以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を説明する。可能な場合には、同様の機能を有する部分には適宜同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。同図に示す無線通信システム1は、LTE(Long Term Evolution)の通信規格(通信プロトコル)に準拠して、端末に通信サービスを提供する通信システムである。無線通信システム1は、例えばVoLTE(Voice over LTE)等の音声通信サービスを端末Tに提供する。端末Tは、無線通信機能を有する任意の端末である。端末Tの具体例としては、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末(移動端末)等が挙げられる。
無線通信システム1は、eNB(evolved Node B)2と、MME(Mobility Management Entity)3と、S−GW(Serving Gateway)4と、P−GW(Packet Data Network Gateway)5と、PCRF(Policy and Charging Rules Function)6と、HSS(Home Subscriber Server)7と、P−CSCF(Proxy Call Session Control Function)8と、を含んで構成されている。eNB2、MME3、S−GW4、P−GW5、及びPCRF6は、端末TがLTEに準拠した無線通信により通信可能に接続されるLTEネットワークの構成要素である。P−CSCF8は、LTEネットワークを介して端末TにVoLTEによる音声通信サービス(特定の通信サービス)を提供するIMS(IP Multimedia Subsystem)ネットワークNWの構成要素である。
端末Tが無線通信システム1に対してローミング接続(ローミングイン及びローミングアウト)ではない通常の接続を行う場合には、eNB2、MME3、S−GW4、P−GW5、PCRF6、HSS7、及びP−CSCF8は、いずれも端末Tが在圏する在圏ネットワーク(VPLMN:Visited Public Land Mobile Network)の設備である。
一方、端末Tが無線通信システム1に対してS8HR(S8 Home Routed)方式のローミングイン接続を行う場合には、eNB2、MME3、及びS−GW4は、VPLMNの設備であり、P−GW5、PCRF6、HSS7、及びP−CSCF8は、端末Tのユーザが契約している移動体通信事業者のネットワーク(HPLMN:Home Public Land Mobile Network)の設備である。また、端末TがLBO(Local Break Out)方式のローミングイン接続を行う場合には、eNB2、MME3、S−GW4、P−GW5、PCRF6、及びP−CSCF8は、VPLMNの設備であり、HSS7は、HPLMNの設備である。また、端末Tが上記各方式のローミングアウト接続を行う場合の設備構成は、端末Tが上記各方式のローミングイン接続を行う場合の設備構成とは逆の構成となる。すなわち、端末Tがローミングイン接続を行う場合にVPLMNの設備となる構成要素(eNB2等)は、端末Tがローミングアウト接続を行う場合には、HPLMNの設備となる。同様に、端末Tがローミングイン接続を行う場合にHPLMNの設備となる構成要素は、端末Tがローミングアウト接続を行う場合には、VPLMNの設備となる。
本実施形態の無線通信システム1においては、各装置は、物理的に1台の装置で構成されてもよいし、複数台の装置によって構成された処理システムであってもよい。
eNB2は、無線アクセス制御機能を有する無線基地局である。eNB2は、無線通信によって端末Tと接続される。eNB2は、端末Tから発信があった際の受付制御機能や、他の端末から端末Tに着信があった際に端末Tを呼び出すページング機能等を基本機能として有する。端末Tは、eNB2を介してeNB2の上位装置であるMME3及びS−GW4等と通信を行う。
MME3は、eNB2を収容し、モビリティ制御やベアラ制御機能等を有する装置である。MME3は、例えば、端末Tの待受時の位置管理機能、他の端末から端末Tに着信があった際にeNB2を呼び出すページング機能、及び端末Tの認証管理機能等を有する。
S−GW4は、MME3及びeNB2と接続可能にされている。S−GW4は、MME3及びeNB2を介して端末Tに接続され、端末Tとの間で制御信号及びユーザデータを含むIP(Internet Protocol)パケットの伝送を行う中継装置である。具体的には、S−GW4は、MME3からの指示に基づいてIPパケットの中継制御を行う。また、S−GW4は、PCRF6から通知されたQoS(Quality of Service)情報に従って、IPパケットの伝達品質制御を行う。
P−GW5は、S−GW4と接続可能にされている。P−GW5は、LTEネットワークの境界に配置され、IMSネットワークNW側の接続点となるP−CSCF8と接続される。P−GW5は、端末TとIMSネットワークNWとの間の通信経路を中継し、ユーザデータを転送する。また、P−GW5は、PCRF6から通知されたQoS情報に従って、IPパケットの伝達品質制御を行う。また、P−GW5は、IMSネットワークNW以外のパケットデータネットワーク(PDN:Packet Data Network)と接続する際の中継機能も有する。IMSネットワークNW以外のPDNの例としては、例えばspモード(登録商標)等の移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)自身が提供するデータ通信ネットワークや、MNOから通信設備を借りて通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)のデータ通信ネットワーク等が挙げられる。
PCRF6は、S−GW4、P−GW5、及びP−CSCF8と接続可能にされている。QoS情報等のポリシー制御や課金制御のための情報を保持し、それらの情報をS−GW4及びP−GW5に通知する通信制御装置である。QoS情報とは、端末Tに提供される通信サービスの通信品質に関する情報である。また、PCRF6は、IMSネットワークNWへの端末Tの接続が行われる際の各種認証機能を有する。
HSS7は、LTEユーザの契約情報及び認証情報を管理するユーザ情報データベースである。HSS7は、MME3からの位置登録要求を受け付けて、デフォルトで設定されているデフォルトAPN(Access Point Name)を含む加入者情報(加入者プロファイル)をMME3に受け渡す。APNは、ネットワーク接続によりデータ通信を行う際に接続先として設定されるアドレス名である。すなわち、APNは、端末Tの接続先となるPDN(例えば、IMSネットワークNW、spモード(登録商標)のデータ通信ネットワーク、MVNOが提供するデータ通信ネットワーク等)を示す情報である。本実施形態では一例として、デフォルトAPNは、VoLTE等の音声通信サービスを提供するIMSネットワークNWを示す情報(“ims”)に設定されている。
P−CSCF8は、セッション開始プロトコル(SIP:Session Initiation Protocol)のプロキシサーバ機能等を提供する呼制御装置である。具体的には、P−CSCF8は、P−GW5及びPCRF6と接続可能にされ、IMSネットワークNW内に存在するSIPサーバである図示しないI−CSCF(Interrogating CSCF)及びS−CSCF(Serving CSCF)等と端末Tとの間でやり取りされるSIP信号を中継する中継装置である。P−CSCF8は、端末Tへの音声通信サービスの提供に先立って、P−GW5、S−GW4、及びeNB2を経由して、端末TとIMSネットワークNWとの間で制御信号を伝送するための通信経路であるIMSデフォルトベアラ(IMS default bearer)を中継接続する。
IMSデフォルトベアラは、端末TがIMSネットワークNWを示すAPN(“ims”又は“sos”)を接続先ネットワークとして指定して接続処理を実行することにより、接続確立される。VoLTEに対応する端末(VoLTE対応端末)は、IMSネットワークNWとの間でIMSデフォルトベアラを接続確立することにより、VoLTEによる音声通信サービスを利用可能な状態となる。一方、VoLTEに対応していない端末(VoLTE非対応端末)は、IMSネットワークNWとの間でIMSデフォルトベアラを接続確立しても、VoLTEによる音声通信サービスを利用することはできないため、データ通信が不可能な状態となってしまう。
標準仕様として、端末Tに接続先とすべきAPNが設定されている場合には、端末Tは、PDNとの接続手順において、当該APNをMME3に通知することが定められている。しかし、例えばいわゆるSIMフリー端末等には、端末にAPNが設定されているにもかかわらず、当該APNをMME3に通知するように設定されていない端末(標準違反端末)が存在する。そこで、本実施形態に係る無線通信システム1(主にMME3)は、主に上述した標準違反端末がIMSネットワークNWに接続されてしまうことを防止するように構成されている。
以下、図2を用いて、端末T、MME3、及びHSS7の機能構成について説明する。図2に示すように、端末Tは、接続要求部10を備える。MME3は、受付部(受付手段)31、位置登録要求部32、加入者情報取得部(通信事業者情報取得手段)33、接続判定処理部34、及び接続処理部(接続処理手段)35を備える。HSS7は、受付部71、加入者情報記憶部72、及び加入者情報送信部73を備える。
図3は、MME3のハードウェア構成を示すブロック図である。図3に示すように、MME3は、物理的には、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、入力デバイスである入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、データ送受信デバイスである通信モジュール106、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置107等を含むコンピュータシステムとして構成されている。図2におけるMME3の各機能は、図3に示されるCPU101、RAM102等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、出力装置105、通信モジュール106を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。HSS7のハードウェア構成も、上述したMME3のハードウェア構成と同様である。
接続要求部10は、所定のPDNへの接続要求をMME3に送信する手段である。接続要求部10は、例えば端末Tの電源がONにされたタイミングで、eNB2を介してMME3にPDNへの接続要求(Attach Request)を送信する。或いは、接続要求部10は、上述したタイミングとは異なるタイミングで実行される任意のPDN接続手順において、PDNへの接続要求をMME3に送信してもよい。
端末TからMME3に送信される接続要求には、PDNタイプ(PDN Type)及びVoLTE対応情報(Voice domain preference)が含まれる。また、端末Tに接続先とすべきAPNが設定されている場合には、接続要求には、通知フラグ(ESM Information Transfer Flag)が含まれる。ただし、上述の通り、端末Tが標準違反端末の場合には、端末Tに接続先とすべきAPNが設定されているにもかかわらず、接続要求部10は、通知フラグを含まない接続要求をMME3に送信する。
また、接続要求部10は、上述の通知フラグを受信したMME3からAPNの通知要求(ESM Information Request)を受信すると、端末Tに設定されているAPNをMME3に通知する。
受付部31は、端末TがVoLTE(特定の通信サービス)に対応しているか否かを示すVoLTE対応情報(サービス対応情報)を含む接続要求を受け付ける受付手段である。具体的には、受付部31は、端末T(接続要求部10)から送信された接続要求を受信することにより、PDNタイプ及びVoLTE対応情報を取得する。
また、受付部31は、端末Tからの接続要求に通知フラグが含まれている場合には、端末Tに対して、端末Tに設定されているAPNを通知するように通知要求(ESM Information Request)を送信する。その後、受付部31は、端末Tからの応答(ESM Information Response)を受け付けることにより、端末Tに設定されているAPNを取得する。このように、端末Tからの接続要求に通知フラグが含まれている場合には、受付部31は、APNの通知を端末Tに要求することにより、端末Tに設定されているAPNを取得する。
位置登録要求部32は、HSS7に対して端末Tの位置登録要求を送信する手段である。位置登録要求部32からの位置登録要求を受けたHSS7は、MME3に対して、IMSネットワークNWを接続先として示すデフォルトAPN(“ims”)と、端末Tによる接続要求がローミングイン接続によるものか否かを判定するための情報(VPLMN-Dynamic-Address-Allowed。以下「ローミング判定情報」という。)と、端末Tのユーザが契約しているMVNOを示すMVNO情報(MVNO-Identifier)と、を含む加入者情報(加入者プロファイル)を送信する。ただし、HSS7は、端末Tのユーザの加入者情報としてMVNO情報を保持していない場合には、デフォルトAPNとローミング判定情報とを含む加入者情報をMME3に送信する。
加入者情報取得部33は、MVNO情報をHSS7から取得する手段である。加入者情報取得部33は、HSS7から送信される加入者情報を受信することにより、デフォルトAPN及びローミング判定情報とともに、MVNO情報を取得する。
接続判定処理部34は、受付部31により取得された情報(VoLTE対応情報、端末Tに設定されているAPN等)と加入者情報取得部33により取得された情報(デフォルトAPN、ローミング判定情報、MVNO情報等)とに基づいて、接続先APNの決定や、端末Tからの接続要求を受け付けるか否かの判定を行う手段である。接続判定処理部34は、APN決定部(接続先決定手段)341、VoLTE判定部(第1判定手段)342、APN判定部(第2判定手段)343、及びAPN設定部(接続先設定手段)344と、を有する。
接続処理部35は、接続判定処理部34による判定結果に応じて、最終的に決定された接続先APNへの接続、或いは端末Tからの接続要求の切断等の接続処理を実行する手段である。接続処理部35の処理については、接続判定処理部34の各構成要素についての説明と併せて述べる。
APN決定部341は、受付部31により受け付けられた接続要求に応じて、端末Tの接続先APN(接続先ネットワーク)を決定する手段である。APN決定部341は、端末Tから端末Tにおいて接続先として設定されているAPNの通知を受けた場合(すなわち、受付部31により端末Tに設定されているAPNが取得された場合)には、当該APNを端末Tの接続先APNとして決定する。一方、APN決定部341は、端末TからAPNの通知を受けなかった場合には、加入者情報取得部33により取得されたデフォルトAPN(本実施形態ではIMSネットワークNWを示す“ims”)を端末Tの接続先APNとして決定する。
VoLTE判定部342は、受付部31により取得されたVoLTE対応情報に基づいて、端末TがVoLTEに対応しているか否かを判定する手段である。本実施形態では一例として、VoLTE判定部342は、VoLTE対応情報(Voice domain preference)が“CS voice only”に設定されている場合には、「端末TはVoLTEに対応していない」と判定する。一方、VoLTE判定部36は、VoLTE対応情報が“CS voice only”以外に設定されている場合には、「端末TはVoLTEに対応している」と判定する。
VoLTE判定部342により、端末TがVoLTEに対応していると判定された場合には、端末TをIMSネットワークNWに接続させることに支障はない。従って、この場合には、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNに基づく接続処理(アタッチ処理)を実行する。これにより、端末Tと当該接続先APNにより示されるPDNとの間の通信経路が接続確立され、端末Tは、当該通信経路を介してPDNとの間でデータ通信を行うことが可能となる。
一方、VoLTE判定部342により、端末TがVoLTEに対応していないと判定された場合には、端末TをIMSネットワークNWに接続させることに支障がある。すなわち、端末TをIMSネットワークNWに接続させてしまうと、端末TはVoLTEに対応していないため、データ通信が不可能な状態に陥ってしまう。そこで、この場合には、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNに基づく接続処理を実行せずに、後続のAPN判定部343の判定結果に応じた接続処理を実行する。
APN判定部343は、APN決定部341により決定された端末Tの接続先APNがVoLTEを提供するIMSネットワークNWであるか否かを判定する手段である。ここで、IMSネットワークNWを接続先として示すAPNには、通常呼の“ims”と緊急呼の“sos”の2種類が存在する。従って、APN判定部37は、APN決定部341により決定された端末Tの接続先APNが“ims”又は“sos”であるか否かを判定する。
APN判定部343により、端末Tの接続先APNがIMSネットワーク(“ims”又は“sos”)ではないと判定された場合には、当該接続先APNに基づく接続処理を実行しても、端末TがIMSネットワークNWに接続されることはない。すなわち、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されてデータ通信が不可能な状態に陥ることは起こり得ない。従って、この場合には、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNに基づく接続処理を実行する。
一方、APN判定部343により、端末Tの接続先APNがIMSネットワーク(“ims”又は“sos”)であると判定された場合には、当該接続先APNに基づく接続処理を実行すると、端末TがIMSネットワークNWに接続されてしまう。すなわち、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されてしまい、データ通信が不可能な状態に陥ってしまう。そこで、この場合には、接続処理部35は、IMSネットワークNWへの端末Tの接続を拒否する。例えば、接続処理部35は、端末Tからの接続要求自体を拒絶(Reject)することにより、IMSネットワークNWへの端末Tの接続を拒否してもよい。或いは、接続処理部35は、後続のAPN設定部344の処理によって、端末Tの接続先として適切なIMSネットワークNW以外の通信ネットワークを特定可能な場合には、当該通信ネットワークを端末Tの接続先として決定してもよい。
APN設定部344は、加入者情報取得部33により取得されたMVNO情報(MVNO-Identifier)が示すMVNOに予め関連付けられたAPNを、端末Tの接続先APNとして設定する手段である。本実施形態では一例として、APN設定部344は、MVNOに関連付けられたAPNをMVNO毎に予め保持しておくことにより、MVNO情報が示すMVNOに関連付けられたAPNを接続先APNとして設定する。APN設定部344によって接続先APNが設定された場合、接続処理部35は、APN設定部344により設定される接続先APNに端末Tを接続させる。これにより、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されることを防止できるとともに、端末TをMVNOに応じた適切な通信ネットワーク(MVNOに関連付けられたAPN)に接続させることができる。これにより、端末Tのユーザの利便性を向上させることができる。
なお、上述の通り、HSS7から通知される加入者情報(加入者情報取得部33によって取得される加入者情報)には、MVNO情報が含まれていない場合がある。加入者情報にMVNO情報が含まれていない場合、APN設定部344は、端末TのユーザがMVNOに対してネットワーク設備を提供する移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)によって提供されるデータ通信ネットワークの契約ユーザであると判断してもよい。すなわち、APN設定部344は、加入者情報にMVNO情報が含まれていない場合には、MME3の設備を保有するMNOによって提供されるデータ通信ネットワーク(MNOに関連付けられたAPN)を、端末Tの接続先APNとして設定してもよい。
また、端末Tからの接続要求がローミングイン接続の場合(すなわち、端末Tのユーザが例えば海外のユーザ(ローミングユーザ)である場合)には、基本的にはユーザの加入者情報にはMVNO情報は含まれていない。従って、端末Tのユーザがローミングユーザである場合には、ユーザの加入者情報にMVNO情報が含まれていないことをもって、当該ユーザがMME3の設備を保有するMNOによって提供されるデータ通信ネットワークの契約ユーザであると判断することはできない。そこで、APN設定部344は、MVNO情報(MVNO情報自体の有無を含む)に基づく接続先APNの設定処理を行う場合には、事前処理として、端末Tからの接続要求がローミングイン接続によるものか否かの判定(ローミング判定)を行ってもよい。そして、APN設定部344は、端末Tからの接続要求がローミングイン接続でないと判定された場合にのみ、上述したMVNO情報に基づく接続先APNの設定処理を実行してもよい。一方、ローミング判定において、端末Tからの接続要求がローミングイン接続であると判定された場合には、上述した理由によりMVNO情報に基づく接続先APNの設定処理はうまくいかない。従って、この場合には、接続処理部35は、端末Tからの接続要求自体を拒絶(Reject)してもよい。なお、上記のローミング判定の方法は特に限定されないが、APN設定部344は、例えば上述したローミング判定情報等に基づいて上記ローミング判定を行ってもよい。
受付部71は、MME3からの位置登録要求を受け付ける手段である。加入者情報記憶部72は、端末Tのユーザの加入者情報を記憶する手段である。加入者情報送信部73は、受付部71により位置登録要求が受け付けられたことに応じて、当該位置登録要求の契機となった接続要求を送信した端末Tのユーザの加入者情報を加入者情報記憶部72から抽出し、抽出された加入者情報をMME3に送信する。
図4を用いて、無線通信システム1の動作を説明する。図4は、端末Tの電源がONにされたタイミングで実行されるアタッチ処理の際の動作を示すシーケンス図である。
まず、端末Tの接続要求部10が、MME3に対して接続要求(Attach Request)を送信する(ステップS1)。ここで、接続要求に通知フラグ(ESM Information Transfer Flag)が含まれている場合には、ステップS2の手順が実行される。すなわち、MME3の受付部31は、端末Tに対して、端末Tに設定されているAPNを通知するように通知要求(ESM Information Request)を送信する(ステップS21)。続いて、端末Tは、上記通知要求に対する応答(ESM Information Response)により、端末Tに設定されているAPNをMME3に通知する(ステップS22)。
続いて、MME3の位置登録要求部32は、HSS7に対して位置登録要求(Diameter_ULR)を送信する(ステップS3)。位置登録要求を受信したHSS7の加入者情報送信部73は、当該位置登録要求に対する応答(Diameter_ULA)として、端末Tのユーザの加入者情報をMME3に送信する(ステップS4)。加入者情報送信部73によって送信された加入者情報は、MME3の加入者情報取得部33によって受信される。
続いて、接続判定処理部34及び接続処理部35による処理が実行される(ステップS5〜S13)。まず、APN決定部341が、端末TからAPNの通知を受けたか否か(すなわちステップS22が実行されたか否か)を判定する(ステップS5)。APN決定部341は、端末TからAPNの通知を受けた場合(ステップS5:YES)には、端末Tから通知されたAPNを端末Tの接続先APNとして決定する(ステップS6)。一方、APN決定部341は、端末TからAPNの通知を受けなかった場合(ステップS5:NO)には、ステップS4において加入者情報取得部33により取得されたデフォルトAPN(“ims”)を端末Tの接続先APNとして決定する(ステップS7)。
続いて、VoLTE判定部342が、ステップS1で取得したVoLTE対応情報(Voice domain preference)に基づいて、端末TがVoLTEに対応しているか否かを判定する(ステップS8)。具体的には、VoLTE判定部342は、VoLTE対応情報(Voice domain preference)が“CS voice only”に設定されている場合には、「端末TはVoLTEに対応していない」と判定する(ステップS8:NO)。一方、VoLTE判定部36は、VoLTE対応情報が“CS voice only”以外に設定されている場合には、「端末TはVoLTEに対応している」と判定する(ステップS8:YES)。
VoLTE判定部342により、端末TがVoLTEに対応していると判定された場合(ステップS8:YES)には、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNに基づく接続処理を実行する。すなわち、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNを用いてアタッチ処理を実行(継続)する(ステップS13)。一方、VoLTE判定部342により、端末TがVoLTEに対応していないと判定された場合(ステップS8:NO)には、APN判定部343による判定(ステップS9)が実行される。
APN判定部343は、APN決定部341により決定された端末Tの接続先APNがIMSネットワークNW(“ims”又は“sos”)であるか否かを判定する(ステップS9)。APN判定部343により、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWではないと判定された場合(ステップS9:NO)には、接続処理部35は、APN決定部341により決定された接続先APNに基づくアタッチ処理を継続する(ステップS13)。
一方、APN判定部343により、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWであると判定された場合(ステップS9:YES)には、APN設定部344による処理(ステップS10,S12)が実行される。なお、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されることを防ぐという観点からは、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWであると判定された場合(ステップS9:YES)、接続処理部35は、端末Tからの接続要求自体を拒絶(Reject)してもよい。
まず、APN設定部344は、事前処理として、端末Tからの接続要求がローミングイン接続であるか否かを判定する(ステップS10)。APN設定部344によって、端末Tからの接続要求がローミングイン接続であると判定された場合(ステップS10:YES)には、接続処理部35は、端末Tからの接続要求自体を拒絶(Reject)する。すなわち、接続処理部35は、端末Tからのアタッチ処理のための接続を切断する(ステップS11)。
一方、APN設定部344は、端末Tからの接続要求がローミングイン接続ではないと判定した場合(ステップS10:NO)には、ステップS4で取得されたMVNO情報(MVNO-Identifier)に基づいて接続先APNを設定する(ステップS12)。具体的には、APN設定部344は、MVNOに関連付けられたAPNを予め保持しておくことにより、MVNO情報が示すMVNOに関連付けられたAPNを端末Tの接続先APNとして設定する。また、ステップS4で取得された加入者情報にMVNO情報が含まれていない場合には、APN設定部344は、MME3の設備を保有するMNOが提供するデータ通信ネットワーク(MNOに関連付けられたAPN)を端末Tの接続先APNとして設定する。ステップS12の処理の後、接続処理部35は、APN設定部344により設定された接続先APNに端末Tを接続させるアタッチ処理を実行する(ステップS13)。
以上述べたように、MME3では、受付部31が、端末Tから、VoLTE対応情報を含む接続要求を受け付ける。APN決定部341が、受付部31により受け付けられた接続要求に応じて、端末Tの接続先APNを決定する。VoLTE判定部342が、接続要求に含まれるVoLTE対応情報に基づいて、端末TがVoLTEに対応しているか否かを判定する。APN判定部343が、APN決定部341により決定された端末Tの接続先APNがVoLTEを提供するIMSネットワークNW(“ims”又は“sos”)であるか否かを判定する。そして、接続処理部35が、VoLTE判定部342により端末TがVoLTEに対応していないと判定され、且つ、APN判定部343により端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWであると判定された場合に、IMSネットワークNWへの端末Tの接続を拒否する。
従って、MME3によれば、端末TのVoLTE対応情報に基づく判定と、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWであるか否かの判定とを併せて実行することにより、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続しようとしていることを検知することができる。そして、このような場合に、IMSネットワークNWへの端末Tの接続を拒否することにより、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されることを防止できる。
また、APN決定部341は、端末Tから端末Tにおいて接続先として設定されているAPNの通知を受けた場合には、当該APNを端末Tの接続先APNとして決定し、端末TからAPNの通知を受けなかった場合には、予めデフォルトの接続先として定められている通信ネットワーク(本実施形態では一例として、IMSネットワークNW)を端末Tの接続先APNとして決定する。MME3によれば、このようにIMSネットワークNWがデフォルトの接続先として定められている場合であっても、上述の接続判定処理部34及び接続処理部35によって、標準違反端末がIMSネットワークNWに接続されることを防止できる。その結果、標準違反端末がIMSネットワークNWに接続されてしまい、通信不可能な状態に陥ることを防止できる。
また、MME3では、加入者情報取得部33が、端末Tのユーザが契約しているMVNOを示すMVNO情報(MVNO-Identifier)を取得する。また、APN設定部344が、加入者情報取得部33により取得されたMVNO情報が示すMVNOに予め関連付けられたAPNを、端末Tの接続先APNとして設定する。そして、接続処理部35は、VoLTE判定部342により端末TがVoLTEに対応していないと判定され、且つ、APN判定部343により端末Tの接続先APNがIMSネットワークであると判定された場合に、APN設定部344により設定される接続先APNに端末Tを接続させる。これにより、APN決定部341により決定された接続先APNに端末Tを接続させることが適切でない場合に、端末Tのユーザが契約しているMVNOに関連付けられる適切なAPNに端末Tを接続させることができる。すなわち、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されることを防止できるとともに、端末TをMVNO情報に基づく適切なAPNに接続させることができる。これにより、端末Tのユーザの利便性を向上させることができる。
[第2実施形態]
図5及び図6を用いて、本発明の第2実施形態に係る無線通信システム1Aについて説明する。無線通信システム1Aは、上述したAPN設定部344と同等の処理をMME3AではなくHSS7Aが実行するように構成されている点で、第1実施形態に係る無線通信システム1と主に相違する。すなわち、無線通信システム1Aは、無線通信システム1におけるMME3が備えていた機能をMME3A及びHSS7Aで分散して実行するように構成されている。つまり、MME3A及びHSS7Aを併せた部分が、本発明に係る通信制御装置に相当する。以下、無線通信システム1Aについて、無線通信システム1とは異なる部分について説明する。
MME3Aは、位置登録要求部32、接続判定処理部34、及び接続処理部35の代わりに位置登録要求部32A、接続判定処理部34A、及び接続処理部35Aを備える点で、第1実施形態のMME3と相違する。
位置登録要求部32Aは、HSS7に対して位置登録要求を送信する際に、受付部31により端末Tから取得したVoLTE対応情報(Voice domain preference)をHSS7Aに送信する点で、位置登録要求部32と相違する。
接続判定処理部34Aは、APN設定部344を備えない点で、接続判定処理部34と相違する。
接続処理部35Aは、APN判定部343により、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNW(“ims”又は“sos”)であると判定された場合に、APN設定部344による処理を実行せずに端末Tからの接続要求自体を拒絶する点で、接続処理部35と相違する。
加入者情報送信部73Aは、端末Tのユーザの加入者情報をMME3に送信する前に、当該加入者情報に含めるデフォルトAPNを上述のAPN設定部344と同様の処理によって設定する点で、加入者情報送信部73と相違する。
具体的には、加入者情報送信部73Aは、MME3から送信されたVoLTE対応情報に基づいて、端末TがVoLTEに対応しているか否かを判定する。ここで、端末TがVoLTEに対応している場合には、加入者情報送信部73Aは、通常通りに、IMSネットワークNW(“ims”)がデフォルトAPNとして設定された加入者情報をMME3に送信する。
一方、端末TがVoLTEに対応していない場合には、IMSネットワークNW(“ims”)がデフォルトAPNとして設定された加入者情報をMME3に通知してしまうと、VoLTEに対応していない端末TがIMSネットワークNWに接続されてしまう不具合が生じ得る。そこで、この場合、加入者情報送信部73Aは、上述したAPN設定部344と同様の処理を実行することにより、MVNO情報に基づいて設定される接続先APNを、デフォルトAPNとして設定する。加入者情報送信部73Aは、以上の処理によって設定されたデフォルトAPNを含む加入者情報を、MME3からの位置登録要求に対する応答(Diameter_ULA)としてMME3に送信する。
図6を用いて、無線通信システム1Aの動作を説明する。図6は、端末Tの電源がONにされたタイミングで実行されるアタッチ処理の際の動作を示すシーケンス図である。
ステップS51,S52において、MME3の受付部31は、無線通信システム1の動作(図4のステップS1,S2)と同様の動作により、端末Tからの接続要求を受け付ける。
続いて、MME3の位置登録要求部32Aは、HSS7に対して、VoLTE対応情報(Voice domain preference)を含む位置登録要求(Diameter_ULR)を送信する(ステップS53)。位置登録要求を受信したHSS7の加入者情報送信部73Aは、まず、VoLTE対応情報に基づいて、端末TがVoLTEに対応しているか否かを判定する(ステップS54)。ここで、端末TがVoLTEに対応していると判定された場合(ステップS54:YES)には、加入者情報送信部73Aは、通常通りに、IMSネットワークNW(“ims”)をデフォルトAPNとして含む加入者情報をMME3に送信する(ステップS57)。
一方、端末TがVoLTEに対応していないと判定された場合(ステップS54:NO)には、加入者情報送信部73Aは、上述のAPN設定部344と同様の処理(ステップS55,S56)を実行する。すなわち、加入者情報送信部73Aは、事前処理として、端末Tからの接続要求がローミングイン接続であるか否かを判定する(ステップS55)。
ここで、端末Tからの接続要求がローミングイン接続であると判定された場合(ステップS55:YES)、MVNO情報に基づく端末Tの接続先APNの設定を行うことはできない。従って、この場合、加入者情報送信部73Aは、通常通りに、IMSネットワークNW(“ims”)をデフォルトAPNとして含む加入者情報をMME3に送信する(ステップS57)。
一方、端末Tからの接続要求がローミングイン接続でないと判定された場合(ステップS55:NO)、加入者情報送信部73Aは、端末Tのユーザの加入者情報に含まれるMVNO情報(MVNO-Identifier)に基づいて接続先APNを設定する(ステップS56)。ステップS56の処理内容は、上述したステップS12と同様である。
ステップS56における接続先APNの設定処理が実行された場合には、ステップS57において、当該接続先APNがデフォルトAPNとしてMME3に通知される。一方、ステップS56における接続先APNの設定処理が実行されなかった場合には、上述の通り、ステップS57において、IMSネットワークNW(“ims”)がデフォルトAPNとしてMME3に通知される。
続いて、接続判定処理部34A及び接続処理部35Aによる処理が実行される(ステップS58〜S64)。ステップS58〜S62,S64の処理は、上述したステップS5〜S9,S13の処理と同様である。一方、APN判定部343によって、端末Tの接続先APNがIMSネットワークNWであると判定された場合(ステップS62:YES)には、無線通信システム1ではAPN設定部344による処理が実行されるのに対し、無線通信システム1Aでは、接続処理部35Aが端末Tからの接続要求自体を拒絶(Reject)する(ステップS63)。これは、無線通信システム1Aでは、MME3AがAPN設定部344を備えておらず、APN設定部344が実行する処理と同等の処理をHSS7Aが実行するように構成されていることに起因する。
以上述べた無線通信システム1Aによっても、第1実施形態に係る無線通信システム1と同様の効果を奏する。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形が可能である。
例えば、IMSネットワークNWが特定のIPバージョン(例えばIPv6)にしか対応いていない場合、PDNタイプが「IPv4」である端末TをIMSネットワークNWに接続させることはできない。具体的には、PDNタイプが「IPv4」である端末TからのIMSネットワークNWへの接続要求は、P−GW5によって接続拒否されることになる。この場合、P−GW5において接続拒否をしたことを示すアラームが出力されてしまうため、オペレータの監視作業が煩雑となるおそれがある。また、端末TからMME3に送信された接続要求が、更に、S−GW4を介してP−GW5に送信されることによって、LTEネットワーク内に不要な信号が発生し、LTEネットワーク内の通信リソースの無駄遣いが発生する。そこで、MME3,3Aは、端末Tからの接続要求に含まれるPDNタイプ(IPv4又はIPv6を示す情報)の判定を更に実行してもよい。具体的には、MME3,3Aは、接続要求のPDNタイプが、IMSネットワークNWが対応しているIPバージョンであるか否かを判定するPDNタイプ判定部を更に備え、接続処理部35,35Aは、接続先APNがIMSネットワークNWであり、且つ、接続要求のPDNタイプが、IMSネットワークNWが対応していないIPバージョンである場合には、当該接続要求を拒絶(Reject)してもよい。これにより、IMSネットワークNWが対応していないIPバージョンでのIMSネットワークNWへの接続要求がP−GW5に流れることを防止できる。その結果、P−GW5において不要なアラームが発生することを防止できるとともに、LTEネットワーク内に不要な信号が流れることを防止することもできる。