JP6509456B1 - 波面計測装置、波面計測方法及び移動体観測装置、移動体観測方法 - Google Patents
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Abstract
Description
移動体から送信される光束は、大気の屈折率分布のゆらぎが原因で、光の位相が乱されてしまうために、広がってしまうことがある。
したがって、移動体観測装置は、移動体の観測精度を高めるには、光の位相の等しい面である波面を取得する必要がある。
以下の特許文献1には、波面を計測する波面センサが開示されている。
波面センサは、波面のチルト及び焦点のそれぞれを制御するための機構として、高速ステアリングミラー、結像レンズ及びレンズレットアレイにおけるそれぞれの高速移動を実現する制御機構を備えている。
したがって、従来の波面センサは、実装している制御機構の制御精度によっては、波面の計測精度が劣化してしまうことがあるという課題があった。
図1は、実施の形態1による波面計測装置3を含む移動体観測装置を示す構成図である。
図1において、移動体1は、大気の外、あるいは、大気中に存在している物体である。
移動体1に反射された光束又は移動体1から送信された光束は、大気の屈折率分布のゆらぎが原因で、広がってしまった光束2であり、光束2は、波面計測装置3に入射される。
波面計測装置3は、入射された光束2から、波面を計測する装置である。
波面計測装置3は、波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3を備えている。
図1では、波面計測装置3が、3つの波面センサを備えているが、少なくとも2つ以上の波面センサを備えていればよい。
波面センサ10−2は、第2の遮光部21、第2の結像光学系22、第2のフォーカス調整レンズ24、第2のシャッタ25及び第2の光検出器26を備えている。
波面センサ10−3は、第3の遮光部31、第3の結像光学系32、第3のフォーカス調整レンズ34、第3のシャッタ35及び第3の光検出器36を備えている。
波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3は、互いに異なる位置に配置されている。
図1に示す波面計測装置3では、第1の遮光部11が第1の結像光学系12の入力側に配置されている。しかし、これは一例に過ぎず、第1の遮光部11は、第1の結像光学系12の出力側に配置されていてもよい。即ち、第1の遮光部11は、第1の結像光学系12における光学的に共役な瞳位置に配置されてもよいため、第1の結像光学系12と第1の光検出器16との間に配置されていてもよい。
第2の遮光部21及び第3の遮光部31は、第1の遮光部11と同様に、光束2の透過領域を空間的に制限する。
第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32は、第1の結像光学系12と同様に、光束2を集光する光学系である。
第2のフォーカス調整レンズ24は、第2の結像光学系22を透過してきた光束2の光路長を調整して、光路長調整後の光束2を第2のシャッタ25に出力する。
第3のフォーカス調整レンズ34は、第3の結像光学系32を透過してきた光束2の光路長を調整して、光路長調整後の光束2を第3のシャッタ35に出力する。
第2のシャッタ25は、第2の光検出器26により受光される光束2の光量を調整するために、第2のフォーカス調整レンズ24から出力された光束2の通過を時間的に制限する。
第3のシャッタ35は、第3の光検出器36により受光される光束2の光量を調整するために、第3のフォーカス調整レンズ34から出力された光束2の通過を時間的に制限する。
第1の光検出器16は、第1のシャッタ15を通過してきた光束2から、移動体1の像として、集光スポット像を検出し、集光スポット像を示す強度画像を波面推定部41に出力する。
第2の光検出器26は、第2のシャッタ25を通過してきた光束2から、移動体1の像として、集光スポット像を検出し、集光スポット像を示す強度画像を波面推定部41に出力する。
第3の光検出器36は、第3のシャッタ35を通過してきた光束2から、移動体1の像として、集光スポット像を検出し、集光スポット像を示す強度画像を波面推定部41に出力する。
波面推定部41は、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれに検出された集光スポット像の位置から、波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3の開口の全てを含む全体開口における光束の波面の概算値を算出する。
また、波面推定部41は、概算値を用いて、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれに検出された集光スポット像の点像強度分布を算出し、点像強度分布と集光スポット像から、全体開口における光束の波面を推定する。
移動体復元部42は、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれに検出された集光スポット像と、波面推定部41により推定された点像強度分布とから、移動体1の輝度分布を推定する処理を実施する。
保存装置43は、例えば、記憶処理回路によって実現される。
保存装置43は、波面推定部41により推定された全体開口の波面及び移動体復元部42により推定された移動体1の輝度分布などを記録する装置である。
また、記憶処理回路は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、あるいは、DVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
カウンタ52は、時刻校正部51により校正されたクロックの時刻が或る時刻になると、或る時刻からの経過時間を計測する。
制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のフォーカス調整レンズ14、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34のそれぞれを制御する。
また、制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のシャッタ15、第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35のそれぞれを制御する。
また、制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれを制御する。
駆動装置54は、制御装置53から出力される制御信号に従って第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32におけるそれぞれの指向方向を変更する装置である。
図2において、筐体61は、波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3を実装している。
筐体62は、波面推定部41、移動体復元部42、保存装置43、時刻校正部51、カウンタ52及び制御装置53を実装している。
図1では、波面計測装置3が、3つの波面センサを備えているが、図2では、波面計測装置3が、7つの波面センサを備えている。
第1の遮光部11における光束2の透過領域、第2の遮光部21における光束2の透過領域及び第3の遮光部31における光束2の透過領域は、形状及び大きさのそれぞれが同じである。光束2の透過領域は、光束2が透過する領域である。
第1の遮光部11における光束2の遮光領域、第2の遮光部21における光束2の遮光領域及び第3の遮光部31における光束2の遮光領域は、第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32におけるそれぞれの開口よりも僅かに小さい。遮光領域は、光束2が遮光される領域である。
地球の大気は、酸素、窒素及び水蒸気などの媒質によって構成されており、レンズなどの光学部品と同様に、光が透過する。
酸素等の媒質は、温度の変化及び気圧の変化に伴って屈折率が変動するため、地球の大気を透過する光の位相分布は、温度の変化及び気圧の変化に伴って変化する。光は、電磁波であるため、光の位相分布は、波面として捉えることが可能である。
媒質の屈折率の変化自体は小さいが、光が伝搬される光路が長くなると、屈折率の変化は、光の波長と比較して、無視できない大きさとなるため、波面の推定においては、大気のゆらぎの影響を強く受ける。
また、地上の大気は、太陽からの輻射の影響及び熱輸送の影響を受けるとともに、地球の自転の影響を受けるため、地上と上空の間には、大気の層が形成される。大気の層を透過してくる光の波面は、複雑に乱れる。
図3は、図1に示す移動体観測装置の処理手順を示すフローチャートである。
駆動装置54は、移動体1が波面計測装置3と相対的に移動している場合でも、第1の結像光学系12が、光束2を集光することができるようにするため、第1の結像光学系12の指向方向を変更する。
駆動装置54は、第1の結像光学系12と同様に、第2の結像光学系22の指向方向及び第3の結像光学系32の指向方向のそれぞれを変更する。
例えば、移動体1が恒星である場合、移動体1は、日周運動によって、1秒間に15秒角(=15/3600度)ほど、移動する。したがって、移動体1の追尾を可能にするには、駆動装置54が、第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32におけるそれぞれの指向方向を秒角精度で制御できる必要がある。
カウンタ52は、時刻校正部51により校正されたクロックの時刻が或る時刻になると、或る時刻からの経過時間を計測する。
制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のフォーカス調整レンズ14、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34のそれぞれを制御する。
また、制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のシャッタ15、第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35のそれぞれを制御する。
さらに、制御装置53は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれを制御する。
駆動装置54は、制御装置53から出力される制御信号に従って第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32におけるそれぞれの指向方向を変更する。
第1の結像光学系12は、第1の遮光部11を透過してきた光束2を集光する(図3のステップST1)。
第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32についても、第1の結像光学系12と同様に、第2の遮光部21及び第3の遮光部31のそれぞれを透過してきた光束2を集光する(図3のステップST1)。
第2のフォーカス調整レンズ24は、第2の結像光学系22を透過してきた光束2の光路長を調整し、光路長調整後の光束2を第2のシャッタ25に出力する。
第3のフォーカス調整レンズ34は、第3の結像光学系32を透過してきた光束2の光路長を調整し、光路長調整後の光束2を第3のシャッタ35に出力する。
第1のフォーカス調整レンズ14、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34におけるそれぞれの光路長の調整量は、制御装置53によって制御されている。
光路長の調整量が制御装置53によって制御されることで、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36におけるそれぞれの受光面16a,26a,36aにおいて、光束2の焦点が合う。
第1の光検出器16での光束2の露光時間がコヒーレンス時間よりも長くなると、大気の状態が変わるため、第1の光検出器16により検出される移動体1の像の広がりが大きくなる。コヒーレンス時間は一般に1〜10ms程度である。
移動体1が高速で移動している場合、制御装置53は、第1の光検出器16での光束2の露光時間がコヒーレンス時間よりも短くなるように、第1のシャッタ15における光束2の通過時間を制御する。
第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35についても、第1のシャッタ15と同様に、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34から出力されたそれぞれの光束2の通過を時間的に制限する。
制御装置53は、第1のシャッタ15と同様に、第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35におけるそれぞれの光束2の通過時間を制御する。
光束2の光量が少なくなってしまう場合、制御装置53が、第1のシャッタ15、第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35において、光束2の通過と遮光が複数回繰り返されるように制御する。光束2の通過と遮光が複数回繰り返されることで、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれが、複数回、移動体1の像を検出できるようになる。
第2の光検出器26は、第2のシャッタ25を通過してきた光束2から、移動体1の像として、集光スポット像を検出し、集光スポット像を示す強度画像を波面推定部41に出力する(図3のステップST2)。
第3の光検出器36は、第3のシャッタ35を通過してきた光束2から、移動体1の像として、集光スポット像を検出し、集光スポット像を示す強度画像を波面推定部41に出力する(図3のステップST2)。
図4では、第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32だけでなく、全部で10個の結像光学系が波面計測装置3に実装されている例を示している。
したがって、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36だけでなく、全部で10個の光検出器が波面計測装置3に実装されている。
図4は、地上と上空の間に3つの大気層がある例を示しており、101は第1の大気層、102は第2の大気層、103は第3の大気層である。
光束2が第1の大気層101、第2の大気層102及び第3の大気層103を透過する際に波面が乱されるため、移動体1の像104は、仮に移動体1が点とみなせる物体であっても、広がってしまう。
したがって、結像光学系の収差を要因とする像104の広がり及び光検出器の分解能を要因とする像104の広がりを除外すれば、像104の広がりの要因は、大気ゆらぎである。
なお、移動体1が、広がりを有する物体である場合、結像光学系の収差及び光検出器の分解能を要因とする広がりを除外すれば、像104の広がりは、物体自体の広がりと、大気ゆらぎによる広がりで表される。数学的には物体自体の広がりが、波面が等しいとみなせる角度範囲及びアイソプラナテック角を満たす場合、像104の広がりは物体自体の広がりと大気揺らぎによる広がりの畳み込みで表される。
図5は、波面が伝搬経路によって異なる場合の複数の光検出器により検出される移動体1の像を示す説明図である。図5において、図4と同一符号は同一又は相当部分を示している。
光束4、光束5及び光束6のそれぞれは、移動体1に反射された光束2又は移動体1から送信された光束2である。光束4、光束5及び光束6は、途中の大気層の揺らぎの寄与が互いに異なっており、光束4の伝搬経路、光束5の伝搬経路及び光束6の伝搬経路は、互いに異なっている。
それぞれの結像光学系によって、それぞれの光検出器の受光面に集光される光束2が、光束4、光束5及び光束6のそれぞれであるとみなすと、それぞれの受光面には、光束4、光束5及び光束6のそれぞれによって移動体1の像105が形成される。
それぞれの光検出器の受光面に形成される複数の像105は、大気のゆらぎを要因とする広がりを持っており、波面の推定に用いることができる。
図6は、光束2が進行方向に対して広がらずに伝搬されている例を示し、図7は、光束2が進行方向に対して広がりながら伝搬されている例を示している。
図6及び図7では、第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32だけでなく、全部で64(=8×8)個の結像光学系が波面計測装置3に実装されている例を示している。
また、図6及び図7では、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36だけでなく、全部で64個の光検出器が波面計測装置3に実装されている例を示している。
光束2が進行方向に対して広がらずに伝搬されている場合、図6に示すように、64個の結像光学系により集光されるそれぞれの移動体1の像105aの位置は、64個の結像光学系のそれぞれの位置と一致している。
光束2が進行方向に対して広がりながら伝搬されている場合、図7に示すように、64個の結像光学系により集光されるそれぞれの移動体1の像105bの位置は、64個の結像光学系のそれぞれの位置とずれている。
波面106aは、移動体1の64個の像105aの位置から求められ、波面106bは、移動体1の64個の像105bの位置から求められる。
図6及び図7では、第1の遮光部11、第2の遮光部21及び第3の遮光部31を含む64個の遮光部において、光束2が遮光される遮光領域が、黒く塗られている例を示している。しかし、遮光部において、遮光領域は、不要な光を透過させなければよく、黒以外の色が塗られていてもよい。
また、遮光部において、遮光領域は、不要な光を吸収する着色又は加工が施されていてもよいし、不要な光を散乱する着色又は加工が施されていてもよい。
波面推定部41は、それぞれの強度画像が示す集光スポット像の位置から、波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3の開口の全てを含む全体開口における光束2の波面を推定する(図3のステップST3)。
図8は、波面推定部41及び移動体復元部42の処理手順を示すフローチャートである。
以下、図8を参照しながら、波面推定部41の処理内容を具体的に説明する。
複数の集光スポット像の位置から、波面の概算値を算出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
複数の集光スポット像の位置から波面を推定する方法は、例えば、以下の非特許文献1に開示されている。
[非特許文献1]国立天文台報 vol.2 No.2
制御装置53の制御によって、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれからN枚の強度画像が波面推定部41に出力されているものとする。
そして、波面推定部41は、それぞれのN枚の強度画像のうち、それぞれのn(n=1,2,・・・,N)枚目の強度画像が示す集光スポット像の位置から、波面の概算値を算出しているものとする。
なお、移動体1が点像である場合、あるいは、移動体1が点像と近似できる場合、集光スポット像の位置として、点像の重心の位置を求める態様が考えられる。
また、移動体1が広がりのある物体である場合、波面は、複数の集光スポット像の間隔又は複数の集光スポット像の相対位置から求めることができる。したがって、集光スポット像の位置として、複数の集光スポット像の相互相関又は複数の集光スポット像の特徴的な位置の間隔を求める態様が考えられる。
波面推定部41は、以下の式(1)に示すように、全体開口における光束2の波面の位相Φn(u,v)の初期値として、位相Φ0,nを用いることで、概算値よりも高精度な波面を推定する。(u,v)は、瞳空間の座標である。
以下、高精度な波面の推定処理を説明する前に、高精度な波面の推定処理の原理及び移動体1の輝度分布推定処理の原理を説明する。
図9では、M個の結像光学系が波面計測装置3に実装されている例を示している。
M0(u,v)は、全体開口である。
M1(u,v)、M2(u,v)、・・・、MM(u,v)のそれぞれは、M個の結像光学系におけるそれぞれの開口である。MM(u,v)における添え字のMは、2以上の整数であり、例えば、m=1,2,・・・,Mである。
波面収差と瞳上の振幅分布で表される瞳関数Gm,n(u,v)は、以下の式(2)に示すように、それぞれのn枚目の強度画像に対応する、全体開口における光束2の波面の位相Φn(u,v)と、開口Mm(u,v)とで表される。
開口Mm(u,v)は、既知であり、位相Φn(u,v)の初期値は、概算値である波面の位相Φ0,nであるため、瞳関数Gm,n(u,v)は、位相Φn(u,v)と開口Mm(u,v)から算出される。
式(4)において、F−1は、逆フーリエ変換を表す記号である。
点像強度分布を示す点広がり関数km,n(x,y)は、以下の式(5)に示すように、振幅広がり関数am,n(u,v)と、振幅広がり関数am,n(u,v)の複素共役との積で表される。(x,y)は、実空間の座標である。
移動体1の輝度分布o(p,q)は、移動体1に反射される光束2の強度又は移動体1から送信される光束2の強度である。
式(6)における畳み込み積分を“*”の記号で表記すると、式(6)は、以下の式(7)で表される。
一般的には、移動体1の像im,n(x,y)は、点広がり関数km,n(x,y)と、移動体1の輝度分布o(p,q)との畳み込み積分で得られるが、式(6)及び式(7)には、それぞれの光検出器で生じるノイズem,n(x,y)が付加されている。
式(8)において、点広がり関数km,n(x,y)は、式(2)、式(4)及び式(5)から得られる。したがって、式(8)において、未知の値は、移動体1の輝度分布o(p,q)のみである。
移動体1の輝度分布o(p,q)は、差分の二乗和eが最小になるo(p,q)を探索することで求まる。
したがって、時刻tが変わることで、移動体1の相対位置が変わる。
時刻tが変わる回数と、波面推定部41が得る強度画像の枚数であるフレーム数とは、同じである必要はないが、フレーム数が例えば10であれば、10点の時刻の強度画像が得られることになるため、フレームの番号は、時刻の番号と対応する。
ここでは、移動体1の輝度分布o(p,q)は、フレームに依存しておらず、変化していないものとする。ただし、波面は、フレーム毎に、変化しているものとする。
以下の式(9)は、式(8)がフーリエ変換されたものであり、式(8)に示す差分の二乗和eが、位相空間での差分の二乗和Eになっている。
式(9)において、Im,n(u,v)は、im,n(x,y)のスペクトルであり、以下の式(10)のように表される。
式(9)において、O(u,v)は、o(p,q)のスペクトルであり、以下の式(11)のように表される。
それぞれの光検出器で生じるノイズem,n(x,y)があるために、O(u,v)=im,n(u,v)/Km,n(u,v)のように表現することができないので、式(11)のように、表されている。
式(11)において、γは、解の安定化のために導入している係数である。
Km,n(u,v)は、瞳関数Gm,n(u,v)の自己相関であり、以下の式(12)で表される。Km,n(u,v)は、規格化されていないが、光学伝達関数である。
式(13)に示す差分の二乗和Eは、開口Mm(p,q)と、位相Φn(p,q)と、移動体1の像im,n(x,y)のスペクトルIm,n(u,v)とで表されており、未知である移動体1の輝度分布o(p,q)のスペクトルO(u,v)に依存していない。
波面Wn(u,v)は、以下の式(14)に示す差分の二乗和Errが最小になる位相Φn(u,v)を求めれば、式(2)よって推定することができる。
移動体1の輝度分布o(p,q)が実空間で0よりも大きい実数であるという制約を与えるには、実空間における差分の二乗和eを示す式(8)に対して、さらに制約を与えればよい。
以下の式(15)は、実空間における差分rm,n(x,y)を示している。
読み出しノイズは、正規分布に従い、中央値が0で、標準偏差がσであるとする。ショットノイズは、取得したフレームの輝度分布に比例する。
したがって、式(15)をノイズで規格化すると、式(16)のようになる。
ノイズに対する実空間における差分rm,n(x,y)の比が、1よりも大きければ、ずれが大きく、1であれば、ずれがなく、1よりも小さければ、ずれが小さいことを意味する。
式(17)において、dm(x,y)は、差分rm,n(x,y)に与える重みであり、例えば、ずれが大きいフレームは、信頼度が低いので、小さい重みが与えられる。
また、実空間上において、計算する領域の重みを1、計算を省略する領域の重みを0として、計算量を減らすことが可能である。
以上が、波面の推定処理の原理及び移動体1の輝度分布推定処理の原理である。
波面推定部41は、式(2)、式(4)及び式(5)を算出することで、点像強度分布を示す点広がり関数km,n(x,y)を算出する(図8のステップST12)。
波面推定部41は、点広がり関数km,n(x,y)及び移動体1の像im,n(x,y)のそれぞれをフーリエ変換することで、光学伝達関数Km,n(u,v)及び移動体1の像im,n(x,y)のスペクトルIm,n(u,v)を得る(図8のステップST13)。
波面推定部41は、差分の二乗和Errを算出すると、位相の探索処理が収束しているか否かを判定する(図8のステップST15)。
位相の探索処理の収束判定として、例えば、算出した差分の二乗和Errが事前に設定されている第1の許容誤差以下であれば、収束していると判定する方法がある。収束していると判定したときの算出した差分の二乗和Errは、最小の二乗和Errである。第1の許容誤差は、例えば、波面推定部41の内部メモリ又は保存装置43に格納されているものとする。
また、位相の探索処理の収束判定として、例えば、位相Φn(u,v)を変更しながら、事前に設定された回数だけ差分の二乗和Errを算出し、算出した二乗和Errの中で、最小の二乗和Errを特定したら、収束していると判定する方法がある。
波面推定部26は、ステップST12〜ST15の処理を再度実施する。
変更後の位相Φn(u,v)は、未だ式(2)に設定していない位相であれば、どのような位相でもよいが、差分の二乗和Errが小さくなるような位相であることが望ましい。
波面推定部41は、位相の探索処理が収束していれば(図8のステップST15:YESの場合)、位相の探索処理を終了する。
推定された波面Wn(u,v)は、ステップST11で算出された概算値としての波面よりも高精度な波面である。
波面推定部41は、波面Wn(u,v)を保存装置43に出力する。
また、波面推定部41は、最小の二乗和Errが算出された位相Φn(u,v)に対応する点広がり関数km,n(x,y)を移動体復元部42に出力する。
以下、移動体復元部42による移動体1の輝度分布推定処理を具体的に説明する。
また、移動体復元部42は、差分rm,n(x,y)を式(17)に代入して、差分の二乗和eを算出する(図8のステップST18)。
ここでは、式(17)に示す重みdm(x,y)は、事前に設定された値に固定されていることを想定しているが、移動体復元部42によって変更されるようにしてもよい。
移動体1の輝度分布推定処理の収束判定として、例えば、算出した差分の二乗和eが事前に設定されている第2の許容誤差以下であれば、収束していると判定する方法がある。収束していると判定したときの算出した差分の二乗和eは、最小の二乗和eである。第2の許容誤差は、例えば、移動体復元部42の内部メモリ又は保存装置43に格納されているものとする。
また、移動体1の輝度分布推定処理の収束判定として、例えば、移動体1の輝度分布o(p,q)を変更しながら、事前に設定された回数だけ差分の二乗和eを算出し、算出した二乗和eの中で、最小の二乗和eを特定したら、収束していると判定する方法がある。
変更後の輝度分布o(p,q)は、未だ式(16)に設定していない輝度分布であれば、どのような輝度分布でもよいが、差分の二乗和eが小さくなるような輝度分布であることが望ましい。
移動体復元部42は、移動体1の輝度分布推定処理が収束していれば(図8のステップST19:YESの場合)、移動体1の輝度分布推定処理結果として、最小の二乗和eが算出された移動体1の輝度分布o(p,q)を保存装置43に出力する(図8のステップST21)。
実施の形態1の波面計測装置3では、第1の遮光部11、第2の遮光部21及び第3の遮光部31におけるそれぞれの透過領域が、第1の結像光学系12、第2の結像光学系22及び第3の結像光学系32におけるそれぞれの開口よりも僅かに小さい。
しかし、これは一例に過ぎず、例えば、図10に示すように、透過領域が、図2に示す透過領域よりも狭くてもよい。即ち、開口の一部(部分開口)が透過領域であってもよい。
図10は、結像光学系の開口よりも、光束2の透過領域が小さい遮光部の一例を示す説明図である。
図11は、開口の一部に、光束2が遮光される遮光領域が含まれている遮光部の一例を示す説明図である。
また、図12、図13及び図14に示すように、透過領域の形状又は大きさが異なる遮光部が混在していてもよい。
図12、図13及び図14は、複数の遮光部として、光束の透過領域の形状又は大きさが異なる遮光部が混在している例を示す説明図である。
したがって、波面推定部41で実施される波面の推定処理は、透過領域の大きさが小さい場合、透過領域の大きさが大きい場合よりも、早く終了する。
ここでは、透過領域の形状又は大きさが異なる遮光部が混在しているものとする。
波面推定部41は、推定処理の最初の段階では、複数の光検出器の中で、透過領域の大きさが小さい遮光部と接続されている光検出器ほど、検出された集光スポット像の重みを大きくする。
波面推定部41が差分の二乗和Errを算出する際に用いるスペクトルIm,n(u,v)についても、対応する集光スポット像の重みが大きくなれば、大きくなる。
波面推定部41は、波面の推定処理が進んで、収束に近づいてきたら、例えば、全ての光検出器により検出された集光スポット像の重みを均一にする。
例えば、式(14)に示す差分の二乗和Errが、閾値よりも小さければ、波面推定部41は、収束に近づいてきていると判断することができる。閾値は、例えば、波面推定部41の内部メモリ又は保存装置43に格納されているものとする。閾値>第1の許容誤差である。
しかし、これは一例に過ぎない。
波面推定部41は、複数のフレームのうち、奇数フレームでは、透過領域の大きさが小さい遮光部と接続されている光検出器ほど、検出された集光スポット像の重みを大きくする。また、波面推定部41は、偶数フレームでは、全ての光検出器により検出された集光スポット像の重みを均一にするようにしてもよい。
実施の形態3では、第1の光束選択部13、第2の光束選択部23及び第3の光束選択部33を備えている移動体観測装置について説明する。
図15は、実施の形態3による波面計測装置3を含む移動体観測装置を示す構成図である。図15において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
第1の光束選択部13は、第1の結像光学系12により集光された光束2から、第1の波長の光束2aを抽出し、光束2aを第1のフォーカス調整レンズ14に出力する。
第2の光束選択部23は、第2の結像光学系22により集光された光束2から、第2の波長の光束2bを抽出し、光束2bを第2のフォーカス調整レンズ24に出力する。
第3の光束選択部33は、第3の結像光学系32により集光された光束2から、第3の波長の光束2cを抽出し、光束2cを第3のフォーカス調整レンズ34に出力する。
第1の波長と第2の波長と第3の波長とは、互いに異なる波長である。
第1の光束選択部13は、第1の結像光学系12を透過してきた光束2を受けると、光束2から、第1の波長の光束2aを抽出し、光束2aを第1のフォーカス調整レンズ14に出力する。
波面計測装置3が第1の光束選択部13を備えることで、第1の光検出器16の受光面16aには、第1の波長の光束2aが集光される。
波面計測装置3が第2の光束選択部23を備えることで、第2の光検出器26の受光面26aには、第2の波長の光束2bが集光される。
第3の光束選択部33は、第3の結像光学系32を透過してきた光束2を受けると、光束2から、第3の波長の光束2cを抽出し、光束2cを第3のフォーカス調整レンズ34に出力する。
波面計測装置3が第3の光束選択部33を備えることで、第3の光検出器36の受光面36aには、第3の波長の光束2cが集光される。
大気による光束2の散乱は、波長に依存する。例えば、青い光は、散乱しやすく、青い光よりも波長が長い赤い光は、散乱され難いという特徴がある。なお、画像の分解能は、赤い光よりも青い光の方が高い。
したがって、移動体1からの光束2のうち、青色の光束2は、赤色の光束2よりも、広がりが大きくなる。
式(18)において、λjの添え字jは、波長を識別する記号である。j=1の場合のλ1は、第1の波長であり、j=2の場合のλ2は、第2の波長、j=3の場合のλ3は、第3の波長である。
式(18)は、式(3)と同様に、位相Φn(u,v)と、波面Wn(u,v)との関係を示している。
波面推定部41により算出される点広がり関数km,n(x,y)は、複数の集光スポット像の位置の相関だけでなく、光束2a,2b,2cの波長の相関も考慮されて算出されている。
以下、波面推定部41は、実施の形態1と同様に、点広がり関数km,n(x,y)を用いて、全体開口における光束2の波面Wn(u,v)を推定する。
実施の形態1の波面計測装置3では、制御装置53が、第1のフォーカス調整レンズ14、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34におけるそれぞれの光路長の調整量を制御している。
具体的には、制御装置53は、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36におけるそれぞれの受光面16a,26a,36aにおいて、光束2の焦点が合うように、光路長の調整量を制御している。
図16は、実施の形態4による波面計測装置3を含む移動体観測装置を示す構成図である。図16において、図1及び図15と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
制御装置70は、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のフォーカス調整レンズ14、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34のそれぞれを制御する。
このとき、制御装置70は、第1の光検出器16の受光面16aにおいて、光束2aの焦点が合うように、第1のフォーカス調整レンズ14を制御する。以下、焦点が合っている光束2aを「フォーカス状態の光束2a」と称する。
また、制御装置70は、第2の光検出器26の受光面26aにおいて、光束2bの焦点がずれるように、第2のフォーカス調整レンズ24を制御する。以下、焦点がずれている光束2bを「デフォーカス状態の光束2b」と称する。
また、制御装置70は、第3の光検出器36の受光面36aにおいて、光束2cの焦点がずれるように、第3のフォーカス調整レンズ34を制御する。以下、焦点がずれている光束2cを「デフォーカス状態の光束2c」と称する。なお、光束2cの焦点ずれは、光束2bの焦点ずれよりも大きいものとする。
制御装置70は、図1に示す制御装置53と同様に、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1のシャッタ15、第2のシャッタ25及び第3のシャッタ35のそれぞれを制御する。
また、制御装置70は、図1に示す制御装置53と同様に、カウンタ52により計測された経過時間に基づいて、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のそれぞれを制御する。
図16は、制御装置70が図15に示す移動体観測装置に適用されているが、図1に示す移動体観測装置に適用されているものであってもよい。
制御装置70は、第1の光検出器16の受光面16aにおいて、光束2aの焦点が合うように、第1のフォーカス調整レンズ14を制御する。
また、制御装置70は、第2の光検出器26の受光面26a及び第3の光検出器36の受光面36aのそれぞれにおいて、光束2b,2cの焦点がずれるように、第2のフォーカス調整レンズ24及び第3のフォーカス調整レンズ34のそれぞれを制御する。
また、第3の光検出器36は、デフォーカス状態の光束2cから集光スポット像を検出する。
波面推定部41は、フォーカス状態の光束2aから検出された集光スポット像と、デフォーカス状態の光束2b,2cから検出されたそれぞれの集光スポット像との点像強度分布を示す点広がり関数km,n(x,y)を算出する。
波面推定部41により算出される点広がり関数km,n(x,y)は、複数の集光スポット像の位置の相関だけでなく、焦点のずれに対応する収差も考慮されて算出されている。
以下、波面推定部41は、実施の形態1と同様に、点広がり関数km,n(x,y)を用いて、全体開口における光束2の波面Wn(u,v)を推定する。
実施の形態5では、移動体復元部80が、移動体1が存在している領域内の集光スポット像と点像強度分布とから、移動体1の輝度分布を推定する移動体観測装置について説明する。
図17は、実施の形態5による波面計測装置3を含む移動体観測装置を示す構成図である。図17において、図1、図15及び図16と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
移動体復元部80は、パーソナルコンピュータなどの計算機、あるいは、波面推定回路などによって実現される。
移動体復元部80は、第1の光検出器16、第2の光検出器26及び第3の光検出器36のうち、基準波長より長い波長の光束を抽出する光束選択部が接続されている光検出器により検出された複数の集光スポット像から、移動体が存在している領域を検出する。
移動体復元部80は、移動体1が存在している領域内の集光スポット像と点像強度分布とから、移動体1の輝度分布を推定する処理を実施する。
基準波長は、例えば、橙色の波長であり、基準波長の情報は、移動体復元部80の内部又は保存装置43に格納されている。
図17は、移動体復元部80が図16に示す移動体観測装置に適用されているが、図15に示す移動体観測装置に適用されているものであってもよい。
第1の光検出器16は、第1の波長の光束2aから集光スポット像を検出しており、第2の光検出器26は、第2の波長の光束2bから集光スポット像を検出している。また、第3の光検出器36は、第3の波長の光束2cから集光スポット像を検出している。
第1の波長の光束2aは、第2の波長の光束2bよりも広がりが小さい光束であり、例えば、赤色の光束であるとする。
第2の波長の光束2bは、第3の波長の光束2cよりも広がりが小さい光束であり、例えば、黄色の光束であるとする。
第3の波長の光束2cは、例えば、青色の光束であるとする。第1の波長>第2の波長>第3の波長である。
赤色の光束は、黄色又は青色などの光束よりも、散乱の影響を受け難いが、強度画像の分解能が低い。
図17に示す移動体観測装置は、3つの波面センサを備えている。実施の形態5では、移動体観測装置が、波面センサ10−1、波面センサ10−2及び波面センサ10−3だけでなく、例えば、数百個の波面センサを備えているものとして説明する。
以下、移動体復元部80による移動体1の輝度分布推定処理を具体的に説明する。
図18は、移動体復元部80による移動体1の輝度分布推定処理を示す説明図である。
図18において、強度画像111は、基準波長より長い波長の光束を抽出する光束選択部が接続されている光検出器により検出された複数の集光スポット像を示す強度画像である。
強度画像112は、基準波長以下の波長の光束を抽出する光束選択部が接続されている光検出器により検出された複数の集光スポット像を示す強度画像である。
強度画像112は、散乱の影響を受け易いため、強度画像112に映っている移動体1の像は、強度画像111に映っている移動体1の像よりも広がりが大きくなっている。ただし、強度画像112は、強度画像111よりも分解能が高い画像である。
移動体復元部80は、選択した複数の集光スポット像が示す強度画像111から、移動体1の輪郭を抽出する輪郭抽出処理を実施する。輪郭抽出処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
移動体復元部80は、抽出した輪郭の内側の領域を移動体1が存在している領域とし、輪郭の外側の領域を移動体1が存在していない領域とする。
処理対象領域は、移動体1が存在している領域を包含する領域であり、処理対象領域は、移動体1が存在している領域と一致する領域であってもよいし、移動体1が存在している領域も大きい領域であってもよい。移動体1が存在している領域も大きい領域としては、移動体1の影に対応するマージンだけ、抽出した移動体1の輪郭よりも大きい領域などが考えられる。マージンとしては、例えば、移動体1が存在している領域の約10%の大きさが考えられる。
移動体復元部80は、処理対象領域に含まれている1つ以上の移動体1の像im,n(x,y)の中から、1つの移動体1の像im,n(x,y)を選択する。
移動体復元部80は、選択した移動体1の像im,n(x,y)と、選択した移動体1の像im,n(x,y)に対応する点広がり関数km,n(x,y)とを式(16)に代入して、差分rm,n(x,y)を算出する。
移動体復元部80は、処理対象領域に含まれている1以上の移動体1の像im,n(x,y)をすべて選択して、差分rm,n(x,y)の算出が終了するまで、上記の処理を繰り返し実施する。
移動体復元部80は、算出した全ての差分rm,n(x,y)を式(17)に代入して、差分の二乗和eを算出する(図8のステップST18)。
式(17)において、処理対象領域内の差分rm,n(x,y)に対応する重みdm(x,y)を1とし、処理対象領域外の差分rm,n(x,y)に対応する重みdm(x,y)を0とする。
移動体復元部80は、移動体1の輝度分布推定処理が収束すると、最小の二乗和eが算出された移動体1の輝度分布o(p,q)を保存装置30に出力する。
また、この発明は、移動体の輝度分布を推定する移動体観測装置に適している。
Claims (7)
- 互いに異なる位置に配置されており、移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束を集光する複数の結像光学系と、
前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、前記移動体の像として、集光スポット像を検出する複数の光検出器と、
前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の位置から、前記複数の結像光学系の開口の全てを含んでいる1つの開口である全体開口における光束の波面の概算値を算出し、前記概算値を用いて、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の点像強度分布を算出し、前記点像強度分布と前記集光スポット像とから、前記全体開口における光束の波面を推定する波面推定部と、
前記複数の光検出器により検出された集光スポット像と、前記波面推定部により算出された点像強度分布とから、前記移動体の輝度分布を推定する移動体復元部と、
前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、互いに異なる波長の光束を抽出し、前記抽出した光束を、前記複数の光検出器の中で、互いに異なる1つの光検出器に出力する複数の光束選択部とを備え、
前記移動体復元部は、
前記複数の光検出器により検出された集光スポット像から、前記移動体が存在している領域を検出し、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像のうち、前記移動体が存在している領域内の集光スポット像と、前記波面推定部により算出された点像強度分布とから、前記移動体の輝度分布を推定することを特徴とする移動体観測装置。 - 互いに異なる位置に配置されている複数の結像光学系が、移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束を集光し、
複数の光検出器が、前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、前記移動体の像として、集光スポット像を検出し、
波面推定部が、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の位置から、前記複数の結像光学系の開口の全てを含んでいる1つの開口である全体開口における光束の波面の概算値を算出し、前記概算値を用いて、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の点像強度分布を算出し、前記点像強度分布と前記集光スポット像とから、前記全体開口における光束の波面を推定し、
移動体復元部が、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像と、前記波面推定部により算出された点像強度分布とから、前記移動体の輝度分布を推定し、
複数の光束選択部が、前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、互いに異なる波長の光束を抽出し、前記抽出した光束を、前記複数の光検出器の中で、互いに異なる1つの光検出器に出力し、
前記移動体復元部は、
前記複数の光検出器により検出された集光スポット像から、前記移動体が存在している領域を検出し、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像のうち、前記移動体が存在している領域内の集光スポット像と、前記波面推定部により算出された点像強度分布とから、前記移動体の輝度分布を推定することを特徴とする移動体観測方法。 - 互いに異なる位置に配置されており、移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束を集光する複数の結像光学系と、
前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、前記移動体の像として、集光スポット像を検出する複数の光検出器と、
前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の位置から、前記複数の結像光学系の開口の全てを含んでいる1つの開口である全体開口における光束の波面の概算値を算出し、前記概算値を用いて、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の点像強度分布を算出し、前記点像強度分布と前記集光スポット像とから、前記全体開口における光束の波面を推定する波面推定部と、
前記移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束の一部を遮光する複数の遮光部と、を備え、
前記複数の遮光部のそれぞれは、それぞれの結像光学系の入力側又は出力側に配置されているとともに、前記複数の遮光部のそれぞれに形成された前記光束の透過領域の形状がリング形状となっている
ことを特徴とする波面計測装置。 - 前記複数の遮光部として、光束の透過領域の形状又は大きさが異なる遮光部が混在していることを特徴とする請求項3記載の波面計測装置。
- 前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、互いに異なる波長の光束を抽出し、前記抽出した光束を、前記複数の光検出器の中で、互いに異なる1つの光検出器に出力する複数の光束選択部を備えたことを特徴とする請求項3記載の波面計測装置。
- 前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束の光路長を、互いに異なる光路長に調整し、光路長調整後の光束を、前記複数の光検出器の中で、互いに異なる1つの光検出器に出力する複数のフォーカス調整レンズを備えたことを特徴とする請求項3記載の波面計測装置。
- 互いに異なる位置に配置されている複数の結像光学系が、移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束を集光し、
複数の光検出器が、前記複数の結像光学系により集光されたそれぞれの光束から、前記移動体の像として、集光スポット像を検出し、
波面推定部が、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の位置から、前記複数の結像光学系の開口の全てを含んでいる1つの開口である全体開口における光束の波面の概算値を算出し、前記概算値を用いて、前記複数の光検出器により検出された集光スポット像の点像強度分布を算出し、前記点像強度分布と前記集光スポット像とから、前記全体開口における光束の波面を推定し、
複数の遮光部が、前記移動体に反射された光束又は前記移動体から送信された光束の一部を遮光し、
前記複数の遮光部のそれぞれは、それぞれの結像光学系の入力側又は出力側に配置されているとともに、前記複数の遮光部のそれぞれに形成された前記光束の透過領域の形状がリング形状となっている
ことを特徴とする波面計測方法。
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