JP6515429B2 - 人工血管、および、人工血管の製造方法 - Google Patents

人工血管、および、人工血管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、人工血管、および、人工血管の製造方法に関する。
現在、生体内の元々の組織に代わって生体内で機能し得る人工組織に注目が集まっており、その開発が進められている(例えば、特許文献1および2、並びに、非特許文献1)。例えば、移植可能な動物に由来する各種組織、または、移植可能な動物に由来する各種組織から細胞等を除去した結合組織、を人工組織として用いる技術の開発が進められている。
人工組織の種類としては多様であり、例えば、軟組織(例えば、血管、心臓弁膜、角膜、羊膜、および硬膜など)、硬組織(例えば、骨、軟骨、および歯など)、または、臓器(例えば、心臓、腎臓、肝臓、膵臓、および脳など)として機能し得る人工組織の開発が進められている。
具体的に、非特許文献1には、移植可能な動物に由来する大動脈弁を用いた人工組織が開示されている。生体内で長期間安定して機能することを可能にするために、当該人工組織としては、移植可能な動物に由来する大動脈弁を高濃度のグルタルアルデヒド水溶液(具体的には、2.5%のグルタルアルデヒド水溶液)によって架橋したものが用いられている。つまり、非特許文献1に記載の人工組織では、移植可能な動物に由来する大動脈弁に対して、導入し得る最大限の架橋構造を導入している。これによって、生体内で人工組織が劣化することを防いでいる。
生体内に存在する組織の中でも、血管は、様々な太さ、長さ、分岐等を有するバリエーションに富んだ組織であるといえる。また、血管は、絶えず血流からの圧力を受けるという過酷な環境に晒されるため、また、縫合等の手術時に大きな力が加わるため、強度が高い必要がある。
近年、循環器系の疾患を患う患者の数が増加するにしたがって、人工血管の需要が増加し、当該需要に応えるために、様々な人工血管が開発され用いられている。
例えば、ePTFEやダクロン(登録商標)などの合成高分子によって作製された人工血管が開発され、用いられている。このような合成高分子によって作製される人工血管は、内腔の断面が太い場合(換言すれば、中口径や大口径である場合)には有効に機能し、このような人工血管は、年間略70万本も使用されている。
更に、特許文献3〜5には、合成高分子によって作製された人工血管に、更にFGF(fibroblast growth factor)などを付加させた人工血管が開示されている。
日本国公開特許公報「特開2004−97552号公報(2004年4月2日公開)」 US2002/0077697A1(2002年6月20日公開) 日本国公開特許公報「特開平5−76588号公報(1993年3月30日公開)」 日本国公開特許公報「特開平9−215746号公報(1997年8月19日公開)」 日本国公開特許公報「特開平9−262282号公報(1997年10月7日公開)」
Carpentier et al., Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Volume 58, Number 4, October 1969, p467-483
しかしながら、上記従来の人工血管は、生体内で、安全にかつ安定して機能し続けることが困難であるという問題点を有していた。
例えば、上記従来の人工血管は、長期間にわたって生体内に存在し続けると、生体内で劣化が進み、様々な特性が低下するという問題点を有していた。
また、上記従来の人工血管は、長期間にわたって生体内に存在し続けると、生体内にて炎症などの様々な症状を引き起こす虞があるという問題点を有していた。
また、上記従来の人工血管は、生体内で移植時の形態(例えば、長さ、太さ、枝分かれの有無など)を維持するので、生体が成長した場合に、人工血管のサイズが生体に合わないなどの問題が生じていた。そして、当該問題点を解決するためには、生体の成長に伴って、新たな人工血管を移植し直す必要が生じていた。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、生体内で所望の期間機能した後で分解されるとともに、分解が進むにしたがって、生体内で再生された血管組織と置換される人工血管、および、当該人工血管の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、人工血管の研究を進める過程において、以下の(a)〜(c)の事象を発見した。つまり、
(a)生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管を生体内へ移植すると、当該人工血管が生体内で分解されて消失すること;
(b)生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管を生体内へ移植すると、当該人工血管を構成している細胞外マトリックス内へ生体内の各種細胞が入り込み、当該細胞によって血管が再生されること;
(c)生体内における人工血管の分解速度は、人工血管を構成している細胞外マトリックス内へ入り込んだ細胞による血管の再生速度よりも早いこと。つまり、血管の再生が完了する前に、血管再生の足場として機能する細胞外マトリックスが分解されて消失すること。
本発明者らは、人工血管の分解速度と血管の再生速度とのバランスを調節することによって、生体内で所望の期間機能した後で分解されるとともに、分解が進むにしたがって、生体内で再生された血管組織に置換される人工血管を実現できるのではないかとの仮説の元、更なる研究を推し進めた。
そして、本発明者らは、架橋剤によって架橋された細胞外マトリックスと増殖因子とを併せ持つ人工血管は、人工血管の分解速度と血管の再生速度との良好なバランスをとることが可能であり、かつ、生体によって再生される血管によって効率よく置換され得る(換言すれば、人工血管が生体内から消失するときに、血管の再生が略完了する)ことを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の人工血管は、上記課題を解決するために、生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管であって、上記細胞外マトリックスは、架橋剤によって架橋されており、上記細胞外マトリックスには、増殖因子が付加されていることを特徴としている。
本発明の人工血管では、上記架橋剤は、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体またはオキサゾリン系ポリマーであることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記細胞外マトリックスは、上記架橋剤を5〜20重量%含む水溶液中で、3〜72時間、架橋されたものであることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記増殖因子は、FGF、VEGF、TGF−β、アンジオポエチンまたはPDGFであることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記血管組織の内腔断面の直径が4mm以下であることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記細胞外マトリックスには、更に、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドが付加されていることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記nは、3以上20以下の整数であり、上記mは、1以上10以下の整数であることが好ましい。
本発明の人工血管では、上記Xは、1以上の任意の数のグリシンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のアラニンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のセリンからなるペプチドリンカー、または、グリシン、アラニンおよびセリンからなる群から選択される少なくとも2種類のアミノ酸からなるペプチドリンカーであることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法は、上記課題を解決するために、生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスを、架橋剤によって架橋する架橋工程と、上記細胞外マトリックスに増殖因子を付加する増殖因子付加工程と、を含むことを特徴としている。
本発明の人工血管の製造方法では、上記架橋剤は、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体またはオキサゾリン系ポリマーであることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法では、上記架橋工程では、上記細胞外マトリックスを、上記架橋剤を5〜20重量%含む水溶液中で、3〜72時間、架橋させることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法では、上記増殖因子は、FGF、VEGF、TGF−β、アンジオポエチンまたはPDGFであることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法では、上記血管組織の内腔断面の直径が4mm以下であることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法は、上記細胞外マトリックスに、更に、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドを付加するペプチド付加工程を含むことが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法では、上記nは、3以上20以下の整数であり、上記mは、1以上10以下の整数であることが好ましい。
本発明の人工血管の製造方法では、上記Xは、1以上の任意の数のグリシンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のアラニンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のセリンからなるペプチドリンカー、または、グリシン、アラニンおよびセリンからなる群から選択される少なくとも2種類のアミノ酸からなるペプチドリンカーであることが好ましい。
内腔の直径が細い(例えば、4mm以下)人工血管の場合、移植後に、人工血管の内腔に血栓が形成されたり、人工血管の内腔で生体由来の組織が異常増殖するなどによって、血流が阻害される。それ故に、内腔の直径が細い人工血管の実現は、困難であった。本発明の人工血管は、人工血管の機能が失われる前に、生体内で再生された血管組織に置換され得るので、本発明であれば、内腔の直径が細い(例えば、4mm以下)人工血管が有していた問題点を解決できるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、人工血管の機能が失われる前に、生体内で再生された血管組織に置換され得るので、人工血管が移植された生体内の箇所の良好な血流を、絶えず維持することができるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、生体内で再生された血管組織に置換されるので、生体内で炎症などの様々な症状が引き起こされること防止できるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、生体内で再生された血管組織に置換されるので、生体の成長にともなって新しい人工血管を移植し直す必要がないという効果を奏する。
本発明の人工血管は、生体内で再生された血管組織に置換されるので、血液の抗凝固剤の服用量を減少させることができるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、材料として自家血管を用いる必要が無いので、患者の体に負担を強いることが無いという効果を奏する。
本発明の人工血管は、各種動物の血管組織を用いて作製され得るので、製造コストを低下させることができるとともに、大量生産を可能にするという効果を奏する。
本発明の人工血管は、十分な強度を備えているので、静脈(低圧系)としてのみならず、動脈(高圧系)としても利用できるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、様々な形態(例えば、様々な長さ、様々な太さ、枝の有無など)であり得るので、生体内で遠く離れた箇所を繋ぐバイパス手術など、様々な用途に利用することができるという効果を奏する。
本発明の人工血管は、安全であることが証明されており既に臨床にて利用されている各種材料(細胞外マトリックス、架橋剤、増殖因子)を用いて作製され得るので、生体に対して高い安全性を提供することができるという効果を奏する。
本発明の実施例における、人工血管の破断強度の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例における、人工血管の破断強度の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例における、人工血管の染色像を示す写真である。 本発明の実施例における、大腿−大腿交叉バイパス術を用いた人工血管の移植手術の概要を説明する図である。 本発明の実施例における、人工血管の超音波エコーの試験結果を示す図である。 本発明の実施例における、人工血管の破断強度の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例における、人工血管に付加された増殖因子の量を示すグラフである。 本発明の実施例における、人工血管の周囲に誘導されている組織を示す写真である。 本発明の実施例における、人工血管の力学強度の変化を示すグラフである。 本発明の実施例における、人工血管の免疫応答を示す写真である。
本発明の一実施の形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説示する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書において「A〜B」と記載した場合には、「A以上B以下」を意図する。
〔1.人工血管〕
本実施の形態の人工血管は、生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管であって、上記細胞外マトリックスは、架橋剤によって架橋されており、かつ、上記細胞外マトリックスには、増殖因子が付加されている人工血管である。以下に、各構成について説明する。
本実施の形態の人工血管は、加圧処理などによって、生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管である。なお、細胞を除去する方法は当該方法に限定されない。
血管組織を加圧処理することによって得られる細胞外マトリックスは、極めてインタクトな状態に近い細胞外マトリックスであるとともに、効率よく細胞および細胞の構成成分が除去された細胞外マトリックスである。このような細胞外マトリックスを用いて作製された人工血管は、基本的に、生体適合性が高く拒絶反応が低い人工血管となり得る。
上述した生体としては特に限定されないが、例えば、非ヒト動物(例えば、走鳥類、鳥類、または、哺乳類など)を挙げることが可能である。
上記哺乳類としては特に限定されないが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、サルなどを揚げることができる。
上述した生体の中では、走鳥類(例えば、エミュー、キーウィ、ダチョウ、ヒクイドリ、または、レアなど)が好ましいといえる。走鳥類の首は一般的に長く、当該首に存在する頚動脈などの血管は、細く、長く、かつ、分岐が少ない。それ故に、走鳥類の血管を用いて人工血管を作製すれば、内腔の断面がより小さく、より長く、かつ、より分岐の少ない人工血管を実現することができる。このような人工血管は、臨床の現場において、極めて有用であるといえる。また、走鳥類などは飼育が容易であるために、多量の血管組織を安定的に供給することもできる。
本実施の形態の人工血管は、上述した生体に由来する血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている。なお、本明細書において「血管組織」とは、血管を構成する細胞外マトリックスと、血管を構成する細胞と、によって形成されている組織を意図する。更に具体的には、本明細書において「血管組織」とは、内皮細胞などによって形成されている内膜と、平滑筋細胞、弾性繊維およびコラーゲン繊維などによって形成されている中膜と、繊維芽細胞および結合組織などによって形成されている外膜と、によって形成されている組織を意図する。
生体由来の血管組織の具体的な構成としては特に限定されず、動脈であってもよいし、静脈であってもよい。本実施の形態の人工血管は、インタクトな状態に極めて近い細胞外マトリックスによって形成されているので、材料として動脈を用いたとしても、また、静脈を用いたとしても、非常に強度の高い人工血管を実現することができる。但し、より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、血管組織は動脈であることが好ましいといえる。一方、より容積の大きな内腔を有する人工血管を実現するという観点からは、血管組織は静脈であることが好ましいといえる。それ故に、人工血管の目的に合わせて、血管組織の種類を適宜選択すればよい。
本実施の形態の人工血管は、動脈用の人工血管として用いることも可能であるし、静脈用の人工血管として用いることも可能である。本発明の人工血管は、より血流の早い箇所の血管(具体的には、動脈用の人工血管)として用いた場合に、より効果的に血栓を防止することができる傾向を有している。このような血流の早い箇所では人工血管に対してより高い圧力が加わるので、人工血管の強度が、より高いことが好ましいといえる。したがって、動脈用の人工血管を製造する場合には、上記血管組織は動脈であることが好ましいといえる。
また、本実施の形態の人工血管は、細胞外マトリックスの供給源である上記生体に由来する細胞および細胞の構成成分の含有量が極めて少ないので、人工血管に対する拒絶反応の発生を防ぐことができる。それ故に、本実施の形態の人工血管は、細胞外マトリックスの供給源である生体(例えば、走鳥類)とは異なる種の生体(例えば、哺乳類)に対して移植するための人工血管であってもよい。勿論、本実施の形態の人工血管は、細胞外マトリックスの供給源である生体と同じ種の生体に対して移植するための人工血管であってもよい。
本発明では、細胞外マトリックスから生体に由来する細胞および細胞の構成成分(例えば、DNAなど)が効率よく除去されているので、人工血管の移植時の拒絶反応の発生を防ぐことができる。具体的に言えば、細胞外マトリックスに細胞および細胞の構成成分が残存していると、このような細胞外マトリックスによって作製された人工血管を、細胞外マトリックスが由来する生物種(例えば、ダチョウ)とは異なる生物種(例えば、ヒト、ブタ)へ移植した場合に、拒絶反応が生じてしまう虞がある。しかしながら、本発明では、細胞外マトリックスから生体に由来する細胞および細胞の構成成分が効率よく除去されているので、このような拒絶反応が生じることを防ぐことができる。
上述したように、本実施の形態の人工血管は、血管組織に対して加圧処理などの処理を行うことによって得られる、細胞外マトリックスによって形成されている。
上記処理の詳細については、後述する〔2−1.架橋工程〕の欄で詳細に説明するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
本実施の形態の人工血管の構成成分は限定されないが、本実施の形態の人工血管は、例えば、少なくともvon Willebrand factor、Vimentin、α Smooth muscle actin、および、Elastica van Gieson染色によって染色される物質によって形成されていてもよい。
更に具体的には、本実施の形態の人工血管は、少なくともvon Willebrand factor、Vimentin、α Smooth muscle actin、Elastica van Gieson染色によって染色される物質、コラーゲン、および、エラスチンによって形成されていてもよい。
上記構成によれば、本実施の形態の人工血管がインタクトな状態に極めて近い細胞外マトリックスを含んでいるので、より良く機能する人工血管を実現することができる。
なお、本実施の形態の人工血管が上述した構成成分を含んでいるか否かは、周知の免疫染色法などによって確認することができる。免疫染色に用いる各種抗体も、市販の抗体を用いればよい。
本実施の形態の人工血管は、その断面における内腔の形状を円形と考えた場合に、当該円の直径が4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよく、または、1mm以下であってもよい。なお、材料となる血管組織を適宜選択することによって、所望の太さの内腔を有する人工血管を実現することができる。
また、本実施の形態の人工血管は、その断面における内腔の面積が、π×2mm以下であってもよく、π×1.5mm以下であってもよく、π×1mm以下であってもよく、π×0.75mm以下であってもよく、π×0.5mm(π≒3.14)。なお、この場合には、人工血管の断面における内腔の形状は、真円に限らない。
本実施の形態の人工血管は、その長さは特に限定されないが、例えば、10cm以上であってもよく、20cm以上であってもよく、30cm以上であってもよく、40cm以上であってもよく、50cm以上であってもよく、60cm以上であってもよく、70cm以上であってもよく、80cm以上であってもよい。人工血管の長さは、好ましくは40cm以上であり、より好ましくは80cm以上である。
上記構成によれば、臨床でも十分に利用可能な長さの人工血管を実現することができる。例えば、臨床においては、遠く離れた血管の間にバイパスを形成する必要が生じる場合がある。上記構成であれば、このようなバイパスを容易に形成することができる。
上述したサイズの人工血管を作製するためには、人工血管と略同じサイズの血管組織を用いればよい。
つまり、人工血管の材料である血管組織は、その断面における内腔の形状を円形と考えた場合に、当該円の直径が4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよく、または、1mm以下であってもよい。
また、上記血管組織は、その断面における内腔の面積が、π×2mm以下であってもよく、π×1.5mm以下であってもよく、π×1mm以下であってもよく、π×0.75mm以下であってもよく、π×0.5mm(π≒3.14)。なお、この場合には、血管組織の断面における内腔の形状は、真円に限らない。
また、上記血管組織は、その長さは特に限定されないが、例えば、10cm以上であってもよく、20cm以上であってもよく、30cm以上であってもよく、40cm以上であってもよく、50cm以上であってもよく、60cm以上であってもよく、70cm以上であってもよく、80cm以上であってもよい。血管組織の長さは、好ましくは40cm以上であり、より好ましくは80cm以上である。
本実施の形態の人工血管では、構成成分である細胞外マトリックスが、架橋剤によって架橋されている。つまり、本実施の形態の人工血管では、網目構造を有する1つの細胞外マトリックス内において、網目構造を形成している線維同士が架橋されている。
上記架橋剤としては特に限定されないが、例えば、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体またはオキサゾリン系ポリマーであることが好ましい。
上述した架橋剤の中では、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体を用いることが、より好ましい。その理由は、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体は高分子量体であるために、脱細胞組織の内部へは深く浸透すること無く、血管の外層のみを部位選択的に架橋できるからである。
上述した架橋剤の更に具体的な例として、下記の化学構造にて示す架橋剤(N−ヒドロキシイミド修飾多分岐型ポリエチレングリコール)を挙げることができる。N−ヒドロキシイミド修飾多分岐型ポリエチレングリコールの更に具体的な例として、例えば、N−ヒドロキシイミド修飾8分岐型ポリエチレングリコール(8−arm PEG−NHS)を挙げることができる。
当該架橋剤であれば、生体内で所望の期間機能した後で分解されるとともに、分解が進むにしたがって、生体内で再生された血管組織と置換されるのみならず、更に、免疫原性が低減した、人工血管を実現することができる。生体内における過剰な炎症反応の惹起は、人工血管の脆弱化を引き起こし、ラプチャーや内膜肥厚による人工血管の閉塞を引き起こす危険性がある。一方、下記の化学構造にて示す架橋剤を用いれば、このような危険性をより確実に回避できる人工血管を実現することができる。
また、当該架橋剤は、脱細胞組織の力学特性を全く変えることがないため、しなやかで破断強度が高い人工血管を実現することができる。
上記の化学構造において、「n」は1以上のあらゆる整数であり得るが、免疫原性をより低減させるという観点からは、6以上100以下の整数であることが好ましく、35以上45以下の整数であることがより好ましく、35以上43以下の整数であることが更に好ましい。
また、上記架橋剤は、8分岐(8−arm)構造に限定されるものではない。上記架橋剤は、血管の外層等の特定の部位を選択的に架橋できるものであればよく、化合物の中心構造(ポリエチレングリコール構造)等の変更などにより(例えば、上記の化学式において、「m」は0以上のあらゆる整数であってもよい。)、8分岐以外の多分岐構造をとり得、これらの架橋剤も、「8−arm PEG−NHS」と同様の効果を奏する。免疫原性をより低減させるという観点からは、分岐の数は、2以上30以下の整数であることが好ましく、4以上12以下の整数であることが更に好ましい。
細胞外マトリックスの架橋度は、特に限定されない。架橋度が高いほど、本実施の形態の人工血管は、生体内で分解され難くなり、その結果、生体内に長時間存在することになる。一方、架橋度が低いほど、本実施の形態の人工血管は、生体内で分解され易くなり、その結果、生体内に短時間存在することになる。
本発明は、人工血管の分解速度と血管組織の再生速度とのバランスを取ることによって、生体内で所望の期間機能した後で分解されるとともに、分解が進むにしたがって、生体内で再生された血管組織に置換される人工血管を実現する。このとき、人工血管の分解速度の調節(具体的には、減速)は、主として架橋された細胞外マトリックスによって行われ、血管組織の再生速度の調節(具体的には、加速)は、主として細胞外マトリックスに付加される増殖因子によって行われる。
それ故に、細胞外マトリックスの架橋度は、細胞外マトリックスに付加される増殖因子の量および/または種類などに応じて、適宜、設定することができる。
例えば、細胞外マトリックスに付加される増殖因子による血管組織の再生速度が速い場合には、細胞外マトリックスの架橋度は低くてよい。一方、細胞外マトリックスに付加される増殖因子による血管組織の再生速度が遅い場合には、細胞外マトリックスの架橋度は高くてよい。
細胞外マトリックスの架橋度は、細胞外マトリックスを架橋する方法に応じて、調節することができる。細胞外マトリックスを架橋する具体的な方法としては特に限定されないが、例えば、上述した架橋剤を含む水溶液中に、細胞外マトリックスを浸漬させる方法を挙げることができる。
上記水溶液の具体的な構成としては、例えば、水または生理食塩水などを用いることが可能である。上記水溶液の中では、生理食塩水が好ましい。上記構成であれば、よりインタクトな細胞外マトリックスによって形成された人工血管を実現することができる。
上記水溶液における架橋剤の濃度は、特に限定されないが、0.1重量%以上20重量%未満であってもよく、0.1重量%以上10重量%未満であってもよく、0.1重量%以上5重量%未満であってもよく、0.1重量%以上2.5重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.5重量%未満であってもよく、0.1重量%以上2.4重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.3重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.1重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.0重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.9重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.8重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.7重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.6重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.5重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.4重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.3重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.1重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.0重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.9重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.8重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.7重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.6重量%以下であってもよい。
更に、上記水溶液における架橋剤の濃度は、上述した各濃度範囲の下限値を、0.1重量%から0.6重量%または5重量%へ変更したものであってもよい。例えば、上記水溶液における架橋剤の濃度は、5重量%以上10重量%未満であってもよく、5重量%以上20重量%未満であってもよい。
上記構成であれば、細胞外マトリックスが過度に架橋されることを防止することができ、より良いタイミングにて生体内で分解され得る人工血管を実現することができる。なお、生体内で分解されずに永久に生体内で機能し続けることが意図された人工組織を作製する場合には、2.5重量%よりも高い濃度の架橋剤を含む水溶液を用いて長時間、組織を架橋し、当該組織を人工組織として用いている。
細胞外マトリックスを浸漬させる水溶液の温度としては特に限定されないが、例えば、4℃以上80℃以下であってもよく、10℃以上60℃以下であってもよく、15℃以上50℃以下であってもよく、20℃以上40℃以下であってもよい。上記温度の中では、20℃以上40℃以下が好ましい。上記構成であれば、より良いタイミングで分解され得る人工血管を実現することができる。
細胞外マトリックスを水溶液に浸漬させる時間は特に限定されないが、例えば、1分間以上144時間以下であってもよく、30分間以上100時間以下であってもよく、1時間以上100時間以下であってもよく、3時間以上72時間以下であってもよく、24時間以上72時間以下であってもよい。上記時間の中では、1時間以上72時間以下が好ましい。上記構成であれば、より良いタイミングで分解され得る人工血管を実現することができる。
本実施の形態の人工血管では、構成成分である細胞外マトリックスに対して増殖因子が付加されている。
細胞外マトリックスに対して増殖因子を付加する場合、化学結合(例えば、共有結合など)を介して、細胞外マトリックスに増殖因子を連結させてもよいし、化学結合(例えば、疎水結合や水素結合など)を介して、細胞外マトリックスに増殖因子を吸着させてもよい。つまり、細胞外マトリックスと増殖因子との間の相互作用の様式は、特に限定されない。
上記増殖因子としては特に限定されず、例えば、血管壁または血管の構造の再生を促す増殖因子であればよい。
上記増殖因子の更なる具体例としては、FGF(fibroblast growth factor)、VEGF(epidermal growth factor)、TGF−β(transforming growth factor-beta)、アンジオポエチンまたはPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)を挙げることができる。
FGFの更なる具体例としては、aFGF、bFGFなどを挙げることができる。
TGF−βの更なる具体例としては、TGF−β1、TGF−β2などを挙げることができる。
細胞外マトリックスに付加されている増殖因子の量は特に限定されず、細胞外マトリックスの架橋度に応じて、適宜、設定することができる。
例えば、細胞外マトリックスに付加されている増殖因子の量は、1本の人工血管あたり、0.01μg以上100μg以下であってもよく、0.1μg以上100μg以下であってもよく、0.1μg以上10μg以下であってもよく、0.2μg以上5μg以下であってもよく、0.25μ以上4.3μ以下であってもよい。
また、細胞外マトリックスに付加されている増殖因子の量は、1gの細胞外マトリックスあたり、0.01μg以上100μg以下であってもよく、0.1μg以上100μg以下であってもよく、0.1μg以上10μg以下であってもよく、0.2μg以上5μg以下であってもよく、0.25μ以上4.3μ以下であってもよい。
本実施の形態の人工血管では、上述した細胞外マトリックスに、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドが付加され得る。なお、当該アミノ酸配列において「O」は、ヒドロキシプロリンを示している。
上記ペプチドは、血栓の形成を抑制する効果を有している。それ故に、上記構成によれば、人工血管内に血栓が形成されることを抑制することができる。細い人工血管には血栓が形成され易いが、上記ペプチドを備えた人工血管では、血栓の形成を著しく抑制することができる。
例えば、本実施の形態の人工血管が、内腔の直径が短い場合(例えば、4mm以下)、および/または、比較的長く生体内に存在し得るものである場合には、本実施の形態の人工血管に、上記ペプチドが付加されていることが好ましい。
上記アミノ酸配列中の「POG」は、細胞外マトリックス中のコラーゲンに対して結合すると考えられるアミノ酸配列であり、上記アミノ酸配列中の「REDV」(配列番号1)は、人工血管を移植した後で、移植先の細胞(例えば、血管を構成する細胞)に対して結合すると考えられるアミノ酸配列である。
上記細胞外マトリックスに対して上記ペプチドを付加する場合、化学結合(例えば、共有結合など)を介して、上記細胞外マトリックスに上記ペプチドを連結させてもよいし、化学結合(例えば、疎水結合や水素結合など)を介して、上記細胞外マトリックスに上記ペプチドを吸着させてもよい。つまり、上記細胞外マトリックスと上記ペプチドとの間の相互作用の様式は、特に限定されない。
上述したペプチドは、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドであってもよいし、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドに対して更に別のアミノ酸配列が連結されているペプチドであってもよい。
別のアミノ酸配列を連結する場合、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドのC末端およびN末端の少なくとも一方に、別のアミノ酸配列を連結することが可能である。
連結される別のアミノ酸配列の具体例としては特に限定されないが、例えば、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドのC末端およびN末端の少なくとも一方に、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドをタンデムに連結してもよい。なお、この場合には、各アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。上記構成によれば、人工血管の内腔に血栓が形成されることを、より効果的に防ぐことができる。
また、連結される別のアミノ酸配列の具体例としては、例えば、各種タグ(例えば、Mycタグ、Hisタグ、HAタグ、GSTタンパク質など)であってもよい。上記構成によれば、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドを、簡便にかつ純度高く精製することができる。
また、連結される別のアミノ酸配列の具体例としては、例えば、RGDS配列、または、GVPGI配列であってもよい。上記構成によれば、細胞接着を促進させる、および/または、内皮細胞の接着および増殖を促進させることができる。
上述したアミノ酸配列において、nおよびmは、各々独立して、1以上の任意の整数であり得る。
例えば、nは、1以上の整数であればよく特に限定されないが、例えば、1以上20以下の整数であってもよく、2以上20以下の整数であってもよく、3以上20以下の整数であってもよく、4以上20以下の整数であってもよく、5以上20以下の整数であってもよく、6以上20以下の整数であってもよく、7以上20以下の整数であってもよく、8以上20以下の整数であってもよく、9以上20以下の整数であってもよく、10以上20以下の整数であってもよい。なお、上述した例ではnの上限値を20としたが、これに限定されない。例えば、各場合において、nの上限値は、30であってもよいし、40であってもよいし、50であってもよいし、それよりも大きくてもよい。
一方、mは、1以上の整数であればよく特に限定されないが、例えば、1以上50以下の整数であってもよく、1以上40以下の整数であってもよく、1以上30以下の整数であってもよく、1以上20以下の整数であってもよく、1以上15以下の整数であってもよく、1以上10以下の整数であってもよく、1以上5以下の整数であってもよい。勿論、mの上限値は、50よりも大きくてもよい。
nとmとの組み合わせは、上述したものの全ての組み合わせであり得る。例えば、nが「3以上20以下の整数」でありmが「1以上10以下の整数」であってもよいし、nが「7以上20以下の整数」でありmが「1以上10以下の整数」であってもよい。当該構成によれば、より良く血栓の形成を防ぐことができる。
上記アミノ酸配列中の「X」は、「POG」と「REDV」とを連結するためのペプチドリンカーである。本実施の形態の人工血管では、「POG」と「REDV」とを直接連結することも可能であって、この場合には「X」が省略されることになる。
上記Xの具体的な構成としては特に限定されないが、「POG」や「REDV」の機能を損なわないものであるとともに、「POG」および「REDV」を、各々の相手である、コラーゲンおよび細胞に対して効果的に提示し得るものであることが好ましい。
上記Xの具体的な構成としては、例えば、1以上の任意の数のG(グリシン)からなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のA(アラニン)からなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のS(セリン)からなるペプチドリンカー、または、G(グリシン)、A(アラニン)およびS(セリン)からなる群から選択される少なくとも2種類のアミノ酸からなるペプチドリンカーであることが好ましい。
上記Xの具体的な構成としては、1以上の任意の数のG(グリシン)からなるペプチドリンカー、または、1以上の任意の数のA(アラニン)からなるペプチドリンカーであることが更に好ましいといえる。
G(グリシン)およびA(アラニン)は、脂肪族である小さな側鎖を有するアミノ酸である。これらのアミノ酸であれば、側鎖が小さく立体障壁が小さいので、「POG」および「REDV」を、各々の相手に対して効果的に提示することができる。例えば、これらのアミノ酸であれば、「POG」および「REDV」が各々の相手と接近および接触することを妨げることが無い。また、これらのアミノ酸であれば、側鎖が小さな脂肪酸であるので、「POG」や「REDV」の機能に対して影響を与えることを抑えることができる。例えば、これらのアミノ酸であれば、側鎖に大きな極性が存在しないので、「POG」や「REDV」の立体構造を大きく変化させることが無い。
上記「X」が複数のアミノ酸によって形成されている場合、上記「X」を形成するアミノ酸の数は特に限定されないが、例えば、1個であってもよく、2個であってもよく、3個であってもよく、4個であってもよく、5個であってもよい。勿論、6個以上であってもよい。例えば、上記Xとしては、「G」、「GG」、「GGG」、「GGGG」(配列番号2)、「GGGGG」(配列番号3)、「A」、「AA」、「AAA」、「AAAA」(配列番号4)または「AAAAA」(配列番号5)を用いることができるが、勿論、これらに限定されない。
アミノ酸からなるペプチドリンカーである上記「X」を省略する場合、「POG」と「REDV」とを直接連結することも可能であるが、「POG」と「REDV」とをアミノ酸以外のリンカーによって連結してもよい。
このようなリンカーとしては特に限定されないが、例えば、糖、脂肪、核酸、または、合成高分子などを挙げることができる。上述したアミノ酸配列(POG)−X−(REDV)からなるペプチドにおいて、「X」が0個のアミノ酸からなるペプチドリンカーである場合には、「POG」と「REDV」とを直接連結する場合と、「POG」と「REDV」とをアミノ酸以外のリンカーによって連結する場合と、が包含される。
本実施の形態の人工血管では、上述した細胞外マトリックスは、DNase処理されたものであることが好ましい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができる。細胞外マトリックスからの細胞および細胞の構成成分の除去率が上がれば上がるほど、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
なお、DNase処理の詳細は、後述する〔2−4.DNase処理工程〕の欄にて詳細に説明するので、ここでは、その説明を省略する。
本実施の形態の人工血管では、上述した細胞外マトリックスは、洗浄液にて洗浄されたものであることが好ましい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く除去することができる。細胞外マトリックスからの細胞および細胞の構成成分の除去率が上がれば上がるほど、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
なお、洗浄処理の詳細は、後述する〔2−5.洗浄工程〕の欄にて詳細に説明するので、ここでは、その説明を省略する。
〔2.人工血管の製造方法〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、架橋工程および増殖因子付加工程を有している。
また、本実施の形態の人工血管の製造方法は、上記工程以外に、ペプチド付加工程、DNase処理工程および洗浄工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程を有していてもよい。以下に、各工程について説明する。
〔2−1.架橋工程〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスを、架橋剤によって架橋する架橋工程を含んでいる。
生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスとしては、市販の細胞外マトリックスを用いてもよいし、様々な方法によって作製してもよい。
生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスを作製する場合の具体的な方法は特に限定されず、例えば、生体由来の血管組織を加圧処理することによって細胞が除去された細胞外マトリックスを作製することも可能であるし、生体由来の血管組織を界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、トリトンX−100(登録商標)、または、ソルビタン)にて処理することによって細胞が除去された細胞外マトリックスを作製することも可能であるし、生体由来の血管組織を高塩濃度の溶媒によって処理することによって細胞が除去された細胞外マトリックスを作製することも可能である。
血管組織を加圧処理することによって得られる細胞外マトリックスは、極めてインタクトな状態に近い細胞外マトリックスであるとともに、効率よく細胞および細胞の構成成分が除去された細胞外マトリックスである。このような細胞外マトリックスを用いて人工血管を作製すれば、基本的に、生体適合性が高く拒絶反応が低い人工血管となり得る。
上述した生体としては特に限定されないが、例えば、非ヒト動物(例えば、走鳥類、鳥類、または、哺乳類など)を挙げることが可能である。更に、上記哺乳類としては特に限定されないが、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、サルなどを揚げることができる。
上述した生体の中では、走鳥類(例えば、エミュー、キーウィ、ダチョウ、ヒクイドリ、または、レアなど)が好ましいといえる。走鳥類の首は一般的に長く、当該首に存在する頚動脈などの血管は、細く、長く、かつ、分岐が少ない。それ故に、走鳥類の血管を用いて人工血管を作製すれば、より内腔が細く、より長く、かつ、より分岐の無い人工血管を実現することができる。このような人工血管は、臨床の現場において、より有用であるといえる。また、走鳥類などは飼育が容易であるために、多量の血管組織を安定的に供給することもできる。
上記生体に由来する血管組織としては特に限定されず、動脈であってもよいし、静脈であってもよい。より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記血管組織は動脈であることが好ましいといえる。一方、より容積の大きな内腔を有する人工血管を実現するという観点からは、上記血管組織は静脈であることが好ましいといえる。それ故に、人工血管の目的に合わせて、血管組織の種類を適宜選択すればよい。
上記血管組織は、その断面における内腔の形状を円形と考えた場合に、当該円の直径が4mm以下である。更に具体的には、上記円の直径が、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよく、1.5mm以下であってもよく、または、1mm以下であってもよい。なお、材料となる血管組織を適宜選択することによって、所望の太さの内腔を有する人工血管を実現することができる。
上記血管組織は、その断面における内腔の面積が、π×2mm以下であってもよく、π×1.5mm以下であってもよく、π×1mm以下であってもよく、π×0.75mm以下であってもよく、π×0.5mm以下であってもよい(π≒3.14)。なお、この場合には、血管組織の断面における内腔の形状は、真円に限らない。
上記血管組織は、その長さは特に限定されないが、例えば、10cm以上であってもよく、20cm以上であってもよく、30cm以上であってもよく、40cm以上であってもよく、50cm以上であってもよく、60cm以上であってもよく、70cm以上であってもよく、80cm以上であってもよい。血管組織の長さは、好ましくは40cm以上であり、より好ましくは80cm以上である。
上述したように、血管組織に対して加圧処理などの処理を行い、細胞が除去された細胞外マトリックスを作製することも可能である。このとき、略インタクトな状態の細胞外マトリックスが得られるので、本実施の形態の人工血管のサイズと、元々の血管組織のサイズとは、略同じになる。
例えば、生体由来の血管組織を加圧処理することによって細胞が除去された細胞外マトリックスを作製する場合、血管組織を加圧した後で減圧する時に、化学物質等を使用すること無く、細胞を破裂させて除去するとともに、細胞外マトリックスの構造を圧縮状態から復元する。それ故に、当該方法であれば、より、インタクトな状態に近い細胞外マトリックスを得ることができる。
上述した血管組織は、外科的な手術によって生体(例えば、非ヒト動物)から摘出して入手することが可能である。また、市販されている既に摘出されている血管組織を購入することによって入手することも可能である。
上述したように、例えば、生体由来の血管組織を加圧処理することによって、細胞が除去された細胞外マトリックスを作製することが可能である。加圧処理の具体的な方法としては特に限定されず、血管組織から細胞および細胞の構成成分が除去される程度に、血管組織に対して圧力を加えられる方法であればよい。それ故に、適宜、周知の加圧装置を用いることが可能である。
血管組織に対して加える圧力の大きさは特に限定されないが、例えば、200MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、300MPa以上1000MPa以下であることが更に好ましく、500MPa以上1000MPa以下であることが最も好ましい。
上記構成によれば、血管組織に含まれる細胞を、より効率良く破壊できるとともに、当該破壊された細胞および細胞の構成成分を、より効率よく細胞外マトリックスから除去することができる。細胞外マトリックスからの細胞および細胞の構成成分の除去率が上がれば上がるほど、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
血管組織に対して圧力を加える場合の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、液体中の血管組織に対して圧力を加えればよい。
上記液体の具体的な構成としては特に限定されず、例えば、PBS(phosphate buffered saline)、または、生理食塩水などを用いることができる。よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによって、より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記液体は、生理食塩水であることが好ましいといえる。
生体由来の血管組織を加圧処理することによって細胞が除去された細胞外マトリックスを作製する場合、血管組織の温度を特定の温度に制御してもよいし、特定の温度に制御しなくてもよい。血管組織の温度を特定の温度に制御する場合、例えば、37℃以上100℃以下に制御してもよい。上記構成によれば、よりインタクトに使い状態の細胞外マトリックスを得ることができる。
上述したように、本実施の形態の人工血管の製造方法は、生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスを、架橋剤によって架橋する架橋工程を含んでいる。
上記架橋剤としては特に限定されないが、例えば、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体またはオキサゾリン系ポリマーであることが好ましい。
上述した架橋剤の中では、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体を用いることが、より好ましい。その理由は、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体は高分子量体であるために、脱細胞組織の内部へは深く浸透すること無く、血管の外層のみを部位選択的に架橋できるからである。
上述した架橋剤の更に具体的な例として、上述した「8−arm PEG−NHS」を挙げることができる。
細胞外マトリックスの架橋度は、特に限定されない。架橋度が高いほど、本実施の形態の人工血管は、生体内で分解され難くなり、その結果、生体内に長時間存在することになる。一方、架橋度が低いほど、本実施の形態の人工血管は、生体内で分解され易くなり、その結果、生体内に短時間存在することになる。
本発明は、人工血管の分解速度と血管組織の再生速度とのバランスを取ることによって、生体内で所望の期間機能した後で分解されるとともに、分解が進むにしたがって、生体内で再生された血管組織に置換される人工血管を実現する。このとき、人工血管の分解速度の調節は、主として架橋された細胞外マトリックスによって行われ、血管組織の再生速度の調節は、主として細胞外マトリックスに付加される増殖因子によって行われる。
それ故に、細胞外マトリックスの架橋度は、細胞外マトリックスに付加される増殖因子の量および/または種類に応じて、適宜、設定することができる。
例えば、細胞外マトリックスに付加される増殖因子による血管組織の再生速度が速い場合には、細胞外マトリックスの架橋度は低くてよい。一方、細胞外マトリックスに付加される増殖因子による血管組織の再生速度が遅い場合には、細胞外マトリックスの架橋度は高くてよい。
細胞外マトリックスの架橋度は、細胞外マトリックスを架橋する方法を調節することによって、所望の値にすることができる。細胞外マトリックスを架橋する具体的な方法としては特に限定されないが、例えば、上述した架橋剤を含む水溶液中に、細胞外マトリックスを浸漬させる方法を挙げることができる。
上記水溶液の具体的な構成としては、例えば、水または生理食塩水などを用いることが可能である。上記水溶液の中では、生理食塩水が好ましい。上記構成であれば、よりインタクトな細胞外マトリックスによって形成された人工血管を実現することができる。
上記水溶液における架橋剤の濃度は、特に限定されないが、0.1重量%以上20重量%未満であってもよく、0.1重量%以上10重量%未満であってもよく、0.1重量%以上5重量%未満であってもよく、0.1重量%以上2.5重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.5重量%未満であってもよく、0.1重量%以上2.4重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.3重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.1重量%以下であってもよく、0.1重量%以上2.0重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.9重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.8重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.7重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.6重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.5重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.4重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.3重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.2重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.1重量%以下であってもよく、0.1重量%以上1.0重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.9重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.8重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.7重量%以下であってもよく、0.1重量%以上0.6重量%以下であってもよい。
更に、上記水溶液における架橋剤の濃度は、上述した各濃度範囲の下限値を、0.1重量%から0.6重量%または5重量%へ変更したものであってもよい。例えば、上記水溶液における架橋剤の濃度は、5重量%以上10重量%未満であってもよく、5重量%以上20重量%未満であってもよい。
上記構成であれば、細胞外マトリックスが過度に架橋されることを防止することができ、より良いタイミングにて生体内で分解され得る人工血管を実現することができる。なお、生体内で分解されずに永久に生体内で機能し続けることが意図された人工組織を作製する場合には、2.5重量%よりも高い濃度の架橋剤を含む水溶液を用いて長時間、組織を架橋し、当該組織を人工組織として用いている。
細胞外マトリックスを浸漬させる水溶液の温度としては特に限定されないが、例えば、4℃以上80℃以下であってもよく、10℃以上60℃以下であってもよく、15℃以上50℃以下であってもよく、20℃以上40℃以下であってもよい。上記温度の中では、20℃以上40℃以下が好ましい。上記構成であれば、より良いタイミングで分解され得る人工血管を実現することができる。
細胞外マトリックスを水溶液に浸漬させる時間は特に限定されないが、例えば、1分間以上144時間以下であってもよく、30分間以上100時間以下であってもよく、1時間以上100時間以下であってもよく、3時間以上72時間以下であってもよく、24時間以上72時間以下であってもよい。上記時間の中では、1時間以上72時間以下が好ましい。上記構成であれば、より良いタイミングで分解され得る人工血管を実現することができる。
〔2−2.増殖因子付加工程〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、細胞外マトリックスに増殖因子を付加する増殖因子付加工程を有している。
細胞外マトリックスに対して増殖因子を付加する場合、化学結合(例えば、共有結合など)を介して、細胞外マトリックスに増殖因子を連結させてもよいし、化学結合(例えば、疎水結合や水素結合など)を介して、細胞外マトリックスに増殖因子を吸着させてもよい。つまり、細胞外マトリックスと増殖因子との間の相互作用の様式は、特に限定されない。
細胞外マトリックスに増殖因子を付加する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスと増殖因子とを混合することによって、細胞外マトリックスに増殖因子を付加することができる。更に具体的には、増殖因子を含む水溶液中に細胞外マトリックスを浸漬することによって、細胞外マトリックスに増殖因子を付加することができる。
増殖因子を含む水溶液の具体的な構成としては特に限定されないが、例えば、PBS(phosphate buffered saline)、または、生理食塩水などを用いることができる。よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによって、より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記水溶液は、生理食塩水であることが好ましいといえる。
上記水溶液中の増殖因子の濃度は特に限定されず、適宜、設定することができる。上記水溶液中の増殖因子の濃度は、例えば、1μg/mL以上1000μg/mL以下であってもよく、1μg/mL以上500μg/mL以下であってもよく、1μg/mL以上100μg/mL以下であってもよく、1μg/mL以上50μg/mL以下であってもよく、1μg/mL以上44.7μg/mL以下であってもよい。
更に、上記水溶液中の増殖因子の濃度は、上述した各濃度範囲の下限値を、1μg/mLから、4μg/mLまたは4.47μg/mLへ変更したものであってもよい。
上記増殖因子としては特に限定されず、例えば、血管壁または血管の構造の再生を促す増殖因子であればよい。
上記増殖因子の更なる具体例としては、FGF(fibroblast growth factor)、VEGF(epidermal growth factor)、TGF−β(transforming growth factor-beta)、アンジオポエチンまたはPDGF(Platelet-Derived Growth Factor)を挙げることができる。
FGFの更なる具体例としては、aFGF、bFGFなどを挙げることができる。
TGF−βの更なる具体例としては、TGF−β1、TGF−β2などを挙げることができる。
細胞外マトリックスに付加されている増殖因子の量は特に限定されず、細胞外マトリックスの架橋度に応じて、適宜、設定することができる。
〔2−3.ペプチド付加工程〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、上記細胞外マトリックスに対して、アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドを付加するペプチド付加工程を含んでいてもよい。
当該ペプチド付加工程は、如何なるタイミングで行ってもよい。例えば、架橋工程の直後、または、増殖因子付加工程の直後に行うことが可能である。
上記アミノ酸配列(POG)−X−(REDV)を含むペプチドの構成の詳細については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
ペプチド付加工程において、細胞外マトリックスに対して上記ペプチドを付加する場合、化学結合(例えば、共有結合など)を介して、細胞外マトリックスに上記ペプチドを連結させてもよいし、化学結合(例えば、疎水結合や水素結合など)を介して、上記細胞外マトリックスに上記ペプチドを吸着させてもよい。つまり、上記細胞外マトリックスと上記ペプチドとの間の相互作用の様式は、特に限定されない。
細胞外マトリックスにペプチドを付加する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、細胞外マトリックスとペプチドとを混合することによって、細胞外マトリックスにペプチドを付加することができる。更に具体的には、ペプチドを含む液体中に細胞外マトリックスを浸漬することによって、細胞外マトリックスにペプチドを付加することができる。
ペプチドを含む液体の具体的な構成としては特に限定されないが、例えば、PBS(phosphate buffered saline)、または、生理食塩水などを用いることができる。よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによって、より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記液体は、生理食塩水であることが好ましいといえる。
ペプチド付加工程では、細胞外マトリックスとペプチドとの混合物を加熱しながら、細胞外マトリックスにペプチドを付加してもよい。上記加熱温度としては特に限定されないが、混合物を、例えば37℃以上100℃以下に加熱することが好ましく、60℃以上100℃以下に加熱することが更に好ましく、60℃以上80℃以下に加熱することが更に好ましく、60℃以上75℃以下に加熱することが最も好ましい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに対して上記ペプチドを効率よく付加できるだけでなく、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分を、より効率良く破壊および除去することができる。
ペプチド付加工程において、細胞外マトリックスと上記ペプチドとの混合物を加熱する時間としては特に限定されないが、例えば、1分間以上180分間以下であることが好ましく、10分間以上120分間以下であることが更に好ましく、30分間以上60分間以下であることが最も好ましい。
上記構成によれば、長すぎず、かつ、短すぎない時間にて混合物を加熱するので、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分を、より効率良く破壊および除去することができる。
ペプチド付加工程では、細胞外マトリックスと上記ペプチドとの混合物における上記ペプチドの濃度は特に限定されず、適宜、設定することが可能である。例えば、上記細胞外マトリックスと上記ペプチドとの混合物における上記ペプチドの濃度は、1μM以上1M以下であってもよく、10μM以上1M以下であってもよく、100μM以上1M以下であってもよく、1mM以上1M以下であってもよく、10mM以上1M以下であってもよく、100mM以上1M以下でもあってもよい。勿論、本発明は、これらの濃度に限定されない。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに対して多量のペプチドを付着させることができるので、人工血管の内腔に血栓が形成されることをより良く防止することができる。
ペプチド付加工程において細胞外マトリックスとペプチドとの混合物を加熱する場合、当該加熱の後で、混合物の温度を下げる処理を行ってもよい。
この場合、温度を下げる具体的な方法は特に限定されないが、例えば、加熱された混合物を室温(例えば、25℃)に放置することによって、徐々に温度を下げてもよい。上記構成によれば、混合物の温度が徐々に低下するので、細胞外マトリックスにペプチドを効率よく付加することができるとともに、急激な温度変化によって生じ得るペプチドの変性を防ぐことができる。
〔2−4.DNase処理工程〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、上記細胞外マトリックスに対して、DNase処理を行うDNase処理工程を有していてもよい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができる。細胞外マトリックスからの細胞および細胞の構成成分の除去率が上がれば上がるほど、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
上記DNase処理工程は、如何なるタイミングで行ってもよい。例えば、架橋工程の直後に行ってもよいし、増殖因子付加工程の直後に行ってもよいし、ペプチド付加工程の直後に行ってもよい。
DNase処理工程におけるDNase処理は、DNase(例えば、市販されている各種DNase)が機能し得る液体中に、DNaseおよび上記細胞外マトリックスを加えることによって行うことが可能である。
上記液体の具体的な構成としては特に限定されず、例えば、PBS(phosphate buffered saline)または生理食塩水などに、MgClおよび/またはCaClなどの2価イオンの供給源を加えたDNase処理溶液を用いることができる。よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによってより強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記液体は、生理食塩水であることが好ましいといえる。
上記DNase処理溶液中のDNaseの濃度としては特に限定されないが、例えば、1U/mL以上1000U/mL以下であってもよく、10U/mL以上500U/mL以下であってもよく、40U/mL以上100U/mL以下であってもよい。
上記構成であれば、低すぎず、かつ、高すぎないDNaseの濃度にてDNase処理を行うので、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができるのみならず、人工血管に残留するDNaseの量を低く抑えることができる。そして、これによって、強度の高い人工血管を実現することができるとともに、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
DNaseは、その活性を発現するために2価イオン(例えば、マグネシウムイオンおよび/またはカルシウムイオンなど)を必要とするので、DNase処理溶液はMgClおよび/またはCaClなどの2価イオンの供給源を含んでいることが好ましい。
上記構成によれば、DNase処理溶液中のDNaseの活性を上げることができるので、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができる。
上記DNase処理溶液中のMgClおよびCaClの濃度としては特に限定されず、用いるDNaseの特性に応じて適宜設定することができる。上記DNase処理溶液中のMgClおよびCaClの濃度は、例えば、10mM以上50mM以下であってもよいし、20mM以上40mM以下であってもよいし、20mMであってもよい。勿論、本発明は、これらに限定されない。
DNase処理工程におけるDNase処理の温度は特に限定されず、適宜、設定することができる。上記温度としては、例えば、35℃以上40℃以下であってもよいし、37℃であってもよい。
DNase処理工程におけるDNase処理の処理時間は特に限定されず、適宜、設定することができる。上記処理時間としては、例えば、6日間以下であることが好ましく、5日間以下であることが更に好ましく、4日間以下であることが更に好ましく、3日間以下であることが最も好ましい。なお、当該処理時間の下限値は特に限定されず、例えば、0.5日間であってもよいし、1日間であってもよい。
上記構成によれば、よりインタクトな状態に近い細胞外マトリックスによって人工血管が作製されるので、より強度が高い人工血管を実現することができる。
DNase処理工程におけるDNase処理の処理時間は、後述する洗浄工程の処理時間に応じて設定することもできる。例えば、DNase処理工程におけるDNase処理の処理時間と洗浄工程における処理時間との合計が、6日間以下であることが好ましい。
上記構成によれば、よりインタクトな状態に近い細胞外マトリックスによって人工血管が作製されるので、より強度が高い人工血管を実現することができる。
以上、DNase処理工程の具体的な構成について説明したが、DNase処理工程は、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く破壊および除去することができる工程であることが好ましい。
例えば、原材料である細胞外マトリックス(例えば、架橋工程において、架橋する前の細胞外マトリックス)に残存している細胞、および細胞の構成成分の量を100(100%)とした場合、DNase処理工程は、当該量を、90(90%)以下にする工程であることが好ましく、80(80%)以下にする工程であることが更に好ましく、70(70%)以下にする工程であることが更に好ましく、60(60%)以下にする工程であることが更に好ましく、50(50%)以下にする工程であることが更に好ましく、40(40%)以下にする工程であることが更に好ましく、30(30%)以下にする工程であることが更に好ましく、20(20%)以下にする工程であることが更に好ましく、10(10%)以下にする工程であることが更に好ましく、5(5%)以下にする工程であることが更に好ましく、1(1%)以下にする工程であることが更に好ましいといえる。
〔2−5.洗浄工程〕
本実施の形態の人工血管の製造方法は、上記細胞外マトリックスに対して洗浄処理を施す洗浄工程を有していてもよい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く除去することができる。細胞外マトリックスからの細胞および細胞の構成成分の除去率が上がれば上がるほど、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。
上記洗浄工程は、如何なるタイミングで行ってもよい。例えば、架橋工程の直後に行ってもよいし、増殖因子付加工程の直後に行ってもよいし、ペプチド付加工程の直後に行ってもよいし、DNase処理工程の直後に行ってもよい。
洗浄工程における洗浄処理は、洗浄液にて細胞外マトリックスを洗浄することによって行うことができる。更に具体的には、洗浄液中に細胞外マトリックスを浸し、場合によっては更に振とうすることによって、細胞外マトリックスを洗浄すればよい。
上記洗浄液の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、PBS(phosphate buffered saline)、または、生理食塩水などを用いることができる。よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによって、より強度の高い人工血管を実現するという観点からは、上記液体は、生理食塩水であることが好ましいといえる。
上記洗浄液は、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)を含んでいることが好ましい。上記構成によれば、EDTAによって2価イオン(例えば、マグネシウムイオンなど)をキレートすることができ、これによって、DNase(例えば、血管組織に由来するDNaseおよび/またはDNase処理工程に用いるDNaseなど)などの酵素の活性を抑制することができる。DNaseなどの酵素の活性を抑制することができれば、よりインタクトに近い状態の細胞外マトリックスを得て、これによって、より強度の高い人工血管を実現することができる。
洗浄液中のEDTAの濃度は特に限定されないが、例えば、1mg/L以上1g/L以下であってもよく、10mg/L以上1g/L以下であってもよく、100mg/L以上500mg/L以下であってもよく、500mg/Lであってもよい。
洗浄工程における洗浄処理の時間は特に限定されないが、例えば、6日間以下であることが好ましく、5日間以下であることが更に好ましく、4日間以下であることが更に好ましく、3日間以下であることが最も好ましい。なお、当該処理時間の下限値は特に限定されず、例えば、0.5日間であってもよいし、1日間であってもよい。
上記構成によれば、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く除去することができるので、人工血管を移植したときに起こる様々な問題(例えば、拒絶反応など)を、より良く防ぐことができる。更に、実施例において示しているように、洗浄処理の時間が長すぎると人工血管の強度が低下する。一方、上記構成によれば、強度が高い人工血管を作製することができる。
洗浄工程における洗浄処理の温度は特に限定されないが、例えば、4℃以上37℃以下であってもよいし、4℃であってもよいし、37℃であってもよい。
以上、洗浄工程の具体的な構成について説明したが、洗浄工程は、細胞外マトリックスに残存している細胞、および、細胞の構成成分(具体的にはDNA)を、より効率良く除去することができる工程であることが好ましい。
例えば、原材料である細胞外マトリックス(例えば、架橋工程において、架橋する前の細胞外マトリックス)に残存している細胞、および細胞の構成成分の量を100(100%)とした場合、洗浄工程は、当該量を、90(90%)以下にする工程であることが好ましく、80(80%)以下にする工程であることが更に好ましく、70(70%)以下にする工程であることが更に好ましく、60(60%)以下にする工程であることが更に好ましく、50(50%)以下にする工程であることが更に好ましく、40(40%)以下にする工程であることが更に好ましく、30(30%)以下にする工程であることが更に好ましく、20(20%)以下にする工程であることが更に好ましく、10(10%)以下にする工程であることが更に好ましく、5(5%)以下にする工程であることが更に好ましく、1(1%)以下にする工程であることが更に好ましいといえる。
<1.架橋された人工血管の分解抑制−1>
グルタルアルデヒドによって架橋された人工血管の分解抑制能について検討した。以下に、検討の詳細を説明する。
ダチョウの頸動脈から採取した血管を生理食塩水中に浸漬した後、当該生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で上昇させた。生理食塩水中の血管に対してかかる圧力が1000MPaとなった時点で圧力の上昇を停止し、10分間、生理食塩水中の血管に1000MPaの圧力をかけた。
その後、生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で降下させて、常圧にまで戻した。
その後、上記血管に対して、3日間のDNase処理(40U/mLの濃度にてDNaseを含む水溶液を使用)、および、それに続く3日間の洗浄処理(洗浄液として、500mg/L EDTA、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む生理的食塩水を使用)を行った。
以上の工程にて、脱細胞化された細胞外マトリックスを入手した。
その後、脱細胞化された細胞外マトリックスをトリミングして、内径2mm、長さ5mmの試験用の細胞外マトリックスを作製した。
その後、室温にて、当該細胞外マトリックスを、2.5重量%、0.6重量%または0重量%の濃度にてグルタルアルデヒド(GA)(分子量:100.12)を含有する水溶液に5分間浸漬した。浸漬した後、細胞外マトリックスを生理食塩水で洗浄した。
次いで、上記細胞外マトリックスを、25℃の条件下にて、0.075重量%の濃度にてコラゲナーゼを含有する水溶液に浸漬した。なお、コラゲナーゼは、生体内に移植された人工血管を分解する酵素の1つである。浸漬した後、細胞外マトリックスを生理食塩水で洗浄した。
引張試験機(オートグラフ AGS;島津製作所)を用いて、生理食塩水で洗浄した各細胞外マトリックスの破断強度を測定した。そして、測定された破断強度に基づいて、Stress−Strain曲線を作成した。
なお、破断強度の測定方法は、引張試験機に添付のプロトコールにしたがった。具体的には、長さ5mmの血管を寝かせて当該血管の内腔に針金を挿入し、当該針金を、略円形である血管断面の円周方向へ引っ張った時の血管の強度を測定した。
図1に試験結果を示す。図1において、「白抜きの四角形」は、0重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液を用いた場合の試験結果を示し、「塗りつぶした四角形」は、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液を用いた場合の試験結果を示し、「三角形」は、2.5重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液を用いた場合の試験結果を示している。また、図1において、縦軸は、破断強度の相対値を示し、横軸は、コラゲナーゼを含有する水溶液に細胞外マトリックスを浸漬した時間を示している。
図1から明らかなように、0重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスでは、12時間のコラゲナーゼによる処理によって、破断強度が略10%にまで低下した。
0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスでは、12時間のコラゲナーゼによる処理によって、破断強度が略60%にまで低下した。
2.5重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスでは、12時間のコラゲナーゼによる処理によって、破断強度が略80%にまで低下した。
以上の結果は、水溶液中のグルタルアルデヒドの濃度(換言すれば、細胞外マトリックスの架橋の程度)を調節することによって、コラゲナーゼに対する人工血管の耐性(換言すれば、生体内における人工血管の分解速度)を調節することができることを示している。なお、生体内における人工血管の適切な分解速度を実現するためには、水溶液中のグルタルアルデヒドの濃度は、0重量%よりも高く、2.5重量%以下であることが好ましいといえる。
<2.架橋された人工血管の分解抑制−2>
グルタルアルデヒド、または、NHSにて活性化された8分岐を有するポリエチレングリコール、によって架橋された人工血管の分解抑制能について検討した。以下に、検討の詳細を説明する。
ダチョウの頸動脈から採取した血管を生理食塩水中に浸漬した後、当該生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で上昇させた。生理食塩水中の血管に対してかかる圧力が1000MPaとなった時点で圧力の上昇を停止し、10分間、生理食塩水中の血管に1000MPaの圧力をかけた。
その後、生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で降下させて、常圧にまで戻した。
その後、上記血管に対して、3日間のDNase処理(40U/mLの濃度にてDNaseを含む水溶液を使用)、および、それに続く3日間の洗浄処理(洗浄液として、500mg/L EDTA、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む生理的食塩水を使用)を行った。
以上の工程にて、脱細胞化された細胞外マトリックスを入手した。
その後、脱細胞化された細胞外マトリックスをトリミングして、内径2mm、長さ5mmの試験用の細胞外マトリックスを作製した。
その後、室温にて、当該細胞外マトリックスを、2.5重量%または0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒド(分子量:100.12)を含有する水溶液に5分間浸漬した。
また、上記試験とは別に、室温にて、当該細胞外マトリックスを、1重量%の濃度にて8分岐構造をもつ8−armPEG−NHS(日本油脂(株))(分子量:15000)を含有する水溶液に5分間または3時間浸漬した。
浸漬した後、細胞外マトリックスを生理食塩水で洗浄した。
引張試験機(オートグラフ AGS;島津製作所)を用いて、当該生理食塩水で洗浄した各細胞外マトリックス(コラゲナーゼ処理を施す前の細胞外マトリックス)の破断強度を測定した。なお、破断強度の測定方法は、引張試験機に添付のプロトコールにしたがった。破断強度の測定方法については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
次いで、上記細胞外マトリックスを、37℃の条件下にて2時間、0.075重量%の濃度にてコラゲナーゼを含有する水溶液に浸漬した。なお、コラゲナーゼは、生体内に移植された人工血管を分解する酵素の1つである。浸漬した後、細胞外マトリックスを生理食塩水で洗浄した。
引張試験機(オートグラフ AGS;島津製作所)を用いて、当該生理食塩水で洗浄した各細胞外マトリックス(コラゲナーゼ処理を施した後の細胞外マトリックス)の破断強度を測定した。なお、破断強度の測定方法は、引張試験機に添付のプロトコールにしたがった。破断強度の測定方法については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
図2に、コラゲナーゼ処理を施す前の細胞外マトリックスの破断強度に対する、コラゲナーゼ処理を施した後の細胞外マトリックスの破断強度の相対比を示す。なお、図2の一番左側の「Native」は、脱細胞した血管の結果を示している。一方、図2の左から2番目の「Native」は、記載した条件のコラゲナーゼにより処理した血管の結果を示している。
図2から明らかなように、2.5重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスでは、コラゲナーゼ処理を施す前後の破断強度が同程度の値であった。
一方、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスでは、コラゲナーゼ処理を施した後の破断強度は、コラゲナーゼ処理を施す前の破断強度の略75%の値であった。
また、1重量%の濃度にて8分岐構造をもつ8−armPEG−NHSを含有する水溶液に3時間間浸漬させた細胞外マトリックスでは、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスと略同じ試験結果が得られた。
更に、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬させた細胞外マトリックスの破断強度、および、1重量%の濃度にて8分岐構造をもつ8−armPEG−NHSを含有する水溶液に3時間間浸漬させた細胞外マトリックスの破断強度は、架橋していない細胞外マトリックスの破断強度とくらべて、酵素に対して有意(p<0.04)な耐性を有していることが明らかになった。
<3.架橋された人工血管の分解抑制−3>
F−F bypass graft(Femoral Femoral crossover bypass graft)移植によって、グルタルアルデヒドによって架橋された人工血管の分解抑制能について検討した。以下に、検討の詳細を説明する。
ダチョウの頸動脈から採取した血管を生理食塩水中に浸漬した後、当該生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で上昇させた。生理食塩水中の血管に対してかかる圧力が1000MPaとなった時点で圧力の上昇を停止し、10分間、生理食塩水中の血管に1000MPaの圧力をかけた。
その後、生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で降下させて、常圧にまで戻した。
その後、上記血管に対して、3日間のDNase処理(40U/mLの濃度にてDNaseを含む水溶液を使用)、および、それに続く3日間の洗浄処理(洗浄液として、500mg/L EDTA、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む生理的食塩水を使用)を行った。
以上の工程にて、脱細胞化された細胞外マトリックスを入手した。
図3に、以上のようにして得られた細胞外マトリックスのヘマトキシリン・エオシン染色の像を示す。
図3から明らかなように、洗浄した後の細胞外マトリックスには、核または細胞質(換言すれば、細胞)に対応する染色像が観察されなかった。つまり、洗浄した後の細胞外マトリックスからは、効果的に細胞および細胞の構成成分が除去されているとともに、細胞外マトリックスの構造が維持されていることが明らかになった。
次いで、上記細胞外マトリックスを、10μMの濃度にてポリペプチド((POG)−GGG−REDV)(配列番号6)を含有する生理食塩水に浸漬した状態にて、1時間60℃に加熱した後で徐冷した。これによって、上記ポリペプチドを、細胞外マトリックスの内腔に付加した。
更に、ポリペプチドが付加された細胞外マトリックスを、0重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液、または、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に5分間浸漬した。浸漬した後、細胞外マトリックスを1Lの生理食塩水で洗浄した。そして、当該細胞外マトリックスを、以下に説明するF−F bypass graft移植に用いた。
図4を用いて、F−F bypass graft移植の概要について説明する。
図4に示すように、まず、右足側の大腿部の動脈(RFA)を、縫合することによって閉じた。これによって、縫合した箇所から足先側への血流を阻害した。
同時に、上述した細胞外マトリックス(換言すれば、人工血管)を用いて、左足側の大腿部の動脈(LFA)から、右足側の大腿部の動脈へバイパス経路を形成した。これによって、バイパス経路を介して、縫合した箇所から足先側への血流を復活させた。
移植手術後のブタについては、手術した箇所を縫合した状態で飼育を継続し、手術後の経過を観察した。
移植手術後3週間目に、超音波エコーによって、移植された人工血管を流れる血流の有無を調べた。
図5に超音波エコーの結果を示す。図5に示すように、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬された細胞外マトリックスでは、血流に由来するドップラー画像が確認された。
更に、移植手術4週間目に、移植された人工血管を摘出するとともに、引張試験機(オートグラフ AGS;島津製作所)を用いて、当該人工血管の破断強度を測定した。なお、破断強度の測定方法は、引張試験機に添付のプロトコールにしたがった。破断強度の測定方法については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
図6に試験結果を示す。図6において、「Control」は、脱細胞化処理した血管の結果を示している。
図6から明らかなように、0重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬された細胞外マトリックスでは、移植前の略10%にまで破断強度が低下していた。
一方、0.6重量%の濃度にてグルタルアルデヒドを含有する水溶液に浸漬された細胞外マトリックスでは、移植前の略60%にまで破断強度が低下していた。
つまり、in−vivoにおいても、細胞外マトリックスを架橋することによって、人工血管の分解速度を調節することができることが明らかになった。
<4.増殖因子が付加されている人工血管の作製>
ダチョウの頸動脈から採取した血管を生理食塩水中に浸漬した後、当該生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で上昇させた。生理食塩水中の血管に対してかかる圧力が1000MPaとなった時点で圧力の上昇を停止し、10分間、生理食塩水中の血管に1000MPaの圧力をかけた。
その後、生理食塩水中の血管にかかる圧力を、66.7MPa/minの速度で降下させて、常圧にまで戻した。
その後、上記血管に対して、3日間のDNase処理(40U/mLの濃度にてDNaseを含む水溶液を使用)、および、それに続く3日間の洗浄処理(洗浄液として、500mg/L EDTA、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含む生理的食塩水を使用)を行った。
以上の工程にて、脱細胞化された細胞外マトリックスを入手した。
その後、脱細胞化された細胞外マトリックスをトリミングして、内径2mm、長さ5mmの試験用の細胞外マトリックスを作製した。
一方、bFGF製剤(組換bFGF(トラフェルミン)、100μg/mL、科研製薬)を、周知のクロラミンT法により、I125(370kBq)によって放射線ラベル化した。
上述した試験用の細胞外マトリックスを、放射線ラベル化されたbFGFを含む水溶液中に15分間浸漬した後、生理食塩水によって洗浄した。なお、放射線ラベル化されたbFGFを含む水溶液としては、0μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液と、4.47μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液と、44.7μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液と、を用いた。
細胞外マトリックスに付加されているbFGFの量を、γカウンターによって測定されたγ線量に基づいて算出した。
図7に試験結果を示す。具体的に、図7には、0μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液、4.47μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液、および、44.7μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液の各々を用いた場合の試験結果を示している。更に具体的に、図7には、各水溶液について、3つのデータが示されており、当該3つのデータは、図7の左側から順に、「生理食塩水によって洗浄されていない細胞外マトリックスに付加されているbFGFの量」、「生理食塩水によって3回洗浄された後の細胞外マトリックスに付加されているbFGFの量」、「生理食塩水によって6時間洗浄された後の細胞外マトリックスに付加されているbFGFの量」となっている。
図7に示すように、44.7μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いた場合には、細胞外マトリックスに対して、略4.3μgのbFGFが付加された。一方、4.47μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いた場合には、細胞外マトリックスに対して、略0.25μgのbFGFが付加された。
更に、図7に示すように、細胞外マトリックスとbFGFとの結合は強く、生理食塩水程度の洗浄では、当該結合が解離しないことが明らかになった。つまり、生体内においても、細胞外マトリックスとbFGFとの結合が安定して維持され得ることが明らかになった。
正電荷を有するbFGFは、細胞外マトリックス内の負電荷を有する部分へ、静電的に吸着していると考えられる。このことは、細胞外マトリックスを架橋して細胞外マトリックス内のカルボキシル基の量を調節することによって、細胞外マトリックスに付加されるbFGFの量を調節可能であることを示唆している。
<5.増殖因子が付加されている人工血管の組織再生誘導効果−1>
上記<3.増殖因子が付加されている人工血管の作製>にしたがって、増殖因子が付加されている人工血管を作製した。なお、当該実施例では、細胞外マトリックスを浸漬させる水溶液として、0μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液、50μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液、または、500μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いた。
作製した人工血管を、7週齢のSDラットの背中皮下へ移植した。
そして、1週間後に移植した人工血管を摘出して、人工血管の周囲に誘導されている組織の様子を観察した。
図8(a)〜図8(c)に、観察結果を示す。具体的に、図8(a)は、0μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いて作製された人工血管の様子を示し、図8(b)は、50μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いて作製された人工血管の様子を示し、図8(c)は、500μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いて作製した人工血管の様子を示している。
図8(a)〜図8(c)に示すように、増殖因子が付加されている人工血管の場合には、人工血管の分解が進むとともに、血管組織の再生を誘導できることが明らかになった。
<6.増殖因子が付加されている人工血管の組織再生誘導効果−2>
上述した<4.増殖因子が付加されている人工血管の作製>にて作製した人工血管(具体的には、44.7μg/mLの濃度にてbFGFを含む水溶液を用いて作製した人工血管であって、生理食塩水によって6時間洗浄された人工血管)を、F−F bypass graft移植によって、ブタへ移植した。
移植手術後、経時的に、超音波エコーによって、移植された人工血管を流れる血流の有無を調べた。
移植後、3週間および9週間において、図5に示したデータと同様に、血流に由来するドップラー画像が確認された。
<7.架橋された人工血管の力学強度の変化>
ダチョウの頸動脈から採取した動脈を超高圧処理法にて脱細胞化した。
その後、i)臨床で一般的に用いられているグルタルアルデヒド(GA)架橋法に従って、脱細胞化された血管を0.6%のグルタルアルデヒド溶液中に室温にて5分間浸漬してから生理食塩水で洗浄した人工血管と、ii)脱細胞化された血管を1.0%の8arm PEG−NHS(化学構造中の「n」は約42、「m」は4)水溶液中に37℃にて3時間浸漬してから洗浄した人工血管と、を作製した。
その後、両方の人工血管を0.075%のコラゲナーゼ水溶液に浸漬し、経時的に、人工血管の破断強度を測定した。なお、破断強度の測定は、既に説明した方法にしたがって行った。
試験結果を、図9に示す。なお、図9では、横軸にコラゲナーゼの処理時間を示し、縦軸に破断強度を示している。
未架橋の人口血管では、2時間のコラゲナーゼ処理によって破断強度が50%程度にまで低下し、12時間のコラゲナーゼ処理によって破断強度が数%程度にまで低下した。
これに対して、0.6%のグルタルアルデヒド溶液を用いて架橋した人工血管では、コラゲナーゼ処理の時間によらず、破断強度がほぼ一定の値を示した。
一方、8arm PEG−NHS水溶液を用いて架橋した人工血管では、2時間のコラゲナーゼ処理では、0.6%のグルタルアルデヒド溶液を用いて架橋した人工血管と同程度の破断強度を維持したが、12時間のコラゲナーゼ処理では、未架橋の人口血管と同様に破断強度が数%程度にまで低下した(換言すれば、分解された)。
以上の結果より、8arm PEG−NHS水溶液を用いて架橋した人工血管は、短時間のコラゲナーゼ処理に対しては分解耐性を示すものの、分解特性を保持していることが明らかになった。
<8.架橋された人工血管の免疫応答>
上述した<7>と同様に架橋した人工血管を作製して、当該人工血管をラット皮下へ埋入した。
具体的には、両端を吻合した長さ1cmの人口血管をラットの背部皮下組織へと挿入し、移植してから1ヶ月後に、背部皮下組織の断面をHE染色およびCD68染色し、マクロファージの応答について検討した。
試験結果を、図10に示す。
未架橋の人口血管の場合、移植後2週間で、人工血管の内部にまで細胞が浸潤しており、この細胞はCD68陽性であることが明らかになった。このことから、未架橋の人工血管では、マクロファージが組織へ浸潤していることが明らかになった。
一方、8arm PEG−NHS水溶液を用いて架橋した人工血管、および、0.6%のグルタルアルデヒド溶液を用いて架橋した人工血管の場合、移植後4週間でも、人工血管の内部への細胞の浸潤は勿論のこと、人工血管の周辺組織における細胞の集積も認められなかった。
以上の結果より、8arm PEG−NHS水溶液を用いて架橋した人工血管は、0.6%のグルタルアルデヒド溶液を用いて架橋した人工血管と同様に、マクロファージの応用や細胞浸潤を完全に抑制できることが明らかになった。
本発明は、生体等に移植可能な人工血管に利用することができる。本発明の人工血管は、動脈用の人工血管として利用することができ、静脈用の人工血管としても利用することができる。また、本発明の人工血管は、細胞外マトリックスが由来する生物と異なる種の生物に対して移植するための人工血管として利用することができ、細胞外マトリックスが由来する生物と同じ種の生物に対して移植するための人工血管としても利用することができる。

Claims (15)

  1. 生体由来の血管組織から細胞を除去して得られる細胞外マトリックスによって形成されている人工血管であって、
    上記細胞外マトリックスは、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体によって架橋されており、
    上記細胞外マトリックスには、増殖因子が付加されていることを特徴とする人工血管。
  2. 上記増殖因子は、FGF、VEGF、TGF−β、アンジオポエチンまたはPDGFであることを特徴とする請求項1に記載の人工血管。
  3. 上記血管組織の内腔断面の直径が4mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の人工血管。
  4. 上記細胞外マトリックスには、更に、アミノ酸配列(POG)n−X−(REDV)m(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドが付加されていることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の人工血管。
  5. 上記nは、3以上20以下の整数であり、
    上記mは、1以上10以下の整数であることを特徴とする請求項に記載の人工血管。
  6. 上記Xは、1以上の任意の数のグリシンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のアラニンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のセリンからなるペプチドリンカー、または、グリシン、アラニンおよびセリンからなる群から選択される少なくとも2種類のアミノ酸からなるペプチドリンカーであることを特徴とする請求項4または5に記載の人工血管。
  7. 生体由来の血管組織から細胞が除去された細胞外マトリックスを、ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体によって架橋する架橋工程と、
    上記細胞外マトリックスに増殖因子を付加する増殖因子付加工程と、を含むことを特徴とする人工血管の製造方法。
  8. 上記架橋工程では、上記細胞外マトリックスを、上記ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体を5〜20重量%含む水溶液中で、3〜72時間、架橋させることを特徴とする請求項に記載の人工血管の製造方法。
  9. 上記増殖因子は、FGF、VEGF、TGF−β、アンジオポエチンまたはPDGFであることを特徴とする請求項7または8に記載の人工血管の製造方法。
  10. 上記血管組織の内腔断面の直径が4mm以下であることを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の人工血管の製造方法。
  11. 上記細胞外マトリックスに、更に、アミノ酸配列(POG)n−X−(REDV)m(ここで、nおよびmは、各々1以上の任意の整数であり、Xは、0個以上の任意の数の任意のアミノ酸からなるペプチドリンカーである)を含むペプチドを付加するペプチド付加工程を含むことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の人工血管の製造方法。
  12. 上記nは、3以上20以下の整数であり、
    上記mは、1以上10以下の整数であることを特徴とする請求項11に記載の人工血管の製造方法。
  13. 上記Xは、1以上の任意の数のグリシンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のアラニンからなるペプチドリンカー、1以上の任意の数のセリンからなるペプチドリンカー、または、グリシン、アラニンおよびセリンからなる群から選択される少なくとも2種類のアミノ酸からなるペプチドリンカーであることを特徴とする請求項11または12に記載の人工血管の製造方法。
  14. 上記ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体は、N−ヒドロキシイミド修飾多分岐型ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の人工血管。
  15. 上記ポリエチレングリコールのスクシンイミド誘導体は、N−ヒドロキシイミド修飾多分岐型ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項7〜13の何れか1項に記載の人工血管の製造方法。
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