JP6513449B2 - アルミニウム合金クラッド板およびアルミニウム合金クラッド構造部材 - Google Patents
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Description
複数のアルミニウム合金層が積層されたアルミニウム合金クラッド板であって、
このアルミニウム合金クラッド板の最表層側の前記アルミニウム合金層の内側に積層された、前記アルミニウム合金層が、各々Mg:3〜10質量%、Zn:5〜30質量%の1種または2種を含むとともに、
前記最表層側のアルミニウム合金層が、Mgを3〜10質量%の範囲で含み、かつ、Znを2質量%以下(0質量%を含む)に抑制した組成からなり、
これらのアルミニウム合金層が、MgかZnのいずれかの含有量が互いに異なるアルミニウム合金層同士が隣接して接合するよう、合計積層数が5〜15層で、かつ全体の板厚が1〜5mmとなるよう積層されており、
前記アルミニウム合金クラッド板のMgとZnとの各平均含有量が、前記積層された各アルミニウム合金層のMg、Znの各含有量を平均化した値として、Mg:2〜8質量%、Zn:3〜20質量%の範囲であり、
前記アルミニウム合金クラッド板に、500℃×4時間保持後に冷却速度80℃/秒で室温まで冷却する前記拡散熱処理後に、更に120℃×24時間の人工時効硬化処理を施した後の、前記アルミニウム合金クラッド板の組織として、前記積層された各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、積層されたアルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合った、MgとZnの相互拡散領域を有しており、かつ、このアルミニウム合金クラッド板の示差走査熱分析曲線において、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲であることとする。
上記アルミニウム合金クラッド板がプレス成形されてなり、前記プレス成形後に拡散熱処理と人工時効処理とが施された構造部材であって、
この構造部材の組織として、積層された前記各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、積層された前記アルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合った、MgとZnの相互拡散領域を有しており、
この構造部材の示差走査熱分析曲線において、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲であることとする。
そして、前記拡散熱処理、あるいは、前記拡散熱処理後に更に人工時効処理(以下、T6処理とも言う)されたアルミニウム合金クラッド構造部材として、また、更に、塗装焼付処理などの人工時効(硬化) 処理されたアルミニウム合金クラッド構造部材として、前記した人工時効処理によって耐力(強度)が向上し、必要な強度を確保できる、塗装焼付硬化性や人工時効硬化処理性であるベークハード性(以下、BH性とも言う)が優れているものとする。
これによって、本発明は、拡散熱処理を施された上で構造部材として使用される、アルミニウム合金クラッド板に、高強度化と高成形性とを兼備させることができる。
したがって、クラッド板におけるアルミニウム合金層についての組成や積層の仕方などの規定の意義は、クラッドされる前のアルミニウム合金板や鋳塊の規定意義とも読み替えることができる。
本発明クラッド板は、Mg、Znの1種または2種を規定する範囲で含むアルミニウム合金層同士であって、MgかZnかのいずれかの含有量が互いに異なるアルミニウム合金層同士が、互いに5〜15層(枚)積層(クラッド)されている。そして、これら積層されたクラッド板全体の板厚は1〜5mmの範囲である、比較的薄いアルミニウム合金クラッド板である。
拡散熱処理を施される前までの本発明クラッド板の製造方法につき説明する。
通常の単体の板(単板)では、前記7000系などで、Mgを10質量%まで、あるいはZnを30質量%までなど、本発明のように高合金化した場合には、延性が極端に低下して、圧延割れなどを起こして圧延できなくなる。これに対して、本発明では、薄板同士の、しかも組成の互いに異なる薄板同士の積層板(積層鋳塊)としているため、前記高合金化しても延性が高いので、薄板のクラッドまで冷間圧延を含めて、熱延可能である。すなわち、拡散熱処理を施される前までの本発明クラッド板は、通常の圧延工程により、圧延クラッド板として製造できる点が利点でもある。
ここで、各アルミニウム合金鋳塊を各々別個に均質化熱処理した後に、互いに重ね合わせて積層した鋳塊を、熱延温度に再加熱後に熱間圧延しても良い。或いは、各アルミニウム合金鋳塊を各々別個に均質化熱処理した後に各々別個に熱間圧延を行い、さらに必要に応じて各々別個に中間焼鈍或いは冷間圧延を施して、各々別個に適当な板厚とした後に、互いに重ねあわせて積層した板材を、さらに冷間圧延を施してクラッド板とする工程でも良い。
また、単体で均質化熱処理、熱間圧延、または冷間圧延を施した後に、積層して冷間圧延工程でクラッド板とするプロセスの場合、積層する段階の各板材の厚みは、積層する枚数(層数)や圧延率などにも勿論よるが、0.5〜5.0mm程度である。
拡散熱処理前の(構造部材への成形前の)、クラッド板における、前記積層されたアルミニウム合金層の組成は、各々Mg:3〜10質量%、Zn:5〜30質量%の1種または2種を含むものとする。すなわち、クラッド(積層)される前のアルミニウム合金板や鋳塊、あるいはクラッドされたアルミニウム合金層の組成は、Mg:3〜10質量%、Zn:5〜30質量%の1種または2種を含むものとする。
これらMg:3〜10質量%、Zn:5〜30質量%の1種または2種を含むアルミニウム合金層とは、Al−Zn系、Al−Mg系の2元系アルミニウム合金であっても良い。また、これら2元系に、更に、Zn、MgやCu、Zr、Agの選択的添加元素を加えた、Al−Zn−Mg系、Al−Zn−Cu系、Al−Mg−Cu系などの3元系、Al−Zn−Cu−Zrなどの4元系、Al−Zn−Mg―Cu−Zrなどの5元系などであっても良い。
必須の合金元素であるMgは、Znとともに、クラッド板やクラッド構造部材の組織にクラスタ(微細析出物)を形成して加工硬化特性を向上させる。また、クラッド板やクラッド構造部材の組織や接合界面部に時効析出物を形成して強度を向上させる。Mg含有量が3%未満では強度が不足し、10%を超えると、鋳造割れが発生し、またクラッド板(鋳塊)の圧延性が低下し、クラッド板の製造が困難になる。
必須の合金元素であるZnは、Mgとともに、クラッド板やクラッド構造部材の組織にクラスタ(微細析出物)を形成して加工硬化特性を向上させる。また、クラッド板やクラッド構造部材の組織や接合界面部に時効析出物を形成して強度を向上させる。Zn含有量が5%未満では強度が不足し、強度と成形性とのバランスも低下する。一方Znが30%を超えると、鋳造割れが発生し、またクラッド板(鋳塊)の圧延性が低下し、クラッド板の製造が困難になる。製造可能な場合でも、粒界析出物MgZn2が増えて粒界腐食が起こりやすくなり、耐食性が著しく劣化するし、成形性も低下する。
Cu、Zr、Agは、作用機構に多少の差はあるが、共にクラッド板やクラッド構造部材の強度を向上させる同効元素であり、必要により含有させる。
Cuは強度向上効果の他に耐食性向上効果もある。Zrは鋳塊及びクラッド板の結晶粒微細化によって、Agはクラッド板やクラッド構造部材の組織や接合界面に形成される時効析出物の微細化によって、各々少量の含有でも強度向上効果がある。ただ、これらCu、Zr、Agの含有量が多すぎると、クラッド板の製造が困難になったり、製造可能でも、耐SCC性などの耐食性が却って低下したり、延性や強度特性が却って低下するなどの、種々の問題が生じる。したがって、これらを選択的に含有させる場合は、Cu:0.5〜5質量%、Zr:0.3質量%以下(但し0%を含まず)、Ag:0.8質量%以下(但し0%を含まず)とする。
これら記載した以外のその他の元素は不可避的不純物である。溶解原料として、純アルミニウム地金以外に、アルミニウム合金スクラップの使用による、これら不純物元素の混入なども想定(許容)して含有を許容する。具体的には、Fe:0.5%以下、Si:0.5%以下、Li:0.1%以下、Mn:0.5%以下、Cr:0.3%以下、Sn:0.1%以下、Ti:0.1%以下の、各々の含有量であれば、本発明に係るクラッド板の延性や強度特性を低下させず、含有が許容される。
本発明では、前記アルミニウム合金層の組成とともに、前記拡散熱処理前のクラッド板全体の平均組成として、MgとZnの平均含有量を規定する。
このクラッド板全体のMgとZnの平均含有量は、積層された前記各アルミニウム合金層のMg、Znの各含有量を、前記したクラッド比率に対応した重み付けを行った加重相加平均値として求める。そして、この加重相加平均値として、クラッド板全体のMgとZnの平均含有量を、Mg:2〜8質量%、Zn:3〜20質量%の範囲で含むものとする。
すなわち、クラッド板全体の平均組成として、Mg、Znの1種または2種を前記規定する平均含有量範囲で各々含み、これに更に、Cu、Zr、Agのうちの1種または2種以上を選択的に含有し、残部をアルミニウムおよび不可避的不純物とした組成からなるものとする。
この点で、本発明クラッド板あるいはアルミニウム合金層は、前記従来のアルミニウム合金板の組成でも、選択的に含まれているSiやLiを含んでも良い。
本発明では、以上のように合金組成自体や、合金組成の組み合わせで成形性を向上させたアルミニウム合金クラッド板を、その用途である構造部材にプレス成形した後で、拡散熱処理して、高強度化させる。この拡散熱処理をして高強度化させた後での、構造部材への成形は、できないことはないが、成形自体が困難となり、多大な労力を必要とする。
それを、本発明では、素材のアルミニウム合金クラッド板の組織としても判別できるよう、このアルミニウム合金クラッド板に拡散熱処理を施した場合の元素の相互拡散組織(MgとZnの相互拡散領域)あるいは平均結晶粒径として規定している。
すなわち、成形して構造部材とした後に拡散熱処理を施しとせずとも、素材のアルミニウム合金クラッド板の段階で、その組織が判別、評価できるように、後述する実施例の通り、このアルミニウム合金クラッド板に、いわば試みとして拡散熱処理を施した場合の、MgとZnの相互拡散領域や平均結晶粒径を規定している。
すなわち、互いに同じMg、Znの含有量では、互いの層の、その他の元素の含有量が例え違ったとしても、このMgとZnとの接合された層同士の相互拡散が生じないため、MgとZnとの新たな微細複合析出物(時効析出物)を互いの接合界面部に、高密度に析出させることができず、高強度化が図れない。
前記拡散熱処理や、続く人工時効硬化処理(T6処理)を施された後の構造部材(あるいはクラッド板)の、積層された前記各アルミニウム合金層(板厚中心部)の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径を、200μm以下の微細結晶粒とする。言い換えると、拡散熱処理によっても粗大化させないようにする。
すなわち、積層された前記各アルミニウム合金層(板厚中心部)の結晶粒径の全てを平均化した平均結晶粒径が200μmを超えた場合、積層されたアルミニウム合金層のうちの多くの結晶粒径が、200μmを超えて粗大化していることを意味する。
このため、アルミニウム合金層を積層したクラッド板に、前記T6処理や、更に塗装焼き付け処理を施された後の、アルミニウム合金クラッド構造部材が、400MPa以上の0.2%耐力を有することができなくなる。
本発明では、拡散熱処理により、元素を相互拡散させて高強度化させた、アルミニウム合金クラッド構造部材の、更に、人工時効処理や、塗装焼き付け処理を施された後のBH性を向上させる。したがって、本発明では、アルミニウム合金クラッド構造部材に対して、拡散熱処理と、人工時効処理や塗装焼付硬化処理を施すことを前提とする。
これによって、本発明は、拡散熱処理を施された上で構造部材として使用される、アルミニウム合金クラッド板に、高強度化と高成形性とを兼備させる、前記冶金的な設計思想実現の保証や目安とする。
すなわち、素材であるアルミニウム合金クラッド板に、500℃×4時間保持後に冷却速度80℃/秒で室温まで冷却する前記拡散熱処理後に、更に120℃×24時間の人工時効硬化処理を施した、ワンポイントでのT6処理後の、前記DSCにおいて、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲であるようにする。
このように、前記拡散熱処理と人工時効硬化処理との条件を1つに絞って定めないと、前記拡散熱処理と人工時効硬化処理との条件によって、得られる示差走査熱分析曲線における吸熱ピークと発熱ピークとの温度位置は大きく異なるために、再現性が無い。
これは、前記吸熱ピークのピーク温度を上記190℃以下の温度範囲に制御することにより、人工時効処理あるいは塗装焼付け処理の時に、拡散熱処理後に存在する析出物(準安定相)が溶解し、その後新たな析出物(安定相)が析出して、高強度化するものと推考される。
ちなみに、このような析出物が粗大化して強度が低下する傾向は、一般的な7000系アルミニウム合金の単板を人工時効処理する場合に散見される。このことから、本発明におけるDSCのピーク温度の制御によるBH性の向上効果は、前記した従来の7000系アルミニウム合金の単板とは異なり、本発明のアルミニウム合金クラッド板やクラッド構造部材に特有の傾向であることが分かる。
また、後述する実施例(表2の比較例18)の図4のように、発熱ピークのピーク温度が250℃より高いと、新たな析出物の成長速度が遅くなり、強度が低下する。一方、発熱ピークのピーク温度が220℃より低いと、新たな析出物の成長速度が速く粗大化し、やはり、強度が低下する。
クラッド構造部材(あるいはクラッド板)の組織を上記のように、積層された前記各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径を200μm以下とするとともに、高強度化を保証するための前記特定の厚さ以上のMgとZnの相互拡散領域を有するようにするためには、構造部材クラッド板を、好ましい条件で拡散熱処理することが必要である。この点で、構造部材(あるいはクラッド板)を、熱処理炉にて加熱して、目安としては、470℃〜550℃の温度で0.1〜24時間保持する条件範囲から選択して、拡散熱処理する。
このため、積層するアルミニウム合金層の前記条件によっては、前記条件範囲内であっても、温度が低すぎたり、保持時間が短すぎたりして、前記アルミニウム合金層同士のMgとZnの相互拡散が不足して、MgとZnの相互拡散領域が薄く(小さく)なって、高強度化できなくなる場合がある。
また、逆に、積層するアルミニウム合金層の前記条件によっては、前記条件範囲内であっても、拡散熱処理の温度が高すぎるか、あるいは保持時間が長すぎるかして、前記各アルミニウム合金層の平均結晶粒径が粗大化して、200μm以下とすることができなくなり、やはり、高強度化できなくなる。
したがって、積層するアルミニウム合金層の組成や、積層数、積層する組み合わせに応じて、後述する実施例の通り、拡散熱処理の温度や時間の最適な条件を求めて(選択して)、精緻に制御する必要がある。
以上のような拡散熱処理を施した後のクラッド構造部材(あるいはクラッド板)を、更に高強度化するために、好ましくは人工時効処理(人工時効硬化処理)を施す。
この高強度化につき、本発明では、クラッド板がプレス成形されてなるアルミニウム合金クラッド構造部材の高強度化の目安を、人工時効処理後の強度として、400MPa以上の0.2%耐力を有していることとしている。
このため、人工時効処理の温度や時間の条件は、所望の強度や素材のクラッド板の強度、あるいはクラッド板の製造後から人工時効処理するまでの室温時効の進行程度などから、決定される。
ちなみに、好ましい人工時効処理の条件を例示すると、1段の時効処理であれば、100〜150℃での時効処理を12〜36時間(過時効領域を含む)行う。また、2段の工程においては、1段目の熱処理温度が70〜100℃の範囲で2時間以上、2段目の熱処理温度が100〜170℃の範囲で5時間以上の範囲(過時効領域を含む)から選択する。
クラッド構造部材(あるいはクラッド板)の塗装焼付け処理は、通常の条件範囲で良く、160℃〜210℃で20〜30分行う。
表1、2に示す、種々の複数のアルミニウム合金層が積層されるとともに、クラッド構造部材を模擬して、前記した特定のT6処理が施された、アルミニウム合金クラッド板を各々製造した。
そして、これらアルミニウム合金クラッド板の組織として、前記積層された各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径(μm)、積層されたアルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合ったMgとZnの相互拡散領域の有無、前記DSCにおける吸熱ピーク位置(℃)と発熱ピーク位置(℃)を測定した。
更に、これらアルミニウム合金クラッド板の機械的な特性やBH性を測定、評価した。 これらの結果を表2に示す。
表1に示す合金組成のアルミニウム合金鋳塊を溶解、鋳造し、別個に、常法により均質化熱処理及び熱間圧延、必要により冷間圧延を施し、クラッド比率が全て積層数に応じた均等割合となるように、板厚を同じ1mmに調整した板材を各々製造した。
これらの板材を、表2に示す各々の組み合わせで重ね合わせて積層し、この積層板材を、400℃×30分の再加熱後に、その温度で熱間圧延を開始する圧延クラッド法にてクラッド熱延板とした。
これらのクラッド熱延板を、各例とも更に400℃×1秒の中間焼鈍を施しつつ、冷間圧延し、表2に示す各クラッド板厚(各層の合計板厚)のクラッド板とした。
さらに、前記製造したアルミニウム合金クラッド板に、構造部材としての使用を想定(模擬)して、500℃×4時間保持後に冷却速度80℃/秒で室温まで冷却する拡散熱処理を施した後に、共通して、室温で1週間の保持後、120℃で24時間の人工時効処理(T6処理)を各々施し、このT6処理後のアルミニウム合金クラッド板から試料を採取した。
表2に記載した、アルミニウム合金クラッド板の平均組成であるMg、Znの各含有量は、各アルミニウム合金層(板)の厚みが均等なので、各アルミニウム合金層のクラッド比率は全て積層数に応じた均等割合とした加重相加平均値にて算出した。
また、前記T6処理後の試料における、積層された各アルミニウム合金層の平均結晶粒径を測定した。すなわち、先ず、積層した全てのアルミニウム合金層の各板厚中心部における、前記MgとZnの濃度分布を測定した同じ断面につき、100倍の光学顕微鏡にてそれぞれ5視野ずつ観察して、結晶粒径を各々測定した。そして、これらの測定結果から、各アルミニウム合金層の板厚中心部毎の平均結晶粒径を各々求めた。さらに、これら各アルミニウム合金層の板厚中心部毎の平均結晶粒径を、積層した全てのアルミニウム合金層で平均化して、請求項1で規定する「積層された各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径」(μm)とした。この結果を表2に示す。
DSCの測定は、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G、標準物質:アルミ、試料容器:アルミ、昇温条件:15℃/min、雰囲気:アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5〜26.5mgの同一条件で各々行い、得られた示差走査熱分析のプロファイル(μW)を試料重量で割って規格化した(μW/mg)後に、前記示差走査熱分析プロファイルでの190℃以下の温度範囲、および220〜250℃の温度範囲において、示差走査熱分析のプロファイルが水平になる領域を0の基準レベルとし、この基準レベルから各々最高の高さを有するピークであると識別できる、吸熱ピークと発熱ピークとを、各々識別した。
前記試料のMgとZnの相互拡散領域の測定は、クラッド板の幅方向の任意の5か所から採取した試料5個の、各々の各板厚方向の断面における板厚方向のMgとZnの濃度を、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて各々測定し、板厚方向に1μmごとに測定したMgとZnの濃度から、前記拡散熱処理を施す前のアルミニウム合金層のMgとZnとの各含有量のうちの各最大量と比較して、各々30〜70%の範囲となっているMgとZnの相互拡散領域を、積層された各アルミニウム合金層間に各々有するかどうかで判断した。
この結果、発明例、比較例の各例とも、前記拡散熱処理によって、前記MgとZnの相互拡散領域を積層された各アルミニウム合金層間に各々有していた。
また、前記T6処理後の試料を用いて、0.2%耐力(MPa)を引張試験により測定した。更に、前記T6処理後の試料のBH性を評価するため、この試料を、塗装焼き付け硬化処理を模擬した185℃×20分の熱処理を施した後の0.2%耐力(MPa)も引張試験により測定した。これらの結果を表2に示す。
また、これらのアルミニウム合金層が、MgかZnのいずれかの含有量が互いに異なるアルミニウム合金層同士が隣接して接合するよう、合計積層数が5〜15層で、かつ全体の板厚が1〜5mmとなるよう積層されている。
そして、前記アルミニウム合金クラッド板のMgとZnとの各平均含有量が、前記積層された各アルミニウム合金層のMg、Znの各含有量を平均化した値として、Mg:2〜8質量%、Zn:3〜20質量%の範囲である。
更に、前記特定の条件での拡散熱処理を含むT6処理後の前記アルミニウム合金クラッド板の組織として、前記積層された各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、積層されたアルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合った、MgとZnの相互拡散領域を有している。そして、このアルミニウム合金クラッド板のDSCにおいて、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲である。
この結果、伸びは高いものの、T6処理後の0.2%耐力が低すぎ、塗装焼き付け処理を模擬した熱処理後の0.2%耐力も低すぎ、BH性も劣っている。
比較例16、19は、積層するアルミニウム合金層の組成が表1のJやKで、組成の規定を外れており、MgやZnの含有量が少なすぎ、平均組成としても、これらの含有量が少なすぎる。このため、前記DSCにおける吸熱ピークが190℃を超えて外れている。
比較例17、18は、積層するアルミニウム合金層が、MgかZnのいずれかの含有量が互いに異なるアルミニウム合金層同士が隣接して接合するよう積層されておらず、MgかZnかの含有量が同じDやAのアルミニウム合金層同士が隣接して接合されている。このため、前記DSCにおける吸熱ピークが190℃を超えて外れている。
Claims (4)
- 複数のアルミニウム合金層が積層されたアルミニウム合金クラッド板であって、
このアルミニウム合金クラッド板の最表層側の前記アルミニウム合金層の内側に積層された、前記アルミニウム合金層が、各々Mg:3〜10質量%、Zn:5〜30質量%の1種または2種を含み、残部がアルミニウム及び不可避的不純物であるとともに、
前記最表層側のアルミニウム合金層が、Mgを3〜10質量%の範囲で含み、かつ、Znを2質量%以下(0質量%を含む)に抑制し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物である組成からなり、
これらのアルミニウム合金層が、MgかZnのいずれかの含有量が互いに異なるアルミニウム合金層同士が隣接して接合するよう、合計積層数が5〜15層で、かつ全体の板厚が1〜5mmとなるよう積層されており、
前記アルミニウム合金クラッド板のMgとZnとの各平均含有量が、前記積層された各アルミニウム合金層のMg、Znの各含有量を平均化した値として、Mg:2〜8質量%、Zn:3〜20質量%の範囲であり、
前記アルミニウム合金クラッド板に、500℃×4時間保持後に冷却速度80℃/秒で室温まで冷却する前記拡散熱処理後に、更に120℃×24時間の人工時効硬化処理を施した後の、前記アルミニウム合金クラッド板の組織として、前記積層された各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、積層されたアルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合った、MgとZnの相互拡散領域を有しており、かつ、このアルミニウム合金クラッド板の示差走査熱分析曲線において、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲である、
ことを特徴とするアルミニウム合金クラッド板。 - 前記アルミニウム合金クラッド板の最表層側の前記アルミニウム合金層の内側に積層された、前記アルミニウム合金層が、さらに、Cu:0.5〜5質量%、Zr:0.3質量%以下(但し0%を含まず)、及びAg:0.8質量%以下(但し0%を含まず)の1種又は2種以上を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド板。
- 前記最表層側のアルミニウム合金層が、さらに、Cu:0.5〜5質量%、Zr:0.3質量%以下(但し0%を含まず)、及びAg:0.8質量%以下(但し0%を含まず)の1種又は2種以上を含む、請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金クラッド板。
- 請求項1、請求項2又は請求項3に記載のアルミニウム合金クラッド板がプレス成形されてなり、前記プレス成形後に拡散熱処理と人工時効処理とが施された構造部材であって、
この構造部材の組織として、積層された前記各アルミニウム合金層の結晶粒径を平均化した平均結晶粒径が200μm以下であるとともに、積層された前記アルミニウム合金層同士のMgとZnとが互いに拡散し合った、MgとZnの相互拡散領域を有しており、
この構造部材の示差走査熱分析曲線において、吸熱ピークが190℃以下の温度であるとともに、発熱ピークが220〜250℃の温度範囲である、
ことを特徴とするアルミニウム合金クラッド構造部材。
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