JP6527828B2 - 汎用型消音器 - Google Patents
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Description
このような設備から発せられる音は機械部品の振動や、その設備が扱う移送流体の脈動など様々な要因により発生するが、騒音は様々な周波数の音を含み、低周波音と呼ばれる周波数が100Hz以下の音を含むことが多い。
このため、騒音源となる設備に対する騒音対策が求められる。一般的な騒音対策として、設備の下に防振ゴムを敷いたり、騒音源となる設備の周りを囲う防音カバーを設けたりすることが行われる。しかし低周波音の場合、防音カバーでは防音の効果は小さく外部に漏洩しやすい。また送風機や給湯設備のヒートポンプユニットなどは、空気の流動や熱交換のために防音カバーで密閉することができず、有効な騒音対策がさらに難しい。
騒音源の音の周波数が特定される場合は、比較的構造が簡単で設計しやすい音響管を利用した消音器も低周波音を低減するために有効である。
騒音源となる設備を覆うカバーや防音ハウスを設置するにしても、住宅関連機器などの場合、建物の構造や隣家との関係で、十分な設置場所を確保できず、カバーや防音ハウスに折り曲げ部を設けるなど単純な形状には構成できないことも起こりうる。
防音カバーの設置場所に制約がある機械設備や、給湯設備のヒートポンプユニットなどのように防音カバーで完全に覆うことのできないような機械設備に対しても、防音カバーを含めてコンパクトで効果的に低周波音を低減する消音器が望まれている。
前記音響管は前記音源からの音の周波数の経時変化または前記防音カバー内の温度変化に伴う前記音源からの音の波長の変化に合わせて前記管長を前記音源からの音の1/4波長に対応した管長となるよう調整するための摺動部を備えることが好ましい。
また本発明に係る汎用型消音器によれば、音響管は折返し部を備えた折返し形状を有するため防音カバーの形状に自由度を持たせることができ、設置スペースに合わせたコンパクトな防音カバーを提供することができる。
さらに、本発明に係る汎用型消音器によれば、騒音源の音の周波数の変化や気温変化による音の波長変化に合わせて音響管の管長を調節する手段を有するため環境変化に伴って変化する低周波音の音圧ピークも効果的に低減することができる。
図1は、本発明の実施形態による汎用型消音器の構造を概略的に示す図であり、図2は本発明の他の実施形態による汎用型消音器の構造を概略的に示す図である。
図1を参照すると汎用型消音器1は少なくとも一端を開口した開口端102を備えた防音カバー100と防音カバー100の内部に少なくとも一端を配置するように設けられた低周波音の1/4波長に対応した管長となる音響管200とを含む。
なお、汎用型消音器1を構成する防音カバー100や音響管200は、直管形状のみならず、大小さまざまな曲率を持つ曲管形状とすることができ、各々の断面形状については、一定断面の管状であれば、任意の断面形状としてよく、円筒管であっても、矩形管であってもよい。
着目する低周波音は空気中を伝搬する粗密波であり、管路の中を伝搬する場合、管路に沿って進行するので、主管路は必ずしも直線状である必要はない。そこで防音カバー110は折り曲げ部を備える。防音カバーの形状はこれに限らず、曲線状に屈曲したり折返した構造であってもよい。折り曲げ部や屈曲部や折返し部を有する構造とすることにより、建物の間の限られた空間でも容易に汎用型消音器を設置することができる。
ここで汎用型消音器1、2の防音カバー(100、110)は、給湯設備のヒートポンプユニットなど外気の取り込みを必要とする機器に対応するように少なくとも一端が開口した開口端を備えるが、音源が換気を必要としない機器の場合、防音カバー(100、110)は両端とも閉塞した密閉構造であってもよい。
このため防音カバー100は、騒音となる低周波音を発生する音源50を囲み、この低周波音を一方向に伝搬する主管路を構成するように設置される。
D<0.59λ・・・(1)
の関係を満たす時、管路の中を伝搬する音は平面波とみなすことができ、この場合管路内の音圧分布は管路の径方向には一定で、長さ方向にのみ変化する。なお、ここでいう直径は管路の外径ではなく内径である。
この関係に基づき、防音カバー(100、110)の直径(D)は、音源50から発せられる低周波音の波長(λ)に対し、(1)式を満たすように設定する。これにより音響管200は長さ方向に沿った位置調整のみで、有効な消音効果が得られる位置に設置することができる。
ここで、防音カバー(100、110)の一端から他端に至る距離(L)は、防音カバー100のように屈曲の無い直線状の形状の場合は、防音カバー100の長さに相当するが、折れ曲がりがある形状の場合は、防音カバーの形状にならい、防音カバーの横断面の中心点を結ぶ線に沿った長さである。
音源から発せられる低周波音の波長(λ)に対し共鳴が生ずる長さ(l)は、
防音カバーの一端が開口し他端が閉塞した構造の場合、
l=(λ/4)・(2n+1),(n=0,1,2,3・・・)・・・(2)
の式で表され、
防音カバーの両端が開口した構造の場合、
l=(λ/2)・n,(n=1,2,3・・・)・・・(3)
となる。
厳密には開口端の影響があり、管路の実効長さが実寸法より長くなるため、防音カバーの管路長の実寸法を短くしておく必要がある。具体的には、防音カバー100の一端から他端に至る距離(L)は、(2)式または(3)式で算出される長さに対して、開口端1か所につき直径(D)の約0.3倍の長さだけ短縮補正を加味した上で長さ設定を行う。
具体的には、音源の卓越周波数が防音カバーの共鳴周波数と一致する場合、一端が開口し他端が閉塞した防音カバーの構造では、閉塞した端部が振動の腹に相当する部分となって音圧レベルが最大となり、この閉塞した端部の他にも、防音カバー内で、閉塞した端部から低周波音の波長(λ)の(n/2)倍(n=1,2,3・・・)に相当する長さだけ離れた位置でも同様に音圧レベルが最大となる。即ち、閉塞した端部を含め、防音カバーの閉塞した端部から低周波音の波長(λ)の(n/2)倍(n=0,1,2,3・・・)の位置が音圧レベルが最大の位置となる。従って、この音圧レベルが最大となる位置に音響管の開口部を一致させて設置する。
防音カバーで生じる共鳴により、音圧レベルは防音カバー内で増幅されるものの、音響管の消音効果も大きくなるので、結果的に音圧レベルは、防音カバーも音響管も設置しない未対策の場合の音圧レベルよりも確実に低減される。
このように、音響管の開口部を適切な位置に設置することにより、音源の卓越周波数が防音カバーの共鳴周波数と一致する場合は、一致しない場合に比べて音響管の消音効果は格段に大きくなる。
防音カバーは、設置場所によっては、卓越周波数である低周波音の波長(λ)に対して共鳴が生ずる長さに設定できない場合もある。このような場合、最も効果的に音圧レベルを低減できる音響管の位置は、音圧レベルが最大となる位置とは必ずしも一致せず、前述の段落[0024]および[0025]のように単純には求められない。
防音カバーの閉塞端から音響管の開口部までの距離をl1で表わすものとすると、前記音伝搬理論により、l1が
l1=(2n−1)λ/4(n=1,2,3・・・)・・・(4)
のとき、音圧レベルは極大値をとる。即ち、音圧レベルの低減効果が、他の位置に比べて小さくなる。
また、防音カバーの開口端から音響管の開口部までの距離をl2で表わすものとすると、前記音伝搬理論により、l2が
l2=(n−1)λ/2(n=1,2,3・・・)・・・(5)
のとき、音圧レベルは極大値をとり、音圧レベルの低減効果が、他の位置に比べて小さくなる。
従って、音響管の開口部の設置位置は、(4)式で算出される防音カバーの閉塞端からの距離l1および(5)式で算出される防音カバーの開口端からの距離l2とならないよう、防音カバー内で合成される音圧レベルの低減効果の小さい位置を避けて設定することが望ましい。
図3(a)は、一端を閉塞させかつ他端を開口させた長さ2m、直径200mmの円筒管を防音カバーとみなし、該円筒管の閉塞した一端に音源を設置し、音源からの距離に対する円筒管内の音圧レベル分布を音響管のない状態で計測した結果を示す。
図3(b)は、防音カバーとみなした円筒管内に、直径40mmの音響管2本を設置し、音響管2本の開口部の位置を円筒管の閉塞端から開口端に向かって水平移動させて、円筒管の他端である開口端から1m離れた円筒管外部の位置で音圧レベルを計測し、音響管の開口部が円筒管の閉塞端から水平移動した距離に対する音圧レベルの計測結果を示す。なお、音圧レベルの計測位置は、円筒管の開口端から1m離れた円筒管外部に設けたが、円筒管外部では、音源から離れるに従って音圧レベルが減衰するのみなので、円筒管外部のどの位置で音圧レベルを計測しても、円筒管の位置に対する音圧レベルの変化は、図3(b)と同様の傾向を示す。
模型実験で使用した音源の周波数は145Hzであり、この場合、波長(λ)は約2.4m、λ/4は約0.6mとなる。一方、図3(a)に示す円筒管内の音圧レベル分布の極小値は、円筒管の閉塞端から約0.9mの距離に生じており、一端が閉塞した円筒管が共鳴する場合の距離(λ/4)となっていない。
また、図3(a)を参照すると、開口端である2mの位置から約λ/2に相当する1.2mの位置付近で音圧レベルが極小値となっており、開口端側にみられる特徴を表している。なお、図3(a)のグラフの極小値を示す位置は、開口端から1.2mの位置よりわずかに開口端側にずれているが、これは実際の音響管では開口端での音圧の挙動により、実際の音響管の管長より長く見える影響によるものである。
次に、図3(b)について考察する。音響管がある場合の音圧レベルの計測結果を参照すると、段落[0027]で述べたように、閉塞端からの距離l1がλ/4、3λ/4の位置で音圧レベルが高くなっており、音圧レベルの低減効果(音響管がない場合の計測結果との差)が小さくなっている。また、開口端からの距離l2がλ/2の位置でもやはり音圧レベルの低減効果が小さいことがわかる。この位置は図3(a)の音圧レベルが極小になる位置に相当する。逆に、隣接する音圧レベルの低減効果が小さい位置同士の中間地点(音響管開口部が閉塞端から1.4mの距離にあるとき)で、音圧レベルの低減効果が大きいことがわかる。
l3=l−(n−1)λ/2(n=1,2,3・・・)・・・(6)
で表すことができる。
防音カバーの共鳴周波数と一致しない場合、一端が閉塞されている構造では、音響管の開口部の位置は、隣接する(4)式で示されるl1の位置と、(6)式で示されるl3の位置との中間の位置に設定すると、音圧低減効果が最も大きくなる。なお、両端が開口されている構造では、開口端からの距離l2に関する(5)式および(6)式に置き換えられる距離l3から隣接するl2とl3との位置同士の中間点に設定するのが、音圧低減効果が最も大きく、効果的である。
図4を参照すると、直管形状の音響管200は一端に閉鎖部201、他端に開口部202を備える中空の管である。直管形状の音響管200の管長は低減する周波数の音の波長(λ)の1/4に合わせてある。
これ以外の周波数の音に対しては、音響管による反射波と基の進行波の波長のずれ量がその音の1/2波長とは異なるため、十分な音の低減効果が得られない。そのため様々な周波数の音の合成音に対しては、それぞれの周波数成分の音の1/4波長にあわせて管長を調整する必要があり、長さの異なる複数の音響管が必要となる。
図4の音響管200は、説明を簡単にするために管長を1/4波長として示したが、厳密には開口端補正が必要であり、音響管200は音響管200の直径(D1)の0.3倍の距離だけ短く製作する。
音の透過に対しては剛性が高く重い材料ほど音が透過しにくくなることから音響管に使用する材料としては有効である。このように音響管に使用する材料は、中の空気に対して剛壁として作用するだけの強度を持つものであることが望ましい。ヒートポンプ式熱交換器(エコキュート)など住宅関連機器の場合、ポリ塩化ビニルなどの樹脂材料により作成した音響管でも十分な消音効果が得られるが、音圧レベルが高くなるとより剛性の高い材料が必要となる。一般用途の場合、音源の音圧レベルに応じて音響管に使用する材料を選定することが望ましい。
図5を参照すると、音響管210は一端に閉鎖部201、他端に開口部202を備える中空の管であり、さらに閉鎖部201と開口部202との間に、音響管210を折返すように曲げる屈曲部203を備える。音響管210の中心線に沿った長さは、低減する周波数の音の波長(λ)の1/4に合わせてある。このため音響管210の外形寸法としての長さは、屈曲部の長さの影響もあり1/4波長の1/2である1/8波長に相当する長さ以下とすることができる。
図5では音響管210は閉鎖部201と開口部202の中間の位置に屈曲部203を備えるU字形状であるように示したが、屈曲部の位置は中間の位置から開口部202に近い側でもよく、逆に閉鎖部201に近い側でもよい。また折返しの角度もU字となるよう180°とする必要もない。
図6を参照すると、音響管220は一端に閉鎖部201、他端に開口部202を備える中空の管であり、さらに閉鎖部201と開口部202との間に折返し部204を備える。
折返し部204が矩形状としていることにより、開口部202側の管と閉鎖部201側の管を間隙を設けず並置できるため、音響管210より密に配置することができる。音響管220の中心線に沿った長さは、低減する周波数の音の波長(λ)の1/4に合わせてある。音響管220も、防音カバー110の形状に合わせて折り返すような構造であってもよい。
音響管210のように曲線状の折返し形状にしても、音響管220のように矩形状の折返し形状にしても、管長を低減する周波数の音の波長(λ)の1/4に合わせてあれば消音効果は同様である。
図7を参照すると、直管形状の音響管230は一端に閉鎖部201、他端に開口部202を備える中空の管である。直管形状の音響管230の管長は低減する周波数の音の波長(λ)の1/4に合わせてある。音響管230が図3の音響管200と相違するのは摺動部205を備えている点である。
このように手動で音響管230の管長を調節することでもよいが、1日の中で温度変化が大きい場合にはこまめに音響管230の管長を調節する必要があり、手間がかかる。
このように音源50から発せられる音を観測し、それに基づき音響管の管長を自動調整する機構を設けることにより、低減すべき周波数の音を効率的に低減することができるほか、経時変化などで音の周波数が変動した場合にも音響管240の管長を常に最適な消音効果が得られる長さに制御することができる。
50 音源
100、110 防音カバー
102 開口端(防音カバー)
200、210、220、230、240 音響管
201 閉鎖部(音響管)
202 開口部(音響管)
203 屈曲部
204 折返し部
205 摺動部
206 目盛り
300 アクチュエータ
310 マイク
320 制御部
330 温度センサ
Claims (4)
- 音源を覆う防音カバーと、
前記音源から発せられる音を低減させる音響管とを有し、
前記音源が外気の取り込みを必要とする機器の場合、前記防音カバーは少なくとも一端が開口した開口端を備え、
前記音響管は一端が閉塞された閉鎖部と、他端が開口した開口部とからなっている中空の管からなり、前記音源から発せられる複数の異なる周波数の音の1/4波長に対応した管長を有した複数が設けられ、
それぞれの前記音響管は前記防音カバー内で移動可能であり、前記音響管が共鳴する周波数の音の前記防音カバー内での音圧低減効果が最大となる位置に前記開口部を設けるように配置され、
前記防音カバーの直径(D)は、前記音響管が共鳴する周波数の音の波長(λ)に対し
D<0.59λ
の関係にあることを特徴とする汎用型消音器。
- 前記音響管は、直管形状または折返し部を備えた折返し形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の汎用型消音器。
- 前記音響管は前記音源からの音の周波数の経時変化または前記防音カバー内の温度変化に伴う前記音源からの音の波長の変化に合わせて前記管長を前記音源からの音の1/4波長に対応した管長となるよう調整するための摺動部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の汎用型消音器。
- 前記音響管は音圧レベルを観測するマイクと前記摺動部を駆動するアクチュエータと前記マイクから観測される音に基づき前記アクチュエータの動作を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記マイクで観測される前記音源から発せられる音の中で音圧レベルの高い周波数の音に合わせ前記音響管の管長を前記音圧レベルの高い周波数の音の波長の1/4波長に対応した管長となるよう前記アクチュエータを制御する機能を有することを特徴とする請求項3に記載の汎用型消音器。
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