JP6515059B2 - 沈香の品質評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、沈香の品質評価方法に関し、機器分析により沈香の品質を評価する。中でも、沈香の中でも最高品質である伽羅を特に見分けるための品質評価方法に関する。
沈香とは、アクイラリア(Aquilaria)属の材、特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着した香木であり、灰褐色〜黒褐色を呈し、所々に穴や溝を有するものもある。沈香は樹脂に富む部分は光沢のある黒点を有し、質は固く重い。また、僅かな香気があり、薫べると芳香を発する(非特許文献1)。
アクイラリア属は東南アジアに多く生息し、中でもベトナムやラオス、インドネシアに多く見られる。材質中に樹脂が沈着するためには落雷等の外傷や虫食い等、何らかの衝撃が必要とされるが、その詳細は明らかになっていない。
また沈香は、白檀や松等、樹齢を重ねると必ず心材に油が溜まるものとは異なり、必ずしも樹脂が沈着するものではないことから、非常に貴重な香木資源である。
沈香とひと口に言っても、その樹脂の種類や量は様々であり、その品質は様々である。沈香の中でも最高品質のものは伽羅(きゃら)と呼ばれ、非常に貴重である。
ことに近年は、沈香の限りある資源の貴重さから、財産的価値を見出す場合も多く、品質評価や真贋鑑定のニーズが強い。
一方、沈香は天然物であり、香木の種類、生育条件、樹齢や、樹脂沈着の要因、気象条件等、様々な要因が絡みあって沈香が得られることから、完全に同じ沈香は存在しないと言えるほどである。そのため、伽羅、沈香、人為的な沈香、偽物の沈香等と言った品質評価や真贋鑑定に際しての科学的分析手段による類型化は非常に困難であり、従来は熟練した鑑定者がその品質評価を担ってきた。
日本薬局方外生薬規格2015 第45頁
鑑定者による品質評価では、見た目(視覚)や、薫べた際の香り(嗅覚)、手触りや重み(触覚)等の五感を用いた官能評価が行われる。特に嗅覚を用いた評価においては、実際に沈香を加熱する必要があり、評価に用いた沈香は燃え尽きてしまう破壊試験となる。
一方で、沈香の濫獲等により資源そのものの数が激減し、沈香、特に伽羅は現在非常に入手が困難である。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、破壊試験、かつ熟練した技術が求められる鑑定者による官能評価を補助し、より確実な鑑定結果とするために、科学的分析技術として機器分析による新たな沈香の品質評価方法を提供することを目的とする。また、当該機器分析において、試料の破壊量をなくす(非破壊)又は極小にした新たな沈香の品質評価方法を提供することもさらなる目的とする。
本発明者らは、科学的分析技術における機器分析の一つである赤外分光分析を選択し、該分析により得られたスペクトルデータを比較、解析することによって、複数種の沈香又は偽物の沈香を類型化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、上記課題を解決するものであり、下記[1]〜[5]に関するものである。
[1] 中赤外又は熱赤外の赤外分光分析を用いて、沈香の1800〜900cm−1の領域における赤外吸収強度又は赤外透過強度を測定することを特徴とする沈香の品質評価方法。
[2] 前記赤外分光分析が中赤外を用いたATR法により行われる、前記[1]に記載の沈香の品質評価方法。
[3] 中赤外又は熱赤外の赤外分光分析を用いて、さらに沈香の4000〜1800cm−1の領域における赤外吸収強度又は赤外透過強度を測定し、
1660〜1590cm−1の領域に二股に分かれた2つのピークが存在し、かつ
4000〜900cm−1の全領域中において、前記二股に分かれた2つのピークのうちピーク強度が高い方のピークよりもピーク強度が高いピークが存在しない、又は、3つ以下存在する、前記[1]又は[2]に記載の沈香の品質評価方法。
[4] 4000〜900cm−1の全領域中に1030〜1028cm−1の領域におけるピークよりもピーク強度が高いピークが4つ以上存在する、又は、1030〜1028cm−1の領域にピークが存在しない、前記[3]に記載の沈香の品質評価方法。
[5] 4000〜900cm−1の全領域中、1640〜1630cm−1の領域にピーク強度が最も大きなピークが存在する、前記[3]又は[4]に記載の沈香の品質評価方法。
本発明に係る品質評価方法は、沈香の科学的センシングによる評価が可能であるという世界初の知見をもたらすものであり、破壊量が極小又は非破壊で沈香の品質や真贋を評価、判断することができる。さらには、鑑定者による鑑定技術を科学技術による評価手法で補助することにより、鑑定結果に客観性を与え、より確実なものとすることができる。本発明により、今後、沈香を始めとする香木の評価に共通の鑑定プラットフォーム基板技術としての発展が期待できる。
図1は、試料1である伽羅の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータである。 図2は、試料2である伽羅の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータである。 図3は、試料3である伽羅の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータである。 図4は、試料4である沈香の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータである。 図5は、試料5である沈香の偽物の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータである。 図6は、試料1である伽羅の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータの微分曲線を示すグラフである。 図7は、試料4である沈香の中赤外を用いたATR法によるスペクトルデータの微分曲線を示すグラフである。 図8は、本発明に係る沈香の品質評価方法を示すフロー図である。 図9は、OMNIC ver.6.2を用いて赤外吸収スペクトル(反射率)のグラフからピークを判定する手順のうち、閾値及び感度を調整し、ピークを検出するためのソフトウェア画面を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本来、赤外分光分析は、分子の振動や回転の状態を変化させるのに必要なエネルギーを与え(赤外光を照射し)、透過又は反射した光を測定する分析方法である。得られた赤外吸収スペクトルは主として分子の固有振動数に基づくため、分子が異なれば必ずスペクトルも異なる。そのため、物質の構造解析(同定)や定性分析、定量分析等を行うことができる。
一方、沈香は木材に樹脂が沈着した香木であることから、赤外分光分析により得られるスペクトルは木材や樹脂の種類によって様々であり収束しないものと考えられていた。しかしながら本発明では、鋭意検討の結果、沈香の品質によって該スペクトルを類型化することが可能となった。
すなわち、本発明に係る沈香の品質評価方法は、中赤外又は熱赤外の赤外分光分析(IR)を用いて、沈香の1800〜900cm−1の領域における赤外吸収強度又は赤外透過強度を測定することを特徴とする。
かかる方法により、試料となる沈香を非破壊で、又は極小の破壊量で沈香の品質を評価することができる。また、機器を用いた分析であることから、評価結果に客観性を与え、一般化することができる。なお、本明細書において、沈香の品質の評価とは、沈香の真贋の評価も含む意味である。
赤外分光分析(IR)における赤外光は中赤外又は熱赤外であればよいが、本明細書において、中赤外とは波長2.5〜25μmの波長域の光を意味し、熱赤外とは波長25μm〜1mmの波長域の光を意味する。中でも分子の振動の基本周波数を計測する観点から中赤外を用いたIRが好ましい。
また、赤外分光分析の中でも、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)が好ましい。
赤外分光分析において任意の測定法を用いることができ、透過法でも反射法でもよいが、試料を非破壊で測定できることからATR(全反射)法がより好ましい。
本発明においては、沈香の1800〜900cm−1の領域における赤外吸収スペクトルから沈香の品質を評価できるものであるが、より詳細なスペクトルの解析を行うために、測定領域を4000〜900cm−1とすることが好ましく、4000〜600cm−1とすることがより好ましい。
以下、沈香の赤外分光分析により得られるスペクトルについて、品質評価方法を具体的に述べる。
なお、本明細書における赤外吸収スペクトルは、ThermoFisher SCIENTIFIC社製のNicolet 8700FT−IRのFT−IR装置とSensIR社製のDuraScopeのATRアクセサリを用い、ATR法により下記の条件で測定した場合のものである。得られるピークトップの波数の誤差は約±1cm−1である。
(試料調製)
試料となる沈香から、厚さ0.5mm程度、サイズ2〜3mm四方の破片を切り出した。
(測定条件)
・測定法:ATR法
・光照射面積:直径1mm
・分解能:4cm−1
・スキャン回数:64回
なお、本明細書内で示す赤外吸収スペクトル(反射率)のグラフにおいて、反射率の値が急峻に下がっているところをピークと呼ぶ。ピークとして判定するか否かの詳細な判定方法については後述するが、反射率の微分と演算式とから判定される。スペクトルにおいてピークが見られるということは、その波数域で物質の吸収が見られることを表す。
また、本明細書においてはピーク強度の補正は行っていないが、ATR法においては、ATR結晶界面のもぐり込み深さが波長によって異なる。波数が低いほど(波長が長いほど)当該もぐり込み深さが大きくなるので、必要に応じて、ピーク強度が増大する傾向があることを勘案してスペクトルの解析を行う。
顕微−透過法で赤外分光分析を行う際の測定条件は上記と同様であり、上記とほぼ同様のスペクトルが得られる。
得られた赤外吸収スペクトル(反射率)のグラフの微分スペクトルと演算式から、ピークとするか否かの判定を行う。
まず、赤外吸収スペクトル(反射率)の微分スペクトルにおいて、長波数側から見た際に正から負の方向にゼロをまたぐものをピーク候補として検出する。なお、微分スペクトルの例として、伽羅の赤外吸収スペクトルを示す図1の微分スペクトルを図6に、沈香の赤外吸収スペクトルを示す図4の微分スペクトルを図7にそれぞれ示す。
ピークの判定はOMNIC ver.6.2を用いて、得られた赤外吸収スペクトル(反射率)のグラフのデータを読み込み、次いで、ピーク検出機能を選択し、図9に示したソフトウェア上の画面において閾値及び感度を調整し、閾値設定ラインと感度設定を行うことにより、上記で検出されたピーク候補からピークとして判定するものを自動検出する。なお、上記ソフトウェアを用いたピークの自動検出は、下記演算式を用いて判定されるものである。
Abs Sens=0.5*(Max−min)*exp(−0.01*sensitivity)
上記演算式中、「sensitivity」は0〜100の範囲で任意で設定できるものであるが、本明細書においては、試料間で差異が出ないように70に固定する。
なお、得られたスペクトルによっては、スペクトル分析おいて、手動でピーク検出を行うなど、適宜調整を行ってもよい。
沈香の真贋は、4000〜900cm−1の領域における赤外吸収スペクトルから判断することができる。具体的には、赤外吸収スペクトルにおいて下記(a)及び(b)に該当すれば、本物の沈香であると判断することができる。
(a)1660〜1590cm−1の領域に二股に分かれた2つのピークが存在する。
(b)前記(a)における二股に分かれた2つのピークのうちピーク強度が高い方のピークよりもピーク強度が高いピークが存在しない、又は、3つ以下存在する。
例えば伽羅の赤外吸収スペクトルを示す図1においては、4000〜900cm−1の領域中、1660〜1590cm−1の領域において、1633.65cm−1と1602.45cm−1に二股に分かれた2つのピークが存在し、1633.65cm−1のピークよりもピーク強度が高いピークは存在しない。
また、沈香の赤外吸収スペクトルを示す図4においては、4000〜900cm−1の領域中、1660〜1590cm−1の領域において、1656.04cm−1と1598.56cm−1に二股に分かれた2つのピークが存在し、1656.04cm−1のピークよりもピーク強度が高いピークは、3352.39cm−1、2923.29cm−1及び1030.31cm−1に3つ存在する。
一方、沈香の偽物の赤外吸収スペクトルを示す図5においては、4000〜900cm−1の領域中、1660〜1590cm−1の領域において、比較的ブロードではあるものの、1634.80cm−1と1597.34cm−1に二股に分かれた2つのピークが存在し、1634.80cm−1のピークよりもピーク強度が高いピークは、3329.26cm−1、2951.84cm−1、2921.99cm−1、2852.73cm−1及び1029.68cm−1に5つ存在する。
なお、本物の沈香であっても、沈香の種類によっては前記(a)及び/又は(b)に該当しない場合がある。
また、偽物の沈香のうち、沈香となる木を用いて、そこに人工的に樹脂を注入し、さらに金属等を挿入して重みを持たせたものは、木そのものが沈香となる木であることから、赤外吸収スペクトルが本物の沈香のスペクトルと似る場合がある。その場合には、金属の有無を検出する等、他の方法により真贋を判定することが可能である。
前記(a)について、1660〜1590cm−1の領域に二股に分かれた2つのピークがブロードとなっており、明確にピークと認識できない場合がある。この場合、沈香は偽物であることが多い。
また、1660〜1590cm−1の領域における2つのピークの反射率(ピーク強度)の差が1%以上で、かつ、高波数側のピークの方が大きい場合に伽羅であることが多い傾向がある。一方、偽物の沈香の場合は、当該2つのピークの反射率(ピーク強度)の差が1%未満程度であることが多い。例えば図5に示す偽物の沈香の場合、1634.80cm−1における反射率は91.5%であり、1597.34cm−1における反射率は91.7%であることから、その差は約0.2%と、1%未満である。
前記(a)及び(b)に該当する沈香に対し、赤外吸収スペクトルにおいて下記(c)及び/又は(d)により、その品質を評価することができる。なお、下記(c)及び(d)の少なくともいずれか一方に該当すれば伽羅である可能性が高い。なお参考として、図8に、特徴(a)〜(d)を用いた本発明に係る沈香の評価方法を示すフロー図を示す。
(c)4000〜900cm−1の全領域中に1030〜1028cm−1の領域におけるピークよりもピーク強度が高いピークが4つ以上存在する、又は、1030〜1028cm−1の領域にピークが存在しない。
(d)4000〜900cm−1の全領域中、1640〜1630cm−1の領域にピーク強度が最も大きなピークが存在する。
前記(c)に関し、伽羅である図1、3の赤外吸収スペクトルでは、それぞれ1029.94cm−1、1029.83cm−1のピークよりもピーク強度が高いピークは4つ以上存在する。また、伽羅である図2の赤外吸収スペクトルでは、1030〜1028cm−1の領域にピークが存在しない。
一方、沈香である図4の赤外吸収スペクトルでは、1030.31cm−1のピーク(誤差として1030〜1028cm−1の領域のピークと判断)よりもピーク強度が高いピークは2923.29cm−1の1つのみである。
前記(d)に関し、伽羅である図1〜3の赤外吸収スペクトルでは、それぞれ1633.65cm−1、1636.42cm−1、及び1634.96cm−1に最も大きなピークが存在する。一方、沈香である図4の赤外吸収スペクトルでは2923.29cm−1におけるピークが最も大きい。
また、上記(c)、(d)の他に、伽羅が示す傾向として、下記(e)、(f)を挙げることができる。
(e)前記(a)における二股に分かれた2つのピークが1640〜1630cm−1の領域と、1605〜1600cm−1の領域に1つずつ存在する。
(f)1500〜1000cm−1の領域において存在するピークが、シャープかつビジーに存在する。
上記(e)について、沈香であって伽羅ではない図4の赤外吸収スペクトルでは、1656.04cm−1と1598.56cm−1にピークが存在しており、伽羅である図1〜3の赤外吸収スペクトルに比べて、二股に分かれた2つのピークが離れて存在している。
上記(f)について、ピークがシャープであること、及びビジーに(密に)存在することの定義を定めることは難しいが、複数の試料を相対的に見た際に、赤外吸収スペクトルのグラフの微分スペクトルにおける縦軸の絶対値(振れ幅)が大きいほどシャープであると言え、特定波数領域中に検出されるピークの数が多いほどビジーであると言える。
例えば、ATR法によるスペクトルデータとその微分曲線を見比べると、伽羅(図1〜3及び図6参照)に比べて沈香(図4及び図7参照)は、1500〜1000cm−1の領域において検出されているピークがブロードになり、かつ密度も疎となっていることが分かる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<機器分析による品質評価:赤外分光分析−ATR法>
試料1〜5について、ThermoFisher SCIENTIFIC社製のNicolet 8700FT−IRのFT−IR装置とSensIR社製のDuraScopeのATRアクセサリを用いて、ATR法により赤外吸収スペクトルを測定した。測定条件は下記に示したとおりである。
(試料調製)
試料である香木から、厚さ0.5mm程度、サイズ2〜3mm四方の破片を切り出した。なお、香木は色が均一ではなく濃淡があるが、色が濃い方が香木の特徴を有していると一般的にはされていることから、各試料のうち色の濃い部分を選択して試料の調製を行った。なお、香木は5種類用意し、試料1〜5とした。
(測定条件)
・測定法:ATR法
・光照射面積:直径1mm
・測定範囲:4000〜650cm−1
・分解能:4cm−1
・スキャン回数:64回
ThermoFisher SCIENTIFIC社製のFT−IR装置のソフトウェア(OMNIC ver.6.2)を用い、得られたスペクトルデータから、先述した方法に基づいて、赤外吸収スペクトル(反射率)の微分スペクトルと演算式からピークを判定し検出した。なお、得られるピークトップの波数の誤差は±1cm−1である。
得られた赤外吸収スペクトルから、下記(a)及び(b)に該当するものを沈香又は伽羅とし、該当しないものを偽物の沈香とした。また、(a)及び(b)に該当したもののうち下記(c)及び(d)の少なくともいずれか一方に該当したものを伽羅とした。以上により、伽羅、沈香、偽物の沈香の3種類に分類した。
(a)1660〜1590cm−1の領域に二股に分かれた2つのピークが存在する。
(b)前記(a)における二股に分かれた2つのピークのうちピーク強度が高い方のピークよりもピーク強度が高いピークが存在しない、又は、3つ以下存在する。
(c)4000〜900cm−1の全領域中に1030〜1028cm−1の領域におけるピークよりもピーク強度が高いピークが4つ以上存在する、又は、1030〜1028cm−1の領域にピークが存在しない。
(d)4000〜900cm−1の全領域中、1640〜1630cm−1の領域にピーク強度が最も大きなピークが存在する。
<官能試験による品質評価>
試料1〜5について、熟練した鑑定者による官能評価により沈香の真贋及び品質評価を行った。
官能評価は、見た目(視覚)や、薫べた際の香り(嗅覚)、手触りや重み(触覚)による総合判断を行った。嗅覚を用いた官能評価方法は以下のとおりである。
香炉に灰を入れ、火をつけた炭を前記灰の上にのせた。次いで前記炭が十分に熾っていることを確認したのち、炭の周りで熱くなった灰(約200℃)の上に試料の極小片(約0.1g)をのせて加熱した。試料から芳香する香りの種類や拡散性を確認した上で、鑑定者独自の評価基準に則り、伽羅、沈香、偽物の沈香の3種類に分類した。
試料1〜5の赤外分光分析結果の赤外吸収スペクトルを図1〜5に、試料1及び4の赤外吸収スペクトルの微分曲線を図6及び7にそれぞれ示した。また、表1に赤外吸収スペクトル解析の結果及びそれらによる品質評価結果と、官能試験による品質評価結果を示した。
その結果、試料1〜3は前記(a)〜(d)のすべての特徴を有し、機器分析及び官能試験の結果、共に伽羅であると判定された。試料4は前記(a)及び(b)の特徴を有し、(c)及び(d)のいずれの特徴も有さず、機器分析及び官能試験の結果、共に沈香であると判定された。試料5は前記(b)の特徴を有さず、機器分析及び官能試験の結果、共に偽物の沈香であると判定された。
本発明に係る品質評価方法は、沈香の科学的センシングによる評価が可能であるという世界初の知見をもたらすものであり、破壊量が極小又は非破壊で沈香の品質や真贋を評価、判断することができる。そのため、鑑定者による鑑定技術と共に、当該科学技術による手法を用いることにより、鑑定に客観性を与え、より確実なものとすることができる。
さらには、沈香を始めとする香木の評価に共通の鑑定プラットフォーム基盤技術としての発展が期待でき、香木に関する科学的データや様々な知見を集積することで、鑑定ビジネスを視野に入れた新たなビジネスモデルの構築にもつながる可能性があることから、その技術的意義は極めて大きなものである。

Claims (4)

  1. 中赤外又は熱赤外の赤外分光分析を用いて、沈香4000〜900cm−1の領域における赤外吸収強度又は赤外透過強度を測定し、
    1660〜1590cm −1 の領域に二股に分かれた2つのピークが存在し、かつ4000〜900cm −1 の全領域中において、前記二股に分かれた2つのピークのうちピーク強度が高い方のピークよりもピーク強度が高いピークが存在しない、又は、3つ以下存在する場合に、本物の沈香であると判断する沈香の品質評価方法。
  2. さらに、4000〜900cm−1の全領域中に1030〜1028cm−1の領域におけるピークよりもピーク強度が高いピークが4つ以上存在する、又は、1030〜1028cm−1の領域にピークが存在しない場合に、伽羅であると判断する請求項1に記載の沈香の品質評価方法。
  3. さらに、4000〜900cm−1の全領域中、1640〜1630cm−1の領域にピーク強度が最も大きなピークが存在する場合に、伽羅であると判断する請求項1又は2に記載の沈香の品質評価方法。
  4. 前記赤外分光分析が中赤外を用いたATR法により行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の沈香の品質評価方法。
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