JP6511785B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた強度、剛性を持ち、耐ヒートサイクル性とセルフタッピングの信頼性を向上させたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、および樹脂成形品を提供する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略す)は、優れた耐熱性、剛性、寸法安定性、および難燃性などエンジニアプラスチックとして優れた性質を有していることから、射出成形用途を中心に各種自動車部品、機械部品、電気・電子部品に広く使用されている。風力発電・電鉄向け、ハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車向けのインバーター部品には耐熱性、耐ヒートサイクル性が必要となることから広くエラストマーを配合したPPS樹脂が使用されている。
これらの部品には電気配線用として銅などの金属がインサートもしくは圧入されている。これまで金属の入った樹脂成形品は、基板との締結、成形品同士の締結には、ボルトによる締結が行われてきた。しかしながら、ボルトによる締結は、生産効率が悪く、生産サイクルの短縮の妨げとなっている。具体的には、樹脂成形品と被締結体をボルトで締結をするためには、金属カラーをインサートする成形や、樹脂成形品に金属カラーを圧入する工程が必要となる。射出成形時に金属カラーをインサートするには、手動やロボットで金型内に金属カラーを挿入する時間がかかるため、成形サイクルが長くなる要因となっている。また、金属カラーの圧入工程は、成形後の成形品に圧入機を用いてカラーを圧入する必要があり、別工程が必要となる。
生産性を改善する方法として、セルフタッピングネジの利用が注目されている。セルフタッピングネジはネジで塑性変形が容易な樹脂成形品にタップ加工しながら、被締結体を固定することが出来るため、工程を増やすことなく樹脂成形品同士や樹脂成形品と他の部品との締結が可能となる。
セルフタッピングネジを用いたネジの締付けは、電動ドライバーを用いることが一般的であり、規定のトルクがかかるとクラッチがかかり、それ以上のトルクがかからないようになっている。締付けトルクは、バラツキを持っており、その原因は一定トルクで締付けた際にクラッチがかかりそれ以上のトルクで締付けないように設定される電動ドライバーでクラッチのかかる衝撃や、締め付け毎にドライバーの適正なトルク管理することが容易で無いことなどが影響する。締付け時のトルクのバラツキは、締結するネジの軸力のバラツキにつながるため、締結された部分の緩みにつながり、製品としての機能の不良に繋がる。また、特に自動車に使用されるネジ止めは、常に振動がかかるため、非常に高い締結の信頼性が求められる。そのため、締付トルクのバラツキの影響を抑え、安定した軸力で締結を管理することが課題となっている。
特許文献1では、セルフタッピング特性を改良する目的で、PPSにポリテトラフルオロエチレンを配合することでねじ込む際のトルクを低減することで、締込みやすさの点でのセルフタッピング特性を改良した組成物が開示されている。
特許文献2では、PPS樹脂に対して板状充填材を含む無機充填材を高配合することでねじ込む際のトルクを低減することで、締込みやすさといった点でのセルフタッピング特性を改良した組成物が開示されている。
特開2005−42107号公報 特開2010−53350号公報
本発明では、セルフタッピングねじを用いた部品の締結において、ネジを高い締め付けトルクでも雌ネジが破壊せず、かつ、安定した締付けの軸力が得られ、さらに耐ヒートサイクル性の高い樹脂組成物、及び樹脂成形品を提案する。
従来のセルフタッピングねじを用いた締結においては、軸力の測定を直接行うことが難しいため、締付けのトルクで管理されるが、締結時の締付けトルクは、ネジに発生する軸力、ネジ面と被締結体との摩擦力、ネジ面と樹脂との摩擦力の3つの力に分解される。摩擦力が大きい樹脂を使用した場合、締付けのトルクが摩擦により打ち消されることで、軸力に変換される割合が小さくなる。そのため、摩擦力が大きい樹脂を用いることで、締付けトルクのバラツキが大きくても、軸力のバラツキが低減することが出来る。その結果、高い締付けトルクで締付けることが出来ることは、ネジに発生する軸力を安定化させることに非常に有効となる。また、複数の締結箇所がある場合には、ネジのサイズ毎に電動ドライバーのトルクを設定することは作業性が悪化するため、高い締付けトルクに対応出来る樹脂組成物が求められる。
また、特許文献1に記載される、ポリテトラフルオロエチレンを配合した樹脂組成物は、ネジとPPS樹脂との摩擦を低減することになるため、締付けに働く軸力のバラツキが大きくなる課題がある。
さらに、特許文献2に記載される樹脂組成物は、セルフタッピングに使用するネジの径が1.2mmと非常に小さく、得られる軸力が小さいため、光学部品用のスライドベースなどの比較的小型用には耐えられるが、自動車に搭載される大型部品の締結に必要な軸力は得られず、また振動も加わる環境下では十分な締結の信頼性が得られないという課題がある。さらに、無機充填材の配合比率が高いため、靭性が低く、ヒートサイクルで発生した際に応力集中することで、クラックの発生がしやすい問題がある。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記を提供するものである。
1.(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する官能基含有オレフィン共重合体1〜15重量部、(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体0〜3重量部、および(D)無機充填材50〜150重量部を配合してな、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し(B)と(C)の配合量の合計が2〜15重量部であり、前記(D)無機充填材としてガラス繊維および炭酸カルシウムを2:1〜7:1(重量比)の比率で含有する樹脂組成物からなる成形品であって、当該成形品とステンレスとの摩擦係数が0.40以上0.60以下であり、直径2.6mm、深さ8mm以上の穴のあいた成形品にネジの呼び径3mmのセルフタッピングネジを締め込んだときの破壊トルクが14kgf・cm以上である、セルフタッピングネジの締め付け用の挿入部位を有する成形品。
.ネジの呼び径が3mm以上10mm以下のセルフタッピングネジの締め付け用の挿入部位を有するに記載の成形品。
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形品は優れた耐ヒートサイクル性を示すため、自動車のインバーター部品やエンジン周辺に搭載される冷却モジュール部品などに適用が有用である。また、本発明のPPS樹脂組成物からなる成形品をセルフタッピングネジを用いて、樹脂成型品同士の締結や樹脂成型品と他の部品の締結をする場合、高い締め付けトルクで締め付けが可能となるため、高い締結信頼性が得られる。また、比較的小型の光学部品用スライドベースやランプソケットなどの部品だけではなく、呼び径が3mmを超えるネジを使用し、製品重量が50gを超え、全長20センチを超えるような大型の成形品でのセルフタッピングネジを用いた締結が可能となる。
図1(a)はヒートサイクル性の評価を行った金属インサートテストピースの上面図であり、図1(b)は、その側面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明の(A)PPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 0006511785
上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上含む重合体であることが耐熱性の点で好ましい。またPPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されることが可能である。
Figure 0006511785
また、高い溶融粘度を有するPPSが所望の場合に、ジハロベンゼンを主モノマーとし、トリハロベンゼンを3モル%未満共重合した分岐状PPSを適用することも可能である。
(PPS樹脂の重合)
かかるPPS樹脂は通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。本発明において上記のように得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170℃〜80℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この加熱処理温度と時間の両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明において、脱イオン処理などにより、PPS中の灰分率が0.2重量%以下に低減されたPPS樹脂を用いることは、より優れた靭性および成形加工性を得る意味で好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで灰分量の測定は以下の方法に従った。乾燥状態のPPS原末約5gを坩堝に測り取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケータ中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分率を計算する。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限は無いが、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で過熱、攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
次に本発明の必須成分である(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種類の官能基を含有するオレフィン系共重合体は、オレフィン系重合体及び/またはオレフィン系共重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分(官能基含有成分)を導入することにより得られるが、その官能基含有成分の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ[2.2.1]5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物などの酸無水物基を含有する単量体、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体、カルボン酸金属錯体などのアイオノマーを含有する単量体が挙げられる。オレフィン系共重合体の種類としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などがあり、具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ヘキセン−1、エチレン/オクテン−1、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。
これらオレフィン系共重合体に官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、前記オレフィン系(共)重合体として用いられるのと同様のオレフィン系(共)重合体を(共)重合する際に共重合せしめたり、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン系(共)重合体を構成する全単量体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。特に有用なオレフィン重合体にエポキシ基、酸無水物基、アイオノマーなどの官能基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン(共)重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体の亜鉛錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のマグネシウム錯体、エチレン/メタクリル酸共重合体のナトリウム錯体あるいは、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに加え、更に下記一般式で示される単量体)を必須成分とするエポキシ基含有オレフィン系共重合体もまた好適に用いられる。
(B)官能基含有オレフィン共重合体は、(A)PPS100重量部に対して1〜15重量部を配合する。1重量部未満の場合、ヒートサイクル時にクラックが発生し、15重量部を超えると射出成形時の金型に付着物の増加や、分解によるガスによって製品の外観が著しく悪化する。
次に(C)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステルから選ばれる官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体は、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体などが挙げられる。
(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体の添加部数は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、0〜3重量部が好ましく、特に0〜1.5重量部が好ましい。添加しない場合に比べて、1重量部を添加した場合、耐ヒートサイクル性が飛躍的に向上する。3重量部を超えて添加した場合、耐ヒートサイクル性は向上するが、セルフタッピング時の締め付け破壊トルクが大幅に低下する。
前記(B)官能基含有オレフィン共重合体と、(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体は、それぞれ前記の配合量を配合するが、(B)成分と(C)成分の合計量は、(A)PPS樹脂100重量部に対し、2〜15重量部とする必要がある。このような配合料とすることで、耐ヒートサイクル性と、セルフタッピング特性を両立できる成形品を与える組成物とすることができる。
さらに本発明の樹脂組成物には、(D)無機充填材を配合する。(D)無機充填剤としては、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、タルク、ワラステナイト、マイカ、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種類を配合するのが好ましい。無機充填材の具体例としては、繊維状もしくは、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維やケブラーフィブリルなどの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、Eガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Hガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Aガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Cガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、天然石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、合成石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ロックウール、タルク、カオリン、シリカ(破砕状・球状)、石英、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、マイカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化アルミニウム(破砕状)、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属酸化物、水酸化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属水酸化物、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物などが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブ、PAN系やピッチ系の炭素繊維などの炭素系フィラーや、ポリテトラフルオロエチレンは、金属との摩擦係数を低下することから、使用する場合は1.0重量部以下にすることが好ましい。
(D)無機充填剤の中でも、機械物性や寸法特性からガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭酸カルシウムがより好ましい。なお、本発明に使用する上記のガラス繊維やそれ以外のフィラーはその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
(D)無機充填材の配合量は、耐熱性、機械的特性等のバランスから、(A)PPS樹脂100重量部に対して、50〜150重量部であり、好ましくは90〜120重量部である。50重量部未満の場合、PPS樹脂の線膨張係数が大きく、金属の線膨張係数との差が大きくなるため、ヒートサイクル時に発生する応力が高くなり、樹脂にクラックが発生しやすくなる。また、150重量部を超えると、靭性やウエルド強度が低下するため、セルフタッピング時やヒートサイクルでのクラックが発生しやすくなる。(D)無機充填材をこの範囲で配合することで、機械特性やヒートサイクル性、セルフタッピング時の破壊トルクが向上した樹脂組成物を得ることができる。
本発明におけるPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体(例えばポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリフェニレンエーテル等の非晶性樹脂等)、を添加することができる。
本発明では、エポキシ接着性改良を目的として、無機フィラーにタルクを使用することや、エポキシ樹脂を添加することが出来る。エポキシ樹脂の種類に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、サリゲニン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、テトラフェニロールエタン、これらのハロゲン置換体およびアルキル基置換体、ブタンジオール、エチレングリコール、エリスリット、ノボラック、グリセリン、ポリオキシアルキレン等のヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とエピクロルヒドリン等から合成されるグリシジルエーテル系、フタル酸グリシジルエステル等のグルシジルエステル系、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、1、3−ビスアミニメチルシクロヘキサン等の第一または第二アミンとエピクロロヒドリン等から合成されるグリシジルアミン系、等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等々の非グリシジルエポキシ樹脂が挙げられる。
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)PPS樹脂、(B)、(C)オレフィン共重合体、(D)無機充填材から選ばれる少なくとも1種およびその他添加剤等を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。また、(D)無機充填材のうち、ガラス繊維を添加する際、その折損を抑制するために好ましくは、ガラス繊維をサイドフィーダーから、押出機へ供給することにより調製される。
本発明のPPS樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”(R)タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて260〜360℃で溶融混練して組成物とすることができる。
本発明に用いる摩擦係数の測定は、130℃で3時間乾燥したPPSペレットをシリンダ温度320℃、金型温度130℃の条件で、住友重機械社製の住友SE100DUを使用し、80mm×80mm×3mmの試験片を作製し、作成した試験片の中央部分から30mm×30mm×3mmに切り出した角板、および相手材としてステンレンス鋼SUS303のリング(外径25.6mm、内径20.0mm)を用い、アセトンやメタノールなどの溶剤で表面の汚れを拭き取った後、鈴木式摩擦磨耗試験機(オリエンテック(株)、EFM−EN−ADX−S)を用いて、面圧50kg/cm、周速2m/分の条件でJISK7218 A法(JISハンドブック2008記載)に準拠した摩擦磨耗試験を行い、摩擦係数を測定する。摩擦係数は試験開始5分後の値として測定する。樹脂試験片は、上記以外にもステンレス鋼のリングの外径よりも大きく、厚みは摩擦係数の測定時に穴が開かない程度の厚みがあり、表面が平滑であれば、製品から切り出した試験片で測定することも可能である。
本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形、トランスファー成形、真空成形など一般的に熱可塑性樹脂の公知の成形方法により成形されるが、なかでも射出成形が好ましい。
かくして得られる成形体は、PPS樹脂が元来示す耐熱性、耐薬品性、耐熱水性、機械的特性を維持して低温靭性に優れるため、例えば、電気・電子用途、自動車用途、水廻り用途、一般雑貨用途、建築部材等に有用であり、具体的には、センサー、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、磁器ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モータ部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、バルブ、チーズ、継手、ソケット、水量調節弁、減圧弁、逃がし弁、電磁弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ICレギュレータ、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、湯温センサー、ブレーキパッドウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプ、ウォーターポンプインペラ、ウォーターインレット、ウォーターアウトレット、タービンベイン、ワイパーモータ関連部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ECUケース、コンデンサーケース、パワーモジュール部品、ステップモータローター、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー、ガソリンタンク、等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。特にハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池車に搭載されるインバーターユニットに搭載されるパワーモジュール用ケース、電流センサー部品、バスバー部品、フィルムコンデンサー、端子台などはインサート金属を含む成形品であり、かつ高温から低温まで幅広い温度領域での使用が求められるため、本発明のPPS樹脂組成物は好適に使用できる。
また、本発明のPPS樹脂組成物は、ヒートサイクル性に優れ、セルフタッピング特性にも優れることから、セルフタッピングネジ挿入部を有する成形品に好適である。本発明の樹脂組成物を成形した成形品は、カーナビゲーションやカーオーディオの筐体、フロントパネルやノブボリュームなどを含む、インストルメントパネル用部品やコンソールボックス用部品、ドアトリム、センタークラスター、メータークラスター等の自動車内装部品、フラットディスプレイパネル、パソコン、PDA、テレビ、ビデオ、カメラ、プリンター、FAX等の電気・電子・OA機器筐体などの広範囲の分野に利用できる。
さらに、本発明のPPS樹脂組成物は、セルフタッピング特性に優れ、軸力の大きな部品をセルフタッピングネジを用いて締結することが可能である。具体的には、ネジの呼び径が3mm以上10mm以下のセルフタッピングネジの挿入部位を有する成形品として用いることができるため、大型部品のセルフタッピングネジを用いた締結が可能な成形品とすることができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例及び比較例)
本実施例および比較例に用いた(A)PPS樹脂は以下の参考例に基づく方法で重合を行った。なお、得られたPPS樹脂のMFR値はJIS K7210に準拠して測定した。
[参考例]PPSの重合
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.67kg(148.4モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSは、MFRが600g/10分であった。
[実施例および比較例で用いた配合材とPPS樹脂組成物の製造法]
実施例に使用した(B)官能基含有オレフィン共重合体は以下のとおりである。
B−1:エチレン/メタクリル酸グリシジル=88/12(重量比)の共重合体(住友化学製“ボンドファースト”BF−E)
B−1:エチレン/メタクリル酸グリシジル/アクリル酸メチル=54/6/30(重量比)の共重合体(住友化学製“ボンドファースト”BF−7M)。
実施例及び比較例に使用した(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体は以下のとおりである。
C−1:エチレン・1−ブテンランダム共重合体(三井化学(株)社製 タフマーTX650、密度864kg/m、融点無し、ガラス転移点−64℃)。
実施例及び比較例に使用した(D)無機充填材は以下のとおりである。
D−1:ガラス繊維(日本電気硝子(株)社製 T−747H)
D−2:炭酸カルシウム((株)カルファイン製 ACE25)
D−3:ガラスフレーク、日本板硝子(株)製 マイクログラスフレカ REFG112
D−4:アルミナ(日本軽金属社製 LT−200)
D−5:炭素繊維(日本グラファイトファイバー社製、XN−100−01Z)。
比較例に使用したポリテトラフルオロエチレンは以下の通りである。
ポリテトラフルオロエチレン(三井・デュポンフロロケミカル社製 “テフロン”(登録商標)6J)。
表1、2に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30α型2軸押出機(L/D=45.5)を用い、スクリュー回転数300rpmでシリンダ出樹脂温度が330℃となるように温度を設定し、溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。
[引張強度の測定]
シリンダー温度320℃、金型温度140℃にて、ISO3167に準じた1A形引張試験片(4.0mm厚み)を射出成形し、23℃の温度条件下でISO527−1、−2に準じて測定したものである。120MPa以上あれば実用上問題のない製品強度レベルといえるが、この値が高いほど好ましい。
[スパイラル流動長評価]
1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形し、流動長を測定した。(使用成形機:住友重機製”SE−30D”)流動長は、120mm以上あれば実用上問題ないレベルといえ、この値が大きいほど流動性に優れ、好ましい。
[ヒートサイクル性の評価]
シリンダー温度320℃、金型温度135℃の条件で金属ブロックをインサート成形した、図1に示す金属インサートテストピースを用いた。金属ブロックは機械構造用炭素鋼S45Cを用いた。図1(a)は金属インサートテストピースの上面図であり、図1(b)はその側面図である。48.6×48.6×28.6mmのインサート金属を射出成形にて、樹脂で被覆する(インサート成形)。得られたテストピースは50×50×30mmの直方体であり、モールド肉厚は0.7±0.05mmである。
これを130℃×1hrで処理後、−40℃×1hrで処理することを1サイクルとして、冷熱サイクル処理し、5サイクル毎に目視によりクラック発生有無を確認した。クラック発生が認められた冷熱サイクル処理数を耐冷熱サイクル性とした。50サイクル以下でクラックが発生しなければ実用上問題のない製品レベルといえるが、クラックが発生するまでの処理サイクルが多いほど冷熱性に優れ、好ましい。
[摩擦係数の測定]
130℃で3時間乾燥したPPSペレットをシリンダ温度320℃、金型温度130℃の条件で、住友重機械社製の住友SE100DUを使用し、80mm×80mm×3mmの試験片を作製した。作成した試験片の中央部分から30mm×30mm×3mmに切り出した角板、および相手材としてステンレンス鋼SUS303のリング(外径25.6mm、内径20.0mm)を用い、アセトンやメタノールなどの溶剤で表面の汚れを拭き取った後、鈴木式摩擦磨耗試験機(オリエンテック(株)、EFM−EN−ADX−S)を用いて、面圧50kg/cm、周速2m/分の条件でJIS K7218 A法(JISハンドブック2008記載)に準拠した摩擦磨耗試験を行い、摩擦係数を測定した。摩擦係数は試験開始5分後の値とし、測定値は3回行った平均値とした。
[セルフタッピングネジによるトルク破壊強度の測定]
130℃で3時間乾燥したPPSペレットをシリンダ温度320℃、金型温度130℃の条件で、住友重機械社製の住友SE100DUを使用し、評価用試験片は、内径2.6mmの穴を備えた厚み15mmの試験片を成形し、ダイヤル型トルクドライバー(東日製作所製40FTD)により、セルフタッピングネジ(TRUSCO製 鍋頭タッピングねじ M3×8 ネジ呼び径3mm 呼び長さ8mm)を成形品の穴に挿入し、樹脂の内部が破断し、ねじが空転するまでの最大トルクを締付けトルクとして評価した。また、穴の開いた成形でなくとも、成形後の製品に穴を開けて、同様にセルフタッピング評価を行うことが可能である。締付けトルクが高い程、良好な結果と言える。
Figure 0006511785
Figure 0006511785
表1、表2の結果から、従来得られなかったセルフタッピング性と耐ヒートサイクル性を優れたバランスで両立出来たことは明らかである。
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂が元来示す耐熱性、耐薬品性、耐熱水性、機械的特性を維持して耐ヒートサイクル性とセルフタッピング特性に優れるため、例えば、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池車に搭載されるインバーターユニットに搭載されるパワーモジュール用ケース、電流センサー部品、バスバー部品、フィルムコンデンサー、端子台などはインサート金属を含む成形品に有用である。
1 インサート金属
2 ゲート
3 金属インサートテストピース

Claims (2)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する官能基含有オレフィン共重合体1〜15重量部、(C)官能基を含有しないエチレンと炭素原子数3〜12のα−オレフィン共重合体0〜3重量部、および(D)無機充填材50〜150重量部を配合してな、(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し(B)と(C)の配合量の合計が2〜15重量部であり、前記(D)無機充填材としてガラス繊維および炭酸カルシウムを2:1〜7:1(重量比)の比率で含有する樹脂組成物からなる成形品であって、当該成形品とステンレスとの摩擦係数が0.40以上0.60以下であり、直径2.6mm、深さ8mm以上の穴のあいた成形品にネジの呼び径3mmのセルフタッピングネジを締め込んだときの破壊トルクが14kgf・cm以上である、セルフタッピングネジの締め付け用の挿入部位を有する成形品。
  2. ネジの呼び径が3mm以上10mm以下のセルフタッピングネジの締め付け用の挿入部位を有する請求項に記載の成形品。
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