JP6550740B2 - ボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法およびこれを用いたボールねじの製造方法 - Google Patents

ボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法およびこれを用いたボールねじの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ボールねじに関する。
マシニングセンタなどの工作機械の送り装置では、運動精度評価のために、円運動精度試験(非特許文献1参照)が行われる。二つの直進運動軸を同時に制御して円運動をさせる送り装置にて円運動精度試験を行うと、円運動象限切換え時(一つの軸の送り方向が+から−、あるいは−から+ヘと変化するとき)において、象限が切り替わる四つの点で突起誤差や段差誤差(以下、それぞれ「象限突起誤差」、「象限段差誤差」ともいう)を生じることが知られている。工作機械の送り装置に象限突起誤差や象限段差誤差が生じることにより、ワークの加工精度低下を引き起こすことが懸念される。
象限突起誤差は、制御技術によって補償することができる(例えば非特許文献2参照)。例えば、送り装置を構成するボールねじ、転がり直動案内あるいは転がり軸受の有する非線形摩擦特性に基づいて、送り系の摩擦トルクのヒステリシスループに近似できるような数学モデルを構築し、これをサーボ情報として送り装置の制御器に入力すればよい。
特開2002−023852号公報
JISB6190−4,工作機械試験方法通則−第4部:数値制御による円運動精度試験 堤正臣:「工作機械の運動精度を支配するボールねじと直動案内の摩擦特性」,精密工学会転がり機械要素専門委員会講演資料(2013年6月7日),p.33. 上田真大,下田博一:「ボールねじの玉挙動とロストモーション(第3報)」,精密工学会誌(2011),Vol.77, No.2, p.183.
一方、送り装置にボールねじを用いる場合に、象限突起誤差を制御技術によって補償しても、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションによって、円運動軌跡には、サブミクロンからミクロンオーダーの象限段差誤差が生じてしまう。これに対し、円運動象限切換え時の象限突起誤差の補償方法と同様に、象限段差誤差に対しても送り系の非線形摩擦特性に近似できるような数学モデルを構築して補正できる(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、数学モデルの構築は、実機を用いて試行錯誤的に調整を繰り返しながら行う必要がある(例えば非特許文献2参照)。そのため、実機を用いた数学モデルの構築のためのコストや手間が掛かり過ぎてしまうという問題があり、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションによる、ワークの加工精度低下を防止する上で改善の余地が残される。
このような問題に対し、近年、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションの発生要因に関して、解析的、実験的に調査・研究が実施されている(例えば、非特許文献3参照)。非特許文献3によって、ボールねじのロストモーションは、ナット内で公転運動しているボールの、駆動方向反転時における、ねじ軸のねじ溝またはナットのねじ溝への食込み(以下、「ボール食込み挙動」ともいう)に起因して生じることが明らかにされている。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、ロストモーションを低減または防止し得るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法およびこれを用いたボールねじの製造方法を提供することを課題とする。
ここで、図21に示すように、軸方向荷重Fxが作用するボールねじでは(同図(a)参照)、通常、ボール3は、ねじ軸101およびナット102のねじ溝101k、102kと2点(同図(b)の符号M,Bの箇所)で接触しており(同図(b)参照)、主に接触点M,Bでの弾性接触変形に起因して、ねじ軸101とナット102間に軸方向変位δを生じる(同図(a)参照)。なお、同図において、符号mはボール3の中心、αは接触角、δ、δは接触点M,Bでの弾性接触変形量、Pは接触荷重である(以下、図21〜図23において同様)。
いま、ナット102の回転を拘束した状態でねじ軸101を反時計回りに回転すると、ナット102は、図22に示すように、軸方向荷重Fの向きとは逆向きに移動する(このような作動状態を「正方向作動」と呼ぶ)。このとき、ボール3は、同図(b)に示すように、転動方向に対して直角方向にくさび状に食込み、対向するねじ溝101k、102k同士がつくる軌道とボール3との接触状態が2点接触から3点接触(符号M,M’,Bの箇所)へと変化する。そのため、ねじ軸101とナット102間の相対変位もδからδxFのように変化する。
次いで、ねじ軸101の回転方向を逆転すると、ナット102の移動方向も反転する(このような作動状態を「逆方向作動」と呼ぶ)。そのため、図23に示すように、軌道に対するボール3の食込みの方向も逆転し(同図(b)参照)、ねじ軸101とナット102間の相対変位はδxBとなる。ゆえに、ボールねじの駆動方向反転時に生じるロストモーションΔeは、下記(式1)で表すことができる。
Δe=δxF−δxB (式1)
(式1)に示すように、ボールねじの駆動方向反転時に生じるロストモーションΔeは、正方向作動時の軸方向変位δxFと逆方向作動時の軸方向変位δxBとの差を抑制すれば、Δeを低減または極小化することができる。本願発明者は、このような考察のもと、鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋状のねじ溝とにより前記複数のボールが公転運動する転動路が形成されるボールねじのナット単体でのアキシアルすきまを設定する方法であって、当該ボールねじとして、前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝が、いずれもゴシックアーク溝であり、ダブルナット予圧方式または定圧予圧方式によって予圧を付与して用いられ、ボールねじ荷重が前記予圧のみであって、その大きさを動定格荷重の3〜5%としており、ナット単体すきまが無い場合の接触角が40°〜50°、溝R比が0.54〜0.56、および、前記ねじ軸のランド端部の面取り開始角が65°〜75°とされるものを対象とし作動中のボール食込み挙動による前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝のランド面取り部への前記ボールの乗り上げを生じさせないように且つ逆方向作動時における前記各ねじ溝の溝底ニゲへの前記ボールの乗り下げを生じさせないように、シミュレーション解析の結果に基づいて、前記ナット単体でのアキシアルすきま、使用する前記ボールのボール径に対して下記(式2)を満たす範囲に設定ることを特徴とする。但し、saはナット単体でのアキシアルすきま、Daは使用するボールのボール径である。
0.17%<sa/Da≦3.6% (式2)
また、上記課題を解決するために、本発明の第二の態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法は、ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋状のねじ溝とにより前記複数のボールが公転運動する転動路が形成されるボールねじのナット単体でのアキシアルすきまを設定する方法であって、当該ボールねじとして、前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝が、いずれもゴシックアーク溝であり、ダブルナット予圧方式または定圧予圧方式によって予圧を付与して用いられ、ボールねじ荷重が前記予圧のみであって、その大きさを動定格荷重の3〜5%としており、ナット単体すきまが無い場合の接触角が40°〜50°、溝R比が0.52〜0.54、および、前記ねじ軸のランド端部の面取り開始角が60°〜65°とされるものを対象とし作動中のボール食込み挙動による前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝のランド面取り部への前記ボールの乗り上げを生じさせないように且つ逆方向作動時における前記各ねじ溝の溝底ニゲへの前記ボールの乗り下げを生じさせないように、シミュレーション解析の結果に基づいて、前記ナット単体でのアキシアルすきま、使用する前記ボールのボール径に対して下記(式3)を満たす範囲に設定ることを特徴とする但し、saはナット単体でのアキシアルすきま、Daは使用するボールのボール径である。
0.17%<sa/Da≦1.66% (式3)
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るボールねじの製造方法は、
上記第一または第二の態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法を用いてボールねじを製造することを特徴とする。
ここで、本発明において、ナット単体でのアキシアルすきまsaとは、図2に示すように、図2(a)でのナット1とねじ軸2とボール3の関係から、図2(b)に示す状態になったときの、ねじ軸1とナット2の軸方向の移動量(図2(c)参照)をアキシアルすきまsaと定義する。ボールねじにはリード角があるので、図2(a)、(b)にてアキシアルすきまsaを単純に書き込むことはできないのに対し、アキシアルすきまsaは、ナット単体すきまΔDaに比べて、ボールねじ装置から容易に測定することができるので、本発明においてはナット単体でのアキシアルすきまsaを用いて規定する。また、本明細書において、sa/Daを、以下、単に「すきま/玉径比」とも呼ぶ。
本発明の一態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法によれば、ナット単体でのアキシアルすきまsaを、使用するボールのボール径Daに対し、第一の態様に係るボールねじでは、すきま/玉径比を、0.17%<sa/Da≦3.6%とし、また、第二の態様に係るボールねじでは、すきま/玉径比を、0.17%<sa/Da≦1.66%とした。そのため、上記第一または第二の態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法を用いて製造されたボールねじによれば、内部すきまを大きくすることにより、予圧時の初期接触角が大きくなるので軸方向剛性が増大し、後述するシミュレーション解析の結果にも明らかなように、正方向作動時の軸方向変位δxFと逆方向作動時の軸方向変位δxBとの差異を小さくすることができる。よって、ボールねじの駆動方向反転時に生じるロストモーションを低減または極小化することができる。
ここで、本発明の一態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法において、駆動方向反転時における前記ナット内で公転運動している前記ボールの、前記ねじ軸のねじ溝または前記ナットのねじ溝への食込みを「ボール食込み挙動」と呼ぶとき、本発明の一態様に係るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法は、ボール食込み挙動により、前記ねじ軸のねじ溝および前記ナットのねじ溝とが、前記ボールに対して3点で接触するものを限って対象とすることが好ましい。なお、工作機械の送り系で用いられるダブルナット定位置予圧ボールねじは、通常、3%≦Fa/Ca≦5%となるような予圧条件下で駆動される。
上述のように、本発明によれば、ロストモーションを低減または極小化し得るボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法およびこれを用いたボールねじの製造方法を提供することができる。
本発明の一態様に係るボールねじの一実施形態を示す図であり、同図(a)は、ナットを軸線方向に沿った断面にて示し、(b)は、ねじ軸の軸線に直交する断面を示している。 本発明に係るボールねじを規定するアキシアルすきまを説明する模式図であり、同図(a)は転動路の横断面を模式的に示し、(b)はボールとねじ溝間のすきま分だけ軸方向に移動した状態の転動路の横断面を模式的を示し、(c)は(b)の状態のナット単体の平面図を模式的に示している。 本発明に係るボールねじの一実施例(以下、「発明品」ともいう)の内部すきまとボールと軌道の関係を説明する転動路横断面の模式図(a)、(b)である。 比較例として示す従来のボールねじ(以下、「通常品」ともいう)の内部すきまとボールと軌道の関係を説明する転動路横断面の模式図(a)、(b)である。 発明品の軸方向変位とロストモーションの関係を説明するグラフである。 すきま/玉径比(s/D)とロストモーションの関係を説明するグラフ(a)、(b)である。 通常品における、アキシアルすきまの増大と乗り上げの関係を説明する模式図((a)〜(c))である。 発明品における、アキシアルすきまの増大と乗り上げの関係を説明する模式図((a)〜(c))である。 発明品における、ねじ軸のランド端部に形成されるランド面取り部への乗り上げ(正方向作動時)状態を説明する要部拡大図である。 アキシアルすきまとランド面取り部への乗り上げ・下げ率(値が正のときの乗り上げ・下げ)の関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類のボールねじに対するすきまとロストモーションの関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類のボールねじに対するアキシアルすきまと乗り上げ率の関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類のねじ溝形状に対する、アキシアルすきまとロストモーションの関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類のねじ溝形状に対する、アキシアルすきまと乗り上げ率の関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類の接触角に対する、アキシアルすきまとロストモーションの関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類の接触角に対する、アキシアルすきまと乗り上げ率の関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類の溝R比に対する、アキシアルすきまとロストモーションの関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、3種類の溝R比に対する、アキシアルすきまと乗り上げ率の関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、ねじ軸面取り開始角を変化させた場合での、溝R比に対するアキシアルすきまとロストモーションの関係(F/C=5%)を説明するグラフである。 実施例として、最も乗り上げが懸念されるボールねじの解析結果(F/C=5%)を説明するグラフ(a)、(b)である。 ロストモーションを説明する図であり、同図は、静止時の2点接触状態であって、同図(a)がボールねじを模式的に示す平面図、(b)が転動路の横断面を模式的に示す図である。 ロストモーションを説明する図であり、同図は、正方向作動時に生じる3点接触状態であって、同図(a)がボールねじを模式的に示す平面図、(b)が転動路の横断面を模式的に示す図である。 ロストモーションを説明する図であり、同図は、逆方向作動に生じる3点接触状態であって、同図(a)がボールねじを模式的に示す平面図、(b)が転動路の横断面を模式的に示す図である。
以下、本発明の一態様に係るボールねじの一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、このボールねじ10は、ねじ軸1と、ねじ軸1に対してボール3を介して螺合するナット2とを有する。
ナット2は、軸方向に並べられた第1ナット2A及び第2ナット2Bと、両ナット2A、2Bの間に介在された間座9とが一体となって構成されている。一方のナット2Aには、端部に円環状のフランジ31が形成されている。フランジ31の内周部とねじ軸1との間、および、第2ナット2Bの軸方向他端部とねじ軸2との間は防塵用シール32で塞がれている。また、二つのナット2A、2Bは、回転方向の位相がずれないようにキー溝5に挿通された不図示のキーにより回転方向が位置決めされている。
ねじ軸1の外周面には、螺旋状のねじ溝11が形成されている。二つのナット2A、2Bは、各ナット2A、2Bの内周面に、ねじ軸1のねじ溝11に対向する螺旋状のねじ溝21がそれぞれ形成されている。また、各ナット2A、2Bには、各ナット2A、2Bの軸方向に沿ってボール戻し通路4a,4bが形成されている。そして、各ナット2A、2Bの両端には、各ナット2A、2Bのボール戻し通路4a,4bの両端部に連通するように、一対のエンドデフレクタ6a,6bがそれぞれ嵌め込まれている。
複数のボール3は、対向するねじ溝11,21で形成される転動路とボール戻し通路とからなる循環経路内に配置される。すなわち、転動路を転動するボール3は、各ナット2A、2Bの転動路の一端まで移動した後に、一方のエンドデフレクタ6aに掬い上げられ、ボール戻し通路4a,4bを通って反対側の端部に移動し、他方のエンドデフレクタ6bから再び転動路に戻るという循環経路が形成されている。そして、この循環経路を循環しつつ転動路内で転動(負荷状態で回転しながら移動)する複数のボール3を介して、ねじ軸1とナット2とが相対移動するようになっている。
このボールねじ10に予圧を与えるときは、二つのナット2A、2B同士の間に間座9を挟んだ状態で軸方向に締め上げ、各ナット2A、2Bに反対向きの軸方向の力を作用させて転動路内のボール3に予圧を与える。予圧量は間座9の厚みによって調整する。これにより、各ボール3は、ナット2A、2Bのねじ溝21の1点と、これに対向する位置のねじ軸1のねじ溝11の1点との2点で接触する。
すなわち、このボールねじ10は、予圧付加方式にダブルナット間座予圧方式を採用し、左右それぞれの転動路間のリードをずらして予圧をかけることによって、ボール3と転動路との接触を二点接触形式としている。但し、本実施形態では、ナット2とねじ軸2とが、ボール4の転動を介して軸方向に相対移動する際に、ボール食込み挙動により、3点目の接触が生じるような溝形式を設定している。
本実施形態では、予圧付加方式にダブルナット間座予圧方式を採用した定位置予圧の例を示したが、本発明はこれに限らず、ダブルナット予圧方式によって予圧を付与するものであれば、定圧予圧を用いてもよい。このボールねじ10は、ダブルナット予圧方式または定圧予圧方式によって予圧を付与して用いられ、ボールねじ荷重が前記予圧のみであって、その大きさを動定格荷重の3〜5%としている。
上記対向するねじ溝11,21で形成される転動路の溝直角断面形状を図2に示す。
このボールねじ10は、ねじ軸1のねじ溝11およびナット2のねじ溝21は、いずれもゴシックアーク溝である。すなわち、ねじ軸1のねじ溝11およびナット2のねじ溝21の横断面形状は、曲率中心の異なる2つの同一円弧を組合せた略V字状である。ここで、本実施形態では、溝R比(ねじ溝断面の曲率半径R/ボールの外径Da)が0.52〜0.54、または0.54〜0.56のいずれかの範囲の値に設定されている。
なお、ねじ軸1のねじ溝11の外側(ランド12の両縁部)には、ねじ軸1のランド12に滑らかに接続するランド面取り部7が形成れるとともに、略V字状のねじ溝11の底には、溝底ニゲ11dが形成されている。また、同様に、ナット2のねじ溝21のランド外側(両縁部)にも、ナット2内周面に滑らかに接続するランド面取り部8が形成されるとともに、略V字状のねじ溝21の底には、溝底ニゲ21dが形成されている。
以下、上記ボールねじ10の転動路についてより詳しく説明する。
本実施形態のボールねじ10では、図3に示すように、ボールねじ10の溝形状の対向するフランクをそれぞれ溝F1,F2、単体すきまが零の場合の接触角をα、初期接触角をα((同図(b))、ねじ軸1のランド面取り部7の面取り開始角をβ1B、ならびにねじ軸1の溝底ニゲ開始角をβ2Bとそれぞれ定義する。
図3(a)において、破線で描かれたボール3(ボール径φD)は、単体すきまゼロの場合を表し、このとき、ボール3は、ねじ軸1とナット2のゴシックアーク溝(ねじ溝11,21)とそれぞれ2か所の計4か所において接触角αにて荷重ゼロで接触する。ここで、本実施形態では、ナット単体すきまが無い場合の接触角αが40°〜50°の範囲に設定される。
しかし、同図のような状態は、ボールねじ各部の寸法誤差等によって実際にはほとんど起こり得ないと考えた方が合理的である。そこで、本実施形態のボールねじ(特に、予圧荷重Faが動定格荷重Caの3〜5%となる領域において用いられるボールねじ)では、図3(a)において実線で描かれたボール3のように、ボール3とねじ溝11,21との間に僅かなすきま(ΔD)を有するものと考える。
つまり、通常のボールねじでは、ボールと軌道間にすきま(ΔD)を有し、これに起因して2点接触ボールねじでは、ねじ軸1とナット2間に相対変位(軸方向すきま、径方向すきま)が生じる。各ねじ溝11,21とボール3とのすきま(ΔD)分だけねじ軸1およびナット2を軸方向に移動すれば、図3(b)に示すように、ボール3は軌道(ねじ溝11,21)と荷重ゼロで2点接触するものと考えることができる。このとき、ボール3と軌道間の接触角は、単体すきまが零の場合の接触角αから初期接触角αへと変化することになり、このときのねじ軸1とナット2間の軸方向相対変位が、図2に示したように、本発明で定義する、ナット単体でのアキシアルすきまsとなる。
ここで、本実施形態の第一態様では、溝R比が0.54〜0.56のときには、ねじ軸1の面取り開始角β1Bが65°〜75°とされ、さらに、アキシアルすきまsが、使用するボール3のボール径φDに対して、0.17%<s/D≦3.6%の範囲を満たすように設定されている。
また、本実施形態の第二態様では、溝R比が0.52〜0.54のときには、ねじ軸1の面取り開始角β1Bが60°〜65°とされ、さらに、アキシアルすきまsが、使用するボール3のボール径φDに対して、0.17%<s/D≦1.66%の範囲を満たすように設定されている。
一般的に、図4に比較例を示すように、通常品のボールねじでの内部すきまΔDは、バックラッシを小さくする目的やボールの食込み挙動を抑制する目的から、小さく設定(アキシアルすきまsは、使用するボールのボール径Dに対してs/D≦0.17%(s/D≦1/600))されている。
これに対し、本実施形態のボールねじ10は、いずれの態様においても、図3に示すように、通常品よりもかなり大きな内部すきまΔDを有する。そのため、そのボール3と軌道(ねじ溝11,21)との関係は、同図(b)に示すように、内部すきまΔDを大きくすると、初期接触角αが、図4に示した従来のボールねじよりも大きくなるので、軸方向剛性も増大し、ロストモーションを低減または極小化することができる。
以下、上記実施形態のボールねじ10について、実施例に基づいてより詳しく説明する。
工作機械用のボールねじ(日本精工株式会社製ボールねじ、型式:BS3610)の諸元を表1に示す。表1に第一実施例でのシミュレーション解析の基礎となるボールねじ(通常のボールねじ(比較例)と本発明品)の諸元をそれぞれ示す。
Figure 0006550740
第一実施例は、表1に示す通常品のボールねじ(比較例)と本発明品を用い、実際の接触状態(図3(b)、図4(b))になった場合において、ボールねじの駆動方向反転時におけるロストモーションを低減または極小化したシミュレーション解析である。表1に示す予圧ボールねじを作動させた際の軸方向変位とロストモーションの関係を図5に示す。
図5に示すように、上記すきま/玉径比s/Dを、通常品のすきま/玉径比s/Dよりも大きくすると、ボールねじの軸方向剛性が増大し、作動中のねじ軸とナット間の変位δxF(正方向作動)、δxB(逆方向作動)が低減していることがわかる。また、作動中のねじ軸とナット間の変位δxFとδxBの差異(斜線を施したエリア)、すなわち、ロストモーションΔe=|δxF−δxB|も減少していることが確かめられる。本発明品の構成とするには、所望の内部すきま(すきま/玉径比s/D>0.2%)となるように、通常品のボールねじに対して、内部すきまΔDだけ小さいボール3を組み込むだけでよい。
次に、種々の内部すきま(すきま/玉径比s/D)での実施例とランド面取り部7へのボール3の乗り上げ・下げとの関係について詳しく説明する。
表1に示した第一実施例の予圧ボールねじに対して、アキシアルすきまsを種々に変化(0%≦s/D≦10%)させた場合でのロストモーションとその低減率の解析結果を、それぞれ図6(a)、(b)に示す。
図6から、アキシアルすきまsを大きくすると、ロストモーション低減率RepとロストモーションΔepがともに減少しており、ロストモーションの低減効果も高くなることがわかる。ただし、図7、図8に模式図を対比的に示すように、アキシアルすきまsを大きくすると接触角が増大するのみならず、特に、図8(b)、(c)に符号A,Bで示す箇所において、作動中のボール食込み挙動によって、ねじ溝11,21の肩部のランド面取り部7、8への乗り上げが生じ易くなってしまう(図9の要部拡大図参照)。
図9に拡大図示するように、ランド面取り部7へのボール3の乗り上げが生じると、ねじ溝11の肩部でのエッジ面圧により早期破損となることが懸念される。また、ボールねじ10の作動方向が逆転すると、ボール食込み方向も反転するので、逆方向作動時においては、ねじ軸1の溝底ニゲ1dへの乗り下げや、ナット2のランド面取り部8への乗り上げが懸念される。
そこで、表1に示した本発明品のボールねじ10のアキシアルすきまsとねじ軸1およびナット2のランド面取り部7、8への乗り上げ率、溝底ニゲ1d、2dへの乗り下げ率を解析すると、それぞれ図10(a)〜(d)のようになる。
ただし、本発明品において、ボール3の乗り上げ・下げ率は、下記の(式4)のように定義しており、これらの符号が正のときに乗り上げ・下げが発生していることを示している。なお、ランド面取り部7への乗り上げが生じると、ボール3との接触点は、図9に示したようなだ円形状にはならないが、計算を簡単にする目的から、ランド面取り部7でのエッジ面圧を無視して解析を行った。
Figure 0006550740
図10(a)、(b)より、上記すきま/玉径比s/Dが、s/D>6%となる領域でねじ軸1およびナット2のランド面取り部7、8への乗り上げが生じることがわかる。
一方、図10(c)、(d)より、ねじ軸1およびナット2の溝底ニゲ部1d、2dへの乗り下げは、乗り下げ率は乗り上げ率よりもかなり小さく、すきま/玉径比s/Dが約1.6%を超えるような領域ではさらに乗り下げ率は低下する。よって、アキシアルすきまsを大きくする場合におけるすきま/玉径比s/Dの上限は、ねじ軸のランド面取り部への乗り上げへの影響によって決定されることが明らかである。
ところで、図10(a)〜(d)に示すように、ボールねじ10の作動中の乗り上げ率または乗り下げ率についてみると、すきま/玉径比s/Dが1.8%近傍で変曲点を持つことがわかる。さらに、0%≦s/D<1.8%において、正方向作動あるいは逆方向作動時に、溝F2(すなわち、反負荷側ねじ溝フランク)で乗り上げ・下げが示されている。
これは、0%≦s/D<1.8%の領域では、静止時に2点接触していたボール3が、ボールねじ10の作動中のボール食込み挙動によって3点接触となり、すきま/玉径比s/Dが1.8%を超える範囲では、ボール食込み挙動が生じても、アキシアルすきまsが大きいために、3点接触する前に食込みが飽和したことによる。また、図6から、0%≦s/D<1.8%の領域と、すきま/玉径比s/Dがs/D>1.8%の領域とでロストモーションの低減効果を比較すると、前者の領域では低減効果が大きくなることが確かめられる。さらに、図10(a)〜(d)に示すように、すきま/玉径比s/Dが、0.5%≦s/D≦1.8%の領域で2点接触状態にはなっていないことがわかる。
次に、本発明品に適用するアキシアルすきまsの好適範囲について実施例に基づき詳しく説明する。
先に述べたように、アキシアルすきまsを大きくすると、ロストモーションを低減することができる。しかし、アキシアルすきまsの設定値がある上限を超えると、ねじ軸1のランド面取り部7へのボール3の乗り上げを生じてしまう。ここで、通常品のボールねじでは、すきま/玉径比s/Dの上限は、s/D<0.2%程度であるところ、本発明品では、この値を大きく超える領域で用いられる。そこで、本発明品に適用し得るアキシアルすきまsの上限値を求めるために、種々のボールねじおよびねじ溝形状の内部設計値において、ロストモーション低減率とねじ軸のランド面取り部への乗り上げを調べた。
本発明品に適用する、より有効なすきま/玉径比s/Dの範囲を確かめる目的から、図6および図10で示した本発明品の実施例でのボールねじとは各種諸元が異なるボールねじに対して解析調査を実施した。解析に用いたボールねじは、表2にボールねじの諸元を示すように、先の第一実施例でのボールねじ(BS3610)に加え、第二実施例としての小径ボールねじ(BS1004)、ならびに第三実施例としての大径ボールねじ(BS6316)の3種類である。
Figure 0006550740
表2の諸元に基づき、アキシアルすきまsを種々に変化させた場合での、上記3種類のボールねじに対するロストモーション低減率Reと、ねじ軸1およびナット2のランド面取り部7,8への乗り上げ率ε1B、ε1Mを、それぞれ図11および図12に示す。
図11に示すロストモーション低減率Reより、ボールねじ10の諸元が異なる場合においても、アキシアルすきまsを大きくすればロストモーションが低減できることが確かめられる。
次に、ねじ軸1およびナット2のランド面取り部7、8への乗り上げについては、BS6316のような大径ボールねじでは、溝R比が52%と通常サイズのものより小さくなるので、ボール3のランド面取り部7、8への乗り上げが懸念される。しかし、表2に示す通り、BS6316のような大径ボールねじでは、面取り開始角が他よりも大きめにとられているので、図12に示すように、すきま/玉径比s/Dが約6%を超える領域で乗り上げが始まっていることがわかる。
次に、異なるねじ溝形状の場合での実施例について説明する。
図6、図11を参照して説明したように、本発明品でのロストモーション低減効果は、ボールねじの諸元やサイズにかかわらず成り立つ。しかし、上述したように、本発明品の効果の成立し得るアキシアルすきまsの範囲は、ボールねじ10の作動中のランド面取り部7へのボール3の乗り上げにより制限される。そこで、上記第一実施例を基本として、接触角と面取り開始角が異なる3種類のボールねじに対して、本発明の有効性を解析的に調べた。解析に用いた3つのボールねじの諸元を、それぞれ表3に示す。
Figure 0006550740
表3の諸元に基づき、すきま/玉径比s/Dを種々に変化させた場合での、3種類のボールねじのねじ溝形状K1からK3に対するロストモーション低減率Reを図13に、また、ねじ軸1のランド面取り部7への乗り上げ率ε1B、ならびにナット2のランド面取り部8への乗り上げ率ε1Mとを、それぞれ図14に示す。
図13から、ねじ溝形状K1,K2の場合では、ねじ溝形状は、ランド面取り開始角β1Bとニゲ開始角のみが異なるため、ロストモーションに対する差異が無いことがわかる。ねじ溝形状K3では、ランド面取り開始角β1Bとニゲ開始角のほかに接触角αが異なることから、ロストモーション低減率Reに差異が現れているものの、いずれのねじ溝形状においても、同図のロストモーション低減率Reからも明らかなように、本発明品のロストモーション低減に対する有効性が確かめられる。
次に、図14から、ボール3のランド面取り部7への乗り上げについて各ねじ溝形状を比較すると、ねじ溝形状K1とねじ溝形状K2とでは、ねじ軸1の面取り開始角β1Bがわずかにねじ溝形状K2よりも小さくなっている。このため、ボール3の乗り上げが開始するすきま/玉径比s/Dが、ねじ溝形状K1よりも低い値となることがわかる。
また、ねじ溝形状K3は、他の2つのねじ溝形状K1、K2よりもさらにねじ軸1の面取り開始角β1Bが小さいものの、接触角αが、α=40°と他のねじ溝形状よりも小さくとられているため、ボール3の乗り上げが始まるすきま/玉径比s/Dの値が著しくは低下していない。
一方、図14(b)に示すナット乗り上げ率ε1Mから、ねじ溝形状K1〜3でナット2の面取り開始角β1Mの差異が小さいものの、ねじ溝形状K3だけは、その接触角αが他のねじ溝形状K1、K2よりも小さいので、ボール3の乗り上げが始まるすきま/玉径比s/Dの値が高くなっている。いずれにせよ、図14に示すねじ軸1の乗り上げ率ε1Bのねじ溝形状K3の解析結果から、すきま/玉径比s/Dが、s/D<4.8%の領域においては、本発明品のロストモーション低減に対する有効性が成り立つことが確かめられる。
次に、接触角αを変化させた場合での実施例について説明する。
表1に示した第一実施例のボールねじ10の接触角をα=40°、45°、50°の3通り用意し、これらに対して、すきま/玉径比s/Dを種々に変化させた場合での、ロストモーション低減率Re、ランド面取り部7への乗り上げ率ε1B、ならびにナット2のランド面取り部8への乗り上げ率ε1Mの解析結果を、それぞれ図15および図16に示す。
図15に示すように、接触角αを大きくすると、ロストモーションの低減効果が低くなっていることがわかる。さらに、図16に示すように、接触角αを大きくすると、ボール3の乗り上げが始まるすきまが小さくなっていることも確かめられる。
このように、本発明品では、ボールねじ10のアキシアルすきまsを大きくとることにより、初期接触角αが増加して軸方向剛性も増大するので、その結果としてロストモーションの低減を狙ったものである。ところが、実際は、単に接触角αを大きくしてボールねじの剛性増加を図っても、ロストモーションの低減にはさほど効果を持たないことが明らかにされた。
その理由は、図16をみると、乗り上げ率の曲線は、α=50°の場合では、すきま/玉径比s/D=1.0〜1.1%付近で変曲点を持つのに対し、α=40°の場合では、s/D=2.0%付近で変曲点を持っている。すなわち、接触角αを小さくしたことにより、3点接触し得るアキシアルすきまs(すきま/玉径比s/D)の領域が広くなったことになる。このため、3点接触となる領域(0%<s/D<2%)においてロストモーション低減効果が大きくなったので、接触角αが小さい方が本発明品の有効性が高くなる結果となったものと考えられる。
つまり、本発明品のようにアキシアルすきまsを大きくすると、初期接触角αの増加による軸方向剛性増加だけでなく、3点接触し得るすきま領域の拡大による複合要因から、ロストモーション低減効果が発揮されたものと考えられる。
以上より、ゴシックアーク溝の接触角αが、α≦50°となるようなボールねじに対しては、アキシアルすきまsが、すきま/玉径比s/D≦3.6%であるならば、ロストモーション低減効果の有効性が確かめられた。
次に、溝R比fを変化させた場合での実施例について説明する。
表1に示した第一実施例のボールねじ10の溝R比fを、f=0.52、0.54、0.56の3通り用意し、これらに対してすきま/玉径比s/Dを種々に変化させた場合での、ロストモーション低減率Reを図17に、また、ランド面取り部7への乗り上げ率ε1B、ならびにナット面取り部8への乗り上げ率ε1Mを解析した結果を、それぞれ図18に示す。
図17に示すように、溝R比fを小さくすると、ロストモーション低減率Reからも明らかなように、ロストモーションの低減効果が向上することがわかる。ただし、図18より、溝R比fを小さくすると、ボール3の乗り上げが始まるすきまが小さくなることが確かめられる。
これは、溝R比fを小さくすると、ボール食込み挙動が抑制されてロストモーションが低減されるものの、接触だ円の長軸半径が大きくなるため、ボール3が乗り上げ易くなったためと考えられる。高荷重向けの大径ボールねじでは、接触面圧を低減させる目的から、溝R比fを0.52で設計するものが多いが、本発明が適用できる領域が狭くなる。
次に、ねじ軸1のランド面取り開始角β1Bを変化させた場合での実施例について説明する。
表1に示した第一実施例のボールねじ10のランド面取り開始角β1Bを、β1B=60°、66°、70°、75°の4通り用意し、これらに対して、すきま/玉径比s/Dを種々に変化させた場合でのロストモーション低減率Re、ランド面取り部7への乗り上げ率ε1Bを解析した結果を図19に示す。同図に示すように、ランド面取り開始角β1Bを小さくすれば、本発明品として適用できるすきま/玉径比s/Dの領域が小さくなることがわかる。
次に、ねじ軸1のランド面取り部7へのボール3の乗り上げが最も懸念される場合の実施例について説明する。
すなわち、上述した解析結果から、本発明を適用した際に、ねじ軸1のランド面取り部7への乗り上げが最も懸念されるボールねじ10は、大径ボールねじ(BS6316,溝R比f=0.52)であり、ねじ軸1のランド面取り開始角β1Bが、β1B=60°(ただし,接触角=40°)の構成である(表4参照)。
Figure 0006550740
そこで、上記のような諸元となるボールねじに対し、すきま/玉径比s/Dを種々に変化させた場合での、ロストモーション低減率Reと、ねじ軸1のランド面取り部7への乗り上げ率ε1Bを解析したところ図20(a)、(b)に示す結果を得た。同図に示すように、すきま/玉径比s/Dが、s/D≦1.66%であるならば、本発明が適用できることが確かめられた。
以上、本発明について実施形態並びに実施例に基づき詳細に説明したように、本実施形態のいずれかの態様に係るボールねじ10によれば、ナット単体でのアキシアルすきまsを、使用するボールのボール径φDに対し、第一の態様に係るボールねじでは、すきま/玉径比を、0.17%<s/D≦3.6%とし、また、第二の態様に係るボールねじでは、すきま/玉径比を、0.17%<s/D≦1.66%としたので、内部すきまを大きくすることにより、ボールねじの駆動方向反転時に生じるロストモーションを低減または極小化することができる。なお、本発明に係るボールねじは、上記実施形態並びに実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
1 ねじ軸
2 ナット
3 ボール
7 ねじ軸のランド面取り部
8 ナットのランド面取り部
11 ねじ軸のねじ溝
12 ねじ軸のランド
21 ナットのねじ溝

Claims (3)

  1. ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋状のねじ溝とにより前記複数のボールが公転運動する転動路が形成されるボールねじのナット単体でのアキシアルすきまを設定する方法であって
    当該ボールねじとして、前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝が、いずれもゴシックアーク溝であり、ダブルナット予圧方式または定圧予圧方式によって予圧を付与して用いられ、ボールねじ荷重が前記予圧のみであって、その大きさを動定格荷重の3〜5%としており、ナット単体すきまが無い場合の接触角が40°〜50°、溝R比が0.54〜0.56、および、前記ねじ軸のランド端部の面取り開始角が65°〜75°とされるものを対象とし
    作動中のボール食込み挙動による前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝のランド面取り部への前記ボールの乗り上げを生じさせないように且つ逆方向作動時における前記各ねじ溝の溝底ニゲへの前記ボールの乗り下げを生じさせないように、シミュレーション解析の結果に基づいて、前記ナット単体でのアキシアルすきま、使用する前記ボールのボール径に対して下記(式)を満たす範囲に設定ることを特徴とするボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法
    0.17%<sa/Da≦3.6% (式)
    但し、saはナット単体でのアキシアルすきま、Daは使用するボールのボール径である。
  2. ねじ軸と、ナットと、複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の外周面に形成された螺旋状のねじ溝と前記ナットの内周面に形成された螺旋状のねじ溝とにより前記複数のボールが公転運動する転動路が形成されるボールねじのナット単体でのアキシアルすきまを設定する方法であって
    当該ボールねじとして、前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝が、いずれもゴシックアーク溝であり、ダブルナット予圧方式または定圧予圧方式によって予圧を付与して用いられ、ボールねじ荷重が前記予圧のみであって、その大きさを動定格荷重の3〜5%としており、ナット単体すきまが無い場合の接触角が40°〜50°、溝R比が0.52〜0.54、および、前記ねじ軸のランド端部の面取り開始角が60°〜65°とされるものを対象とし
    作動中のボール食込み挙動による前記ねじ軸および前記ナットの各ねじ溝のランド面取り部への前記ボールの乗り上げを生じさせないように且つ逆方向作動時における前記各ねじ溝の溝底ニゲへの前記ボールの乗り下げを生じさせないように、シミュレーション解析の結果に基づいて、前記ナット単体でのアキシアルすきま、使用する前記ボールのボール径に対して下記(式)を満たす範囲に設定ることを特徴とするボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法
    0.17%<sa/Da≦1.66% (式)
    但し、saはナット単体でのアキシアルすきま、Daは使用するボールのボール径である。
  3. 請求項1または2に記載のボールねじのナット単体でのアキシアルすきま設定方法を用いてボールねじを製造することを特徴とするボールねじの製造方法。
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