JP6521289B2 - 金属膜に周期的に非対称開口を配設した位相差板 - Google Patents

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Description

本発明は、金属膜に複数の非対称開口を周期的に配設し、表面プラズモンが励起される光波帯あるいは、疑似的表面プラズモンが生じるテラヘルツ帯、ギガヘルツ帯の電磁波を対象とする位相差板に関するものである。
直線偏光を円偏光に変換する従来の位相差板には、非特許文献1で提案されている異なる誘電体を交互に積層した構造がある。図17は非特許文献1に開示された従来の位相差板の透視図である。この位相差板は、透明度の高い高屈折率の誘電体と低屈折率の誘電体(実施例では空気層)とを交互に積層した周期構造から構成される。図中、Lは高屈折率誘電体の幅、Pは周期長、L/Pはフィリングファクターfで一周期における空間占有率、Hは誘電体の厚み、n1、n2は各誘電体の屈折率を表す。
同様な原理に基づいた他の構造としては、非特許文献2で提案されている図18に示す誘電体基板に三角形孔の周期列を設ける位相差板がある。図中、wは三角形の一辺の長さ、Λは周期長、hは誘電体基板の厚み、nH、nLは各誘電体の屈折率を表す。
他方、フォトニック結晶金属膜で生じる光学的異方性を利用した構造として、特許文献1で提案されている位相差板がある。図19は特許文献1に開示された従来の位相差板の透視図である。複数の円形の開口が金属膜に周期的に配置されている。この構造では、金属膜の厚みが開口を通過する電磁波の波長の0.3から2.0倍が必要となる。
一方、上記とは異なる原理に基づくものとして、金属表面に誘起される表面プラズモンを利用した光波帯での位相差板が提案されている。構成例として非特許文献3で開示された、複数の十字型スロットを設けた位相差板がある。図20は非特許文献3で開示された従来の位相差板の透視図である。この位相差板は、銀で構成される金属膜に長さがわずかに異なる直線状スロットを十字状に空け、この形状の複数のスロットを周期的に配設した構成となっている。Wは金属スロットの幅、lxとlyはスロット長、dは周期長を表す。
また、類似の原理に基づく光波帯での位相差板に関しては、非特許文献4で提案されたL字状の金属素子を用いるものがある。図21は非特許文献4で開示された従来の位相差板の構成図である。この位相差板は、誘電体基板の上に周期的にL字状の金からなる素子を配線した構成となっており、金属素子間で生じる表面プラズモンを利用している。図中、Hは金属の厚み、Wは金属の幅、Lは金属の長さ、Dは誘電体基板の厚さ、Pは周期長を表す。
さらに、類似の原理に基づく光波帯の位相差板に関しては、特許文献2で提案された、複数個の金属構造体と、複数個の開口部を有する金属膜からなる偏光制御装置がある。図22は特許文献2で開示された従来の偏光制御装置(位相差板)の構成図である。この位相差板は、金属膜の開口部と、2個以上の金属構造体からなるユニットを、2次元的に配置しており、金属部で生じる表面プラズモンを利用して偏光制御を行っている。
特開2004−117703号公報 特開2009−223123号公報
齊藤真紀子他「RCWA法による広帯域1/4波長板の最適設計」、OPTRONICS, pp.179-186, No.12,2009 山内潤治他「サブ波長三角形孔配列を用いた偏波変換器」、2013年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、p.181(C-3-59) A.Roberts and L.Lin 「Plasmonic quarter-wave plate」, Optics Letters, vol.37, No.11, pp.1820-1822, 2012 B.Yang他Design of ultrathin plasmonic quarter-wave plate based on period coupling」, Optics Letters, vol.38, No.5, pp.679-681, 2013
1/4波長板に代表される位相差板は、例えば、液晶・有機エレクトロルミネサンスディスプレイなどの画素のオン・オフ切り替えに利用でき、レーザー干渉計などの光学機器・計測機器などにも応用されている。厚さの薄い位相差板は、占有体積が限定された個別部品の小型化の観点から望まれる。しかしながら、図17に示した非特許文献1の構造では、厚さが約2μm(可視光帯で約3波長)程度ある。図17に示す構造で、x軸から45度傾いた方向に偏光した電磁波を入射すると、x軸とy軸方向に第1モードと第2モードが等振幅で生成される。第1モードと第2モードの伝搬定数をβ1、β2と表記すると、円偏光への変換長Lcは、Lc=π/2(β1−β2)で決定されるので、最適な位相差板の厚さは、伝搬定数差で決定される。一般にこの伝搬定数差は大きくできないため、位相差板は厚くなる。
また、図18で示した非特許文献2の構造では、誘電体基板に三角形孔の周期列を配しており、非特許文献1と同様な効果により、偏光変換が得られる。しかし、その厚みは2.36μm(光通信波長帯で約2波長)であり、水平直線偏光を垂直直線偏光へ変換する1/2波長板である。加えて、小さな三角形孔を周期的に深く穿孔する製作上の困難さがある。
図19に示した特許文献1の構造では、金属膜とその面域を貫通する1個以上の開口を利用しており、二つの直交する偏波が同じパリティのときのモードカップリングすることを利用している。このため、入射波は金属膜に対してわずかに傾けることが必要であり、垂直入射では動作しない。また、パリティの整合を得るために、金属は少なくとも、波長の0.3倍以上の厚みを要する。
一方、図20で示した非特許文献3の構造は、金属膜のみで構成され、誘電体基板を必要としないため、薄型を達成しており、水平方向と垂直方向のスロット長をわずかに変化させることで、表面プラズモンモードの共振波長を調節し90度の位相差を得る構成となっている。しかし十字構造のスロット部で得られる開口面積が小さいため、透過する光波は大きくできず、透過率は40%程度である。
また、表面プラズモンモードを利用した、図21に示した非特許文献4の従来の位相差板では、L字状金属素子を誘電体基板上に配置する必要があり、透過率はやはり40%程度である。
他方、図22に示した特許文献2の構造では、金属膜の開口部と、2個以上の金属構造体からなるユニットを、2次元的に配置し、この組み合わせにより表面プラズモンモードを発生させて光学的異方性を得ている。2次元的配置に伴い、厚みが増すことに加えて、製作の面倒さがともなう。
また、非特許文献3及び非特許文献4のように、表面プラズモンモードを利用して、金属膜あるいは金属素子を用いて位相差板を構成すると、厚みが薄くでき、電磁波の垂直入射で動作する利点があるものの、透過率を上げるのが難しいという問題があった。
本発明は、このような従来技術の事情に鑑みてなされたもので、製作が容易で、かつ極めて薄い膜厚で、電磁波の垂直入射で動作する透過率の高い位相差板を提供することを課題とする。
本発明によれば、上記課題を解決するため、第1に、金属膜に平面視で直角二等辺三角形である複数の開口が周期的に配設されてなり、各開口は入射電磁波直線偏光面に対して一定の傾斜角度をなす長辺部を有する非点対称形状であり、前記開口において周期的な結合に基づく二種類の直交する表面プラズモンモード又は疑似表面プラズモンモードが励起され、90度位相の異なる直交する界成分を利用して、直線偏光を円偏光に変換し、かつ、入射電磁波の波長帯により右旋円偏波及び左旋円偏波が得られることを特徴とする位相差板を提供する。
また、第2に、上記第1の発明において、前記長辺部の傾斜角度が前記入射電磁波直線偏光面に対して43度から47度であることを特徴とする位相差板を提供する。
また、第3に、上記第1又は第2の発明において、前記金属膜の厚みが電磁波の動作波長の0.1倍から0.3倍であり、電磁波の入射角が垂直入射を含み、±10度の範囲にあることを特徴とする位相差板を提供する。
また、第4に、上記第1ないし第3のいずれかの発明において、前記開口が配設される周期長が電磁波の動作波長よりも小さく、フィリングファクターが0.7から0.9に設定されていることを特徴とする位相差板を提供する。
また、第5に、上記第1ないし第4のいずれかの発明において、前記金属膜の材質が、電磁波が光波帯の場合は銀、金、アルミニウム、ニッケル、銅からなる群より選ばれる1種であり、テラヘルツ帯又はギガヘルツ帯の場合はアルミニウム、銅、ニッケル、鉄からなる群より選ばれる1種であることを特徴とする位相差板を提供する。
また、第6に、上記第1から第5のいずれかの発明において、複数の開口が周期的に配設された前記金属膜を一対の透光性の誘電体基板で挟みこんで一体化した構成を有することを特徴とする位相差板を提供する。
本発明によれば、光波帯、テラヘルツ帯、ギガヘルツ帯における特定の波長帯で動作し、製作が容易で、かつ超薄金属膜からなり、電磁波の垂直入射で動作する透過率の高い位相差板の提供が可能となる。
本発明による第1の構成例の位相差板の構造を示す図であり、(a)は透視図、(b)は上面図、(c)は断面図である。 三角形の開口の配列の二例を示す図である。 本発明の原理となる固有モード界分布の図であり、(a)は対称モード、(b)は非対称モードの界分布図である。 界分布をEx成分とEy成分に分解した図であり、(a)は対称モードのEx成分、(b)は対称モードのEy成分、(c)は非対称モードのEx成分、(d)は非対称モードのEy成分の界分布図である。 偏光変換動作の一例を示す伝搬界の図である。 光通信波長帯での実施例の透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す図である。 可視光帯での実施例の透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す図である。 従来の非特許文献3の形態と対比した可視光帯での実施例の透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す図である。 三角形開口の辺長が、透過率、偏光角、楕円率の波長特性に与える影響を示す図である。 金属膜の厚みが、透過率、偏光角、楕円率の波長特性に与える影響を示す図である。 本発明の別の実施形態となる位相差板の構造を示す図であり、(a)は透視図、(b)上面図、(c)は断面図である。 本発明の別の実施形態における透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す図である。 本発明による第2の構成例の位相差板の構造を示す図であり、(a)は透視図、(b)は上面図、(c)は断面図である。 長方形の開口の配列の二例を示す図である。 第2の構成例の別の形態を示す図である。 第2の構成例の位相差板の透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す図である。 従来の誘電体を用いた位相差板の透視図である。 従来の誘電体に三角形穿孔部を設けた位相差板の透視図である。 従来の金属膜とその貫通する開口からなる位相差板の透視図である。 従来の金属膜を用いた十字スロット型位相差板の透視図である。 従来のL字金属素子を誘電体基板に配設した位相差板の透視図である。 従来の複数の金属構造体と複数の金属開口部からなる偏光制御素子の透視図である。
以下、本発明の実施の形態に係る位相差板について詳述する。
本発明の位相差板は、金属膜に複数の開口が周期的に配設されてなり、各開口は入射電磁波直線偏光面に対して一定の傾斜角度をなす長辺部を有する非対称形状であることを大きな特徴としている。ここで非対称とは、入射電磁波直線偏光面に対して、開口の形状が対称でないことを意味する。
本発明の位相差板は、特に、金属膜に周期的に形成した非対称開口の長辺部が、入射電磁波直線偏光面、すなわち入射電磁波直線偏光軸に対して45度となるように切り落とした形状とすることにより、周期的な結合に基づく二種類の直交する表面プラズモンモード(入射電磁波が光波帯の場合)又は疑似表面プラズモンモード(入射電磁波がテラヘルツ帯又はギガヘルツ帯の場合)が励起され、90度位相の異なる直交する界成分を利用して、直線偏光が円偏光に変換される。この2種類の表面プラズモンモード若しくは疑似表面プラズモンモードは、対称モードと非対称モードと称される。
本発明の位相差板は、特に、金属膜に周期的に形成した非対称開口の長辺部が、入射電磁波直線偏光面、すなわち入射電磁波直線偏光軸に対して45度で切り落とした形状とすることで、直交する二つの表面プラズモンモード(入射電磁波が光波帯の場合)又は疑似表面プラズモンモード(入射電磁波がテラヘルツ帯あるいはギガヘルツ帯の場合)〔対称モードと非対称モード〕を励起する簡易な構造を有し、入射した直線偏光の電磁波を円偏光に変換できる1/4波長板として動作する。対称モードと非対称モードを等しく励起するには、入射電磁波直線偏光軸に対する長辺部の傾斜角度は、好ましくは43度から47度の範囲、更に好ましくは44度から46度の範囲、特に好ましくは45度であり、傾斜角度をこのような値にすることにより対称モードと非対称モードが等しく励起され、良好な偏光変換作用が維持される。両モードの等しい励起は、電磁波の垂直入射時に最も好ましく生じるが、入射角が金属膜に対して±10度の範囲であれば、位相差板として動作する。
本発明では、金属膜の厚みを電磁波の動作波長の0.1倍から0.3倍とすることができる。金属膜の厚みがこのような範囲であると、良好な偏光変換作用を維持することができるとともに、入射電磁波の透過率を高いレベルに維持することが可能となる。
本発明では、開口面積を大きくした状態で表面プラズモン若しくは疑似表面プラズモンの良好な生成を可能とし、入射電磁波の透過率をより向上させる観点から、周期長Λに対する開口部底辺長の比であるフィリングファクターfを0.7から0.9の範囲に設定することが好ましい。
本発明では、開口の周期長Λは、動作波長λと等しくなると高次回折波の影響が生じるため、動作波長λより小さくすることが好ましく、0.5λから0.9λ程度が望ましい。
本発明の金属膜の開口の形状としては、典型的には直角三角形を例示することができるが、原理上、入射電磁波直線偏光面に対して非対称構造をしていればよく、頂角や底角が丸みを帯びた形状や、台形状、長方形状等であってもよい。台形状の場合、長辺部が上記のような傾斜角度となるように孔を形成し、長方形状の場合には長辺部が上記のような傾斜角度となるように孔を形成し、これらの開口を配列する構造とする。
本発明では、開口の配列数は図1では簡単のため9個としてあるが、良好な偏光変換を行うことができる適宜の数とすることができる。
本発明の位相差板の偏光変換部の大きさは、変換する直線偏光が十分照射される広さがあればよい。
また、本発明の位相差板を構成する金属膜は、入射電磁波が光波帯の場合、表面プラズモンの生成が良好に行える材料であることが好ましく、このような材料としては、例えば、銀、金、アルミニウム、ニッケル、銅等を挙げることができる。また、入射電磁波がテラヘルツ帯あるいはギガヘルツ帯の場合、疑似表面プラズモンの生成が良好に行える材料であることが好ましく、このような材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄等を挙げることができる。
本発明の金属膜は、入射電磁波がテラヘルツ帯、ギガヘルツ帯の場合、支持体を設けず単体で自立させることができるが、支持体を設けてもよく、入射電磁波が光波帯の場合、ガラスやポリマーなどの透明な基板上に形成させることができる。
本発明の金属膜は、蒸着や化学的メッキ等の公知の成膜技術を用いて、所望の開口を有するものとして形成することができる。
また、本発明の金属膜は、後述するように、一対の透光性を有する誘電体基板で挟みこんだ構造とすることもできる。
本発明の位相差板を1/2波長板として動作させるには、位相差板を2枚、電磁波の入射方向に配列させればよい。
本発明の位相差板として、例えば金属膜に銀、開口に空気を用い、図1のような開口とした場合には、前記非特許文献1に比べて、約1/4の厚み、前記特許文献1に比べて約1/2の厚みで偏光変換を達成することができる。また、前記の非特許文献3に開示された十字スロット型の位相差板に比べて、開口部面積を大きくとれるため、透過率を約50%向上できる。さらに、金属素子が分割されて配置された前記非特許文献4とは異なり、厚みを薄くでき、製造が容易となることに加え、金属膜が連続しているため、電気的には導電性を維持したまま、特定の電磁波を透過し得る。
以下、本発明を図1(a)、(b)、(c)に示す第1の構成例の位相差板に基づき更に具体的に説明する。なお、ここでは、三角形の開口の配列が図2の(a)の形態のものについて述べるが、図2の(b)のような形態とすることができる。
この位相差板は、入射した直線偏光の電磁波を円偏光に変換するものである。図1(a)において、1は厚みtの平らな金属膜であり、平面視で二等辺直角三角形の開口3が複数、x方向及びy方向に周期的に配列して形成されている。この例では説明の簡単化のため9個の開口3が設けられているが、その数は偏光変換する入射電磁波に応じて適宜の数
に設定することができる。図1(b)は1ユニット(一素子)の偏光変換部の平面図であり、縦横Λの正方形のブロックの中に、破線で示す対角線に沿った長辺部(以下、傾斜部ともいう)2、x方向に沿った幅wの短辺部、及びy方向に沿った幅wの短辺部により形成される直角三角形状の開口3が形成されている。金属膜の比誘電率はnmであり、開口3は比誘電率nairの空気である。x方向が入射直線偏光軸であり、傾斜部2は入射直線
偏光軸に対し傾斜角度θ(本例では45度)をなしている。本例の位相差板は、1ユニットの偏光変換部をx方向とy方向にそれぞれ3つずつ配列した構成を有している。
次に、図1に例示した構造の位相差板の動作原理を説明する。ここでは位相差板に進入する電磁波が水平直線偏光入射であるものとして説明するが、垂直直線偏光入射時でも同様な動作原理である。また、金属膜1の材料には一例として銀を用いるものとする。さらに、電磁波は、特許文献1とは異なり、金属膜1に対して垂直(法線)方向から入射するものとする。
金属膜1に進入した電磁波は、傾斜部2を有する周期的な非対称開口部3のそれぞれにおいて、図3(a)、(b)にそれぞれ示すように、斜めに偏光軸をもつ対称(S)モードと非対称(A)モードに分解される。ここでの対称、非対称の名称は、斜めの偏光軸に対して、開口の形状が対称か否かで呼称されている。ここで両モードはほぼ等位相、等振幅で励振されるが、それぞれのモードの電界のx成分(Ex)とy成分(Ey)は同位相で励起される。例として、金属膜に銀を用いて、動作波長λ=1.5μmとした場合を用いて説明する。各非対称開口に誘起される固有モードの解析には周期的境界条件を考慮したYee格子に基づくFDTD法を用い、無限周期を仮定する。
一素子で観察されるExとEy成分に分解した対称モードの界分布を図4(a)、(b)、非対称モードの界分布を図4(c)、(d)にそれぞれ示す。計算結果によると、対称モードにおけるEx成分とEy成分は、それぞれ表面プラズモンモードの特徴である、金属面に対して法線方向に強く励起される。非対称モードには、対称モードにはない界の分割が観察される。この結果、界振幅は対称モードよりも約2倍大きく、かつ180度の位相差が生じる。計算によると、対称モードと非対称モードには約90度の位相差が生じる。
実際に位相差板に水平の直線偏光を入射した場合、図4に示す対称、非対称の合成の形で界分布が形成される。FDTD法で算出した、水平直線偏光入射時の各成分の界分布を図5に示す。界の振幅が大きな箇所は、水平辺と垂直辺にあり、両者の振幅はほぼ等しくかつ位相差は約90度である。この結果、入射された水平直線偏光は円偏光に変換される。垂直直線偏光が入射した場合にも構造の対称性から同一の効果が得られる。ただし、円偏光の回転方向は水平直線偏光の場合と逆になる。
図6にt=0.36μm、w=0.82μm、Λ=1μm、f=w/Λ=0.82、θ=45度の場合の波長特性を示す。FDTD法のパルス波解析で算出している。図6は透過率、偏光角、楕円率を示している。楕円率が0.7以上又は−0.7以下であると、透過波は3dB以内の円偏光とみなせる。楕円率が0.7以上で右旋円偏波、−0.7以下で左旋円偏波となる。図6の波長−楕円率のデータからλ=1.458〜1.515μmの帯域で透過波は右旋円偏波とみなせる。3dB円偏光帯域幅を2(λL−λS)/(λL+λS)で定義すると、帯域幅は3.8%と計算される。この帯域で透過率は48%以上あり、最大の透過率は68%にもなる。特に、λ=1.483μmにおいて最も高い楕円率0.99が観察され、57%の透過率が得られる。なお、λLとλSはそれぞれ、楕円率が3dBとなる、長波長側および短波長側の波長である。また、λ=1.104〜1.113μmの帯域で透過波は左旋円偏波とみなせる。円偏波となる帯域は狭いが、70%から83%の高い透過率が得られる。特に、λ=1.109μmにおいて最も高い楕円率−0.9が観察され、78%の透過率が得られる。図6には、金属を完全導体とみなした場合の結果も併記している。完全導体においても、動作波長は低域に約15%移行するが、銀と同様に位相差板としての動作することがわかる。このことから、テラヘルツ帯、ギガヘルツ帯において、通常の導体金属膜を用いて位相差板として動作することがわかる。
ここで、透過波が反円偏波となる理由について考察する。金属板に進入した直線偏波は、三角形孔の斜辺に対して垂直、または、水平な偏光軸をもつ、対称モードと非対称モードに分解される。計算によると、楕円率がピークとなるλ=1.109μm、1.483μmで両モードは等振幅でかつその位相差が90度であることが確認され、さらにλ=1.109μmの非対称モードとλ=1.483μmの非対称モードとの位相差が180度であることも確認される、その結果、両波長で透過波の偏波の回転方向が逆になる。
非特許文献3の実施例が可視光帯が対象であったので、比較を明確にするため、可視光帯での本発明による実施例を次に示す。図7は、t=0.14μm、w=0.28μm、Λ=0.4μm、f=w/Λ=0.82の場合の波長特性を示す。λ=0.692〜0.717μmの帯域で透過波は右旋円偏波とみなせる。3dB円偏光帯域幅は3.6%あり、この範囲における透過率は44%以上で最大は60%である。これらの値は、図8で示す非特許文献3の実施例で得られる3dB円偏光帯域幅2.4%、透過率41%以上で最大値47%よりも向上している。一方、図7の波長−楕円率のデータから、λ=0.506〜0.509μmの帯域で透過波は左旋円偏波とみなせる。3dB円偏光帯域幅は0.59%あり、この範囲における透過率は48%以上で最大は54%である。図8では反円偏波特性は生じていない。
図6と図7より、本実施例が、光波帯の広い帯域において、寸法の選定によって実施できることを示している。
以下の例では設計波長を光通信波長帯λ=1.5μm帯とした場合を示す。
構造パラメータの変化の影響を明らかにするために、wとtを変化したときの波長特性に及ぼす影響を調べる。光通信波長帯で特性を検討するため、Λ=1μm、f=0.82に固定する。
図9にtを0.36μmに固定した場合における、wの変化に伴う波長特性を示す。wが小さくなるにつれて、円偏光の得られる帯域は短波長側へ移行し、逆にwを大きくするにつれて、円偏光帯域は長波長側へ移行する。これより、wの大きさを変化させることで、所望の波長で動作する位相差板の設計ができる。なお、図9のデータから、反円偏波特性が生じていることがわかる。
図10は、wを0.82μmに固定し、tを変化させた場合の波長特性である。tの変化に対しては波長特性が鈍感であり、本実施例の目的であった薄膜化において、自由度の大きいことが実証される。厚みは波長の0.1倍から0.3倍の範囲にあり、特に、波長の0.1倍という超薄膜でも動作する特徴がある。なお、図10のデータから、反円偏波特性が生じていることがわかる。
本発明を応用すれば、図11に示すように、位相差寄与部11を一対の誘電体基板12で挟み込む構成が可能である。この場合、金属膜のみの場合よりも、薄膜さを失うものの、衝撃などに対する耐久性を向上できる。
図12は、図11の構成において誘電体基板厚みtd=0.7μmの場合の透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示している。誘電体基板の屈折率は1.34である。誘電体基板を付加することで、プラズモンモードの波長短縮が生じるため、動作波長は長波長側に移行する。3dB円偏光帯域幅は2.6%と計算される。この帯域で透過率は48%以上、最大の透過率は67%になり、高透過性が維持されている。なお、図12のデータから、反円偏波特性が生じていることがわかる。
次に、本発明による第2の構成例の位相差板を説明する。
図13に本構成例の位相差板の構造を示す。この位相差板も、入射した直線偏光の電磁波を円偏光に変換するものである。図13(a)において、21は厚みtの平らな金属膜であり、平面視で長方形の開口23が複数、図示のごとく互いに直交する方向に周期的に配列して形成されている。この例では説明の簡単化のため9個の開口23が設けられているが、その数は良好な偏光変換を行うことができる適宜の数に設定することができる。図13(b)は1ユニット(一素子)の偏光変換部の平面図であり、縦横Λの正方形のブロックの中に、ユニットの左上角から右下角を結ぶ対角線に平行な2つの長辺部(以下、傾斜部ともいう)22a、22b、これら長辺部22a、22bに直角な幅lsの2つの短辺部により形成される長方形状の開口23が形成されている。金属膜の比誘電率はnmであり、開口23は比誘電率nairの空気である。x方向が入射直線偏光軸であり、傾斜部22a、22bは、入射電磁波直線偏光面に対して非対称性をもたせるため入射直線偏光軸に対し傾斜角度θc(本例では45度)をなしている。本例の位相差板は、1ユニットの偏光変換部を互いに直角な方向にそれぞれ3つずつ合計9個配列した構成を有している。
なお、ここでは、長方形の開口の配列が図14の(b)の形態のものについて述べるが、図14の(a)のような形態とすることができる。その場合の図13に相当する図は図15のようになる。
本構成例の位相差板の動作原理は第1の構成例の位相差板と同様である。
金属膜21にはAgを使用し、Drude分散性媒質として扱う。位相差板の上部、下部、及び長方形の開口23の内部の媒質は空気とする。金属膜21の厚さtm=0.36μm、長方形の開口の長辺の長さlL=0.88μm、短辺の長さls=0.60μmとし、ユニットの周期Λ=1.0μmに設定する。入射偏波軸に対して構造に非対称性を持たせるために、開ロ部をθc=45度傾ける。
透過波の波長特性を、透過率、偏光角、楕円率の観点から評価した。位相差板の下部の空気層より一様な振幅を持つ直線偏波(Ex)を入射し、位相差板の上部の空気層において透過波を観測した。解析には、周期的境界条件を適用したFDTD法を使用した。金属を含む構造を取り扱うため、PLRC法(Piecewise Linear Recursive Convolution method)を適用した。解析に用いる刻み幅を△x=△y=△z=0.01μmに選んだ。
図16に透過率、偏光角、楕円率の波長特性を示す。また、図16には、金属を完全導体とみなした場合の結果を併記している。ここで楕円率の絶対値が0.7以上となる波長において、透過波は3dB以下の円偏波とみなせる。図16の波長−楕円率のデータより2カ所で楕円率のピークが観察される。λ=1.046〜1.281μmの広帯域で円偏波が得られる。さらにこの帯域での透過率は61%以上あり、最大値は99%と増加する。加えてλ=1.080、1.164μmの2ヵ所のピークで楕円率0.99を得る。従って、本構成例の位相差板は、広帯域で動作し、且つ、透過率も高いことがわかる。
本発明は、可視光帯から光通信波長帯において占有厚みに限定がともなう光回路において好ましく適用することができる。さらに、本発明は、光波帯のみならず、導体板で形成される周期構造に伴う疑似的な表面プラズモンモードが発生し得る、テラヘルツ帯、ギガヘルツ帯においても適用することができ、耐熱性に優れた薄型位相差板を提供し得る。
1、21 金属膜
2、22a、22b 長辺部(傾斜部)
3、23 非対称開口部
11 位相差寄与部
12 誘電体基板

Claims (6)

  1. 金属膜に平面視で直角二等辺三角形である複数の開口が周期的に配設されてなり、各開口は入射電磁波直線偏光面に対して一定の傾斜角度をなす長辺部を有する非点対称形状であり、前記開口において周期的な結合に基づく二種類の直交する表面プラズモンモード又は疑似表面プラズモンモードが励起され、90度位相の異なる直交する界成分を利用して、直線偏光を円偏光に変換し、かつ、入射電磁波の波長帯により右旋円偏波及び左旋円偏波が得られることを特徴とする位相差板。
  2. 前記長辺部の傾斜角度が前記入射電磁波直線偏光面に対して43度から47度であることを特徴とする請求項1に記載の位相差板。
  3. 前記金属膜の厚みが電磁波の動作波長の0.1倍から0.3倍であり、電磁波の入射角が垂直入射を含み、±10度の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の位相差板。
  4. 前記開口が配設される周期長が電磁波の動作波長よりも小さく、フィリングファクターが0.7から0.9に設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の位相差板。
  5. 前記金属膜の材質が、電磁波が光波帯の場合は銀、金、アルミニウム、ニッケル、銅からなる群より選ばれる1種であり、テラヘルツ帯又はギガヘルツ帯の場合はアルミニウム、銅、ニッケル、鉄からなる群より選ばれる1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の位相差板。
  6. 複数の開口が周期的に配設された前記金属膜を一対の透光性の誘電体基板で挟みこんで一体化した構成を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の位相差板。
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