JP6548374B2 - 低真空用荷電粒子線装置 - Google Patents

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本発明は、リターディング電圧を用いた低真空用荷電粒子線装置に関するものである。
半導体デバイスはムーアの法則に従って、毎年縮小が進み、最先端デバイスでは量産段階のデバイスでも最小フィーチャーサイズが20nmを切ろうとしている。小さなフィーチャーサイズを実現するためには、より小さなパターンを形成できる露光技術が必要である。
従来は波長193nmのレーザー光線が露光に使用されてきたが、光学的に分解できる限度を既に大きく超えているため、近年では波長が13.5nmのEUV光を利用する露光技術が精力的に進められている。
この技術は日本発と言われる技術であるが、10年以上昔からASML等で実用化に向けて研究開発されている。露光装置本体光学系はほぼ完成しているが、現状のEUV露光装置は経済的量産に必要とされる100Wから200Wの光源パワーを得ることが出来ないため、20nm世代の露光に使用することはスキップされた。
その代わりに既存の波長193nm露光プロセスを複数回繰り返し行うことでさらに小さなフィーチャーサイズを実現することができる、いわゆるダブルあるいはトリプル露光技術が実際の生産現場では用いられている。原理上は波長193nmのレーザー光線を用いた液浸リソグラフィーを複数回繰り返すことにより幾らでも小さなパターンを作ることが可能であるが、従来よりも1ケタ高い精度のnmオーダーのアライメント精度が必要なことや化学増幅レジストの大きな分子構造から来る大きなラフネス等が繰り返し露光プロセスの制限になることが知られている。現在は、経済的限度と言われている露光プロセスを2回繰り返すダブルパターニングが実用に供せられており比較的構造の簡単なメモリーデバイスでは、20nmから16nmのライン&スペースを実現するために利用されている。
構造の簡単なメモリーデバイスだけでなく、CPUやロジックデバイスも機能拡充や消費電力低減のためにパターン縮小を行うことが必要である。ロジックデバイスは繰り返しの無い複雑なパターンを利用するためロジックデバイスをダブルあるいはトリプル露光で作るためには相当複雑なパターンが必要である。本来1回の露光で実現出来るパターンを複数回の露光で利用可能な用に2枚のフォトマスク上のパターンに分割するためには非常に複雑な計算が必要である。パターンによっては分割計算が発散するなどして必要な結果が得られない場合がある。
これらの複雑さを回避する目的で、コンプリメンタリーリソグラフィーと呼ばれる、主にインテルが提唱しているリソグラフィー容易化技術が使われようとしている。この露光方法では、複雑なロジック回路をメモリー回路の様なL&Sの簡単なパターンに還元したパターンを利用することに特徴がある。このようにすることで、複雑なロジックデバイスのパターンを最も露光しやすいL&Sパターンとそのラインをカットするプロセスのみに限定しているため、複雑なパターン分割計算が必要なく、プロセスは簡単で、計算上は8nm程度まで行くとされている。
一方、以上述べたように193nm露光技術が延命されると、それに利用されるフォトマスクはレイヤー毎に露光回数分増加し、従来以上に多くのマスク検査や精密な寸法測定が要求されるようになる。例えば、ダブルパターニングでは、2枚のフォトマスクを順次重ねて用いるため、2枚のマスク間のマスク上に形成されているラインの絶対位置精度やアライメント精度が今まで以上に重要である。より細かいパターンを露光するための光学補正も複雑かつ、精密になる。インバースリソグラフィーを用いたマスクなどは、高次の回折高まで使用するため、補正に利用するパターンサイズはさらに小さい。
これらのマスクが正しい寸法で出来ているかどうかを調べるためには、電子顕微鏡技術が必須であるが、高精細画像を取得するためにはサンプル表面にビームスポットサイズの小さな電子を照射して、信号電子を検出する必要があるが、その際、サンプル表面がチャージして照射電子ビームや信号電子に悪影響を与えないことが必須である。
従来から、電子ビーム光学系の収差を小さくする目的で、リターディング法が用いられている。この方法は、一旦、電子ビームのエネルギーを数十KVの高いエネルギーにしてから、電子光学系を用いて電子ビームを絞り、試料に加えた逆バイアスによって、電子のエネルギーを1KV以下に減速して照射する方式である。電子ビームはエネルギーが大きいほど波長が短くなり、ビームサイズを小さく絞ることが出来るようになり画像分解能が向上する。しかしながら、半導体デバイスなどを高エネルギー電子ビームで直接観察すると、高エネルギーの電子が半導体に半永久的な作用を起こしてデバイスにダメージを与えることが分かってきた。それを防止する意味で、半導体用CDSEMではビームサイズを絞りながらかつ、照射時の電子ビームエネルギーを下げるためにリターディング法が用いられている。
リターディング法は、測定対象サンプルに任意の逆バイアス電圧を掛けることが出来るため、2次電子放出効率が1になるように照射電子ビームのエネルギーを調整できることが特徴となっている。2次電子放出効率が1である場合、入射する電子の個数とサンプルから出ていく電子の個数が等しいため、サンプル表面には電荷蓄積が起こらないため、チャージアップに強いと言われている。
しかしながら、サンプルが純粋な石英で出来たフォトマスクあるいはナノインプリント用テンプレートでは、電圧を加えるために用いるサンプル支持台とフォトマスクの表面では電位が異なるため、2次電子放出効率が1になるように調節するのは、極めて困難である。そのため場合によっては、画像が真っ白になって観察できないことが知られている。また、プロセス起因で電荷がサンプル表面近くにまばらに蓄積してしまった場合は、サンプルの表面電位は場所によって異なり、照射エネルギーの最適点を見つけることが出来ずレターディング法は無力である。
一方、1Pa以下の低真空に真空チャンバーの雰囲気を制御することで電子ビーム照射によってプラスマイナスイオンを積極的に発生させて、余剰電荷がサンプル表面に蓄積するのを防止して、石英であっても安定に電子ビーム観察できるようになることが知られている。
リターディングによる収差低減効果、2次電子放出効率調整効果および低真空による表面電荷蓄積防止効果が同時に実現できれば、電子ビーム観察はどのようなサンプルに対しても非常に安定になる。
しかしながら、低真空を実現するためには真空中にガスを導入するため、リターディングのための高電圧をサンプルに加えるとポールピースとの間でガスがイオン化して放電が起こり、装置あるいはサンプルが破損するなど、不具合が起こることが知られており、そのままではリターディング法を採用することが出来ないなどの問題がある。
本発明は、これらの問題点を解決し、荷電粒子で走査したサンプルのチャージを中和できる低真空状態であっても安定に目的とするリターディング電圧を印加することができることに加えて、低ランディングエネルギーの荷電粒子をサンプルに照射できるようにすることを目的とする。
そのため、本発明は、サンプルに照射する荷電粒子をリターディング電圧により減速してサンプルに照射しつつ走査してそのときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を検出するリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置において、荷電粒子を発生させる荷電粒子線源と、荷電粒子線源で発生された荷電粒子を加速する加速電圧と、加速電圧で加速された荷電粒子を細く絞ってサンプル面に照射する対物レンズと、対物レンズでサンプル面に細く絞って照射される荷電粒子をサンプル面上で平面走査させる偏向走査系と、細く絞った荷電粒子をサンプルに照射しつつ平面走査したときに放出された荷電粒子を検出する検出器とを高真空側に設け、サンプルを収納して所定低真空に保持し、チャージを中和するための真空チャンバーを低真空側に設け、低真空側と高真空側との間に中心に穴を配置した低真空側に面して第1のアパチャーおよび高真空側に面して第2のアパチャーを連結して設け、第1のアパチャーに加速電圧で加速されて細く絞られた荷電粒子を減速するリターディング電圧を印加して荷電粒子線を減速してサンプルに照射すると共に、細く絞った荷電粒子をサンプルに照射しつつ平面走査したときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を第1のアパチャーの中心の穴および第2のアパチャーの中心の穴を逆方向に走行させ、該走行させた2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を検出器で検出するようにしている。
この際、第1のアパチャーと第2のアパチャーとの間の空間を差動排気するようにしている。
また、第1のアパチャーおよび第2のアパチャーの中心の穴の直径を0.005ないし数mmの任意とするようにしている。
また、第1のアパチャーに,サンプルに照射する荷電粒子線のエネルギーを数百Vないし数KVの範囲内の任意になる、減速電圧を印加するようにしている。
また、第1のアパチャーに,数KVないし十数KVのリターディング電圧を印加するようにしている。
また、第1のアパチャーを対物レンズの下極および第2のアパチャーを対物レンズの上極に連結し、第1のアパチャーと第2のアパチャーとの間の空間を差動排気するようにしている。
また、第1のアパチャーと第2のアパチャーとの間を高抵抗材料で連結し、汚染などしたことによる放電の影響を軽減するようにしている。
また、第2のアパチャーの荷電粒子線源側に円筒状の電極を設け、加速電圧で加速された荷電粒子線を更に加速するブースタ電圧を印加するようにしている。
また、第1のアパチャーにリターディング電圧を印加する代わりに、第2のアパチャーにリターディング電圧を印加、あるいは第1アパチャーと第2のアパチャーの両者にリターディング電圧を印加するようにしている。
また、検出器に2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を吸引する電圧を印加するようにしている。
本発明は、荷電粒子で走査したサンプルのチャージを中和できる低真空状態であっても安定に目的とするリターディング電圧を印加することができることに加えて、低ランディングエネルギーの荷電粒子をサンプルに照射できる。
また、リターディング電圧を調整し、サンプルの表面にチャージの発生が可及的に少なくなるようにすると共に、どうしても発生してしまったチャージを、低真空状態でガスを分離して生成したプラスとマイナスの電荷で中和して除去することができる。これにより、どのような表面状態を持つサンプルにおいてもサンプル上に生じるチャージ(電荷)を除去し、高分解能の画像を観察、取得し、測長できる。
本発明は、荷電粒子線源と、荷電粒子を加速する加速電圧と、荷電粒子を細く絞ってサンプル面に照射する対物レンズと、偏向走査系と、検出器とを高真空側に設け、所定低真空に保持してチャージを中和するための真空チャンバーを低真空側に設け、低真空側と高真空側との間に第1のアパチャーと第2のアパチャーを連結して設け、第1のアパチャーに加速電圧で加速されて細く絞られた荷電粒子を減速するリターディング電圧を印加して荷電粒子線を減速してサンプルに照射すると共に、細く絞った荷電粒子をサンプルに照射しつつ平面走査したときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を第1のアパチャーの中心の穴および第2のアパチャーの中心の穴を逆方向に走行させ、該走行させた2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を検出器で検出し、荷電粒子で走査したサンプルのチャージを中和できる低真空状態であっても安定に目的とするリターディング電圧を印加することができることに加えて、低ランディングエネルギーの荷電粒子をサンプルに照射することを実現した。
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。図1は全体構造図を示し、荷電粒子線のうち負の電荷をもつ電子の場合の1実施例構成の例を示す。正の電荷をもつイオンの場合も正の電荷に対応した同様の構成を有するものである。以下、負の電荷をもつ電子の場合を例に詳細に説明する。
図1において、電子銃1は、電子を発生させるものであって、例えば先端の尖ったエミッター(加熱してもよい)に引出電圧を印加して電子を引出し、これを加速電圧で加速して1次電子を放出する公知のものである。
1次電子2は、電子銃1から放出され、図示外のアノード(陽極)に印加された電圧(アノード電圧21)で加速された1次電子である。エネルギーは必要によって数KVから数10KVを発生させる。尚、1次電子2のエネルギーは正確にはアノード電圧21ではなく、これに1次電子2のアノード電圧で加速される前の初速度(数eV)を加えたものであるがこれは小さな値であるので、ここでは、説明を簡単にするためにアノード電圧21を当該1次電子2のエネルギー(電圧)として以下説明する。
コンデンサレンズ3は、電子銃1から放出された1次電子2を集束する公知のものである。
ブランキング電極4は、電子銃1から放出された1次電子2を、通過させたり、遮断させたりするものであって、平行平板に電圧を印加して1次電子2を偏向してブランキングアパチャー5の穴の外に照射して実質的に当該1次電子2を遮断する公知のものである。
ブランキングアパチャー5は、軸上に小さな穴を設けたものであって、ブランキング装置4によって1次電子2を偏向したときに遮断する公知のものである。
電子検出器6は、中心に1次電子2を通過する穴を有し、かつその周辺に2次電子、反射電子を検出する検出面を有するものであって、必要に応じて所定の高電圧を印加して2次電子を吸引して検出するものである。尚、電子検出器6の内側に円筒電極を設けてこれに負の電圧を印加し、サンプル12から放出された2次電子、更に反射された反射電子を軸の外周に配置した電子検出器6の検出面に追い返す作用を持たせてもよい。
偏向器7は、1次電子2を偏向し、サンプル12の上に対物レンズ8により細く絞られた1次電子を、平面走査する公知のものである。
ブースタ電極17は、ブースタ電圧22を印加する電極であって、アノード電圧21を有する1次電子21のエネルギーを加速(あるいは必要に応じて減速)したり、後述するリターディング電圧で1次電子2を減速する際に、可及的にリターディング電極の近くまで初期の加速電圧で走行させて減速による対物レンズなどによる収差の低減を抑止したり、するものであって、ここでは、ブースタ電極17に印加されたブースタ電圧22に加速(あるいは減速)するものである。
対物レンズ8は、1次電子2を細く絞ってサンプル12の面上に照射するものである。
真空チャンバー9は、サンプル12などを低真空中に保持する容器であって、図示外の真空排気系により真空排気される公知のものである。
圧力センサ10は、真空チャンバー9内の低真空を検出するセンサである。
差動排気アパチャー11は、2段の差動排気用のアパチャーであって、低真空側のサンプル12に面した側に差動排気アパチャー(下、第1)11を設け、高真空側に面した側に差動排気アパチャー(上、第2)11を設け、低真空側から高真空側の間に空間を設けるためのものである。この空間は、必要に応じて図示外の真空排気系で真空排気(差動排気)する。このアパチャーに酸化膜、チッカ膜、炭素膜等の電子透過薄膜が設けられていてもよ良い。差動排気アパチャーの典型的なサイズは0.005mmから数mmの範囲である。差動排気アパチャーは1つの装置に2つ以上の真空度を持つ場所を提供する技術であり、高真空を必要とする、電子銃あるいはMCP等の電子検出器が動作できる環境をチャンバーの低真空環境とともに提供する。
サンプル12は、1次電子2を細く絞って照射しつつ平面走査し、放出された2次電子、反射電子を検出し、画像を生成する対象のサンプル、例えばフォトマスク、シリコンウェハ、GaAsウェハー、ナノインプリント用テンプレート、プラスチックシートなどである。サンプル12は、所定の電圧(サンプル電圧24)を印加するときには当該サンプル12とXYステージ13との間は図示外の絶縁物(絶縁板)で絶縁する。
XYステージ13は、サンプル12をX方向およびY方向に精密に移動させるものであって、図示外のレーザー干渉計によりリアルタイムに精密に位置を測長しつつ移動させる公知のものである。
TMP14は、ターボ・モレキュラー・ポンプであって、オイルフリーの大気圧から高真空まで真空排気する排気系の例であって、ここでは、真空チャンバー9を所定圧力(例えば大気圧から1Pa、更に必要に応じて高真空)まで真空排気するものである。
マスフローコントローラ15は、圧力センサ10からの真空チャンバー9内の圧力情報をもとに指定された圧力に真空チャンバー9内の真空がなるように、GAS16からのガスを当該真空チャンバー9に流入するように調整するものである。
GAS16は、N2,O2などの真空チャンバー9に流入させる高純度のガスを格納したボンベである。
アノード電圧21は、電子銃1内の図示外のアノード電極に印加して1次電子2を加速する電圧である。
ブースタ電圧22は、1次電子2を更に当該ブースタ電圧22で加速(あるいは減速)し、対物レンズ8による収差の影響を低減(加速した電圧分だけ低減)し、サンプル12上でより細い1次電子2に絞るために印加する電圧である。
リターディング電圧23は、ブースタ電圧22で加速された1次電子(あるいは1次電子)2を減速する電圧であって、通常、サンプル12に数百Vないし2KV程度の低エネルギーの1次電子で照射しつつ平面走査し、高分解能にするためのものである。尚、サンプル12に応じて更に低電圧あるいは高電圧にしてもよい。リターディング電圧はサンプルのチャージアップが起こらないような電圧に設定するのが望ましい。
サンプル電圧24は、サンプル12に印加する電圧であって、通常は0Vである。必要に応じて、リターディング電圧23と当該サンプル電圧24との差分がサンプル12を照射する1次電子のエネルギー(電圧)となるので、サンプル12に照射するエネルギー(電圧)が適切となるように当該サンプル電圧24を0Vでなく、任意の電圧に設定してもよい。
以上の構成のもとでの動作を簡単に説明する。
(1)サンプル12をXYステージ13に固定し、真空チャンバー9内をTMP14によって排気し、圧力センサ10で検出した圧力が所定の圧力となるように、マスフロー15によってGAS16からのガスを真空チャンバー9に流入させる量を調整する。これにより、真空チャンバー9内は所定の低真空状態(例えば1ないし100Pa)に保持される。
(2)(1)と同時に、差動排気アパチャー11の上部の高真空側は図示外の高真空排気系により高真空に排気する。
(3)ここで、低真空側と高真空側との間に、本発明の、中心に穴を有する2段の差動排気アパチャー11が設けられているため、両者(低真空側と高真空側と)でそれぞれ所望の真空を保持することができると共に、本発明では差動排気アパチャー11の下(サンプル12に近い方の下(あるいは上、あるいは両者でもよい))にリターディング電圧23を印加して減速して1次電子2のエネルギーを低エネルギーにしてサンプル12に照射しつつ平面走査するために、(1)対物レンズ8による収差の影響(1次電子2を低エネルギーにして収差が大きくなる影響)を小さくして細く絞った1次電子2をサンプル12に照射しつつ平面走査し、高分解能の画像を取得でき、(2)かつ低エネルギーの1次電子2でサンプル12の表面を照射しつつ平面走査して当該サンプル12のごく表面からの2次電子を放出させて高分解能の信号を取得でき、かつ(3)低真空状態においたサンプル12に1次電子2を照射するために当該低真空中のガスと衝突して分離してプラスとマイナスの電荷が発生し、サンプル12上に生じた電荷を中和し、サンプル12のチャージによる影響を低減(あるいは除去)できるという顕著な効果が得られる。
以下図2から図10を用いて順次詳細に説明する。
図2は、本発明の1実施例構成図(詳細)を示す。
図2の(a)は構成図(詳細)を示し、図2の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図2で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図2の(a)において、差動排気アパチャー(下)11、差動排気アパチャー(上)11は、図示のように、絶縁体18を介して対物レンズ8の下極に連結したものであって、リターディング電圧23(例えば−9KV)を印加したものである。
真空チャンバー9は、低真空状態に保持、ここでは、例えば100Paに保持されている。低真空状態は、望ましくは1Paから100Pa,更に大気圧の範囲で実験を行って決めればよい。1Paよりも圧力が小さくなると、低速エネルギーの1次電子2をサンプル12に照射しつつ平面走査したときに、ガスとの衝突確率が小さくなりすぎ、ガスを分離してプラスとマイナスの電荷を十分に生成できず、サンプル12の表面の電荷を中和が困難となるので、最適な値は実験で求めて決めればよい。尚、高真空側は、本例では1mPaとしたが、これに限られず、通常100mPaよりも高真空であればよい。
ブースタ電極17は、ブースタ電圧22(例えば10KV)を印加し、1次電子2を加速する電圧を印加するものである。対物レンズ8を構成するポールピースの内側には、1次電子2を加速するためのブースター電極17を設け、これにより対物レンズ8に入射する前に、減速電圧によって1次電子2のエネルギーが減速するのを防止したり、1次電子2のエネルギーを大きくすることが出来る。例えば、この電極に10KVの電圧を加えると、8KVで電子銃1を出射した1次電子2は10KVに加速されて、対物レンズ8に入射し、対物レンズ8の先端には2つのアパチャーが連続している差動排気アパチャー11が絶縁体18によって支えられている。
放電を避けるためには、ガスイオンが大量発生しないように高電圧が加えられる場所の真空度を上げるのがよい。もちろん材料は予め真空加熱処理を行って脱ガス処理を行っておくことが望ましい。差動排気アパチャー11を構成する2つのアパチャーの間はTMPなどの真空ポンプで強烈に引くようになっており、2つのアパチャーの圧力差、つまり、真空チャンバー9の真空度と差動排気アパチャー11の上の部分は3桁の真空度差が実現できる。例えば、サンプル12の周辺が100Paの時に差動排気アパチャー11の電子源側では、0.1Paが実現できる。このようにすると、差動排気アパチャー11の上の空間は高真空となり、通常のガス放電は起こりにくくなるため、1mmのギャップで数KV以上の真空絶縁耐圧が実現できる。一方、差動排気アパチャー11の下の真空チャンバー9に近い側の真空度は1Paから100Pa程度の低真空状態に保つことができる。パッシェンの法則により、ある条件下では低真空状態でも放電を避けてある程度の高圧を印加することが出来るが、本実施例ではそれ以上の高電圧を加える場合でも放電が起こらないようにできる。
放電を避けるためには、低真空部において高電位差が起きないようにすることも大事である。本実施例では、従来のSEM構造では、放電が起きやすい差動排気アパチャー11とサンプル12との間の電位が同じになるように電気的に制御する。このようにすると低真空状態にある差動排気アパチャー11の先端とサンプル12との間には高電圧が掛からないため、原理的に放電は起こらない。一方、差動排気アパチャー11とサンプル12にはリターディング効果に必要な高電圧(リターディング電圧23)が加えられる。例えば、電子銃1から出射する1次電子2のエネルギー(電圧)が8KVで、ブースター電極17で10KV(ブースタ電圧22)に加速し、差動排気アパチャー11とサンプル12との電位を-9KVに設定すれば、サンプル12へのランディング電圧は1KVが実現できる。一方、差動排気アパチャー11とサンプル12との間の電位差は0KVとなり放電は起こらない。高電圧は高真空側の部分にのみに加えられるので、通常の高真空における沿面放電対策等を行えば、十分の上記の電位差に耐えることが出来る。
以上の方法によって、真空チャンバー9のサンプル12の周辺圧力を低真空状態に保ちながらリターディング電圧23を印加でき、該リターディング法は、1次電子2のエネルギーを変えることで、更に、2次電子放出の効率を変化させることができるので、サンプル12の表面に電荷が蓄積しない条件を作ることが出来る。リターディング法ではサンプル12の全ての部分の電荷蓄積を0にすることは出来ないが、その0には成らない部分を本発明の低真空状態でガスを分離してプラスとマイナスのイオンを発生させて、サンプル12上の電荷を中和して除去することにより、極めて安定度の高い、サンプル12の観察、測定が可能になる。
図3は、本発明のアパチャーサイズと真空度の関係例を示す。図中で横軸の条件は真空チャンバー9内の真空度であって、Paを表す。縦軸のアパチャー上、アパチャー下は図1、図2の差動排気アパチャー11の上、下を表し、チャンバーは低真空側の真空チャンバー9を表し、MCP室は高真空側のMCP室(電子検出器の存在する空間)を表す。
例えば右下の
・アパチャー上:0.25mmΦ
・アパチャー下:0.5mmΦ
・チャンバー :95Pa
・MCP室 :1.3×10-3
が実験で得られた。即ち、図1、図2の差動排気アパチャー11の上の穴が0.25mmΦ、下の穴が0.5mmΦの場合に、真空チャンバー9(低真空側)の真空度が95Pa(約100Pa)であり、MCP室(高真空側)の真空度が1.3×10-3(約1mPa)が得られたこととなる。尚、下の穴と上の穴との間隔は数mmである。
以上のように、2段の穴を有する差動排気アパチャー11を低真空側と高真空側との間に図1、図2に示すように配置することにより、低真空側の真空度を100Paにした場合に高真空側の真空度を1mPaに保持でき、実用上問題のないように構成できることが判明した。尚、低真空状態は、100Paから1Pa(1Paは1次電子2をガスに衝突させて、プラスおよびマイナスのイオンへの分離の確率が小さくなり、サンプル12の表面の電荷を中和できる下限に相当)であればよい。
図4は、本発明の真空度と放電電圧の関係曲線(パッシェンカーブ)例を示す。横軸はp・d(Torr・cm)を表し、縦軸は放電開始電圧(V)を表す。133Pa=1Torrである。
図4において、1Torrで、電極間隔1mmの場合、pd積が1Torr×0.1cm=0.1となり、横軸が0.1の縦方向を見ると、放電開始電圧(V)が1000以上であることから、1000V以上の耐圧があることが判明する。
従って、1Torr(133Pa)の低真空状態の真空チャンバー9内での放電開始電圧は、1mm間隔で1000V以上あることが判明し、本発明の数百Vから2KVのサンプル電圧24であれば、2mm程度間隔があればよいことが判明する。
図5は、本発明の他の実施例構成図を示す。
図5の(a)は構成図(詳細)を示し、図5の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図5で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図5の(a)において、差動排気アパチャー(下)11は、図示のように、対物レンズ8の下極の先端(ポールピース)に、絶縁体18を介して固定され、リターディング電圧23が印加されるものである。
差動排気アパチャー(上)11は、図示のように、対物レンズ8の上極の先端にブースタ電極17に固定され、当該ブースタ電極17に印加されるブースタ電圧22が印加されるものである。尚、差動排気アパチャー(上)11の中心の穴の周辺には、電子検出器6(MCP,あるいは小型かつ薄い形状を持つアバランシェダイオードなどの電子検出器)を装着する。
以上の構成のもとでの動作を説明する。
(1)図5では、上と下の差動排気アパチャー11をそれぞれ電気的に絶縁あるいは高抵抗材料で分離し、それぞれ別の電圧を印加、ここでは、差動排気アパチャー(上)11にブースタ電圧22、差動排気アパチャー(下)11にリターディング電圧23を印加した。特に、絶縁体18で支持された差動排気アパチャー(下)11にはリターディング電圧23を印加、かつサンプル12に同じ電圧(あるいは数百Vから2KVの電圧)を印加することにより、差動排気アパチャー(下)11とサンプル12との間などで放電しないようにできる。
(2)更に、リターディング法は、リターディングに用いる減速電場(リターディング電圧23による減速電場)がサンプル12の表面に近いほど、対物レンズ8の収差の影響を小さくできる特質がある。そのため、図5では、1次電子2が減速する位置を下側の差動排気アパチャー(下)11として、出来るだけサンプル12の表面に近づいた部分に配置することが望ましい。図5のようにリターディング電圧23を印加する差動排気アパチャー(下)11をサンプル12の可及的に近くに配置することで、対物レンズ8による収差に与える影響を可及的に低減し、サンプル12に入射する1次電子2のエネルギーを小さくしても1次電子2を細く絞ることが可能となる。
(3)更に、2次電子あるいは反射電子を検出するための電子検出器6を上側の差動排気アパチャー(上)11の中心の穴の外側のリング状の部分に配置、例えば、PINダイオード,APD(アバランシェダイオード)をこの部分を配置、あるいは差動排気アパチャー(上)11自身を作製する。そして、サンプル12と電子検出器6の間には10KVないしそれ以上の電圧を印加することにより、サンプル12に低加速電圧で照射された電子は2次電子を発生し、当該2次電子は、差動排気アパチャー(下)11の中心の穴を通過後、差動排気アパチャー(上)11に印加された電圧によって加速され、電子検出器6に衝突し、増幅・検出し、高効率に電子を検出することが可能となる。ここで、半導体の電子検出器6は非常に薄く、小さいので、差動排気アパチャー(上)11の中心の穴の外側のリング状の部分に容易に配置することが可能である。もちろん図に制限されることなく、電子が検出可能な他の場所に電子検出器を配置しても構わない。
図6は、本発明の他の実施例構成図(その2)を示す。
図6の(a)は構成図(詳細)を示し、図6の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図6で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2、図5の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図6の(a)において、差動排気アパチャー(上)11および差動排気アパチャー(下)11は、図示のように、両者は高抵抗材料19で固定され、差動排気アパチャー(上)11は対物レンズ8の上極の先端部分の内側に装着されている図示のブースタ電極12に固定されている。差動排気アパチャー(上)11にはブースタ電極17に印加されたブースタ電圧22が印加されている。一方、差動排気アパチャー(下)11にはリターディング電圧23が図示のように印加されている。サンプル12にはリターディング電圧23が印加(あるいは0Vに保持)されている。
以上の構成のもとでの動作を説明する。
(1)図6では、対物レンズ8の中心付近に配置された差動排気アパチャー11を構成する2つのアパチャーの電圧を別々に制御できるようにした。差動アパチャー(上)11および差動排気アパチャー(下)11は導電性材料からなり、それぞれ独立した電極として機能し、図6では、差動排気アパチャー(上)11はブースタ電圧22を印加し、差動排気アパチャー(下)11はリターディング電圧23を印加する。
(2)実験によると差動排気アパチャー(上)11と差動排気アパチャー(下)11との間に常に微小電流を流しつ続けることにより、真空放電を起こしにくくなることが知られている(つまり、微小電流を流しつつけることで、表面あるいは近傍の電界部分がなだならかになり、局部的に電界強度がきわめて高くなる現象を低減し、トリガとなる微小放電(局部放電)の発生を抑止し、結果的に大きな真空放電を抑止できると予想される)。もちろん、実際の使用に当たっては予め、実際に使用する以上の電圧を印加して放電させてコンディショニングを行い、耐放電特性を上げておくことが望ましい。
(3)そこで、本発明は2つの電極(上と下の差動排気アパチャー11)は10MΩを超える高抵抗材料19で結ばれている。このようにすることで、高電圧を2つの電極間に加えるとマイクロアンペア―オーダーの微小電流が常時流れるようになり、大きな電位勾配が局所的に起こることが防止されて耐放電特性が向上する。
図7は、本発明の他の実施例構成図(その3)を示す。
図7の(a)は構成図(詳細)を示し、図7の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図7で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2、図5、図6の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図7の(a)において、リターディング電極221は、対物レンズ8の下極の先端に高抵抗材料19を介して固定し、リターディング電圧22を印加するものである。
差動排気アパチャー(上)11および差動排気アパチャー(下)11は、対物レンズ8の上極の先端部分に配置したブースタ電極17に固定し、ブースタ電圧22を印加するものである。電子検出器6は、差動排気アパチャー(下)11の中心の穴の外側にリング状にダイオードを固定している(図6と同様)。
以上の構成もとでの動作を説明する。
(1)図7では、リターディング電圧23を加えるための電極(リターディング電極221)を対物レンズ8の下極のポールピースの先端に高抵抗材料19を介して固定する。差動排気アパチャー11は、対物レンズ8の上極のポールピースの先端に固定され、この部分から上部は高真空に保たれている。高抵抗材料19で差動排気アパチャー11を固定しているので、高真空にしていない空間(低真空空間)であっても、常に微小電流が流れているため、放電を起こしにくい。さらに、パッシェンの法則に則り、リターディング電極221と差動排気アパチャー(下)11との間の間隔および圧力を適切に取ることで放電電圧を上げることができる。但し、リターディング電極221は低真空状態にあるので、数10KV以上の電圧差は避けるのが望ましい。リターディング電極221には耐放電性があると言われているチタン材料を用いるのが望ましい。リターディング電極221の表面を非常に薄い耐圧性のプラスチック等の有機物あるいは無機薄膜で覆い、耐放電性を向上させてもよい。
(2)図7では、差動排気アパチャー(下)11を電子検出器6であるPINダイオードあるいはAPDで作成し、あるいは差動排気アパチャー(下)11のの中心の穴の無い外周のリング状の部分にPINダイオードあるいはAPDを配置することが出来る。サンプル12の表面と差動排気アパチャ(下)11とのの間には大きな電位差が生じている。そのため、低エネルギーでサンプル12の表面に照射した1次電子2によって生じた2次電子、反射電子はその電位差によって加速され、電子検出装置6であるPINダイオードあるいはAPDに入射して増幅・検出される。これらデバイスの電子増幅率は入射電子のエネルギーに比例するため、十分な増幅が得られる。
図8は、本発明の他の実施例構成図(その4)を示す。
図8の(a)は構成図(詳細)を示し、図8の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図8で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2、図5、図6、図7の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図8の(a)において、ブースタ電極171は、図示のように、軸を中心に円筒状に配置し、ブースタ電圧22を印加する電極である。
差動排気アパチャー(上)11および差動排気アパチャー(下)11は、ここでは、図示のように、対物レンズ8の上極の先端の部分に配置したブースタ電極171に固定し、ブースタ電圧22を印加するものである。
下部電極31は、リターディング電圧23を印加し、1次電子2のエネルギーを減速するためのものであって、ここでは、対物レンズ8の下極の先端部分に絶縁体を介して、図示のようにリング状で平板の電極であって、図8ではリターディング電圧23を印加するものである。
以上の構成もとでの動作を説明する。
(1)図8では、電子銃から放出された1次電子2に対して減速電圧(リターディング電圧23)を加える方法として、サンプル12と、対物レンズ8の下極のポールピースとの間は低真空状態なので、その場所に大きな電位差を生じさせると放電しやすいので、低真空領域にはパッシェンの法則等で算出できる放電限界以下の電圧差が生じるリターディング電圧23までを加える。差動排気アパチャー11で作られた高真空領域には高電位差が許容されるので、その場所に大きな電圧を加える。あるいは、パッシェンの法則を全く逆に利用して、300Paを超える低真空にすることで、高い放電耐圧を持たせることもできる。この際には、電子銃がある側の高真空の低下を避けるために、より小さなアパチャーサイズにしたり、アパチャー穴に、非常に薄い窒化膜や炭素膜、金属、半導体膜など電子透過膜を用いることによって、低真空を遮断することもできる。
(2)例えば、対物レンズ8に入射する1次電子2はブースター電圧22により例えば8KVに加速する。対物レンズ8を抜けた下極のポールピースの先端に絶縁体を介して固定した下部電極31の電圧は−6KV(リターディング電圧23)に成っており、一気に2KVまで減速する。サンプル12の電圧は-7KV(サンプル電圧24)に成っており、さらに1KV減速する。このように多段に減速することで、対物レンズ8を高エネルギーで通過しながらも、サンプル12と対物レンズ8の下極のポールピースの先端に絶縁体を介して固定した下部電極31との間の電位差を放電限界以下の電圧に保つことが出来るようになる。サンプル12の直前で1次電子2のエネルギーを減速するため、対物レンズ8の収差の低減の影響を最小限にし、細く絞った1次電子2をサンプル12に照射し、高分解能の画像を取得することが可能となる。
図9は、本発明の他の実施例構成図(その5)を示す。
図9の(a)は構成図(詳細)を示し、図9の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図9で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2、図5、図6、図7、図8の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図9の(a)において、減速電極32は、対物レンズ8の下極の先端のポールピースの部分を絶縁体32で電気的に絶縁し、かつ磁気的に小さな磁気抵抗で接続した様子を模式的に示したものである。このように構成することで、対物レンズ8の下極の先端のポールピースは絶縁体で絶縁しない場合とほぼ同じ磁気特性を持たせることができ、かつ先端部分を電気的に絶縁してリターディング電圧を印加する減速電極32として使用可能である。
以上の構成もとでの動作を説明する。
(1)図9では、対物レンズ8の下極のポールピースは純鉄やパーマロイ等の磁性材料であって、金属であって導電性ある材料からできている。そのため、電極として利用することが可能である。図5では、対物レンズ8の下極の先端のポールピースを分割しお互いに電気的に絶縁することで、ポールピースの先端部分をリターディング電極(減速電極32)として利用する。
(2)これにより、対物レンズ8の下極の先端部分(減速電極32)は電気的に絶縁されており、この先端部分にリターディング電圧23を加える。例えば、8KVのエネルギーで対物レンズ8に入射した1次電子2は減速電極32に加えられた-6KVの電圧により、2KVに減速する。サンプル12に例えば-7KVの電圧(サンプル電圧24)を印加しておけば1次電子2は最終的に1KVのエネルギーでサンプルに照射される。
このようにすることで、放電を避けてリターディング法を実行することが出来る。
図10は、本発明の他の実施例構成図(その6)を示す。
図10の(a)は構成図(詳細)を示し、図10の(b)は1次電子2のエネルギー(電圧KV)を示す。図9で、1次電子2、偏向器7、対物レンズ8、サンプル12、XYステージ13などは図1、図2、図5、図6、図7、図8、図9の同じ番号のものと同一であるので、説明を省略する。
図10の(a)において、絶縁体35は、低真空状態に存在する電圧を印加する部分を絶縁体で覆い、電気的に絶縁して放電破壊し難くし工夫したものである。
以上の構成のもとでの動作を説明する。
(1)図10では、対物レンズ8の中心に低真空領域と高真空領域とを分けるための差動排気アパチャー(上)11および差動排気アパチャー(下)11が存在する。差動排気アパチャー(上)11よりも上部は1mPa以上の高真空に保たれ、差動排気アパチャー(下)11から真空チャンバー9の側は100Pa程度の低真空に保たれる。あるいはまったく常識とは逆に、下部アパチャーに薄膜を設けるなどしてパッシェンの法則が教えるように300Paを超えるような低真空にしてもよい。一方、対物レンズ8のポールピースの上極および下極の先端部を電気的に絶縁してそれぞれ分割することで、ブースター電極17と減速電極36をそれぞれ構成している。
(2)図10では、ブースタ電極17および減速電極36は低真空状態にあり、低真空に露出しているとその場所が放電しやすい。そこで、図10では、ブースタ電極17および減速電極36を絶縁体35でそれぞれ被覆し、放電し難くする。
(3)例えばブースター電極17には1次電子2のエネルギーよりも高いと10KVを印加しておくと、1次電子2は10KVで対物レンズ8に入射する。対物レンズ8を出た所にある、周辺のポールピースとは電気的に絶縁された下極のポールピース(減速電極36)に加えられた減速電圧(リターディング電圧、例えば-8KV)によって減速する。さらに、サンプル12には−9KVの電位(サンプル電圧24)が加えられており、最終的に1KVのエネルギーで1次電子2はサンプル12に照射される。
尚、減速電極36などの電極を絶縁体35などの誘電体で覆って放電し難く工夫した場合、電界は約誘電率ε分の1に低減するが、放電し難くなるので、最適な誘電体(絶縁体)を実験によって求めてその最適構成を適用する。絶縁体としては酸化膜、ガラスなどの無機材料やフッ素樹脂などの有機材料を用いることができる。絶縁体は電極の表面が十分な絶縁耐圧を持った材料で覆われることが重要なので、電極の間をすべて埋める必要は無く、材料によっては100ミクロン程度の薄膜で電極を被覆するだけで10KV以上の耐圧を持たせることができる。電極の先端は電界集中を避けるために丸めておくことが望ましい。
本発明の1実施例構成図である。 本発明の1実施例構成図(詳細)である。 本発明にアパチャーサイズと真空度の関係例である。 本発明の真空度と放電電圧の関係曲線例である。 本発明の他の実施例構成図である。 本発明の他の実施例構成図(その2)である。 本発明の他の実施例構成図(その3)である。 本発明の他の実施例構成図(その4)である。 本発明の他の実施例構成図(その5)である。 本発明の他の実施例構成図(その6)である。
1:電子銃
2:1次電子
3:コンデンサレンズ
4:ブランキング電極
5:ブランキングアパチャー
6:電子検出器
7:偏向器
8:対物レンズ
81:ポールピース
9:真空チャンバー
10:圧力センサ
11:差動排気アパチャー
12:サンプル
13:XYステージ
14;TMP
15:マスフロー
16:GAS
17:ブースタ電極
18:絶縁体
21:アノード電圧
22:ブースタ電圧
23:ブランキング電圧
24:サンプル電圧
31:下部電極
32、36:減速電極
33、34:絶縁体

Claims (7)

  1. サンプルに照射する荷電粒子をリターディング電圧により減速して当該サンプルに照射しつつ走査してそのときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を検出するリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置において、
    荷電粒子を発生させる荷電粒子線源と、
    前記荷電粒子線源で発生された荷電粒子を、加速する加速電圧と、
    前記加速電圧で加速された荷電粒子を、細く絞って前記サンプル面に照射する対物レンズと、
    前記対物レンズで前記サンプル面に細く絞って照射される荷電粒子を、当該サンプル面上で平面走査させる偏向走査系と、
    前記細く絞った荷電粒子を前記サンプルに照射しつつ平面走査したときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を検出する検出器とを高真空側に設け、
    前記サンプルを収納して所定低真空に保持し、チャージを中和するための真空チャンバーを低真空側に設け、
    前記低真空側と前記高真空側との間に、中心に穴を配置した、該低真空側に面して第1のアパチャーおよび該高真空側に面して第2のアパチャーを隣接して設け、
    前記第1のアパチャーに、前記加速電圧で加速されて細く絞られた荷電粒子を減速する前記サンプルに対して負のリターディング電圧を印加して荷電粒子線を減速して前記サンプルに照射すると共に、前記細く絞った荷電粒子を前記サンプルに照射しつつ平面走査したときに放出された2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を、前記検出器で検出することを特徴とするリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  2. 前記第1のアパチャーと前記第2のアパチャーとの間の空間を差動排気することを特徴とする請求項1に記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  3. 前記第1のアパチャーを前記対物レンズの下極、および前記第2のアパチャーを前記対物レンズの上極に連結し、当該第1のアパチャーと第2のアパチャーとの間の空間を差動排気することを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  4. 前記第1のアパチャーと前記第2のアパチャーとの間を高抵抗材料で連結し、汚染などしたことによる放電の影響を軽減したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  5. 前記第2のアパチャーの荷電粒子線源側に円筒状の電極を設け、前記加速電圧で加速された荷電粒子線を更に加速する正のブースタ電圧を印加したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  6. 前記第1のアパチャーに前記負のリターディング電圧を印加する代わりに、前記第2のアパチャーに前記負のリターディング電圧を印加、あるいは前記第1アパチャーと前記第2のアパチャーの両者に前記負のリターディング電圧を印加したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
  7. 前記検出器に2次荷電粒子あるいは反射荷電粒子を吸引する電圧を印加したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のリターディング電圧を用いた荷電粒子線装置。
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