点で実験を中断した。
腫瘍の大きさ(mm3)は長径×短径×短径×1/2の式を用いて体積で計算し、効能群の判別はANOVA分析を通じてp値が0.05以下の仮説のみを棄却して行った。即ち、薬を投与した群で、投与しない群に比べて腫瘍の大きさ分布が変わらなかったという仮説をANOVAテストし、p値が0.05以下の群は非効能群、超過する群を効能群と判別した。
L3−1Y/IgG2処理に対する各マウス異種移植モデルの反応性(効能)有無について、評価結果を、下記表9に示した:
実験済みのマウスの腫瘍組織を摘出して、一部の腫瘍組織はFFPE(Formalin Fixed Paraffin Embedded、ホルマリン固定パラフィン包埋)ブロックを製作し、残りの腫瘍組織からQiagen RNeasy Mini Kit(Cat.No.74104)を用いて製造会社のプロトコルによってtotal RNAを抽出した。
製作されたFFPEブロックは、Ventana MET IHC(immunohistochemistry)(Roche;US2013089541 A1参照)を用いて製作会社で提供する標準プロトコルによって表面発現c−METを測定するのに使用した。抽出されたtotal RNAは、リアルタイムPCR(RT−PCR)によるc−MET mRNA発現実験に使用した(MET sense primer:CCTTGAACAGAATCACTG(配列番号272);MET anti−sense primer:CCATGTTTCATGTATGGTA(配列番号273))。
Ventana MET IHC方法を用いて得られた結果を図1に示した。この方法によれば、IHCスコア(score)が2〜3であれば効能群と判断できる。しかし、図1で確認されるように、非効能群に分類されたLXFA297、LXFA983、およびLXFA1041もIHCスコアが2〜3であって、IHC方法では効能群と非効能群の選別正確度が高くないことが分かる(正確度:約50%)。なお、「正確度」は、後述の「Accuracy」と同様に算出し、100倍して100%に換算した値である。
一方、図1において効能群と判断された6つのモデル(LXFA297、LXFA983、LXFA1041、LXFA623、LXFA526、およびLXFA1647)のRT−PCRの結果を図2に示した。図2において、Y軸はRT−PCRで測定されたCt値であり、X軸はIHCスコアであり、◆は非効能群、●は効能群を示す。図2で確認されるように、RT−PCRの結果によれば、非効能群は全てCt値が0以上である反面、効能群は全てCt値が0より低かった。したがって、RT−PCRの結果によると、従来のIHC方法による場合と比較して、効能群と非効能群とをより正確に区別できる(正確度:約71%〜約93%)。RT−PCRの結果を主として用い、さらにIHCスコアを補充的に適用すれば、抗c−Met抗体が有効であるか否かについて、より正確な区別が可能である(例えば、RT−PCRのCt値が0より低くIHCスコアが2〜3である場合、効能群として選別)。
<実施例1:バイオマーカーの選別>
参考例1で製作された抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2の効能性試験のための異種移植片試料(xenograft sample; 前臨床試料14種;参考例2)を用いて、抗c−Met抗体L3−1Y/IgG2に対する効能群と非効能群それぞれにおいて、遺伝子発現水準を測定した。得られた遺伝子発現水準の結果を用いて各グループ間の遺伝子発現差(△log2(exp))を測定し、その差が大きい遺伝子を選別した。
前記遺伝子発現差は、Affymatrix human u133 plus 2.0(アフィメトリクス社)を用いてマイクロアレイ実験を行い、製造会社が提供するmicroarray analysis consoleを用いて、各プローブ毎にlog2値(probe intensity、プローブ強度)を測定して、これを基準にした。この時に使用されたプローブは表10に示した通りである:
効能群と非効能群との発現水準の差を基準に、その差が大きいものから順に羅列して選別した。
前記得られた結果を下記表11に示した(下記表において、ΔexpFoldが大きいほど、効能群と非効能群の発現差が大きいことを意味する):
上記表11から確認されるように、効能群と非効能群の発現差は、THSD7A、MET、RAB31、FAM126A、PHC1、CHML、ST8SIA4、およびCAV1の順に大きいことが示された。
前記8個の遺伝子を抗c−Met抗体効能検出のためのバイオマーカーとして選択した。
<実施例2:基準マーカーの選別>
総計120個の肺腺がん(Lung cancer adenocarcinoma)のマイクロアレイデータ(GEO:gene expression omnibus;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)を用いて、細胞間で遺伝子発現水準の変動が少ない遺伝子を選定した。
GEOから得られたNSCLC腫瘍由来total RNAについて、affymetrix U133 plus2.0(アフィメトリクス社)を用いてプローブ毎のlog2(int)値を求め、上記の120個の試料間でCV(coefficient of variation、変動係数)が最も少ない遺伝子をリスト化した。log2(int)値が標的(target)遺伝子(実施例1で選択された8種のバイオマーカー)と類似した分布である遺伝子を選定した。この時使用されたプライマーを下記表12に整理した:
前記得られた結果を図3および4に示した。図3に示されているように遺伝子発現変動が少ない10個の遺伝子、即ち、EEF1A1、RPL23A、TPT1、HUWE1、MATR3、SRSF3、HNRNPC、SMARCA4、WDR90、およびTUT1を基準マーカーとして選別した。
前記10種の選別された基準マーカーの変動および分類性能の差を測定し、従来の内部コントロール遺伝子(Oncytpe DXTM;図4参照)と比較した。
前記10種の選別された基準マーカーについて使用されたプローブとプライマーを下記表13および表14にそれぞれ整理した:
参考例2の異種移植モデル14個から抽出された、14個のNSCLC mRNAサンプルを用いて、前記方法で、前記10種の選別された基準マーカーおよび従来の内部コントロール遺伝子に対してCt値の変動を測定した。
得られた結果を図5(従来のコントロール遺伝子)および図6(選別された基準マーカー)に示した。図5および図6に示されているように、本発明で選別された10種の基準マーカーの平均CV値は11.770程度で、従来のコントロール遺伝子(Oncytpe DXTM)(平均CV=15.40335)に比べて顕著に低いことを確認することができた。前記10種の基準マーカー中でもRPL23A、TPT1、MATR3、SRSF3、およびHNRNPCの5種の遺伝子は発現量変動幅が特に小さかった(5種の遺伝子平均CV=8.39)。
<実施例3:選別されたバイオマーカーおよび基準マーカーを用いた抗c−Met抗体の効能群選別>
前記選別されたバイオマーカーおよび基準マーカーを参考例2で用意されたマウス異種移植モデルに適用してこれらの効能群/非効能群の選別正確度を試験した。
すなわち、マウス異種移植モデルの腫瘍組織から抽出されたtotal RNAに対して下記表15のプローブおよび表16のプライマーを用いて表17の条件下でPCRを行い、前記8種のバイオマーカーおよび5種の基準マーカー(TPT1、EEF1M、TUT1、MATR3およびSMARCA4)のCt値を得た。
この時、効能群と非効能群の判断は下記表18に従った:
表18において、
CAV1、FAM126A、MET、RAB31、RAB31、ST8SIA4、およびTHSD7Aについての標準基準値:[Min(efficacy value(ΔCt))+Max(non−efficacy value(ΔCt))]/2;
CMHLおよびPHC1についての標準基準値:[Min(non−efficacy value(ΔCt))+Max(efficacy value(ΔCt))]/2;
ΔCt:{5種の基準マーカー(TPT1、EEF1M、TUT1、MATR3およびSMARCA4)の平均Ct}−{該当バイオマーカーのCt};
Min(efficacy value(ΔCt)):効能群のΔCt最小値;
Max(non−efficacy value(ΔCt)):非効能群のΔCt最大値;
Min(non−efficacy value(ΔCt)):非効能群のΔCt最小値;
Max(efficacy value(ΔCt)):効能群のΔCt最大値)。
各バイオマーカーについて計算されたΔCtを前記表18の値と比較し、CAV1、FAM126A、MET、RAB31、RAB31、ST8SIA4、およびTHSD7Aの場合、各バイオマーカーについてのΔCt値が表18の値より高いときに効能群と判定した。CMHLおよびPHC1の場合、各バイオマーカーについてのΔCt値が表18の値より低い場合に効能群と判定した。
前記のような方法で、参考例2で用意された14種のマウス異種移植モデルに対して効能群と非効能群を判定した正確度と“ΔFold”値を下記表19に示した。
表19において、「Accuracy」および「ΔFold」はそれぞれ以下の意味である。
Accuracy:各バイオマーカーを使用して得られる抗体効能予測の正確度、1(100%に該当)に近いほど正確度が高い。下式によって得られる値である。
ΔFold:効能群と非効能群と間のΔCt(コントロール遺伝子(基準マーカー)Ct(基準マーカーの数が2以上の場合は、「基準マーカーの平均Ct値」を意味する)−標的遺伝子(バイオマーカー)Ct)の差である。非効能群と非反応群とを区別することができるmRNA発現値範囲を示す。
表19に示すように、本発明で選別されたバイオマーカーと基準マーカーを用いることで、抗c−Met抗体の効能群と非効能群を約60%以上、例えば約80%以上の正確度で判断可能である。