JP6550018B2 - マルチキャリア光受信機、および、光伝送システム - Google Patents
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Description
波長分散については、1.3μm帯にゼロ分散波長をもつG.652光ファイバを用いる場合、既存100GbEの1.3μm帯の信号光波長における波長分散の影響はほとんどない。
一方、PMDとは、ファイバに入射された光パルスの個々の成分が、ファイバ内の屈折の変化により、それぞれ異なる時刻で出力端に到達する現象である。敷設光ファイバの測定値として、PMD係数が4.79 ps/√km(非特許文献2)や0.94 ps/√km(非特許文献3)といった値が報告されている。これらの値は10 Gbit/sの光信号伝送時はあまり問題とならなかったが、よりビット間隔が狭まった25 Gbit/s光信号の伝送においては無視できない値となる。
まず、直接検波の一例として、デジタル符号「1」を光強度「オン」にし、デジタル符号「0」を光強度「オフ」に変調するIM−DD方式が挙げられる。直接検波は、しくみが簡単なため、モジュールの小型化が容易であるものの、PMDの影響により時間的に広がった信号成分を直接受信するためPMDに対する耐性は低い。
なお、PMDや波長分散による光信号波形歪を含めた伝送特性を評価する指標として、受信信号に対するEVM(Error Vector Magnitude)が知られている(非特許文献5)。
しかし、IM−DD方式は小型化には優れるが光ファイバの特性に起因する伝送特性劣化に弱い。一方、DP−QPSK信号を用いる既存の100Gデジタルコヒーレント方式は、光ファイバの特性に起因する伝送特性劣化に対する耐性に優れるが、構成が複雑であるので小型光モジュールへの適用は困難である。このように、両方式は一長一短である。
つまり、マルチキャリア光受信機は、光ファイバを介して2つの光信号を直接検波方式で独立に受信する光受信モジュールと、
前記光受信モジュールが受信した2つの光信号をそれぞれデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータが変換した2つのデジタル信号からコヒーレント検波方式のデジタル信号を擬似的に生成する疑似信号回路と、
前記疑似信号回路が生成した疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号に対して信号波形の適応等化を行うデジタル信号処理器とを有しており、
前記疑似信号回路が、
前記A/Dコンバータが出力する2つのデジタル信号に対して、パルスの中心が互いに一致するように遅延を調整する遅延回路と、
前記遅延回路が出力する2つのデジタル信号に対して、各信号を正規化することで振幅を変換し、その正規化後の2つのデジタル信号を2次元の複素平面上に合成することで1つの前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号とする振幅変換回路とを有することを特徴とする。
前記疑似信号回路が擬似的に生成したコヒーレント検波方式のデジタル信号に対して適応等化処理により信号波形整形を行う適応等化回路と、
前記適応等化回路の出力信号に対して位相回転成分を補正する位相補正回路と、
前記位相補正回路の出力信号に対してデータ信号列を復調する識別回路とを有することを特徴とする。
前記振幅変換回路が、前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号として、QPSKの信号に合成することを特徴とする。
前記振幅変換回路が、前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号として、M2−QAM(Quadrature Amplitude Modulation)の信号に合成することを特徴とする。
前記光ファイバを介して前記マルチキャリア光受信機に対して光信号を送信するマルチキャリア光送信機とを含めて構成され、
前記マルチキャリア光送信機の光送信モジュールが、前記光受信モジュールと対応する直接検波方式で光信号を送信することを特徴とする。
前記疑似信号回路が、2つのデジタル信号を1つの前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号へと合成する処理をn組分行うことで、2n個のデジタル信号からn個のデジタル信号を擬似的に生成することを特徴とする。
図1(a)の光伝送システムは、マルチキャリア光送信機1の光送信モジュール11から光ファイバ9を介してマルチキャリア光受信機2の光受信モジュール21へと信号を送信する。
なお、マルチキャリア光送信機1、マルチキャリア光受信機2は片方向の通信をサポートしてもよいし、双方向の通信をサポートしてもよい。双方向の通信をサポートするときは、マルチキャリア光送信機1が光受信モジュール21を有し、マルチキャリア光受信機2が光送信モジュール11を有する。
なお、採用する直接検波方式は、例えば、2組の強度変調直接検波方式(IM−DD方式)でもよいし、2組のM値振幅変調直接検波方式でもよい。
そこで、疑似信号回路23は、前段のA/Dコンバータ22から出力されたデジタル信号をもとに、後段のDSP24に入力するための疑似的なQPSK信号を生成する。これにより、通常のデジタルコヒーレント方式と異なり、受信信号における光信号の位相情報が失われるため、波長分散やPMDなどの光ファイバの特性に起因する伝送特性劣化を完全に補償することはできない。しかし、メトロネットワークのような比較的伝送距離が短い領域であれば、光ファイバの特性に起因する伝送特性劣化に対する耐性を充分に高めることができる。
遅延回路23aは、A/Dコンバータ22から出力されたデジタル信号の遅延を制御する。
図2は、遅延回路23aの処理内容の説明図である。
まず、遅延調整前のデジタル信号について、符号101,102を参照して説明する。
符号101にて、遅延回路23a内の各回路(図1(b)のτ1を上側とし、τ2を下側とする)には、それぞれ直接検波された光信号が入力される。光信号の横軸が時間軸であり、縦軸が光強度である。
符号102にて、符号101の破線縦線で示した基準時刻における2つの波形の光強度が、それぞれグラフの横軸(I軸)として示される。上側のグラフでは、基準時刻において2つの波の高さが上限と下限に位置しているので、符号102のI軸の大きさも上限(I=+1)〜下限(I=0)の範囲(2つの点)で示される。
符号111では、符号101の状態から上側のグラフはそのままであるが、下側のグラフを少し時間調整させる(左にずらす)ことで、上下のグラフがともに基準時刻において上限下限のピークとなるように調整される。
符号112は、符号111に対応するグラフであり、上下のグラフがともに基準時刻において上限(I=+1)〜下限(I=0)の範囲で示される。
一方、特開2015−65516号公報に記載の光伝送システムなどの先行技術では、相関がある2信号に対する信号処理のため、ビットパターンが一致するようビット単位で遅延を調整する必要があり、最大遅延量は伝送路間の遅延差となる。よって、先行技術での遅延調整処理は複雑になってしまい、小型化が困難である。
符号121は、図2の符号112と同じグラフである。つまり、遅延回路23aの出力信号が振幅変換回路23bの入力信号となる。
符号122は、振幅変換回路23bが符号121で示す信号を正規化したものである。横軸(I軸)の下限値(最も左に位置する点)が、I=0からI=−1へと広がっている。以下、符号122の2信号について、上側のグラフで示される信号を信号I1(t)とし、下側のグラフで示される信号を信号I2(t)とする。
振幅変換回路23bは、符号122の信号をもとに、計算式「Ex(t)=I1(t)+jI2(t)」により、疑似信号Ex(t)を生成する。
なお、非特許文献4には、適応等化回路24aの出力(式1)に対して(式2)を用いてFIRフィルタのタップ係数h11を更新する旨が記載されている。つまり、図1(b)の適応等化回路24a内の「Tap update」とは、FIRフィルタのタップ係数h11を更新する機構である。
そして、識別回路24cは、位相補正回路24bから出力された複素信号をもとにデータ信号列を復調し、後段(他装置)へと出力する。
図4(a)は、評価用の実験環境であり、光送信モジュール11として、1551.72 nmから1552.92 nmの範囲で50GHz間隔の波長配置された4 x 25.8 Gbit/sのNRZ信号を送信する合計4台の送信器(Tx)からの送信信号を、合波器が信号光パワー0 dBm/チャネルで1本の光ファイバ9に入力するように構成される。この伝送路条件として、ゼロ分散波長が1310 nmのG.652光ファイバを用い、光信号帯域における光損失値は0.3 dB/kmとする。そして、光受信モジュール21では、光ファイバ9で伝送された信号を分波器が4つの受信器(25G Rx)に出力する。
「従来IM−DD」と「本発明」とは、光送信モジュール11→光受信モジュール21の変復調方式としてIM−DDを用いる点は共通するので、モジュールの小型化はともに容易である。
さらに、「本発明」は、図4(b)のグラフに示すように、短距離だけでなく中距離(〜20km)あたりまでEVMの値が低いので、伝送特性がよい。つまり、既存FECであるReed-Solomon [255,239]で訂正可能なビットエラーレート1E-4に相当するEVM 25%以下を満足する伝送距離が、「従来IM−DD」において15kmに対して「本発明」を用いることで20kmまで長延化されている。
PC31は、DGD32による波形劣化を最大とする偏波状態に受信信号を調整する偏波コントローラである。DGD32は、伝送路の最後に設けられ、危険率1E-4に相当するDGD=3・PMD[ps]を与えることでPMDを模擬するDGDエミュレータである。
図5(a)では、送信信号として、100GbEの仕様となる1295.56 nmから1309.14 nmの範囲で波長配置された4 x 25.8 Gbit/sのNRZ信号を用い、信号光パワー0 dBm/チャネルで伝送路に入力する。伝送路条件として、ゼロ分散波長が1310 nmのG.652光ファイバを用い、PMD係数を1 ps/√km、光信号帯域における光損失値を0.4 dB/kmとする。
また、安価な光モジュールの使用が可能となることに加えて、DSP24の実装内容や設計内容に既存のものを流用することで、デジタル信号処理部分の開発費の削減も期待される。
2 マルチキャリア光受信機
9 光ファイバ
11 光送信モジュール
21 光受信モジュール
22 A/Dコンバータ
23 疑似信号回路
23a 遅延回路
23b 振幅変換回路
24 DSP(デジタル信号処理器)
24a 適応等化回路
24b 位相補正回路
24c 識別回路
Claims (6)
- 光ファイバを介して2つの光信号を直接検波方式で独立に受信する光受信モジュールと、
前記光受信モジュールが受信した2つの光信号をそれぞれデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータが変換した2つのデジタル信号からコヒーレント検波方式のデジタル信号を擬似的に生成する疑似信号回路と、
前記疑似信号回路が生成した疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号に対して信号波形の適応等化を行うデジタル信号処理器とを有しており、
前記疑似信号回路は、
前記A/Dコンバータが出力する2つのデジタル信号に対して、パルスの中心が互いに一致するように遅延を調整する遅延回路と、
前記遅延回路が出力する2つのデジタル信号に対して、各信号を正規化することで振幅を変換し、その正規化後の2つのデジタル信号を2次元の複素平面上に合成することで1つの前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号とする振幅変換回路とを有することを特徴とする
マルチキャリア光受信機。 - 前記デジタル信号処理器は、
前記疑似信号回路が擬似的に生成したコヒーレント検波方式のデジタル信号に対して適応等化処理により信号波形整形を行う適応等化回路と、
前記適応等化回路の出力信号に対して位相回転成分を補正する位相補正回路と、
前記位相補正回路の出力信号に対してデータ信号列を復調する識別回路とを有することを特徴とする
請求項1に記載のマルチキャリア光受信機。 - 前記光受信モジュールは、直接検波方式として、2組のIM−DD(Intensity Modulation-Direct Detection)方式を用いて光信号を受信し、
前記振幅変換回路は、前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号として、QPSK(Quadrature Phase-Shift Keying)の信号に合成することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のマルチキャリア光受信機。 - 前記光受信モジュールは、直接検波方式として、2組のM値振幅変調直接検波方式を用いて光信号を受信し、
前記振幅変換回路は、前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号として、M2−QAM(Quadrature Amplitude Modulation)の信号に合成することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のマルチキャリア光受信機。 - 請求項1または請求項2に記載のマルチキャリア光受信機と、
前記光ファイバを介して前記マルチキャリア光受信機に対して光信号を送信するマルチキャリア光送信機とを含めて構成され、
前記マルチキャリア光送信機の光送信モジュールは、前記光受信モジュールと対応する直接検波方式で光信号を送信することを特徴とする
光伝送システム。 - 前記マルチキャリア光送信機から前記マルチキャリア光受信機に対して2つの光信号を1組としてn組の光信号を送信し、
前記疑似信号回路は、2つのデジタル信号を1つの前記疑似的なコヒーレント検波方式のデジタル信号へと合成する処理をn組分行うことで、2n個のデジタル信号からn個のデジタル信号を擬似的に生成することを特徴とする
請求項5に記載の光伝送システム。
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JP2016136062A JP6550018B2 (ja) | 2016-07-08 | 2016-07-08 | マルチキャリア光受信機、および、光伝送システム |
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Family Applications (1)
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