目次:
A.第1実施形態
A−1.印刷システムの全体構成 A−2.カートリッジの詳細構成 A−3.ホルダーの詳細構成 A−4.効果 B.第2実施形態 C.第3実施形態 D.第4実施形態 E.他の実施形態
A.第1実施形態:
A−1.印刷システムの全体構成:
図1は、印刷システム10の構成を示す斜視図である。印刷システム10は、プリンター20と、カートリッジ50とを備える。印刷システム10では、プリンター20に設けられたホルダー30にカートリッジ50が装着された状態で、カートリッジ50は、プリンター20にインク(印刷材)を供給し、プリンター20は、カートリッジ50から供給されるインクを用いて印刷を実行する。
プリンター20のホルダー30は、カートリッジ50を保持する保持装置である。ホルダー30には、カートリッジ50の挿入を受け入れる領域であるスロットSLが形成されている。本実施形態では、1つのスロットSLは、1つのカートリッジ50の挿入を受け入れ可能に構成されている。本実施形態では、ホルダー30には、1つのスロットSLに対して、1つの係合部312が設けられている。ホルダー30の係合部312は、スロットSLに挿入されたカートリッジ50に対して係合可能に構成されており、カートリッジ50がスロットSLから不用意に外れてしまうことを防止する。
本実施形態では、ホルダー30には、4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のインクに対応する4種類のカートリッジ50が1つずつ、すなわち4つのカートリッジ50が装着される。ホルダー30に装着可能なカートリッジ50の個数は、4つに限るものではなく、任意の個数に変更可能であり、4つより少なくてもよいし、4つより多くてもよい。カートリッジ50のインクは、4色に限るものではなく、4色未満であっても、5色以上であってもよく、他の色(例えば、ライトマゼンタ、ライトシアン等)のインクや、特殊光沢色(金属光沢、パールホワイト等)のインクであってもよい。他の実施形態では、ホルダー30は、同種類のインクに対応する2つ以上のカートリッジ50を装着可能であってもよい。ホルダー30の詳細構成については後述する。
印刷システム10のプリンター20は、インクを用いて印刷する印刷装置であり、本実施形態では、インクジェットプリンターである。プリンター20は、ホルダー30の他、制御部220と、キャリッジ250と、ヘッド260とを備える。プリンター20は、紙やラベルなどの印刷媒体90に対してヘッド260からインクを吐出させることによって、文字、図形および画像などの情報を印刷媒体90に印刷する。
プリンター20において、ホルダー30は、キャリッジ250とは異なる部位に設けられており、カートリッジ50が装着されたホルダー30から、フレキシブルチューブ390を介して、キャリッジ250に設けられたヘッド260に対して、インクが供給される。このように、ホルダー30がキャリッジ250とは異なる部位に設けられたプリンター20の機構は、オフキャリッジタイプとも呼ばれる。
プリンター20の制御部220は、プリンター20の各部を制御する。本実施形態では、制御部220は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて形成された制御回路を有する。プリンター20のキャリッジ250は、ヘッド260を印刷媒体90に対して相対的に移動可能に構成されている。プリンター20のヘッド260は、ホルダー30に装着されたカートリッジ50からインクの供給を受け、そのインクを印刷媒体90に対して吐出する。本実施形態では、制御部220とキャリッジ250との間はフレキシブルケーブル(図示しない)を介して電気的に接続されており、ヘッド260は、制御部220からの制御信号に基づいてインクの吐出を実行する。
本実施形態では、キャリッジ250と印刷媒体90とを相対的に移動させて印刷媒体90に対する印刷を実現するために、プリンター20は、キャリッジ250を主走査方向Dmsに沿って往復移動可能に構成されると共に、印刷媒体90を副走査方向Dssに沿って搬送可能に構成されている。本実施形態では、主走査方向Dmsおよび副走査方向Dssは、相互に直交すると共に、重力方向に対してそれぞれ直交する。プリンター20は、キャリッジ250の移動および印刷媒体90の搬送を、制御部220による制御に基づいて実現する。
図1には、XYZ軸を図示した。図1のXYZ軸は、他の図のXYZ軸に対応する。本実施形態では、印刷システム10の使用状態において、キャリッジ250を往復移動させる主走査方向Dmsに沿った軸をX軸とし、印刷媒体90を搬送する副走査方向Dssに沿った軸をY軸とし、重力方向に沿った軸をZ軸とする。これらX軸、Y軸およびZ軸は、相互に直交する。印刷システム10の使用状態とは、水平な面に設置された印刷システム10の状態であり、本実施形態では、X軸およびY軸に平行なXY面は、水平面になる。
本実施形態では、ホルダー30に装着された複数のカートリッジ50の配列方向は、X軸に沿った方向である。他の実施形態では、複数のカートリッジ50の配列方向は、Y軸に沿った方向であってもよいし、Z軸に沿った方向であってもよいし、X軸、Y軸およびZ軸の少なくとも一つの軸に対して傾斜した方向であってもよい。
本実施形態では、印刷システム10の右側面から左側面に向かって+X軸方向とし、+X軸方向の反対方向を−X軸方向とする。本実施形態では、副走査方向に向かって+Y軸方向とし、+Y軸方向の反対方向を−Y軸方向とする。本実施形態では、重力とは反対側に向かう方向を+Z軸方向とし、重力が向かう重力方向を−Z軸方向とする。本実施形態では、+Y軸方向側が印刷システム10の正面となる。
印刷システム10のカートリッジ50は、プリンター20にインクを供給するインク供給装置であり、本実施形態では、インクを補充可能(リフィラブル(refillable))なインク供給装置である。図1に示すように、本実施形態では、カートリッジ50は、略L字状の外形をなし、略L字状の外形における長辺が−Y軸方向に向かい、略L字状の外形における短辺が−Z軸方向に向かう状態で、ホルダー30に装着される。
カートリッジ50は、ホルダー30に対して着脱可能に構成されている。図1には、4つのカートリッジ50のうち−X軸方向側のカートリッジ50がホルダー30から外れた状態を図示した。図2は、ホルダー30にカートリッジ50が装着された状態を示す斜視図である。図2には、4つのカートリッジ50の全てがホルダー30に装着された状態を図示した。
本実施形態では、印刷システム10のユーザーは、ホルダー30のスロットSLに対してカートリッジ50を−Y軸方向に移動させることによって、ホルダー30に対してカートリッジ50を装着することが可能である。本実施形態では、印刷システム10のユーザーは、係合部312によるカートリッジ50との係合を解除した状態(例えば、図2の−X軸方向側の係合部312の状態)で、カートリッジ50を+Y軸方向に移動させることによって、ホルダー30からカートリッジ50を取り外すことが可能である。
カートリッジ50は、筐体510と、スライダー(摺動部材)560と、回路部材580とを備える。カートリッジ50の筐体510は、図1に示すように、インクを収容するインク収容部610が内部に設けられた箱体である。
図3は、ホルダー30に装着されたカートリッジ50にインクを補充する様子を示す斜視図である。図4は、ホルダー30に装着されたカートリッジ50においてスライダー560を取り外した状態を示す斜視図である。図3および図4に示すように、筐体510には、インク収容部610の他、インク注入口612と、蓋体613と、大気開放口621と、レール516とが設けられている。インク注入口612は、インク収容部610に連通する開口であり、インク収容部610に対するインクの注入を受け付ける。蓋体613は、インク注入口612に対して着脱可能に構成され、インク注入口612に装着された状態でインク注入口612を密閉する。大気開放口621は、インク収容部610へと連通する開口であり、インク収容部610を大気に開放する。レール516は、スライダー560の摺動を案内する。
カートリッジ50のスライダー560は、図4に示すように、回路部材580を装着した状態で、ホルダー30に装着された筐体510に対して、摺動(スライド移動)による着脱が可能に構成されている。本実施形態では、スライダー560には、蓋部562と、凹部564とが設けられている。スライダー560の蓋部562は、筐体510にスライダー560が装着された状態でインク注入口612を覆うように構成されている。本実施形態では、蓋部562は、インク注入口612の+Z軸方向側に対応する位置に軸着され、インク注入口612の+Z軸方向側の領域を開閉可能に構成されている。スライダー560の凹部564は、ホルダー30の係合部312に係合可能に構成されている。
カートリッジ50の回路部材580は、インクに関する情報を記憶可能に構成された回路素子が搭載されており、スライダー560に対して着脱可能に構成されている。回路部材580の詳細構成については後述する。
カートリッジ50のインク収容部610にインクを補充する際には、印刷システム10のユーザーは、図3に示すように、スライダー560の蓋部562を開け、次ぎに、筐体510のインク注入口612から蓋体613を取り外す。その後、ユーザーは、補充用のインクを収容したインク容器70を用意し、インク収容部610にインクが十分に満たされるまで、インク容器70の吐出口790からカートリッジ50のインク注入口612にインクを注入する。その後、ユーザーは、インク注入口612を蓋体613で密閉し、蓋部562を閉じる。これによって、インクの補充が完了する。
本実施形態では、インク容器70には、インク容器70によって補充されるインクに関する情報を取り扱う新たな回路部材580が付属されており、インク容器70からカートリッジ50に対するインクの補充に合わせて、印刷システム10のユーザーによって、回路部材580の交換が行われる。回路部材580の交換は、インク補充の前であってもよいし、インク補充の後であってもよい。
回路部材580を交換する際には、印刷システム10のユーザーは、図4に示すように、係合部312による係合を解除した状態で、スライダー560を+Y軸方向に移動させて、ホルダー30に対する筐体510の装着を維持しつつ、ホルダー30からスライダー560を取り外す。その後、ユーザーは、スライダー560に装着されていた古い回路部材580を、インク容器70に付属されていた新たな回路部材580と交換する。その後、ユーザーは、新たな回路部材580が装着されたスライダー560を筐体510に対して−Y軸方向に移動させる。これによって、スライダー560が元の位置に装着されると、回路部材580の交換が完了する。本実施形態では、スライダー560を取り外す際に、ユーザーは、凹部564に指を引っ掛けてスライダー560を+Y軸方向に移動させることによって、スライダー560の取り外しを容易に実施することが可能である。
A−2.カートリッジの詳細構成:
図5は、カートリッジ50の構成を示す右側面図である。図6は、カートリッジ50の構成を示す背面図である。図7は、カートリッジ50の構成を示す断面図である。図7には、図6の矢視F7−F7で切断したカートリッジ50における筐体510を実線で図示し、スライダー560および回路部材580の外形を一点鎖線で図示した。
カートリッジ50の説明では、ホルダー30に装着された装着状態にあるカートリッジ50に対するX軸、Y軸およびZ軸の各軸をカートリッジ50上の軸とする。本実施形態では、ホルダー30にカートリッジ50が装着された装着状態で、+Y軸方向側がカートリッジ50の正面となる。本実施形態では、ホルダー30にカートリッジ50を装着する際の装着方向は、−Y軸方向である。
カートリッジ50は、前述したように、筐体510と、スライダー560と、回路部材580とを備える。本実施形態では、カートリッジ50において、スライダー560は、筐体510の+Z軸方向側に取り付けられ、回路部材580は、スライダー560の−Y軸方向側に取り付けられている。
本実施形態では、カートリッジ50には、凸条部513および凸条部566が設けられている。凸条部513は、筐体510に設けられ、Y軸方向に連続して−Z軸方向に突出した部位であり、ホルダー30に係合する。凸条部566は、スライダー560に設けられ、Y軸方向に連続して+Z軸方向に突出した部位であり、ホルダー30に係合する。
カートリッジ50の筐体510は、図5に示すように、略L字状の外形をなし、略L字状の外形における長辺が−Y軸方向に向かい、略L字状の外形における短辺が−Z軸方向に向かう。図7に示すように、筐体510の内部に設けられたインク収容部610の形状は、筐体510の外形と同様に、略L字状をなす。筐体510およびインク収容部610は、略L字状に限るものではなく、直方体を基調とした形状であってもよいし、一部が曲面や傾斜面で構成された形状であってもよく、種々の形状で適宜実現させることが可能である。
筐体510は、図5〜図7に示すように、インク収容部610を画定する壁面として、第1の壁面601と、第2の壁面602と、第3の壁面603と、第4の壁面604と、第5の壁面605と、第6の壁面606と、第7の壁面607と、第8の壁面608を備える。第1〜第8の壁面601〜608の内側には、図7に示すように、インク収容部610が形成されている。
第1〜第8の壁面601〜608は、概形として平面を形成しており、面の全域が完全に平坦である必要はなく、面の一部に凹凸を有していてもよい。本実施形態では、第1〜第8の壁面601〜608は、複数の部材を組み立てた組立体の構成面である。本実施形態では、第1〜第8の壁面601〜608は、板状の部材で形成されており、その一部は、フィルム状(薄膜状)の部材で形成されていてもよい。第1〜第8の壁面601〜608は、インク不透過性および気密性を有する合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリアセタール(POM))からなる。
筐体510における第1の壁面601は、インク収容部610の+Z軸方向寄りの−Y軸方向側を画定する。第1の壁面601は、Z軸およびX軸に平行な壁面であり、Y軸方向において第2の壁面602に対向する位置関係にある。
筐体510における第2の壁面602は、インク収容部610の+Y軸方向側を画定する。第2の壁面602は、Z軸およびX軸に平行な壁面であり、Y軸方向において第1の壁面601および第8の壁面608に対向する位置関係にある。
筐体510における第3の壁面603は、インク収容部610の−Y軸方向寄りの−Z軸方向側を画定する。第3の壁面603は、X軸およびY軸に平行な壁面であり、Z軸方向において第4の壁面604に対向する位置関係にある。本実施形態では、第3の壁面603の外側(−Z軸方向側)には、凸条部513が設けられている。
筐体510における第4の壁面604は、インク収容部610の+Z軸方向側を画定する。第4の壁面604は、X軸およびY軸に平行な壁面であり、Z軸方向において第3の壁面603および第7の壁面607に対向する位置関係にある。第4の壁面604の外側(+Z軸方向側)は、スライダー560および回路部材580を取り付け可能に構成されており、本実施形態では、図7に示すように、第4の壁面604の外側にはレール516が設けられている。
筐体510における第5の壁面605は、略L字状をなし、インク収容部610の−X軸方向側を画定する。第5の壁面605は、Y軸およびZ軸に平行な壁面であり、X軸方向において第6の壁面606に対向する位置関係にある。
筐体510における第6の壁面606は、略L字状をなし、インク収容部610の+X軸方向側を画定する。第6の壁面606は、Y軸およびZ軸に平行な壁面であり、X軸方向において第5の壁面605に対向する位置関係にある。
筐体510における第7の壁面607は、インク収容部610の+Y軸方向寄りの−Z軸方向側を画定する。第7の壁面607は、X軸およびY軸に平行な壁面であり、第3の壁面603よりも−Z軸方向側で、Z軸方向において第4の壁面604に対向する位置関係にある。
筐体510における第8の壁面608は、インク収容部610の−Z軸方向寄りの−Y軸方向側を画定する。第8の壁面608は、Z軸およびX軸に平行な壁面であり、第1の壁面601よりも+Y軸方向側で、Y軸方向において第2の壁面602に対向する位置関係にある。
図5〜図7に示すように、筐体510は、前述したインク注入口612の他、大気開放構造620と、フロート弁650と、インク流路660と、変位部670と、インク供給口680と、カバー690とを備える。
筐体510のインク注入口612は、前述したように、インク収容部610に補充されるインクの注入を受け付ける開口である。本実施形態では、インク注入口612は、第4の壁面604の−Y軸方向側に設けられている。本実施形態では、インク注入口612は、前述したように、蓋体613によって密閉可能に構成されている。本実施形態では、インク注入口612は、前述したように、筐体510にスライダー560が装着された状態で、スライダー560に設けられた蓋部562によって覆われる。
筐体510の大気開放構造620は、前述した大気開放口621を通じてインク収容部610を大気に開放する構造である。本実施形態では、大気開放構造620は、第4の壁面604におけるインク注入口612よりも−Y軸方向側に設けられている。本実施形態では、大気開放構造620は、筐体510にスライダー560が装着された状態で、スライダー560によって覆われる。
図8は、大気開放構造620の詳細構成を示す説明図である。図8の上段に示す図8(A)には、+Z軸方向側からみた大気開放構造620を図示した。図8の下段に示す図8(B)には、−X軸方向側からみた大気開放構造620の断面構成を模式的に図示した。
本実施形態では、大気開放構造620は、大気開放口621の他、連通孔622と、連通孔623と、連通孔624と、連通孔625と、連通孔626と、流路形成面627と、フィルム部材628と、連通室631と、連通路632と、連通室633と、連通路634と、連通室635とを有する。
大気開放構造620の大気開放口621は、第4の壁面604の外側(+Z軸方向側)に設けられている。本実施形態では、大気開放口621は、第4の壁面604から+Z軸方向に突出した位置に設けられている。本実施形態では、図8(B)に示すように、大気開放口621における+Z軸方向側の端部621eは、インク注入口612における+Z軸方向側の端部612eよりも+Z軸方向側に位置する。
第4の壁面604の内側(−Z軸方向側)には、+Y軸方向側から−Y軸方向側へと順に、連通室631、連通室635、連通室633が設けられている。本実施形態では、連通室631,635,633の各々は、大気開放口621、連通孔622,623,624,625,626、および連通路632,634よりも十分に大きな流路断面形状を有する。
第4の壁面604の外側(+Z軸方向側)には、連通路632および連通路634が設けられている。本実施形態では、連通路632および連通路634は、+X軸方向および−X軸方向へと交互に蛇行しつつY軸方向に向かう流路である。本実施形態では、連通路632および連通路634は、流路形成面627に形成された凹溝と、流路形成面627に対して密閉状態に接合されたフィルム部材628とによって画定される。図8(A)には、フィルム部材628が接合される流路形成面627の部分にハッチングを施した。本実施形態では、フィルム部材628は、合成樹脂(例えば、ナイロンおよびポリプロピレンの複合材料)からなる。
大気開放口621は、連通室631に連通する。連通孔622は、連通室631と連通路632との間を連通する。連通孔623は、連通路632と連通室633との間を連通する。連通孔624は、連通室633と連通路634との間を連通する。連通孔625は、連通路634と連通室635との間を連通する。連通孔626は、連通室635とインク収容部610との間を連通する。
図7および図8(B)には、大気開放口621からインク収容部610への空気の流れを、一点鎖線および矢印で図示した。大気開放口621から取り込まれた空気は、連通室631に流れ込む。連通室631の空気は、連通孔622、連通路632、連通孔623を通じて連通室633に流れ込む。連通室633の空気は、連通孔624、連通路634、連通孔625を通じて連通室635に流れ込む。連通室635の空気は、連通孔626を通じてインク収容部610に流れ込む。これによって、大気開放口621からのインクの漏れ出しを防止しつつ、インク収容部610の内圧を大気圧と同等の圧力に維持することができる。
図7の説明に戻り、筐体510のフロート弁650は、インク収容部610におけるインクの残量が設定量以下である低残量状態においてインク流路660の内部を密閉する密閉構造を形成する。図7には、低残量状態ではなく、インク収容部610にインクが十分に収容されている状態にあるフロート弁650の様子を図示した。図7では、インクの表面であるインク面FLは、フロート弁650よりも+Z軸方向側に位置する。
図9は、低残量状態におけるカートリッジ50の内部構成を示す断面図である。本実施形態では、低残量状態として、インク収容部610におけるインクが実質的に無くなった状態、すなわち、インク収容部610からインク流路660へと流通するインクが無くなった状態を想定し、低残量状態となるインクの残量が設定されている。他の実施形態では、低残量状態として、インク収容部610にインクが多少残った状態を想定し、低残量状態となるインクの残量が設定されていてもよい。
図7および図9に示すように、フロート弁650は、インク収容部610の内部に設けられている。フロート弁650は、支持部651と、浮力発生部652と、弁部654と、弾性部材656と、連結部材658とを備える。
フロート弁650の支持部651は、フロート弁650の各部を支持する。本実施形態では、支持部651は、第8の壁面608に固定されているが、インク収容部610を画定する第1〜第8の壁面601〜608の少なくとも1つの壁面に固定されていればよい。
フロート弁650の浮力発生部652は、インク収容部610の内部に設けられ、インク収容部610におけるインクに対する浮力を発生させる。浮力発生部652は、インクよりも密度が小さい浮力体653を有する。
本実施形態では、浮力体653は、空気を内部に密閉した空気室である。他の実施形態では、浮力体653は、インクよりも密度が小さい他の気体や液体を密閉した構造であってもよいし、インクよりも密度が小さい発泡プラスチックであってもよい。
本実施形態では、浮力発生部652は、複数の浮力体653を有する。本実施形態では、浮力発生部652における浮力体653の個数は、3つであるが、他の実施形態では、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
本実施形態では、浮力発生部652における複数の浮力体653は、図7および図9に示すように、Z軸方向に沿って並設されている。他の実施形態では、浮力発生部652における複数の浮力体653は、Z軸方向に加えて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に沿って並設されていてもよい。他の実施形態では、浮力発生部652における複数の浮力体653は、Z軸方向に代えて、X軸方向およびY軸方向の少なくとも一方に沿って並設されていてもよい。
フロート弁650の弁部654は、浮力発生部652による浮力に応じて連通口662を開閉可能に構成され、図9に示す低残量状態において連通口662を閉塞する。弁部654によって開閉される連通口662は、インク収容部610をインク供給口680へと連通させる開口であり、本実施形態では、第7の壁面607の内側(+Z軸方向側)に設けられている。
本実施形態では、弁部654は、弾性部材656によって連通口662に向けて−Z軸方向に付勢されていると共に、浮力発生部652による浮力に基づく+Z軸方向の力を受けることが可能に浮力発生部652に連結されている。本実施形態では、弾性部材656は、コイルバネである。本実施形態では、弁部654は、梃子を形成する連結部材658を介して浮力発生部652に連結されているが、他の実施形態では、浮力発生部652に対して直接的に連結されていてもよい。
図7に示すように、インク収容部610がインクで十分に満たされている状態では、浮力発生部652による+Z軸方向の浮力が、弾性部材656による−Z軸方向の付勢力よりも大きくなる。これによって、弁部654は、連通口662よりも+Z軸方向に離れ、インク収容部610に対して連通口662を開放する。
図9に示す低残量状態では、浮力発生部652による+Z軸方向の浮力が、弾性部材656による−Z軸方向の付勢力よりも小さくなる。これによって、弁部654は、連通口662に密着し、インク収容部610に対して連通口662を閉塞する。
図7の説明に戻り、筐体510のインク流路660は、インク収容部610とインク供給口680との間を連通し、インク収容部610からのインクをインク供給口680へと流通可能に構成されている。図7には、インク流路660を介したインク収容部610からインク供給口680までのインクの流れを、一点鎖線および矢印で図示した。インク流路660は、前述した連通口662の他、流路664と、流路666と、流路668とを有する。
インク流路660の連通口662は、インク収容部610における−Z軸方向側を画定する壁面に設けられ、本実施形態では、前述したように、第7の壁面607の内側(+Z軸方向側)に設けられている。本実施形態では、連通口662は、インク収容部610よりも十分に小さな流路断面形状を有する。
インク流路660の流路664は、連通口662と流路666との間を連通する。本実施形態では、流路664は、連通口662から第7の壁面607を−Y軸方向に進み、その後、第8の壁面608を+Z軸方向に進んだ後、第3の壁面603を−Y軸方向に進み、第1の壁面601を経て流路666に至る。本実施形態では、流路664は、インク収容部610よりも十分に小さな流路断面形状を有する。
インク流路660の流路666は、流路664と流路668との間を連通し、流路666の内部には、変位部670が構成されている。本実施形態では、流路666は、第1の壁面601の外側(−Y軸方向側)に設けられている。本実施形態では、流路666は、インク収容部610よりも十分に小さく、かつ、流路664および流路668よりも大きな流路断面形状を有する。
インク流路660の流路668は、流路666とインク供給口680との間を連通する。本実施形態では、流路668は、第1の壁面601の外側(−Y軸方向側)に設けられている。本実施形態では、流路668は、インク収容部610よりも十分に小さな流路断面形状を有する。
筐体510の変位部670は、インク流路660における流路666の一部を構成し、プリンター20によって検知可能にインク流路660の内圧に応じて変位する。変位部670は、逆止弁672と、フィルム部材674と、板部材676と、弾性部材677と、梃子部材678とを有する。変位部670の逆止弁672は、流路666から流路664へのインクの逆流を防止する。
変位部670のフィルム部材674は、インク不透過性、気密性および可撓性を有する薄膜であり、インク流路660における流路666の一部を画定する。本実施形態では、フィルム部材674は、Z軸およびX軸に平行なZX平面に沿って流路666の−Y軸方向側を画定する。本実施形態では、フィルム部材674は、流路666の内圧に応じてY軸方向に沿って変位可能に構成されている。本実施形態では、フィルム部材674は、合成樹脂(例えば、ナイロンおよびポリプロピレンの複合材料)からなる。
変位部670の板部材676は、インク流路660における流路666の内部に設けられ、弾性部材677によってフィルム部材674に向けて付勢され、フィルム部材674の内側(+Y軸方向側)に当接する。本実施形態では、板部材676は、弾性部材677によってフィルム部材674に向けて−Y軸方向に付勢されている。本実施形態では、板部材676は、円板状をなす。本実施形態では、弾性部材677は、コイルバネである。
変位部670の梃子部材678は、フィルム部材674の変位量を増幅させてプリンター20に伝達する。本実施形態では、梃子部材678は、フィルム部材674における板部材676が当接する位置に対応して、フィルム部材674の外側(−Y軸方向側)に当接し、フィルム部材674の変位に応じてY軸方向に沿って揺動可能に構成されている。
図10は、ホルダー30に装着されたカートリッジ50の−Y軸方向側の詳細構成を示す説明図である。図10の上段に示す図10(A)には、変位部670が+Y軸方向側に変位した様子を図示した。図10の下段に示す図10(B)には、変位部670が−Y軸方向側に変位した様子を図示した。図10では、スライダー560および回路部材580の図示を省略した。
ホルダー30にカートリッジ50が装着された装着状態では、カートリッジ50のインク供給口680には、ホルダー30におけるインク供給機構330のインク供給管332が挿入される。これによって、インク供給口680は、インク供給管332に連通し、インク供給口680からインク供給管332へのインクの流通が可能となる。
ホルダー30にカートリッジ50が装着された装着状態では、カートリッジ50における変位部670の梃子部材678には、ホルダー30における変位検知機構370の棒状部材372が当接する。本実施形態では、ホルダー30における棒状部材372は、カートリッジ50における梃子部材678に向けて、弾性部材373によって+Y軸方向に付勢されており、梃子部材678の揺動に応じてY軸方向に沿って移動可能に構成されている。
本実施形態では、棒状部材372には凸部374が形成されており、図10(B)に示す状態において棒状部材372の凸部374が存在する位置に、センサー376が固設されている。プリンター20は、センサー376を用いて図10(B)に示す状態を検知可能に構成されている。本実施形態では、センサー376は、棒状部材372の位置を光学的に検知する検知要素を利用するが、他の形態では、機械的、電磁気的、熱的、音響的または化学的に検知する検知要素を利用してもよい。
図10(A)に示すように、ホルダー30側からインクが吸引されていない状況では、変位部670のフィルム部材674は、インク流路660における流路666の容積を増加させるように、変位部670の弾性部材677によって流路666の外側に押し出され、−Y軸方向に向けて突出する。流路666の容積の増加に伴い、インク流路660の流路664から流路666へとインクが流入する。
ホルダー30側からインクが吸引されると、インク流路660からインク供給口680を通じてインク供給管332へとインクが供給され、流路666から流路668へのインクの流出量に対して、流路664から流路666へのインクの流入量が追い付かず、流路666の内圧は、大気圧よりも低い負圧となる。これによって、変位部670のフィルム部材674は、図10(B)に示すように、流路666の内側に引き込まれ、+Y軸方向に向けて陥没する。
図7に示すようにインク収容部610にインクが収容されている場合には、ホルダー30側からのインクの吸引によって流路666に発生した負圧は、インク収容部610のインクが流路664を通じて流路666に流入することによって徐々に解消される。流路666における負圧の解消に伴い、変位部670のフィルム部材674は、図10(A)に示すように、−Y軸方向に向けて突出した状態になる。
一方、インク収容部610が低残量状態になった場合には、図8に示すように、フロート弁650によってインク流路660の連通口662が閉塞されるため、流路666に発生した負圧は、インク収容部610にインクが補充されるまで維持される。これによって、インク収容部610が低残量状態になった場合には、変位部670のフィルム部材674は、図10(B)に示すように、+Y軸方向に向けて陥没した状態に維持される。
本実施形態では、プリンター20は、センサー376を用いて図10(B)に示す状況を検知し、図10(B)に示す状況が所定の時間を経過して継続する場合、インク収容部610が低残量状態であると判断する。本実施形態では、プリンター20は、インク収容部610が低残量状態であると判断すると、インク収容部610に対するインクの補充が必要である旨を報知する。
インク収容部610が低残量状態になった後、図3を用いて説明したようにインク収容部610にインクが補充されると、フロート弁650による連通口662の閉塞が解除され、インク収容部610のインクが流路664を通じて流路666に流入することによって、流路666に発生した負圧は、徐々に解消される。流路666における負圧の解消に伴い、変位部670のフィルム部材674は、図10(A)に示すように、−Y軸方向に向けて突出した状態へと復帰する。
筐体510のインク供給口680は、インク流路660に連通し、インク流路660からのインクをプリンター20に供給する。本実施形態では、インク供給口680は、第1の壁面601における外側(−Y軸方向側)に設けられている。本実施形態では、インク供給口680は、変位部670よりも+Z軸方向側に設けられている。本実施形態では、図10に示すように、インク供給口680は、ホルダー30におけるインク供給機構330のインク供給管332の挿入を受け入れ可能に構成されている。本実施形態では、インク供給口680は、インク供給管332が挿入されていない状態では密閉されるように構成されている。
筐体510のカバー690は、第1の壁面601における外側(−Y軸方向側)に設けられた変位部670およびインク供給口680を覆うことによって保護する。カバー690には、貫通孔692および貫通孔694が設けられている。カバー690の貫通孔692は、インク供給口680に対応する位置に設けられ、インク供給口680に対するホルダー30からのインク供給管332の挿入を受け入れ可能に構成されている。カバー690の貫通孔694は、変位部670の梃子部材678に対応する位置に設けられ、梃子部材678に対するホルダー30からの棒状部材372の挿入を受け入れ可能に構成されている。
図11は、スライダー560に装着された回路部材580を示す斜視図である。図12は、スライダー560に回路部材580を着脱する様子を示す組立斜視図である。図11および図12に示すように、スライダー560の−Y軸方向側には、係止部568が形成されている。係止部568は、回路部材580を係止可能に構成されている。
本実施形態では、スライダー560に回路部材580を取り付ける際には、印刷システム10のユーザーは、スライダー560の係止部568に対して回路部材580を+Y軸方向に摺動させながら、係止部568に対して回路部材580を係止させることによって、スライダー560に回路部材580を装着することが可能である。本実施形態では、スライダー560から回路部材580を取り外す際には、ユーザーは、スライダー560の係止部568に対して回路部材580を−Y軸方向に摺動させて、係止部568による回路部材580の係止を解除することによって、スライダー560から回路部材580を取り外すことが可能である。
カートリッジ50の回路部材580は、接続端子852が形成された回路基板850を有し、スライダー560に対して着脱可能に構成されている。本実施形態では、回路部材580は、略直方体の外形をなし、外表面581と、外表面584と、凹部587と、傾斜面588と、位置決め部589とを有する。
回路部材580の外表面581は、Z軸およびX軸に平行なZX平面に沿った−Y軸方向を向いた面である。回路部材580の外表面584は、X軸およびY軸に平行なXY平面に沿った+Z軸方向を向いた面である。
回路部材580の凹部587は、外表面584におけるX軸方向の中央かつ外表面581に至る−Y軸方向側の部位を、−Z軸方向に陥没させた部位である。回路部材580の傾斜面588は、凹部587に設けられ、−Y軸方向および+Z軸方向を向いて傾斜する面である。傾斜面588には、回路基板850が取り付けられている。
回路部材580の位置決め部589は、ホルダー30に対して回路基板850の接続端子852を位置決めする。本実施形態では、位置決め部589は、Y軸方向に沿った凹条部であり、凹部587におけるY軸およびZ軸に平行なYZ平面に沿った相互に対向する面にそれぞれ設けられている。
図13は、回路部材580に取り付けられた回路基板850を示す説明図である。回路基板850は、接続端子852に加え、回路素子856と、端子面858と、実装面859とを有する。回路基板850の接続端子852は、ホルダー30側に対して接触により電気的に接続可能に構成されている。回路基板850の回路素子856は、インクに関する情報を記憶可能に構成された記憶装置である。
回路基板850の端子面858は、接続端子852が形成された面であり、実装面859に背向する。回路基板850が回路部材580の傾斜面588に取り付けられた状態で、端子面858は、−Y軸方向および+Z軸方向を向く状態となる。
回路基板850の実装面859は、回路素子856が形成された面であり、端子面858に背向する。回路基板850が回路部材580の傾斜面588に取り付けられた状態で、実装面859は、+Y軸方向および−Z軸方向を向く状態となる。
A−3.ホルダーの詳細構成:
図14、図15および図16は、ホルダー30の構成を示す斜視図である。図15および図16には、ホルダー30の一部を省略してホルダー30を図示した。
プリンター20のホルダー30は、カートリッジ50を装着するカートリッジ装着空間308を画定する壁面として、5つの壁部301,303,304,305,306を有する。本実施形態では、5つの壁部301,303,304,305,306は、板状の部材で形成されている。
ホルダー30の壁部301は、壁部303の−Y軸方向側においてZX平面に沿って立設されており、印刷システム10の使用状態でホルダー30の背面を構成する。ホルダー30の壁部303は、ホルダー30の−Z軸方向側においてXY平面に沿って設けられ、印刷システム10の使用状態でホルダー30の底面を構成する。ホルダー30の壁部304は、ホルダー30の+Z軸方向側において壁部303に対向する位置に設けられており、印刷システム10の使用状態でホルダー30の上面を構成する。ホルダー30の壁部305は、壁部303の−X軸方向側においてYZ平面に沿って立設されており、印刷システム10の使用状態でホルダー30の右側面を構成する。ホルダー30の壁部306は、壁部303の+X軸方向側においてYZ平面に沿って立設されており、印刷システム10の使用状態でホルダー30の左側面を構成する。
図14に示すように、ホルダー30のカートリッジ装着空間308には、カートリッジ50を装着可能に構成された複数のスロットSLが形成されている。本実施形態では、複数のスロットSLは、X軸方向に沿って並設されている。図14〜図16に示すように、ホルダー30は、各スロットSLに、凹条部313と、凹条部314と、インク供給機構330と、端子台350と、変位検知機構370と、吸引ポンプ380とを備える。
ホルダー30の凹条部313は、壁部303の内側(+Z軸方向側)に設けられ、Y軸に連続して−Z軸方向に陥没した部位である。凹条部313は、カートリッジ50の凸条部513に係合して、ホルダー30に対するカートリッジ50の着脱を案内する。
ホルダー30の凹条部314は、壁部304の内側(−Z軸方向側)に設けられ、Y軸に連続して+Z軸方向に陥没した部位である。凹条部314は、カートリッジ50の凸条部566に係合して、ホルダー30に対するカートリッジ50の着脱を案内する。
ホルダー30のインク供給機構330は、壁部301の内側(+Y軸方向側)に設けられている。インク供給機構330は、インク供給管332を有し、カートリッジ50のインク供給口680からインクの供給を受け付け、フレキシブルチューブ390を介してキャリッジ250のヘッド260へとインクを供給する。本実施形態では、インク供給機構330のインク供給管332は、カートリッジ50のインク供給口680に挿入されていない状態では密閉されるように構成されている。
ホルダー30の端子台350は、壁部301と壁部304とが隣り合う位置に設けられている。端子台350は、カートリッジ50の接続端子852と電気的に接続可能に構成された接続端子352を有する。本実施形態では、接続端子352は、制御部220へと電気的に接続されている。本実施形態では、端子台350は、カートリッジ50における回路部材580の位置決め部589に対して係合可能に構成された係合部356を有する。
ホルダー30の変位検知機構370は、壁部301の内側(+Y軸方向側)に設けられている。変位検知機構370は、棒状部材372を有し、カートリッジ50における変位部670の梃子部材678の変位を検知可能に構成されている。ホルダー30の吸引ポンプ380は、インク供給機構330のインク供給管332を通じてカートリッジ50からインクを吸引する。
A−4.効果:
以上説明した第1実施形態によれば、インク収容部610が低残量状態になるとインク流路660の内部が密閉されるため、インク注入口612を介してインクを注入可能に構成されたインク収容部610における低残量状態を、インク流路660の内圧に応じた変位部670の変位に基づいてプリンター20側で検知することができる。これによって、カートリッジ50における構成の複雑化を抑制しながら、インクの低残量状態の検出精度を向上させることができる。
また、インク収容部610が低残量状態になると、フロート弁650の弁部654によってインク流路660の連通口662が閉塞され、インク流路660を密閉することができるため、インク収容部610が大気に対して開放されていても、インク流路660の内圧に応じた変位部670の変位に基づく低残量状態の検知を行うことができる。
また、フロート弁650の浮力発生部652は、複数の浮力体653を有するため、複数の浮力体653の一部が損傷した場合であっても、他の浮力体653によって弁部654を作動させることができる。これによって、低残量状態の検出不良を抑制することができる。
また、複数の浮力体653は、Z軸方向に沿って並設されているため、複数の浮力体653を水平方向(Y軸方向)に沿って並設した場合と比較して、複数の浮力体653の一部が損傷した場合における浮力発生部652の姿勢変化を低減し、弁部654の作動不良を抑制することができる。これによって、低残量状態の検出不良を更に抑制することができる。
また、大気開放口621における+Z軸方向側の端部621eは、インク注入口612における+Z軸方向側の端部612eよりも+Z軸方向側に位置するため、インクをインク収容部610に過剰に注入した場合に、大気開放口621よりも先にインク注入口612からインクを溢れさせることができる。これによって、インク収容部610から大気開放口621へとインクが流れ込むことによるインク収容部610と大気開放口621との間の閉塞を防止することができる。
また、インク流路660の連通口662は、インク収容部610の−Z軸方向側を画定する第7の壁面607に設けられているため、ゴミや空気などの異物の混入が比較的に少ないインク収容部610の−Z軸方向側に収容されているインクを、プリンター20に供給することができる。
また、回路部材580を装着したスライダー560を筐体510に装着した状態で、回路部材580は、インク注入口612よりも−Y軸方向側に位置するため、インク注入口612から注入されるインクによる回路基板850の汚損を防止しつつ、インク収容部610が設けられた筐体510をプリンター20のホルダー30に装着した状態で回路部材580の着脱を行うことができる。
また、スライダー560は、筐体510に装着された状態で大気開放口621を覆うため、大気開放口621からインク収容部610への異物の混入や、異物による大気開放口621の閉塞を防止することができる。
また、回路部材580は、ホルダー30側における接続端子352に対して接続端子852を位置決めする位置決め部589を有するため、カートリッジ50側における接続端子852とホルダー30側における接続端子352との間の接触不良を防止することができる。
B.第2実施形態:
図17は、第2実施形態におけるカートリッジ50bの構成を示す右側面図である。第2実施形態は、複数のカートリッジ50の全部または一部に代えて、カートリッジ50bを利用する点を除き、第1実施形態と同様である。第2実施形態には、変形例も含め、第1実施形態と同様の構成を適用可能である。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
第2実施形態のカートリッジ50bは、第1実施形態のスライダー560に代えて副筐体560bを備える点、ならびに、第1実施形態の回路部材580に代えて回路部材580bを備える点を除き、第1実施形態のカートリッジ50と同様である。本実施形態では、カートリッジ50bの回路部材580bは、第1実施形態の回路部材580と同様に回路基板850を有する。
カートリッジ50bの副筐体560bは、筐体510と一体的に構成されている。本実施形態では、副筐体560bは、第1実施形態のスライダー560と同様に、筐体510に対して摺動による着脱が可能に構成されているが、他の実施形態では、筐体510に対して固定されていてもよい。カートリッジ50bの副筐体560bは、端子台570bと、筐体側端子572bと、中継配線576bと、中継端子578bとを有する。
副筐体560bの端子台570bは、回路部材580bを着脱可能に構成されている。端子台570bは、ホルダー30にカートリッジ50bを装着した状態でホルダー30の外側になる位置に設けられ、本実施形態では、蓋部562と凹部564との間に設けられている。
副筐体560bの筐体側端子572bは、端子台570bに設けられ、端子台570bに装着された回路部材580bにおける回路基板850の接続端子852に対して接触により電気的に接続する。本実施形態では、筐体側端子572bは、インク注入口612よりも+Z軸方向側に位置する。これによって、インク注入口612から注入されるインクによる筐体側端子572bの汚損を防止することができる。
副筐体560bの中継配線576bは、副筐体560bの内部に設けられ、端子台570bと中継端子578bとの間を電気的に接続する。本実施形態では、中継配線576bは、インク注入口612よりも+Z軸方向側に位置する。これによって、インク注入口612から注入されるインクによる中継配線576bの汚損を防止することができる。
副筐体560bの中継端子578bは、副筐体560bの−Y軸方向側に設けられ、プリンター20におけるホルダー30の接続端子352に対して接触により電気的に接続可能に構成されている。本実施形態では、中継端子578bは、インク注入口612よりも+Z軸方向側に位置する。これによって、インク注入口612から注入されるインクによる中継端子578bの汚損を防止することができる。
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、カートリッジ50における構成の複雑化を抑制しながら、インクの低残量状態の検出精度を向上させることができる。また、これ以外にも、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、変形例を適用した場合は第1実施形態に変形例を適用した場合と同様の効果を得ることが可能である。
また、筐体側端子572bは、インク注入口612よりも+Z軸方向側に位置するため、インク注入口612から注入されるインクによる回路基板850の汚損を防止しつつ、カートリッジ50bをプリンター20のホルダー30に装着した状態で回路部材580bの着脱を行うことができる。また、第1実施形態のように回路部材580を摺動させることなく、回路部材580bの着脱を行うことができる。
第2実施形態の変形例として、筐体510における第2の壁面602に、回路部材を着脱する端子台を設けても良い。この変形例によれば、カートリッジ50bをプリンター20のホルダー30に装着した状態で回路部材の着脱を行うことができる。また、第1実施形態のように回路部材580を摺動させることなく、回路部材の着脱を行うことができる。
C.第3実施形態:
図18は、第3実施形態における印刷システム10cの構成を示す斜視図である。第3実施形態の印刷システム10cは、プリンター20と、インク連続供給システム(CISS)40とを備える。
第3実施形態では、カートリッジ50に代えてインク連続供給システム40を利用する点を除き、第1実施形態と同様である。第3実施形態には、変形例も含め、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成を適用可能である。第3実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
第3実施形態のインク連続供給システム40は、プリンター20に対してインクを連続的に供給するシステムである。インク連続供給システム40は、カートリッジ50cと、インク容器80と、フレキシブルチューブ440とを備える。
インク容器80は、密閉状態で内部にインクを収容する入れ物である。本実施形態では、インク容器80は、可撓性を有する薄板状の可撓性部材を自立可能な袋状に成形してなるスタンディングパウチである。インク容器80は、インク容器80からインクを吐出する吐出口890を有する。インク容器80の吐出口890は、フレキシブルチューブ440の連結部430に対して着脱可能に構成されている。インク容器80の吐出口890にフレキシブルチューブ440の連結部430が連結された状態で、インク容器80からフレキシブルチューブ440を通じてカートリッジ50cにインクが供給される。
本実施形態では、インク容器80の吐出口890は、第1実施形態におけるカートリッジ50のインク供給口680と同様に、フレキシブルチューブ440の連結部430に連結されていない状態では密閉されるように構成されている。本実施形態では、フレキシブルチューブ440の連結部430は、第1実施形態におけるホルダー30のインク供給機構330と同様に、インク容器80の吐出口890に連結されていない状態では密閉されるように構成されている。
インク容器80を交換する際には、印刷システム10cのユーザーは、使用済みのインク容器80をフレキシブルチューブ440から取り外し、使用済みのインク容器80に代えて、新たなインク容器80をフレキシブルチューブ440に連結する。本実施形態では、インク容器80には、第1実施形態のインク容器70と同様に、インク容器80から供給されるインクに関する情報を取り扱う新たな回路部材580が付属されており、インク容器80の交換に合わせて、印刷システム10cのユーザーによって、回路部材580の交換が行われる。回路部材580の交換は、インク容器80の交換前であってもよいし、インク容器80の交換後であってもよい。
図19は、第3実施形態におけるカートリッジ50cの構成を示す右側面図である。図20は、第3実施形態におけるカートリッジ50cの構成を示す背面図である。カートリッジ50cは、筐体510cと、スライダー560cと、回路部材580とを備える。本実施形態では、カートリッジ50cにおいて、スライダー560cは、筐体510cの+Z軸方向側に取り付けられ、回路部材580は、スライダー560cの−Y軸方向側に取り付けられている。第3実施形態のスライダー560cは、Y軸方向の長さが短い点、ならびに、蓋部562を有しない点を除き、第1実施形態のスライダー560と同様である。
図21は、第3実施形態におけるカートリッジ50cの構成を示す断面図である。図21には、図20の矢視F21−F21で切断したカートリッジ50cにおける筐体510cを実線で図示し、スライダー560cおよび回路部材580の外形を一点鎖線で図示した。
カートリッジ50cの筐体510cは、略直方体を基調とした形状をなす。筐体510cの内部に設けられたインク収容部610cの形状は、筐体510cの外形と同様に、直方体を基調とした形状をなす。筐体510cおよびインク収容部610cは、直方体を基調とした形状に限るものではなく、一部が曲面や傾斜面で構成された形状であってもよく、種々の形状で適宜実現させることが可能である。
筐体510cは、図19〜図21に示すように、インク収容部610cを画定する壁面として、第1の壁面601cと、第2の壁面602cと、第3の壁面603cと、第4の壁面604cと、第5の壁面605cと、第6の壁面606cとを備える。第1〜第6の壁面601c〜606cの内側には、図21に示すように、インク収容部610cが形成されている。
第3実施形態における第1の壁面601cは、第1実施形態における第1の壁面601と同様である。第1の壁面601cにおける−Y軸方向側には、第1実施形態と同様に、変位部670と、インク供給口680と、カバー690とが設けられている。
第3実施形態における第2の壁面602cは、Z軸方向の長さが異なる点、−Z軸方向側で第3の壁面603cに隣接する点、ならびに、インク注入口612cが設けられている点を除き、第1実施形態における第2の壁面602と同様である。第3実施形態のインク注入口612cは、フレキシブルチューブ440と密閉状態で連結され、フレキシブルチューブ440を通じてインク容器80からのインクの注入を受け付ける。インク注入口612cは、インク収容部610cに連通する。
第3実施形態における第3の壁面603cは、Y軸方向の長さが異なる点、+Y軸方向側で第2の壁面602cに隣接する点、ならびに、インク流路660の連通口662cおよび流路664が設けられている点を除き、第1実施形態における第3の壁面603と同様である。第3の壁面603cの外側(−Z軸方向側)には、第1実施形態と同様に、凸条部513が設けられている。第3の壁面603cの内側(+Z軸方向側)には、インク流路660の連通口662cおよび流路664cが設けられている。
第3実施形態のインク流路660は、インク収容部610cとインク供給口680との間を連通する点、連通口662および流路664に代えて連通口662cおよび流路664cを有する点を除き、第1実施形態と同様である。図21には、インク流路660を介したインク収容部610cからインク供給口680までのインクの流れを、一点鎖線および矢印で図示した。
第3実施形態の連通口662cは、第3の壁面603cに設けられている点、ならびに、フロート弁650が設けられていない点を除き、第1実施形態の連通口662と同様である。第3実施形態の流路664cは、連通口662cと流路666との間を連通する点を除き、第1実施形態の流路664と同様である。第3実施形態の流路664cは、連通口662cから第3の壁面603を−Y軸方向に進み、第1の壁面601を経て流路666に至る。
第3実施形態における第4の壁面604cは、Y軸方向の長さが異なる点、インク注入口612および大気開放構造620が設けられていない点を除き、第1実施形態における第4の壁面604と同様である。
第3実施形態における第5の壁面605cは、長方形を基調とした形状をなす点を除き、第1実施形態における第5の壁面605と同様である。第3実施形態における第6の壁面606cは、長方形を基調とした形状をなす点を除き、第1実施形態における第6の壁面606と同様である。
第3実施形態では、インク容器80、フレキシブルチューブ440、インク注入口612c、インク収容部610cおよびインク流路660のそれぞれの内部が大気に対して密閉されるように構成されている。これらの構成要素は、インク収容部610cにおけるインクの残量が低残量状態であるか否かにかかわらず継続的にインク流路660の内部を密閉する密閉構造を形成する。
第3実施形態では、継続的にインク流路660の内部が大気に対して密閉されているため、インク収容部610cが低残量状態になった場合には、流路666に発生した負圧は、使用済みのインク容器80が新たなインク容器80に交換されることによってインク収容部610cにインクが補充されるまで維持される。これによって、インク収容部610cが低残量状態になった場合には、変位部670のフィルム部材674は、図10(B)に示すように、+Y軸方向に向けて陥没した状態に維持される。
本実施形態では、プリンター20は、センサー376を用いて図10(B)に示す状況を検知し、図10(B)に示す状況が所定の時間を経過して継続する場合、インク収容部610cが低残量状態であると判断する。本実施形態では、プリンター20は、インク収容部610cが低残量状態であると判断すると、インク容器80の交換が必要である旨を報知する。
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、カートリッジ50cにおける構成の複雑化を抑制しながら、インクの低残量状態の検出精度を向上させることができる。また、これ以外にも、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、変形例を適用した場合は第1実施形態に変形例を適用した場合と同様の効果を得ることが可能である。
D.第4実施形態:
図22は、第4実施形態におけるカートリッジ50dの構成を示す断面図である。第4実施形態は、複数のカートリッジ50cの全部または一部に代えて、カートリッジ50dを利用する点を除き、第3実施形態と同様である。第4実施形態には、インク収容部610cに関する事項を除き、変形例も含め、第3実施形態と同様の構成を適用可能である。第4実施形態の説明において、第3実施形態と同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
第4実施形態のカートリッジ50dは、インク収容部610cを介さずにフレキシブルチューブ440とインク流路660とを直接的に連結した点を除き、第3実施形態のカートリッジ50cと同様である。
第4実施形態における第1の壁面601dは、インク注入口612dが設けられている点、ならびに、インク流路660の流路664dが設けられている点を除き、第1実施形態における第1の壁面601と同様である。第4実施形態のインク注入口612dは、フレキシブルチューブ440と密閉状態で連結され、フレキシブルチューブ440を通じてインク容器80からのインクの注入を受け付ける。インク注入口612dは、インク流路660の流路664dに連通する。
第4実施形態のインク流路660は、インク注入口612dとインク供給口680との間を連通する点、連通口662および流路664に代えて流路664dを有する点を除き、第1実施形態と同様である。インク流路660の流路664dは、インク注入口612dと流路666との間を連通する。
第4実施形態における第2の壁面602dは、インク注入口612cに代えて貫通孔611dが設けられている点を除き、第3の実施形態における第2の壁面602cと同様である。第4実施形態の貫通孔611dは、筐体510dの内部に位置するインク注入口612dへと続くフレキシブルチューブ440を保持する。
第4実施形態における第3の壁面603dは、インク流路660が設けられていない点を除き、第3実施形態における第3の壁面603dと同様である。第4実施形態における第4の壁面604dは、第3実施形態における第3の壁面603dと同様である。
第4実施形態では、インク容器80、フレキシブルチューブ440、インク注入口612dおよびインク流路660のそれぞれの内部が大気に対して密閉されるように構成されている。これらの構成要素は、カートリッジ50dのインク収容部として機能するインク容器80におけるインクの残量が低残量状態であるか否かにかかわらず継続的にインク流路660の内部を密閉する密閉構造を形成する。
第4実施形態では、継続的にインク流路660の内部が大気に対して密閉されているため、インク容器80が低残量状態になった場合には、流路666に発生した負圧は、使用済みのインク容器80が新たなインク容器80に交換されるまで維持される。これによって、インク容器80が低残量状態になった場合には、変位部670のフィルム部材674は、図10(B)に示すように、+Y軸方向に向けて陥没した状態に維持される。
本実施形態では、プリンター20は、センサー376を用いて図10(B)に示す状況を検知し、図10(B)に示す状況が所定の時間を経過して継続する場合、インク容器80が低残量状態であると判断する。本実施形態では、プリンター20は、インク容器80が低残量状態であると判断すると、インク容器80の交換が必要である旨を報知する。
以上説明した第4実施形態によれば、第3実施形態と同様に、カートリッジ50dにおける構成の複雑化を抑制しながら、インクの低残量状態の検出精度を向上させることができる。また、これ以外にも、第3実施形態と同様の効果を得ることができ、変形例を適用した場合は第3実施形態に変形例を適用した場合と同様の効果を得ることが可能である。
E.他の実施形態:
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
例えば、記憶装置に代えて、他の電気デバイスをカートリッジに搭載してもよい。また、上述した実施形態における各種の部材は、それぞれ独立した部材として構成する必要はなく、必要に応じて複数の部材を一体の部材として構成してもよい。また、上述した実施形態における一体の部材を、複数の部材の組み合わせによって構成してもよい。
本発明は、インクジェットプリンターおよびそのインクカートリッジに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置およびその液体収容容器にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置およびその液体収容容器に適用可能である。
・ファクシミリ装置等の画像記録装置
・液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置
・有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
・バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
・精密ピペットとしての試料噴射装置
・潤滑油の噴射装置
・樹脂液の噴射装置
・時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
・光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
・基板などをエッチングするために酸性またはアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
・他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状の液体、涙状の液体の他、糸状に尾を引く液体も含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であればよく、粘性の高いまたは低い液状態の材料、および、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶などが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク、ならびにジェルインク、ホットメルトインクなどの各種の液体状組成物を包含するものとする。