JP6522179B1 - 溶接装置及びその溶接装置を用いた溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接進行方向において間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極で構成した溶接において発生する、溶接入熱の増加に伴う溶接部の靱性低下を抑制できると共に、初層ビードの高温割れ(溶接欠陥)を抑制できる、溶接装置及びその溶接装置を用いた溶接方法を提供する。【解決手段】溶接装置は、溶接進行方向において間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極と、先頭の電極よりも後方に位置する電極のうち、少なくとも1の電極により形成された溶融池へ供給されるホットワイヤと、を備えている。電極は、先行する第一電極と、溶接進行方向において第一電極との間に間隔をあけて配置された後行の第二電極と、で構成されている。ホットワイヤは、第二電極により形成された溶融池へ供給されるものである。【選択図】図1
Description
本発明は、少なくとも2つ以上の電極を備えた溶接装置及びその溶接装置を用いた溶接方法に関する。
従来、溶接方法として、フィラーワイヤを使用した消耗電極式のアーク溶接が知られている。この溶接方法は、消耗電極と母材との間にアークを発生させ、アーク発生部にフィラーワイヤを送給しながら溶接を行う構成である。フィラーワイヤは、アークからの熱によって溶融されて溶融池へ移行される。
例えば特許文献1には、消耗電極式のアーク溶接として、2電極式ホットワイヤMAG溶接方法が開示されている。この2電極式ホットワイヤMAG溶接方法は、溶接電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材と先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させ、更にフィラーワイヤ用電源から通電を行って加熱したフィラーワイヤを、アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させるものである。
ところで、片面1ラン溶接法の2電極式溶接方法としては、先行する第一電極と、溶接進行方向において第一電極との間に間隔をあけて配置された後行の第二電極と、有する構成が知られている。この2電極式溶接方法は、第一電極でキーホールを開けながら裏波ビードと初層ビードを形成し、第二電極の溶接ビードを第一電極のビードに重ねて表ビードを形成する溶接施工技術である。
この2電極式溶接方法は、第一電極と第二電極との間に電極間を設けた2プール溶接法であり、溶接入熱量が高いことが知られている。所定の板厚以上の鋼板を溶接する場合には、溶接金属量を増やす必要がある。当該溶接方法を適用して溶接金属量を増やすためには、第一電極及び第二電極の電流値と電圧値を高めたり、溶接速度を遅くしたりするなどの調整を行うため、溶接入熱量も高くなり、溶接部の靭性低下を発生させるおそれがある。また、溶接部は、第一電極で形成した初層ビードの溶接金属中央部に突合凝固による高温割れ(溶接欠陥)が発生するおそれが高い溶け込み形状となるおそれがある。
例えば特許文献1の2電極式ホットワイヤMAG溶接方法は、1電極MAG溶接にホットワイヤの1電極を付加して2電極式とした構成であり、2電極MAG溶接にホットワイヤの1電極を付加した構成ではない。つまり、特許文献1の2電極式ホットワイヤMAG溶接方法は、第一電極でキーホールを開けながら裏波ビードと初層ビードを形成し、第二電極の溶接ビードを第一電極のビードに重ねて表ビードを形成する片面1ラン溶接法を実現できる構成ではない。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、溶接進行方向に間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極で構成した片面1ラン溶接施工技術において、溶接入熱が増えることで発生する初層ビードの高温割れ(溶接欠陥)を抑制すると共に、溶接部の靱性低下を抑制できる、溶接装置及びその溶接装置を用いた溶接方法を提供することを目的とする。
上記従来技術の課題を解決するための手段として、(1)本発明に係る溶接装置は、溶接進行方向において間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極と、先頭の電極よりも後方に位置する電極のうち、少なくとも1の電極により形成された溶融池へ供給されるホットワイヤと、を備えていることを特徴とする。
(2)また、(1)の溶接装置において、前記電極は、先行する第一電極と、溶接進行方向において前記第一電極との間に間隔をあけて配置された後行の第二電極と、で構成されており、前記ホットワイヤは、前記第二電極により形成された溶融池へ供給されるものであることを特徴とする。
(3)また、(1)又は(2)の溶接装置において、トーチに接続されて、中空構造の内部に挿入した前記ホットワイヤを溶融池へ供給するためのホットワイヤノズルを、更に有しており、前記ホットワイヤノズルは、先端部分に中空内部を塞ぐように内周面を肉厚とした肉厚部が管軸方向に所定の長さで設けられ、前記肉厚部に前記ホットワイヤを通すことができる程度に小径の挿通孔が形成されており、前記肉厚部から所定の距離をあけてホットワイヤチップが設けられることを特徴とする。
(4)また、(3)の溶接装置において、前記ホットワイヤチップは、前記ホットワイヤの通電距離が25mm以上100mm以下となるように、前記ホットワイヤノズルの内部に設けられることを特徴とする。
(5)本発明に係る溶接方法は、(1)〜(4)のいずれか一に記載の溶接装置を使用した溶接方法であって、先頭の電極よりも後方に位置する電極のうち、少なくとも1つの電極において発生させたアークの後方側に形成される溶融池に、加熱したホットワイヤを供給しながら溶接を進行させることを特徴とする。
(6)また、(5)の溶接方法において、前記ホットワイヤは、供給される溶融池を形成する電極との間に5mm以上20mm以下の間隔をあけて設けることを特徴とする。
(7)また、(5)又は(6)の溶接方法において、前記ホットワイヤが供給される溶融池を形成する電極は、5度以上45度以下の後退角を有するように設けることを特徴とする。
本発明によれば、先頭の電極よりも後方に位置する少なくとも1つの電極に形成された溶融池へ供給されるホットワイヤを備えているので、アークを発生させずに溶融させるホットワイヤによって溶接入熱量を抑えつつ溶接金属量を増やすことができ、初層ビードの高温割れ(溶接欠陥)及び溶接部の靭性低下を抑制することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略または簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態に係る溶接装置を示した説明図である。具体的には、図1は、2電極式溶接方法で第2電極にホットワイヤを供給した形態を示している。本実施の形態に係る溶接装置100は、溶接進行方向において間隔をあけて配置された2つの電極1及び2と、先頭の電極1よりも後方に位置する電極2により形成された溶融池7へ供給されるホットワイヤ3と、を備えている。図1に示した実施の形態における電極1及び2は、先行する第一電極1と、溶接進行方向において第一電極1との間に例えば300mm程度の間隔L1をあけて配置された後行の第二電極2と、で構成されている。
図1は、本発明の実施の形態に係る溶接装置を示した説明図である。具体的には、図1は、2電極式溶接方法で第2電極にホットワイヤを供給した形態を示している。本実施の形態に係る溶接装置100は、溶接進行方向において間隔をあけて配置された2つの電極1及び2と、先頭の電極1よりも後方に位置する電極2により形成された溶融池7へ供給されるホットワイヤ3と、を備えている。図1に示した実施の形態における電極1及び2は、先行する第一電極1と、溶接進行方向において第一電極1との間に例えば300mm程度の間隔L1をあけて配置された後行の第二電極2と、で構成されている。
第一電極1は、先行トーチ10の先端から所用の長さ突き出した消耗電極の溶接ワイヤであり、先行トーチ10から自動送給される。第一電極1は、図示省略の溶接電源から出力された電流によって通電され、母材5との間でアークを発生させる。溶接ワイヤは、例えばソリッドワイヤである。なお、先行トーチ10は、簡易的な装置による構成でもよいし、ロボットアーム等に装着可能として自動制御する構成でもよい。
第二電極2は、後行トーチ20の先端から所用の長さ突き出した消耗電極の溶接ワイヤであり、後行トーチ20から自動送給される。第二電極2は、図示省略の溶接電源から出力された電流によって通電され、母材5との間でアークを発生させる。溶接ワイヤは、例えばフラックスコアードワイヤである。なお、後行トーチ20も、簡易的な装置による構成でもよいし、ロボットアーム等に装着可能として自動制御する構成でもよい。
溶接装置100は、溶接部分をシールドガスによって空気から遮蔽され、溶接ワイヤの先端と、母材5との間に発生させたアークプラズマによって溶接ワイヤを溶融(消耗)させながら溶接を行うものである。シールドガスは、図示省略のガス供給装置から流量を調節して供給される。シールドガスは、例えば炭酸ガス、不活性ガス、又は不活性ガスと炭酸ガスを混合したものである。
ホットワイヤ3は、融点直下まで加熱されたフィラーワイヤであり、アークを発生させずに溶接金属量を増加させる目的で溶融池7に挿入される。ホットワイヤ3は、図1に示すように、先端部に中空構造のホットワイヤノズル4を有するホットワイヤ用トーチ30に挿入された状態で設けられ、溶融池7に対して略垂直に挿入される。ホットワイヤ3は、第二電極2の後方側において、該第二電極2との間に5mm以上20mm以下の間隔L2をあけて配置されている。第二電極2のアークとホットワイヤ3の干渉を防止し、且つ第二電極2の溶融池熱でホットワイヤ3を十分に溶融できる最も望ましい距離だからである。ホットワイヤ3は、図示省略のホットワイヤ用電源から出力された電流によって通電され、第二電極2に発生したアークの後方側に形成される溶融池7に供給される。
図2は、本発明の実施の形態に係る溶接装置のホットワイヤノズルを示した断面図である。ホットワイヤノズル4は、図2に示すように、ホットワイヤ用トーチ30の先端部に接続される基端部40aと、中間部から先端部にかけて設けられた送給部40bとで構成されている。ホットワイヤノズル4は、後端側の内周面に形成された雌ねじ部43を、ホットワイヤ用トーチ30に先端部に形成された雄ねじ部31にねじ合わせることで、ホットワイヤ用トーチ30に着脱自在に取り付けられる。因みに、ホットワイヤノズル4の長さは、一例として10cm程度である。
ホットワイヤノズル4の先端部分は、中空内部を塞ぐように内周面を肉厚とした肉厚部42が管軸方向に所定の長さで設けられ、肉厚部42にホットワイヤ3を通すことができる程度に小径の挿通孔42aが形成されている。挿通孔42aは、ホットワイヤ3の線径よりも若干大きい程度の孔径で形成されている。ホットワイヤノズル4は、肉厚部42を有することで、ホットワイヤ3の曲がりの癖を抑制することができ、溶融池7への安定した狙いを定めることができる。
ホットワイヤチップ41は、肉厚部42から所定の間隔をあけて設けられている。具体的には、ホットワイヤチップ41は、ホットワイヤ3の通電距離L3が25mm以上100mm以下となるように、肉厚部42から所定の間隔をあけてホットワイヤノズル4の内部に設けられている。通電距離L3が短すぎると、ホットワイヤ3の加熱が間に合わず、溶融池7内でホットワイヤ3が十分に溶融されないおそれがあるからである。そのため、ホットワイヤ3の通電距離L3は、ある一定の距離を確保する必要がある。一方、ホットワイヤ3の通電距離L3が長すぎると、ホットワイヤ3に振れが発生し、安定した溶接を行うことができないおそれがある。そこで、ホットワイヤ3の通電距離L3は、溶融池7におけるホットワイヤ3の溶融不良を解消でき、且つ振れによる変動を生じないように、アークを発生させずに溶融する条件として、25mm以上100mm以下となるように設定される。なお、通電距離L3を25mm以上100mm以下とするための溶接条件としては、例えばホットワイヤ3の径が1.0mm以上1.6mm以下であり、1分間当たりのホットワイヤ3の送給量が10m以上30m以下である。
因みに、通電距離L3を25mm以上100mm以下とする範囲は、種々の溶接条件を考慮した範囲である。溶接条件にもよるが、実際の施工においては、通電距離L3を60mm以上80mm以下(好ましくは70mm程度)に設定することが好ましい。この場合における溶接条件は、例えばホットワイヤ3の径が1.2m程度であり、1分間当たりのホットワイヤ3の送給量が14m以上18m以下(好ましくは16m程度)である。
ホットワイヤチップ41の内部には、ホットワイヤ3を挿通させ摺動可能に支持するワイヤ通路41aが形成されている。ホットワイヤ3は、ホットワイヤ用トーチ30からワイヤ通路41aに挿通され、図示しない電源から供給される電流がホットワイヤチップ41を介して伝導される。
なお、溶接装置100は、図示した構成に限定されない。例えば、電極は、第一電極1と第二電極2の2つに限定されず、溶接進行方向において間隔をあけて配置された3つ以上の電極とした構成でもよい。この場合、ホットワイヤ3は、先頭の電極の後方に位置する電極のうち、選択した電極又はすべての電極において、溶融池に供給するものとする。
次に、上記構成の溶接装置100を用いた溶接方法を図1〜図3に基づいて説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る溶接装置を使用した溶接方法を示した説明図である。具体的には、図3は、2電極式溶接方法で第二電極にホットワイヤを供給した場合の溶接部のマクロ断面を示している。
本実施の形態における溶接方法では、一例として2電極式MAG溶接方法である。なお、本実施の形態における溶接方法は、突合継手、重ね継手、T継手、当て継手等の様々な継手において実施できるものである。本実施の形態における溶接方法は、第一電極1と第二電極2とを、溶接進行方向に対して前後方向に所定の間隔L1(例えば300mm程度)をあけて並べて溶接を行う。
本実施の形態における溶接方法は、先ず、先行トーチ10を保持して、溶接電源から通電を行い、第一電極1と母材5との間にアークを発生させ、溶融池6を発生させる。このとき、先行トーチ10からは、シールドガスとして、炭酸ガスが母材5に向かって供給される。高温となった金属が酸素及び窒素と反応するのを防ぐためである。第一電極1では、図3の破線Aに示すように、キーホールを開けながら、裏波ビードと初層ビードを形成する。
次に、後行トーチ20を保持して、溶接電源から通電を行い、第二電極2と母材5との間にアークを発生させ、溶融池7を発生させる。このとき、後行トーチ20からは、シールドガスとして、炭酸ガスが母材5に向かって供給される。第二電極2では、図3の破線Bに示すように、第一電極1で形成したビードに重ねて表面ビードを形成する。
第二電極2は、図1に示すように、5度以上45度以下の後退角θを有するように設ける。第二電極2を母材5に対して垂直方向に配置してしまうと、ホットワイヤ3も加わった溶融金属が第二電極2のアーク点よりも先行してしまい、先行した溶融金属を溶接してしまう場合がある。その結果、第二電極2によって発生させた溶融金属が、第一電極1で形成された初層ビートに十分に溶け込まないおそれがあるからである。なお、後退角θを45度以下としている理由は、溶接作業の機械制約上による上限を規定したものである。また、第二電極2が45度以上の後退角θを有すると、表ビードの形状が変化して品質に問題が生じることにもよる。なお、実際の施工では、ホットワイヤ3も加わった溶接金属の先行を抑制しつつ、溶接作業の作業性を考慮すると、第二電極2の後退角θを5度以上20度以下とすることがもっとも適切な角度といえる。
そして、本実施の形態における溶接方法では、溶接電源から通電を行って加熱したホットワイヤ3を、第二電極2において発生させたアークの後方側に形成される溶融池7に供給しながら溶接を進行させる。ホットワイヤ3は、上記構成のホットワイヤノズル4を先端部に有するホットワイヤ用トーチ30を用いて溶融池7に供給する。ホットワイヤノズル4を使用することによって、ホットワイヤ3の振れを防止することができ、ホットワイヤ3の狙いを安定させて定めることができる。
ホットワイヤ3に通電を行う溶接電源は、パルスを用いて、ベース電流、ピーク電流、周波数、比率及び母材5の板厚に応じた必要送給量が設定されている。なお、実行電流値は、例えば180〜220Aである。
因みに、本実施の形態における溶接方法を実施するにあたり、第一電極1により形成された溶融池6へホットワイヤ3を挿入して溶接金属量を増やすことも考えられる。しかし、第一電極1によって形成された溶融池6にホットワイヤ3を挿入してしまうと、ホットワイヤ3も加わった溶融金属が第一電極1のアーク点よりも先行してしまい、先行した溶融金属を溶接してしまう場合がある。その結果、ルート部の溶融不足を招き裏波ビードが安定して得られないことがある。溶接品質を高めるためには、第一電極1において裏波ビードをしっかりと形成する必要がある。そのため、本実施の形態における溶接方法では、第一電極1により形成された溶融池6へホットワイヤ3を挿入するのではなく、第二電極2により形成された溶融池7へホットワイヤ3を挿入することとし、溶接品質を高めることとしている。
なお、本実施の形態における溶接方法では、溶接進行方向において間隔をあけて配置された3つ以上の電極を有する溶接装置を使用してもよい。この場合、ホットワイヤ3は、先頭の電極の後方に位置する電極のうち、選択した電極又はすべての電極において、溶融池に供給するものとする。
ここで、従来の2電極式MAG溶接方法による問題点について説明する。一般的に、2電極式MAG溶接方法では、片面1ラン突き合わせ溶接を行う場合、母材が厚板になるほど、溶接金属量を増やして溶接を行う必要がある。溶接金属量を増やす方法としては、溶接速度を遅くしたり、第一電極1及び第二電極2の電流及び電圧を高めたり、或いは電極数を増やすことが考えられる。しかし、これらの方法では、溶接入熱量が増加するので、溶接部の靱性が低下し、初層ビートに高温割れも発生する。また、第一電極で先に溶接したビードを第二電極のアークで再溶融する溶接欠陥が発生する確率が高い。そのため、2電極式MAG溶接方法において、片面1ラン突き合わせ溶接を行う場合、鋼板の板厚が例えば22mm程度と制限されていた。
例えば造船の場合、船級ルールの改正により、船に適用される鋼材の増厚化が進んでいる。この場合、従来の2電極式MAG溶接方法では、鋼材が厚板(例えば25mm程度)であることが原因で、片面1ラン突き合わせ溶接を行うことが難しく、マルチラン溶接方法で溶接せざるを得ない。そのため、従来の2電極式MAG溶接方法では、施工に手間がかかり、生産性が低下する問題があった。このように、特に造船、橋梁、建設及び建機をはじめとした厚板の溶接を行う産業においては、2電極式溶接方法において、片面1ラン突き合わせ溶接する新たな施工技術が望まれていた。
そこで、本実施の形態に係る溶接装置100では、上記したように、溶接進行方向において間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極1及び2と、先頭の電極1よりも後方に位置する少なくとも1の電極2により形成された溶融池7へ供給されるホットワイヤ3と、を備えた構成としている。具体的には、電極は、先行する第一電極1と、溶接進行方向において第一電極1との間に間隔をあけて配置された後行の第二電極2と、で構成されている。ホットワイヤ3は、第二電極2により形成された溶融池7へ供給されるものである。
したがって、この溶接装置100では、アークを発生させずに溶融させるホットワイヤ3によって溶接入熱量を抑えつつ、溶接金属量を増やすことができるので、溶接部の靱性低下を抑制でき、初層ビードの高温割れ(溶接欠陥)も抑制することができる。つまり、従来の溶接装置では、鋼板の板厚の限界が例えば22mm程度であるの対し、本実施の形態の溶接装置100を使用すると、板厚が25mm以上の鋼板であっても片面1ラン突き合わせ溶接が可能となる。
また、本実施の形態の溶接装置100では、ホットワイヤ用トーチ30に接続されて、中空構造の内部に挿入したホットワイヤ3を溶融池7へ供給するためのホットワイヤノズル4を、更に有している。ホットワイヤノズル4は、先端部分に中空内部を塞ぐように内周面を肉厚とした肉厚部42が管軸方向に所定の長さで設けられ、肉厚部42にホットワイヤ3を通すことができる程度に小径の挿通孔42aが形成されている。そして、ホットワイヤノズル4には、肉厚部42から所定の距離をあけてホットワイヤチップ41が設けられている。したがって、この溶接装置100では、ホットワイヤ3を肉厚部42で安定させて保持することができ、ホットワイヤ3の曲がりの癖を抑制して、溶融池7への安定した狙いを定めることができる。
特に、本実施の形態の溶接装置100では、ホットワイヤ3の通電距離L3が25mm以上100mm以下の範囲内となるように、ホットワイヤチップ41をホットワイヤノズル4の内部に設けることで、溶融池7におけるホットワイヤ3の溶融不良を解消でき、振れによる変動も防止して安定した溶接を行うことができる。
また、本実施の形態の溶接方法では、ホットワイヤ3が、供給する溶融池7を形成する電極との間に5mm以上20mm以下の間隔をあけて配置されているので、第二電極2のアークとホットワイヤ3の干渉を防止でき、且つ第二電極2の溶融池熱でホットワイヤ3を十分に溶融することができる。
また、本実施の形態の溶接方法では、第二電極2が5度以上45度以下の後退角θを有するように設けているので、ホットワイヤ3が加わった溶接金属の先行を抑制しつつ、機械制約を受けることなく溶接作業の作業性を高めることができる。
以上に本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えばホットワイヤノズル4は、図示した形状に限定されず、他の形状でもよい。また、本実施の形態の溶接装置100は、従来から使用されてきた2電極マグ1ラン溶接装置又は曲がり外板片面溶接装置等、2電極マグ片面溶接に用いられる装置に適用することができる。また、本実施の形態における溶接方法は、2電極式MAG溶接方法に限定されず、例えば不活性ガスでシールドするMIG溶接等でも実施できる。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
1 第一電極、2 第二電極、3 ホットワイヤ、4 ホットワイヤノズル、5 母材、6、7 溶融池、10 先行トーチ、20 後行トーチ、30 ホットワイヤ用トーチ、31 雌ねじ部、40a 基端部、40b 送給部、41 ホットワイヤチップ、41a ワイヤ通路、42 肉厚部、42a 挿通孔、43 雌ねじ部、100 溶接装置。
Claims (7)
- 溶接進行方向において間隔をあけて配置された少なくとも2つ以上の電極と、
先頭の電極よりも後方に位置する電極のうち、少なくとも1の電極により形成された溶融池へ供給されるホットワイヤと、を備えていることを特徴とする、溶接装置。 - 前記電極は、
先行する第一電極と、
溶接進行方向において前記第一電極との間に間隔をあけて配置された後行の第二電極と、で構成されており、
前記ホットワイヤは、前記第二電極により形成された溶融池へ供給されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の溶接装置。 - トーチに接続されて、中空構造の内部に挿入した前記ホットワイヤを溶融池へ供給するためのホットワイヤノズルを、更に有しており、
前記ホットワイヤノズルは、先端部分に中空内部を塞ぐように内周面を肉厚とした肉厚部が管軸方向に所定の長さで設けられ、前記肉厚部に前記ホットワイヤを通すことができる程度に小径の挿通孔が形成されており、
前記肉厚部から所定の距離をあけてホットワイヤチップが設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の溶接装置。 - 前記ホットワイヤチップは、前記ホットワイヤの通電距離が25mm以上100mm以下となるように、前記ホットワイヤノズルの内部に設けられることを特徴とする、請求項3に記載の溶接装置。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶接装置を使用した溶接方法であって、
先頭の電極よりも後方に位置する電極のうち、少なくとも1つの電極において発生させたアークの後方側に形成される溶融池に、加熱したホットワイヤを供給しながら溶接を進行させることを特徴とする、溶接方法。 - 前記ホットワイヤは、供給される溶融池を形成する電極との間に5mm以上20mm以下の間隔をあけて設けることを特徴とする、請求項5に記載の溶接方法。
- 前記ホットワイヤが供給される溶融池を形成する電極は、5度以上45度以下の後退角を有するように設けることを特徴とする、請求項5又は6に記載の溶接方法。
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