以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
[LED照明デバイス]
図1は、本発明のLED照明装置が備えているLED照明デバイスの一実施形態を示す斜視図、側面断面図、底面図、及び上面図である。尚、各図中にはデバイスの向きの指標となるx’y’z’座標系が示されている。
図1(A)は、一実施形態としてのLED照明デバイス10を示す。また、図1(B)は、LED照明デバイス10における、z’x’面によってデバイス中央部を切断した側面断面を示す。両図によれば、LED照明デバイス10は、基台11と、基台11上に設置されたLED光源12と、LED光源12の少なくとも上方に位置する均一化光学体13と、均一化光学体13を基台11に設置するための脚部14とを備えている。
均一化光学体13は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、環状オレフィン樹脂、光学用特殊ポリエステル樹脂、光学用シリコーン樹脂若しくは高密度ポリエチレン樹脂等のプラスチック材料、又は透明光学ガラス、若しくは蛍光ガラス等のセラミック材料を用いて形成されている。LED光源12は、基台11上に設置・固定されており、基台11の内部又は表面部に設けられた配線と電気的に接続され、外部電源からの電力供給を受ける。
LED光源12は、第1波長の光を放射する発光ダイオードチップ(LEDチップ)を備え、少なくともこの第1波長の光と第1波長とは異なる第2波長の光との混色光を放射する光源である。このLED光源12としては、例えば、第1波長の光(例えば青色光)を放射するLEDチップと、このLEDチップの発光面を覆っている樹脂であって、この第1波長の光を吸収して第2波長の光(例えば黄色光)を蛍光として発する蛍光体を含む樹脂とを備えているものとすることができる。上記の均一化光学体13によって、照射光の混色化・色均一化が促進されるので、このようなLED光源12に起因する黄色リング等の色ムラ発生を抑制可能となる。
同じく図1(A)及び(B)によれば、均一化光学体13は、LED光源12の少なくとも上方に位置し、LED光源12からの放射光を受光して混色化・色均一化が促進された照射光を放射する光学系である。均一化光学体13は、本実施形態において4本の脚部14で基台11に設置されているが、設置方法はこれに限定されるものではない。
均一化光学体13は、配光角制御レンズ部130と、微小レンズ配列部131とを備えている。配光角制御レンズ部130は、LED光源12からの放射光(混色光)が入射後に集光される入射面(入射内面)130csを有しており、入射した放射光(混色光)を所定範囲内の値の配光角に制御する。この配光角は、後述するように、半値全角幅として5度(°)から40°までの範囲内の値に制御されることが好ましい。
さらに、本実施形態では、配光角制御レンズ部130は、少なくともLED光源12の発光面12e(本実施形態ではLED光源12の略全体)を内部に含む凹部130cを備えている。これにより、配光角制御レンズ部130は、LED光源12からの放射光を高い効率で受光することができる。
この凹部130cは、凸レンズ表面状の入射内面130csを備えている。これにより、LED光源12からの放射光(混色光)は、この入射内面130csに入射した後、集光される。その結果、発散する方向に伝播していた放射光(混色光)の配光角を、所定範囲内の値に制御可能となる。尚、入射内面130csは、凸レンズ表面状に限定されるものではなく、LED光源12からの放射光(混色光)が集光されるような入射角で入射する面であればよい。例えば、設定される配光角によっては概ね平面状となる場合もある。さらに、凹部130cは、LED光源12を取り囲む位置に設けられた内壁面130cwを備えている。これにより、配光角制御レンズ部130は、LED光源12からの放射光(混色光)を、この内壁面130cwをも介して概ねもれなく受光することができる。
微小レンズ配列部131は、配光角制御レンズ部130からの配光角が制御された光(混色光)を、配光角制御レンズ部130における入射内面130csとは反対側の出射位置を介して受光し、分散させて色の均一化を促進する光学部分である。ここで、配光角制御レンズ部130の出射位置(微小レンズ配列部131との境界)は、本実施形態において平面状のレンズ配列面131aとなる。従って、配光角制御レンズ部130は、出射位置面から配光角が制御された光を放射する面発光源と捉えることができ、一方、微小レンズ配列部131は、この面発光源から配光が制御された光を、レンズ配列面131aを介して受光する分散制御光学系と捉えることができる。
また、微小レンズ配列部131は、上面図である図1(D)に示すように、レンズ配列面131aを底面として配列した複数の微小レンズ131mを備えている。これら微小レンズ131mの配列については、後に図2を用いて詳述する。
配光角制御レンズ部130及び微小レンズ配列部131は、又はこれらの部分と更に脚部14とは、一体で形成されることが好ましい。この形成方法として、所定の金型に、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、環状オレフィン樹脂、光学用特殊ポリエステル樹脂、光学用シリコーン樹脂若しくは高密度ポリエチレン樹脂等の光学的に透明な樹脂、又は透明光学ガラス、若しくは蛍光ガラス等を注入して硬化させる方法が採用可能である。
[微小レンズ配列部]
図2は、微小レンズ配列部131における微小レンズ配列を説明するための上面図、及び側面断面図である。
図2(A1)は、複数の微小レンズ131mの六角形配列を示す。また、図2(A2)は、この六角形配列のz’x’面による側面断面を示す。図2(A1)及び(A2)によれば、六角形配列は、レンズ頂点131mtが六角格子を成すように、複数の微小レンズ131mが配置された配列である。個々の微小レンズ131mは、微小な半球又は半回転楕円体(半楕円球)の一部となる形状を有する。変更態様として、微小レンズ131mの表面形状を非球面とすることも可能である。
各微小レンズ131mは、図2(A1)及び(A2)に示すように、底面をレンズ配列面131a(配光角制御レンズ部130の出射位置)とし、発光面(出射する側の面)の曲率半径をRとする。ここで、発光面は光の進行方向(+z’方向)に凸であるから、その曲率半径は本来負値である。しかしながら、計算等の便宜のため、以後、その絶対値をとってR値とし、このR値を曲率半径とする。また、隣接した微小レンズ131mにおけるレンズ頂点131mt間の距離(ピッチ)をPとする。
ここで、これら配列した複数の微小レンズ131mにおいては、曲率半径R、ピッチP、又は曲率半径R及びピッチPの両方が、曲率半径Rについてはレンズ配列面131a内におけるレンズ頂点を結ぶ1つの軸(y’軸)の方向とこの軸に垂直な軸(x’軸)の方向との間で、ピッチPについてはレンズ配列面131a内におけるレンズ頂点を結ぶ軸(y’軸及びx’’軸)それぞれの方向の間で、異なっている。具体的に、図2(A1)においては、y’軸方向の曲率半径Ry’がx’軸方向の曲率半径Rx’よりも大きくなっており、また、y’軸方向のピッチPy’がx’’軸方向のピッチPx’よりも大きくなっている。
ここで、ピッチPと曲率半径Rとの比P/Rをパラメータとして、微小レンズ131mの配列を考察する。図2(A1)には、3つの微小レンズ131mが重畳する3重点が存在しており、微小レンズ131mの間隔がこれ以上広がると(レンズ頂点を結ぶ各軸方向での比P/Rが増大すると)、レンズ配列面131a内に微小レンズ131mではない領域が形成されてしまう限界状態にある。言い換えれば、比P/Rが、レンズ頂点を結ぶ各軸方向(y’軸、x’’軸)においてレンズ配列面131a内に微小レンズ131mではない領域が形成されない上限値をとっている状態である。ここで、x’’軸方向での比P/Rにおける曲率半径Rは、x’’軸方向での曲率半径Rx’’である。尚、複数の微小レンズ131mが正六角形配列をなし、レンズ底面が円状(Ry’=Rx’)である場合、この比P/Rの上限値は、1.73(√3)となる。
一方、各軸方向において比P/Rが減少し、微小レンズ131mの間隔が狭くなると、隣接する微小レンズ131m同士の重畳部分が増大し、微小レンズ配列部131全体として発光面の凹凸の度合いが減少する。一極限として、比P/R=0では、微小レンズ配列部131の発光面は、凹凸のないレンズ配列面131aに沿った面となる。尚、後に図3を用いて詳述するように、比P/Rは、この六角形配列において、0.4以上であって上記の上限値以下であることが好ましい。比P/Rをこのように制御することによって、LED光源12から放射される混色光を十分に均一化した所望の照度を有する照射光を得ることができる。
図2(B)は、複数の微小レンズ131mの四角形配列を示す。同図によれば、四角形配列は、レンズ頂点131mtが正方格子又は長方格子を成すように、複数の微小レンズ131mが配置された配列である。個々の微小レンズ131mにおける詳細は、図2(A1)及び(A2)と同様である。
これら配列した複数の微小レンズ131mにおいては、曲率半径R、ピッチP、又は曲率半径R及びピッチPの両方が、曲率半径Rについてはレンズ配列面131a内におけるレンズ頂点を結ぶ1つの軸(x’軸)の方向とこの軸に垂直な軸(y’軸)の方向との間で、ピッチPについてはレンズ配列面131a内におけるレンズ頂点を結ぶ軸(x’軸及びy’軸)それぞれの方向の間で、異なっている。具体的に、図2(B)においては、y’軸方向の曲率半径Ry’がx’軸方向の曲率半径Rx’よりも大きくなっており、また、y’軸方向のピッチPy’がx’軸方向のピッチPx’よりも大きくなっている。
ここで、四角形配列においても、ピッチPと曲率半径Rとの比P/Rをパラメータとして、微小レンズ131mの配列を考察する。図2(B)には、4つの微小レンズ131mが重畳する4重点が存在しており、微小レンズ131mの間隔がこれ以上広がると(レンズ頂点を結ぶ各軸方向での比P/Rが増大すると)、レンズ配列面131a内に微小レンズ131mではない領域が形成されてしまう限界状態にある。言い換えれば、比P/Rが、レンズ頂点を結ぶ各軸方向(x’軸、y’軸)においてレンズ配列面131a内に微小レンズ131mではない領域が形成されない上限値をとっている状態である。
尚、複数の微小レンズ131mが正方形配列をなし、レンズ底面が円状(Ry’=Rx’)である場合、この比P/Rの上限値は、1.41(√2)となる。また、後に図3を用いて説明するように、比P/Rは、この正方形配列においても、0.4以上であって上記の上限値以下であることが好ましい。比P/Rをこのように制御することによって、LED光源12から放射される混色光を十分に均一化した所望の照度を有する照射光を得ることができる。
[配光角・比P/R制御]
図3(A)は、配光角制御レンズ部130での配光角制御を説明するための断面概略図であり、図3(B)は、微小レンズ配列部131での比P/Rの制御例を示すグラフである。
図3(A)によれば、LED光源12から放射された光(混色光)が、入射内面130csを介して配光角制御レンズ部130に入射し、配光を制御されて、配光角制御レンズ部130の出射位置である出射面130eから出射される。尚、この出射光は実際には外部に放射されず、レンズ配列面131aを介して即、微小レンズ配列部131に伝播する。この出射光強度(エネルギー強度(W/m2))の角度分布を強度分布15で示す。出射光強度は、図3(A)では、最大値を1とした規格化強度となっている。
出射光の配光角θdは、出射光の最大強度方向(z’軸方向)を軸とし、出射光強度が0.5(最大強度の半分)となる方向の母線が成す円錐における、母線とz’軸とのなす角の2倍、即ち出射光の半値全角幅と定義される。図3(A)の強度分布15は、配光角θd=40°である出射光の分布となっている。
ここで、配光角θdが大きくなるほど出射面130eからの出射光は分散し、一方、配光角θdが小さくなるほど出射面130eからの出射光における中心照度は高くなる。本発明において、配光角制御レンズ部130は、LED光源12から放射された光(混色光)を、5°から40°までの範囲内の値の配光角θdに制御することが好ましい。即ち、
(1) 5°≦θd≦40°
であることが好ましい。
実際に、次いで図3(B)を用いて説明するように、配光角制御レンズ部130と微小レンズ配列部131とを組み合わせてシミュレーション実験を行ったところ、配光角θdが上式(1)の範囲内の値をとる場合に、色ムラ(黄色リング)が存在せず中心照度の維持された照射光が、比P/Rの制御によって、実現されることが確認されている。ここで、配光角θdを5°以上に設定することによって、そのような配光角θdに制御するために必要とされる配光角制御レンズ部130の光学的寸法精度が、通常製造コストで実現する範囲内に収まる。実際、配光角を3°〜4°以内に確実に収めるには、通常の照明装置光学系の制作工程以上に加工精度が要求され、通常必要となる以上のコストがかかることが製造現場での経験上分かっている。
一方、配光角θdが40°以下の場合に、配光角制御レンズ部130による分散・均一化作用が有効に発揮される。実際、配光角θdが40°を超える光では、次いで説明する図3(B)でのシミュレーション実験と同様の実験によって、微小レンズ配列部131による分散の寄与分がほとんど存在しなくなることが確認されている。また、それ故に、配光角θdが40°以下の場合に初めて、所定の照明対象に応じて必要な中心照度が確保可能な照射範囲が実現することが明らかになっている。
以上、配光角θdが上式(1)の範囲内の値に制御された光を、配光角制御レンズ部130から出射することによって、以下に説明するように、微小レンズ配列部131において、照射光の中心照度及び分散の程度を、照明対象に適合させることができるのである。
図3(B)は、光学シミュレーション実験によって得られた、微小レンズ配列部131における比P/Rと、出射光の中心照度及び半値全角(FWHM)との関係を示す。ここで、光学シミュレーション実験は、ノンシーケンシャル光線追跡のモンテカルロ法を用いて実施された。また、微小レンズ配列部131は、複数の微小レンズ131mが正六角形配列をなすものであり、各微小レンズ131mは、半球状レンズの部分となる形状を有していた。
配光角制御レンズ部130からの出射光の配光角θdは8.5°である。また、中心照度(単位はルクス(lx))及びFWHM(°)はそれぞれ、シミュレーション測定範囲内での最大値を1とした規格値で表されている。尚、以下に説明する、比P/Rをパラメータとした実験結果は、光学系の原理から、比P/Rが同じであれば実寸(P値及びR値)が異なっていても同一となる点に留意すべきである。また、この比P/Rは、図2(A1)において、y’軸方向及びこのy’軸に対して60°の角度を示すx’’軸それぞれの方向での値となるが、この両者は同一値となる。
図3(B)によれば、比P/Rがゼロ(発光面が凹凸のない面)から増加するにつれて、微小レンズのピッチPが相対的に増大し、微小レンズの凸部領域が拡大する。その結果、微小レンズ配列部131の分散作用が高まって出射光のFWHMが増加する一方、中心照度は単調に減少する。即ち、黄色リング等の色ムラ発生を抑制する効果が出現する。
ここで、図3(B)に示したFWHMの二次微分からFWHM曲線の変曲点を算出すると、変曲点での比P/Rは0.4となる。このように、比P/Rが0.4以上になると、FWHMが実質的に増大し始め、色ムラ発生の抑制効果が顕著となることが確認される。一方、比P/Rが1.73を超えると、図2(A1)及び(A2)を用いて説明したように、配光角制御レンズ部130のレンズ配列面131a内に、微小レンズ131mではない領域が形成される。即ち、微小レンズ131m間に隙間が生じてしまう。その結果、微小レンズ131mによる分散作用が低下してしまう。
従って、比P/Rは、この正六角形配列において、0.4以上であって、1.73以下であることが好ましい。比P/Rをこのように制御することによって、LED光源12から放射される混色光を十分に均一化した所望の中心照度を有する照射光を得ることができる。さらに、正方形配列においても、比P/Rは、同様の光学シミュレーション実験によって、0.4以上であって、1.41以下であることが好ましいとの結果が得られた。
これらの比P/Rの値1.73及び1.41はいずれも、上述したように、y’軸方向及びx’’軸方向において、微小レンズ配列部131のレンズ配列面131内に微小レンズ131mではない領域が形成されないための上限値である。従って、以上の結果を合わせて考察すると、図2(A1)及び(B)に示すように曲率半径R及び/又はピッチPがレンズ頂点を結ぶ各軸の方向で異なっている場合には、レンズ配列面131a内のレンズ頂点を結ぶ各軸の方向において、比P/Rは、0.4以上であって、微小レンズ配列部131のレンズ配列面131a内に微小レンズではない領域が形成されない上限値以下であることが好ましいことが理解される。
尚、配光角θdが上式(1)(5°≦θd≦40°)の範囲内における他の値をとる場合にも、光学シミュレーションによって、以上に説明したのと同様の結果が得られた。即ち、比P/Rが上記の好適範囲において、5°≦θd≦40°の条件下、色ムラ(黄色リング)が存在しない設計通りのFWHMを有する照射光が実現された。
[実施例1:微小レンズの長方形配列]
長方形配列した複数の微小レンズ131mを備えている微小レンズ配列部131を使用した照射実験を、光学シミュレーションによって行った。表1に、実施例1の実験結果を示す。
表1の実施例1では、配光角制御レンズ部130の配光角θdは、9°であり、配光角制御レンズ部130のレンズ径dd(図1(C))は、23mm(ミリメートル)である。微小レンズ配列部131(レンズ配列面131a)全体の形状は、x’y’面内において、このレンズ径ddがなす円よりも十分に大きな面積を有する円状である。曲率半径Rx’及びRy’はそれぞれ、図2(B)に示すように、微小レンズ131mのz’x’面による断面及びy’z’面による断面における曲率半径である。曲率半径Rx’及びRy’は1.0mmであり、各微小レンズの形状は半球状部分である。また、ピッチPx’及びPy’はそれぞれ、同じく図2(B)に示すように、x’軸方向及びy’軸方向において隣接する微小レンズ131mのレンズ頂点間距離である。さらに、Fx’及びFy’はそれぞれ、出射光の半値全角幅がなす円錐における、頂点を含むz’x’面及びy’z’面による断面内に存在する母線同士が成す角度である。
また、表1において、中心光度は、配光角制御レンズ部130及び微小レンズ配列部131の中心を通る(z’軸方向の)光軸(図1(B)の一点鎖線)と、微小レンズ配列部131の発光面との交点での出射光の光度(単位はカンデラ(cd))である。さらに、半値照度は、本LED照明デバイスから光軸方向に1m離隔した(光軸に垂直な平面状の)照明対象において、中心照度の半分の値となる照度(単位はルクス(lx))である。
表1及び図4(A)によれば、実施例1では、微小レンズ131mが長方形配列している。曲率半径Rx’及びRy’は共に1.0mmであって等しい。また、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’はそれぞれ、0.8mm及び1.2mmであり、ピッチPが異方性を有する。即ち、ピッチPが、レンズ頂点を結ぶ複数の軸であって互いに垂直なx’軸及びy’軸それぞれの方向の間で、異なっている。その結果、比P/Rも異方性を有する(Px’/Rx’=0.8、Py’/Ry’=1.2)。また、中心光度は205cdであり、光度分布は、x’軸方向とy’軸方向とでそれぞれ異なったガウス分布となる。
さらに、実施例1では、半値全角Fx’及びFy’もそれぞれ24.5°及び33.5°であり、異なった値となる。また、半値照度として110lxが計測された地点は、照明対象平面に(光軸との交点が原点である)x’y’z’座標系を導入すると、x’軸上で原点から±40cm(センチメートル)の位置となり、y’軸上で原点から±60cmの位置となる。
図4(A)は、実施例1におけるx’y’面内での照度分布を示すグラフである。
図4(A)に示すように、x’軸方向及びy’軸方向に関して照射光の分散が異方性を有する実施例1では、出射光が照明対象平面を照射した際の照明形状は、略長方形状となる。尚、図4(A)の照度分布は、微小レンズ配列部131から光軸に沿って1mの位置にある(光軸に垂直な)平面状での分布である。
従って、微小レンズ131mを長方形配列させ、比P/R(ピッチP)に異方性を持たせることによって、照明形状を長方形状に制御可能なことが理解される。また、本シミュレーション実験において、照明形状内に、中央部の青色及び黄色リングに対応する分布は見られず、照射光の均一化が促進されていることも確認されている。
[実施例2:微小レンズの六角形配列]
六角形配列した複数の微小レンズ131mを備えている微小レンズ配列部131を使用した照射実験を、光学シミュレーションによって行った。表2に、実施例2の実験結果を示す。
表2の実施例2において、配光角制御レンズ部130の配光角θdは、9°であり、配光角制御レンズ部130のレンズ径dd(図1(C))は、23mmである。微小レンズ配列部131(レンズ配列面131a)の形状は、x’y’面内において、このレンズ径ddがなす円よりも十分に大きな面積を有する円状である。曲率半径Rx’及びRy’はそれぞれ、図2(A)に示すように、微小レンズ131mのz’x’面による断面及びy’z’面による断面における曲率半径である。これら曲率半径Rx’及びRy’はそれぞれ2.0mm及び1.0mmであり、各微小レンズの形状は楕円球状部分である。また、ピッチPx’及びPy’はそれぞれ、図2(A)に示すように、x’’軸方向及びy’軸方向において隣接する微小レンズ131mのレンズ頂点間距離である。ここで、x’’軸は、x’y’面内においてy’軸からx’軸に向けて60°回転した方向の軸である。さらに、Fx’及びFy’はそれぞれ、出射光の半値全角幅がなす円錐における、頂点を含むz’x’面及びy’z’面による断面内に存在する母線同士が成す角度である。
表2によれば、実施例2では、微小レンズ131mが六角形配列しており、曲率半径Rx’及びRy’はそれぞれ、2.0mm及び1.0mmであって、曲率半径Rが異方性を有する。即ち、曲率半径Rが、y’軸の方向とy’軸に垂直なx’軸の方向との間で異なっている。一方、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’は共に、0.8mmであって等しい。その結果、比P/Rは異方性を有する(Px’/Rx’=0.4、Py’/Ry’=0.8)。中心光度は、580cdであり、光度分布は、x’軸方向とy’軸方向とでそれぞれ異なったガウス分布となる。
さらに、実施例2では、半値全角Fx’及びFy’もそれぞれ12.5°及び21.5°であり、異なった値となる。また、半値照度として700lxが計測された地点は、照明対象平面に(光軸との交点が原点である)x’y’z’座標系を導入すると、x’軸上で原点から±20cmの位置となり、y’軸上で原点から±38cmの位置となる。
図4(B)は、実施例2におけるx’y’面内での照度分布を示すグラフである。
図4(B)に示すように、x’軸方向及びy’軸方向に関して照射光の分散が異方性を有する実施例2では、出射光が照明対象平面を照射した際の照明形状は、略楕円形状となる。尚、図4(B)の照度分布は、微小レンズ配列部131から光軸に沿って1mの位置にある(光軸に垂直な)平面状での分布である。
従って、微小レンズ131mを六角形配列させ、比P/R(曲率半径R)に異方性を持たせることによって、照明形状を楕円形状に制御可能なことが理解される。また、本シミュレーション実験において、照明形状内に、中央部の青色及び黄色リングに対応する分布は見られず、照射光の均一化が促進されていることも確認されている。
[実施例3:微小レンズの長方形配列、比P/R等方]
長方形配列した複数の微小レンズ131mを備えている微小レンズ配列部131を使用した照射実験を、光学シミュレーションによって行った。表3に、実施例3の実験結果を示す。
表3の実施例3−1、3−2及び3−3のいずれにおいても、配光角制御レンズ部130の配光角θdは、9°であり、配光角制御レンズ部130のレンズ径dd(図1(C))は、23mmである。微小レンズ配列部131(レンズ配列面131a)の形状は、x’y’面内において、このレンズ径ddがなす円よりも十分に大きな面積を有する円状である。曲率半径Rx’及びRy’は互いに異なっており、各微小レンズの形状は楕円球状部分である。
表3によれば、実施例3−1及び3−2では、微小レンズ131mが長方形配列しており、曲率半径Rx’及びRy’は、実施例3−1でそれぞれ1.0mm及び1.05mmであり、実施例3−2でそれぞれ1.0mm及び0.95mmであって、曲率半径Rが異方性を有する。また、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’も、実施例3−1でそれぞれ0.8mm及び0.84mmであり、実施例3−2でそれぞれ1.2mm及び1.14mmであって、ピッチPも異方性を有する。即ち、曲率半径R及びピッチPの両方が、曲率半径Rについてはx’軸の方向とx’軸に垂直なy’軸の方向との間で、ピッチPについてはレンズ頂点を結ぶ複数の軸(x’軸及びy’軸)それぞれの方向の間で、異なっている。実施例3−1及び3−2では、これにより、比P/Rが等方的となる。即ち、実施例3−1ではPx’/Rx’=Py’/Ry’=0.8となり、実施例3−2ではPx’/Rx’=Py’/Ry’=1.2となる。
中心光度は、実施例3−1で290cdであり、実施例3−2で150cdであって、光度分布は、x’軸方向とy’軸方向とで一致したガウス分布となる。さらに、実施例3−1及び3−2では、半値全角Fx’及びFy’も、実施例3−1で共に24.5°であり、実施例3−2で共に34.5°であって、同一値となる。
表3によれば、実施例3−3でも、微小レンズ131mが長方形配列しており、曲率半径Rx’及びRy’は、それぞれ1.0mm及び2.0mmであって、曲率半径Rが異方性を有する。また、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’も、それぞれ0.4mm及び0.8mmであって、ピッチPも異方性を有する。即ち、曲率半径R及びピッチPの両方が、曲率半径Rについてはx’軸の方向とx’軸に垂直なy’軸の方向との間で、ピッチPについてはレンズ頂点を結ぶ複数の軸(x’軸及びy’軸)それぞれの方向の間で、異なっている。実施例3−3でも、これにより、比P/Rが等方的となる(Px’/Rx’=Py’/Ry’=0.4)。中心光度は、875cdであり、光度分布は、x’軸方向とy’軸方向とで一致したガウス分布となる。
さらに、実施例3−3では、半値全角Fx’及びFy’も、共に12°であり同一値となる。また、半値照度として1050lx’が計測された地点は、照明対象平面に(光軸との交点が原点である)x’y’z’座標系を導入すると、x’軸上で原点から±22cmの位置となり、y’軸上でも原点から±22cmの位置となる。即ち、照度分布もx’軸方向及びy’軸方向において等方的である。
図4(C)は、実施例3−3におけるx’y’面内での照度分布を示すグラフである。
図4(C)に示すように、微小レンズ配列が長方形配列であるであるにも拘わらず比P/Rがx’軸方向及びy’軸方向において等方的(Px’/Rx’=Py’/Ry’)である実施例3−3では、出射光が照明対象平面を照射した際の照明形状は、略正方形状となる。尚、図4(C)の照度分布は、微小レンズ配列部131から光軸に沿って1mの位置にある(光軸に垂直な)平面状での分布である。また、表3に示すように、実施例3−1及び3−2においても、図4(C)と同様の、略正方形状の照度分布が得られている。
以上に述べた実施例3−1、3−2及び3−3の結果から、微小レンズ131mを長方形配列させても、比P/Rを等方的にすることによって、照明形状を正方形状に制御可能なことが理解される。また、本シミュレーション実験において、照明形状内に、中央部の青色及び黄色リングに対応する分布は見られず、照射光の均一化が促進されていることも確認されている。
尚、実施例3−1における曲率半径R及びピッチPにおける異方性の程度は、
(Ry’−Rx’)/Rx’(=(Py’−Px’)/Px’)=+0.05(+5%)
であり、実施例3−2における曲率半径R及びピッチPにおける異方性の程度は、
(Ry’−Rx’)/Rx’(=(Py’−Px’)/Px’)=−0.05(−5%)
である。製造現場での光学系加工精度の下、少なくともこのような±5%の異方性を有する微小レンズ配列部131ならば、曲率半径R及びピッチPを上述したように調整して、照明形状を略正方形状に設定可能であることが実験により確認されている。
以上、種々の実施例を用いて詳細に説明したように、本発明のLED照明デバイス10によれば、均一化光学体13によって、照射光の混色化・色均一化が促進されLED光源12に起因する黄色リング等の色ムラ発生を抑制可能となる。また、均一化光学体13の光学的構成(微小レンズ配置、曲率半径R及びピッチP)を、異なる方向それぞれに関して制御することによって、例えば従来の蛍光灯のような広範囲を遍く照らす照明状態から、スポットライトのような集光性の高い照明状態までを、色ムラ発生を抑制しつつ実現することが可能となる。
また、本発明のLED照明デバイス10によれば、照明対象に応じた必要な照度と、照明対象の形状に適した照明形状とを、色ムラ発生を抑制しつつ実現することができる。これにより、照明対象外にはみ出して無駄になる出射光を大幅に低減可能となり、LED照明本来の低消費電力の下、十分な照度で照明対象を照らすことができる。その結果、より電力効率の良い照明が実現可能となる。
ここで、略長方形状又は略正方形状における「略」の範囲を説明する。最初に、照明領域は、出射光の配光角(半値全角幅)範囲内の光が、LED照明デバイス10の直下にある(出射面の法線に垂直な)照明対象面を照明する領域であるとする。また、照明形状は、この照明領域の形状であるとする。この照明形状に外接する最小の長方形又は正方形を想定した際、この照明領域(照明形状)の面積Sと、この外接する長方形又は正方形の面積S0との比r(≦1)が、
(2) r=S/S0≧0.9
の条件を満たす場合、この照明領域の照明形状は「略」長方形状又は「略」正方形状であるとする。
ここで、r=0.9の下限値は、実施例3−1における面積比S/S0の値であり、曲率半径R及びピッチPにおける異方性の程度が上述したように5%である場合の値である。製造現場での光学系加工精度の下、少なくとも異方性の設定が5%以上であれば異方性の照明形状に対する効果が確実となり、この際得られた照明形状を「略」長方形状の境界としたものである。また、上述した実施例1(表1、図4(A)、実施例2(表2、図4(B))、及び実施例3(表3、図4(C))における照明形状も、上式(2)の条件を満たすことが確認されている。
尚、楕円の面積S’とこの楕円に外接する長方形の面積S0’との比は、約0.79である。上述したr=0.9の値は、この約0.79と1との概ね中央値(中間値)となっている。さらに、略楕円形状における「略」の範囲についても、それぞれ内接する最大の楕円形の面積を用いて、同様に規定される。
[LED照明装置1]
図5は、本発明によるLED照明装置の一実施形態を示す、正面図、断面図及び背面図である。ここで、図5(B)は、図5(A)のA−A面による断面を示す。
図5(A)及び(B)によれば、LED照明装置1は、ケース16と、ケース16内に直列して配置された複数のLED照明デバイス10と、ケース16上部に設けられた開口に嵌るように設置された蓋体17と、各LED照明デバイス10に電力を供給するための電源線18とを備えている。
ケース16は、アルミダイキャスト、若しくはステンレス鋼等の金属材料、又はポリカーボネート、PET、若しくはアクリル等を含む非透過性のプラスチック材料で形成されており不透明である。ケース16は、板金加工によって形成されていてもよい。蓋体17は、強化ガラス等のガラス材料、又はポリカーボネート、PET、若しくはアクリル等を含む透過性のプラスチック材料等の透明材料で形成されている。また、複数のLED照明デバイス10は、微小レンズ配列部131を蓋体17に対向させて設置されている。これにより、複数のLED照明デバイス10からの出射光は、蓋体17を介して放射され、照射光となる。
複数のLED照明デバイス10の基台11は、互いに接触し連なって、又は所定の間隔をもって直線的に配置されている。変更態様として、これら複数の基台11を1つの回路基板に統合し、この回路基板上に、複数のLED光源12と、複数の均一化光学体13とを設置して複数のLED照明デバイス10としてもよい。
尚、LED照明デバイス10の均一化光学体13、特に微小レンズ配列部131は、以上に説明した種々の実施形態(実施例1〜3)のいずれをも採用可能である。さらに、曲率半径R、ピッチP又はこれらの両方が、曲率半径Rについてはレンズ配列面内における1つの軸の方向とこの軸に垂直な軸の方向との間で、ピッチPについてはレンズ配列面内におけるレンズ頂点を結ぶ軸それぞれの方向の間で、異なっている微小レンズ配列部131であれば、採用可能である。これにより、均一化の促進された、さらには照度及び照明形状が制御された出射光を放射することができる。
図5(C)に示すように、電源線18は、例えば、ケース16の底面端部に設けられた切れ込み開口部160を介して、基台11から外部へ引き出される。この電源線18と切れ込み開口部160との間、及び蓋体17とケース16の開口との間には、使用環境に応じて、接着剤、シール部材等を用いた防水・防油処置が施されることも好ましい。
[LED照明装置の照明形状]
図6は、本発明によるLED照明装置の照明形状に係る2つの実施形態を概略的に示す斜視図である。
図6(A)の実施形態によれば、LED照明装置1は、照明対象平面を照明している。このLED照明装置1では、複数のLED照明デバイス10が配列しており、照明対象平面は、これらLED照明デバイス10(均一化光学体13)の光軸に垂直な平面となっている。
LED照明デバイス10は、例えば、上述した実施例1又は実施例3と同様の形態を採用したものであり、各LED照明デバイス10の出射光20が照明対象平面上になす照明領域200は、一定の幅W300の照明領域部分を含み、略長方形状又は略正方形状となるように設定されている。
尚、ここでも、略長方形状又は略正方形状における「略」の範囲は、上述した式(2)r=S/S0≧0.9の条件を満たす範囲である。また、一定の幅における「一定」の範囲は、当該照明領域部分での幅(W300)の変動が±5%以内の範囲となる。略長方形状又は略正方形状は、幅W300の変動幅が±5%以内の照明領域を含むことが確認されている。
この場合、LED照明装置1から放射される照射光30は、出射光20が互いに一部重畳しながら並んだものとなる。その結果、照射光30が照明対象平面上になす照明領域300は、照明領域200が互いに一部重畳しながら配列したものとなり、装置長手方向(LED照明デバイス10の配列方向:x軸方向)に伸長した略長方形状となる。
図6(B)の実施形態によれば、照明装置内のLED照明デバイス10は、例えば、上述した実施例2と同様の形態を採用したものであり、各LED照明デバイス10の出射光21が照明対象平面上になす照明領域210は、略楕円形状となるように設定されている。
この場合、LED照明装置1から放射される照射光31は、出射光21が互いに一部重畳しながら並んだものとなる。その結果、照射光31が照明対象平面上になす照明領域310は、照明領域210が互いに一部重畳しながら配列したものとなり、一定の幅W310の照明領域部分を有していて、装置長手方向(x軸方向)の両端辺が湾曲した長方形状となる。
以上述べた実施形態によれば、LED照明装置から、均一化の促進された、さらには照明形状が制御された照射光を得ることが可能となる。ここで、この照射光の照明形状を、照射対象の形状に合わせることによって、概ね照明対象のみを照明することができる。その結果、必要な照度が、必要なだけの範囲で、高い電力効率の下確保可能となる。
[作業台の照明]
図7は、本発明のLED照明装置による照明方法における一実施形態を概略的に示す斜視図である。
図7によれば、LED照明装置1は、照射対象面である作業エリア3sを備えた作業台3に設置されている。作業エリア3sは正方形状を有する。ここで、作業エリア3sの直上には作業用器具が設置されているため、LED照明装置1は、作業エリア3sの斜め上方の位置に設置され、作業エリア3sを照明する。
LED照明装置1から放射される照射光33は、(LED照明デバイス10の)光軸に垂直な面330において、一定の幅W33の照明領域を有していて、略長方形状を有する。しかしながら、照射光33は作業エリア3sに対して斜めに入射するため、照明光33による作業エリア3sでの照明領域331は、略正方形状となる。ここで、照射光33は、この自身の略正方形状を作業エリア3sの正方形状に概ね一致させることによって、作業エリア3sのみを余さず照明することが可能となる。
ここで変更態様として、面330において略長方形状又は略正方形状の照射光33を用いて、長短辺比の異なる略長方形状の照明領域331を実現することも可能である。または、面330において略楕円形状の照射光33を用いて、略円形状、又は長短軸比の異なる略楕円形状の照明領域331を実現することも可能である。
尚、照明領域331の照明形状における直交する辺の比又は直交する軸の比は、LED照明装置1からの照射光33の光軸と作業エリア3sの法線とがなす角度θ40を調整することによって、相当の範囲で任意に設定可能である。以上、本実施形態においても、照明対象に応じて必要となる照度が確保される無駄のない、且つ色ムラが抑制された照明が実現される。
[LED照明装置1による道路・通路又はとう道の照明]
図8は、本発明のLED照明装置による照明方法における他の実施形態を説明するための概略図である。尚、各図中には照明の向きの指標となるXYZ座標系が示されている。
図8(A)は、LED照明装置1を用いて道路(又は通路)5を照明した実施形態を示す。ここで、LED照明装置1のLED照明デバイス10は、例えば、実施例1又は3と同様の形態を採用したものであり、LED照明装置1の照明領域340は、一定の幅の照明領域部分を有しており、略長方形状(又は略正方形状)となるように設定されている。
図8(A)によれば、LED照明装置1は、道路5の幅方向(X軸方向)における少なくとも一方の端部の上方に所定の間隔D1をもって設置されている。ここで、LED照明装置1から放射される照射光34は、照射対象面である路面50を照射し、路面50上で略長方形状の照明領域340を形成する。
これら複数のLED照明装置1によって形成される照明領域340は、隣り合うもの同士で互いに一部重畳して重畳領域340vを形成しながら、道路5の長手方向(Y軸方向)に配列する。その結果、路面50の照明領域全体の照明形状は、照射光34による略長方形状が互いに一部重畳しながら道路5の長手方向(Y軸方向)に配列した形状となる。
また、LED照明装置1は、路面50に対して先端部をもたげるように設置されている。これにより、装置1内のLED照明デバイス10の出射面は、路面50の長手軸(Y軸)と直交する横断面(ZX面)内において路面50に対して角度θelをなす。その結果、照射光34の光軸は、ZX面内において路面50の法線に対して角度θelだけ傾く。
尚、LED照明デバイス10の出射面は、微小レンズ配列部131の上面(微小レンズの各頂点を含む面)であり、レンズ配列面131aに平行な面となる。また、照射光34の光軸は、LED照明装置1内のLED照明デバイス10からの出射光の光軸方向の軸であって、装置1内に配列したLED照明デバイス10の出射面全体の領域の中心を貫く軸と定義される。
このように、照射光34の光軸を路面50の法線に対して傾けることによって、照明領域340のX軸方向の幅W340を変化させ、図8(B)に示すように、この幅W340を、路面50のX軸方向の幅W50に概ね一致させることができる。これにより、照明領域340の幅方向(X軸方向)において、道路5の照明に要求される必要最低照度(例えば3lx)を確保することができる。尚、上記の「概ね一致させる」は、照明領域340の幅W340と必要最低照度以上の照度範囲幅とが通常概ね一致すること、を前提としている。実際には、例えば、照明領域340の幅W340を路面50の幅W50よりも若干小さくしても必要最低照度を満たすことができる場合もあり、またその逆の場合もあり、上記の「概ね一致させる」は、これらの範囲をも含む意味とする。
一方、従来の凸レンズを用いたLED照明装置では、照射形状は、円形状又は円形状に近い楕円状となる。その結果、図8(C)に示すように、路面50上に必要な照度を提供しようとすると、照明形状の径を路面50の幅W50よりも大きくせざるを得ないので、照明光は路面50外の不要部分も相当に照明する。その結果、照明用の電力に無駄が生じてしまう。また、この事情は、このLED照明装置を例えZX面内で傾けて設置したとしても解決するものではない。
これに対して、本発明によるLED照明装置1を用いた照明では、図8(B)に示すように、照明形状を路面50と概ね一致させることができる。従って、照明光34が路面50外の不要部分を照明することを十分に抑制可能となる。
さらに、照明領域340内で最も照度が低い、路面50の長手方向(Y軸方向)での端部は、隣り合う照明領域340の端部と重畳し、重畳領域340vを形成している。その結果、例え照明領域340単独では同領域内に必要最低照度(例えば防犯灯の場合、3lx)が確保されない区域が存在するとしても、重畳領域340vにおいてこの必要最低照度を確保できるように調整することによって、路面50上全体で必要な照度を確保可能となる。
また、重畳領域340vを設けて必要最低照度を確保する場合、照明領域340内での最大照度の値を、不要に高くせずに抑えることができる。これにより、照明領域全体における照度の高低差を小さくし、必要最低照度を確保するために必要とされる消費電力を低減することが可能となる。
尚、照明領域340単独で必要最低照度が確保される場合、図8(B)の照明領域340′のように、隣り合う照明領域同士が互いに隣接して配置されてもよい。この場合、重畳領域340vを設けないので、照明領域の大きさ・形状が変わらないとすると、道路50の単位長さ当たりに必要とされるLED照明装置1の数を低減することができる。
いずれにしても、LED照明装置1内の微小レンズ配列部131では、複数の微小レンズ131mの曲率半径R、ピッチP、又は曲率半径R及びピッチPの両方を、レンズ配列面131a内における所定の方向の間で、異なった値に設定し制御している。その結果、LED照明デバイス10の出射光、即ちLED照明装置1の照射光、におけるZX面内での配光角(又はFWHM)と、YZ面内での配光角(又はFWHM)とを独立して、それぞれ個別に制御することができる。従って、道路(又は通路)5の幅方向(X軸方向)における照明領域340の範囲と、道路(又は通路)5の長手方向(Y軸方向)における照明領域340の範囲とが、それぞれ個別に制御可能となる。これにより、路面50の幅方向及び長手方向の両方に関して、路面50に合った照明領域(照明形状)が実現可能となる。
以上、LED照明装置1を用いることによって、路面50に応じて必要となる照度が確保される、無駄のない照明が実現可能となる。
図9は、図8に示した、照射光34の光軸を路面50の法線に対して傾ける実施形態を説明するための概略図、及びLED照明装置1を、とう道内に設置した様子を示す概略図である。
図9(A)は、路面50に対して先端部をもたげるように設置されたLED照明装置1と、道路5との関係を示す概略図である。同図によれば、LED照明装置1は、道路(又は通路)5の脇に立てられたL字状のポールの先端部に、ZX面内において路面50に対して角度θelをなして傾くように取り付けられている。その結果、照射光34の光軸も、ZX面内において路面50の法線に対して角度θelで傾いている。尚、図9(A)の破線で示したように、LED照明装置1を、路面50の幅方向(X軸方向)の中央直上に、路面50に対して平行に設置することも可能である。この場合、照射光34の光軸も、路面50の法線に対して平行となる。
図9(B)は、LED照明装置1を、とう道6内に設置した様子を示す。とう道6は、通信ケーブル・送電ケーブル・ガス管等を収容するためのケーブル(・管)棚61を有し、作業用に人が立ち入れる大きさのトンネル通路である。
図9(B)によれば、LED照明装置1は、とう道6の天井部中央に設置され、照射光35の照明領域350は、床面60、及び少なくともケーブル棚61の位置を含む側面60sの下方部分に及ぶ。即ち、照明領域350は、作業対象であるケーブル棚61のケーブル(・管)を照明できるように設定される。
ここで、照明領域350の照明形状を略長方形状とすると、側面60sにおける照明領域350の上端(境界)は、とう道6の長手方向(Y軸方向)に沿って伸長するケーブル棚61よりも上方にあって、このケーブル棚61と平行して伸長する直線状となる。これにより、ケーブル棚61をこの長手方向(Y軸方向)に沿って全て、しかも無駄なく、照明することが可能となる。
尚、変更態様として、図9(B)の破線で示したように、LED照明装置1を床面60中央部から見て斜め上方に設置し、照射光35の光軸を、床面60の法線に対して傾けることも可能である。
ここで、とう道6の照明における条件として、必要最低照度は、例えば5lxであり、照明領域内の平均照度は、例えば15lx以上であり、照明装置の間隔は、例えば10mである。LED照明装置1を用いて以上に述べた照明を実施することによって、この条件を満たす照明を実施可能であることが、シミュレーション実験によって分かっている。
尚、とう道6内において、LED照明装置1をつり下げることなく、とう道6の天井部に設置することも好ましい。これにより、高さに制限のあるとう道6内において、照明装置の高さを十分にとり、照明領域を広げることが容易となる。さらに、照明装置からの照射光が作業者の目に直接入り作業の妨げになる事態を回避し易くなる。また、とう道6に設置されるLED照明装置1には、停電時に、避難時間として例えば30分間の照明を保証するための2次電池が設けられていることも好ましい。
図10(A)は、図9(A)に示した、路面50の幅W50に照明領域340の幅W340を一致させるための角度θelの設定及びLED照明装置1の位置の設定を説明するための概略図である。ここで、説明を簡潔に行うため、照射光34はLED照明装置1の1点から放射されるものと近似する。尚、以下の説明は、後に説明するLED照明装置7、8、9及び9’による照明にも当てはまる内容である。
図10(A)に示すように、照明領域340の幅W340が、路面50の幅W50に一致しているとする。また、LED照明装置1からの照射光34の照射角をαとし、LED照明装置1(の点光源位置)の路面50からの高さをh1とする。尚、照射角とは、照明領域を形成する照射光を構成する光線が広がっている角度範囲である。
この場合、角度θelは、次式
(3) W50=h1・tan(α/2+θel)+h1・tan(α/2−θel)
を満たす。従って、この式(3)を解くことによって、W340=W50の条件下での角度θelが得られる。
また、上式(3)を解いて得られた角度θelを用いて、LED照明装置1(の点光源位置)の路面50端からの幅方向(X軸方向)での位置l1が、次式
(4) l1=h1・tan(α/2−θel)
を計算することによって得られる。
図10(B)は、照射光36による照明領域360を互いに隣接又一部重畳させながら長手方向に配列させるための照射光の照射角βの設定を説明するための概略図である。ここで、説明を簡潔に行うため、照射光36はLED照明装置1の1点から放射されるものと近似し、さらに、角度θel=0°とする。
図10(B)に示すように、LED照明装置1からの照射光36のYZ面内における照射角をβとし、LED照明装置1(の点光源位置)の路面50からの高さをh1とする。この場合、照明領域360を互いに隣接又一部重畳させる条件は、次式
(5) β≧2・tan−1(D1/(2h1))
で表される。即ち、式(5)を満たす照射角βを有するLED照明装置1を採用することによって、路面50全体を隈無く照明することが可能となる。
いずれにしても、LED照明装置1内の微小レンズ配列部131では、複数の微小レンズ131mの曲率半径R、ピッチP、又は曲率半径R及びピッチPの両方を、レンズ配列面131a内における所定の方向の間で、異なった値に設定し制御している。その結果、LED照明デバイス10の出射光におけるZX面内での配光角(又はFWHM)と、YZ面内での配光角(又はFWHM)とを、さらにはLED照明装置1の照射光のZX面内での照射角とYZ面内での照射角とを、独立してそれぞれ個別に制御することができる。従って、道路(又は通路)5の幅方向(X軸方向)における照明領域360の範囲と、道路(又は通路)5の長手方向(Y軸方向)における照明領域360の範囲とが、それぞれ個別に制御可能となる。これにより、路面50の幅方向及び長手方向の両方に関して、路面50に合った照明領域(照明形状)が実現可能となる。
[LED照明装置7]
図11は、本発明によるLED照明装置の他の実施形態を示す、正面図、断面図及び側面図である。ここで、図11(B)は、図11(A)のB−B面による断面を示す。
図11(A)〜(C)によれば、LED照明装置7は、筐体71と、筐体71の設置面上に2列に配置された複数のLED照明デバイス10と、これらLED照明デバイス10を覆うように、取り付けネジ74を用いて筐体71の上部に取り付けられたカバー72と、各LED照明デバイス10に電力を供給するための電源線73とを備えている。
筐体71は、装置7の長手方向(x軸方向)に伸長していて互いに角度θ71をなすように傾斜した第1設置面710及び第2設置面711を有している。このうち、第1設置面710に一列をなして設置された複数のLED照明デバイス10が第1群10fをなし、第2設置面711に一列をなして設置された複数のLED照明デバイス10が第2群10sをなす。従って、第1群10fに属するLED照明デバイス10と、第2群10sに属するLED照明デバイス10とは、互いの出射面が角度θ71をなすように配置されている。
これら第1群10fの光軸X10fと第2群10sの光軸X10sとは、yz面内において、角度
(6) θ7x=π−θ71 (単位はラジアン)
をなして互いから傾いている。尚、本実施形態において、θ71はπ(180°)未満である(従って、θ7x>0)。
尚、第1群10f(第2群10s)の光軸は、第1群10f(第2群10s)に属する各LED照明デバイス10からの出射光の光軸方向の軸であって、第1群10f(第2群10s)に属するこれらLED照明デバイス10の出射面全体の領域の中心を貫く軸と定義される。
ここで、光軸のなす角度θ7xは、後に詳述するように、第1群10fからの照射光による照明形状と第2群10sからの照射光による照明形状とが互いに隣接又は一部重畳しながら並ぶことによって装置7からの照射光による照明形状を形成する、ように調整される。
筐体71は、アルミダイキャスト、若しくはステンレス鋼等の金属材料、又はポリカーボネート、PET、若しくはアクリル等を含む非透過性のプラスチック材料で形成されており不透明である。筐体71は、板金加工によって形成されていてもよい。カバー72は、強化ガラス等のガラス材料、又はポリカーボネート、PET、若しくはアクリル等を含む透過性のプラスチック材料等の透明材料で形成されている。
また、第1群10f及び第2群10sのそれぞれにおいて、複数のLED照明デバイス10の基台11は、互いに接触し連なって、又は所定の間隔をもって直線的に配置されている。変更態様として、これら複数の基台11を1つの回路基板に統合し、この回路基板上に、複数のLED光源12と、複数の均一化光学体13とを設置して、第1群10f及び第2群10sのそれぞれを構成する複数のLED照明デバイス10としてもよい。
さらに、他の実施形態として、第1群10fの複数のLED照明デバイス10と、第2群10sの複数のLED照明デバイス10とが、交互に配置されて、又は混在して、1つの列をなしていてもよい。交互に配置された場合、列をなすLED照明デバイス10毎に、光軸X10fと光軸X10sとが入れ替わる。また、更なる他の実施形態として、第1群10fの複数のLED照明デバイス10と、第2群10sの複数のLED照明デバイス10とが、互いの前後に連なって1つの列をなしていてもよい。
尚、LED照明デバイス10の均一化光学体13、特に微小レンズ配列部131は、以上に説明した種々の実施形態(実施例1〜3)のいずれをも採用可能であり、均一化の促進された、さらには照度及び照明形状が制御された出射光を放射可能である。
[LED照明装置8]
図12は、本発明によるLED照明装置の更なる他の実施形態を示す、正面図及び断面図である。ここで、図12(B)は、図12(A)のC−C面による断面を示す。
図12(A)及び(B)によれば、LED照明装置8は、筐体81と、筐体81の設置面上に並列して配置された4本のLED照明デバイス体100、101、102及び103と、これらLED照明デバイス体100〜103を覆うように、取り付けネジ84を用いて筐体81の上部に取り付けられたカバー82と、各LED照明デバイス10に電力を供給するための電源線83とを備えている。
各LED照明デバイス体100〜103は、LED照明デバイス10の基台11が統合したものに対応する1つの回路基板を用い、この回路基板上に、複数のLED光源12と、複数の均一化光学体13とを設置したものである。従って、LED照明デバイス体100〜103は、それぞれ複数のLED照明デバイス10からなる第1群〜第4群に相当することになる。
ここで、LED照明デバイス体100〜103から放射される照射光の光軸X100、X101、X102及びX103は、それぞれz軸に対して角度θ100、θ101、θ102及びθ103をなす。筐体81の設置面の設置角度は、設置されたLED照明デバイス体100〜103の光軸の角度が以下の関係
(7) θ100(>0)=−θ103>θ101(>0)=−θ102
を有するように設計される。
これらの角度θ100〜θ103を調整することによって、LED照明装置8全体から放射される照射光の照射角を、相当に広い範囲内で任意に設定することができ、さらに、設定された照射角範囲内に十分に高い照度の照射光を供給可能となる。また、これにより、装置8の照明領域全体における照度の高低差を小さくし、必要最低照度を確保するために必要とされる消費電力を低減することも可能となる。尚、これらの角度θ100〜θ103は、LED照明デバイス体100〜103それぞれからの照射光による照明形状が互いに隣接又一部重畳しながら並ぶように調整されることも好ましい。
尚、外側に配置されたLED照明デバイス体100及び103が、内側のLED照明デバイス体101及び102に比べて、より配光角の小さい出射光を放射することも好ましい。このようなLED照明装置8を、例えば道路又はとう道の照明に用いた場合、照度が低下しがちな照明装置間の中央領域を、LED照明デバイス体100及び103からの出射光で照明して照度を補うことができる。これにより、道路又はとう道の長手方向における照度分布をより均一化することが可能となる。
また、LED照明デバイス10の均一化光学体13、特に微小レンズ配列部131は、以上に説明した種々の実施形態(実施例1〜3)のいずれをも採用可能であり、均一化の促進された、さらには照度及び照明形状が制御された出射光を放射可能である。ここで、上述した装置8のような複数のLED照明デバイス列が並列したLED照明装置においては、略長方形状又は略正方形状の出射光を合わせて、略長方形状のみならず、略正方形状の照射光を形成することも可能となる。
[LED照明装置9]
図13は、本発明によるLED照明装置の更なる他の実施形態を示す、正面図及び断面図である。ここで、図13(B)は、図13(A)のD−D面による断面を示す。また、図13(C)は、図13(B)の変更態様における断面を示す。さらに、図13(D)は、図13(A)のE−E面による断面を示す。
図13(A)及び(B)によれば、LED照明装置9は、筐体91と、筐体91の設置面上に設置された、それぞれが複数の基台11の役割を果たす2つの回路基板110と、各回路基板110上に所定の間隔で一列に並べて設置された複数のLED光源12と、これら2列のLED光源12を覆うように、2つの回路基板110上に設置された均一化光学集合体13Aと、均一化光学集合体13Aを覆うように、取り付けネジ94を用いて筐体91の上部に取り付けられたカバー92と、各LED照明デバイス10に電力を供給するための電源線93とを備えている。
均一化光学集合体13Aは、2列に並んだ複数の均一化光学体13を、列間で角度θ13Aをなすように、1つに統合した光学体である。従って、均一化光学集合体13Aと複数のLED光源12と2つの回路基板110とは、それぞれ一列に並んだ複数のLED照明デバイス10からなる第1群及び第2群に相当することになる。
ここで、LED照明装置9から放射される照射光は、第1群(第1列)のLED照明デバイス10から放射される第1照射光と、第2群(第2列)のLED照明デバイス10から放射される第2照射光とに分けられる。第1照射光の光軸X13A1と第2照射光の光軸X13A2とは、yz面内において、角度
(8) θ9xA=π−θ13A (単位はラジアン)
をなして互いから傾いている。尚、本実施形態において、θ13Aはπ(180°)未満である(従って、θ9xA>0)。
尚、光軸のなす角度θ9xAは、後に詳述するように、第1照射光による照明形状と第2照射光による照明形状とが互いに隣接又は一部重畳しながら並ぶことによって装置9からの照射光による照明形状を形成する、ように調整される。
図13(C)に、図13(B)の均一化光学集合体(及び筐体)における変更態様を示す。図13(C)によれば、筐体91Bの設置面上に2つの回路基板110が設置され、各回路基板110上に、複数のLED光源12が所定の間隔で一列に並べて設置されている。さらに、均一化光学集合体13Bが、2列のLED光源12を覆うように、回路基板110上に設置されている。
この均一化光学集合体13Bは、2列に並んだ複数の均一化光学体13を、列間で角度θ13Bをなすように、1つに統合した光学体である。従って、均一化光学集合体13Bと複数のLED光源12と2つの回路基板110とは、それぞれ一列に並んだ複数のLED照明デバイス10からなる第1群及び第2群に相当することになる。
ここで、装置全体から放射される照射光は、第1群(第1列)のLED照明デバイス10から放射される第1照射光と、第2群(第2列)のLED照明デバイス10から放射される第2照射光とに分けられる。第1照射光の光軸X13B1と第2照射光の光軸X13B2とは、yz面内において、角度
(9) θ9xB=θ13B−π (単位はラジアン)
をなして互いから傾いている。尚、本実施形態において、θ13Bはπ(180°)を超える値である(従って、θ9xB>0)。
第1照射光と第2照射光とは、均一化光学集合体13Bから出射した後、互いに光軸を交差させて(相互に重畳しながら)伝播し、その後、互いから離れていくように放射される。尚、光軸のなす角度θ9xBは、後に詳述するように、第1照射光による照明形状と第2照射光による照明形状とが互いに隣接又は一部重畳しながら並ぶことによって装置全体からの照射光による照明形状を形成する、ように調整される。
図13(D)に、図13(B)のE−E面(図13(C)のF−F面)による断面を示す。図13(D)によれば、複数の基台11の役割を果たす回路基板110が、筐体91(91B)に設けられ、複数のLED光源12が、この回路基板110上に所定の間隔で設置されている。また、均一化光学集合体13A(13B)が、設置された複数のLED光源12を覆うように、回路基板110上に設置されている。さらに、カバー92(92B)が、均一化光学集合体13A(13B)を覆っている。
このように、カバー92は、均一化光学集合体13A及び13Bを保護するものであるが、このカバ−92の表面に、フッ素樹脂等を含む撥水性若しくは撥油性コート剤、又はセルフクリーニング機能を有する親水性コート剤等を塗布してコート膜を形成し、LED照明装置9(カバ−92)の表面を保護することも好ましい。ここで、セルフクリーニング機能とは、大気中のチリ、ほこり、油脂、汚染物質等がコート膜上に付着しても、その後の降雨等の流水によってこの付着物が洗い流される機能をいう。
以上説明したように、回路基板110と、複数のLED光源12と、均一化光学集合体13Aとを用いることによって、単に複数のLED照明デバイス10を連結するのに比較して、より容易に且つより精度良く、複数のLED照明デバイス10に相当する第1群(第2群)を構成することができる。
[LED照明装置9’]
図14は、本発明によるLED照明装置の更なる他の実施形態を示す、正面図及び断面図である。ここで、図14(B)は、図14(A)のF−F面による断面を示す。また、図14(C)は、図14(A)のG−G面による断面を示す。
図14(A)及び(B)によれば、LED照明装置9’は、筐体91’と、筐体91’の設置面上に設置された、4つの放熱部19と、4つの放熱部19上にそれぞれ設けられた、それぞれが複数の基台11の役割を果たす4つの回路基板110と、各回路基板110上に所定の間隔で一列に並べて設置された複数のLED光源12と、これらLED光源12の2列ずつをそれぞれが覆うように回路基板110上に設置された、2つの均一化光学集合体13Cと、各LED照明デバイス10に電力を供給するための電源線94’とを備えている。
2つの均一化光学集合体13Cと、複数のLED光源12と、4つの回路基板110とは、それぞれ一列に並んだ複数のLED照明デバイス10からなる第1群〜第4群に相当することになる。
ここで、2つの均一化光学集合体13Cから放射される照射光の光軸X13C1、X13C2、X13C3及びX13C4は、それぞれz軸に対して角度θ13C1、θ13C2、θ13c3及びθ13C4をなす。筐体91’の設置面は、設置された回路基板110(均一化光学集合体13C)におけるこれら光軸の角度が以下の関係、
(10) θ13C1(>0)=−θ13C4>θ13C2(>0)=−θ13c3
を有するように設計される。
これらの角度θ13C1〜θ13C4を調整することによって、LED照明装置9’全体から放射される照射光の照射角を、相当に広い範囲内で任意に設定することができ、さらに、設定された照射角範囲内に十分に高い照度の照射光を供給可能となる。尚、これらの角度θ13C1〜θ13C4は、2つの均一化光学集合体13Cからの照射光による照明形状が互いに隣接又一部重畳しながら並ぶように調整されることも好ましい。
尚、2つの均一化光学集合体13Cを統合して、1つの均一化光学集合体とすることも可能である。いずれにしても、図13に示したものを含めて均一化光学集合体13A〜13Cを形成する方法として、所定の金型に、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、環状オレフィン樹脂、光学用シリコ−ン樹脂、光学用特殊ポリエステル樹脂、若しくは高密度ポリエチレン樹脂等の光学的に透明な樹脂、又は透明光学ガラス、若しくは蛍光ガラス等を注入して硬化させる方法が採用可能である。これにより、均一化光学集合体13A〜13Cを、安定的に量産化することができ、安価に製造可能となる。また、デバイス組み立て時の部品点数が低減され、一体化した均一化光学集合体を基台11又は回路基板110に取り付けるだけで、LED照明装置の光学系が完成する。
また、2つの均一化光学集合体13Cは、シール部材940’及び941’と、シール部材940’及び941’をそれぞれ抑える抑え枠920’及び921’とによって周囲をシールされている。ここで、抑え枠920’及び921’はそれぞれ、取り付けネジ930’及び931’に締め付けられることによって、シール部材940’及び941’を均一化光学集合体13Cに押し付ける。これにより、LED照明装置9’の気密性・防塵性、及び防水性・防湿性が確保される。
また、筐体91’は、アルミダイキャスト、若しくはステンレス鋼等の金属材料、又はポリカーボネート、PET、若しくはアクリル等を含む非透過性のプラスチック材料で形成されており不透明である。筐体91’は、板金加工によって形成されていてもよい。放熱部19は、アルミニウム若しくは銅等の金属材料で形成された板状物、又はシリコーン系、アクリル系、グラファイト系若しくは無機物系等の熱伝導シート(又はその積層体)であることが好ましい。
図14(C)に、図14(B)のH−H面による断面を示す。図14(C)によれば、放熱部19が筐体91’上に設けられ、複数の基台11の役割を果たす回路基板110が放熱部19上に設けられ、複数のLED光源12が、この回路基板110上に所定の間隔で設置されている。また、均一化光学集合体13Cが、設置された複数のLED光源12を覆うように、回路基板110上に設置されている。
このように、2つの均一化光学集合体13Cは、LED照明装置9’におけるカバーの役割をも果たす。このため、均一化光学集合体13Cの表面に、フッ素樹脂等を含む撥水性若しくは撥油性コート剤、又はセルフクリーニング機能を有する親水性コート剤等を塗布してコート膜を形成し、均一化光学集合体13Cの表面を保護することも好ましい。
以上説明したように、回路基板110と、複数のLED光源12と、均一化光学集合体13Cとを用いることによって、単に複数のLED照明デバイス10を連結するのに比較して、より容易に且つより精度良く、第1群〜第4群をなす複数のLED照明デバイス10を構成することができる。また、均一化光学集合体13Cが装置9’のカバーの役割も果たすため、新たにカバーを設ける必要がなく、製造が更に容易になる。
また、図11〜14で説明したLED照明装置7、8、9及び9’は、複数のLED照明デバイス10からなる複数の群を備え、各群からの照射光は、互いに隣接又は一部重畳するように設定されている。その結果、十分に高い照度と、十分に大きな照射角と、制御された照明形状とを有する照射光を実現することができる。このような照射光は、後に説明するように、道路又は通路の路面又は床面の照明に好適である。さらには、高さに制限が有りながら、非常に長い距離にわたって照明を行う必要があるとう道のような照明対象にも非常に適している。
尚、LED照明装置7、8、9及び9’それぞれにおける複数のLED照明デバイス10がなす列の配置・数は、上述したものに限定されるものではない。例えば、LED照明装置7(図11)は、第1及び第2設置面710及び711の各々に、2列又は3列以上のLED照明デバイス10を備えることも可能である。また、LED照明装置9’(図14)は、互いに光軸の向きの異なる、LED照明デバイス10からなる5つ以上の群(列)を備えていてもよい。
[LED照明装置7による道路・通路又はとう道の照明]
図15は、道路(若しくは通路)5又はとう道6の長手方向における照明装置7の設置に係る実施形態を説明するための概略図である。尚、本実施形態においても、LED照明装置7のLED照明デバイス10は、例えば、実施例1又は実施例3と同様の形態を採用したものであり、LED照明装置7の照明領域380は略長方形状(又は略正方形状)となるように設定されている。
図15(A)は、道路(又は通路)5の長手方向における照明装置7の設置の様子を示す。同図によれば、LED照明装置7は、道路5の長手方向において間隔D7をもって配列している。ここで、LED照明装置7は、図9(A)に示すLED照明装置1と同様に、ZX面内で角度θelをもって傾いている。また、LED照明装置7内のLED照明デバイス10の配列方向(LED照明装置7の長手方向)も、ZX面内となっている。
LED照明装置7から放射される照射光38は、第1群10fから放射される照射光38aと、第2群10sから放射される照射光38bとが隣接又は一部重畳して形成されている。図15(A)に示すように、照射光38aの照明領域と照射光38bの照明領域とを合わせた領域を照射光38の照明領域とすると、照射光38のYZ面内における照射角γは、照射光38a及び照射光38bのYZ面内における照射角をβとすると、
(11) β<γ≦2β
の条件を満たし、LED照明装置7全体から放射される照射光38の照射角γを、相当に広い範囲内で任意に設定することができ、さらに、設定された照射角範囲内に十分に高い照度の照射光を提供可能となる。
また、形成された照明領域380内で最も照度の低い、路面50長手方向(Y軸方向)での端部は、隣り合う照明領域380の端部と重畳し、重畳領域380vを形成している。その結果、例え照明領域380単独では同領域内に必要最低照度が確保されない区域が存在するとしても、重畳領域380vでこの必要最低照度を確保できるように調整することによって、路面50上全体で必要な照度を確保可能となる。
尚、隣り合うLED照明装置7間の長手方向における中央領域は照度が不足しがちとなる。これに対処するため、LED照明装置7の第1群10f及び第2群10sの各々において、配光角のより小さい(長焦点距離の)LED照明デバイス10を混在させることも好ましい。これにより、当該中央領域に照度を補い、道路5の長手方向における照度分布をより均一化することが可能となる。また、照明領域380単独で必要照度が確保される場合、隣り合う照明領域同士が互いに隣接して配置されてもよい。
図15(B)は、とう道6の長手方向におけるLED照明装置7の設置の様子を示す。同図によれば、LED照明装置7は、とう道6の長手方向において間隔D7’をもって配列している。また、LED照明装置7内のLED照明デバイス10の配列方向は、とう道6の幅方向(X軸方向)である。
さらに、LED照明装置7から放射される照射光39の照射角γ’は、図15(A)の照射角γと同様に、十分に大きい値に設定可能となる。また、照明領域390内で最も照度が低い、床面60の長手方向(Y軸方向)での端部は、隣り合う照明領域390の端部と重畳し、重畳領域390vを形成している。この結果、照射光39は、高さに制限が有るとう道6における床面60及びケーブル棚61を含む側面を、とう道6の長手方向の非常に長い距離にわたって必要な照度を確保しつつ、しかも無駄なく、照明することが可能となる。
尚、とう道6においても、隣り合うLED照明装置7間の長手方向における中央領域は照度が不足しがちとなる。これに対処するため、LED照明装置7の第1群10f及び第2群10sの各々において、配光角のより小さい(長焦点距離の)LED照明デバイス10を混在させることも好ましい。これにより、当該中央領域に照度を補い、とう道6の長手方向における照度分布をより均一化することが可能となる。
以上、図15(A)及び(B)で説明した照明方法は、LED照明装置7の使用を前提にして説明されたが、当然これに限定されるものではなく、LED照明装置8、9又は9’を使用しても、十分大きな照射角と十分に高い照度とを有する照射光を、照明形状を制御しつつ、路面50又は床面60に照射することができる。これにより、道路(通路)5及びとう道6の照明対象に応じて必要となる照度が確保される無駄のない、且つ色ムラが抑制された照明が実現可能となる。特に、LED照明装置8又は9’を使用することによって、照射光の照射角をより大きく設定可能となる。その結果、道路(通路)5又はとう道6の長手方向における装置の設置間隔をより広げることができ、さらに厳しい高さ制限のある区間でも必要な照度を確保しつつ照明が可能になる。
また、特に、とう道6では、天井の高さが例えば2.4m程度であることも少なくない。この場合、とう道6内での照明装置の高さと作業者の目の高さとは、それほど大きな差を有しない。その結果、従来の照明装置では、照明装置からの強い光が作業者の目に直接入り、非常に眩しく、作業に支障を来す懸念があった。これに対して、上述したように、第1群10f及び第2群10sの各々に配光角のより小さいLED照明デバイス10を混在させたLED照明装置7を用いることによって、この問題が解消される。即ち、隣り合うLED照明装置7間の中央領域には配光角の小さな長焦点距離のLED照明デバイス10を用いるので、作業者の目にはほとんど光線が入射せず眩しさが低減される。また、LED照明装置7の直下の近傍でも、配光角の大きな分散した照射光が得られるので、眩しさが低減される。
ここで、図15(C)を用いて、図15(A)において照射光38a及び照射光38bから照射光38が形成される条件を示す。尚、以下の計算は、照射光38a及び照射光38bが同一の点光源から放射されるものとした近似計算であることに留意すべきである。
図15(C)に示すように、照射光38a及び照射光38bそれぞれの照射角をβとし、筐体71の第1設置面710と第2設置面711(図11)とがなす角度をθ71とする。この際、照射光38a及び照射光38bそれぞれの光軸X10f及びX10sが互いになす角度θ7xは、式(6):θ7x=π−θ71となる。
従って、照射光38a及び38bの重畳領域380abを形成する光線のYZ面内での角度をθ380abとすると、
(12) θ380ab=2・(β/2−(π−θ71)/2)
=β+θ71−π
となる。ここで、照射光38a及び照射光38bが互いに隣接又は一部重畳する条件は、θ380ab≧0であるから、結局、
(13) β≧π−θ71
となる。即ち、照射光38a及び照射光38bそれぞれの照射角βを、式(13)を満たす値に設定することによって、十分に大きな照射角γ
(14) γ=2β−θ380ab
=β+π−θ71
を有する照射光38を実現することが可能となる。
いずれにしても、LED照明装置7内の微小レンズ配列部131では、複数の微小レンズ131mの曲率半径R、ピッチP、又は曲率半径R及びピッチPの両方を、レンズ配列面131a内における所定の方向の間で、異なった値に設定し制御している。その結果、LED照明デバイス10の出射光におけるZX面内での配光角(又はFWHM)と、YZ面内での配光角(又はFWHM)とを、さらにはLED照明装置7の照射光におけるZX面内での照射角とYZ面内での照射角とを、独立してそれぞれ個別に制御することができる。従って、道路5又はとう道6の幅方向(X軸方向)における照明領域380(390)の範囲と、道路5又はとう道6の長手方向(Y軸方向)における照明領域380(390)の範囲とが、それぞれ個別に制御可能となる。これにより、路面50又は床面60の幅方向及び長手方向の両方に関して、路面50又は床面60に合った照明領域(照明形状)が実現可能となる。
図16は、とう道6の長手方向における照明方法に係る他の実施形態を説明するための概略図である。尚、本実施形態においても、設置されるLED照明装置のLED照明デバイス10は、例えば、実施例1又は3と同様の形態を採用したものであり、LED照明装置7の照明領域400は、略長方形状(又は略正方形状)となるように設定されている。
図16(A)は、とう道6の長手方向(Y軸方向)におけるLED照明装置7の設置の様子を示す。同図によれば、2つのLED照明装置7の群が、とう道6の長手方向において間隔D77をもって配列している。ここで、群をなす2つのLED照明装置7のそれぞれは、YZ面内で床面60に対して角度θ77をもって先端部をもたげるように設置されている。従って、各LED照明装置7を構成する複数のLED照明デバイス10は、YZ面内で配列している。
また、各LED照明装置7内の複数のLED照明デバイス10の出射面は、YZ面内において床面60に対して角度θ77をなす。その結果、LED照明デバイス10の第1群10f(第2群10s)からの照射光の光軸は、YZ面内において床面60の法線に対して角度θ77だけ傾く。
さらに、2つのLED照明装置7の群全体から放射される照射光40は、LED照明装置7のそれぞれから放射された照射光同士が隣接又は一部重畳して形成されている。その結果、照射光40は、十分に大きな照射角を有することができ、また、照明領域400内に十分に高い照度の照射光を提供可能となる。
また、照射光40によって形成された照明領域400内で最も照度が低い、床面60の長手方向(Y軸方向)での端部は、隣り合う照明領域400の端部と重畳し、重畳領域400vを形成している。その結果、例え照明領域400単独では同領域内に必要最低照度が確保されない区域が存在するとしても、重畳領域400vで必要な照度を確保できるように調整することによって、床面60上で必要な照度を確保可能となる。尚、照明領域400単独で必要照度が確保される場合、隣り合う照明領域400同士が互いに隣接して配置されてもよい。
ここで、照明領域400は、とう道6の床面60と、ケーブル棚61の位置を含む側面の下方部分とに及ぶ。この照明領域400の照明形状を略長方形状とすることによって、とう道6の長手方向(Y軸方向)に沿って伸長するケーブル棚61を全て、しかも無駄なく、照明することが可能となる。
図16(B)は、とう道6の長手方向(Y軸方向)におけるLED照明装置95を用いた照明方法を示す。同図によれば、複数のLED照明デバイス10が、LED照明装置95内において、とう道6の長手方向に配列している。これらLED照明デバイス10から放射される出射光の光軸X950〜X954は、YZ面内において、床面60に向かうにつれて互いに離隔(発散)する方向に伸長している。その結果、LED照明装置95からの照射光41は、十分に大きな照射角を有することができ、また、照明領域410に十分に高い照度の照射光を提供可能となる。
尚、とう道6の長手方向に配列した複数のLED照明デバイス10における、光軸X950〜X954の向きの分布は、図16(B)に示した形態に限定されるものではない。また、1列に配列したこれらLED照明デバイス10の数も同図に示した形態(5つ)に限定されるものではない。例えば、YZ面内において第1の向きを有する光軸を備えたLED照明デバイス10と、第2の向きの光軸を備えたLED照明デバイス10とが交互に並び、1つの列をなして配置されていてもよい。
図16(C)は、とう道6の長手方向(Y軸方向)におけるLED照明装置96を用いた照明方法を示す。同図によれば、LED照明装置96内において、複数のLED照明デバイス10が、とう道6の長手方向に1つの列をなしている。これらLED照明デバイス10のうち、照射光42による照明領域420の長手方向の端部又は端部付近を担う出射光を放射するLED照明デバイス10a及び10cは、照明領域420の中央部又は中央部付近を担う出射光を放射するLED照明デバイス10bよりも、配光角のより小さい出射光を放射するように設定されている。
ここで、一般に、配光角のより小さい出射光は、光源から一定の距離にある照明領域においてより高い照度をもたらす。即ち、光の分散の程度が小さく、より遠方においても高い照度での照明が可能となる。従って、照明光42による照明領域420において、長手方向(Y軸方向)の端部においても十分高い照度を実現することができる。これにより、照明領域全体における照度の高低差を小さくし、必要最低照度を確保するために必要とされる消費電力を低減することが可能となる。
また、LED照明デバイス10a〜10cそれぞれからの出射光のZX面内における配光角は、互いに等しいことが好ましい。これにより、これらの出射光の照明領域におけるとう道6の幅方向(X軸方向)における幅を同一とし、ケーブル棚61を含むとう道6の側面を、長手方向(Y軸方向)に沿って一定の高さで確実に照明することが可能となる。尚、とう道6の内部空間の断面が概ね円形である場合、これらの出射光の照明領域の(X軸方向での)幅は、この円形の直径程度とすることが可能である。
さらに、他の実施形態として、図16(A)〜(C)において、各LED照明デバイス10毎に出射光の出力を変化させることも可能である。例えば、照射光がなす照明形状の長手方向の端部又は端部付近を担う出射光を放射するLED照明デバイスの出力(投入電力)は、この照明形状の中央部又は中央部付近を担う出射光を放射するLED照明デバイスの出力(投入電力)よりも高くすることも好ましい。これにより、照明領域全体における照度の高低差を小さくすることができる。
以上、図8、9、10、15及び16に示した照明方法の実施形態では、道路(若しくは通路)5又はとう道6を照明対象としているが、照明対象はこれに限定されるものではない。本発明の照明方法は、一定の又は所定の範囲内の幅をもって所定の距離に伸長した領域の照明にも適用することができる。
さらに、図8、9、10、15及び16に示した照明方法の実施形態において、照明領域の照明形状は、略長方形状又は略正方形状である。しかしながら、必ずしもこれらに限定されるものではなく、例えば、図6(B)に示したような、略楕円形状又は略円形状が互いに一部重畳しながら配列して形成された長手方向(X軸方向)の両端辺が湾曲した長方形状であってもよい。ここで、十分な数の略楕円形状(略円形状)を重畳させることによって、この両端辺が湾曲した長方形状を略長方形状とすることができる。ただし、略長方形状又は正方形状の出射光を合わせた方が、より長方形状(正方形状)に近い照射光を実現可能とし、長方形状の照明対象により適した無駄のない照明を行うことができる。
[とう道照明の実施例:LED照明装置97]
図17は、本発明の照明方法によってとう道を照明した実施例に用いたLED照明装置を示す、上面図(図17(A))、正面図(図17(B))、底面図(図17(C))、及び断面図(図17(D1)〜(D3))である。ここで、図17(D1)は、図17(B)のH−H面による断面を示し、図17(D2)は、図17(B)のI−I面による断面を示し、図17(D3)は、図17(B)のJ−J面及びK−K面による断面を示す。
図17(A)〜(C)によれば、LED照明装置97は、アルミダイキャスト製(又は板金製)の筐体970と、取り付け支持体973と、筐体970及び取り付け支持体973に取り付けられた複数の角度設定ホルダ972A、972B及び972Cと、角度設定ホルダ972A、972B及び972Cにそれぞれ取り付けられたLED照明デバイス10A、11B及び11Cと、マザー回路基板974と、AC/DC変換器976と、2次電池971と、光学的に透明なプラスチック製のカバー975とを備えている。
2次電池971は、非常用電源であり、災害・事故等によって外部からの交流電力の供給が停止した際、マザー回路基板974に設けられた制御回路が、電力供給源を自動的に2次電池971に切り替える。尚、図17(A)において、2次電池971は、外付けされているが、971’として示すように筐体970内部に設置されることも可能である。また、AC/DC変換器976は、筐体970内部に設置されており、ケーブル977及び防水コネクタを介して取り入れた交流(100V又は200V)を直流(例えば12V)に変換する。
カバー975は、筐体内部の防水のために、(図示されていないが)筐体970に設けられた溝に装着されたOリングに押し付けられて密着する形で、筐体970に取り付けられている。カバー975の面の向きは、出射光の反射を抑制するため、LED照明デバイス10A、10B及び10Cの光軸とできるだけ垂直になるように調整される。
LED照明デバイス10Aは4個、LED照明デバイス10B及び10Cはそれぞれ8個設けられており、10C、10C、10B、10B、10A、10A、10B、10B、10C及び10Cの順に並んだ列を2列構成する。ここで、LED照明デバイス10Aと、LED照明デバイス10B及び10Cとは、後述するように互いに異なった光学特性を有している。
LED照明デバイス10A、10B及び10Cは、それぞれ複数の基台11の役割を果たす回路基板(又は回路シート)110A、110B及び110Cを備え、それぞれ角度設定ホルダ972A、972B及び972Cに設置されている。回路基板110A、110B及び110Cは、マザー回路基板974から取り付け支持体973内を通る配線を介して、制御された電力を供給される。
尚、2つのLED照明デバイス10A(10B又は10C)の均一化光学体13を一体に形成した均一化光学集合体を使用し、これを角度設定ホルダ972A(972B又は973C)に設置することも可能である。
角度設定ホルダ972A、972B及び972Cは、LED照明デバイスの設置角を自由に設定可能とする機構を有する。本実施例では、図17(D1)〜(D3)に示すように、LED照明デバイス10A、10B及び10Cの光軸X10A、X10B及びX10C(X10C’)がz軸に対してなす角度θ10A、θ10B及びθ10Cは、
θ10A=50°(度)
θ10B=62.5°
θ10C=79.5°
に設定されている。
さらに、図17(C)に示すように、角度設定ホルダ972Cは、更に片辺を持ち上げるように傾いており、LED照明デバイス10Cの光軸X10C(X10C’)がy軸に対してなす角度θSIDEは、
θSIDE=9°
に設定されている。ここで、8個のLED照明デバイス10Cの光軸X10C(X10C’)はいずれも、装置の外側に、即ち装置中央のLED照明デバイス10Aから離れる向きに伸長している。
また、取り付け支持体973の下端に、4個のLED光源12Aが設けられている。LED光源12Aの光軸X12Aは、z軸方向に伸長しており、LED光源12Aは、装置直下の領域を照明する。また、これらLED光源12Aの回路基板(又は回路シート)110Dは、マザー回路基板974から取り付け支持体973内を通る配線を介して、制御された電力を供給される。
尚、LED照明装置97では、照明領域に関して役割の異なるこれら計20個のLED照明デバイス10A、10B及び10Cが、z軸に関して同じ高さの位置に2列を構成して含まれている。その結果、z軸方向の装置の厚みがより小さくなり、装置が小型化している。
図18は、LED照明装置97におけるLED照明デバイス10A、10B及び10Cの配向を示す概略図、並びにLED照明デバイス10A、10B及び10Cの光軸の方向を示す概略図である。
図18(A)によれば、10C、10C、10B、10B、10A、10A、10B、10B、10C及び10Cの順に並んだLED照明デバイス10A、10B及び10Cからなる1つの列の中で、光軸X10C、X10B及びX10Aの方向も、以下に示すように順次変化していることが分かる。
(イ)LED照明デバイス10C:θ10C=79.5°、θSIDE=9°(−x向き)
(ロ)LED照明デバイス10B:θ10B=62.5°
(ハ)LED照明デバイス10A:θ10A=50°
(ニ)LED照明デバイス10C:θ10C=79.5°、θSIDE=9°(+x向き)
図18(B)に本実施例の照明対象であるとう道6の天井に、LED照明装置97を設置した態様を示す。同図では、とう道6内部のサイズと、LED照明デバイス10A、10B及び10Cの光軸の方向とが示されている。
図18(B)に示すように、複数のLED照明装置97は、とう道6の天井に、長手方向(Y軸方向)において互いに10mの間隔をもって、幅方向(X軸方向)における中央に設置されている。この際、LED照明装置97の長手方向(x軸方向)は、とう道6の幅方向(X軸方向)に設定されている。また、とう道6内の高さは、2.4mである。尚、LED照明装置97は、天井から吊り下げられることも可能である。
LED照明装置97の照射光は、LED照明デバイス10A、10B及び10Cそれぞれから放射される出射光と、LED光源12Aからの放射光とからなる。このうち、LED光源12Aからの放射光の光軸X12Aは、LED照明装置97から伸長して、LED照明装置97直下の地点P97に達する。
また、LED照明デバイス10Aからの出射光の光軸X10Aは、LED照明装置97から伸長して、とう道6の床面60における長手方向(Y軸方向)での装置間の中点PMIDと、LED照明装置97直下の地点P97との間の位置に達する。さらに、LED照明デバイス10Bからの出射光の光軸X10Bは、LED照明装置97から伸長して、装置間の中点PMIDを超えた地点に達する。
さらにまた、LED照明デバイス10Cからの出射光の光軸X10Cは、LED照明装置97から、隣のLED照明装置97直下の地点P97をも超えて伸長する。ここで、LED照明デバイス10Cの光軸X10C及びX10C’は、上述したように角度θSIDE=9°をもってそれぞれ−x向き及び+x向きに傾いており、それぞれとう道6の一方の側面60s及び他方の側面60sに向けられている。
即ち、以上をまとめると、
a)LED光源12Aは、装置直下の地点P97を中心に照明する。
b)LED照明デバイス10Aは、装置直下の地点P97と装置間の中点PMIDとの間の領域を中心に照明する。
c)LED照明デバイス10Bは、装置間の中点PMIDから向こう側の領域を中心に照明する。
d)LED照明デバイス10Cは、とう道6の両側面60sを中心に照明する。
[とう道照明の実施例:LED照明デバイス10A、10B及び10Cの光学特性]
図19は、LED照明デバイス10A、10B及び10Cから放射される出射光の特性を示すグラフである。この出射光による照射実験は、光学シミュレーションによって行われている。
最初に、LED照明デバイス10B及び10Cについて説明する。これらデバイスの微小レンズ131mは、長方形配列している。曲率半径Rx’及びRy’は共に1.0mmであって等しい。また、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’はそれぞれ、1.7mm及び0.6mmであり、ピッチPが異方性を有する。即ち、LED照明デバイス10B及び10Cの微小レンズ131mは、ピッチPが異なる異方性微小レンズである。尚、x’軸及びy’軸は、図1(A)〜(D)に示した座標系に準拠している。
図19(A1)に、LED照明デバイス10B及び10Cからの出射光の光度分布を示す。ここで、同図によれば、光度分布は、x’軸方向とy’軸方向とでそれぞれ異なったガウス分布となる。半値全角Fx’及びFy’もそれぞれ34.0°及び19.3°であり、異なった値となる。
図19(A2)に、LED照明デバイス10B及び10Cからの出射光のx’y’面内での照度分布を示し、さらに、図19(A3)に、LED照明デバイス10B及び10Cからの出射光のx’軸方向及びy’軸方向での照度分布を示す。ここで、両図における照度分布は、微小レンズ配列部131から光軸に沿って2.4m(とう道の高さに相当)の位置にある(光軸に垂直な)平面上での分布である。
図19(A2)に示すように、LED照明デバイス10B及び10Cでは、ピッチPが異なる異方性微小レンズを用いているので、出射光の照明形状は、x’軸方向の長辺を有する略長方形状に制御されている。実際、照度分布は、図19(A3)に示すように、x’軸方向及びy’軸方向とで大きく異なっている。尚、この照明形状内に、中央部の青色及び黄色リングに対応する分布は見られず、出射光の均一化が促進されていることが確認される。
ここで、LED照明デバイス10B及び10Cは、略長方形状の照明形状におけるx’軸方向の長辺がとう道6の幅方向(X軸方向)となるように設定される。
次いで、LED照明デバイス10Aについて説明する。LED照明デバイス10Aの微小レンズ131mは、正方形配列している。曲率半径Rx’及びRy’は共に1.0mmであって等しい。また、微小レンズ間のピッチPx’及びPy’も共に1.4mmであって等しい。即ち、LED照明デバイス10Aの微小レンズ131mは、等方性微小レンズである。その結果、光度分布における半値全角Fx’及びFy’も共に33.4°となり等しくなる。
図19(B1)に、LED照明デバイス10Aからの出射光のx’y’面内での照度分布を示す。また、図19(B2)に、LED照明デバイス10Aからの出射光のx’軸方向及びy’軸方向での照度分布を示す。これら両図における照度分布も、微小レンズ配列部131から光軸に沿って2.4m(とう道の高さに相当)の位置にある(光軸に垂直な)平面上での分布である。
図19(B1)に示すように、LED照明デバイス10Aでは、等方性微小レンズを用いているので、出射光の照明形状は円形状となる。実際、照度分布は、図19(B2)に示すように、x’軸方向及びy’軸方向において概ね一致する。また、この照明形状内に、中央部の青色及び黄色リングに対応する分布は見られず、出射光の均一化が促進されていることも確認される。尚、本実施例では、LED照明デバイス10Aとして、等方性微小レンズを用いた形態を採用しているが、LED照明デバイス10B及び10Cのように、異方性微小レンズを採用することも可能である。
ここで、以上に説明した、LED照明デバイス10A、10B及び10Cにおける出射光の光学特性をまとめると、
a)LED照明デバイス10Aは、円形状の照明形状をもって、装置直下の地点P97と装置間の中点PMIDとの間の領域を中心に照明する。
b)LED照明デバイス10Bは、装置間の中点PMIDから向こう側の領域を中心に照明するが、略長方形状の照明形状の長辺をとう道幅方向(X軸方向)に合わせ、床面60の幅方向の両端まで照度を上げる役割を果たす。
c)LED照明デバイス10Cは、略長方形状の照明形状をもって、とう道6の両側面60sを中心に照明する。小さな伏角(θ10C=79.5°)と、とう道長手方向(Y軸方向)から側面60sに向かう傾き(θSIDE=9°)とを有し、側面60sにおける天井に近い領域まで照明する。これにより、側面60sの天井近くに設置されたケーブル棚61の位置でも、作業に必要な照度が確保可能となる。
また、LED照明装置97は、これらLED照明デバイス10A、10B及び10Cからの出射光とLED光源12Aからの放射光とから構成される照射光を放射する。このLED照明装置97からの照射光は、一定の幅の照明領域部分を含み、照明対象平面上に略長方形状の照明領域を形成する。以下、このLED照明装置97を用いてとう道6内を照明した実施例を、比較例と併せて説明する。
[とう道照明の実施例:LED照明装置97によるとう道6の照明]
図20及び図21は、LED照明装置97によってとう道6を照明した際の照度分布を示すグラフである。ここで、とう道6内部のサイズ及びLED照明装置97の設置状況は、図18(B)に示した通りである。また、本シミュレーションにおいて、LED照明デバイス10A、10B及び10CのLED光源12並びにLED光源12Aの各々の光束量は、100lm(ルーメン)として計算されている。
図20(A)に、とう道6の床面60の長手方向(Y軸方向)中心線上での照度分布と、床面60の幅方向(X軸方向)での照度分布とを示す。同図によれば、長手方向での照度分布は、概ね30〜55lxの範囲内に収まっている。また、幅方向での照度分布は、概ね30〜45lxの範囲内に収まっている。従って、床面60上での照度のばらつきは、最大値/最小値の比にして2倍程度に収まっていることが分かる。尚、図20(A)のグラフ曲線には、シミュレーション計算時間及び計算ハードウェアのメモリ量の制約から、本来の分布以外のばらつきが表れている。
また、照度における30lxという最低値は、通常とう道に求められる基準最低照度(例えば5lx)を大幅に上回っている。さらに、床面60中心線上での平均照度は、36.5lxとなる。この平均照度は、通常とう道に求められる基準平均照度(例えば15lx)の2倍以上の値となっている。
次いで、図20(B)に、図20(A)の照度分布を、とう道6の床面60(XY面)上に表したグラフを示す。同図によれば、LED照明装置97は、Y軸方向に伸長する床面60上を、長手方向(Y軸方向)においても幅方向(X軸方向)においても、概ね均一な照度で照明していることが分かる。
次いで、図21(A)に、とう道6の側面60s上の位置であって床面60から上方1.5mの位置における長手方向(Y軸方向)での照度分布と、床面60から上方1.5mの位置における幅方向(X軸方向)での照度分布とを示す。ここで、幅方向での照度分布の位置範囲は、装置97直下の地点を含む。同図によれば、床面60の上方1.5mの位置においても、少なくとも通常とう道に求められる基準最低照度(例えば5lx)程度の照度は確保されている。尚、図21(A)の幅方向での照度分布のグラフでは、グラフ両端が照度ゼロの位置に落ち込んでいる。これは、シミュレーションにおける境界条件の設定に係る便宜によるものである。実際には、幅方向での照度は、側面60s上の位置において長手方向での照度と一致することに留意すべきである。
次いで、図21(B)に、とう道6の側面60s上での照度分布をYZ面上に表したグラフを示す。同図によれば、LED照明装置97は、Y軸方向に伸長する側面60sの下端から一定の高さ(同図では天井の高さ)までの範囲を、概ね均一な照度で照明していることが分かる。実際、とう道6の側面60sには、ケーブル棚61が設けられており、LED照明装置97は、このケーブル棚61をも、作業するのに十分な照度で照明している。
尚、LED照明装置97によって、とう道6の側面60sが一定の高さ(図21(B)では天井の高さ)まで概ね均一に照明されるのは、主に、角度θSIDEで外側に傾いたLED照明デバイス10Cの出射光による。
[とう道照明の実施例:比較例(蛍光灯照明)との比較]
ここで、従来の蛍光灯によってとう道6を照明した比較例を説明する。本比較例のシミュレーションに使用された蛍光灯は20Wである。ここで、蛍光灯の設置状況は、図18(B)において、LED照明装置97の設置位置に、LED照明装置97に代わって蛍光灯を設置したものとなっている。また、蛍光灯は、自身の長手方向がとう道6の幅方向(X軸方向)に平行となるように設置されている。
図22は、蛍光灯(20W)によってとう道6を照明した際の照度分布を示すグラフである。
図22(A)に、とう道6の床面60の長手方向(Y軸方向)中心線上での照度分布を示す。同図によれば、長手方向での照度分布は、概ね4〜32lxの範囲でばらつき、最大値/最小値の比にして8倍程度の変動が存在する。また、照度における4lxという最低値は、通常とう道に求められる基準最低照度(例えば5lx)と同等であるか又は下回っている。一方、この比較例と比較すると、本実施例(図20(A))の照度分布は、上述したように、最大値/最小値の比にして2倍程度に収まっており、さらに、照度最低値も基準最低照度(例えば5lx)を大幅に上回っており、より均一で且つ十分な照度の照明が実現していることが理解される。
次いで、図22(B1)に、比較例(蛍光灯)における、とう道6の側面60s上での照度分布をYZ面上に表したグラフを示す。同図によれば、蛍光灯による側面60sでの照度は、とう道長手方向(Y軸方向)においてもとう道高さ方向(Z軸方向)においても相当に変動していることが分かる。一方、この比較例と比較すると、本実施例(図21(B))のLED照明装置97は、上述したように、側面60sをより均一な照度で照明していることが理解される。
さらに、図22(B2)に、比較例(蛍光灯)における、とう道6の側面60s上の位置であって床面60から上方1.5mの位置における長手方向(Y軸方向)での照度分布と、床面60から上方1.5mの位置における幅方向(X軸方向)での照度分布とを示す。ここで、幅方向での照度分布の位置範囲は、蛍光灯直下の地点を含む。同図によれば、床面60の上方1.5mの位置となると、蛍光灯と隣接する蛍光灯との間の位置(±5mの位置)では、照度が大幅に低下して3lxとなり、通常とう道に求められる基準最低照度(例えば5lx)を満たさない。一方、この比較例と比較すると、本実施例(図21(A))のLED照明装置97は、上述したように、床面60の上方1.5mの位置においても、少なくとも通常とう道に求められる基準最低照度(例えば5lx)程度の照度は確保しており、より十分な照度の照明が実現されている。尚、図22(B2)の幅方向での照度分布のグラフにおいても、グラフ両端が照度ゼロの位置に落ち込んでいる。このグラフの落ち込みも、シミュレーションにおける境界条件の設定に係る便宜によるものである。実際には、幅方向での照度は、側面60s上の位置において長手方向での照度と一致することに留意すべきである。
図23は、本実施例(LED照明装置97)及び比較例(蛍光灯)における、とう道6の床面60及び側面60s上での照度分布を、立体的に表示したグラフである。
図23(A)に本実施例のグラフを示す。同図によれば、とう道6の天井に等間隔(10m毎)に設置されたLED照明装置97によって、とう道6の床面60及び側面60s上での照度分布は、概ね均一となっていることが理解される。
一方、図23(B)に比較例のグラフを示す。同図によれば、とう道6の天井に等間隔(10m毎)に設置された蛍光灯99によって、とう道6の床面60及び側面60s上での照度分布は、蛍光灯99の設置間隔に相当する明暗(照明ムラ)を明確に示している。ここで、蛍光灯99と隣接する蛍光灯99との間の位置で、照度が大幅に低下していることが理解される。
以上実施例として説明したように、本発明のLED照明装置97を使用することによって、とう道6の内部を、概ね均一な十分な大きさの照度をもって照明することができる。特に、作業対象となるケーブル棚61が設置されるとう道6の側面60sを、概ね均一な十分な大きさの照度をもって照明することができる。また、黄色リング等の色ムラ発生も抑制可能となる。これにより、とう道6内においても良好な作業環境を提供可能となる。
また、従来、とう道6の照明装置間の中間領域の照度が不十分となる問題があったが、本発明のLED照明装置97を使用することによって、この中間領域でも十分な大きさの照度が確保され、この問題が解消される。
さらに、従来、とう道6内における最高照度と最低照度との差が大きく、最低照度を基準以上に引き上げると最高照度が不要に高くなり、無駄な電力消費が生じる問題もあった。しかしながら、本発明のLED照明装置97を使用することによって、最高照度と最低照度との比を2倍程度にまで引き下げることができ、且つ消費電力を大幅に抑制することができる。
図24は、LED照明装置97の変更態様を示す断面図である。
図24の断面図は、LED照明装置97’のyz面による断面を示し、LED照明装置97における図17(D1)、(D2)及び(D3)に相当する。図24に示すように、LED照明装置97’は、LED照明装置97に比べて、装置直下照明用のLED光源12Aを備えておらず、代わりにその位置に、表面が鏡面となっている反射部972Rを備えている。
反射部972Rは、LED照明デバイス10A、10B又は10Cが取り付けられた角度設定ホルダ972A、972B又は972Cの下端に取り付けられており、省略したLED光源12Aによる光束分を補う役割を果たす。即ち、LED照明デバイス10A、10B又は10CにおいてLED光源12から放射し均一化光学体13によって反射された戻り光や、カバーによって反射された戻り光を、反射させ、照射光に加える役割を果たす。
また、LED照明装置97’では、点光源であるLED光源12Aを備えていないので、外部から装置を直視した際にも輝点を有さず、見た目に優しく美観上も優れている。さらに、装置直下の照明も反射部972Rによって補うことができるので、十分に均一なとう道6の照明が実現可能となる。尚、本変更態様においては、LED照明デバイス10A(θ10A=50°)よりも、光軸をさらに装置直下に向けたLED照明デバイスを設けることも好ましい。
[とう道照明の実施例:LED照明装置98]
図25は、本発明の一実施形態としてのLED照明装置98を示す正面図(図25(A))及び断面図(図25(C))、並びに装置98内のLED照明デバイス10D及び10Eの配向を示す概略図(図25(B1)〜(B4))である。図25(C)は、図25(A)のL−L面による断面を示す。
図25(A)によれば、LED照明装置98は、内蔵するLED照明デバイスの数、種類及び配向、並びにレンズ系を備えていないLED光源の有無、といった点を除き、LED照明装置97(図17)と同様の構成を備えている。
LED照明装置98は、LED照明デバイス10Dを12個、LED照明デバイス10Eを4個備えており、10E、10D、10D、10D、10D、10D、10D及び10Eの順に並んだデバイス列(群)を2列含む。これらのLED照明デバイス10D及び10Eは、それぞれ角度設定ホルダ982A及び982Bに設置され、互いに異なった配向及び光学特性を有するように設定されている。
具体的に、LED照明デバイス10Dは、長距離用光学系としてLED照明デバイス10B(図19(A1)〜(A3))と同様の光学特性を有する。一方、LED照明デバイス10Eは、中距離用光学系としてLED照明デバイス10A(図19(B1)及び(B2))と同様の光学特性を有する。
また、図25(B1)〜(B4)によれば、LED照明デバイス10D及び10Eの配向、即ちそれぞれの光軸X10D及びX10Eの向きは、以下に示すように設定されている。
LED照明デバイス10D:θ10D=30〜50°
θSIDE1=15〜40°(+x向き)
LED照明デバイス10E:θ10E=15〜40°
θSIDE2=15〜40°(+x向き)
ここで、図25(B1)〜(B4)に示した光軸X10D及びX10Eのxyz軸に対する向きは、図25(A)において右下側に位置するLED照明デバイス10D及び10Eについてのものであり、他の位置での光軸X10D及びX10Eは、xyz軸の正負側のいずれに向いているかについて適宜変わっていることに留意すべきである。
このように、LED照明装置98においては、16個のLED照明デバイスの光軸はいずれも、xy面から+z方向に傾いているだけでなく、yz面から±x軸方向にも傾いている。従って、LED照明装置98を、例えばとう道の天井部に設置した場合、これらの光軸は、とう道の床面だけではなく側面にも向かって伸長することになる。また、LED照明装置98を、例えばとう道の立て坑部分の側面(壁面)に設置した場合、これらの光軸は、とう道の当該側面に対向する側面に向かうだけではなく当該側面と隣接する側面にも向かって伸長することになる。
図25(C)によれば、LED照明装置98は、LED照明デバイス10D及び10Eを覆う形で取り付けられた光学的に透明なカバー985を備えている。また、このカバー985の直ぐ内側に、光拡散シート988が設置されている。一般に、光拡散シートは、メチルメタクリレート及びビニルベンゾエートの共重合体、又はシリカ等から形成された多数の微粒子(ビーズ)を内部で分散させた樹脂を、ポリエステル、又はポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムにおける片面又は両面にコートしたものである。これらのビーズと樹脂との屈折率の異なる界面において光が拡散される。
尚、LED照明装置98では、LED照明デバイス10D及び10Eの出射面から1mm以上離隔させた位置に光拡散シート988が設置されている。この距離を確保することによって、光拡散シート988による出射光の拡散効果を有効にすることができる。
一般に、とう道のような自然光の差し込まない環境下での照明は、
(a)作業を実施する、又は通行するのに十分な照度を有すること、のみならず、
(b)作業者又は通行者にとって眩しくない(作業・通行の邪魔にならない)照射光によること
が要求される。しかしながら、LED光源を用いた照明は、例え光学レンズ系を用いて放射光に所定の配光角を持たせたとしても、この光源の方を向いた作業者又は通行者にとって点光源的に見えてしまい、ぎらつきを感じさせ、「眩しさ」を与えてしまう。このような理由もあって、作業空間兼通路であるとう道では、放射光が拡散されており面光源的に見える蛍光灯を用いた照明が、主に採用されてきた。
これに対し、LED照明装置98においては、LED照明デバイス10D及び10Eと、光拡散シート988との組み合わせによって、照明対象に応じて必要となる照度が確保され、且つ「眩しさ」を抑制した照明を提供することができる。以下、この格別の組み合わせの作用効果について説明するが、最初に、「眩しさ」について考察する。
図26は、出射光に対して視線方向のなす角度と、「眩しさ」を感じる光束量との関係を示すグラフ、及び光拡散シートの作用を説明するための概略図である。
「眩しさ」を考察するための実験として、発光しているLED照明デバイスを種々の角度から見た際の眩しさを測定した。この眩しさの測定は、同一の試験者の視覚による判断、即ち官能検査として行われた。具体的には、試験者が、発光した所定の光学特性を有するLED照明デバイスを1m離隔した位置から視線角θsをもって見ている状態で、LED照明デバイスへの投入電流量を増大させ、試験者が「眩しい」と判断した時点での全光束を、「眩しさ光束閾値」とした。
図26(A)のグラフにおいて、横軸は、LED照明デバイスの光軸と視線とのなす角度である視線角θs(度(°))であり、縦軸は、視線角θsにおける「眩しさ光束閾値」(lm)及びその時点での投入電流量(mA)である。
図26(A)によれば、いずれの視線角θsにおいても、眩しさを感じなくなる「眩しさ光束閾値」が存在する。また、視線角θsが大きくなるほど「眩しさ光束閾値」は増大する。尚、同様の実験によって、配光角のより小さい長距離用のLED照明デバイスの方が、同じ視線角θsにおいて「眩しさ光束閾値」がより小さい、即ちより眩しい、ことが確認されている。これは、配光角のより小さい長距離用のLED照明デバイスでは、全光束量は短距離用と概ね同じであったとしても、照度のピーク値がより高くなっていることによると考えられる。このことから、眩しさには、照度ピーク値が強く影響していることが理解される。
以上の結果から、LED照明デバイスの設置角度(想定される作業者又は通行者にとっての視線角θs)を調整することによって、眩しさを抑制可能であることが理解される。具体的には、LED照明デバイス10D及び10Eの光軸X10D及びX10Eの向きを図25(B1)〜(B4)に示すように(又は同図に準じて)傾けることを考える。この場合、設定された投入電流量における「眩しさ光束閾値」に対応する視線角θsが作業者又は通行者にとって十分確保されるように、角度θ10D、θ10E、θSIDE1及びθSIDE2を調整することによって、眩しさを十分に抑制可能であることが理解される。
しかしながら、例えば図25(B1)〜(B4)に示すようにデバイスの設置角度を設定した場合、角度θSIDE1及びθSIDE2をもって傾いた照射光による照明先(例えばとう道の側面)において、照度が過剰に高くなる領域が存在する場合も生じ得ることが分かった。例えばとう道の場合、側面に設置されているケーブル棚61(図16(A))がより明るくなることは作業上非常に好ましい。しかしながら、とう道内全体の照度設計及び消費電力低減化の観点からすると、この側面におけるとう道長手方向での照度分布は、十分な照度が確保されるだけではなく、できるだけ平準化されることが望まれる。この照度分布の平準化という課題を解決するため、LED照明装置98(図25(C))は、光拡散シート988を備えているのである。
このLED照明装置98においては、図26(B)及び(C)に示すように、LED照明デバイス10D又は10Eからの放射光は、光拡散シート988とカバー985とを通過して、外部に伝播する。この際、光拡散シート988の有するヘイズ(haze)値Hzによって、その拡散の態様が変化する。
ここで、ヘイズ値Hzとは、シートやフィルム等の透光対象における曇り具合又は濁り具合を示す指標であり、小さな値であるほど、透明であることを示す。ヘイズ値Hzは、一般に、次式
(15) Hz(%)=Td/Tt×100
で定義される。ここで、Tdは拡散透過率であり、Ttは全光線透過率である。
図26(B)に示すように、ヘイズ値Hzの小さい光拡散シート988を用いた場合、LED照明デバイス10D又は10Eからの放射光は、この光拡散シート988によって部分的に拡散されるものの、デバイス内のレンズ系(均一化光学体)による配向性を保持し、光軸に沿った方向に集中して出射する。一方、図26(C)に示すように、ヘイズ値Hzの大きい光拡散シート988を用いた場合、LED照明デバイス10D又は10Eからの放射光は、この光拡散シート988によって多くが拡散され、デバイス内のレンズ系(均一化光学体)によって付与された配向性を低下させて、拡散光に近づく。この際、拡散された放射光の一部は、装置内部に向かって伝播し反射して、後述する装置直下近傍での照度向上に寄与することになる。
図27は、光拡散シートを用いた場合及び用いない場合における、LED照明装置98による照明の照度分布を示すグラフである。
ここで、図27の照度分布を導出した実験の条件として、LED照明装置98は、高さ2mの位置であって、とう道の床面を想定した照明対象面における長手方向の中心線上に、10m間隔で複数設けられ、装置の長手方向が照明対象面の長手方向と直交するように設置された。
図27(A)に、ヘイズ値89%の光拡散シート988を用いた場合、及び用いない場合における照明対象面(床面)の中心線上での長手方向位置Yについての照度分布を示す。同図によれば、光拡散シート988(Hz=89%)を用いることによって、LED照明装置98の直下の位置、即ち装置98と直に対向する位置(Y=0及び10m)では照度が増大し、一方、2つのLED照明装置98の中間位置(Y=5m)では照度が若干減少する。これは、
(a)図26(C)にも示したように、拡散された放射光の一部が装置内部に向かって伝播して反射し、又は
(b)本来レンズ系によって遠方又は側方(例えばとう道の側面方向)に配向された放射光が光拡散シート988によって装置近傍側に戻されて、
装置98の直下近傍での照明に寄与するためと考えられる。
実際、光拡散シート988(Hz=89%)を用いた場合における、照明対象面(床面)の中心線上での照度の平均値は18.9lxとなっており、光拡散シート988を用いない場合での照度平均値(13.4lx)の約1.4倍にまで向上している。
次いで、図27(B)に、ヘイズ値86%の光拡散シート988を用いた場合、及び用いない場合における照明対象面(床面)の中心線上での長手方向位置Yについての照度分布を示す。ここで、同図の実験において使用されたLED照明装置98でのLED照明デバイス10D又は10Eの光軸X10D及びX10Eの向きについては、図27(A)の実験において使用されたLED照明装置98での光軸X10D及びX10Eの向きとは角度の異なる設定がなされている。従って、図27(A)及び図27(B)のグラフ間での照度絶対値の比較はできないことに留意すべきである。
図27(B)によれば、光拡散シート988(Hz=86%)を用いることによって、LED照明装置98の直下の位置(Y=0及び10m)では照度が増大し、一方、2つのLED照明装置98の中間位置(Y=5m)では、光拡散シート988(Hz=89%)の場合とは異なり、照度が概ね維持される。このように、光拡散シート988のヘイズ値Hzを適切に調整することによって、装置直下での照度を増大させつつ、装置間の領域でも、光拡散シート988を用いない場合と実質上同一の照度分布を維持することが可能となる。
また、光拡散シート988(Hz=86%)を用いた場合における、照明対象面(床面)の中心線上での照度の平均値は20.1lxとなっており、光拡散シート988を用いない場合での照度平均値(16.7lx)の約1.2倍にまで向上している。
次いで、図27(C)に、ヘイズ値86%の光拡散シート988を用いた場合、及び用いない場合における、照明対象面(床面)の長手方向の中心線と平行であって当該中心線から幅方向に1m離隔した平行線における上方1.5mの高さの地点での照度分布を示す。即ち、図27(C)のグラフでの照度は、とう道の側面の照明を想定しており、この平行線上の長手方向位置Y’から1.5mの高さ地点での照度となっている。また、同図において使用されたLED照明装置98は、図27(B)において使用された装置と同一である。
図27(C)によれば、光拡散シート988(Hz=86%)を用いることによって、2つのLED照明装置98の中間位置(Y’=5m)では、照度が概ね維持され(実質上同一であり)、一方、位置Y’方向におけるLED照明装置98に相当する位置(Y’=0及び10m)では、照度が減少する。その結果、(とう道の側面上の位置に相当する)高さ1.5mの地点での照度分布は、かなりの程度に平準化されることが理解される。この平準化した照度は、いずれの位置Y’においても概ね(例えば作業に必要とされる照度である)5lx以上の値を示す。
ここで、位置Y’方向における装置98に相当する位置(Y=0及び10m)において照度が減少するのは、本来、例えば側面を照明するために側面側に配向させられた放射光が光拡散シート988を通過することによって、その一部が装置間の中間領域に集められるためであると考えられる。尚、この中間領域に集められた放射光によって、図27(A)及び(B)における2つの装置98の中間位置(Y=5m)での照度がそれほど低下しない、又は維持されることになるのである。
次に、以上に実施例として説明した、
<LED照明デバイス10D及び10Eと、光拡散シート988との組み合わせ>
における格別の作用効果を確認するため、均一化光学体(レンズ系)が設置された場合と設置されていない場合における照度分布を比較し、両者の違いを考察する。
図28(A)は、均一化光学体(レンズ系)を設置した場合であって、光拡散シート988を用いた場合及び用いない場合における、LED照明装置98による照明の照度分布を示すグラフである。また、図28(B)は、均一化光学体(レンズ系)を設置しない場合であって、光拡散シート988を用いた場合及び用いない場合における、LED照明装置98による照明の照度分布を示すグラフである。
図28(A)のグラフにおいては、照度値は、レンズ系を設置していて光拡散シート988を用いない場合の値を1として規格化されている。また、図28(B)のグラフにおいては、照度値は、レンズ系を設置しておらず光拡散シート988も用いない場合の値を1として規格化されている。さらに、照度分布は、照明対象面(床面)の中心線上での長手方向位置Yについての分布である。また、光拡散シート988については、ヘイズ値Hz=86%、89%及び92%の3種類を使用した。
レンズ系を有する場合である図28(A)によれば、レンズ系有り・光拡散シート有り(Hz=86〜92%)では、レンズ系有り・光拡散シート無し(規格化照度=1)の場合と比較して、LED照明装置98直下での照度が増大している。また、レンズ系有り・光拡散シート有り(Hz=86%,89%)では、装置98直下の位置から離隔しても、照度はレンズ系有り・光拡散シート無し(規格化照度=1)の場合と概ね同等に維持される。これらの結果は、図27(A)及び(B)で示された結果と同様である。
一方、レンズ系を有しない場合である図28(B)によれば、レンズ系無し・光拡散シート有り(Hz=86〜92%)では、レンズ系無し・光拡散シート無し(規格化照度=1)の場合と比較して、長手方向位置Y全体において照度が概ね同等である、又は低下している。特に、レンズ系無し・光拡散シート有り(Hz=92%)では、照度低下が顕著である。
ここで、使用される光拡散シート988のヘイズ値Hzについては、以上に述べた結果から上限として90%(未満)とすることも好ましい。一方、下限については、実験によって、ヘイズ値Hzと分光透過率(%)との間に強い相関の存在することが確認されており、ヘイズ値Hzが70%以上において、分光透過率の低減が急激になることが分かっている。従って、分光透過率がより強い影響を受け始め、上述した本発明の作用効果が発現し易くなるヘイズ値Hz=70%(以上)を、下限とすることができる。即ち、ヘイズ値Hzは、好ましくは70%以上であって90%未満の値に設定される。さらに、図27(A)における照度分布の結果よりも図27(B)における照度分布の結果の方がより好ましいことから、ヘイズ値Hzは、70%以上であって87%未満の値に設定されることがより好ましい。
以上に説明した図28(A)及び(B)の結果から、レンズ系有り・光拡散シート有り(Hz=86%,89%)における、(a)装置直下での照度増大、及び(b)装置直下から離隔した位置での照度の維持、さらに、(c)これらの結果としての平均照度の向上、といった格別の効果は、レンズ系及び光拡散シートのいずれが欠けても奏功しない、両者の結合によるものであることが理解される。
尚、これらの効果(a)〜(c)を奏するLED照明装置98は、例えば、とう道内の立て坑部分の側面(壁面)に設置されることも好ましい。この場合、装置の設置された壁面と対向する壁面だけではなく、隣接する壁面をも照明した上で、立て坑部分での作業者及び通行者にとって眩しさが抑制された良好な照明環境が実現可能となる。
以上に述べた実施形態は全て、本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は、他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。