以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を具体的に説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、本発明の実施形態1に係る土壌浄化システムSにおいては、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物、ないしはこれらのイオン)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ1に受け入れられる。なお、有害金属としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素などが挙げられる。
そして、投入ホッパ1内の土壌は、連続的又は間欠的に混合器2に投入され、混合器2に連続的に供給される洗浄水と混合される。ここで、土壌は、礫(例えば、粒径2〜75mmのもの)と、砂(例えば、粒径0.075〜2mmのもの)と、細粒分(例えば、粒径0.075mm以下のもの)とを含み、場合によっては石(例えば、粒径75mm以上のもの)を含むものである。
混合器2で生成された土壌と洗浄水とを含む混合物(以下「土壌・水混合物」という。)は、湿式破砕機であるミルブレーカ3に移送される。ミルブレーカ3としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッド(例えば、10本の75mmφ×2mのスチールロッド)が配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により礫及び砂を(場合によっては石も)破砕して細粒分等の小径の土壌粒子を生成することができるものである。ミルブレーカ3として、ロッドミルのほかにボールミルなども用いることができる。なお、礫及び砂は、その一部が細粒分になるのであって、すべてが細粒分になる訳ではない。
かくして、ミルブレーカ3は、混合器2から排出された土壌・水混合物中の礫及び砂を(場合によっては石も)破砕して細粒分等の小径の土壌粒子を生成する。これにより、礫及び砂に吸着され(付着し)又は含まれていた有害金属等が水中に離脱する。このとき、基本的には(後記の鉄等による吸着はさておき)、水中に離脱した有害金属等は、礫及び砂にはほとんど吸着されず、ないしは付着せず、細粒分に集約して吸着され、ないしは付着する(例えば、非特許文献1参照)。
さらに、礫及び砂の内部に存在ないしは偏在又は点在していた鉄等(鉄及び/又は酸化鉄)の微小塊が表面に露出する多数の鉄系細粒分が生成される。一方、一般に鉄等は有害金属等を吸着する性質がある。このため、洗浄水中に存在する有害金属等の一部ないしは大部分が鉄系細粒分の鉄等の露出面に吸着され、ないしは付着する。その結果、鉄系細粒分の有害金属等の吸着量(付着量)は、非鉄系細粒分の有害金属等の吸着量(付着量)よりかなり多くなる。つまり、ミルブレーカ3から排出される細粒分は、有害金属等の吸着量(付着量)が多い鉄系細粒分と、有害金属等の吸着量(付着量)が少ない非鉄系細粒分とで構成される。なお、破砕以前から存在する鉄系細粒分も、非鉄系細粒分に比べてかなり多くの有害金属等を吸着しているのはもちろんである。
このように有害金属等を吸着している鉄系細粒分は、後で説明するように、鉄分除去装置12によって除去される。一方、鉄等(鉄及び/又は酸化鉄)が有害金属等を吸着する性質を有することは一般に知られており、この性質を利用して、有害金属等を含むスラッジに鉄粉ないしは酸化鉄の粉末を添加することにより、スラッジから有害金属等を除去するようした「鉄粉法」が種々提案されている(例えば、特許文献3〜4、非特許文献2参照)。しかしながら、本発明のように、礫及び砂を破砕することにより、表面にフレッシュな(まだ有害金属等を吸着していない)鉄等の微小塊が露出した鉄系細粒分を生成し、これらの露出した鉄等の微小塊(鉄系細粒分)に有害金属等を吸着させるようにした有害金属等の処理手法は提案されていない。
ミルブレーカ3から排出された土壌・水混合物はトロンメル4に導入される。トロンメル4は、詳しくは図示していないが、水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸(円筒の中心軸)まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、洗浄水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
トロンメル4の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、洗浄水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。
このトロンメル4では、ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、粒径が2mm未満の土壌粒子、すなわち砂及び細粒分がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定されている。したがって、このトロンメル4では、粒径が2mm以上の土壌粒子である礫が(場合によっては石も)土壌・水混合物から分離される。前記のとおり、水中に離脱した有害金属等は礫及び砂にはほとんど吸着されず、ないしは付着しないので、トロンメル4で分離された礫は清浄なものであり、例えばコンクリート用の骨材等として用いることができる。なお、トロンメル4のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
トロンメル4の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子、すなわち砂及び細粒分と洗浄水とを含む土壌・水混合物はサイクロン5(液体サイクロン)に導入される。サイクロン5は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい細粒分(例えば、粒径0.075mm未満)と水の混合物と、比較的粒径が大きい砂(例えば、粒径0.075mm以上)と水の混合物とに分離する。
そして、細粒分と水の混合物(以下「細粒分含有水」という。)はサイクロン5の上端部から排出され、比較的粒径が大きい砂と水の混合物はサイクロン5の下端部から排出される。ここで、サイクロン5の下端部から排出された砂と水の混合物は、前記のとおり有害金属等をほとんど含んでいないので、水切りないしは乾燥処理を施して再生砂として使用される。他方、細粒分含有水はPH調整槽6に移送される。
PH調整槽6では、細粒分含有水のpH(水素指数)が、酸液(例えば、硫酸、塩酸)及びアルカリ液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を用いて、ほぼ中性となるように調整される。なお、図示していないが、PH調整槽6では、細粒分含有水のpHは、pHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
PH調整槽6でpHが調整された細粒分含有水は凝集槽7に導入される。凝集槽7では、細粒分含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、凝集槽7内に非水溶性の金属水酸化物と細粒分とが混在する多数のフロックが生成される。
凝集槽7内の細粒分含有水はシックナ8に導入される。シックナ8は、詳しくは図示していないが、細粒分含有水がほぼ静止している状態で非水溶性のフロックないしは細粒分を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒分を含まない上澄水(洗浄水)とを形成する。なお、上澄水の表面に浮上油が浮遊している場合、この浮上油は、少量の上澄水をシックナ8の上部から溢流させることにより除去される。
シックナ8内の上澄水は、洗浄水槽10に導入され、洗浄水として一時的に貯留される。洗浄水槽10が満杯になったときには予備水槽11が使用される。洗浄水層10ないしは予備水槽11に貯留されている洗浄水は、循環水として混合器2及びトロンメル4に供給される。なお、洗浄水槽10に貯留されている洗浄水が、蒸発等により減少したときには、適宜に水道水が補給される。他方、シックナ8の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク9に移送され、一時的に貯留される。なお、投入ホッパ1から中間タンク9に至る一連の装置1〜9は、土壌浄化システムSの土壌分級部の構成要素である。
中間タンク9内のスラッジは、基本的には、スラッジポンプ等(図示せず)により連続的に鉄分除去装置12に移送される。鉄分除去装置12は、スラッジから鉄系細粒分を磁力で吸着して除去することにより、スラッジの有害金属等の含有率を低下させる。鉄分除去装置12から排出された鉄系細粒分は、例えば製鉄業者等に供給され、製鉄原料として利用される。鉄分除去装置12の具体的な構成及び機能は、後で詳しく説明する。
鉄分除去装置12から排出されたスラッジは、フィルタプレス13に導入されて脱水され、濾液とケークとが生成される。そして、濾液はシックナ8に戻される。他方、ケークは、キレート洗浄装置14に移送され、細粒分(非鉄系細粒分)に残留している有害金属等が除去される。ここで、ケークに含まれる細粒分の有害金属等の含有率が基準内であれば、ケークはキレート洗浄装置14に移送されることなく、埋立て等により処分される。なお、フィルタプレス13に代えてその他の濾過器、例えば真空濾過器などを用いてもよい。キレート洗浄装置14の具体的な構成及び機能は、後で詳しく説明する。
以下、図2〜図5を参照しつつ鉄分除去装置12の具体的な構成及び機能を説明する。
図2に示すように、鉄分除去装置12は、その主たる構成要素として、複数(多数)の磁性球20とシックナ8(図1参照)から排出されたスラッジとを接触させる鉄系細粒分吸着装置18と、鉄系細粒分吸着装置18から排出された混合物を磁性球20とスラッジとに分離するスクリーン装置19と、スクリーン装置19から受け入れた磁性球20から鉄系細粒分を除去する遠心分離機22と、遠心分離機22から排出された磁性球20を鉄系細粒分吸着装置18に返送する磁性球返送装置23とを備えている。さらに、鉄分除去装置12は、それぞれ、鉄系細粒分吸着装置18、遠心分離機22又は磁性球返送装置23に供給される磁性球20を一時的に貯留する第1〜第3磁性球貯留容器24〜26と、スクリーン装置19から流下したスラッジを一時的に貯留するスラッジ貯留槽27とを備えている。
鉄系細粒分吸着装置18は、複数(多数)の磁性球20と、シックナ8(図1参照)から排出されたスラッジとを受け入れて、磁性球20とスラッジとが混在する流動物(混合物)を重力によりジグザグ状の経路で下方に移動させ、移動時にスラッジ中の鉄系細粒分を磁力で磁性球20に吸着させる。具体的には、鉄系細粒分吸着装置18は、中心軸が上下方向に伸びるように配置された中空円柱形(円筒状)又は中空四角柱形(ダクト状)の筒状体21(ハウジング)を有し、この筒状体21の内部に複数の傾斜板21aが取り付けられている。これらの傾斜板21aは、上側から下側に向かって奇数番目の傾斜板21aと偶数番目の傾斜板21aとが、互いに反対側に位置する(対向する)内周部(全周の一部)から中心側に向かって下降しつつ延びるように配設されている。
例えば、図2中の位置関係に即して説明すれば、上側からみて奇数番目(左側)の傾斜板21aは、左側の内周部(全周の一部)から右側に向かって下降しつつ延び、偶数番目(右側)の傾斜板21aは、右側の内周部(全周の一部)から左側に向かって下降しつつ延びている。ここで、奇数番目の傾斜板21aと偶数番目の傾斜板21aとは、平面視では中心側の部位で互いに重なり合っている。このため、ある1つの傾斜板21aの上を移動ないしは流動した磁性球20及びスラッジは、その下側の傾斜板21aの上に落下ないしは流下する。その結果、鉄系細粒分吸着装置18の上部に導入された磁性球20及びスラッジは、上側から下側に向かって並ぶ複数の傾斜板21aの上面を、順にジグザグ状の経路で移動ないしは流動する。その際、スラッジ中の有害金属等を吸着し又は有害金属等が付着している鉄系細粒分は磁性球20の外周面に磁力で吸着される。これにより、スラッジの有害金属等の含有率が低減される。
スクリーン装置19は、鉄系細粒分吸着装置18から排出された流動物(混合物)を受け入れて、磁性球20とスラッジとに分離(スクリーニング)する。詳しくは図示していないが、スクリーン装置19は、鉄系細粒分吸着装置18の下側の位置から下降しつつ傾斜して側方に延びる網目状ないしは格子状のスクリーンを有する。このスクリーンの目の開き(開口寸法)は、磁性球20が通り抜けることができない寸法となっている。スクリーン上に磁性球20とスラッジとが混在する流動物(混合物)が落下ないしは流下したときには、磁性球20は傾斜しているスクリーン上を転動して第2磁性球貯留容器25内に落下する。他方、スラッジは、スクリーンの網目ないしは開き目を通り抜けて下方に流下し、スラッジ貯留槽27に収容される。なお、鉄分除去装置12には、スラッジ貯留槽27内のスラッジをフィルタプレス13(図1参照)に輸送するためのスラッジポンプ34が設けられている。
図3に示すように、磁性球20は、概略的には、中空球状体29の中空部に複数の永久磁石30が、それぞれのN極が球状体半径方向外向きとなるように装着されたものである。なお、磁性球20は、各永久磁石30がそれぞれのS極が球状体半径方向外向きとなるように装着されたものであってもよい。具体的には、各永久磁石30は、中空球状の磁石保持部材31に形成された磁石保持穴32に嵌入されている。そして、永久磁石30を伴った磁石保持部材31が中空球状体29の中空部に嵌入されている。換言すれば、該磁石保持部材31の周面に中空球状体29が外嵌され、ないしは該磁石保持部材31の周面が中空球状体29によって被覆されている。
磁石保持部材31に形成された磁石保持穴32は、磁性球中心方向に向かって横断面積が狭まるテーパ状の穴であり、永久磁石30は磁石保持穴32と嵌合ないしは整合する形状(相補形)に形成されている。このため、磁石保持部材31の外側から永久磁石30を磁石保持穴32に嵌入ないしは挿入することにより、磁石保持部材31に永久磁石30を容易に装着することができる。磁石保持部材31に装着された状態において半径方向外側に位置する方の永久磁石30の端面の形状は、磁石保持部材31の外周面と整合する曲面(球面の一部)であるのが好ましい。このようにすれば、永久磁石30と磁石保持部材31の集合体の外周面は球形となり、該集合体と中空球状体29とを密接させることができる。
磁性球20の直径(すなわち、中空球状体29の外直径)は、磁性球20の搬送ないしは輸送を容易にするために、例えば3〜5cmとするのが実用的である。また、磁性球20の見かけ密度(ないしは嵩密度)、すなわち磁性球20の質量をその体積で除算した値は、流動時に磁性球20をスラッジ中で浮上させることなく可及的に軽量化を図るために、1.1〜1.3g/cm3の範囲内とするのが実用的である。なお、磁性球20の見かけ密度は、永久磁石20の大きさ及びその装着数、磁石保持部材31ないしはその中空部の体積等を適切に設定することにより調節ないしは増減するができるので、磁性球20の見かけ密度を1.1〜1.3g/cm3に調整するのは容易である。
中空球状体29の材料は、スラッジに対する耐腐食性と適度な機械的強度があれば、とくには限定されないが、ステンレススチール又はアルミニウム(ないしはその合金)を用いるのが実用的である。中空球状体29の厚さは、例えば0.2〜0.5mm程度とするのが好ましい。なお、中空球状体29を、互いに螺合させることができる1対の中空の半球体で構成すれば、磁性球20の製作が容易である。この場合、永久磁石30を装着した磁石保持部材31を一方の半球体に嵌入した上で、この半球体に他方の半球体を螺合させれば磁性球20を容易に組み立てることができ、螺合を解除すれば磁性球20を解体することができる。
磁石保持部材31は、例えば熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)の射出成型により製作することができる。永久磁石20としては、磁石保持穴32に対応するテーパ形状を有し、大径側の端面がN極であり、小径側の端面がS極であるネオジム磁石を用いることができる。なお、大径側の端面がS極であり、小径側の端面がN極であるネオジム磁石を用いてもよい。
再び図2に示すように、鉄系細粒分吸着装置18の上方には第1磁性球貯留容器24が配置され、第1磁性球貯留容器24の下端部(底部)には、その開度を自在に調節することができる開閉扉24aが付設されている。開閉扉の24aの開度を調節することにより、第1磁性球貯留容器24内に貯留されている磁性球20を、所望の通過量(流量)で連続的に下方に排出して鉄系細粒分吸着装置18の上部に供給することができる。
スクリーン装置19の先端部(鉄系細粒分吸着装置18から遠い方の端部)の下方には第2磁性球貯留容器25が配置され、スクリーン装置19のスクリーン上を転動した磁性球20は、スクリーン装置19の先端部から重力で落下して第2磁性球貯留容器25に収容されるようになっている。なお、磁性球同士は磁力(斥力)で反発しあうので、磁性球20が移動時に塊状ないしはブドウの房状となって集合することはなく、円滑かつ迅速に移動することができる(磁性球20が、ある装置ないしは容器内で移動し、又は他の装置ないしは容器に移動する場合も同様である。)。
第2磁性球貯留容器25の下方には遠心分離機22が配置されている。遠心分離機22は、鉄系細粒分吸着装置18から排出されスクリーン装置19を経由して第2磁性球貯留容器25内に一時的に貯留された磁性球20を間欠的に回分式(バッチ式)で受け入れて、遠心力により磁性球20から鉄系細粒分を離脱させる。第2磁性球貯留容器25の下端部(底部)には、その内部に貯留している磁性球20を随時に落下させて遠心分離機22に供給するための開閉扉25aが付設されている。
図4に示すように、遠心分離機22は、略円筒状の容器であるハウジング35と、ハウジング35内において該ハウジング35と同軸状に配置され、ハウジング35に固定されたベアリング装置36によってハウジング中心軸まわりに回転自在に支持された回転筒37とを備えている。回転筒37の上端部と下端部とには、それぞれ、随時に開閉することができる上側開閉扉37aと下側開閉扉37bとが付設されている。回転筒37の円周部(側部)は、磁性球20が通り抜けることができない目開きの多数の開口部を備えた円筒状の網状部材ないしは格子状部材で形成されている。回転筒37は、歯車機構38を介してモータ39によって回転駆動される。なお、歯車機構38に代えてベルト・プーリ機構を用いてもよい。また、ハウジング35内には、高速回転する回転筒37から遠心力により水平方向に飛来する鉄系細粒分の粒子を受け止めて落下させる中空円錐台状のバッフル40(傘状の邪魔板)が配置されている。
図2から明らかなとおり、遠心分離機22の下方には第3磁性球貯留容器26が配置され、回転筒37の停止時において下側開閉扉37b(図4参照)が開かれたときには、回転筒37内の磁性球20が重力で落下して第3磁性球貯留容器26に収容される。第3磁性球貯留容器26の下端部には、開度を自在に調節することができる開閉扉26aが付設されている。開閉扉の26aの開度を調節することにより、第3磁性球貯留容器26内の磁性球20を、所望の通過量(流量)で連続的に下方に排出する(落下させる)ことができる。
第3磁性球貯留容器26の下側には、第3磁性球貯留容器26から連続的に排出された磁性球20をベルト41a(無端ベルト)の上に受け取り、ベルト41aで水平方向に輸送して直立型ベルトコンベア42に供給する水平型ベルトコンベア41が設けられている。水平型ベルトコンベア41は、その一方の端部(磁性球輸送方向に関して上流端)が第3磁性球貯留容器26の下端部近傍に位置し、他方の端部(磁性球輸送方向に関して下流端)が直立型ベルトコンベア42の下端部近傍に位置するように配置されている。なお、水平型ベルトコンベア41及び直立型ベルトコンベア42は磁性球返送装置23の構成要素である。
ベルト41aは可撓性を有する非磁性体材料(例えば、ゴム)で形成されている。そして、ベルト41aの両側にはそれぞれ、ベルト側部に近接して配置され、ベルト上の磁性球20がベルト側部から脱落するのを防止するための側板(図示せず)が設けられている。なお、側板を設けず、ベルト41aの両側部に、適度な高さ(例えば、1〜2cm)を有し、ベルト伸長方向に伸びる堤状ないしは土手状の突起部を一体形成してもよい。
直立型ベルトコンベア42は、水平型ベルトコンベア41のやや上方に配置された2つの駆動ローラ43a、43bと、駆動ローラ43a、43bの直上で第1磁性球貯留容器24の上端部よりやや高い位置に配置された2つの従動ローラ44a、44bと、駆動ローラ43a、43bと従動ローラ44a、44bとに巻き掛けられた強磁性体材料(例えば、スチール、ステンレススチール等)からなる輪状(無端)の金属ベルト45と、複数のアイドルローラ46とを備えている。ここで、駆動ローラ43a、43bは、モータ(図示せず)によって反時計回り方向に回転駆動される。これに伴って、金属ベルト45は、駆動ローラ43a、43bと従動ローラ44a、44bの間を、反時計回り方向に周回走行する。ここで、駆動ローラ43a内には、ベルト41a上の磁性球20の金属ベルト45への移動・吸着を助勢するために、複数の永久磁石49(図5参照)が、S極がローラ半径方向外向きとなるように装着されている。なお、磁性球20において永久磁石30がS極が球状体半径方向外向きとなるように装着されたものである場合は、永久磁石49はN極がローラ半径方向外向きとなるように装着される。アイドルローラ46は、輪状の金属ベルト45の内側の表面(裏面)に当接し、金属ベルト45が所定の走行軌道上を走行するように金属ベルト45の位置ないしは走行経路を規制する。
金属ベルト45が強磁性体材料で形成されているので、磁性球20は金属ベルト45に磁力で付着することができる。磁性球20の永久磁石30(図3参照)の磁気特性ないしは磁気強度は、金属ベルト45が水平方向に伸びている状態において、磁性球20が金属ベルト45の下方に適度な間隔(例えば、5〜15mm)をあけて配置されたときに、磁性球20が重力に抗して上向きに移動して金属ベルト下面に磁力で付着することができるように設定されている。なお、磁性球20の金属ベルト下面への付着は、永久磁石49(図5参照)によって助勢される。
また、水平型ベルトコンベア41は、ベルト41aに載っている磁性球20の頂上部と、直立型ベルトコンベア42の下端部における金属ベルト下面との間に、磁性球20が金属ベルト下面に磁力で付着することができる前記の適度な間隔が生じるように配設されている。したがって、水平型ベルトコンベア41によって直立型ベルトコンベア42の下側に輸送された磁性球20は、順次に金属ベルト下面に磁力で付着する。
図5(a)〜(c)に示すように、直立型ベルトコンベア42の金属ベルト45の外側の表面には、金属ベルト45の伸びる方向(走行方向)に、磁性球20の直径よりやや長い間隔をあけて、ベルト幅方向に直線状に伸びる角柱状ないしは角棒状の複数(多数)の磁性球係止部材47が取り付けられている。磁性球係止部材47の材料は、金属ベルト45への取り付け及び取り外しが容易であり(例えば、ねじ止め)、かつ磁性球20との衝突に対する耐久性を有するものであればとくには限定されず、例えば合成樹脂やアルミニウム合金などを用いることができる。
磁性球係止部材47は、金属ベルト45が上下方向に伸びて上向きに走行ないしは移動しているときに、金属ベルト45の表面に磁力で付着している磁性球20が重力で下向きに移動ないしは転動するのを係止する。磁性球係止部材47の金属ベルト表面からの高さないしは突出長は、磁性球20の直径の1/8〜1/4とするのが実用的である。また、金属ベルト45の伸長方向(走行方向)に隣り合う磁性球係止部材47の間隔は、磁性球20の直径の1.2〜1.5倍とするのが実用的である。
かくして、水平型ベルトコンベア41によって輸送され、直立型ベルトコンベア42の下端部ないしはその近傍で金属ベルト45に磁力で付着した磁性球20は、反時計回り方向に周回走行する金属ベルト45によって、下方に移動ないしは転動することなく直立型ベルトコンベア42の上端部に搬送される。
図2から明らかなとおり、直立型ベルトコンベア42の上端部近傍には、金属ベルト45に磁力で付着している磁性球20を金属ベルト45から離脱させ、第1磁性球貯留容器24に案内するガイド部材48が設けられている。ガイド部材48の直立型ベルトコンベア側の端部は従動ローラ44aの近傍に位置する一方、第1磁性球貯留容器側の端部は第1磁性球貯留容器24の上端部近傍に位置している。そして、ガイド部材48は、直立型ベルトコンベア側から第1磁性球貯留容器側に向かって下向きに傾斜している。なお、ガイド部材48は非磁性材料で形成される。
図2中における位置関係において反時計回り方向に周回走行する金属ベルト45に付着して移動している磁性球20は、従動ローラ44aの近傍でガイド部材48の端部と衝突ないしは接触する。その結果、磁性球20はガイド部材48によって、金属ベルト45から離脱させられ、ガイド部材48の上面を転動して第1磁性球貯留容器24内に落下する。つまり、第3磁性球貯留容器26から下方に連続的に排出された磁性球20は、磁性球返送装置23(水平型ベルトコンベア41、直立型ベルトコンベア42、ガイド部材48)によって第1磁性球貯留容器24に連続的に返送される。
このように、磁性球20は、順に、第1磁性球貯留容器24と、鉄系細粒分吸着装置18と、スクリーン装置19と、第2磁性球貯留容器25と、遠心分離機22と、第3磁性球貯留容器26と、磁性球返送装置23(水平型ベルトコンベア41、直立型ベルトコンベア42、ガイド部材48)とを循環して移動する。図2中の7つの破線の矢印は、このような磁性球20の移動方向を示している。磁性球20は、第1磁性球貯留容器24から第2磁性球貯留容器25までは連続的に移動し、第2磁性球貯留容器25から第3磁性球貯留容器26までは間欠的ないしは回分的に移動し、第3磁性球貯留容器26から第1磁性球貯留容器24までは連続的に移動する。
以下、鉄分除去装置12の運転手法の一例を説明する。鉄系細粒分吸着装置18の上部には、第1磁性球貯留容器24から実質的に鉄系細粒分を吸着していない多数の磁性球20が連続的に供給される一方、中間タンク9(図1参照)から実質的に細粒分(鉄系細粒分及び非鉄系細粒分)と水とからなるスラッジが連続的に供給される。そして、鉄系細粒分吸着装置18内では、磁性球20とスラッジとが混合されてなる流動物ないしは混合物が、複数の傾斜板21aによって形成されたジグザグ状の経路を下方に向かって移動ないしは流動する。その際、スラッジ中の鉄系細粒分が磁性球20の外周面に磁力で吸着される。
鉄系細粒分は、礫及び砂を湿式破砕機であるミルブレーカ3(図1参照)で破砕することにより生成されたもの、又は礫及び砂の破砕以前から存在するものであり、いずれもその表面に鉄等の微小塊が露出し、露出している鉄等の微小塊には有害金属等が吸着されている。一般に、礫中及び砂中には、鉄等の小塊が偏在又は点在しており、このような小塊の割合は2〜7質量%程度である。このため、礫及び砂の破砕により生成された細粒分の少なくとも一部は、表面にフレッシュな(すなわち有害金属等が吸着されていない)鉄等が露出する鉄系細粒分となる。
鉄は強磁性体(軟磁性体)であり、磁石に吸着される。また、土壌中に存在する鉄酸化物は、実質的に四酸化三鉄(Fe3O4)と、γ型三酸化二鉄(γ−Fe2O3)と、α型三酸化二鉄(α−Fe2O3)とからなり、四酸化三鉄及びγ型三酸化二鉄は強磁性体(軟磁性体)であり、磁石に吸着される。なお、α型三酸化二鉄は磁化せず磁石には吸着されない。このため、表面に鉄等の微小塊が露出している鉄系細粒分は、鉄、四酸化三鉄又はγ型三酸化二鉄の強磁性(軟磁性)により磁性球20内の永久磁石30(図3参照)に引き付けられ、磁性球20(中空球状体29)の外周面に磁力で吸着される。
礫及び砂をミルブレーカ3(図1参照)で破砕することにより生成された鉄系細粒分の表面に露出している鉄等の微小塊は、礫中又は砂中に偏在又は点在していた有害金属等を吸着していないフレッシュな鉄等の小塊から生じたものであり、破砕後に表面に露出してその周囲の洗浄水から有害金属等ないしはこれらのイオンを吸着する。かくして、ミルブレーカ3(図1参照)から排出され鉄系細粒分吸着装置18に導入された細粒分は、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)多い鉄系細粒分と、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)少ない非鉄系細粒分とで構成される。
そして、前記のとおり、鉄系細粒分吸着装置18内ではスラッジから鉄系細粒分が除去されるので、鉄系細粒分吸着装置18から排出されたスラッジに含まれる細粒分は、有害金属等の吸着量が比較的(ないしはかなり)少ない非鉄系細粒分が大半となる。したがって、土壌浄化システムSに導入された汚染土壌に含まれていた有害金属等の一部ないしはかなりの部分は、鉄系細粒分吸着装置18内で除去される。
鉄系細粒分吸着装置18の下端部から下方に排出された磁性球20とスラッジの混合物はスクリーン装置19に導入され、鉄系細粒分を吸着している磁性球20と、鉄系細粒分が除去されたスラッジとに分離される。そして、磁性球20は第2磁性球貯留容器25に収容され、スラッジはスラッジ貯留槽27に収容される。
後で詳しく説明するように、鉄系細粒分吸着装置18から排出されスクリーン装置19で分離されたスラッジ(細粒分)に対して、キレート洗浄装置14(図1参照)でキレート剤によるキレート洗浄処理が行われ、また洗浄液再生部54(図6参照)で固相吸着材によりキレート剤の再生処理が行われるが、前記のとおり鉄系細粒分吸着装置18でスラッジ中の有害金属等が低減されるので、細粒分(スラッジ)のキレート洗浄処理及びキレート剤の再生処理に対する有害金属等の負荷が軽減される。このため、土壌浄化システムSにおけるキレート剤及び固相吸着材の必要量ないしは使用量を低減することができ、土壌の処理コストを低減することができる。つまり、鉄系細粒分吸着装置18(鉄分除去装置12)は、キレート洗浄装置14ないしは洗浄液再生部54への有害金属等の負荷を軽減する前処理装置ないしは予備処理装置として機能するものである。
第2磁性球貯留容器25内の鉄系細粒分を吸着している磁性球20は、適宜に遠心分離機22の回転筒37に供給される。具体的には、上側開閉扉37aが開かれる一方、下側開閉扉37bが閉じられた状態で、開閉扉25aが開かれ、第2磁性球貯留容器25から回転筒37内に、1回処理分の磁性球20が供給される。例えば、回転筒37内の空間部の1/3〜1/2を占める量の磁性球20が供給される。
この後、上側開閉扉37aが閉じられ、モータ39が起動され、回転筒37が高速で(例えば、回転筒37の半径が1mの場合、100〜500r.p.m.)回転させられる。その結果、磁性球20の外周面に吸着され又は付着している鉄系細粒分は強い遠心力(例えば、10〜100G)により磁性球20から離脱し、回転筒37の周壁の多数の網目ないしは孔を通り抜けて外部に飛び出す。ここで、回転筒37の回転速度は、回転筒37の半径、磁性球20の磁力、鉄系細粒分の磁気特性等に応じて、鉄系細粒分の大部分が磁性球20から脱離するように好ましく設定される。
磁性球20から離脱して回転筒37の外部に飛び出した鉄系細粒分は、バッフル40に衝突した後、落下してハウジング35の底部に蓄積される。ハウジング35内の鉄系細粒分は、適宜に人手で外部に排出される。なお、除去された鉄系細粒分は、例えば製鉄原料として用いることができる。そして、所定時間(例えば、2〜5分)経過後、モータ39ひいては回転筒37の回転が停止される。この後、下側開閉扉37bが開かれ、回転筒37内の鉄系細粒分がほほ除去された磁性球20が第3磁性球貯留容器26内に重力で落下する。
第3磁性球貯留容器26内の磁性球20は、水平型ベルトコンベア41のベルト41aの上に連続的に供給され、ベルト41aによって直立型ベルトコンベア42の下端部近傍に輸送される。この後、ベルト41aの上の磁性球20は、直立型ベルトコンベア42によってその上端部に輸送され、ガイド部材48によって第1磁性球貯留容器24に導入される。なお、第3磁性球貯留容器26から水平型ベルトコンベア41への磁性球20の供給量(供給速度)は、開閉扉の26aの開度を変えることにより、水平型ベルトコンベア41ないしは直立型ベルトコンベア42の最大輸送量以下となるように調整される
以下、キレート洗浄装置14の構成及び機能を説明する。なお、フィルタプレス13から排出されたケークの有害金属等の含有率が、埋立てや再利用などにより処分する場合における所定の規制値より低いときには、後処理部であるキレート洗浄装置14を用いる必要ないしは設ける必要はない。
まず、図6を参照しつつ、キレー洗浄装置14の概括的な構成及び機能を説明する。キレート洗浄装置14においては、まず混合分散装置51に、フィルタプレス13(図1参照)から排出されたケーク(濾過ケーク)と、洗浄液貯槽56内のキレート剤を含むキレート洗浄液とが連続的に供給される。そして、混合分散装置51は、ケークとキレート洗浄液とを混合し、キレート洗浄液中に細粒分ないしは細粒分の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒分スラリーを生成する。
混合分散装置51により生成された細粒分スラリーは、細粒分洗浄装置52に移送される。細粒分洗浄装置52は、細粒分スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間(例えば、0.5〜2時間)を確保できるようにおおむねプラグフロー(栓流)で流すことにより、細粒分に付着している有害金属等を離脱させてキレート洗浄液中のキレート剤に捕捉させる。これにより、細粒分スラリー中の細粒分の表面に吸着(付着)されている有害金属等が除去される。
ここで、キレート洗浄液に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいはHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも細粒分スラリーないしは細粒分に含まれている有害金属等を有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、細粒分に含まれる有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられるのはもちろんである。
細粒分洗浄装置52から排出された細粒分スラリーは濾過装置53に移送される。濾過装置53は、細粒分スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケーク(濾過ケーク)と濾液とを生成する。なお、このような濾過装置53としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置53から排出された濾過ケーク(細粒分)は、有害金属等をほとんど含まない。
濾過装置53から排出された濾液すなわちキレート洗浄液は、洗浄液再生部54に導入される。洗浄液再生部54は、洗浄液再生装置55と、洗浄液貯槽56と、酸液貯槽57と、水貯槽58とを備えている。ここで、洗浄液再生装置55は、詳しくは図示していないが、キレート剤よりも錯生成力が高く濾過装置53から排出されたキレート洗浄液(濾液)と接触したときにキレート洗浄液中の有害金属等を吸着又は抽出する固相吸着材又は該固相吸着材が固定された充填物(小片ないしは粒状物)をその内部に保持し、充填物の間隙を流れるキレート洗浄液中のキレート剤から有害金属等を除去し、キレート洗浄液を再生する充填塔形式の装置である。
洗浄液再生装置55では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含むキレート洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材と接触させられる。固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有するとともに有害金属等のイオンを選択的に取り込むものである。これにより、キレート剤に捕捉されている有害金属等はキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着又は抽出される。これにより、キレート洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収され、キレート洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となる。
このように洗浄液再生装置55で再生されたキレート洗浄液は、洗浄液貯槽56に一時的に貯留された後、洗浄液還流機構(詳しくは図示せず)により、混合分散装置51に還流させられる。つまり、キレート洗浄液は、細粒分の浄化とキレート剤の再生とを繰り返しつつ、キレート洗浄装置14内を循環する。なお、キレート剤の目減り分は適宜に補充される。
キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材は、例えばキレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いる場合、濃度が10mM/lであるEDTA水溶液から、ほぼ100%の金属イオンを回収することができる強い結合力を有するものである。
このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
キレート洗浄液の再生に伴って、固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、固相吸着材の有害金属等の吸着量には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は、固相吸着材再生機構(詳しくは図示せず)によって再生される。すなわち、固相吸着材再生機構は、キレート洗浄液が排除された状態で、酸液貯槽57内の酸液を洗浄液再生装置55に流し、固相吸着材に吸着された有害金属等を酸液により除去して固相吸着材を再生する。このとき、酸液は、酸液貯槽57と洗浄液再生装置55の間を循環する。かくして、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。
洗浄液再生装置55内の固相吸着材は、酸液によって再生された後、水洗浄機構(詳しくは図示せず)により水洗され、固相吸着材に付着している酸液が除去される。このとき、固相吸着材の水洗に用いられる水は、水貯槽58と洗浄液再生装置55の間を循環して流れる。なお、洗浄液再生部54の詳細な構成及びその運転手法は、本願出願人を特許権者とする特許第6264592号公報(図3及び段落[0035]〜[0045]参照)、特許第6264593号公報(図3及び段落[0035]〜[0045]参照)等に開示されている。
以下、キレート洗浄装置14の具体的な構成及び機能を説明する。
まず、図7を参照しつつ、キレート洗浄装置14の構成要素である混合分散装置51の具体的な構成及び機能を説明する。混合分散装置51は、フィルタプレス13(図1参照)から排出されたケーク(細粒分)とキレート洗浄液とを連続的に混合し、キレート洗浄液中に細粒分が分散されてなる細粒分スラリーを生成する。具体的には、混合分散装置51は、フィルタプレス13から排出されたケーク(細粒分)を解砕する解砕機61と、解砕機61によって解砕されたケーク小片とキレート洗浄液とを予混合する予混合槽62と、予混合槽62によって生成された混合物を攪拌してケーク小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)をキレート洗浄液中に分散ないしは懸濁させるラインミキサ63とを有している。
そして、混合分散装置51においては、フィルタプレス13から排出されたケークが解砕機61に供給され、ケークは高速回転するブレード61aによって、例えば粒径が数mm(例えば、1〜5mm)の多数のケーク小片に解砕される。他方、解砕機61へは、キレート洗浄液貯槽64内のキレート洗浄液が、ポンプ65により管路66を介して供給される。なお、キレート洗浄液貯槽64へは、洗浄液貯槽56(図6参照)から適宜にキレート洗浄液が供給される。詳しくは図示していないが、キレート洗浄液は、ブレード61aにより解砕された直後の多数のケーク小片に対して噴射ないしは供給され、ケーク小片同士が互いに付着し合うのを防止する。なお、このような解砕機61としては、例えば大平洋機工株式会社に係る「脱水ケーキ解砕機」あるいは株式会社氣工社に係る「脱水ケーキリサイクル装置」などを用いることができるが、このような市販の解砕機を用いる場合は、解砕された直後の多数のケーク小片に対してキレート洗浄液を噴射ないしは供給する機構を付設する必要がある。
解砕機61内のキレート浄液及びケーク小片は予混合槽62に移送される。予混合槽62内のキレート洗浄液とケーク小片とは、モータによって回転駆動される攪拌機67によって攪拌され予混合される。そして、予混合槽62内のキレート洗浄液とケーク小片の混合物は、ポンプ68により管路69を介してラインミキサ63に移送される。ラインミキサ63は、横置き型の略円筒形の攪拌室内に、モータによって非常に高速で回転駆動されるブレードが配置された流通式混合器であり、キレート洗浄液とケーク小片とを非常に激しく攪拌し、キレート洗浄液中にケークないしは細粒分の微小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒分スラリーを生成する。この細粒分スラリーは細粒分洗浄装置52(図6参照)に移送される。このようなラインミキサ63としては、例えば、佐竹化学機械工業株式会社に係る「サタケマルチラインミキサー」などを用いることができる。
以下、図8(a)〜(c)を参照しつつ、キレート洗浄装置14の構成要素である細粒分洗浄装置52の具体的な構成及び機能を説明する。細粒分洗浄装置52は、混合分散装置51によって生成された細粒分スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間を確保するようにプラグフローで流すことにより、細粒分に吸着(付着)されている有害金属等を細粒分から離脱させてキレート剤に捕捉させる。
細粒分洗浄装置52は、4つの平板状の仕切り壁71〜74で仕切ることにより形成された互いに平行に伸びる5つの細長い直方体状ないしは角柱状のスラリー通路75〜79を備えた貯槽70を有している。貯槽70は、例えば地上に設置した鉄製の直方体状の角型タンクであってもよく、またコンクリート製の直方体状のピットであってもよい。また、仕切り壁71〜74は、例えば複数の鉄板又はプラスチック板をスラリー通路の伸びる方向に連結することにより形成したものであってもよい。
スラリー通路75〜79において隣り合う2つのスラリー通路はスラリー通路長手方向(図8(a)、(b)における位置関係では左右方向)の一端の連通部(図8(a)中に4つの曲線状の矢印で示された部位)で互いに連通している。すなわち、これらの連通部には仕切り壁71〜74が存在せず、隣り合うスラリー通路同士が連通している。
各スラリー通路75〜79の底部には、それぞれ、細粒分スラリー中に空気を放出して細粒分スラリーを攪拌する空気放出管81〜85が配設されている。各空気放出管81〜85はスラリー通路長手方向に伸び、周壁の底部(下側)においてスラリー通路長手方向に並ぶ複数の空気放出孔が形成された多孔管であり、その中空部は、詳しくは図示していないが、圧縮空気を供給するコンプレッサないしは送風機に接続されている。空気放出管81〜85に加圧された空気が供給されたときには、この空気が空気放出孔から気泡となって細粒分スラリー中に放出されて浮上し、この気泡によって細粒分スラリーが攪拌される。
図8(c)は、細粒分スラリーの流れ方向(図8(a)中に曲線状の矢印及び直線状の矢印で示す方向)にみて最も上流側のスラリー通路75の断面を示している。図8(c)から明らかなとおり、空気放出管81は、スラリー通路75の一方の側面の近傍においてスラリー通路底部近傍に配置されている。このため、空気放出管81から放出された気泡はこの側面の近傍で上昇する。その結果、スラリー通路75内には、スラリー通路長手方向と垂直な平面内において矢印Pで示す方向に流れる循環流が形成され、細粒分スラリーが攪拌される。貯槽70及び各スラリー通路75〜79の形状、寸法、容量等、並びに空気放出管81〜85への加圧空気の供給量等は、細粒分洗浄装置52において予め設定される細粒分スラリーの、含水率、流量、滞留時間、流速、流れの乱流度(例えば、レイノルズ数)等に対応して好ましく設定される。
実施形態1に係る土壌浄化システムSでは、洗浄水による汚染土壌の洗浄・分級の過程で、有害金属等は礫及び砂にはほとんど吸着されず、細粒分に集約して吸着されるので、清浄で再利用可能な礫及び砂を得ることができる。そして、土壌浄化システムSでは、ミルブレーカ3で礫及び砂が破砕されて鉄系細粒分と非鉄系細粒分とが生成される。したがって、鉄分除去装置12には、破砕以前に存在した鉄系細粒分と、破砕によって生成された鉄系細粒分とが導入され、これらの鉄系細粒分はいずれもはかなり多量(非鉄系細粒分と比べて)の有害金属等を吸着している。
そして、鉄分除去装置12では、鉄系細粒分吸着装置18内で磁性球20によって、有害金属等の吸着量が多い鉄系細粒分がスラッジから除去されるので、該スラッジの有害金属等の含有率ないしは保有率を低下させることができる。したがって、鉄分除去装置12から排出されたスラッジに対してキレート洗浄処理を施すキレート洗浄装置14に対する有害金属等の負荷を軽減することができる。なお、土壌の性状によっては投棄ないしは埋立処理が可能な程度まで有害金属等の含有率を低下させることができる。
このように鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率が低減されているので、このスラッジを濾過するフィルタプレス13から排出されたケークをキレート洗浄装置14でキレート洗浄する場合、キレート剤及び固相吸着材の使用量ないしは必要量を低減することができ、土壌の処理コストを低減することができる。なお、ミルブレーカ3及び鉄分除去装置12は、物理的な処理を施す機械構造のものであり、有害金属等を処理するための格別の化学薬品を使用しないので、その運転コストは非常に低い。
(実施形態2)
以下、図9を参照しつつ本発明の実施形態2に係る土壌浄化システムS’を説明する。しかしながら、実施形態2に係る土壌浄化システムS’と、図1〜図8に示す実施形態1に係る土壌浄化システムSとは多くの点で共通である。そこで、以下では説明の重複を避けるため、主として土壌浄化システムS’における土壌浄化システムSとの相違点を説明する。なお、実施形態2に係る土壌浄化システムS’の構成要素において、実施形態1に係る土壌浄化システムSの構成要素と共通なものには、実施形態1と同一の参照番号を付している。
実施形態2に係る土壌浄化システムS’は、図9中ではその一部の記載を省略しているが、実施形態1に係る土壌浄化システムSと同様に、投入ホッパ1から中間タンク9に至る一連の装置1〜9と、洗浄水貯槽10と、予備水槽11と、鉄分除去装置12とを備えている。しかしながら、土壌浄化システムS’は、実施形態1におけるフィルタプレス13及びキレート洗浄装置14は備えていない。そして、土壌浄化システムS’は、細粒分洗浄装置91と、濾過装置92と、清澄濾過器93と、逆浸透膜分離装置94(RO分離装置)と、キレート剤再生装置95とを備えている。
細粒分洗浄装置91は、詳しくは図示していないが、鉄分除去装置12から排出された非鉄系細粒分と洗浄水とを含むスラッジと、キレート剤と水とを含むキレート洗浄液とを受け入れ、これらを混合・攪拌して細粒分スラリーを生成し、予め設定された滞留時間を確保するように連続的に流すことにより、非鉄系細粒分に吸着されている(付着している)有害金属等を離脱させてキレート剤に捕捉させ、あるいは水中に存在する有害金属等をキレート剤に捕捉させる。このような細粒分洗浄装置91としては、例えば実施形態1における細粒分洗浄装置52(図8(a)〜(c)参照)を用いることができる。細粒分洗浄装置91に供給するスラッジの流量とキレート洗浄液の流量の比は、例えば1:1に設定される。なお、使用するキレート剤は実施形態1と同様である。
細粒分洗浄装置91から排出された細粒分スラリーは濾過装置92に移送される。濾過装置92は、細粒分スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケーク(濾過ケーク)と濾液とを生成する。なお、濾過装置92としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置92から排出されたケーク(細粒分)は有害金属等をほとんど含まない。
濾過装置92から排出された濾液すなわちキレート洗浄液は、清澄濾過器93(例えば、砂濾過器)で懸濁物質ないしは浮遊物質(SS)が除去された後、逆浸透膜分離装置94に圧送される。詳しくは図示していないが、逆浸透膜分離装置94は、清澄濾過器93から排出されたキレート洗浄液を受け入れて、逆浸透膜により、キレート剤が濃縮された濃縮水と、キレート剤を含まない透過水とに分離する。
逆浸透膜分離装置94の逆浸透膜としては、例えばポリエステル不織布(厚さ100〜120μm)の表面に、ポリスルホン支持層と架橋芳香族ポリアミド緻密層とが積層されてなる三層構造のものなどを用いることができる。なお、架橋芳香族ポリアミド緻密層は、孔径がおおむね0.5〜1.5nmである多数の細孔を有し、水は透過させるがキレート剤は透過させない非常に薄い(例えば、0.2〜0.25μm)半透膜である。また、ポリスルホン支持層は、非常に薄い架橋芳香族ポリアミド緻密層を支持ないしは保護してその破損を防止するための比較的厚い(例えば、40〜50μm)多孔質膜である。
逆浸透膜分離装置94はスパイラル型のものであり、スパイラル状に巻かれた逆浸透膜が円筒状の容器内に収容されてなる逆浸透膜エレメントを複数有している。各逆浸透膜エレメントは、例えば全長を1〜2m程度とし、外径を0.2〜0.4m程度とするのが実用的である。例えば、全長が約1mであり、外径が約0.2mである市販のこの種の逆浸透膜エレメント(例えば、岐阜県中津川市の株式会社オーセンテック製)における逆浸透膜の有効膜面積は約40m2である。この逆浸透膜エレメントの場合、キレート剤濃度が1質量%程度のキレート洗浄液を1MPa程度の圧力で供給するときの、キレート洗浄液の処理量は約1.5m3/hrと推定される。したがって、例えば毎時60m3のキレート洗浄液を処理する場合は、この逆浸透膜エレメントを40本並列に接続すればよい。
逆浸透膜分離装置94は連続式であり、キレート洗浄液の供給量及び供給圧力(操作圧力)、濃縮水及び透過水の排出量、濃縮水のキレート剤濃縮比等の運転条件は、細粒分洗浄装置91に供給すべきキレート洗浄液の量及びキレート剤濃度に応じて適切に設定される。例えば、細粒分洗浄装置91に供給するスラッジの流量とキレート洗浄液の流量の比を1:1に設定し、細粒分洗浄装置91における細粒分スラリーのキレート剤濃度を1質量%に設定した場合、逆浸透膜分離装置94はキレート洗浄液の供給量の50%程度の透過水(キレート剤濃度0)と50%程度の濃縮水(キレート剤濃度2質量%程度)とが生成されるように設定される。したがって、細粒分洗浄装置91では、キレート剤を含まないスラッジとキレート剤濃度が2質量%程度のキレート洗浄液とが1:1で混合され、細粒分洗浄装置91におけるキレート剤濃度は1質量%程度に維持される。
逆浸透膜分離装置94から排出された濃縮水すなわちキレート洗浄液は、キレート剤再生装置95に導入されて再生される。すなわち、キレート洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収され、キレート洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となる。このようなキレート剤再生装置95としては、例えば実施形態1における洗浄液再生部54(図6参照)を用いることができる。
実施形態2に係る土壌浄化システムS’によれば、実施形態1に係る土壌浄化システムSと同様に、清浄で再利用可能な礫及び砂を得ることができ、かつ鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率を低下させることができる。このように、鉄分除去装置12から排出されるスラッジの有害金属等の含有率が低減されているので、細粒分洗浄装置91におけるキレート剤の使用量ないしは必要量を低減することができ、かつキレート剤再生装置95における固相吸着材の使用量ないしは必要量を低減することができ、土壌の処理コストを低減することができる。