JP6530326B2 - 量子計算装置、及び、方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、量子計算装置及び方法に関し、例えば組み合わせ最適化問題を解くことに利用される。
多くの組み合わせパターンの中から、目的に合った量(目的関数と呼ばれる)が最大、または、最小となるパターンを見つけ出す問題は、社会の様々な場面で現れる。このような問題を組み合わせ最適化問題という。組み合わせ最適化問題は、問題のサイズに対して解の候補の数が指数関数的に増えるため、多くの場合、現在の逐次計算を行うノイマン型コンピュータを用いて解くことが困難であることが知られている。
組み合わせ最適化問題の中で、ビット値を取る変数からなる2次関数を最大、または、最小にする問題をQUBO(quadratic unconstrained binary optimization)問題という。多くの組み合わせ最適化問題がQUBO問題に定式化できる。QUBO問題は、多くの場合解くことが困難であることが知られている。ビット値をスピンの古典的なモデルであるイジングスピン±1に対応させると、QUBO問題は統計力学のイジングモデルのエネルギー最小状態(基底状態)を求める問題(イジング問題と呼ぶ)に帰着される。
近年、このQUBO問題(イジング問題)を高速に解くことができるとされる計算装置が注目されている。例えば、レーザーネットワークやパラメトリック発振器ネットワークの発振現象を利用して、イジングモデルの基底状態を見つけ出す方式が提案されている。この発振現象を利用する方式は、それ以前のQUBO問題の解法であるシミュレーティッドアニーリング(熱揺らぎを利用)や量子アニーリング(量子揺らぎを利用)と異なる原理的に新しい方式であり、途中で局所最適解にトラップされにくいと考えられている。
国際公開第2012/118064号パンフレット 国際公開第2015/006494号パンフレット
arXiv:1503.00194(http://arxiv.org/abs/1503.00194). "Holonomic quantum computing with cat-codes"; Albert et al.; 2015. New. J. Phys. 16, 045014. "Dynamically protected cat-qubits: a new paradigm for universal quantum computation"; Mirrahimi et al.; 2014.
ところが、この発振現象を利用する方式において、実際に発振しきい値で得られる状態が近似解になる場合がある。その場合、真の最適解へ到達するには、シミュレーティッドアニーリングのように、何らかの雑音によって局所最適解を抜け出しながらより良い解を探す必要がある。この際、上記文献の原理では、原理的に損失が不可欠であり、損失は量子力学的な重ね合わせの状態を破壊するため、量子アニーリングのような量子力学的な効果は期待できない。その結果として、解の精度をあまり上げることができない。
本発明が解決しようとする課題は、上記事情を考慮してなされたものであって、発振現象と量子力学的な効果をともに利用する新しい原理によって、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができる量子計算装置及び方法を提供することを目的とする。
実施形態によれば、量子計算装置は、複数の量子非線形発振器と、制御装置と、測定器と、を含む。複数の量子非線形発振器は、分岐パラメータを変化させる量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせをそれぞれ実現し、損失を伴わない非散逸的な結合によって相互に結合する。制御装置は、量子非線形発振器の分岐パラメータを個別に制御する。測定器は、量子非線形発振器の出力を測定する。
実施形態の量子計算装置を示す図。 実施形態の量子計算方法を示すフローチャート。 実施形態の量子計算装置の概念図。 量子モデルでの数値シミュレーションのエラー確率の結果を表す図。 古典モデルでの数値シミュレーションのエラー確率の結果を表す図。 量子モデルでの数値シミュレーションの残留エネルギーの結果を表す図。 古典モデルでの数値シミュレーションの残留エネルギーの結果を表す図。 図4A及び図4Bと図5A及び図5Bのシミュレーションにおいて、古典モデルでは100%誤る問題のエネルギー図。 図6Aの問題に対する量子モデルでの各スピン状態の確率の時間発展を表す図。 図6Aの問題に対する古典モデルでの各スピン状態の確率の時間発展を表す図。 超伝導回路によって実装されたカー・パラメトリック発振器を表す図。 3つのスピンの場合の量子計算装置の実施例を表す図。 カー・パラメトリック発振器と読み出しラインの結合をオン・オフできる回路を表す図。 結合共振器を用いて非散逸的な結合を実装する量子計算装置の実施例を表す図。 結合共振器のパラメータを調整できる回路を表す図。 カー・パラメトリック発振器の基底状態・第2励起状態間のエネルギーギャップの離調依存性を表す図。 カー・パラメトリック発振器の分岐点におけるウィグナー関数の離調依存性を表す図。 離調を3つの一定値に設定した場合のシミュレーション結果を示す図。 図16のシミュレーションにおける離調とポンプ振幅の設定を表す図。 離調を図15のように最終的にゼロにするように制御する場合と一定値とした場合(図14)のシミュレーション結果を比較する図。 離調を制御することで精度を改善する量子計算装置の実施例を表す図。 ゲート型万能量子計算機に利用する際の初期化のシミュレーション結果を表す図。 ゲート型万能量子計算機に利用する際の位相シフトゲートのシミュレーション結果を表す図。 ゲート型万能量子計算機に利用する際の回転ゲートのシミュレーション結果を表す図。 ゲート型万能量子計算機に利用する際のエンタングリングゲートのシミュレーション結果を表す図。 量子計算装置を用いたゲート型万能量子計算機の概念図。 ゲート型万能量子計算機に利用する際の量子計算装置の実施例を表す図。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の量子計算装置の基本構成要素は、図1に示すように、複数の量子非線形発振器101、量子非線形発振器101同士を結合する複数の結合器102、系のパラメータを制御する制御装置103、及び量子非線形発振器101を測定する測定器104を備えている。まずは、図1の構成図、図2の量子計算方法を示すフローチャートを参照して説明する。
量子非線形発振器101は、単独である場合、系のパラメータ(分岐パラメータと呼ぶ)を制御パラメータとする量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせを生成することが可能である。また、量子非線形発振器101の損失は、その影響が無視できるほど小さいとする。(理想的な場合、損失はないとする。)
結合器102はそれぞれ、複数の量子非線形発振器101のうちの2つを、損失なく非散逸的に結合する。
結合器102は、装置の実体はなく単に量子非線形発振器101同士が直接結合している場合も示すとする。
制御装置103は、全ての量子非線形発振器101の分岐パラメータを個別に制御する。
測定器104は、全ての量子非線形発振器101の出力を測定する。量子計算装置は、この測定結果によって計算結果を得ることができる。測定器104は、例えば電場振幅の位相のパリティを測定する。
量子計算装置及び方法についてより詳細に以下に記述する。
まず、単独の量子非線形発振器101について詳しく説明する。量子非線形発振器101は、分岐パラメータを制御パラメータとする量子断熱変化によって、区別可能な量子状態の重ね合わせへと変化する「量子力学的な分岐現象」を示す。イジングスピンの±1は、分岐後の区別可能な2つの量子状態に対応させられる。以下ではこのような発振器として、カー効果を有するパラメトリック発振器(以下、「カー・パラメトリック発振器」)を具体例に適宜用いて説明するが、量子力学的な分岐現象を示す量子非線形発振器であれば同様の効果が期待できる。
カー・パラメトリック発振器の時間発展は次のハミルトニアンHによって与えられる。
ここで、
はそれぞれ発振器の消滅演算子と生成演算子を表す。また、Hparaはパラメトリック増幅、HKerrはカー効果、Hdetは離調にそれぞれ対応するハミルトニアンであり、pはパラメトリック増幅のポンプ振幅、Kはカー係数、Δは離調である。(離調は、発振器の固有周波数をω、パラメトリック増幅のためのポンプ周波数をωとして、Δ=ω−ω/2で定義される。)特に断らない限り、以下ではp、K、Δを非負実数とする。
この本実施形態のカー・パラメトリック発振器は、特許文献2で用いられた通常のパラメトリック発振器とは異なり、2光子損失の代わりにカー効果を、1光子損失の代わりに離調を有しており、理想的には損失を有していない点に特長がある。
この量子非線形発振器101は、初期状態を真空状態(消滅演算子のゼロ固有値状態)として、パラメトリック増幅のポンプ振幅p(カー・パラメトリック発振器の分岐パラメータ)をゼロから徐々に大きくしていくと、p=Δで分岐(発振)し始め、p>Δでは振幅xの期待値の大きさが等しく符号が逆符号の2つの発振状態の量子力学的な重ね合わせになる。ここで振幅xは以下である。
これが、前述の量子力学的な分岐現象である。符号が逆符号の2つの発振状態がイジングスピンの±1に対応させられる。ここで、分岐点(発振しきい値)が離調で決まる点に注意する。(これに対し、特許文献2で用いられた通常のパラメトリック発振器の発振しきい値は1光子損失で決まる。)
以下、上で説明した量子非線形発振器101を複数用いる本実施形態の量子計算装置について説明する。本実施形態の量子計算装置では、初期状態を真空とした量子断熱変化を利用して最適解を見つけ出す。そのため、初期のハミルトニアンは、真空を最小固有値の固有状態として持つ必要がある。(今はKを正としているが、Kが負の場合はすべての符号を反転し、「正」を「負」に、「最小」を「最大」などと適宜読みかえる。)ここではこの条件を「量子断熱変化の初期条件」と呼ぶこととする。この条件を満たすには、例えば、離調を以下の条件を満たすように設定すればよい(例えば、制御装置103が設定する)。(初期設定段階:図2のS201)
離調の条件(Δはi番目の量子非線形発振器の離調):
つまり、
で定義される行列Mが半正定値(つまり、すべての固有値が非負)となる。
初期値設定段階の次は、解きたい問題に合せて量子非線形発振器の間で、非散逸的な結合を設定する(結合段階:図2のS202)。本実施形態の量子計算装置は、図3の概念図に示すように、問題に応じて複数の量子非線形発振器301を適切に結合302したネットワークで構成される。以下では、エネルギー関数が下記のEで与えられるイジングモデルを例に説明する。以下、Eを「イジングエネルギー」と呼ぶ。
ここで、sはi番目のイジングスピンの値を表し、±1を取る。また、結合定数{Ji,j}はJi,i=0、及び、Ji,j=Jj,iを満たす。
上記イジングモデルに対し、本実施形態の量子計算装置では、N個の量子非線形発振器を適切に結合し、以下の結合ハミルトニアンHを実装する。
ξは結合エネルギーの大きさを定める正の定数である。
ここで、上記の結合が損失を全く伴っていない点に注意する。そこで、この結合を「非散逸的な結合」と呼ぶ。(これに対し、特許文献2で用いられた相互注入による結合方式はこのようなハミルトニアンでは記述できず、散逸的である。)また、上記の結合は標準的な線形の結合であり、物理的実装が容易である。
上記の初期条件が満たされたとき、ネットワークの分岐点(発振しきい値)は、結合エネルギーが小さい発振パターンほど低くなる。結合エネルギーの最小化は近似的にイジングエネルギーの最小化になるため、初期状態を真空状態として分岐パラメータをゼロから徐々に大きくして発振させると、イジングエネルギーが低い発振パターンの重ね合わせ状態が得られる(分岐段階:図2のS203)。このようにイジングエネルギーの低い状態が自動的に得られる点が発振現象を利用する方式のメリットであり、これにより、イジングエネルギーが高い局所最適解にトラップされることを避けられる。また分岐点付近では、イジングエネルギーの低い状態が1つだけ選ばれるのではなく、量子揺らぎによってイジングエネルギーが低い複数の状態の量子力学的な重ね合わせとなる。これにより、大域最適解が高い確率で見つかることが期待される。
さらに分岐パラメータを大きくしていくと、最終的にネットワークの状態は大域最適解へと収束していく。これは、断熱条件が満たされているという仮定の下で、量子断熱定理から保証される。初め、分岐パラメータはゼロであり、初期状態である真空状態は全系の基底状態である。分岐パラメータを十分ゆっくり変化させると、量子断熱定理により、全系の状態は最終的なハミルトニアンの基底状態へと変化する。ここで、分岐パラメータが十分大きい場合、非線形項(カー・パラメトリック発振器の場合、パラメトリック増幅とカー効果)が主要となり、発振振幅はどの発振器も同程度となり、位相(上記のxの符号)だけが異なる状況になる。そして、各発振器からこの位相を測定して測定結果から計算結果を得る(測定段階:図2のS204)。全系のハミルトニアンの中で位相に依存するのは結合ハミルトニアンだけであり、振幅がすべて等しく位相だけが異なるという条件下では、これはイジングエネルギーに比例する。よって、最終状態である全系の基底状態はイジングエネルギーを最小にする状態、つまり、大域最適解に対応する状態となる。このように、分岐点付近では量子揺らぎによってイジングエネルギーが低い複数の状態の重ね合わせになり、最終的には量子断熱変化によって大域最適解へ収束することは、量子効果が有効に働いていると考えることができる。
以上のように、本実施形態の量子計算装置では、理想的には損失を全く伴わない量子非線形発振器を、やはり損失を伴わない非散逸的な結合でつないだネットワークによって、発振現象(分岐現象)と量子効果をともに有効に利用して組み合わせ最適化問題を解くことができる。
次に、この量子効果を確認するために、カー・パラメトリック発振器を用いた本実施形態の量子計算装置の量子モデルと古典モデルのシミュレーションを行い、比較したことについて図4A及び図4Bと図5A及び図5Bを参照して説明する。ここで、量子モデルでは上記のハミルトニアンを用いたシュレディンガー方程式を数値的に解き、古典モデルでは次の常微分方程式系を数値的に解いた。
この方程式は、下記の消滅演算子のハイゼンベルグ方程式から導出される。
そして、この消滅演算子を下記の式で表される古典近似をして得られる。
ここで、このx,yは実変数である。
本シミュレーションでは4つのスピンのイジング問題を解いた。結合定数{Ji,j}を−1〜1の一様乱数でランダムに設定し、1000問の問題を作成し、それぞれについてエラー確率(大域最適解が得られない確率)と残留エネルギー(得られた解のイジングエネルギーと真のイジングエネルギー最小値の差)の期待値を見積もった。その結果をヒストグラムにまとめたものをそれぞれ図4A及び図4Bと図5A及び図5Bに示す。
図4Bを参照すると、古典モデルでも多くの問題で大域最適解が見つかることがわかる。これはイジングエネルギーが低いものほど早く発振する上記の機構が古典モデルでも成り立つからである。一方、図4Bからわかるように、古典モデルでは高い確率で誤る問題もかなりある。これらの問題で誤る原因は、局所最適解にトラップされてしまうためと思われる。それに対し、図4Aを参照すると、量子モデルでは高い確率で誤る問題の数が劇的に減っている。これは、量子揺らぎによって局所最適解にトラップされるのを回避し、量子断熱定理によって大域最適解へ収束したためと考えられる。
以上を確認するため、古典モデルで100%誤る問題について詳しく見る。図6Aに、この問題のエネルギー図(energy landscape)を示し、図6B及び図6Cにそれぞれ量子モデル及び古典モデルの各スピン状態の確率の時間変化を示した。ここではスピンの1と−1をビットの0と1に対応させて表示する。イジングエネルギーEIsingが最小となる大域最適解は0100と1011であり、エネルギー図の「最適解からの距離」はビット表示における大域最適解からのハミング距離を表す。0001と1110は局所最適解になっている。古典モデルでは、図6Cを参照すると、まず局所最適解である0001と1110の確率が1に上がり、その後、その隣の0011と1100との間で振動し、大域最適解の確率は最終的にほぼゼロになる。これに対し、量子モデルでは、図6Bを参照すると、初めにイジングエネルギーが比較的低いスピン状態の確率が高い重ね合わせの状態となり、最終的には大域最適解の確率が1へと収束している。この結果は、量子揺らぎの効果で局所最適解へのトラップを回避し、量子断熱定理のために大域最適解へ収束した、と解釈できる。
以上から、上述の本計算装置が期待通りに動作することが確認された。
以下、離調の調整による計算の高速化(高精度化)を提案する。(ここで、「高精度」とは、目的関数の最適値からのずれが小さいことを意味する。イジング問題の場合、残留エネルギーが小さいことに相当する。)
量子断熱変化は、基底状態と励起状態のエネルギーギャップの最小値が大きいほど高速化できる。(計算時間が同じであればより高精度になる。)図12に1つのカー・パラメトリック発振器の基底状態・第2励起状態間のエネルギーギャップの離調依存性を示す。(カー・パラメトリック発振器では、基底状態と第1励起状態の間の遷移はハミルトニアンのパリティ反転対称性から禁止されているため、基底状態・第2励起状態間のエネルギーギャップを考えれば十分。)図12は、離調が大きいほどエネルギーギャップの最小値が大きくなることを示している。図12によれば、Δ=0の場合は約1(p/K)、Δ=Kの場合は約3(p/K)、Δ=2Kの場合は約4.5(p/K)、Δ=5Kの場合は約7.7(p/K)になる。そこで、ネットワークによって最適化問題を解く場合も、離調を付加することでエネルギーギャップを開き、高速化(高精度化)できることが期待される。
離調の付加による精度の改善は、量子揺らぎの観点からも期待される。図13に、図12の各離調に対する分岐点(p=Δ)におけるウィグナー関数を示す。(ウィグナー関数とは、位相空間(前記の古典モデルの2つの変数xとyで張られる空間)上の擬確率密度関数として知られるもの。)図13からわかるように、離調が大きいほど分岐点におけるx方向の量子揺らぎが大きくなる。よって、離調が大きいほど局所最適解にトラップされにくいと期待される。特に、離調がKに比べて大きい場合に量子揺らぎの効果が大きくなる。
以上のことを確認するため、上記と同様の4スピンの1000問を解くシミュレーションを行った。(ここでは量子モデルのみ扱う。)離調は一定ですべての発振器で同じとする。その離調の値として、次の3つの値を選んだ。
1. Δ=3ξ
2. Δ=10ξ
3. Δ=20ξ
初めの値は量子断熱変化の初期条件(上式(4)の行列Mが半正定値になるという条件)を満たす中で比較的小さい値、他の2つは比較的大きい値である。(なお、本シミュレーションではξ=0.2Kとした。)また、pはゼロから5K+Δまで時刻に比例するように増加させた。(最終的な平均光子数をおよそ5にそろえるために5K+Δまでとしている。)計算時間(pの掃引時間)は100/Kとした。
シミュレーションの結果を図14に示す。図14は、残留エネルギーの分布関数P(E)(残留エネルギーがE以下となる確率)を1000問の残留エネルギーの結果から見積もり、それを1から引いたもの(つまり、1−P(E))を両対数で表している。同じEに対してグラフが下にあるほど精度が高いことを意味する。図14から、期待通り、離調を比較的大きく取ったほうが精度が高くなることが確認された。一方、Δ=10ξの場合のほうがΔ=20ξの場合よりも精度が高くなったことから、大きいほど良いというものでもないことがわかる。以上から、離調は、単に数式(4)の行列Mが正定値になるように取れば何でも良いというものではなく、付加的な離調をあえて付け、その値を変えながら何度か計算し、残留エネルギーが最小となる解を選択する、という方法が望ましい。
離調が大きすぎると、前述の「分岐パラメータが十分大きい場合、非線形項(カー・パラメトリック発振器の場合、パラメトリック増幅とカー効果)が主要となり、発振振幅はどの発振器も同程度となり、位相(上記のxの符号)だけが異なる状況になる。」という仮定が成り立たなくなることに起因するモデル誤差が大きくなる。このモデル誤差は、離調を最終的にゼロに変化させることで消すことができると考えられる。(完全にゼロでなくてもK以下にすれば効果があるため、以下では「離調をゼロにする」というのはK以下にすることを意味することとする。)
以上のことを確認するために、初めは離調を大きく取ることでエネルギーギャップを開き、pがある程度大きくなった後、離調を最終的にゼロに変化させる場合のシミュレーションを行った。離調の初期値として、図14のシミュレーションと比較するために、Δ=10ξとΔ=20ξの2つの場合を調べた。また、pの最終値は、図13のシミュレーションと比較するために5Kとした。(つまり、最終的な平均光子数がおよそ5とした。)以上のように設定したΔとpの時間変化を図15に示す。
このシミュレーション結果と図14のシミュレーション結果との比較を図16に示す。離調を一定とする場合と異なり、図15のように離調を制御する場合は、残留エネルギーが0.001以下と非常に小さくなる確率が増えている。これは、上記のモデル誤差がなくなったためと考えられる。一方、図15の制御ありでΔ(0)=20ξの場合、残留エネルギーが大きくなる確率が増えている。これは、図15の制御の結果、断熱条件が悪くなったためと考えられる。それに比べ、図15の制御ありでΔ(0)=10ξの場合は、離調一定の場合よりも全体として高精度になっている。これは、断熱条件を悪化させることなく、モデル誤差を消すことができたため、と考えられる。以上から、離調を一定とする場合と最終的にゼロへ変化させる場合の両方を、値を変えながら何度か計算し、残留エネルギーが最小となる解を選択する、という方法が望ましい。
なお、これまで相互作用項のみのイジングモデルを扱ったが、局所外部磁場項も含んだEの場合も扱うことができる。ここでEは以下である。
以下、カー・パラメトリック発振器を例にこの場合を説明する。
各カー・パラメトリック発振器に周波数ω/2の電磁波を入力し、次のハミルトニアンを実装する:
ここで、α(t)は発振時の振幅の大きさに相当し、カー・パラメトリック発振器の場合は以下で表せる。
α(t)は初めゼロであり、p(t)とともにゆっくりと変化する。p(t)が十分大きくなったとき、発振振幅はどの発振器も同程度となり、位相だけが異なる状況になる。全系のハミルトニアンの中で位相に依存するのは結合ハミルトニアンと上記のHMagだけであり、振幅がすべて等しく位相だけが異なるという条件下では、これはイジングエネルギーに比例する。こうして、前述と同様、量子断熱定理により、最終的にイジングエネルギーを最小にする状態が得られる。
なお、ここでは局所外部磁場項のために入力される電磁波の振幅を実数としたが、あえて上記の振幅に虚部を追加することでエネルギーギャップが開き、精度が改善する場合がある。(虚部は最終的にゼロにする。)
本実施形態の量子計算装置によれば、発振現象と量子力学的な効果をともに利用する新しい原理によって、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができる。
本量子計算装置は、各量子非線形発振器の2つの発振状態を量子ビットと見なして、量子ゲート操作に基づく万能量子計算機として用いることもできる。万能量子計算機は、現在の計算機では計算量が多くて解けない問題、例えば、素因数分解を高速に解くことができる。以下、本量子計算装置を万能量子計算機として用いる方法を説明する。
量子ゲート操作に基づく万能量子計算機に必要な処理は、量子ビットの読み出し、量子ビットの初期化、位相シフトゲート、回転ゲート、エンタングリングゲートの5つである。ここで、各ゲートは次のように定義される。(ゲートの定義には任意性があるが、ここでは本装置に合うものを選んだ。)
位相シフトゲート:
回転ゲート:
エンタングリングゲート:
以下、各操作の方法を順に説明するが、エンタングリングゲートの場合を除き、発振器間の結合はすべて切れた状態にあるとする。
量子ビットの読み出しは、前記のイジングスピンの読み出しと同じである。
量子ビットの初期化は、ポンプ振幅をゼロから分岐点(発振しきい値)以上の値pへ徐々に大きくしていく量子断熱変化によって、各発振器の状態を真空状態から2つの発振状態の重ね合わせ状態
(規格化因子は略)へ変化させることで達成される。ここで、
は振幅が
のコヒーレント状態であり、
を量子ビットの|0>と見なし、
を量子ビットの|1>と見なす。(pは十分大きいとして、これらは直交する。)この初期化で準備される状態を量子ビットで表すと、|0>+|1>(規格化因子は略)となる。これは多くの量子アルゴリズム(例えば、ショアの素因数分解アルゴリズム)の初期状態と一致する。なお、この初期化において、各発振器の離調は最終的にゼロであると仮定しているが、前述のエネルギーギャップの考察から、初めは離調を比較的大きな値(Kと同程度以上)とし、徐々に減少させ、最終的にゼロにすることで、離調を常にゼロにする場合に比べ、初期化に必要な量子断熱変化を高速化、または、高精度化できる。このことを数値シミュレーションで確認した。初期化に要する時間Tを20/Kとし、ポンプ振幅は
離調は
と設定し、各Δに対して最終的に得られた状態と理想的な初期状態
(規格化因子は略)の間の忠実度(Fidelity)Fを計算した。(2つの状態ベクトルの間のFはその内積の2乗で定義される。)その結果を図18に示す。期待した通り、ΔがKと同程度以上で高い忠実度が得られることがわかった。
次に、位相シフトゲートの実行方法を説明する。ポンプ振幅はpのまま、離調はゼロのまま、外部励起パルスEin(t)によって以下のハミルトニアンを実現する。
なお、このパルスは量子断熱変化が起こるように十分ゆっくりと変化するエンベロープを持つものとする。Ein(t)が常にKに比べて十分小さいとき、各量子ビットのエネルギーは状態に応じて次のようにシフトする。
これによって、次の角φの位相シフトゲートが実現される(Tはゲート時間)。
以上を数値シミュレーションで確認した。前述の初期化のシミュレーションと同じ設定で初期化した後、外部励起パルスEin(t)を
と変化させた(上の結果から、これで角φの位相シフトゲートが実行される)。ゲート時間Tは5/Kとした。最終的に得られた状態と理想的な状態
(規格化因子は略)の間の忠実度(Fidelity)Fを計算した。図19にその結果を示す。−π〜πのφに対して非常に高い忠実度が得られることがわかる。
次に、回転ゲートの実行方法を説明する。ポンプ振幅はpのまま、離調をパルス的に変化させる。なお、このパルスは量子断熱変化が起こるように十分ゆっくりと変化するエンベロープを持つものとする。離調がある程度大きくなると、離調がゼロのとき縮退していた光子数パリティが偶と奇の状態が***し、そのエネルギー差に依存した相対位相θが生じる。これによって、離調のパルス的変化の後、次のように量子ビットの状態が変化する。
これは、全体にかかる位相因子を除き、角θの回転ゲートである。全体にかかる位相因子は無視できるため、これで回転ゲートが達成される。以上を数値シミュレーションで確認した。本シミュレーションでは、まず、前述のシミュレーションと同じ設定で初期化とφ=π/2の位相シフトゲートを行い、本シミュレーションの初期状態
を準備する。その後、離調を
とパルス的に変化させた(Tはゲート時間)。本シミュレーションではT=10/Kとした。各Δに対して、最終的に得られた状態と角θの回転ゲートの理想的な出力状態の間の忠実度を計算し、忠実度が最大となるθおよび対応する忠実度の最大値を求めた。図20にその結果を示す。−π〜0のθが得られ、忠実度も十分高い値が得られることがわかった。
最後に、エンタングリングゲートの実行方法を説明する。ポンプ振幅はpのまま、離調はゼロのまま、エンタングリングゲートを実行したい2つの発振器間の結合係数gをパルス的に変化させ、以下のハミルトニアンを実現する。
ここで、
は各量子ビットの消滅演算子である。なお、このパルスは量子断熱変化が起こるように十分ゆっくりと変化するエンベロープを持つものとする。g(t)が常にKに比べて十分小さいとき、2つの量子ビットのエネルギーは状態に応じて次のようにシフトする。
これによって、次の角Θのエンタングリングゲートが実現される(Tはゲート時間)。
以上を数値シミュレーションで確認した。前述の初期化のシミュレーションと同じ設定で2個の量子ビットを初期化した後、結合係数g(t)を
と変化させた(上の結果から、これで角Θのエンタングリングゲートが実行される)。ゲート時間Tは5/Kとした。最終的に得られた状態と理想的な状態
(規格化因子は略)の間の忠実度(Fidelity)Fを計算した。図21にその結果を示す。0〜πのΘに対して非常に高い忠実度が得られることがわかる。
ここで、以上の3種類の量子ゲート操作はすべて、量子断熱変化に伴う力学的位相(エネルギー差に依存する位相シフト)を制御することで実現されており、いわゆる幾何学的位相(ベリー位相やホロノミーなど)とは異なる点に注意する。(ここでの量子断熱変化は、各発振器のほぼ縮退した2つの基底状態で張られるヒルベルト空間内に各発振器の状態が閉じ込められている過程を指す。)また、回転ゲートでは、光子数パリティの偶奇の状態の縮退を解く際に、ポンプ振幅を十分小さくするのではなく、離調を十分大きくする点に注意する。(ポンプ振幅を小さくするよりも、離調を大きくする方が、エネルギーギャップを大きく保てるため、より高速な、または、より高精度な量子断熱変化が可能である。)
以上の処理を図22の概念図にまとめた。量子ゲート操作に必要なパラメータ制御はゲート操作用制御装置2201が行う。
以上のように、量子非線形発振器のネットワークを用いる本量子計算装置は、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができるだけでなく、量子ゲート操作に基づく万能量子計算も実行することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下では3つのスピンの場合について説明するが、他の場合も同様にして実施できる。また、カー・パラメトリック発振器を具体例に説明するが、量子力学的な分岐現象を示す量子非線形発振器であれば、同様の実施が可能である。
(実施例1)
まず、カー・パラメトリック発振器は、図7に示した超伝導回路によって実装される(Z. R. Lin et al., Nat. Commun. 5, 4480 (2014))。超伝導マイクロ波共振器701、及びdc SQUID702からなる。なお、光カー効果と光パラメトリック増幅を利用することも考えられるが、ここでは小さな損失と大きな非線形性が両立できる超伝導回路を用いることとする。
この回路は、超伝導マイクロ波共振器701をdc SQUID702で終端する構造になっており、制御装置103が外部電流を流しdc SQUID702内の磁束を外部電流で変調することで、発振器の固有周波数(離調)、及び、パラメトリック増幅のポンプ振幅を調整できる。これにより、量子断熱変化の初期条件を満たすための離調の調整、および、前述の計算原理を実行するためのパラメトリック増幅率の制御ができ、これらが制御装置103によって実行される。また、dc SQUID702のジョセフソン接合による非線形性のため、カー効果が得られる。
上記以外にも、ジョセフソン接合の非線形性を利用した超伝導回路により、量子力学的な分岐現象を示す量子非線形発振器は様々な方法で実装できる。
カー・パラメトリック発振器間の非散逸的な結合は、キャパシタを介した結合で実装される。図8に3つのカー・パラメトリック発振器801のネットワークの概念図を示す。
制御装置803が分岐パラメータをゼロから分岐点を超えるように徐々に変化させた後、図8に示したように、結果の読み出しは、各カー・パラメトリック発振器801に読み出しラインをキャパシタ802を介して結合し、読み出しラインへの出力をアンプで増幅後、ヘテロダイン検出によって位相を測定することで行われる。得られた位相は、ポンプとの相対位相で決まる180°ずつの2つの範囲に対応して±1(パリティ)に変換される。これが計算結果となる。(図8では、以上の処理をパリティ測定器804が行う。)
なお、カー・パラメトリック発振器801と読み出しラインの結合は、計算中はオフにするのが望ましい。これは、図9に示したように、読み出しラインをdc SQUID901で終端することにより実現できる(M. Wallquis et al., Phys. Rev. B 74, 224506 (2006))。
局所外部磁場項も含むイジングモデルを扱う場合は、各カー・パラメトリック発振器に電磁波を入力できるポートを作り、そこから電磁波を入力する。
(実施例2)
(実施例1)では、非散逸的な結合を、カー・パラメトリック発振器801をキャパシタ802を介して直接結合することで実装された。しかし、直接結合する場合、発振器の配置の自由度が小さい上、結合定数を変更することが困難である。そこで、本実施例では、カー・パラメトリック発振器801間を結合共振器1002で結合する(図10)。これにより、配置の自由度が広がる上、結合共振器1002のパラメータ調整によって、解きたい問題に応じた結合定数の変更が容易になる。以下ではまず、結合共振器1002によって所望の結合が実装できることを説明する。
i番目の発振器とj番目の発振器(i<j)を結合する結合共振器(i,j)の消滅演算子をbi,j、固有周波数をωi,j、i番目の発振器、及び、j番目の発振器との結合強度をそれぞれgi,j、及び、gj,iと表す。このとき、結合共振器に対応するハミルトニアンは次のようになる:
ここで、離調Δi,jは、Δi,j=ωi,j−ω/2で定義される。(便宜上、i>jに対しても離調をΔj,i=ωi,j−ω/2と定義する。)
離調Δi,jの絶対値が他のパラメータ(カー係数K、パラメトリック増幅のポンプ振幅p、各発振器の離調Δ、結合強度ξi,j、局所外部磁場項のためのポンプ振幅ξα)の絶対値に比べ十分大きいとき、結合共振器1002の自由度を断熱消去することができ、その結果得られる有効ハミルトニアンは次のようになる。
よって、下記の式を満たすようにgi,jとΔi,jを選べば、上記の所望のハミルトニアンが実現できる。
ここで、Δi,jをすべて負とすると、上記の定義から明らかにH’は非負演算子であり、量子断熱変化の初期条件を満たすための上記の行列Mの半正定値条件が自動的に満たされる。なお、行列Mの半正定値条件が満たされる範囲で各発振器に離調を追加してもかまわない。
結合共振器1002を変形することにより、量子非線形発振器101の配置の自由度を広げられる。また、発振器と結合共振器の結合強度gi,jや結合共振器の離調Δi,jを調整することで、解きたい問題に応じて結合定数{Ji,j}を変更することができる。
カー・パラメトリック発振器801と結合共振器1101の結合強度gi,jや結合共振器1101の離調Δi,jの調整は、前記の読み出しラインの場合と同様、結合共振器1101をdc SQUID1102で終端することにより実現できる。その様子を図11に示す。これによって、gi,jやΔi,jの絶対値のみならず符号も調整できる。こうして、解きたい問題に応じて結合定数{Ji,j}を変更することができる。
(実施例3)
離調を制御することによって精度を向上させる実施例について説明する。本実施例では、(実施例1)または(実施例2)の構成に加え、離調を制御する制御装置(103、803)へ様々な離調設定を送り、測定器(104、804)から計算結果を受け取り、異なる離調設定で得られた計算結果の中から最良のものを選択して出力する解選択装置を備える。本実施例では、非線形発振器101、801としてdcSQUIDを有する超伝導マイクロ波共振器を用いるため、離調の制御は外部電流によるdcSQUID内の磁束の制御で実現される。
本実施例の構成を図17に示す。解選択装置1701から離調設定が制御装置103、803へ送られ、制御装置103、803が受け取った離調設定に合わせて各発振器101、801の離調を制御する。制御として、以下の2つの場合を含むものとする。
1. 量子断熱変化の初期条件を満たす一定値とする。
2. 初期値は量子断熱変化の初期条件を満たす値とし、最終的にはゼロにする。
上記1の場合なら離調の一定値を、上記2の場合なら離調の初期値をいろいろ変えて計算を繰り返す。解選択装置1701はパリティ測定器104、804から各計算結果を受け取り、それぞれの計算結果に対する残留エネルギーを計算し、残留エネルギーが最小となるものを選び出し、それを出力する。
(実施例4)
量子ゲート操作に基づく万能量子計算機の実施例について説明する。本実施例の構成を図23に示す。ここでは簡単のため2個の量子ビットだけを示したが、3個以上の場合も同様である。結合係数を制御するために、実施例2の結合共振器による発振器間結合を用いる。結合係数の制御は、結合共振器のdc SQUID内の磁束を外部電流で制御することによって可能である。(数式(41)からわかるように、結合共振器を用いると余計な離調が生じるが、それがポンプ振幅pに比べて十分に小さければ、その影響は無視できる。無視できない場合は、各発振器701、702の離調を調整することで消すことができる。)
本実施例では、量子ゲート操作を実行するためのゲート操作用制御装置2201を備える。ゲート操作用制御装置2201は、位相シフトゲートを実行する際は外部励起用電磁波を、回転ゲートを実行する際は各発振器のdc SQUID702の磁束を制御する外部電流によってポンプ振幅と離調を、エンタングリングゲートを実行する際は結合共振器が有するdc SQUIDの磁束を制御する外部電流によって発振器間の結合係数を、それぞれ制御する。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
101、301…量子非線形発振器、102…結合器、103、803…制御装置、104…測定器、302…結合、701…超伝導マイクロ波共振器、702、901、1102…dc SQUID、801…カー・パラメトリック発振器、802…キャパシタ、804…パリティ測定器、1002、1101…結合共振器、1701…解選択装置、2201…ゲート操作用制御装置。

Claims (22)

  1. 分岐パラメータを変化させる量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせをそれぞれ実現し、損失を伴わない非散逸的な結合によって相互に結合する複数の量子非線形発振器と、
    前記量子非線形発振器の前記分岐パラメータを個別に制御する制御装置と、
    前記量子非線形発振器の出力を測定する測定器と、
    を具備する量子計算装置。
  2. 前記量子非線形発振器間を接続し、前記の損失を伴わない非散逸的な結合を実現する複数の結合器をさらに具備する請求項1に記載の量子計算装置。
  3. 前記制御装置は、さらに、計算の初期段階において系の時間発展を規定するハミルトニアンの最小または最大の固有値に対応する固有状態が真空状態となるように、前記量子非線形発振器の固有周波数を制御する請求項1または請求項2に記載の量子計算装置。
  4. 前記測定器は、前記量子非線形発振器の出力の正負を測定するパリティ測定器を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  5. 前記量子非線形発振器がパラメトリック増幅とカー効果を有するカー・パラメトリック発振器である請求項1から4のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  6. 前記カー・パラメトリック発振器が、ジョセフソン接合を有する超伝導回路で実装される請求項5に記載の量子計算装置。
  7. 前記量子非線形発振器が、ジョセフソン接合を有する超伝導回路で実装される請求項1から6のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  8. 前記非散逸的な結合が、キャパシタを介した結合であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  9. 前記非散逸的な結合が、前記量子非線形発振器の固有周波数から離調された共振周波数を持つ結合共振器を用いて実装される請求項1から7のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  10. 分岐パラメータを変化させる量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせをそれぞれ実現する複数の量子非線形発振器を、損失を伴わない非散逸的な結合によって相互に結合し、
    前記量子非線形発振器の前記分岐パラメータを制御し、
    前記量子非線形発振器の出力を測定すること
    を具備する量子計算方法。
  11. 計算の初期段階において系の時間発展を規定するハミルトニアンの最小または最大の固有値に対応する固有状態が真空状態となるように、前記量子非線形発振器の固有周波数を設定することをさらに具備する請求項10に記載の量子計算方法。
  12. 前記量子非線形発振器の固有周波数の初期値を設定し、初期段階以降の固有周波数を制御する離調制御装置と、
    計算の初期段階において系の時間発展を規定するハミルトニアンの最小または最大の固有値に対応する固有状態が真空状態となる、という初期条件を満たす範囲で固有周波数を異なる設定に制御して計算することを前記離調制御装置に繰り返えさせ、各計算結果で最良のものを選択して出力する解選択装置と、を具備する請求項1から9のいずれか1項に記載の量子計算装置。
  13. 前記離調制御装置が前記異なる設定では異なる初期値を選んでその後一定値とする場合を含む請求項12に記載の量子計算装置。
  14. 前記離調制御装置は、前記固有周波数の初期値は前記初期条件を満たし、計算終了時にはパラメトリック励起に対する離調がゼロとなるように制御する場合を含む請求項12または13に記載の量子計算装置。
  15. 計算の初期段階において系の時間発展を規定するハミルトニアンの最小または最大の固有値に対応する固有状態が真空状態となる、という初期条件を満たす範囲で、前記量子非線形発振器の固有周波数を異なる設定に制御して計算することを繰り返し、各計算結果で最良のものを選択して出力することを特徴とする請求項10または11に記載の量子計算方法。
  16. 前記異なる設定では異なる初期値を選んでその後一定値とする場合を含むことを特徴とする請求項15に記載の量子計算方法。
  17. 前記異なる設定が、初期値は前記初期条件を満たすように設定され、計算終了時にはパラメトリック励起に対する離調がゼロになるように変化させる場合を含むことを特徴とする請求項15または16に記載の量子計算方法。
  18. 量子非線形発振器の分岐後の2つの量子状態を量子ビットとして用い、
    量子断熱変化によって量子ビットの初期状態を準備するための分岐パラメータの制御と、
    量子断熱変化によって位相シフトゲートを実行するための量子非線形発振器への外部励起の制御と、
    量子断熱変化によって回転ゲートを実行するための量子非線形発振器の固有周波数のパラメトリック励起に対する離調の制御と、
    量子断熱変化によってエンタングリングゲートを実行するための量子非線形発振器間の結合係数の制御と、
    を実行するゲート操作用制御装置をさらに具備する請求項1,2,4,5,6,7,8,9のいずれかに記載の量子計算装置。
  19. 分岐パラメータを変化させる量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせをそれぞれ実現する複数の量子非線形発振器を用い、
    量子非線形発振器の分岐後の2つの量子状態を量子ビットとして用い、
    量子非線形発振器への外部励起パルスの照射による量子断熱変化によって位相シフトゲートを実行し、
    量子非線形発振器の固有周波数のパラメトリック励起に対する離調をパルス的に変化させる量子断熱変化によって回転ゲートを実行し、
    量子非線形発振器間の結合係数をパルス的に変化させる量子断熱変化によってエンタングリングゲートを実行すること、
    を具備する量子計算方法。
  20. 前記量子非線形発振器を初め真空状態に準備し、パラメトリック励起に対する離調を有限値からゼロへと変化させるとともに分岐パラメータの大きさをゼロから分岐点以上へ変化させる量子断熱変化によって、量子ビットの初期状態を準備することを具備する請求項19に記載の量子計算方法。
  21. 分岐パラメータを変化させる量子断熱変化によって、1つの量子状態を分岐させ区別可能な量子状態の重ね合わせをそれぞれ実現する複数の量子非線形発振器と、
    前記量子非線形発振器が生成する分岐後の2つの量子状態を量子ビットとして用い、前記量子非線形発振器へ外部励起パルスを照射して量子断熱変化によって位相シフトゲートを実行し、前記量子非線形発振器の固有周波数のパラメトリック励起に対する離調をパルス的に変化させる量子断熱変化によって回転ゲートを実行し、前記量子非線形発振器間の結合係数をパルス的に変化させる量子断熱変化によってエンタングリングゲートを実行する制御装置と、
    前記量子非線形発振器の出力を測定して前記量子ビットを読み出す測定装置と、
    を具備する量子計算装置。
  22. 前記制御装置は、前記量子非線形発振器を初め真空状態に準備し、パラメトリック励起に対する離調を有限値からゼロへと変化させるとともに分岐パラメータの大きさをゼロから分岐点以上へ変化させる量子断熱変化によって、量子ビットの初期状態を準備する請求項21に記載の量子計算装置。
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