以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図12は本発明の一実施形態に係る回転電機を説明する図である。
図1において、回転電機1は、ダブルロータ形式の回転電機として構成されており、円筒形状に形成されたステータ100と、このステータ100よりも回転軸1C側に設けられた第2のロータとしてのアウタロータ200と、このアウタロータ200よりも回転軸1C側に設けられた第1のロータとしてのインナロータ300とを備えている。アウタロータ200およびインナロータ300は、回転軸1Cを回転中心として相対回転可能にそれぞれ支持されている。なお、図1は機械角360度のうちの180度分(1/2)の径方向断面図を図示している。インナロータ300は、本発明におけるロータを構成している。
ステータ100はステータコア101を備えており、このステータコア101には、軸心に向かう径方向に延伸されている複数本のステータティース102が周方向に並列されている。このステータティース102は、後述するアウタロータ200の磁路部材201の外周面201aにエアギャップG1を介して内周面102a側を対面させるように形成されている。
このステータ100は、ステータティース102の側面102b間をスロット103として、三相交流のW相、V相、U相に対応する電機子コイル104が納められている。電機子コイル104は分布巻きによりステータティース102に巻き回されている。電機子コイル104は、通電により磁束を発生させる。
ステータ100は、この電機子コイル104に三相交流が供給されることで、周方向に回転する回転磁界を発生し、発生した磁束をアウタロータ200やインナロータ300に鎖交させることによりこれらアウタロータ200およびインナロータ300をそれぞれ回転駆動させる。
アウタロータ200は、透磁率の高い鋼材などの軟磁性体からなる磁路部材201と、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の磁束を通さない非磁性体からなる非磁性部材202とを有する。磁路部材201および非磁性部材202は軸線方向に延伸されている。なお、軸線方向は、回転軸1Cが延伸する方向と同じ方向を示す。
磁路部材201は、周方向で非磁性部材202に対向するポールピース部201Aと、非磁性部材202のステータ側とインナロータ側とにおいて隣り合うポールピース部201Aを接続するブリッジ部201Bとを有する。
ポールピース部201Aとブリッジ部201Bとは、一体形成されている。したがって、磁路部材201は、ポールピース部201Aとブリッジ部201Bとが一体形成された一体コアとして構成されている。一体コアとして構成された磁路部材201は、複数の電磁鋼板を軸線方向に積層したものからなる。
非磁性部材202は、ポールピース部201Aおよびブリッジ部201Bで囲まれる空間に設けられている。したがって、本実施の形態のアウタロータ200は、軟磁性体のポールピース部201Aと非磁性部材202とが周方向に交互に配置されている。磁路部材201および非磁性部材202の詳細な構成については後述する。
アウタロータ200は、ステータ100のステータティース102の内周面102aと、後述するインナロータ300のロータティース302の外周面302aに対して、磁路部材201の外周面201aと内周面201bとが対面するように形成されている。
このアウタロータ200は、ステータ100の電機子コイル104で発生し鎖交する磁束が磁路部材201のポールピース部201Aを効率よく通過する一方、非磁性部材202ではその磁束の通過を妨げる。このステータ100の電機子コイル104で発生する磁束は、アウタロータ200のポールピース部201Aを通過した後には、後述するように、インナロータ300のロータティース302の外周面302aに鎖交して、再度、アウタロータ200のポールピース部201Aを通過することにより、ステータ100に戻る磁気回路を形成する。
このとき、アウタロータ200は、ステータ100に対して相対回転するので、磁束を通過させる磁路部材201のポールピース部201Aと磁束の通過を制限する非磁性部材202とが繰り返し切り換えられて磁気回路を形成する。
このようにアウタロータ200が回転することで、電機子コイル104で発生する回転磁界の極数および周波数を変更させることができる。この変調された回転磁界とインナロータ300が同期回転することによりトルクが発生する。
インナロータ300は、複数の電磁鋼板を軸線方向に積層したロータコア301を備えている。このロータコア301には、軸心から離隔する径方向に向かって延長されている複数本のロータティース(突極部)302が周方向に並列されている。ロータティース302は、アウタロータ200の磁路部材201の内周面201bにエアギャップG2を介して外周面302aを対面させるように形成されている。
このロータティース302は、誘導コイルIと界磁コイルFとからなるロータ巻線330を有している。誘導コイルIは、隣接するロータティース302の側面302b間をスロット303として、ロータティース302のアウタロータ200側に巻き付けられている。界磁コイルFは、隣接するロータティース302の側面302b間をスロット303として、ロータティース302の軸心側に巻き付けられている。すなわち、誘導コイルIは、スロット303においてインナロータ300の径方向外側に巻き付けられており、界磁コイルFは、スロット303においてインナロータ300の径方向内側に巻き付けられている。誘導コイルIと界磁コイルFとからなるロータ巻線330は、本発明におけるコイルを構成している。
誘導コイルIは、ロータティース302毎にインナロータ300の周方向において隣同士が逆向きの周回巻線となる集中巻に形成されて、インナロータ300の周方向に配列されている。この誘導コイルIは、磁束が鎖交することにより誘導電流を発生(誘起)する。
界磁コイルFは、ロータティース302毎にインナロータ300の周方向において隣同士が逆向きの周回巻線となる集中巻になるように形成されて、インナロータ300の周方向に配列されている。この界磁コイルFは、界磁電流を供給されることにより励磁されて電磁石として機能する。
このように、誘導コイルIと界磁コイルFは、電流の向きが等しくなるように巻き回されている。
ここで、図1の機械角180度分の8つの誘導コイルIを、回転方向(反時計方向)に誘導コイルI1〜I8と呼んで区別する。また、機械角180度分の8つの界磁コイルFを回転方向に界磁コイルF1〜F8と呼んで区別する。
図2において、誘導コイルI1、I3、I5、I7と界磁コイルF1、F2、F3、F4は、ダイオードD1、D2と共に閉回路である整流回路C1を形成している。この整流回路C1において、3つ置きの誘導コイルI1、I5とダイオードD1が直列接続され、3つ置きの誘導コイルI3、I7とダイオードD2が直列接続され、界磁コイルF1、F2、F3、F4が直列接続されている。また、誘導コイルI1、I5、ダイオードD1からなる直列接続と誘導コイルI3、I7、ダイオードD2からなる直列接続は、両端部で並列接続された後、ダイオードD1、D2のカソード側で、界磁コイルF1、F2、F3、F4からなる直列接続に接続されている。このように、整流回路C1は、誘導コイルI1、I3、I5、I7で発生する交流の誘導電流をダイオードD1、D2でそれぞれ一方向に整流して界磁コイルF1、F2、F3、F4に直流界磁電流として供給するように結線された回路構成となっている。
また、誘導コイルI2、I4、I6、I8と界磁コイルF5、F6、F7、F8は、ダイオードD3、D4と共に閉回路である整流回路C2を形成している。この整流回路C2において、3つ置きの誘導コイルI2、I6とダイオードD3が直列接続され、3つ置きの誘導コイルI4、I8とダイオードD4が直列接続され、界磁コイルF5、F6、F7、F8が直列接続されている。また、誘導コイルI2、I6、ダイオードD3からなる直列接続と誘導コイルI4、I8、ダイオードD4からなる直列接続は、両端部で並列接続された後、ダイオードD3、D4のカソード側で界磁コイルF5、F6、F7、F8からなる直列接続に接続されている。このように、整流回路C2は、誘導コイルI2、I4、I6、I8で発生する交流の誘導電流をダイオードD3、D4でそれぞれ一方向に整流して界磁コイルF5、F6、F7、F8に直流界磁電流として供給するように結線された回路構成となっている。
この回路構成により、誘導コイルIで発生させた誘導電流を整流し界磁電流として界磁コイルFを励磁させることができるため、ロータティース302を電磁石として機能させることができる。
ここで、ダイオードD1、D2、D3、D4は、誘導コイルIや界磁コイルFを多極化させる場合でも、直列接続することにより使用数を抑えており、大量使用を回避するために、一般的なHブリッジ型の全波整流回路を形成するのではなく、それぞれ180度位相差になるように結線して、一方の誘導電流を反転させて半波整流出力する中性点クランプ型の半波整流回路を形成している。
整流回路C1、C2の界磁コイルFは、隣接するロータティース302毎の巻付方向を逆向きにされている。このことから、磁気回路の一部を構成するインナロータ300の一つのロータティース302は、アウタロータ200のポールピース部201Aから誘導する方向となるS極を対面させる電磁石として機能するように磁化されている。また、隣接するもう一つのロータティース302は、磁束をアウタロータ200側に誘導する方向となるN極を対面させる電磁石として機能するように磁化されている。
ここで、回転電機1のトルクの発生原理を説明する。インナロータ300は、ステータ100からアウタロータ200を介して鎖交する磁束のうち、そのアウタロータ200の回転によって変調された磁束がインナロータ300の回転と同期して鎖交する。
また、一方で、回転電機1は、インナロータ300の誘導コイルIに鎖交する磁束に、アウタロータ200により変調されずに(インナロータ300の回転に同期せずに)変動する成分が含まれており、これにより誘導コイルIに交流の誘導電流を発生させることができる。そして、その交流の誘導電流をダイオードD1、D2で整流して直流の界磁電流とし、界磁コイルFに通電することにより、ロータティース302を電磁石として機能させて界磁磁束を発生させることができる。このようにして、回転電機1はトルクを発生することができる。
なお、このとき、ステータ100のステータティース102からアウタロータ200のポールピース部201Aを介してインナロータ300のロータティース302に鎖交する磁束は、分布巻きした電機子コイル104に交流電源から電力供給して発生させる。
ところで、この電機子コイル104は、本実施の形態では分布巻きを採用するが、集中巻きを採用してもよい。集中巻きを採用する場合には、ロータティース302に鎖交する磁束に分布巻きのコイルで発生する場合よりも多くの高調波成分を重畳させることができる。この磁束に重畳される高調波成分は、磁束量の変動として作用するため、誘導コイルIに誘導電流を効果的に発生させることができ、より大きな界磁電流を界磁コイルFに供給して界磁磁束を発生させることができる。
これらのことから、回転電機1は、永久磁石を設けることなく、インナロータ300を電磁石トルク(回転力)により相対回転させることができる。このインナロータ300では、磁化方向(N極、S極)が周方向に向かって交互になるように並列されている電磁石としてロータティース302を機能させることにより、アウタロータ200およびステータ100との間で鎖交させる磁束をスムーズにスロット303を迂回させて受け渡すことができる。
この回転電機1は、ステータ100に対してアウタロータ200が相対回転し、また、その回転するアウタロータ200(磁路部材201)を経由する磁束が鎖交されるインナロータ300が電磁石トルクにより相対回転されるので、アウタロータ200を低速回転させ、インナロータ300を高速回転させることができる。また、反対に、アウタロータ200を高速回転させ、インナロータ300を低速回転させることもできる。
この回転電機1は、ステータ100、アウタロータ200およびインナロータ300の構造に応じて上述の回転駆動に必要なトルクが発生するようになっている。具体的には、ステータ100の電機子コイル104の極対数をAとし、アウタロータ200の極数となるポールピース部201Aの数をHとし、インナロータ300の極対数となるロータティース(電磁石)302の極対数をPとしたときに、次式(1)を成立させる組み合わせとなる。
H=|A±P| ......(1)
この構造では、トルクを効果的に発生させてアウタロータ200とインナロータ300とをステータ100に対して効率よく相対回転させることができる。例えば、本実施の形態の回転電機1では、ステータ100の電機子コイル104の極対数A=4、アウタロータ200の極数H=12、および、インナロータ300のロータティース302の極対数P=8であり、上記の式(1)を満たしている。
図3に示すように、回転電機1は、ステータ100内にアウタロータ200が回転自在に収容されており、さらに、そのアウタロータ200内にインナロータ300が回転自在に収容されている。
また、アウタロータ200の磁路部材201には、アウタ回転軸210が一体回転可能に連結されている。インナロータ300のロータコア301には、インナ回転軸310が一体回転可能に連結されている。これにより、回転電機1は、磁気変調原理を利用してアウタ回転軸210およびインナ回転軸310のそれぞれに動力を伝達することのできる磁気変調型二軸モータとして構成される。
したがって、回転電機1は、例えばステータ100を遊星歯車機構のサンギヤ、アウタロータ200を遊星歯車機構のキャリヤ、インナロータ300を遊星歯車機構のリングギヤとして機能させることができ、機械式の遊星歯車機構と同等の機能を備えることができる。なお、本実施の形態に係る回転電機1は、アウタロータ200がキャリヤとして機能するよう構成される。
この構造により、回転電機1は、例えば、ハイブリッド自動車にエンジン(内燃機関)と共に駆動源として搭載する場合、アウタロータ200のアウタ回転軸210とインナロータ300のインナ回転軸310とをそれぞれ車両の動力伝達経路に直接連結して、ステータ100の電機子コイル104にインバータを介して車両のバッテリを接続することにより駆動源と共に動力伝達機構としても機能させることができる。
(アウタロータ)
図3、図4において、アウタロータ200は、上述した磁路部材201および非磁性部材202に加えて、鉄材からなるアウタ回転軸210と、円環状のフランジ215と、円筒状の円筒軸214とを備えている。
アウタ回転軸210は、円柱状の小径部210Aと、この小径部210Aの他端部に連続するフランジ形状の大径部210Bとからなる。大径部210Bは、回転軸1Cを中心とした径方向が小径部210Aの径方向よりも大きく形成されており、軸線方向の他端部側で磁路部材201に対向している。
アウタ回転軸210の小径部210Aには、軸線方向の一端部から他端部に向かって、レゾルバリング221、レゾルバロータ220、リテーナ218が設けられている。レゾルバロータ220は、レゾルバリング221によって小径部210Aに一体回転自在に固定されている。
リテーナ218は、円環状に形成されており、その内縁部の軸線方向の一端部側の側面で、後述するラジアルボールベアリング21の外輪を支持している。また、リテーナ218にはナット部218Aが設けられており、このナット部218Aには、後述するボルト26が螺合される。
フランジ215は、アウタ回転軸210の大径部210Bと磁路部材201および非磁性部材202との間に設けられている。フランジ215は、例えばアルミ材などの非磁性体からなる。これにより、電機子コイル104により発生した磁束が鉄材からなるアウタ回転軸210に漏れ磁束として流れてしまうことが防止される。
大径部210Bおよびフランジ215には、周方向に並んだ複数の挿通孔210B1、215Aがそれぞれ形成されており、これらの挿通孔210B1、215Aには非磁性体ボルト219が挿通されている。非磁性部材202には挿通孔202Aが形成されており、この挿通孔202Aには非磁性体ボルト219が挿通されている。
非磁性体ボルト219は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の磁束を通さない非磁性体で構成されている。このため、アウタロータ200は、各ポールピース部201A(図1参照)が磁気的に独立し、非磁性体ボルト219を磁性体で構成した場合と比べて各ポールピース部201Aによるパーミアンス変動(突極比)を大きくすることができる。これにより、回転電機1におけるトルク密度が向上する。
また、非磁性体ボルト219が非磁性体で構成されるため、ギャップ中に発生する高調波磁束に起因して非磁性体ボルト219内で発生する渦電流、および非磁性体ボルト219間で発生する渦電流による損失を低減することができる。
円筒軸214は、磁路部材201および非磁性部材202の軸線方向の他端部側(図3中、左端側)に設けられており、この円筒軸214には、非磁性体ボルト219の軸線方向の他端部が螺合される雌ねじ214Aが形成されている。
円筒軸214は、例えば非磁性体のステンレスで構成されている。これにより、電機子コイル104により発生した磁束が円筒軸214を介して外部に漏れ磁束として流れてしまうことが防止される。
アウタロータ200において、非磁性体ボルト219を軸線方向の他端部側から大径部210Bの挿通孔210B1、フランジ215の挿通孔215A、非磁性部材202の挿通孔202Aに順次挿通し、円筒軸214の雌ねじ214Aに螺合することで、磁路部材201および非磁性部材202の軸線方向の一端部側(図3中、右端側)にフランジ215およびアウタ回転軸210が固定されるとともに、磁路部材201および非磁性部材202の軸線方向の他端部側に円筒軸214が固定される。
(インナロータ)
図3、図5において、インナロータ300は鉄材からなるインナ回転軸310を備えている。このインナ回転軸310の外周部には、軸線方向の一端部側から他端部側に向かって、バランスプレート311、スペーサ312、ロータ巻線330、スペーサ314、ダイオードホルダ315、バランスプレート316、Uナット317、リテーナ318、レゾルバロータ319、レゾルバリング320が設けられている。
バランスプレート311は、鉄材を円環状に形成したものからなり、内周縁部でインナ回転軸310の鍔部によって軸線方向に位置決めされている。バランスプレート311は、ロータ巻線330の軸線方向の一端部側(図3中、右端側)からスペーサ312を介してロータ巻線330を支持している。
スペーサ312は、ロータ巻線330の軸線方向の一端部とバランスプレート311との間に介装されている。スペーサ312は、回転軸1Cを中心とした径方向がロータ巻線330の径方向より小さく形成されており、ロータ巻線330とバランスプレート311との間に空間を形成している。スペーサ312は、アルミ材を円環状に形成したものからなる。バランスプレート311およびスペーサ312は、ロータ巻線330と一体回転するようにインナ回転軸310に対して回り止めされている。
バランスプレート316は、鉄材を円環状に形成したものからなり、内周縁部でUナット317によって軸線方向に位置決めされている。バランスプレート316は、ロータ巻線330の軸線方向の他端部側(図3中、左端側)からダイオードホルダ315およびスペーサ314を介してロータ巻線330を支持している。
スペーサ314は、ロータ巻線330の軸線方向の他端部とダイオードホルダ315との間に介装されている。スペーサ314は、ロータ巻線330より回転軸1Cを中心とした径方向の寸法が小さく形成されており、ロータ巻線330とダイオードホルダ315との間に空間を形成している。スペーサ314は、アルミ材を円環状に形成したものからなる。
ダイオードホルダ315は、円環状に形成された回路基板からなり、前述のダイオードD1〜D4を保持している。バランスプレート316、ダイオードホルダ315およびスペーサ314は、ロータ巻線330と一体回転するようにインナ回転軸310に対して回り止めされている。
Uナット317は、内周面に図示しない雌ねじが形成されており、インナ回転軸310の外周面に形成された図示しない雄ねじに螺合している。Uナット317がインナ回転軸310に螺合することで、ロータ巻線330は、スペーサ312、314およびダイオードホルダ315を介してバランスプレート311、316により軸線方向の両側から挟まれた状態で、インナ回転軸310に対して軸線方向および回転方向に固定される。
リテーナ318は、円環状に形成されており、その内縁部の軸線方向の他端部側(図3中、左端側)の側面で、後述するラジアルボールベアリング23の外輪を支持している。また、リテーナ318の外縁部の軸線方向の一端部側(図3中、右端側)には、ナット部318Aが設けられており、このナット部318Aには、後述するボルト25が螺合される。
(ケースを含めた全体構造)
図3において、回転電機1はケース10を備えており、このケース10の内部に前述のステータ100、アウタロータ200およびインナロータ300を収容している。
ケース10は、軸線方向の一端部側から他端部側に向かって、第1フランジ11、第1スペーサ12、第1ケース13、第2ケース14、第2スペーサ15、第2フランジ16を備えている。
第1ケース13は、円盤状のプレート部13Aと、このプレート部13Aの外縁部の他端部側に連続する円筒状の円筒部13Bとからなる。プレート部13Aの中心部には貫通孔13Cが形成されており、この貫通孔13Cにはアウタ回転軸210の小径部210Aが貫通している。
円筒部13Bの内周面にはステータ100が固定されている。また、円筒部13Bは、アウタロータ200の磁路部材201および非磁性部材202と、インナロータ300のロータコア301およびロータ巻線330とに径方向で対向している。
このように、円筒部13Bの径方向内方には、回転電機1の主要部であるステータ100と、アウタロータ200の磁路部材201および非磁性部材202と、インナロータ300のロータコア301およびロータ巻線330とが収容されている。
貫通孔13Cにはラジアルボールベアリング21が設けられている。ラジアルボールベアリング21は、第1ケース13のプレート部13Aに軸線方向の一端部からボルト26を挿通してリテーナ218のナット部218Aに螺合することで、軸線方向に位置決めされる。第1ケース13のプレート部13Aは、このラジアルボールベアリング21を介してアウタ回転軸210の小径部210Aを回転自在に支持している。
また、貫通孔13Cにはレゾルバセンサ31が固定されている。一方、アウタ回転軸210の小径部210Aには、レゾルバセンサ31と径方向で対向するように、円環状のレゾルバロータ220が設けられている。レゾルバロータ220は、レゾルバリング221によってアウタ回転軸210の小径部210Aに一体回転自在に固定されている。
レゾルバセンサ31は、レゾルバロータ220の回転角を検出することで、アウタロータ200の回転角を検出している。
第2ケース14は、円筒状の外筒部14Aと、この外筒部14Aの内周側に配置された円筒状の内筒部14Bと、外筒部14Aおよび内筒部14Bの軸線方向の他端部側に連続する円盤状のプレート部14Cとを有している。
第1ケース13と第2ケース14は、第1ケース13の円筒部13Bと第2ケース14の外筒部14Aとを軸線方向に付き合わせて図示しないボルトで締結することにより、ステータ100、アウタロータ200およびインナロータ300を収容した状態で連結されている。
外筒部14Aは、アウタロータ200の円筒軸214の軸線方向の他端部と径方向に対向しており、ラジアルボールベアリング22を介して、円筒軸214を回転自在に支持している。
ここで、本実施の形態のアウタロータ200は、磁路部材201および非磁性部材202が軸線方向の一端部側でアウタ回転軸210の大径部210Bに固定された、カップ型構造となっている。
このようなカップ型構造のアウタロータ200を、第1ケース13に対して例えば片持ち支持させると、固有振動が発生した場合や、アウタロータ200に作用する電磁吸引力とアウタロータ200の固有振動とが共振して過大な力が作用した場合に、電磁振動が大きくなってしまう。また、アウタロータ200が偏心駆動した場合には、片持ち支持しているラジアルボールベアリングに過大な負荷がかかり、そのラジアルボールベアリングの耐久性に影響を与えてしまう。
そこで、本実施の形態では、アウタロータ200の軸線方向の他端部側、すなわち円筒軸214を、アウタ回転軸210を支持しているラジアルボールベアリング21よりも回転軸1Cを中心とした径方向の寸法が大きいラジアルボールベアリング22によって第2ケース14に対して支持する構成とした。
これにより、本実施の形態のアウタロータ200は、両持ち支持構造をとることができ、上述したような電磁振動の増大や、ラジアルボールベアリング21に対して偏心駆動による過大な負荷がかかることを防止することができる。
内筒部14Bの内周にはレゾルバセンサ32が固定されている。一方、インナ回転軸310には、レゾルバセンサ32と径方向で対向するように、円環状のレゾルバロータ319が設けられている。レゾルバロータ319は、レゾルバリング320によってインナ回転軸310に一体回転自在に固定されている。
レゾルバセンサ32は、レゾルバロータ319の回転角を検出することで、インナロータ300の回転角を検出している。
内筒部14Bの軸線方向の一端部の内周にはラジアルボールベアリング23が設けられている。ラジアルボールベアリング23は、内筒部14Bに軸線方向の他端部からボルト25を挿通してリテーナ318のナット部318Aに螺合することで、軸線方向に位置決めされる。第2ケース14の内筒部14Bは、ラジアルボールベアリング23を介してインナ回転軸310を回転自在に支持している。
アウタ回転軸210の大径部210Bの内周にはラジアルボールベアリング24が設けられている。大径部210Bは、ラジアルボールベアリング24を介してインナ回転軸310の一端部を回転自在に支持している。
第1スペーサ12には貫通孔12Aが形成されており、この貫通孔12Aは、レゾルバセンサ31から延びる配線31Aが貫通している。また、第1スペーサ12は、第1ケース13と第1フランジ11との間に介装されることで、配線31Aが通過する空間を第1ケース13と第1フランジ11との間に確保している。
第2スペーサ15には貫通孔15Aが形成されており、この貫通孔15Aは、レゾルバセンサ32から延びる配線32Aが貫通している。また、第2スペーサ15は、第2ケース14と第2フランジ16との間に介装されることで、配線32Aが通過する空間を第2ケース14と第2フランジ16との間に確保している。
第1ケース13の軸線方向の一端部側には、円筒状の第1スペーサ12を介して、図示しないボルトにより第1フランジ11が固定されている。第1フランジ11は、第1ケース13より回転軸1Cを中心とした径方向の寸法が大きいフランジ形状に形成されており、図示しないボルトにより車両の車体に固定される。
第1フランジ11の内周側において、アウタ回転軸210の小径部210Aの軸線方向の一端部にはカップリング33が設けられている。アウタ回転軸210の小径部210Aには、カップリング33を介して、例えば図示しない車両の駆動軸が連結される。アウタ回転軸210の回転は、このカップリング33を介して車両の駆動軸に伝達される。
第2ケース14の軸線方向の他端部側には、円筒状の第2スペーサ15を介して、図示しないボルトにより第2フランジ16が固定されている。第2フランジ16は、第2ケース14より回転軸1Cを中心とした径方向の寸法が大きいフランジ形状に形成されており、図示しないボルトにより車両の車体に固定される。
第2フランジ16の内周側において、インナロータ300のインナ回転軸310の軸線方向の他端部にはカップリング34が設けられおり、このカップリング34の他端部には、例えば、車両の図示しないエンジンの出力軸が連結される。インナ回転軸310には、このカップリング34を介してエンジンの回転が伝達される。
なお、本実施の形態の回転電機1では、アウタ回転軸210に車両の駆動軸が連結され、インナ回転軸310にエンジンの出力軸が連結されるが、他の実施の形態の回転電機として、アウタ回転軸210にエンジンの出力軸が連結され、インナ回転軸310に車両の駆動軸が連結されてもよい。
(インシュレータについて)
このように構成された回転電機1は、インナロータ300がエンジンの出力軸に直結される場合、エンジンの振動が出力軸を伝ってインナロータ300に伝達され、インナロータ300のロータ巻線330が振動する。特に、ロータ巻線330は共振が発生した場合に大きく振動する。
ロータ巻線330が振動すると、電磁鋼板からなるロータティース302との間でロータ巻線330の皮膜が擦れて破れるおそれがある。ロータ巻線330の皮膜が破れるとロータ巻線330が地絡してしまう。
そこで、本実施形態では、図6において、インナロータ300は、ロータティース302とロータ巻線330との間に、電気絶縁性を有する樹脂等からなるインシュレータ340を備えている。
このインシュレータ340は、予めロータ巻線330を外側に巻き回した状態で保持し、ロータティース302ごとに装着される。これにより、ロータ巻線330がロータティース302に直接接触することがなくなるため、ロータ巻線330の皮膜がロータティース302との間で擦れて破れることが防止される。本実施形態では、ロータティース302は、従来の回転電機のロータティースのように先端の鍔部を備えておらず、先端部と基部とで断面形状が等しいか、緩やかに拡大するように形成されている。
これにより、ステータ100で発生してインナロータ300の誘導コイルIに鎖交する磁束のうち、インナロータ300の回転に同期せずに変動する非同期磁束がロータティース302の鍔部により遮られることが防止され、効率よく誘導コイルIに誘導電流を発生させることができる。また、ロータティース302にインシュレータ340を径方向外方から装着できる。
インシュレータ340は、ロータ巻線330が巻き回される軸となる図示しない筒部と、この筒部のロータ径方向外側端部に設けられた鍔部342とを有する。
筒部のロータ径方向外側には鍔部342と隙間を隔てて誘導コイルIが巻き回されている。筒部341のロータ径方向内周側には界磁コイルFが巻き回されている。
鍔部342は、筒部341のロータ径方向外側の端部からインナロータ300の外周面に沿うように周方向に延出して形成されている。また、鍔部342は軸線方向にも延出しており、この延出する部分は、周方向の長さよりも軸線方向の長さが大きく形成されている。
このインシュレータ340は、誘導コイルIと界磁コイルFが巻き回されたカセットボビンの状態で、径方向外方からロータティース302に装着される。
このように、インシュレータ340は、ロータ巻線330が巻き回された状態でロータコア301のロータティース302に対して径方向外方からロータティース302ごとに装着自在であり、いわゆるカセットボビンの構造となっているため、ロータ巻線330の皮膜が保護されるという効果に加えて、インナロータ300の組み付け性が向上するという効果も奏する。
(ダイオードホルダについて)
次に、ダイオードホルダ315の詳細な構成について説明する。図7において、インナロータ300は、ロータ巻線330の他端部側にダイオードホルダ315を有している。また、ダイオードホルダ315の他端部側にはバランスプレート316が設けられている。ダイオードホルダ315は本発明におけるカバーを構成する。バランスプレート316は本発明におけるプレートを構成する。
図8、図9において、ダイオードホルダ315の他端部側の外面、すなわちバランスプレート316と対向する側の外面には、ダイオード収容部315Aが形成されている。ダイオード収容部315Aは、矩形のダイオードDを収容可能な矩形の凹形状に形成されており、回転軸1Cの周りに90°間隔で4つ配置されている。4つのダイオード収容部315Aは、全て同じ深さに形成されており、その底面は同一の平面となっている。ダイオード収容部315Aは本発明におけるホルダを構成する。
また、ダイオードホルダ315には、隣接するダイオード収容部315A間を同一の平面で連通する溝315Bが設けられる。したがって、全てのダイオード収容部315Aの底面と溝315Bの底面は同一の平面となっている。溝315Bは、ダイオード収容部315Aの内周側の2つの角を連通するように形成されている。
図10において、整流素子としてのダイオードDは、矩形形状に形成され、3つの端子Daを有している。このダイオードDは、前述の整流回路C1で用いる一対のダイオードD1、D2、または整流回路C2で用いる一対のダイオードD3、D4を、カソードコモンのセンタータップ方式で接続して一体化したものである。ダイオードDは、このダイオード収容部315A内にすきまばめの状態で取付け可能に、ダイオード収容部315Aよりも小さく形成されている。
ダイオードDには、ボルト360が挿通されるボルト挿通孔Dhが形成されている。一方、ダイオードホルダ315には、ボルト360が螺合される雌ねじ315Eが形成されている。
図11において、ダイオードDは、ダイオード収容部315Aに収容された状態でボルト360をボルト挿通孔Dhに挿通して雌ねじ315Eに螺合することで、ダイオードホルダ315に締結されている。
このように、ダイオードDは、すきまばめの状態でダイオードホルダ315のダイオード収容部315Aに取付けられているため、ダイオードDとダイオード収容部315Aとの間には隙間が生じている。
本実施形態では、ダイオードDとダイオード収容部315Aとの隙間に、樹脂等からなる図示しないモールド材が流し込まれ、このモールド材によりダイオードDがダイオードホルダ315に一体化される。
モールド材の注入工程では、それぞれのダイオード収容部315Aに、このダイオード収容部315Aが上方に開口する姿勢でモールド材が流し込まれる。すると、モールド材は、互いに隣り合うダイオード収容部315A間で溝315Bを介して流通する。
これにより、モールド材が溝315Bを介して流通することで全てのダイオード収容部315Aに均等に行き渡るため、ダイオードDとの隙間をモールド材で均等に満たすことができる。
また、モールド材によりダイオードDがダイオードホルダ315に隙間なく一体化されることで、ダイオードDの発生する熱がダイオードホルダ315に効率よく伝達さるため、ダイオードホルダ315をヒートシンクとして機能させてダイオードDの発生する熱を放熱でき、ダイオードDの放熱性を改善できる。
また、モールド材によりダイオードDがダイオードホルダ315に隙間なく一体化されることで、ダイオードDが一体化されたダイオードホルダ315の強度を向上できる。
ここで、本実施形態では、ダイオード収容部315Aが、ダイオードホルダ315の他端部側に形成されているため、ダイオードホルダ315の一端部側に配置されている誘導コイルIおよび界磁コイルFの導線を、途中で地絡することなく短い経路でダイオードホルダ315の側まで配線し、ダイオードDに結線する必要がある。
そこで、図8、図9、図10において、ダイオードホルダ315は、ダイオード収容部315Aが形成される側に結線領域315Cを有している。結線領域315Cは、ダイオード収容部315Aの近傍に隣接して設けられており、ダイオードDの3つの端子Daが配置されている。
また、結線領域315Cには挿通孔315Dが設けられており、この挿通孔315Dには、ロータ巻線330を構成する誘導コイルIおよび界磁コイルFの導線が通される。挿通孔315Dは、各結線領域315Cに3つ設けられており、ダイオードホルダ315の外周縁部において軸線方向の一端部側と他端部側とを貫通している。
誘導コイルIおよび界磁コイルFの導線は、挿通孔315Dを図10の背面側(回転電機1の一端部側)から正面側(回転電機1の他端部側)に軸方向に通された後、結線領域315CにおいてダイオードDの端子Daに結線される。このような構造とすることで、ロータ巻線330とダイオードDとを地絡することなく確実に接続することができる。
このように構成されたダイオードホルダ315において、インナロータ300の回転時の遠心力や振動は、ダイオードDをダイオード収容部315Aから回転電機1の軸線方向に飛び出させるように作用する。また、ダイオードDは、ダイオード収容部315Aが開口する側の面、すなわち、回転電機1の軸線方向の他端部側の面においても発熱する。
そこで、図11、図12において、ダイオードホルダ315のダイオード収容部315Aが形成される側には、バランスプレート316が配置されており、このバランスプレート316は、ダイオードDと図示しない絶縁体を介して接触している。
これにより、バランスプレート316がダイオードDに絶縁材を介して面で接触するため、ダイオードDの軸方向への飛び出しを防止する保持部材としてバランスプレート316を機能させることができるとともに、ダイオードDの放熱のためのヒートシンクとしてバランスプレート316を機能させることができる。したがって、バランスプレート316に保持部材およびヒートシンクとしての機能を持たせることができることで、部品点数を削減できるため、回転電機1を軽量化することができる。
ここで、バランスプレート316には、ボルト360と軸線方向で対向する位置に孔316Aが形成されている。このため、バランスプレート316がダイオードDに接触した状態で、バランスプレート316の孔316Aにボルト360の頭部360Aが挿入される。これにより、ボルト360の頭部360Aがバランスプレート316に干渉することが回避され、ボルト360の頭部360Aの干渉によってバランスプレート316がダイオードDに接触できなくなることが防止される。
以上のように説明した本実施形態の回転電機の作用効果について説明する。本実施形態の回転電機1において、インナロータ300は、電機子コイル104の磁束に重畳する高調波成分が鎖交することにより誘導電流を発生する複数の誘導コイルIと、誘導電流が通電されることにより電磁力を発生する複数の界磁コイルFと、誘導コイルIで発生される誘導電流を整流して界磁コイルFに界磁電流として通電する複数のダイオードDと、を有している。誘導コイルIおよび界磁コイルFは、ダイオードDと閉回路を形成している。
そして、ダイオードDは、インナロータ300に取付けられるダイオードホルダ315の外面に、回転軸1Cの周りに複数配置されているダイオード収容部315A内に取付け可能に形成されている。また、ダイオードホルダ315は、隣接するダイオード収容部315A間を同一の平面で連通する溝315Bを有している。
この構成により、ダイオードDの放熱性を改善するとともに、ダイオードDを保持するダイオードホルダ315の強度を向上できる。
また、本実施形態の回転電機1において、ダイオードホルダ315は、ダイオード収容部315Aが形成される側に、誘導コイルIおよび界磁コイルFとダイオードDとを結線する結線領域315Cを有し、結線領域315Cには、誘導コイルIおよび界磁コイルFの導線を通す挿通孔315Dが設けられる。
この構成により、ロータ巻線330とダイオードDとを地絡することなく確実に接続することができる。
また、本実施形態の回転電機1において、インナロータ300は、ダイオードホルダ315のダイオード収容部315Aが形成される側に、ダイオードDと絶縁体を介して接触されるバランスプレート316を有する。
この構成により、バランスプレート316に保持部材およびヒートシンクとしての機能を持たせることができることで、部品点数を削減できるため、回転電機1を軽量化することができる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
本実施形態の回転電機1は、ラジアルギャップ構造のインナーロータタイプであるが、アキシャルギャップ構造またはアウタロータ構造であってもよい。また、各コイルには、銅線、アルミ導体、リッツ線を用いることができる。また、磁路部材201やロータコア301には、積層電磁鋼板に代えて、軟磁性複合材料であるSMC(Soft Magnetic Composite)コアを用いることができる。また、回転電機1は、ハイブリッド車両のみでなく、風力発電機、工作機械等の他の産業分野にも適用することができる。