この発明に係る眼科手術装置および眼科手術用アタッチメントの実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態に係る眼科手術装置は、眼科手術において使用される。実施形態に係る眼科手術装置は、照明光学系により被手術眼(患者眼)を照明し、その反射光を観察光学系に入射させることにより、被手術眼の観察像を取得する装置である。眼科手術用アタッチメントは、眼科手術において使用可能な眼科観察装置に対して挿脱可能に構成される。
以下の実施形態に係る眼科手術装置は、OCTの光学系の少なくとも一部を含むアタッチメント(第1光学ユニット)を眼科手術用顕微鏡(本体部)に装着することにより、被手術眼のOCT画像の取得が可能になる。なお、撮影対象部位は、被手術眼の任意の部位であってよく、たとえば、前眼部においては角膜や硝子体や水晶体や毛様体などであってよいし、後眼部においては網膜や脈絡膜や硝子体であってよい。また、撮影対象部位は、瞼や眼窩など眼の周辺部位であってもよい。公知の手法により、アタッチメントを経由した信号光の戻り光に基づき被手術眼の断面像や3次元画像を形成することが可能である。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプのOCTを適用した構成について説明する。特に、実施形態に係る眼科手術装置は、公知のスウェプトソースOCTの手法を用いて被手術眼のOCT画像を取得可能である。
スウェプトソース以外のタイプ、たとえばスペクトラルドメインOCTの手法を用いる眼科手術装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。また、以下の実施形態ではOCTの光学系を含むOCT装置と眼科手術用顕微鏡とを組み合わせた装置について説明するが、眼科手術用顕微鏡以外の眼科観察装置、たとえば走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)、スリットランプ、眼底カメラなどに、この発明に係る構成を有するOCT装置を組み合わせることも可能である。
〈第1実施形態〉
〔外観構成〕
図1に、この実施形態に係る眼科手術装置の外観構成を示す。眼科手術装置40は、眼科手術用顕微鏡1と、OCT装置15とを含んで構成される。眼科手術用顕微鏡1は、支柱2、第1アーム3、第2アーム4、駆動装置5、顕微鏡6、支持部7、フットスイッチ8および表示部90を含んで構成される。顕微鏡6は、被手術眼Eを照明するための照明光学系と、照明光学系による照明光に対する被手術眼Eの反射光から観察像を形成するための観察光学系とを有する。
OCT装置15は、干渉光学系と、画像形成部とを有する。干渉光学系は、光源からの光を信号光と参照光とに分割し、信号光の光路である信号光路を経由した信号光の被手術眼Eからの戻り光と参照光の光路である参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する。画像形成部は、検出された干渉光に基づきOCT画像を形成する。OCT装置15は、第1光学ユニット16と、第2光学ユニット17とを有し、OCT画像を形成するための光学素子などが2つのユニットのいずれかに格納される。第1光学ユニット16は、顕微鏡6に着脱可能に設けられる。第2光学ユニット17は、顕微鏡6を支持する第2アーム4の上部に設けられる。第1光学ユニット16と第2光学ユニット17とは光ファイバ(導光手段)により接続される。
第1アーム3と第2アーム4との間には、第1アーム3に対して第2アーム4を3次元的に移動させるための機構が設けられている。また、駆動装置5から下方に延びるアームに対する顕微鏡6の取り付け位置に、顕微鏡6を水平方向に回転自在とする機構を設けることも可能である。これら機構と駆動装置5は、顕微鏡6(本体部)の位置や向きを変更するための機構に相当する。一般に、術者は、患者の頭頂部側または耳側に位置して手術を行う。顕微鏡6は、接眼レンズを術者側に向けた状態で被手術眼Eの上方に配置される。「顕微鏡6の向き」には、患者に対する接眼レンズの向き、光学系(たとえば対物レンズ)の光軸に対する接眼レンズの向き、患者に対する術者の位置など、手術において顕微鏡6がどのように配置されるかを示す概念が含まれる。
駆動装置5は、モータ等のアクチュエータを含んで構成される。駆動装置5は、フットスイッチ8の操作レバー8aを用いた操作に応じて顕微鏡6を上下方向や水平方向に移動させる。それにより顕微鏡6は3次元的に移動可能とされる。
顕微鏡6の鏡筒部10には、各種光学系や駆動系などが収納されている。鏡筒部10の上部にはインバータ部12が設けられている。インバータ部12は、被手術眼Eの観察像が倒像として得られる場合に、この観察像を正立像に変換する。インバータ部12の上部には、左右一対の接眼部11L、11Rが設けられている。観察者(術者等)は、左右の接眼部11L、11Rを覗き込むことで被手術眼Eを双眼視できる。
顕微鏡6(鏡筒部10)には、着脱可能に第1光学ユニット16が設けられている。第1光学ユニット16は、干渉光学系の少なくとも一部を格納するアタッチメントである。この実施形態では、第1光学ユニット16は、OCT画像を取得するための信号光を被手術眼Eの方向に偏向するための偏向部材を少なくとも含んで構成される。顕微鏡6は「本体部」の一例である。
顕微鏡6には、前置レンズ13が保持アームを介して接続されている。前置レンズ13は、鏡筒部10の下端に設けられている対物レンズの光軸上の位置に挿脱可能に構成されている。特に、被手術眼Eを観察しているときには、前置レンズ13は、対物レンズの前側焦点位置と被手術眼Eとの間の位置に配置可能である。前置レンズ13は、照明光を集束させて被手術眼Eの眼内(網膜や硝子体等の後眼部)を照明する。前置レンズ13としては、異なる屈折力(たとえば40D、80D、120D等)を有する複数個のレンズが用意されており、これらが択一的に使用される。
鏡筒部10の上部には、術中観察用モニタ14が設けられている。術中観察用モニタ14には、たとえば、観察像の動画像とOCT画像のライブ画像とが表示される。観察像の動画像とOCT画像のライブ画像は、OCT装置15により取得される。なお、観察像の動画像は、眼科手術用顕微鏡1により取得されてもよい。また、術前診断や過去の手術により取得された情報など、手術において参照可能な任意の情報を、術中観察用モニタ14に表示させることも可能である。このような情報は、たとえば、電子カルテシステムや画像アーカイブシステムなどの院内システムから、LAN等のネットワークを介して取得される。術中観察用モニタ14は、取り外し可能に構成されていてよく、また、汎用のタブレット端末などであってもよい。
また、支柱2は、支持部7を支持する。支持部7は、任意の方向に画面の向きを変更可能に表示部90を支持する。表示部90には、たとえば、OCT装置15によってライブ画像をキャプチャすることにより得られたOCT画像(静止画像)が表示される。また、眼科手術用顕微鏡1またはOCT装置15によって取得された任意の画像を表示部90に表示させることができる。さらに、術前診断や過去の手術により取得された情報など、手術において参照可能な任意の情報を、表示部90に表示させることも可能である。なお、表示部90および術中観察用モニタ14には、フットスイッチ8と同様の操作が可能な操作部が設けられていてもよい。
このような構成によれば、術者は、術中において、手術対象の部位の断面像を観察しながら手術を行うことが可能になる。
〔構成〕
[眼科手術用顕微鏡]
図2および図3に、眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図2は、術者から見て左側から光学系を見た図である。図3は、術者側から光学系を見た図である。なお、図2および図3に示す構成に加え、術者の助手が被手術眼Eを観察するための光学系(助手用顕微鏡)を設けることもできる。図2および図3には、第1光学ユニット16に格納された偏向部材100も図示されている。偏向部材100は、眼科手術用顕微鏡1の光学系の外部からの信号光を被手術眼Eの方向に偏向するための部材である。
この実施形態において、上下、左右、前後等の方向は、特に言及しない限り術者側から見た方向とする。なお、上下方向については、対物レンズ19から観察対象(被手術眼E)に向かう方向を下方とし、これの反対方向を上方とする。一般に患者は仰向け状態で手術を受けるので、上下方向と垂直方向とは同じになる。
眼科手術用顕微鏡1の光学系は、照明光学系20と、観察光学系30とを有する。
観察光学系30は、図3に示すように左右一対設けられている。左側の観察光学系30Lを左観察光学系と呼び、右側の観察光学系30Rを右観察光学系と呼ぶ。符号OLは左観察光学系30Lの光軸(観察光軸)を示し、符号ORは右観察光学系30Rの光軸(観察光軸)を示す。左右の観察光学系30L、30Rは、対物レンズ19の光軸O(図2参照)を挟むように配設されている。
左右の観察光学系30L、30Rは、それぞれ、変倍レンズ系31、ビームスプリッタ32(右観察光学系30Rのみ)、結像レンズ33、像正立プリズム34、眼幅調整プリズム35、視野絞り36および接眼レンズ37を有する。
変倍レンズ系31は複数のズームレンズ31a、31b、31cを含んでいる。各ズームレンズ31a〜31cは、図示しない変倍機構によって観察光軸OL(または観察光軸OR)に沿う方向に移動可能とされる。それにより被手術眼Eを観察または撮影する際の拡大倍率が変更される。
右観察光学系30Rのビームスプリッタ32は、被手術眼Eから観察光軸ORに沿って導光された観察光の一部を分離して撮影光学系に導く。撮影光学系は、結像レンズ54、反射ミラー55およびテレビカメラ56を含んで構成される。
テレビカメラ56は、撮像素子56aを備えている。撮像素子56aは、たとえば、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等によって構成される。撮像素子56aとしては2次元の受光面を有するもの(エリアセンサ)が用いられる。
眼科手術用顕微鏡1の使用時には、撮像素子56aの受光面は、たとえば、被手術眼Eの角膜の表面と光学的に共役な位置、または、その角膜曲率半径の1/2だけ角膜頂点から深さ方向に離れた位置と光学的に共役な位置に配置される。
像正立プリズム34は倒像を正立像に変換する。眼幅調整プリズム35は、術者の眼幅(左眼と右眼との間の距離)に応じて左右の観察光の間の距離を調整するための光学素子である。視野絞り36は、観察光の断面における周辺領域を遮蔽して術者の視野を制限する。
照明光学系20は、図2に示すように、照明光源21、光ファイバ21a、出射口絞り26、コンデンサレンズ22、照明野絞り23、スリット板24、コリメータレンズ27および照明プリズム25を含んで構成される。
照明野絞り23は、対物レンズ19の前側焦点位置と光学的に共役な位置に設けられている。また、スリット板24のスリット穴24aは、この前側焦点位置に対して光学的に共役な位置に形成されている。
照明光源21は、顕微鏡6の鏡筒部10の外部に設けられている。照明光源21には光ファイバ21aの一端が接続されている。光ファイバ21aの他端は、鏡筒部10内のコンデンサレンズ22に臨む位置に配置されている。照明光源21から出力された照明光は、光ファイバ21aにより導光されてコンデンサレンズ22に入射する。
光ファイバ21aの出射口(コンデンサレンズ22側のファイバ端)に臨む位置には、出射口絞り26が設けられている。出射口絞り26は、光ファイバ21aの出射口の一部領域を遮蔽するように作用する。出射口絞り26による遮蔽領域が変更されると、照明光の出射領域が変更される。それにより、照明光による照射角度、つまり被手術眼Eに対する照明光の入射方向と対物レンズ19の光軸Oとが成す角度などを変更することができる。
スリット板24は、遮光性を有する円盤状の部材により形成されている。スリット板24には、照明プリズム25の反射面25aの形状に応じた形状を有する複数のスリット穴24aからなる透光部が設けられている。スリット板24は、図示しない駆動機構により、照明光軸O´に直交する方向(図2に示す両側矢印Bの方向)に移動される。それによりスリット板24は照明光軸O´に対して挿脱される。
コリメータレンズ27は、スリット穴24aを通過した照明光を平行光束にする。平行光束になった照明光は、照明プリズム25の反射面25aにて反射され、対物レンズ19を経由して被手術眼Eに投射される。被手術眼Eに投射された照明光(の一部)は角膜にて反射される。被手術眼Eによる照明光の反射光(観察光と呼ぶことがある)は、対物レンズ19を経由して観察光学系30に入射する。このような構成により、被手術眼Eの拡大像の観察が可能になる。
この実施形態では、第1光学ユニット16が顕微鏡6の鏡筒部10に装着されたとき、第1光学ユニット16に格納された偏向部材100は、対物レンズ19と被手術眼Eとの間に配置される。具体的には、偏向部材100は、対物レンズ19の光軸Oにおける被手術眼E側の所定位置から当該光軸Oに直交する距離d(但し、d≧0)だけ離間した位置に配置される。偏向部材100は、観察光学系30により形成される光路(観察光路)から外れるように配置される。この実施形態では、偏向部材100は、観察光軸OLおよび観察光軸ORの双方から外れた位置に配置され、且つ、対物レンズ19の光軸Oに配置される。偏向部材100の一部は、観察光路や照明光学系20により形成される光路(照明光路)に入るように配置されてもよい。なお、偏向部材100が照明光路に配置された場合、観察光の減衰分がキャンセルされるように照明光の強度を制御することが可能である。そのため、取得された画像の明るさが重要でない場合や、照明光の制御が可能である場合には、偏向部材100を照明光路に配置してもよい。これに対して、偏向部材100が観察光路に配置された場合、観察光の減衰により肉眼観察像や撮影画像の明るさが減少し、被手術眼Eの観察に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、偏向部材100は、できるだけ観察光路に入らないように配置されることが望ましい。このような偏向部材100は、ビームスプリッタ、ハーフミラー、またはダイクロイックミラーを含む。
観察光学系30は、この実施形態に係る「観察光学系」の一例である。照明光学系20は、この実施形態に係る「照明光学系」の一例である。
[OCT装置]
図4に、OCT装置15の構成例のブロック図を示す。図4において、図1と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図4では、対物レンズ19とその光軸Oについても図示されている。
この実施形態では、術者が接眼部から目を離すことなくOCT計測用の信号光の走査位置を識別可能にするため、当該信号光とともに、可視光であるエイミング光を被手術眼Eに対して照射することが可能である。また、エイミング光を被手術眼Eに投影しつつ可視画像(可視光を用いて撮影された画像)を取得することにより、信号光の走査位置を表示画像によって確認することも可能である。なお、信号光の走査位置を接眼部を介して(つまり肉眼で)観察することを除外した構成が適用される場合には、エイミング光として不可視光(赤外光など)を用いることが可能である。また、不可視光からなるエイミング光が適用される場合において、不可視画像(不可視光を用いて撮影された画像)からエイミング光の軌跡を特定し、この軌跡の位置および向きを表す画像を、別途に取得された画像(可視画像など)や肉眼観察の視野内に呈示するよう構成することも可能である。
第1光学ユニット16は、少なくとも対物レンズ19を保持する顕微鏡6に対して着脱可能なアタッチメントとして形成されている。この実施形態では、第1光学ユニット16は、上記の偏向部材100と、フォーカスレンズ101と、ビームスプリッタ102と、フィルタ103と、集光レンズ104と、CCDイメージセンサ105と、演算制御部106と、走査部107と、走査制御部108と、合成部109とを含んで構成されている。第1光学ユニット16は、上記の部材のすべてを含んで構成されている必要はなく、たとえば、走査部107と、偏向部材100とを少なくとも格納していてもよい。また、たとえば、第1光学ユニット16以外の他のユニット(たとえば、第2光学ユニット17)が、演算制御部106を含んで構成されていてもよい。また、眼科手術用顕微鏡1に設けられた演算制御装置(演算制御手段)に演算制御部106の機能の少なくとも一部を担わせた構成を適用することも可能である。
第2光学ユニット17は、OCTユニット150と、演算制御ユニット200と、可視光源ユニット201とを含んで構成されている。可視光源ユニット201は、第2光学ユニット17以外の他のユニット(たとえば、第1光学ユニット16)に含まれていてもよい。第2光学ユニット17には、表示部90が接続される。また、第2光学ユニット17には、図1の術中観察用モニタ14が接続される。
偏向部材100は、観察光路から外れるように、対物レンズ19の光軸Oに配置されているが、観察光路および照明光路の少なくとも一方から外れた位置に配置されていればよい。このような偏向部材100は、観察光路および照明光路の少なくとも一方に配置されたビームスプリッタ(ハーフミラー)であってよい。偏向部材100は、信号光路に沿って導かれる信号光を被手術眼Eの方向に偏向するとともに、信号光の被手術眼Eからの戻り光をフォーカスレンズ101の方向に偏向する。
この実施形態では、第1光学ユニット16のCCDイメージセンサ105により得られた検出信号に基づいて動画像が取得される。この動画撮影は、たとえば、赤外光またはレッドフリー光を用いて行われる。ここで、レッドフリー光は、可視光からレッド成分を除去して得られる光である。
赤外光による撮影を行う場合、たとえば、前置レンズ13の周囲に赤外光を被手術眼Eに投射する手段を設け、偏向部材100としてダイクロイックミラーが採用される。この場合、偏向部材100は、被手術眼Eの反射光のうち、少なくともOCT計測に用いられる波長帯および赤外光の波長帯の光を反射し、可視光の波長帯の光である観察用の光を透過させる。なお、赤外光を投射する手段はたとえば1以上の赤外LEDを含み、その設置位置は、前置レンズ13の周囲には限られず、対物レンズ19の周囲や、対物レンズ19と被手術眼Eとの間の位置などであってもよい。また、偏向部材100としてハーフミラーを用いることも可能である。
レッドフリー光による撮影を行う場合、偏向部材100としてハーフミラーが採用される。
OCT計測用の光路には、OCTユニット150側から順に、合成部109と、走査部107と、ビームスプリッタ102と、フォーカスレンズ101とが設けられている。
合成部109には、光ファイバを介してOCTユニット150が接続される。合成部109には、光ファイバを介して可視光源ユニット201が接続される。可視光源ユニット201は、可視光を含むエイミング光(たとえば、中心波長が633nmの光)を出力する。可視光源ユニット201により出力されたエイミング光は、合成部109に導かれる。OCTユニット150からのOCT計測用の信号光(たとえば、中心波長が1050nmの光)は、合成部109に導かれる。合成部109は、OCT計測用の光路とエイミング光の光路とを合成する。すなわち、合成部109は、可視光源ユニット201からの可視光の光路を分割部と走査部107との間の位置において信号光路と合成する。このような合成部109は、ファイバカプラにより構成される。合成部109は、この実施形態に係る「合成部」の一例である。以下、合成部109により合成された光路もまた、OCT計測用の新たな光路として説明する。
なお、OCT計測用の信号光の被手術眼Eからの戻り光が可視光源ユニット201に進入しないようにすることで、OCT計測用の信号光の検出効率の低下を防止することが可能である。
合成部109により合成された光は、図示しないコリメータによって平行光束とされて走査部107に入射する。走査部107は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光)の進行方向を変更する。それにより、被手術眼Eを信号光で走査することができる。走査部107は、たとえば、信号光をx方向に走査するガルバノミラーと、x方向に直交するy方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光をxy平面上の任意の方向に走査することができる。
また、走査部107は、信号光路を導かれるエイミング光の進行方向を変更する。それにより、被手術眼Eにエイミング光を照射することができる。走査部107を上記のように構成することで、エイミング光をxy平面上の任意の方向に走査することができる。なお、エイミング光の照射タイミング(OCT走査範囲をユーザが視認可能なタイミング)は、OCT計測時だけでなく、走査範囲を設定するときや、既に走査が行われた範囲を確認するときであってもよい。
このような走査部107は、公知の光スキャナにより実現できる。走査部107は「走査部」の一例である。
ビームスプリッタ102は、OCT計測用の光路からトラッキング用の光路を分岐させる。具体的には、ビームスプリッタ102は、OCT計測用の信号光の被手術眼Eからの戻り光の光路からトラッキング用の光路を分岐させる。トラッキング用の光路には、ビームスプリッタ102側から順に、フィルタ103と、集光レンズ104と、CCDイメージセンサ105とが設けられている。
赤外光および可視光を被手術眼Eに照射しつつCCDイメージセンサ105を用いて赤外撮影を行う場合、フィルタ103は、赤外光を透過させるフィルタ特性を有する。これにより、ビームスプリッタ102により分岐されたトラッキング用の光路を通過する光は、フィルタ103を透過して赤外光となる。一方、赤外光を被手術眼Eに照射しつつCCDイメージセンサ105を用いて赤外撮影を行う場合、ビームスプリッタ102により分岐されたトラッキング用の光路を通過する光は、そのままCCDイメージセンサ105に入射する(すなわち、フィルタ103は不要)。なお、この場合においては、ビームスプリッタ102は、信号光に相当する波長帯を透過させ、かつ、トラッキング用の赤外光の波長帯を反射するよう構成される。具体例として、トラッキング用の赤外光より長波長の信号光を適用しつつ、これらを分離する特性のビームスプリッタ102(ダイクロイックミラー)が適用される。
また、可視光を被手術眼Eに照射しつつCCDイメージセンサ105を用いてレッドフリー撮影を行う場合、エイミング光を被手術眼Eに投影しないケースと、エイミング光を被手術眼Eに投影するケースでは、次のように構成される。
エイミング光を被手術眼Eに投影しないケースでは、フィルタ103は、可視光に含まれるレッド成分を遮断するフィルタ特性を有する。これにより、ビームスプリッタ102により分岐されたトラッキング用の光路を通過する可視光は、フィルタ103を透過してレッドフリー光となる。なお、レッドフリー光を出力可能な光源を適用することも可能である。その場合、レッドフリー光を被手術眼Eに照射しつつCCDイメージセンサ105を用いてレッドフリー撮影が行われる。この場合にはフィルタ103は不要である。
これに対して、エイミング光を被手術眼Eに投影するケースでは、偏向部材100およびビームスプリッタ102として双方にハーフミラーが採用され、且つ、フィルタ103は、可視光に含まれるレッド成分を遮断するフィルタ特性を有する。これにより、ビームスプリッタ102により分岐されたトラッキング用の光路を通過する可視光は、フィルタ103を透過してレッドフリー光となる。或いは、ビームスプリッタ102は、赤外光と可視光のレッド成分とを透過させ、且つ、可視光のグリーン成分及びブルー成分(つまり、レッド成分以外の成分)を反射させる光学特性を有していてもよい。なお、レッドフリー光を出力可能な光源を適用することも可能である。その場合、レッドフリー光を被手術眼Eに照射しつつCCDイメージセンサ105を用いてレッドフリー撮影が行われる。この場合にはフィルタ103は不要である。
なお、観察部位に応じて最適な波長帯の光で動画撮影を行うために、たとえば、赤外撮影とレッドフリー撮影とを切り替え可能に構成されていてもよい。そのための制御は、たとえば、光源の切り替え、光源からの出力波長の切り替え、フィルタ103の切り替えなどを含んでいてよい。
このようにフィルタ103を透過した光は、集光レンズ104によりCCDイメージセンサ105の受光面に結像される。CCDイメージセンサ105は、たとえば所定のフレームレートでフィルタ103の透過光を検出する。CCDイメージセンサ105は、走査部107と偏向部材100との間において信号光路から分岐された光路に配置されている。術中観察用モニタ14には、CCDイメージセンサ105により検出されたフィルタ103の透過光に基づく画像(観察画像)がライブ画像として表示される。CCDイメージセンサ105は、この実施形態に係る「撮像部」の一例である。
演算制御部106は、CCDイメージセンサ105により検出された光に基づく画像信号を、上記フレームレートに対応する時間間隔で受ける。演算制御部106は、これら画像信号(観察画像)に基づいて、トラッキング制御を行うための演算処理を行う。たとえば、演算制御部106は、時系列で取得された複数の観察画像について、所定の基準観察画像に対する他の観察画像の変位を求める。基準観察画像は、たとえば、所定のタイミング(観察開始時、観察範囲の固定時など)で得られた観察画像であってよい。上記変位を求める処理は、たとえば、基準観察画像中の特徴領域と、他の観察画像中の特徴領域との変位(アフィン変換行列など)を求める処理を含む。さらに、演算制御部106は、求められた変位に基づいて制御信号を生成し、この制御信号を走査制御部108に送る。この制御信号は、たとえば、信号光による現在の走査範囲を、上記変位がキャンセルされた新たな走査範囲に変更するための制御内容を含む。また、演算制御部106は、基準観察画像に対する他の観察画像の画素単位の差分の和を求め、当該差分の和を最小にするための制御信号を走査制御部108に対して出力するようにしてもよい。
演算制御部106は、たとえば、FPGA(Field−Programmable Gate Array)またはGPU(Graphical Processor Unit)、通信インターフェイスなどを含んで構成される。また、演算制御部106は、(CPU(Central Processor Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成されていてもよい。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、演算制御部106を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御部106は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。
走査制御部108は、演算制御部106からの制御信号に基づいて、信号光をx方向に走査するガルバノミラーおよびy方向に走査するガルバノミラーの少なくとも一方の向きおよび当該向きの変更タイミングを制御する。走査制御部108は、この実施形態に係る「走査制御部」の一例である。以上の一連の処理は、CCDイメージセンサ105のフレームレートに対応する時間間隔で繰り返し実行される。この時間間隔は、フレームレートと等しくてもよいし、フレームレートの整数倍であってもよい(つまり間引き処理でもよい)。それにより、被手術眼Eの動きに対して信号光の走査範囲をリアルタイムで追従させることが可能となる。
OCT計測用の光路を通過する信号光は、エイミング光とともに、ビームスプリッタ102およびフォーカスレンズ101を透過し、偏向部材100により被手術眼Eに導かれる。眼底などによる信号光の後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してOCTユニット150やCCDイメージセンサ105に到達する。また、眼底などによるエイミング光の反射光は、偏向部材100を透過して、観察光学系30に入射される。
[OCTユニット]
図5に、OCTユニット150の構成の一例を示す。OCTユニット150には、被手術眼EのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、波長走査型(波長掃引型)光源からの光を信号光と参照光とに分割する分割部と、被手術眼を経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉部とを含み、干渉部により生成された干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系は、信号光路を導かれる光で被手術眼Eを走査するための走査部107をさらに含んで構成されてもよい。干渉光学系における干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット151は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含んで構成される。光源ユニット151は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。光源ユニット151から出力された光を符号L0で示す。
光源ユニット151から出力された光L0は、光ファイバ152により偏波コントローラ153に導かれてその偏光状態が調整される。偏波コントローラ153は、たとえばループ状にされた光ファイバ152に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ152内を導かれる光L0の偏光状態を調整する。
偏波コントローラ153により偏光状態が調整された光L0は、光ファイバ154によりファイバカプラ155に導かれて信号光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバ160によりコリメータ161に導かれて平行光束となる。平行光束となった参照光LRは、光路長補正部材162および分散補償部材163を経由し、コーナーキューブ164に導かれる。光路長補正部材162は、参照光LRと信号光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材163は、参照光LRと信号光LSの分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
コーナーキューブ164は、コリメータ161により平行光束となった参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ164に入射する参照光LRの光路と、コーナーキューブ164から出射する参照光LRの光路とは平行である。また、コーナーキューブ164は、参照光LRの入射光路および出射光路に沿う方向に移動可能とされている。この移動により参照光LRの光路(参照光路)の長さが変更される。
コーナーキューブ164を経由した参照光LRは、分散補償部材163および光路長補正部材162を経由し、コリメータ166によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ167に入射し、偏波コントローラ168に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。
偏波コントローラ168は、たとえば、偏波コントローラ153と同様の構成を有する。偏波コントローラ168により偏光状態が調整された参照光LRは、光ファイバ169によりアッテネータ170に導かれて、演算制御ユニット200の制御の下で光量が調整される。アッテネータ170により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ171によりファイバカプラ172に導かれる。
ファイバカプラ165により生成された信号光LSは、光ファイバ177により、第1光学ユニット16に導かれる。第1光学ユニット16に入射した信号光LSは、合成部109、走査部107、ビームスプリッタ102、およびフォーカスレンズ101を経由して偏向部材100に到達する。そして、信号光LSは、偏向部材100により反射され、被手術眼Eに照射される。信号光LSは、被手術眼の様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。被手術眼による信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ155に導かれ、光ファイバ178を経由してファイバカプラ172に到達する。
ファイバカプラ172は、光ファイバ178を介して入射された信号光LSと、光ファイバ171を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ172は、所定の分岐比(たとえば50:50)で、信号光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ172から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ173、174により検出器175に導かれる。
検出器175は、たとえば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode:以下、BPD)である。検出器175は、その検出結果(検出信号)を演算制御ユニット200に送る。演算制御ユニット200は、たとえば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器175により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことで断層画像を形成する。演算制御ユニット200は、形成された画像を表示部90に表示させる。
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。この実施形態では、干渉光学系は、ファイバカプラ155および172、検出器175、並びにこれらの間で参照光LRや信号光LSを導く光ファイバや各種光学素子を含んで構成される。干渉光学系は、光源ユニット151をさらに含んで構成されてもよい。この干渉光学系は、この実施形態における「干渉光学系」の一例である。
[演算制御ユニット]
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、検出器175から入力される検出信号を解析して被手術眼のOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、OCTユニット150の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、被手術眼のOCT画像を表示部90に表示させる。OCTユニット150の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット151の動作制御、コーナーキューブ164の移動制御、検出器175の動作制御、アッテネータ170の動作制御、偏波コントローラ153、168の動作制御などを行う。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科手術用顕微鏡1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
〔制御系〕
図6に、眼科手術装置40の制御系の構成の一例を示す。図6において、図1〜図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
(制御部)
眼科手術装置40の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、眼科手術用顕微鏡1を制御するための制御手段(演算制御手段)と、OCT装置15を制御するための制御手段(演算制御ユニット200)の双方の機能を有し、これらの手段を実現するための1以上の要素は、眼科手術用顕微鏡1とOCT装置15とに分散配置されている。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と記憶部212が設けられている。
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼科手術用顕微鏡1の撮像素子56a、変倍レンズ駆動部31d、照明光源21、およびスリット板駆動部24bを制御する。また、主制御部211は、第1光学ユニット16のCCDイメージセンサ105、演算制御部106、および走査制御部108を制御する。さらに、主制御部211は、第2光学ユニット17の可視光源ユニット201、光源ユニット151、アッテネータ170、偏波コントローラ153、168、および検出器175を制御する。
たとえば、制御部210のうち、眼科手術用顕微鏡1の構成要素(たとえば撮像素子56a、変倍レンズ駆動部31d、照明光源21、スリット板駆動部24bなど)を制御するための制御手段は、眼科手術用顕微鏡1に設けられる。また、主制御部211のうち、OCT装置15の構成要素(たとえばCCDイメージセンサ105、走査制御部108、可視光源ユニット201、光源ユニット151、アッテネータ170、偏波コントローラ153、168、検出器175など)を制御するための制御手段は、OCT装置15(第1光学ユニット16または第2光学ユニット17)に設けられる。つまり、制御部210は、図4に示す演算制御部106、走査制御部108および演算制御ユニット200と、図示しない眼科手術用顕微鏡1の演算制御手段とを含む。換言すると、主制御部211は、眼科手術用顕微鏡1とOCT装置15とに分散配置された2以上の演算制御装置を含んでいてよい。
このとき、公知の検出手段による顕微鏡6に対する第1光学ユニット16の装着状態の検出結果に基づいて、主制御部211の動作態様が変更されるように構成することが可能である。たとえば、第1光学ユニット16が顕微鏡6に装着されたことが検出されたことに対応し、主制御部211は、2以上の演算制御装置を連係動作させるモードに移行する。たとえば、OCT装置15によりOCT画像や観察画像などが取得されたとき、演算制御ユニット200から眼科手術用顕微鏡1の制御手段に制御信号が送られ、これを受けた制御手段が表示部90または術中観察用モニタ14への表示制御を行うことができる。また、第1光学ユニット16が顕微鏡6から取り外されたことが検出されたことに対応し、主制御部211は、上記の連係動作モードから、眼科手術用顕微鏡1の制御手段単独による動作モードに移行する。
変倍レンズ駆動部31dは、変倍レンズ系31を構成するズームレンズ31a、31b、31cのそれぞれを独立に観察光軸OL、ORに沿う方向に移動させる。スリット板駆動部24bは、スリット板24を照明光軸O´に直交する方向に移動させる。
また、主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。さらに、主制御部211は、CCDイメージセンサ105により検出されたフィルタ103の透過光に基づく画像を術中観察用モニタ14に表示させる。
(画像形成部)
画像形成部220は、検出器175からの検出信号に基づいて、眼底などの断面像の画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。画像形成部220は、図4に示す演算制御ユニット200のうちOCT画像を形成するための構成部分を含む。また、画像形成部220は、眼科手術用顕微鏡1の演算制御装置のうち画像の形成に関する構成部分を含んでいてよい。
(画像処理部)
画像処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、画像処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。また、画像処理部230は、眼科手術用顕微鏡1により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施すことも可能である。画像処理部230は、図4に示す演算制御ユニット200のうちOCT画像を処理するための構成部分や、演算制御部106のうちCCDイメージセンサ105から出力される画像を処理するための構成部分や、眼科手術用顕微鏡1の演算制御装置のうち画像の処理に関する構成部分を含む。
画像処理部230は、断面像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底などの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部90等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
また、3次元画像の画像データとして、複数の断面像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断面像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
以上のように機能する画像処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムがあらかじめ格納されている。
なお、眼科手術装置40は、観察光学系30により得られた観察画像(可視)を動画像として記録する記録手段(動画像として保存する保存手段)をさらに含んで構成されていてもよい。たとえば、当該記録手段には、撮像素子56aにより得られた検出信号に基づく画像データが記録される。記録手段は、公知のハードディスクドライブ等の記憶装置であってよい。このように記録された動画像は、任意のタイミングで記録手段から読み出されて再生され、表示部90や術中観察用モニタ14に表示されてもよい。術者は、たとえば術中観察用モニタ14や表示部90に設けられた操作パネルまたはフットスイッチ8に対する操作により、記録手段に記録された動画像の記録開始指示や記録停止指示や再生指示などの指示を行うことが可能である。これにより、被手術眼Eに対する術式などの確認が可能になる。
また、眼科手術装置40は、観察光学系30により得られた観察画像(可視)、CCDイメージセンサ105を用いて撮影された画像(赤外光による観察画像やレッドフリー光による観察画像)、およびOCT画像のライブ画像のうち少なくとも2つを同期させて動画像として記録する手段をさらに含んで構成されていてもよい。たとえば、当該記録手段には、撮像素子56aにより得られた検出信号に基づく画像データや、CCDイメージセンサ105により得られた検出信号に基づく画像データや、画像形成部220により形成された画像データまたは画像処理部230により画像処理等が施された画像データが記録される。記録された画像データを再生するときには、眼科手術装置40は、観察光学系30により得られた観察画像(可視)とCCDイメージセンサ105を用いた赤外撮影により撮影された赤外観察像と3次元のOCT画像のライブ画像とを同期させ、表示部90や術中観察用モニタ14に並列表示させることが可能である。また、眼科手術装置40は、エイミング光が描出された画像を解析することによりOCT画像とCCDイメージセンサ105を用いて撮影された観察画像との位置関係を当該観察画像上にグラフィック表示することが可能である。或いは、眼科手術装置40は、エイミング光が描出された画像を解析することにより3次元のOCT画像とCCDイメージセンサ105を用いて撮影された観察画像との位置関係を当該観察画像上にグラフィック表示することが可能である。術者は、術中観察用モニタ14や表示部90に設けられた操作パネルまたはフットスイッチ8に対する操作により、記録手段に記録された動画像の記録開始指示や記録停止指示や再生指示などの指示を行うことが可能である。
[動作]
以上のような構成を有する眼科手術装置40の動作について説明する。
まず、眼科手術用顕微鏡1による観察状態の調整が行われる。そのために、たとえば、術者は、眼科手術用顕微鏡1の調整を行う。すなわち、術者は、第2アーム4の位置や向きを調整した後、フットスイッチ8に対して操作を行うことにより顕微鏡6を上下方向や水平方向に移動させ、顕微鏡6を所望の位置で停止させる。その後、術者は、眼幅、観察角度、光量などを調節し、焦点と位置を合わせる。これにより、照明光学系20の照明光により被手術眼Eが照明され、術者は、接眼レンズ37を覗きながら被手術眼Eの観察が可能になる。
次に、OCT装置15による観察画像(動画像)の取得が開始される。具体的には、OCT装置15は、CCDイメージセンサ105により得られた検出信号から被手術眼E(手術部位およびその周辺)の赤外撮影またはレッドフリー撮影による動画像の取得を開始する。この動画像を構成する各フレームの画像は、フレームメモリ(記憶部212)に一時記憶され、画像処理部230に逐次送られる。また、フレームメモリに一時記憶された各フレームの画像は、術中観察用モニタ14に表示される。
術者は、眼科手術用顕微鏡1により得られる肉眼観察像または術中観察用モニタ14に表示された動画像を見ながら、フォーカスレンズ101を移動させることによりピント合わせを行う。なお、主制御部211は、公知の手法で各フレームを解析することによりフォーカスレンズ101の移動量を算出し、算出された移動量に基づいてフォーカスレンズ101を移動させるように制御してもよい。
続いて、制御部210は、トラッキングを開始する。具体的には、演算制御部106は、CCDイメージセンサ105により取得された観察画像に基づいて、トラッキング制御を行うための演算処理を行う。走査制御部108は、演算制御部106からの制御信号に基づいて走査部107を制御する。それにより、所望の位置でピントが合った好適な位置関係を維持することが可能となる。
次に、OCT計測用の信号光の走査範囲と走査パターン(走査形状や走査領域のサイズ)を設定する。信号光の走査範囲の設定は、自動またはマニュアルにより行うことが可能である。信号光の走査範囲を自動で設定する場合、たとえば、術前のOCT計測と同じ範囲を再現して設定したり、現在の観察画像のフレームを解析して手術部位を検出し、検出された手術部位を含む範囲を設定したりすることが可能である。術前のOCT計測の範囲は、術前のOCT走査範囲を3次元画像または正面画像に記録しておき、現在の観察画像のフレームと比較することにより特定することができる。また、信号光の走査範囲をマニュアル設定する場合、たとえば、OCT画像のライブ画像やエイミング光の投影像が描出されている観察画像を見ながら術者が所望の走査範囲を設定することにより行われる。なお、信号光の走査範囲が自動で設定された場合、当該走査範囲をエイミング光の投影により識別可能にするようにしてもよい。また、走査パターンの設定方法としては、術前と同様の走査パターンを自動設定や、フットスイッチ8を用いたマニュアル設定がある。走査パターンをマニュアルで設定する場合、走査パターンの選択肢が術中観察用モニタ14等に呈示され、フットスイッチ8等を用いて所望の選択肢が指定される。走査パターンの選択肢は、1次元パターンおよび2次元パターンの少なくともいずれかを含んでいてよい。
信号光の走査に関する設定の完了後、OCT計測が開始される(ただし、当該設定にOCT画像のライブ画像が用いられる場合には、OCT計測は既に開始されている)。OCT計測の実行と並行してエイミング光の投影を行うことができる。その場合、エイミング光は、合成部109により信号光と合成され、被手術眼Eにおける信号光と同じ位置に照射される。エイミング光の被手術眼Eの反射光は、観察光学系30に入射するため、術者は、被手術眼Eにおけるエイミング光の軌跡を観察することができる。すなわち、術者は、信号光の走査軌跡(OCT計測が行われている位置)を視認することができる。
また、OCT計測を行うために、制御部210は、光源ユニット151やコーナーキューブ164を制御するとともに、上記のように設定された走査領域に基づいて走査部107を制御する。画像形成部220は、OCT計測により得られた干渉光のスペクトルに基づいて被手術眼Eの断層画像を形成する。走査パターンが3次元スキャンである場合、画像処理部230は、画像形成部220により形成された複数の断層画像に基づいて被手術眼Eの3次元画像を形成する。
また、術者によるフットスイッチ8に対する操作を受け、制御部210は、術中観察用モニタ14に表示された動画像からキャプチャされた静止画像を表示部90に表示させるようにしてもよい。
術者は、眼科手術用顕微鏡1による肉眼観察、眼科手術用顕微鏡1により取得される可視画像の観察、OCT装置15により取得されるOCT画像の観察、および、OCT装置15により取得される赤外画像(またはレッドフリー画像)の観察を、選択的に行いつつ手術を行う。
[効果]
この実施形態に係る眼科手術装置40の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科手術装置40は、観察光学系30と、照明光学系20と、干渉光学系と、画像形成部220とを含む。観察光学系は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための光学系である。照明光学系20は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための光学系である。干渉光学系は、対物レンズ19と被手術眼Eとの間に配置された偏向部材100を介して被手術眼Eに導かれる信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する。画像形成部220は、干渉光学系による検出結果に基づいて被手術眼Eの画像を形成する。
このような眼科手術装置40では、対物レンズ19と被手術眼Eとの間に偏向部材100を配置し、信号光路を導かれる信号光とその戻り光とを偏向部材100により偏向させるようにしている。これにより、OCT画像を取得するための偏向部材100を配置することによる観察光の減衰を防止し、既存の構成に影響を与えることなく、質の高い被手術眼の観察像およびOCT画像を術中に取得することが可能になる。
偏向部材100は、観察光学系30が形成する光路および照明光学系20が形成する光路の少なくとも一方から外れた位置に配置されていてもよい。また、偏向部材100は、観察光学系30が形成する光路および照明光学系20が形成する光路の少なくとも一方に配置されたビームスプリッタであってもよい。また、このビームスプリッタは、観察光学系30が形成する光路に配置されたダイクロイックミラーであってもよい。さらに、このビームスプリッタは、照明光学系20が形成する光路に配置されたダイクロイックミラーまたはハーフミラーであってもよい。
また、干渉光学系の少なくとも一部が格納された第1光学ユニット16は、少なくとも対物レンズ19を保持する顕微鏡6に対して着脱可能なアタッチメントとして形成されていてもよい。これにより、眼科手術用顕微鏡1における既存の構成に影響を与えることなく、質の高い被手術眼Eの観察像およびOCT画像を術中に取得することが可能になる。
干渉光学系は、分割部と、走査部107と、干渉部とを含んでもよい。分割部は、光源からの光を信号光と参照光とに分割する。走査部107は、信号光路を導かれる光で被手術眼Eを走査するために用いられる。干渉部は、信号光路を経由した信号光の被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させる。この場合、偏向部材100は、被手術眼Eと走査部107との間に配置される。第1光学ユニット16は、走査部107と、偏向部材100とを少なくとも格納する。これにより、第1光学ユニット16の軽量化が可能になる。
また、眼科手術装置40は、合成部109を含んでもよい。合成部は、可視光源ユニット201からの可視光の光路を分割部と走査部107との間の位置において信号光路と合成する。このような構成によれば、術者は、観察光学系30により被手術眼Eの観察を行いながら、OCTの走査位置を確認することが可能になる。これにより、術者は、眼科手術用顕微鏡1の接眼部から目を離すことなく、OCT画像を取得するための走査位置を指定することができ、手術の効率を向上させることができる。
また、第1光学ユニット16は、CCDイメージセンサ105をさらに格納してもよい。CCDイメージセンサ105は、走査部107と偏向部材100との間において信号光路から分岐された光路に配置される。また、眼科手術装置40は、CCDイメージセンサ105により取得された画像に基づいて走査部107を制御する走査制御部108を含んでもよい。第1光学ユニット16は、走査制御部108をさらに格納してもよい。これにより、CCDイメージセンサ105により検出された信号に基づいて、トラッキングを行うことが可能になる。
また、分割部および干渉部の少なくとも一部は、第2光学ユニット17に格納され、第1光学ユニット16と第2光学ユニット17とは、光ファイバ(導光手段)により接続されてもよい。
また、眼科手術装置40は、観察光学系30および照明光学系20の制御を行う主制御部211をさらに含み、主制御部211は、顕微鏡6に第1光学ユニット16が装着されているとき、干渉光学系の制御を行ってもよい。
また、第1光学ユニット16(眼科手術用アタッチメント)は、眼科手術用顕微鏡1に対して着脱可能である。眼科手術用顕微鏡1は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための観察光学系30と、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための照明光学系20とを含む。第1光学ユニット16は、眼科手術用顕微鏡1に対して装着された状態において対物レンズ19と被手術眼Eとの間に配置される偏向部材100を含み、信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する干渉光学系からの信号光路を偏向部材100を介して被手術眼Eに導くように構成されている。
<第2実施形態>
第1実施形態に係る偏向部材100は、図2および図3に示すようにそれぞれの面が矩形形状を有しているものとして説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。第2実施形態に係る偏向部材は、観察光学系30により形成される光路に応じた形状を有している。以下、第1の実施形態で用いられた符号を準用する。
第2実施形態に係る眼科手術装置の構成および制御は、第1実施形態とほぼ同様である。第2実施形態に係る眼科手術装置の構成が第1実施形態に係る眼科手術装置40の構成と異なる点は、偏向部材の形状である。
図7に、術者から見た第2実施形態に係る眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図7において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
偏向部材100は、前方(術者側)から見て左右対称な台形形状を有している。具体的には、偏向部材100は、観察光路から外れるように台形の脚が形成されている。すなわち、対物レンズ19と被手術眼Eとの間において、左右の観察光路は被手術眼Eに向かうにつれて近接するよう傾斜しており、偏向部材100の左右の側面は左右の観察光路に応じた傾斜を有する。換言すると、偏向部材100の下面(被手術眼E側の面)は上面(対物レンズ19側の面)よりも小面積に形成されており、それらの面積の差(または比)は、たとえば、左右の観察光路の傾斜と、偏向部材100の高さ(上面と下面との間の距離)とによって設定される。これにより、第1実施形態と同様に観察光の減衰を防止することができる。なお、この実施形態に係る偏向部材の形状は図7に示すものには限定されず、たとえば、上面と下面とが非平行であってもよいし、或る面が曲面であってもよい。いずれにしても、左右の観察光路を遮らないように(または、観察に対して実質的な影響を与えない程度、左右の観察光路を遮るように)偏向部材が形成され、且つその偏向部材が対物レンズ19の下方に配置されていればよい。
この実施形態の眼科手術装置は、第1の実施形態と同様の効果を有する。
<第3実施形態>
第1実施形態または第2実施形態では、対物レンズ19と被手術眼Eとの間に偏向部材が配置された場合について説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。以下、第1の実施形態で用いられた符号を準用する。
第3実施形態に係る眼科手術装置の構成および制御は、第1実施形態とほぼ同様である。第3実施形態に係る眼科手術装置の構成が第1実施形態に係る眼科手術装置40の構成と異なる点は、偏向部材が配置される位置である。
図8に、術者から見た第3実施形態に係る眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図8において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第3実施形態では、偏向部材100が、観察光学系が形成する光路から外れるように、対物レンズ19と被手術眼Eとの間において対物レンズ19の光軸Oに直交する方向の所定位置に配置される。これにより、第1実施形態と同様に観察光の減衰を防止することができる。なお、所定位置が光軸Oに近いほど、被手術眼Eに対する信号光の入射角度を90度に近付けることができる。そのため、当該信号光に対する戻り光の検出精度が向上し、OCT画像の画質を向上させることができる。これに対し、所定位置を光軸Oに近付けると、観察光学系30により形成される光路に近くなり、実装が難しくなる可能性がある。所定位置の光軸Oとの距離は、上記を勘案して適宜設計することが可能である。
この実施形態の眼科手術装置は、第1の実施形態と同様の効果を有する。
<第4実施形態>
第1実施形態〜第3実施形態では、対物レンズ19と被手術眼Eとの間に偏向部材が配置された場合について説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。以下、第1の実施形態で用いられた符号を準用する。
第4実施形態に係る眼科手術装置の構成および制御は、第1実施形態とほぼ同様である。第4実施形態に係る眼科手術装置の構成が第1実施形態に係る眼科手術装置40の構成と異なる点は、偏向部材が配置される位置である。
図9に、術者から見た第4実施形態に係る眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図9において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第4実施形態では、偏向部材100が、観察光学系が形成する光路から外れるように、対物レンズ19の周縁から対物レンズ19の光軸Oに直交する方向の所定位置に配置される。これにより、第1実施形態と同様の効果に加えて、照明光の減衰を防止することができる。なお、所定位置が光軸Oに近いほど、被手術眼Eに対する信号光の入射角度を90度に近付けることができる。そのため、当該信号光に対する戻り光の検出精度が向上し、OCT画像の画質を向上させることができる。これに対し、所定位置を光軸Oに近付けると、偏向部材100が対物レンズ19に対し物理的に干渉する可能性がある。所定位置の光軸Oとの距離は、上記を勘案して適宜設計することが可能である。
[効果]
この実施形態の眼科手術装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科手術装置は、観察光学系30と、照明光学系20と、干渉光学系と、画像形成部220とを含む。観察光学系は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための光学系である。照明光学系20は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための光学系である。干渉光学系は、対物レンズ19の周縁から対物レンズ19の光軸Oに直交する方向の所定位置に配置された偏向部材100を介して被手術眼Eに導かれる信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する。画像形成部220は、干渉光学系による検出結果に基づいて被手術眼Eの画像を形成する。
このような眼科手術装置では、対物レンズ19の周縁から対物レンズ19の光軸Oに直交する方向の所定位置に偏向部材100を配置し、信号光路を導かれる信号光とその戻り光とを偏向部材100により偏向させるようにしている。これにより、OCT画像を取得するための偏向部材を配置することによる観察光と照明光の減衰を防止し、既存の構成に影響を与えることなく、質の高い被手術眼の観察像およびOCT画像を術中に取得することが可能になる。
また、第1光学ユニット16(眼科手術用アタッチメント)は、眼科手術用顕微鏡1に対して着脱可能である。眼科手術用顕微鏡1は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための観察光学系30と、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための照明光学系20とを含む。第1光学ユニット16は、眼科手術用顕微鏡1に対して装着された状態において対物レンズ19の周縁から対物レンズ19の光軸Oに直交する方向の所定位置に配置される偏向部材100を含み、信号光路と参照光路とを有し信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する干渉光学系からの信号光路を偏向部材100を介して被手術眼Eに導くように構成されている。
<第5実施形態>
第1実施形態〜第4実施形態では、偏向部材100が対物レンズ19の下方または横方向に所定距離だけ離間した位置に配置された場合について説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。第5実施形態では、偏向部材100が対物レンズ19の上方に配置される。以下、第1の実施形態で用いられた符号を準用する。
第5実施形態に係る眼科手術装置の構成および制御は、第1実施形態とほぼ同様である。第5実施形態に係る眼科手術装置の構成が第1実施形態に係る眼科手術装置40の構成と異なる点は、対物レンズと偏向部材が配置される位置である。
図10に、術者から見た第5実施形態に係る眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図10において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第5実施形態では、偏向部材100が、観察光学系が形成する光路から外れるように、対物レンズ19と変倍レンズ系31との間に偏向部材100が配置される。また、対物レンズ19において、信号光路が通過する部分と観察光学系が形成する光路が通過する部分とが異なる屈折特性を有する。この実施形態では、対物レンズ19に孔部19aが形成され、信号光路が通過する部分が孔部19aを通るように偏向部材100が配置される。これにより、第1実施形態と同様の効果に加えて、照明光の減衰を防止することができる。
[効果]
この実施形態の眼科手術装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科手術装置は、観察光学系30と、照明光学系20と、干渉光学系と、画像形成部220とを含む。観察光学系30は、変倍レンズ系31を含み、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための光学系である。照明光学系20は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための光学系である。干渉光学系は、対物レンズ19と変倍レンズ系31との間に配置された偏向部材100を介して被手術眼Eに導かれる信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼からの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する。画像形成部220は、干渉光学系による検出結果に基づいて被手術眼Eの画像を形成する。対物レンズ19において、信号光路が通過する部分と観察光学系30が形成する光路が通過する部分とが異なる屈折特性を有する。
このような眼科手術装置40では、対物レンズ19と変倍レンズ系31との間に偏向部材100を配置し、且つ、対物レンズ19において、信号光路が通過する部分と観察光学系30が形成する光路が通過する部分とが異なる屈折特性を有する。これにより、OCT画像を取得するための偏向部材を配置することによる観察光と照明光の減衰を防止し、既存の構成に影響を与えることなく、質の高い被手術眼の観察像およびOCT画像を術中に取得することが可能になる。また、対物レンズ19における信号光路が通過する部分が、対物レンズ19または被手術眼Eに対する信号光の入射角度を考慮した屈折特性を備えるようにすることで、信号光やその戻り光の散乱などを防止し、より一層質の高いOCT画像の取得が可能になる。
また、第1光学ユニット16(眼科手術用アタッチメント)は、眼科手術用顕微鏡1に対して着脱可能である。眼科手術用顕微鏡1は、変倍レンズ系31を含み、対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための観察光学系30と、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための照明光学系20とを含み、対物レンズ19において、信号光路が通過する部分と観察光学系30が形成する光路が通過する部分とが異なる屈折特性を有する。第1光学ユニット16は、眼科手術用顕微鏡1に対して装着された状態において対物レンズ19と変倍レンズ系31との間に配置される偏向部材100を含み、信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する干渉光学系からの信号光路を偏向部材100を介して被手術眼Eに導くように構成されている。
<第6実施形態>
第1実施形態〜第5実施形態では、対物レンズ19の周囲に偏向部材が配置された場合について説明したが、本発明に係る実施形態は、これに限定されるものではない。以下、第1の実施形態で用いられた符号を準用する。
第6実施形態に係る眼科手術装置の構成および制御は、第1実施形態とほぼ同様である。第6実施形態に係る眼科手術装置の構成が第1実施形態に係る眼科手術装置40の構成と異なる点は、対物レンズである。
図11に、術者から見た第6実施形態に係る眼科手術用顕微鏡1の光学系を示す。図11において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第6実施形態では、対物レンズ19に偏向部材100が設けられる。図11は、偏向部材100が対物レンズ19の内部に設けられた場合について説明するが、偏向部材100は、対物レンズ19の表面(たとえば、被手術眼E側の面)または裏面(たとえば、変倍レンズ系31側の面)に設けられてもよい。この実施形態では、信号光路を通過する信号光は、対物レンズ19の内部に設けられた偏向部材100により偏向される。たとえば、対物レンズ19に形成された上下方向の断面の法線方向から信号光を入射させ、対物レンズ19の内部の偏向部材100により当該信号光を偏向させる。これにより、第1実施形態と同様の効果に加えて、照明光の減衰を防止することができる。
[効果]
この実施形態の眼科手術装置の効果について説明する。
この実施形態に係る眼科手術装置は、観察光学系30と、照明光学系20と、干渉光学系と、画像形成部220とを含む。観察光学系30は、偏向部材100が設けられた対物レンズ19を介して被手術眼Eを観察するための光学系である。照明光学系20は、対物レンズ19を介して被手術眼Eを照明するための光学系である。干渉光学系は、対物レンズ19に設けられた偏向部材100を介して被手術眼Eに導かれる信号光路と参照光路とを有し、信号光路を経由した被手術眼Eからの戻り光と参照光路を経由した参照光とに基づく干渉光を検出する。画像形成部220は、干渉光学系による検出結果に基づいて被手術眼Eの画像を形成する。
このような眼科手術装置40では、対物レンズ19に偏向部材100を設け、信号光路を導かれる信号光とその戻り光とを対物レンズ19に設けられた偏向部材100により偏向させるようにしている。これにより、OCT画像を取得するための偏向部材を配置することによる観察光と照明光の減衰を防止し、既存の構成に影響を与えることなく、質の高い被手術眼の観察像およびOCT画像を術中に取得することが可能になる。
<変形例>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
[第1変形例]
以上に示された実施形態において、アタッチメントとして形成された第1光学ユニット16が顕微鏡6(本体部)に装着される接続部(コネクタ、ポート)は、第1光学ユニット16と異なるアタッチメントと接続可能に構成されてもよい。すなわち、顕微鏡6には、第1接続部が設けられる。第1光学ユニット16には、第2接続部が設けられる。第1接続部と第2接続部とが接続されることにより、第1光学ユニット16が顕微鏡6に装着される。第1接続部は、第1光学ユニット16と異なるアタッチメントに設けられた第3接続部と接続可能に構成されている。
これにより、顕微鏡6に設けられた第1接続部は、汎用の接続部となり、アタッチメントを装着するために接続部の追加を不要にすることが可能になる。
[第2変形例]
以上に示された実施形態において、少なくとも偏向部材100が格納された光学ユニット(第3光学ユニット)に対し、干渉光学系の少なくとも一部が格納された他の光学ユニット(第4光学ユニット)の装着が可能に形成されていてもよい。干渉光学系の少なくとも一部が格納された他の光学ユニット(第4光学ユニット)は、少なくとも対物レンズ19を保持する顕微鏡6(本体部)に対して装着されている光学ユニット(第3光学ユニット)に対して着脱される。
[第3変形例]
以上に示された実施形態において、眼科手術装置は、偏向部材100を移動させるための機構をさらに含んで構成されていてもよい。これにより、OCT画像を取得するときだけ偏向部材100を所定位置に移動させることが可能になり、OCT画像の取得が不要なときの被手術眼Eについて質の高い観察像の取得が可能になる。また、当該機構が眼科手術用アタッチメントに設けられている場合であって、このアタッチメントが各種の眼科手術用顕微鏡に装着可能に構成されている場合、装着されている眼科手術用顕微鏡の光路の配置に応じて偏向部材100の位置を調整することが可能である。
[その他の変形例]
以上に示された実施形態において、第1光学ユニット16は、前置レンズ13の装着部と前置レンズ13との間に装着されてもよい。
以上に示された実施形態において、偏向部材100は、平面鏡、凹面鏡などの非平面鏡、偏向プリズム、または回折格子など、光の進行方向を変化させる機能を少なくとも有する光学素子を含んで構成されていてもよい。
以上に示された実施形態において、OCT装置15は、第1光学ユニット16と第2光学ユニット17とにより構成された場合について説明したが、3以上の光学ユニットにより構成されていてもよい。
眼科手術用アタッチメントの接続部(第2接続部)を交換可能に構成することができる。すなわち、2以上の第2接続部が準備されており、装着される眼科手術用顕微鏡の接続部(第1接続部)の形態に応じた形態の第2接続部を選択的に使用することが可能である。それにより、第1接続部の形態が異なる各種の眼科手術用顕微鏡に対して、同じ眼科手術用アタッチメントを装着することが可能となる。
また、第1実施形態〜第6実施形態や上記の変形例において説明した構成を任意に組み合わせることが可能である。たとえば、第1実施形態〜第6実施形態のうち2以上の実施形態の適用が可能なシステムにおいて、当該2以上の実施形態のうち所望の実施形態を動作モードの切り替えにより択一的に適用にすることが可能である。