JP6584010B2 - トンネル切羽前方探査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル切羽前方探査方法に関し、例えば、トンネルの発破掘削時の振動により生じた地震波を用いてトンネルの切羽前方の断層帯等を探査するトンネル切羽前方探査方法に関するものである。
トンネルは地中深くに建設される線状構造物であるため、技術的、経済的な理由からトンネル全長に渡って十分な調査を行うことが難しい状況にある。山岳トンネルの事前調査では、ほとんどの場合に屈折法弾性波探査が行われ、そこで求めた弾性波速度等を総合的に評価して地山が区分され、その区分に対応させて予め用意されている標準設計(標準支保パターン等)を適用して設計を行う。
しかし、設計の支保パターンと施工時の支保パターンとで異なる場合も多い。この原因の1つとして、従来の地表から行う弾性波探査では地山深部のトンネル掘削地点まで弾性波が十分に届かないこともあり、探査精度を向上させることが難しく弾性波速度を正しく評価できない点が挙げられている。このような場合、施工中にトンネルの坑内から切羽前方の調査を行う切羽前方調査が有効である。
また、発明者らは、掘削時の発破を、トンネルルート上の地表面に設置した受振器で計測し、その走時と事前調査の弾性波探査データとを合わせてトモグラフィ解析を行い、トンネルの切羽前方の地山の弾性波速度分布を予測する方法を開発した。この場合、弾性波速度分布を精度良く予測するには、受振器の設置数や発振点(発破する位置)の数を増やして波線数を多くする必要があるが、地形条件から必要な受振器を設置することが難しく十分な予測精度を確保できない場合がある。このような場合に、別の方法としてトンネル坑内に受振器を設置して施工中にトンネルの坑内から切羽前方の地山を探査する反射法弾性波探査が有効である。代表的な反射法弾性波探査法には、TSP(Tunnel Seismic Prediction)法やHSP(Horizontal Seismic Profiling)法等がある。
なお、トンネル切羽前方の探査技術については、例えば、特許文献1〜5に記載がある。特許文献1には、トンネル掘削のための発破を震源とする弾性波に基づいてトンネル切羽前方の地質を推定する技術が開示されている。
また、特許文献2には、トンネル掘削における段発の各段の発破を震源とする地震波を坑内の地震計により計測することでトンネル切羽前方の地質を探査する技術が開示されている。
また、特許文献3には、トンネルの外部に設置された坑外記録装置の内蔵時計と、トンネルの内部に設置された坑内記録装置の内蔵時計とをGPS時刻に同期させた状態で、トンネルの切羽で発破を行った場合に、坑外記録装置と坑内記録装置との各々に記録された受振データに基づいてトンネル切羽前方の地質を予測する技術が開示されている。
また、特許文献4には、トンネル掘削において切羽の発破により生じた発破振動を、切羽よりも前方の地上面に設置された受振器により受振することでトンネル切羽前方の地質の状況を予測する技術が開示されている。
また、特許文献5には、トンネルの地山で発生するアコースティックエミッションを、トンネルの抗壁面から地山に向かって打ち込まれたロックボルトを通じて受振し測定することでトンネルの崩壊を判断する技術が開示されている。
特開2013−174580号公報 特開平10−311880号公報 特開平2011−43409号公報 特開平2015−190789号公報 特開平2001−355384号公報
ところで、トンネルの掘削工事を安全かつ経済的に実施するためには、トンネルの切羽前方に存在する断層帯の位置や幅等に関する情報を事前に把握し、それに応じて支保の変更や補助工法の適用等のような対策を立てることが重要である。特に、トンネルの坑口近傍は、地形や地質構造が複雑であり、予想外の変状等に遭遇することがあるので、その状態を早期にかつ的確に把握することが必要とされている。しかし、上記したTSP法やHSP法等のような探査方法においては、トンネルの切羽前方に幅の広い断層帯等が存在する場合に、実際と予測との間で反射位置が大きく異なる場合がある、という問題がある。
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、その目的は、トンネルの切羽前方の探査精度を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のトンネル切羽前方探査方法は、(a)トンネル切羽前方の地山に対してトンネルを掘削するための発破により生じた地震波によって前記トンネルの切羽前方の断層帯から反射する反射波を、前記トンネルの坑壁に設置された複数の第1の受振手段により測定するステップと、(b)前記第1の受振手段の測定値に基づいて反射波形を抽出するステップと、(c)前記発破により生じた地震波を地表に設置された複数の第2の受振手段により測定するステップと、(d)前記第2の受振手段の測定値に基づいてトモグラフィ法の解析処理により前記トンネルの切羽前方の地山の弾性波速度を計算し、速度モデルを作成した後、前記速度モデルに基づいて反射波の理論走時を計算するステップと、(e)前記(b)ステップで得られた反射波形のデータと、前記(d)ステップで得られた理論走時を用いて反射エネルギー分布を形成した後、前記反射エネルギー分布から速度境界面の位置を抽出するステップと、(f)前記(e)ステップで得られた速度境界面の位置のデータの収束判定を実施し、収束しない場合は収束するまで、前記(e)ステップで得られた速度境界面の位置のデータを用いて前記(d)ステップを実施し、そこで得られた理論走時の計算結果を用いて前記(e)ステップを実施することを繰り返すステップと、を有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1記載の発明において、前記(e)ステップの後、収束判定の前に、前記(e)ステップで算出された速度境界面の位置のデータが1回目の算出データの場合は、収束判定をせずに、前記(e)ステップで算出された速度境界面の位置のデータを用いて前記(d)ステップを実施し、そこで得られた理論走時の計算結果を用いて前記(e)ステップを実施することを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、上記請求項1または2記載の発明において、前記トンネルの切羽の発破毎に前記(a)〜(f)のステップを実施し、発破毎に断層帯の最適な速度境界面位置および弾性波速度のデータを算出し、その算出データを前記発破が実施される度に更新することを特徴とする。
本発明によれば、トンネルの切羽前方の断層帯の速度境界位置および地山の弾性波速度の測定精度を向上させることができるので、トンネルの切羽前方の探査精度を向上させることが可能になる。
本発明の一実施の形態に係るトンネル切羽前方探査時におけるトンネル坑内の平面図である。 図1のトンネル切羽前方探査時に用いた探査装置を構成する受振器の要部拡大側面図である。 図1のトンネル切羽前方探査により計測した発破地震波形の一例の波形図である。 図1のトンネル切羽前方探査により得られた波形データの処理手順を示すフロー図である。 図1のトンネル切羽前方探査により得られた波形データに対するイメージング処理の説明図である。 本発明の一実施の形態に係るトンネル切羽前方探査フロー図である。 (a)は反射法における受振器の配置と波線経路とを示す説明図、(b)はトモグラフィ法における受振器の配置と波線経路とを示す説明図である。 反射法による解析結果を示す説明図である。 トモグラフィ法による解析結果を示す説明図である。 (a)は図9に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図、図(b)は図10(a)のI−I線断面の速度分布を示すグラフである。 図10(a)に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図である。 図11に続く反射法による解析結果を示す説明図である。 図12に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図である。 図13に続く反射法による解析結果を示す説明図である。 数値計算モデルの地層構造外観を示すグラフである。 速度境界面とトンネルとの位置関係を示すグラフである。 波動伝播の数値シミュレーションから求めた発振点に最も近い受振点の計算波形図である。 図8の計算波形を図4で示したデータ処理により求めた反射波形図である。 従来方法であって探査区間の伝播速度である弾性波速度を用いて求めた反射エネルギーの分布を示すグラフである。 本実施の形態のトンネル切羽前方探査方法であってトンネル切羽前方の弾性波速度を利用し、差分法による走時を用いて反射エネルギーを求めた結果を示すグラフである。 実験現場の地質縦断図である。 トンネルの切羽から46.2m離れた受振器で計測した切羽進行10m(探査発破10回)分の波形図である。 反射エネルギーの評価断面図である。 従来の方法による反射エネルギーの分布である。 弾性波探査の弾性波速度を利用して差分法の走時を用いた反射エネルギーの分布である。 図11において地山を区分けしたセルの状態の一部を拡大して示した説明図である。
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
発破掘削時の振動を利用したトンネル切羽前方探査方法
反射法の計測概要
図1は本実施の形態に係るトンネル切羽前方探査時におけるトンネルの平面図、図2は図1のトンネル切羽前方探査時に用いた探査装置を構成する受振器の要部拡大側面図である。
本実施の形態のトンネル切羽前方探査方法においては、例えば、トンネルHを掘削するための発破を発振点とし、反射法による処理と、トモグラフィ法による処理との両方を用いてトンネルHの切羽Kの前方の低速度層(断層帯)D等を探査する。この場合、トンネルHの掘削のための発破を発振点とするので、トンネルHの切羽前方の探査の発振点を別に設ける場合に比べて、トンネルHの掘削効率を向上させることができる。また、反射法とトモグラフィ法との両方の解析データを使用することにより、トンネルHの切羽前方の探査精度を向上させることができる。
反射法による探査処理では、例えば、多点発振−多点受振で行い、トンネルHの切羽Kの後方の位置P1,P2間の範囲にある複数個のロックボルトRBの各々の頭部に受振器S1を取り付けて発破振動を計測する。なお、切羽Kの位置Pkから位置P1までの距離は、例えば45m、位置P1から位置P2までの距離は、例えば15mである。
受振器S1は、例えば、トンネルHの坑壁の片側側面においてトンネル軸方向に沿って所定の間隔毎に一列に設置された12個のロックボルトRBの各々の頭部に装着されている。ロックボルトRBは、トンネルHの支保用具であり、トンネルHの坑壁面内において複数のトンネル軸方向線と複数のトンネル周方向線との交点に設置されている。各ロックボルトRBは、トンネルHの坑壁面に対して直交した状態で地山の地盤Gに打設されており、各ロックボルトRBの頭部に螺合されたナットN1(図2参照)により固定されている。なお、受振器S1の配置は上記したものに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、トンネルHの坑壁面において周方向線に沿って90度ずつ離れた位置に配置するとともに、トンネル軸方向に沿って所定の間隔毎に配置しても良い。これにより、受振点を増やすことができるので、受振精度を向上させることができる。
受振器S1をロックボルトRBの頭部に装着した理由は、例えば、一般的にロックボルトRBの材質が振動を伝え易い鉄であることからウェーブガイド(導波棒)としての機能を期待できること、トンネルHの坑壁に新たに削孔して受振器S1を設置する必要が生じないので計測の準備作業を軽減できること等の利点からである。そのため、受振器S1の設置は、図2に示すように、ナットN2に固定加工した受振器S1をロックボルトRBの頭部に取り付けることにより行った。また、受振器S1には、ロックボルトRBの軸方向の振動を感度良く計測するため、例えば、共振周波数が高い28Hzの可動線輪型(MC型)の速度地震計を用いた。各受振器S1の感度は、例えば、35.4V/m/sである。また、各受振器S1は、通信ケーブル等を通じて記録装置Mに電気的に接続されている。
記録装置Mは、受振器S1で得られた波形データを記録する装置である。この記録装置Mとしては、例えば、入力チャンネル数が16ch、AD(Analog/Digital)分解能が24ビット、サンプリング周波数が12kHzの地震波記録装置が使用されている。記録装置MはトリガボックスTBを介して発破器(図示せず)と電気的に接続されている。記録装置Mは電源が入ると計測ソフトが起動し、事前に設定した計測条件でトリガー待ちの状態になる。発破時に発破器からトリガー信号を取り込むと、波形の取り込みを開始し、例えば、12kHzのサンプリング周波数で7秒間の計測データを収録する。なお、計測データ収録後、USBケーブル等を通じて記録装置Mを探査装置のコンピュータに接続し、そのコンピュータのメモリに計測データを保存するようになっている。
探査は、トンネルHの切羽Kの中央部に削孔した探査用の装薬孔に瞬発***を使用した少量の爆薬(親ダイ)を挿入しておき、掘削発破時に先行させて発破することにより探査に使用する振動を発生させて行う。
図3は図1のトンネル切羽前方探査により計測した発破地震波形の一例の波形図である。
本実施の形態においては、トンネル掘削のための芯抜き発破の時間T1の前に、瞬発***を用いて切羽中央部で探査用の小規模な発破を行い、2段目の芯抜き発破の振動が受振器S1に到達するまでの時間T2(180ms程度)の地震波形のうち、切羽前方100m程度の地山予測に必要な時間T3(100ms程度)の波形データを探査に用いる。10回の切羽進行分の発破振動を継続的に収録し、収録データから探査発破の波形データを切り出して、反射波のデータ処理およびトモグラフィ法によるデータ処理を行う。
反射法探査のデータ処理
図4は図1のトンネル切羽前方探査により得られた波形データから反射波形を抽出する処理手順を示すフロー図である。
探査終了後、探査装置内のコンピュータのメモリに保存した波形データを解析用のコンピュータに転送し、図4に示す処理手順で波形データ処理を行い、反射波形を抽出する。これは、記録装置Mで収録された波形データには、トンネルHの切羽前方の速度境界面からの反射波の他に、発振点から受振点までの直接波や探査地点後方からの反射波、さらにはノイズ等が含まれているので、図4に示すデータ処理によって、これらを取り除くためである。以下、図4のデータ処理について説明する。
まず、記録装置Mで収録された波形データから初動の立ち上がりを取り出すことで、発振点からトンネルHの坑壁を通じて伝播する弾性波速度(Vp)を算出する(ステップ102a)。ここでは、弾性波速度は、例えば、4.6km/sである。
続いて、記録装置Mで収録された波形データからバンドパスフィルタによりノイズを除去した後(ステップ102b)、反射波の振幅が発振点からの距離に応じて減衰することを考慮して、距離による減衰が無いように球面発散補正により反射波の振幅を高める(ステップ102c)。
続いて、メディアンフィルタおよびFKフィルタ等により直接波(第一波(Primary Wave:以下、P波という)および第二波(Secondary Wave:以下、S波という))を除去した後(ステップ102d,102e)、反射波の波形を明確にするために反射波の振幅を増大(抽出)する(ステップ102f)。
続いて、ステップ102fの振幅増大によりノイズも増大するので、そのノイズをバンドパスフィルタにより除去した後(ステップ102g)、各波形の時間軸を補正した状態で波形同士を重ねることで反射波の振幅を大きくする(ステップ102h)。
このようにして得られた反射波形を用いて、後述の方法により、トンネルHの切羽前方の低速度層Dの速度境界面(反射面)の位置等を特定する。
差分法による走時を用いた反射エネルギー評価
図5は図1のトンネル切羽前方探査により得られた波形データに対するイメージング処理の説明図である。
イメージング処理には、図5に示すディフラクションスタック(Diffraction Stack:以下、DSという)法を用いた。DS法では、トンネルHの切羽前方および周辺地山を含む3次元座標空間に一定間隔で仮想の格子点GPを設け、発振点SPから広がった波がその格子点GPにおいて反射して受振点RP(受振器S1が設置された箇所)に戻ると仮定する。
1ヶ所の発振点SPから発生した弾性波が、ある格子点GPで反射して受振点RPに到達する場合、波線理論から地山の弾性波速度に応じて弾性波の伝播経路が求まり、この走時(伝播時間)が発振点SPから格子点GPまでの走時TSと、受振点RPから格子点GPまでの走時TRとを合計した走時TSR(走時TS+走時TR)として計算できる。この伝播時間から、その格子点GPに対応する波形トレース上での位置が特定できる。それらの位置での波形振幅(片振幅)を合算した値を無次元化し、反射エネルギー(反射波振幅の2乗)を求めて、格子点GPに与える。ここで、1つの反射エネルギーは、発振点SPと受振点RPとを焦点とする楕円曲面の軌跡上に卓越して分布する。
もし、ある格子点GPが実際の反射点に相当すれば、この格子点GPの反射エネルギーが大きい値を示す。これらの格子点GPに接する平面を速度境界面として特定することができる。さらに、反射エネルギーの正負から、境界前後での物性の変化が分かる。すなわち、反射エネルギーが正の場合には、境界面の前後で物性が硬質から軟質に変化し、負の場合には、軟質から硬質に変化することになる。
ここで、従来の方法は、発破した地山区間の弾性波速度のみを用いて速度境界面の位置を予測するため、トンネルHの切羽前方の地山に弾性波速度の異なる層があると速度境界面の位置を精度良く求めることができない。そこで、本実施の形態においては、上記反射法により得られる速度境界面の位置の情報と、トモグラフィ法等により得られる速度分布の情報との両方を用いてトンネルHの切羽前方の地山の状態を探査する。以下、その具体例について図6のフロー図に沿って図7〜図14を参照して説明する。
反射法およびトモグラフィ法での観測状態の説明
図7は本実施の形態のトンネル切羽前方探査における受振器の配置と波線経路とを示している。本実施の形態のトンネル切羽前方探査法においては、トンネルHの掘削のための発破を反射法およびトモグラフィ法の両方で用いる発振点とし、トンネルH内の複数の受振器S1を反射法で用いる受振点とし、地山Yの地表の複数の受振器S2をトモグラフィ法で用いる受振点とする。
まず、図7(a)は反射法における受振器の配置と波線経路とを示している。反射法の測定では、図1で説明したように、トンネルHの掘削のために切羽で実施する発破を発振点とし、低速度層Dの速度境界面からの反射波をトンネルH内の複数個の受振器S1で測定する。
一方、図7(b)はトモグラフィ法における受振器の配置と波線経路とを示している。トモグラフィ法による測定では、トンネルHの掘削のために切羽で実施する発破を発振点とし、トンネルHの切羽で発破により生じた弾性波を地山Yの地表の複数個の受振器S2で測定する。
なお、発破によるトンネルHの掘削作業において、掘削長が所定の長さ(例えば、50m)になる度に、受振器S1,S2の設置位置をトンネルHの掘削方向に向かって移動する。
トンネル切羽前方探査方法の具体例の説明
まず、反射法については、所定回数の事前測定が必要なので、反射法とトモグラフィ法との両方を用いた探査処理に先立って、トンネルHの掘削ための所定回数(例えば、10回)の発破の度に反射法による反射波の測定を実施する。なお、この際、トモグラフィ法による測定については実施しても良いし、実施しなくても良い。
続いて、図6の右側の反射法の処理では、トンネルHの掘削のための第1の発破(反射法およびトモグラフィ法の両方法を実施する最初の発破)により生じた発破地震波をトンネルH内の受振器S1で測定し、解析用のコンピュータに転送して、その観測波形データから反射波形を抽出する(図6のステップ100〜102)。また、同時に、発振点および受振点の位置座標データを解析用のコンピュータに入力する(図6のステップ103)。なお、反射波形の抽出処理は、図4で説明したので説明を省略する。
続いて、トンネルHの切羽前方の地山の弾性波速度は既知か否かを判定する(図6のステップ104)。すでに屈折法弾性波探査やトモグラフィ法を実施しているなどで既知の場合は、その弾性波速度を用いて理論走時を計算し(図6のステップ105)、さらにその理論走時の計算結果を用いてイメージング処理により反射エネルギー分布を作成し(図6のステップ107)、その反射エネルギー分布から地山Yb(低速度層D)の速度境界面を抽出する(図6のステップ108)。一方、ステップ104で既知でない場合は、図8に示すように、トンネルHの切羽前方の全体が切羽付近の地山Yaの速度Vaであると仮定し(図6のステップ106)、その速度Vaを用いて理論走時を計算し(図6のステップ105)、さらにその理論走時の計算結果を用いてイメージング処理により反射エネルギー分布を作成し(図6のステップ107)、その反射エネルギー分布から地山Yb(低速度層D)の速度境界面RS1,RS2を抽出する(図6のステップ108)。なお、図8は反射法による解析結果を示す説明図である。
その後、反射法の測定が1回目か否かを判定する(図6のステップ109)。1回目でなければ、収束している(地山Yb(低速度層D)の反射境界面RS1,RS2が前回と同じ)か否かの判定(図6のステップ110)に移行するが、ここでは、1回目なので、図6の左側のトモグラフィ解析処理フローの♯1に移行し、反射法で得られた地山Yb(低速度層D)の速度境界面RS1,RS2の位置の情報を、トモグラフィ法での初期速度モデルを作成する情報として使用する。
一方、図6の左側のトモグラフィ解析処理(図6の左側)では、トンネルHの掘削のための上記第1の発破により生じた地震波を地山Yの地表の受振器S2で測定し、解析用のコンピュータに転送して、その観測波形データから初動走時を読み取り、走時曲線を作成する(図6のステップ200〜202)。同時に、発振点および受振点の位置座標データを解析用のコンピュータに入力する(図6のステップ203)。
続いて、解析条件の入力データのデータセットを作成し(図6のステップ204)、そのデータと、反射法で得られた地山Ybの速度境界面RS1,RS2の位置の情報とを用いて、解析領域を格子状のセルに分割し、セルごとに弾性波速度を設定した初期速度モデル(以下、単に速度モデルという)を作成する(図6のステップ205)。速度モデルは、図9に示すように、発破を振源として求めた地山Yaの弾性波速度をVaに固定し、また、地山Ybおよび地山Ycの速度を、上記反射法で求めた反射エネルギーの結果(速度境界面RS1,RS2の位置情報)から推定してトモグラフィ解析を行い、地山Ybと地山Ycのセルの弾性波速度を求める。この場合、地山Yb,Ycの各々の弾性波速度は、他の屈折法から推定しても良いが、他の屈折法を行っていない場合は、地山Yb,Ycの各々の弾性波速度の値が分からないので地山Yaの弾性波速度Vaと仮定する。
このトモグラフィ解析の結果、図10(a)に示す地山Ybの各セルの弾性波速度および地山Ycの各セルの弾性波速度が求まる。これにより、図10(b)に示すように、トンネルHの切羽前方の地山Yにおける速度分布が得られる。なお、地山Yaの各セルの弾性波速度は上記したVaである。また、図10(a)は図9に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図、図10(b)は図10(a)のI−I線断面の速度分布を示すグラフである。
続いて、図11および図26に示すように、地山Yの区分(セル)毎の弾性波速度を求める。すなわち、トモグラフィ解析の結果から地山Ybの領域の平均弾性波速度Vb’を下記の数式により求める。
Figure 0006584010
ただし、Vb(i)は地山Ybの領域の各セルiの弾性波速度、Ab(i)は地山Ybの領域のセルiの面積、nは地山Ybの領域のセルiの個数である。
また、地山Ycの領域の平均弾性波速度Vc’を下記の数式により求める。
Figure 0006584010
ただし、Vc(i)は地山Ycの領域の各セルiの弾性波速度、Ac(i)は地山Ycの領域のセルiの面積、nは地山Ycの領域のセルiの個数である。
なお、図11は図10(a)に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図である。また、図26は図11において地山を区分けしたセルの状態の一部を拡大して示した説明図である。図26の符号SFは地表面である。また、図26において、Va(i)は地山Yaの領域の各セルiの弾性波速度、Aa(i)は地山Yaの領域のセルiの面積、nは地山Yaの領域のセルiの個数である。
続いて、速度モデルに対して、全ての発振点(発破位置)および受振点(受振器S2)のペアについて観測されるであろう初動走時の理論値である理論走時を計算する(図6のステップ206)。続いて、各発振点および受振点のペアの観測走時と理論走時との差を計算する(図6のステップ207)。そして、観測走時と理論走時との差によって収束判定を実施する(図6のステップ208)。すなわち、理論走時と観測走時との差が最小となるようにインバージョンとレイトレーシングを繰り返して速度モデルを更新する(図6のステップ209)。そして、観測走時と理論走時との走時残差が許容値よりも小さくなるまでステップ206〜209を繰り返す。一方、観測走時と理論走時との走時残差が許容値よりも小さい場合は、その時点までに求められた速度分布断面が、観測走時をほぼ満足するものであると考えられ反復計算を終了する。なお、このトモグラフィ法における最終の速度分布断面の表現は、対象断面を長方形のセルに分割して、各セルに速度値を割り当て、各セルの速度値に応じた濃淡表示あるいはカラー表示で色分けすることで速度分布を視覚的に容易に把握できるようにしても良い。
次いで、上記のようにしてトモグラフィ解析のステップ208で収束判定がなされたら、そこで得られた理論走時と、反射法の波形処理で求めた反射波形のデータとを用いてイメージング処理により反射エネルギー分布を作成し(図6のステップ107)、その反射エネルギー分布から速度境界面を抽出し(図6のステップ108)、図12に示すように、新たに地山Ybの速度境界面RS3,RS4の位置を求める。なお、図12は図11に続く反射法による解析結果を示す説明図である。
続いて、反射法の測定が1回目か否かを判定する(図6のステップ109)。ここでは1回目でないので、新たに求められた速度境界面の収束判定を実施する(図6のステップ110)。ここでは、例えば、反射法の収束判定のステップ110で収束していないとする。その場合は、反射法で求めた新たな速度境界面RS3,RS4の位置の情報と、トモグラフィ法の入力データセット(図6のステップ204)の情報とを用いて、トモグラフィ解析の速度モデルを作成する(図6のステップ205)。このとき、新たな速度境界面RS3,RS4で区分けした地山毎の速度を各領域内の平均速度に設定する(図6のステップ210)。
続いて、ここで求められた速度モデルに対して、上記と同様に、全ての発振点(発破位置)および受振点(受振器S2)のペアについて観測されるであろう初動走時の理論値である理論走時を計算し(図6のステップ206)、各発振点および受振点のペアの観測走時と理論走時との差を計算し(図6のステップ207)、観測走時と理論走時との差によって収束判定を実施する(図6のステップ208)。すなわち、上記と同様に、収束していない場合は、速度モデルを修正し(図6のステップ209)、観測走時と理論走時との走時残差が許容値よりも小さくなるまでステップ206〜209を繰り返す一方、収束している場合は、その時点までに求められた速度分布断面が観測走時をほぼ満足するものであると考えられ反復計算を終了する。このトモグラフィ解析の結果、図13に示す地山Ybと地山Ycの各セルの弾性波速度が求まる。なお、図13は図12に続くトモグラフィ法による解析結果を示す説明図である。なお、この段階の最終の速度分布断面を上記したのと同様に各セルの速度値に応じた濃淡表示あるいはカラー表示で色分けしても良い。
次いで、上記のようにしてトモグラフィ解析のステップ208で収束判定がなされたら、そこで得られた速度モデルに基づいて反射波の理論走時を計算し(図6のステップ105)、前記の反射波の理論走時と、反射法の波形処理で求めた反射波形のデータとを用いてイメージング処理により反射エネルギー分布を作成し(図6のステップ107)、その反射エネルギー分布から速度境界面を抽出し(図6のステップ108)、図14に示すように、新たに地山Ybの速度境界面Rs5,Rs6の位置を求める。
続いて、収束判定を実施し(図6のステップ110)、この時に求めた速度境界面RS5,RS6の位置と、図12で求めた速度境界面RS3,RS4の位置(格子点間の幅)とが同じ場合は処理を終了し、そうでない場合は、上記と同様に、反射法で求めた新たな速度境界面RS5,RS6の位置の情報と、トモグラフィ法の入力データセット(図6のステップ204)の情報とを用いて、再度、トモグラフィ解析により速度モデルを作成するステップ205に戻り、上記と同様の処理を繰り返す。なお、図14は図13に続く反射法による解析結果を示す説明図である。
なお、従来の反射法の解析では、地山の弾性波速度が一定であるとして直線の伝播経路を用いているため、低速度層Dの層厚が大きくなったり、速度変化が大きくなると予測誤差が増大したりするのに対し、本実施の形態によるトンネル切羽前方探査においては、走時をアイコーナルの式を差分法により計算して速度境界面で屈折する伝播経路を考慮できるため、複雑な速度構造でも低速度層Dの速度境界面位置および弾性波速度の測定精度を向上させることができる。したがって、トンネルHの切羽前方の探査精度を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、上記のようなトンネルHの切羽前方の探査方法をトンネルHの掘削のための発破毎(切羽毎)に実施し、その時々での最適な低速度層Dの速度境界面位置および弾性波速度を求めてデータの更新を実施する。これにより、トンネルHを掘り進める度に、発振点を増やすことができ、測定データを増やすことができるので、トンネルHの切羽前方における低速度層Dの速度境界面位置および弾性波速度の測定精度を向上させることができる。したがって、トンネルHの切羽前方の探査精度をさらに向上させることができる。
数値シミュレーションによる探査性能の検証
ここで、数値モデルを用いて差分法によるP波の3次元波動伝播現象の数値シミュレーションを行い、計算により求めた波形を用いて速度境界面を予測し、解析モデルの速度境界面との比較から、本実施の形態の探査法を検証する。
計算モデル
図15は数値計算モデルの地層構造外観を示すグラフ、図16は速度境界面とトンネルとの位置関係を示すグラフである。
計算は、図15および図16に示すように、例えば、トンネル断面方向(x)に100m、トンネル軸方向(y)に140m、高さ方向(z)に100mの範囲を解析領域として、格子点間隔が全ての方向で1mになるように分割数を決めた。
トンネルHの周辺の弾性波速度が4.6km/sである地山に、層厚が20mの低速度層(弾性波速度 Vp=3.0km/s)Dが、トンネルHの切羽Kから前方に向かって距離L1(例えば57m)の位置で、トンネル断面方向に対して水平方向に30度程度の走向角θ1、鉛直方向に60度の傾斜角θ2の角度で交差する3次元モデルを用いた。弾性波速度の差が発生する速度境界面のうち、切羽K側を第1速度境界面RSa、切羽Kから離れた速度境界面を第2速度境界面RSbとする。受振点RP(図5参照)は、例えば、幅員10mのトンネルHの坑壁に切羽Kから15〜26m範囲の1m間隔に12点とした。また、発振点SP(図5参照)は、例えば、トンネルHの切羽Kから掘削進行方向に1〜25m範囲の発破(1m間隔)に相当する25点とした。計算モデル境界での反射波の発生を抑えるため、モデル境界には透過境界条件を与えた。計算の時間ステップは、例えば、探索の計測サンプル時間と同じ80μsとした。この時間ステップは差分計算の安定条件を満足している。
計算波形のデータ処理方法について以下に示す
図17は波動伝播の数値シミュレーションから求めた発振点に最も近い受振点の計算波形図である。計算波形では、発振点SPから受振点RPに直接到達する直接波DWが確認できるが、トンネルHの切羽前方の速度境界面からの反射波(第1反射波RW1および第2反射波RW2)は距離減衰により振幅が小さくなるため、明瞭に確認できない。なお、直接波DW、第1反射波RW1および第2反射波RW2は、いずれもP波である。
図18は図17の計算波形を図4で示したデータ処理により求めた反射波形図である。直接波DWが取り除かれ、反射波(第1反射波RW1および第2反射波RW2)を明瞭に確認することができる。このうち、第1反射波RW1は走時から切羽前方に向かって57mの第1速度境界面RSaによる反射である。一方、第2反射波RW2は直接波DWと逆位相で伝播しており、第2速度境界面RSbによる反射波である。後続にも振幅が小さい反射波を確認できるが、これらの速度境界面で重複した反射波であると推察できる。
反射波のイメージング処理と速度境界面の特定
計算波形のデータ処理から求めた120の反射波形(12(受振点数)×10(発振点数))を用いてDS法により3次元座標空間に反射エネルギーのイメージング処理を行う。
図19は従来方法であって探査区間の伝播速度である直接波の弾性波速度(=4.6km/s)を用いて求めた反射エネルギーの評価を示すグラフである。図中には解析モデルの第1速度境界面RSaおよび第2速度境界面RSbの位置を示す。トンネルHの切羽Kに近い弾性波速度が4.6km/sから3.0km/sに変化(すなわち、硬質から軟質に変化)する第1速度境界面RSaの予測Eaでは、反射エネルギーの大きいプロットが第1速度境界面RSaの付近に集中して正しい位置に評価している。一方、トンネルHの切羽Kから離れた弾性波速度が3.0km/sから4.6km/sに変化(すなわち、軟質から硬質に変化)する第2速度境界面RSbの予測Ebでは、解析モデルで設定した位置から前方に向かって距離L2(例えば10.6m)だけ離れた位置にプロットが集中し、20mである低速度層の幅Wを30.6mと間違った評価をしている。
これに対して、図20は本実施の形態のトンネル切羽前方探査方法であってトンネル切羽前方の弾性波速度を利用し、差分法による走時を用いて反射エネルギーを求めた結果を示すグラフである。トンネルHの切羽Kの前方に近い硬質から軟質に変化する第1速度境界面RSaの予測Eaでは、従来の方法と同じ評価になる。一方、トンネルHの切羽Kから離れた軟質から硬質に変化する第2速度境界面RSbの予測Ecでは、第2速度境界面RSbの位置付近にプロットが集中して正しい位置に評価している。
以上から、差分法による走時を用いて反射エネルギーを求める本実施の形態のトンネル切羽前方探査方法では、解析モデルの速度境界面付近に反射エネルギーが集中し、速度境界面の位置を精度良く評価できることを確認した。このため、トンネルHの切羽Kの前方の低速度層Dの位置、幅および弾性波速度等に関する情報を事前に的確に把握することができるので、支保の変更や補助工法の適用等のような対策を充分に立てることができる。また、トンネルHの切羽Kの前方の探索作業が、掘削施工自体を大きく阻害することもない。したがって、短期間で安全かつ経済的にトンネルHを掘削することができる。
適用現場と周辺の地質状況
図21は実験現場の地質縦断図である。
ある道路トンネルにおいて現場実験を行った。地質は、古生代ペルム期の北鈴鹿層群を基盤岩とし、火成岩(緑色岩類)・チャート・粘板岩が分布する。実験は、図21に示す終点側坑口の位置Ppから140m手前のトンネルHの坑内で行った。トンネルHの切羽Kの位置Pkから坑口の位置Ppが探査範囲である。発振点SPの位置は、切羽進行に伴い前方(図21の右方向)に移動する。
図中には、事前の屈折法探査による弾性波速度分布の結果を示す。坑口部にかけての低土被り部は、地盤Gの上部に2.6km/sおよび1.0km/sの低速度層D1,D2が下層から順に存在する。なお、符号SFは地表、符号RScは下部の速度境界面(下部速度境界面)、符号RSdは上部の速度境界面(上部速度境界面)を示している。地盤Gは、例えば、弾性波速度が4.6km/sのCMからCH級岩盤で構成される。
トンネルHと抗口部の地質構造位置の関係からトンネルHの切羽Kの位置Pkが切羽前方(トンネル軸方向)の速度境界面よりも切羽上部の速度境界面に近いため、切羽上部からの反射波の影響が大きくなると予想される。そのため、実験ではトンネルHの上部の速度境界面と反射エネルギー分布の比較からトンネル切羽前方探査方法の性能を検証する。
波形データ処理
図22はトンネルの切羽から46.2m離れた受振器で計測した切羽進行10m(探査発破10回)分の波形図である。探査発破は、例えば、爆薬量(200g)を使用して行った。その波形形状は同じであり、発破条件が同じであったことがわかる。なお、初動走時から求まる弾性波速度Vpは4.6km/sであり、屈折法による弾性波速度と一致している。
探査結果
図23は反射エネルギーの評価断面図である。速度境界面の評価は、図23に示すように、空間(例えば100m×160m×140m)を1m間隔で離散化した格子点で反射エネルギーを求める。反射エネルギーは、トンネルHの中心を通る鉛直断面で評価した。
図24は従来の方法による反射エネルギーの分布であり、図25は弾性波探査の弾性波速度を利用して差分法の走時を用いた反射エネルギーの分布である。実際は色彩が示される。ここでは色彩を示していないが、暖色になるほど硬質から軟質に変化する反射が強く、寒色になるほど軟質から硬質に変化する反射が強いことを表す。図中には弾性波探査による速度境界面(下部の速度境界面RScおよび上部の速度境界面RSd)を重ねて示している。
図24に示すように、従来の解析法による反射エネルギーは、発振点SPと受振点RPとを焦点とする楕円状に分布しており、速度境界(下部の速度境界面RScおよび上部の速度境界面RSd)と整合していない。これに対して、図25に示すように、差分法の走時を用いた反射エネルギー分布は、トンネルHの切羽周辺の地表SF、下部の速度境界面RScおよび上部の速度境界面RSdなどの速度境界面と整合する分布になっており、弾性波速度の異なる地山が存在する場合でも速度境界面を正しい位置に予測できることが分かる。この結果、従来の方法では予測が難しかったトンネルHが速度境界面に鋭角に交差する場合でも速度境界面の位置を精度良く評価できることが可能である。
以上から、開発したトンネル切羽前方探査法が複雑な地質構造で、弾性波速度が変化する地山においても速度境界面の予測に有効である。このため、トンネルHの坑口近傍(低土被り部)のように地形や地質構造が複雑な箇所であっても、その状態を事前に早期にかつ的確に把握することができるので、支保の変更や補助工法の適用等のような対策を充分に立てることができる。したがって、短期間で安全かつ経済的にトンネルHを掘削することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば、掘削発破の振動を利用して、GPS(Global Positioning System)の時刻情報をもとに、坑内の発振時刻と、地表に設置した受振器の受振時刻とから走時を求め、弾性波探査の計測データと合わせてトモグラフィ解析を行い、トンネルの切羽前方の地山の弾性波速度を求めても良い。この弾性波速度を本実施の形態の探査法に適用することにより、信頼性の高いトンネル切羽前方の地山の把握が可能になる。
また、上記の説明では、トンネル内での発破を発振源として地山表面に設けた受振器で地震波を測定するトモグラフィ法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、地山表面での発破を発振源として地山表面に設けた受振器で地震波を測定する屈折法におけるトモグラフィ法を用いても良い。
以上のように、本発明に係るトンネル切羽前方探査方法は、地山に対して発破によりトンネルを掘削する際に、発破により生じた弾性波を用いてトンネル切羽前方の断層帯を探査するトンネル切羽前方探査方法に適用して有効である。
Y 地山
G 地盤
H トンネル
K 切羽
D,D1,D2 低速度層
S1,S2 受振器
RB ロックボルト
N1,N2 ナット
M 記録装置
TB トリガボックス
SP 発振点
RP 受振点
GP 格子点
RS1〜RS6 速度境界面
RSa 第1速度境界面
RSb 第2速度境界面
RSc 下部の速度境界面
RSd 上部の速度境界面
RW1 第1反射波
RW2 第2反射波

Claims (3)

  1. (a)トンネル切羽前方の地山に対してトンネルを掘削するための発破により生じた地震波によって前記トンネルの切羽前方の断層帯から反射する反射波を、前記トンネルの坑壁に設置された複数の第1の受振手段により測定するステップと、
    (b)前記第1の受振手段の測定値に基づいて反射波形を抽出するステップと、
    (c)前記発破により生じた地震波を地表に設置された複数の第2の受振手段により測定するステップと、
    (d)前記第2の受振手段の測定値に基づいてトモグラフィ法の解析処理により前記トンネルの切羽前方の地山の弾性波速度を計算し、速度モデルを作成した後、前記速度モデルに基づいて反射波の理論走時を計算するステップと、
    (e)前記(b)ステップで得られた反射波形のデータと、前記(d)ステップで得られた理論走時を用いて反射エネルギー分布を形成した後、前記反射エネルギー分布から速度境界面の位置を抽出するステップと、
    (f)前記(e)ステップで得られた速度境界面の位置のデータの収束判定を実施し、収束しない場合は収束するまで、前記(e)ステップで得られた速度境界面の位置のデータを用いて前記(d)ステップを実施し、そこで得られた理論走時の計算結果を用いて前記(e)ステップを実施することを繰り返すステップと、
    を有することを特徴とするトンネル切羽前方探査方法。
  2. 前記(e)ステップの後、収束判定の前に、前記(e)ステップで算出された速度境界面の位置のデータが1回目の算出データの場合は、収束判定をせずに、前記(e)ステップで算出された速度境界面の位置のデータを用いて前記(d)ステップを実施し、そこで得られた理論走時の計算結果を用いて前記(e)ステップを実施することを特徴とする請求項1記載のトンネル切羽前方探査方法。
  3. 前記トンネルの切羽の発破毎に前記(a)〜(f)のステップを実施し、発破毎に断層帯の最適な速度境界面位置および弾性波速度のデータを算出し、その算出データを前記発破が実施される度に更新することを特徴とする請求項1または2記載のトンネル切羽前方探査方法。
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