以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の本実施形態に係るデジタルカメラ1を示す要部構成図である。本実施形態のデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラ本体2とレンズ鏡筒3から構成され、これらカメラ本体2とレンズ鏡筒3はマウント部4により着脱可能に結合されている。
レンズ鏡筒3は、カメラ本体2に着脱可能な交換レンズである。図1に示すように、レンズ鏡筒3には、レンズ31,32,33、および絞り34を含む撮影光学系が内蔵されている。
レンズ32は、フォーカスレンズであり、光軸L1方向に移動することで、撮影光学系の焦点距離を調節可能となっている。フォーカスレンズ32は、レンズ鏡筒3の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ35によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ36によってその位置が調節される。
エンコーダ35で検出されたフォーカスレンズ32の現在位置情報は、レンズ制御部37を介して後述するカメラ制御部21へ送出され、フォーカスレンズ駆動モータ36は、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ32の駆動位置が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより駆動する。
絞り34は、上記撮影光学系を通過して撮像素子22に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り34による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部21からレンズ制御部37を介して送出されることにより行われる。また、カメラ本体2に設けられた操作部28によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部21からレンズ制御部37に入力される。絞り34の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部37で現在の開口径が認識される。
また、本実施形態に係るレンズ鏡筒3は、フォーカスレンズ32の合焦可能範囲が制限可能となっている。合焦可能範囲とは、当該合焦可能範囲内において、合焦位置が検出された場合に、合焦と判定される範囲である。本実施形態では、図1,2に示すように、レンズ鏡筒3に、合焦可能範囲を設定するためのフォーカスリミットスイッチ38を備えており、ユーザが、フォーカスリミットスイッチ38を操作して、フォーカスリミットモードを選択することで、合焦可能範囲を選択することができる。なお、図2は、本実施形態に係るレンズ鏡筒3の外観図である。
また、図3は、本実施形態で設定可能な合焦可能範囲の一例を示す図である。本実施形態では、図3(A)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、合焦可能範囲Rf1として設定する「FULLモード」と、図3(B)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近側ソフトリミットSLNSまでの範囲を、合焦可能範囲Rf2として設定する「至近側制限モード」と、図3(C)に示すように、無限遠側ソフトリミットSLISから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、合焦可能範囲Rf3として設定する「無限遠側制限モード」の、3つのフォーカスリミットモードを選択することができる。なお、本実施形態では、フォーカスリミットスイッチ38を、図2に示す「FULL」に合わせることで「FULLモード」が設定され、図2に示す「リミット1」に合わせることで「至近側制限モード」が設定され、図2に示す「リミット2」に合わせることで、「無限遠側制限モード」が設定される。
そして、ユーザによりいずれかのフォーカスリミットモードが選択された場合には、図4に示すように、選択されたフォーカスリミットモードに対応するフォーカスリミット情報が、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に送信される。なお、フォーカスリミット情報は、フォーカスリミットモードごとに、レンズ制御部37が備えるROMに記憶されている。
たとえば、フォーカスリミットスイッチ38により、図3(A)に示す「FULLモード」が設定された場合には、レンズ制御部37は、フォーカスリミット情報として、「FULLモード」における合焦可能範囲Rf1のリミット位置(端部)である無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近端ソフトリミットSLNPと、それに対応する無限遠端設計値DVIPおよび至近端設計値DVNPとを、カメラ本体2に送信する。
また、フォーカスリミットスイッチ38により、図3(B)に示す「至近側制限モード」が設定された場合には、レンズ制御部37は、フォーカスリミット情報として、「至近側制限モード」における合焦可能範囲Rf2のリミット位置である、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近側ソフトリミットSLNSと、それに対応する無限遠端設計値DVIPおよび至近側設計値DVNSとを、カメラ本体2に送信する。
同様に、フォーカスリミットスイッチ38により、図3(C)に示す「無限遠側制限モード」が設定された場合には、レンズ制御部37は、フォーカスリミット情報として、「無限遠側制限モード」における合焦可能範囲Rf3のリミット位置である無限遠側ソフトリミットSLISおよび至近端ソフトリミットSLNPと、それに対応する無限遠側設計値DVISおよび至近端設計値DVNPとを、カメラ本体2に送信する。
なお、本実施形態において、レンズ鏡筒3は、至近側ソフトリミットSLNS、至近側設計値DVNS、無限遠側ソフトリミットSLIS、または無限遠側設計値DVISを、ズームレンズ位置ごとに記憶しており、レンズ制御部37は、ズームレンズ位置に応じた至近側ソフトリミットSLNS、至近側設計値DVNS、無限遠側ソフトリミットSLIS、または無限遠側設計値DVISをROMから読み出し、フォーカスリミット情報として、カメラ本体2に送信する。
さらに、本実施形態においては、たとえば、合焦可能範囲Rf2,Rf3などのように、レンズ鏡筒3において、合焦可能範囲が合焦可能範囲を制限可能であるか否かを示す情報、および、「FULLモード」や「無限側制限モード」などのように、ユーザに選択されたフォーカスリミットモードの情報が、フォーカスリミット情報として、レンズ制御部37のROMに記憶されており、レンズ制御部37は、フォーカスリミット情報として、レンズ鏡筒3において合焦可能範囲が制限可能であるか否かを示す情報およびユーザに選択されたフォーカスリミットモードの情報をも、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に送信することができる。
なお、図3(A)において、無限遠端設計値DVIPは、「FULLモード」において、レンズ鏡筒3が、設計上、被写体に合焦することを保証するレンズ位置のうち無限遠側のリミット位置であり、レンズ鏡筒3の設計誤差を考慮して、無限遠端設計値DVIPよりも無限遠側に無限遠端ソフトリミットSLIPを設け、この無限遠端ソフトリミットSLIPまで合焦位置の検出が可能となるように設計されている。同様に、至近端設計値DVNPは、レンズ鏡筒3が、設計上、被写体に合焦することを保証するレンズ位置のうち至近側のリミット位置であり、レンズ鏡筒3の設計誤差を考慮して、至近端設計値DVNPよりも至近側に至近端ソフトリミットSLNPを設け、この至近端ソフトリミットSLNPまで合焦位置の検出が可能となるように設計されている。
また、図3(B)において、至近側設計値DVNSは、「至近側制限モード」において、レンズ鏡筒3が、設計上、被写体に合焦することを保証するレンズ位置のうちの至近側のリミット位置であり、レンズ鏡筒3の設計誤差を考慮して、至近側設計値DVNSよりも至近側の至近側ソフトリミットSLNSまで、合焦位置の検出が可能となるように設計されている。同様に、図3(C)において、無限遠側設計値DVISは、「無限遠側制限モード」において、レンズ鏡筒3が、設計上、被写体に合焦することを保証するレンズ位置のうちの無限遠側のリミット位置であり、レンズ鏡筒3の設計誤差を考慮して、無限遠側設計値DVISよりも無限遠側の無限遠側ソフトリミットSLISまで、合焦位置の検出が可能となるように設計されている。
また、図4に示すように、レンズ鏡筒3からカメラ本体2に対しては、フォーカスリミット情報に加えて、フォーカスレンズ位置の情報も周期的に送信される。そして、カメラ本体2においては、フォーカスリミット情報およびフォーカスレンズ32の位置情報に基づいて、フォーカスレンズ32のレンズ駆動量が算出され、算出されたレンズ駆動量がレンズ鏡筒3に送信される。なお、図4は、レンズ鏡筒3とカメラ本体2との情報の授受の一例を説明するための図である。
一方、カメラ本体2には、上記撮影光学系からの光束L1を受光する撮像素子22が、撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター23が設けられている。撮像素子22はCCDやCMOSなどのデバイスから構成され、受光した光信号を電気信号に変換してカメラ制御部21に送出する。カメラ制御部21に送出された撮影画像情報は、逐次、液晶駆動回路25に送出されて観察光学系の電子ビューファインダ(EVF)26に表示されるとともに、操作部28に備えられたレリーズボタン(不図示)が全押しされた場合には、その撮影画像情報が、記録媒体であるカメラメモリ24に記録される。なお、カメラメモリ24は着脱可能なカード型メモリや内蔵型メモリの何れをも用いることができる。
カメラ本体2には、撮像素子22で撮像される像を観察するための観察光学系が設けられている。本実施形態の観察光学系は、液晶表示素子からなる電子ビューファインダ(EVF)26と、これを駆動する液晶駆動回路25と、接眼レンズ27とを備えている。液晶駆動回路25は、撮像素子22で撮像され、カメラ制御部21へ送出された撮影画像情報を読み込み、これに基づいて電子ビューファインダ26を駆動する。これにより、ユーザは、接眼レンズ27を通して現在の撮影画像を観察することができる。なお、光軸L2による上記観察光学系に代えて、または、これに加えて、液晶ディスプレイをカメラ本体2の背面等に設け、この液晶ディスプレイに撮影画像を表示させることもできる。
カメラ本体2にはカメラ制御部21が設けられている。カメラ制御部21は、マウント部4に設けられた電気信号接点部41によりレンズ制御部37と電気的に接続され、このレンズ制御部37からレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部37へレンズ駆動量や絞り開口径などの情報を送信する。また、カメラ制御部21は、上述したように撮像素子22から画素出力を読み出すとともに、読み出した画素出力について、必要に応じて所定の情報処理を施すことにより画像情報を生成し、生成した画像情報を、電子ビューファインダ26の液晶駆動回路25やメモリ24に出力する。また、カメラ制御部21は、撮像素子22からの画像情報の補正やレンズ鏡筒3の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
また、カメラ制御部21は、上記に加えて、コントラスト検出方式による光学系の焦点状態の検出を行う。具体的には、カメラ制御部21は、撮像素子22の撮像画素221の出力を読み出し、読み出した画素出力に基づき、焦点評価値の演算を行う。この焦点評価値は、たとえば撮像素子22の撮像画素221からの画像出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出することで求めることができる。また、遮断周波数が異なる2つの高周波透過フィルタを用いて高周波成分を抽出することでも求めることができる。
そして、カメラ制御部21は、レンズ制御部37に制御信号を送出してフォーカスレンズ32を所定のサンプリング間隔(距離)で駆動させ、それぞれの位置における焦点評価値を求め、該焦点評価値が最大となるフォーカスレンズ32の位置を合焦位置として求める、コントラスト検出方式による焦点検出を実行する。なお、この合焦位置は、たとえば、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出した場合に、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これら5点の焦点評価値を用いて、内挿法などの演算を行うことで求めることができる。
ここで、図5は、コントラスト検出方式による焦点検出方法の一例を説明するための図である。図5に示す例では、フォーカスレンズ32が、図5に示すP0に位置しており、まず、P0から、所定のサーチ開始位置(図5中、P1の位置)まで、フォーカスレンズ32を駆動させる初期駆動が行われる。そして、フォーカスレンズ32を、サーチ開始位置から(図5中、P1の位置)、無限遠側から至近側に向けて駆動させながら、所定間隔で、コントラスト検出方式による焦点評価値の取得を行うサーチ駆動が行われる。そして、フォーカスレンズ32を、図5に示すP2の位置に移動させた時点において、焦点評価値のピーク位置(図5中、P3の位置)が合焦位置として検出され、検出された合焦位置(図5中、P3の位置)まで、フォーカスレンズ32を駆動させる合焦駆動が行われる。
操作部28は、シャッターレリーズボタンなどのユーザがカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチであり、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換が行えるようになっている。この操作部28により設定された各種モードはカメラ制御部21へ送出され、当該カメラ制御部21によりカメラ1全体の動作が制御される。また、シャッターレリーズボタンは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
次いで、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図6は、カメラ1の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS101では、カメラ制御部21により、フォーカスリミット情報の取得が行われる。本実施形態では、レンズ鏡筒3で設定されたフォーカスリミットモードに対応するフォーカスリミット情報が、レンズ制御部37からカメラ制御部21に一定間隔で周期的に送信されており、カメラ制御部21は、現在設定されているフォーカスリミットモードに対応するフォーカスリミット情報を、レンズ制御部37から取得することができる。
たとえば、図3(A)に示すように、フォーカスリミットスイッチ38により「FULLモード」が設定されている場合には、レンズ制御部37は、フォーカスリミット情報として、「FULLモード」における合焦可能範囲Rf1のリミット位置(端部)である、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近端ソフトリミットSLNPを含む情報を、カメラ本体2に周期的に送信する。これにより、カメラ制御部21は、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近端ソフトリミットSLNPを含むフォーカスリミット情報を取得することができる。
同様に、カメラ制御部21は、図3(B)に示すように、フォーカスリミットスイッチ38により「至近側制限モード」が設定されている場合には、「至近側制限モード」における合焦可能範囲Rf2のリミット位置である、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近側ソフトリミットSLNSを含む情報を、フォーカスリミット情報として取得し、また、図3(C)に示すように、フォーカスリミットスイッチ38により「無限遠側制限モード」が設定されている場合には、「無限遠側制限モード」における合焦可能範囲Rf3のリミット位置である、無限遠側ソフトリミットSLISおよび至近端ソフトリミットSLNPを含む情報を、フォーカスリミット情報として取得することができる。
なお、フォーカスリミットモードが同じ場合でも、レンズ鏡筒3の種別によっては、フォーカスレンズ32の合焦可能範囲Rf1〜Rf3が、それぞれ異なる範囲となる場合がある。そのため、カメラ制御部21は、レンズ鏡筒3から、当該レンズ鏡筒3に固有のフォーカスリミット情報を取得する。
ステップS102では、カメラ制御部21により、ステップS101で取得されたフォーカスリミット情報に基づいて、図3(A)〜(C)に示すように、フォーカスレンズ32の合焦可能範囲の算出が行われる。
たとえば、カメラ制御部21は、図3(A)に示すように、「FULLモード」が設定されており、フォーカスリミット情報として、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近端ソフトリミットSLNPが取得されている場合には、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、合焦可能範囲Rf1として算出する。
同様に、カメラ制御部21は、図3(B)に示すように、「至近側制限モード」が設定されており、フォーカスリミット情報として、無限遠端ソフトリミットSLIPおよび至近側ソフトリミットSLNSが取得されている場合には、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近側ソフトリミットSLNSまでの範囲を、合焦可能範囲Rf2として算出する。また、カメラ制御部21は、図3(C)に示すように、「無限遠側制限モード」が設定されており、フォーカスリミット情報として、無限遠側ソフトリミットSLISおよび至近端ソフトリミットSLNPが取得された場合には、無限遠側ソフトリミットSLISから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、合焦可能範囲Rf3として算出する。
なお、レンズ鏡筒3の種別によっては、フォーカスリミット機能を有しておらず、フォーカスリミット情報を、レンズ鏡筒3から取得できない場合もある。このような場合には、カメラ制御部21は、図3(A)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲Rf1を合焦可能範囲として算出することができる。
ステップS103では、カメラ制御部21により、コントラスト検出方式による焦点検出を行うためのフォーカスレンズ32の駆動範囲が、サーチ駆動範囲として算出される。図7は、サーチ駆動範囲の一例を示す図である。図7(A)〜(C)に示すように、サーチ駆動範囲Rs1〜Rs3は、図3(A)〜(C)に示す合焦可能範囲Rf1〜Rf3を含み、かつ、合焦可能範囲Rf1〜Rf3よりも広い範囲として算出される。
ここで、コントラスト検出方式による焦点検出において、カメラ制御部21は、上述したように、フォーカスレンズ32を駆動させながら、焦点評価値の算出を所定のサンプリング間隔で行う。そして、コントラスト検出方式により焦点評価値のピーク位置(合焦位置)を検出するためには、図5に示すように、ピーク位置を超えた位置(図5中、P2)までフォーカスレンズ32を駆動させて焦点評価値を算出する必要がある。そのため、たとえば、コントラスト検出方式により、無限遠端ソフトリミットSLIPで焦点評価値のピーク位置(合焦位置)を検出するためには、フォーカスレンズ32を無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側まで駆動して焦点評価値を算出する必要がある。同様に、たとえば、コントラスト検出方式により、至近端ソフトリミットSLNPで焦点評価値のピーク位置(合焦位置)を検出するためには、フォーカスレンズ32を至近端ソフトリミットSLNPよりも至近側まで駆動して焦点評価値を算出する必要がある。
そこで、カメラ制御部21は、フォーカスリミットモードが「FULLモード」である場合には、図7(A)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側のレンズ位置から、至近端ソフトリミットSLNPよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs1として算出する。たとえば、本実施形態では、図5に示すように、焦点評価値が2回上昇した後、さらに2回下降して推移した場合に、これらの焦点評価値を用いて焦点評価値のピークを算出しているため、カメラ制御部21は、無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側において焦点評価値を2つ算出することが可能なレンズ位置から、至近端ソフトリミットSLNPよりも至近側において焦点評価値を2つ算出することが可能なレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs1として算出することができる。
また、カメラ制御部21は、フォーカスリミットモードが「至近側制限モード」である場合には、図7(B)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側のレンズ位置から、至近側ソフトリミットSLNSよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs2として算出する。同様に、カメラ制御部21は、フォーカスリミットモードが「無限遠側制限モード」である場合には、図7(C)に示すように、無限遠側ソフトリミットSLISよりも無限遠側のレンズ位置から、至近端ソフトリミットSLNPよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs3として算出する。
ステップS104では、カメラ制御部21により、第1目標速度V1の算出が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、光学系の被写界深度と撮像素子22のフレームレートとに基づいて、コントラスト検出方式による焦点検出時のフォーカスレンズ32のレンズ駆動速度を、第1目標速度V1として算出する。
ここで、コントラスト検出方式による焦点検出を行う場合には、フォーカスレンズ32を駆動することで、光学系による像面を光軸方向に移動させ、これにより、異なる像面において複数の焦点評価値を算出し、これら焦点評価値がピークとなるレンズ位置を、合焦位置として検出する。しかしながら、像面の移動速度を速くし過ぎてしまうと、焦点評価値を算出する像面の間隔が大きくなり過ぎてしまい、合焦位置を適切に検出することができなくなってしまう。一方、像面の移動速度を遅くし過ぎてしまうと、焦点検出にかかる時間が増大し、また、手ぶれなどの外乱の影響が大きくなる。そのため、本実施形態において、カメラ制御部21は、たとえば、合焦位置の検出に適した焦点評価値のサンプリング間隔を被写界深度の3倍として設定し、焦点評価値を算出する像面の間隔が被写界深度の3倍となる像面の移動速度を、第1目標速度V1として算出する。
たとえば、撮像素子22の一の画素で撮像される一点の像がボケて、当該一の画素の左右両隣の画素において当該一点の像が撮像される場合(すなわち、一の画素で撮像可能な一点の像がボケることで、一点の像が3画素に亘って撮像される場合)でも、人間の目では一点としか判別できない場合がある。この場合、この一点の像は被写界深度内に存在するものと判断することができる。そこで、本実施形態において、カメラ制御部21は、下記式(1)に示すように、一点の像が3画素の範囲内で撮像される深度を被写界深度Dとして定義し、画素の配列方向の幅WとF値とに基づいて、被写界深度Dを求める。
被写界深度D=3画素×画素の配列方向の幅W×F値 ・・・(1)
たとえば、各画素の配列方向の幅が5μmであり、F値が5.6である場合には、カメラ制御部21は、上記式(1)に基づいて、被写界深度を84μmとして算出することができる。
そして、カメラ制御部21は、下記式(2)に示すように、被写界深度Dと、フレームレートfpsとに基づいて、焦点評価値を算出する像面の間隔が、被写界深度の3倍となる像面の移動速度を、第1目標速度V1として算出する。
第1目標速度V1=3×被写界深度D×フレームレートfps ・・・(2)
たとえば、被写界深度が84μmであり、フレームレートが200fpsである場合には、カメラ制御部21は、上記式(2)に基づいて、第1目標速度V1を50.4mm/sとして求めることができる。
なお、上記式(1)において、一点の像がボケて複数の画素に亘って撮像される場合に、被写界深度内とみなされる画素の数は、3画素に限定されず、撮像素子22の各撮像画素の構成に基づいて、適宜設定することができる。また、上記式(2)においては、焦点評価値を算出する像面の間隔が被写界深度の3倍となる像面の移動速度を、焦点検出に適した像面の移動速度として算出しているが、この構成に限定されず、たとえば、焦点評価値を算出する像面の間隔が、被写界深度の2倍または4倍などとなる像面の移動速度を、焦点検出に適した像面の移動速度として算出する構成としてもよい。
次いで、ステップS105では、カメラ制御部21により、第2目標速度V2の算出が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、ステップS103で設定したサーチ駆動範囲内で、焦点検出に必要な所定数以上の焦点評価値を算出することができる像面の移動速度を、第2目標速度V2として算出する。
ここで、本実施形態では、フォーカスレンズ32を駆動させながら焦点評価値を算出し、焦点評価値が、2回上昇した後、さらに、2回下降して推移した場合に、これら5点の焦点評価値を用いて、焦点評価値のピークを算出している。そのため、本実施形態では、ステップS103で算出したサーチ駆動範囲において、少なくとも5点以上の焦点評価値が検出できない場合には、焦点評価値のピークを検出することができなくなってしまう。
そこで、本実施形態において、カメラ制御部21は、下記式(3)に示すように、サーチ駆動範囲の大きさR(単位:パルス数)と、焦点検出に必要な最小の焦点評価値の数Nと、レンズ分解係数γ(単位:パルス数/mm)と、フレームレートfpsとに基づいて、合焦可能範囲内で所定数N以上の焦点評価値を算出することができる像面の移動速度のうち最大の速度を、第2目標速度V2として算出する。
第2目標速度V2=サーチ駆動範囲の大きさR/焦点評価値の数N/レンズ分解係数γ×フレームレートfps ・・・(3)
なお、レンズ分解係数γとは、フォーカスレンズ33の駆動量と像面の移動量との対応関係を示す値であり、例えば、フォーカスレンズ33の駆動量と像面の移動量との比である。また、レンズ分解係数γは、光学系の設計、レンズ鏡筒3の構造、および、フォーカスレンズ駆動モータ36の性能などにより決定する係数であり、カメラ制御部21は、それぞれのレンズ鏡筒3に固有のレンズ分解係数γを、レンズ制御部37から取得することができる。
たとえば、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近端ソフトリミットSLNPまでの合焦可能範囲の大きさが50パルスであり、焦点検出に必要な最小の焦点評価値の数Nが5点であり、レンズ分解係数γが80パルス/mmであり、フレームレートが200fpsである場合に、カメラ制御部21は、第2目標速度V2を、50/5/80×200=25mm/sとして算出することができる。
そして、ステップS106では、カメラ制御部21により、ステップS104で算出された第1目標速度V1およびステップS105で算出された第2目標速度V2のうち、遅い方の速度が、コントラスト方式による焦点検出時にフォーカスレンズ32を駆動させる駆動目標速度として設定される。たとえば、上述した例では、第1目標速度V1が50.4mm/sとして算出されており、第2目標速度V2が25mm/sとして算出されている。この場合、カメラ制御部21は、第2目標速度V2を駆動目標速度として設定することができる。なお、第1目標速度V1と第2目標速度V2とが同じ速度である場合、カメラ制御部21は、第2目標速度V2を駆動目標速度として設定することができる。
ステップS107では、カメラ制御部21により、焦点評価値の算出が開始される。本実施形態では、焦点評価値の算出処理は、撮像素子22の撮像画素221の画素出力を読み出し、読み出した画素出力の高周波成分を、高周波透過フィルタを用いて抽出し、これを積算することにより行われる。焦点評価値の算出は、使用者の手動操作により、あるいは、被写体認識モードなどにより、特定の焦点検出位置が選択されているときには、選択された焦点検出位置に対応する撮像画素221の画素出力のみを読み出すような構成としてもよい。なお、焦点評価値の算出処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
ステップS108では、カメラ制御部21により、操作部28に備えられたシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかの判断が行なわれる。第1スイッチSW1がオンした場合は、ステップS109に進む。一方、第1スイッチSW1がオンしていない場合は、第1スイッチSW1がオンされるまで、ステップS108を繰り返す。すなわち、第1スイッチSW1がオンされるまで、フォーカスレンズ32の駆動を停止したまま、焦点評価値の算出処理が繰り返し実行される。
ステップS109では、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ32の駆動を開始する処理が行われる。具体的には、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ32を、ステップS103で算出されたサーチ駆動範囲において、ステップS106で設定された駆動目標速度で駆動するように、フォーカスレンズ32の駆動制御を開始する。
具体的には、カメラ制御部21は、フォーカスレンズ32を、ステップS103で算出されたサーチ駆動範囲において、ステップS106で設定された駆動目標速度で駆動するように、レンズ制御部37に駆動開始指令を送出する。これにより、レンズ制御部37は、カメラ制御部21からの指令に基づいて、フォーカスレンズ駆動モータ36を駆動させ、その結果、フォーカスレンズ32を、サーチ駆動範囲において、駆動目標速度で駆動させることができる。なお、フォーカスレンズ32のサーチ駆動は、無限遠端から至近端に向かって行なってもよいし、あるいは、至近端から無限遠端に向かって行なってもよい。
ステップS110では、カメラ制御部21により、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)を検出できたか否かの判断が行われる。合焦位置を検出できない場合には、ステップS113に進み、一方、合焦位置を検出できた場合には、ステップS111に進む。
ステップS111では、合焦位置が検出できたと判断されているため、カメラ制御部21により、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させる合焦駆動が行われる。そして、フォーカスレンズ32を合焦位置まで駆動させた後は、ステップS112に進み、合焦表示が行われる。なお、合焦表示は、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。
一方、ステップS110で、合焦位置が検出できなかったと判断された場合には、ステップS113に進む。ステップS113では、カメラ制御部21により、ステップS103で算出されたサーチ駆動範囲の全域において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)の検出が行われたか否かの判断が行われる。サーチ駆動範囲の全域において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)の検出が行われていない場合には、ステップS110に戻り、サーチ駆動が継続して行われる。一方、サーチ駆動範囲の全域において、焦点評価値のピーク位置(合焦位置)の検出が行われた場合には、合焦位置を検出できないものと判断して、ステップS114に進み、非合焦表示が行われる。なお、非合焦表示も、たとえば、電子ビューファインダ26により行われる。
以上のように、本実施形態に係るカメラ1の動作が行われる。
このように、本実施形態では、焦点評価値のサンプリング間隔が焦点検出に適した間隔となる像面の移動速度を、第1目標速度V1として算出するとともに、サーチ駆動範囲内で焦点検出に必要な数の焦点評価値を算出することができる像面の移動速度を、第2目標速度V2として算出する。そして、第1目標速度V1と第2目標速度V2とを比較し、遅い方の速度を駆動目標速度として設定し、像面の移動速度が駆動目標速度となるように、フォーカスレンズ32を駆動する。これにより、本実施形態では、フォーカスレンズ32の駆動に伴う像面の移動速度が、合焦可能範囲内で焦点検出に必要な数の焦点評価値を算出することができる速度ではないために、焦点評価値のピーク(合焦位置)を適切に検出することができなくなってしまうことを有効に防止することができる。また、本実施形態では、フォーカスレンズ32の駆動に伴う像面の移動速度が、焦点評価値のサンプリング間隔が焦点検出に適した間隔となる速度ではないために、焦点評価値のピーク(合焦位置)を高い精度で掲出できなくなってしまうことも有効に防止することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した実施形態では、上記式(2)に示すように、被写界深度に基づいて、第1目標速度V1を算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、光学系の被写界深度(またはF値)と第2目標速度V2との関係を示すテーブルを、カメラ制御部21のROMに予め記憶しておき、光学系の被写界深度(またはF値)から第1目標速度V1を算出する構成とすることができる。また、第1目標速度V1を予め決定した固定値として、カメラ制御部21のROMに予め記憶しておく構成としてもよい。
また、上述した実施形態に加えて、フォーカスリミット情報に基づく第2目標速度V2が、駆動目標速度として設定された場合に、カメラ制御部21は、カメラ本体2に備えている背面モニターまたは電子ビューファインダ26を介して、フォーカスレンズ32を第2目標速度V2で駆動させている旨を、ユーザに報知する構成としてもよい。これにより、フォーカスレンズ32の駆動速度を第1目標速度V1と異なる第2目標速度V2としたことによる、ユーザの違和感を軽減することができる。
さらに、上述した実施形態では、上記式(3)に示すように、フォーカスレンズ32のサーチ駆動範囲に基づいて、第2目標速度V2を算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、上記式(3)において、フォーカスレンズ32のサーチ駆動範囲に代えて、図3に示す合焦可能範囲を用いて、第2目標速度V2を算出する構成としてもよい。
加えて、上述した実施形態では、コントラスト検出方式による焦点検出を行う構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、図8に示す撮像素子22aを備え、コントラスト検出方式による焦点検出と、位相差検出方式による焦点検出とを行う構成としてもよい。図8は、他の実施形態に係る撮像素子22aの撮像面の要部拡大図である。たとえば、図8に示す撮像素子22aは、画像撮像用の撮像素子221と、位相差検出用の焦点検出画素222a,222bとを有し、焦点検出画素222a,222bの出力をそれぞれの測距瞳に対応する出力グループにまとめることにより、一対の像の強度分布に関するデータを取得し、この強度分布データに対し、相関演算処理または位相差検出処理などの像ズレ検出演算処理を施すことにより、いわゆる位相差検出方式による像ズレ量を検出することができる。そして、得られた像ズレ量に一対の測距瞳の重心間隔に応じた変換演算を施すことにより、予定焦点面に対する現在の焦点面(予定焦点面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出エリアにおける焦点面をいう。)の偏差、すなわちデフォーカス量を求めることができ、算出したデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ32を駆動させることで、光学系の焦点状態を調節することができる。
また、図8に示す撮像素子22aを備えることで、コントラスト検出方式による焦点検出と、位相差検出方式による焦点検出とを同時に行うスキャン動作を行う構成としてもよい。この場合、スキャン動作におけるフォーカスレンズ32のスキャン駆動範囲を、上述した実施形態のサーチ駆動範囲と同様に設定することができ、スキャン駆動範囲内で、焦点検出に必要な数の焦点評価値が算出できるように、第2目標速度を算出する構成とすることができる。
また、上述した実施形態では、「FULLモード」が設定されている場合には、図7(A)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側のレンズ位置から、至近端ソフトリミットSLNPよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs1として設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、図9(A)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPから至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、サーチ駆動範囲Rs1として設定する構成としてもよい。なお、図9は、サーチ駆動範囲の他の例を示す図である。
同様に、「至近側制限モード」が設定されている場合には、図7(B)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPよりも無限遠側のレンズ位置から、至近側ソフトリミットSLNSよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs2として算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、図9(B)に示すように、無限遠端ソフトリミットSLIPから、至近側ソフトリミットSLNSよりも至近側のレンズ位置までの範囲を、サーチ駆動範囲Rs2として算出する構成としてもよい。また、「無限遠側制限モード」が設定されている場合には、図9(C)に示すように、無限遠側ソフトリミットSLISよりも無限遠側のレンズ位置から、至近端ソフトリミットSLNPまでの範囲を、サーチ駆動範囲Rs3として算出する構成としてもよい。
また、上述した実施形態では、「FULLモード」、「至近側制限モード」、「無限遠側制限モード」の3つのモードが設定可能となっており、予め決められた合焦可能範囲Rf1,Rf2,Rf3をそれぞれ設定することが可能となっているが、この構成に限定されず、たとえば、ユーザが所望する範囲を合焦可能範囲として設定する構成としてもよい。
たとえば、図10に示すように、カメラ鏡筒3aに、フォーカスリミットスイッチ38’とプリセット記憶スイッチ39とを備え、ユーザが、フォーカスリミットスイッチ38’を「プリセット」に合わせた状態で、ユーザが所望する合焦可能範囲の無限遠側のリミット位置(端部)および至近側のリミット位置(端部)で、プリセット記憶スイッチ39を押下することで、レンズ鏡筒3に、ユーザが所望する合焦可能範囲(プリセット範囲)を記憶させることができ、その後、ユーザがフォーカスリミットスイッチ38’を「プリセット」に合わせた場合に、合焦可能範囲をユーザが設定したプリセット範囲に制限することができる。
また、上述した実施形態では、レンズ分解係数γを、フォーカスレンズ33の駆動量/像面の移動量(単位:パルス数/mm)で定義する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、レンズ分解係数γを、像面の移動量/フォーカスレンズ33の駆動量(mm/パルス数)で定義する構成としてもよい。この場合、上記式(3)に代えて、下記式(4)に基づいて、第2目標速度V2を算出することができる。
第2目標速度V2=サーチ駆動範囲の大きさR/焦点評価値の数N×レンズ分解係数γ×フレームレートfps ・・・(4)
なお、上述した実施形態のカメラ1は特に限定されず、例えば、デジタルビデオカメラ、レンズ一体型のデジタルカメラ、携帯電話用のカメラなどのその他の光学機器に本発明を適用してもよい。