以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
燃料電池は、燃料極としてのアノード電極と酸化剤極としてのカソード電極とによって電解質膜を挟んで構成されている。燃料電池は、アノード電極に供給される水素を含有するアノードガス及びカソード電極に供給される酸素を含有するカソードガスを用いて発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は、以下の通りである。
アノード電極: 2H2 → 4H++4e− ・・・(1)
カソード電極: 4H++4e−+O2 → 2H2O ・・・(2)
これら(1)、(2)の電極反応によって、燃料電池は1V(ボルト)程度の起電力を生じる。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による燃料電池10の構成を説明するための図である。図1は燃料電池10の斜視図であり、図2は図1の燃料電池10のII−II断面図である。
図1及び図2に示すように、燃料電池10は、膜電極接合体(MEA)11と、MEA11を挟むように配置されるアノードセパレータ12及びカソードセパレータ13と、を備える。
MEA11は、電解質膜111と、アノード電極112と、カソード電極113とから構成されている。MEA11は、電解質膜111の一方の面側にアノード電極112を有しており、他方の面側にカソード電極113を有している。
電解質膜111は、フッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜である。電解質膜111は、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。
アノード電極112は、触媒層112Aとガス拡散層112Bとを備える。触媒層112Aは、白金又は白金等が担持されたカーボンブラック粒子により形成された部材であって、電解質膜111と接するように設けられる。ガス拡散層112Bは、触媒層112Aの外側に配置される。ガス拡散層112Bは、ガス拡散性及び導電性を有するカーボンクロスで形成された部材であって、触媒層112A及びアノードセパレータ12と接するように設けられる。
アノード電極112と同様に、カソード電極113も触媒層113Aとガス拡散層113Bとを備える。触媒層113Aは電解質膜111とガス拡散層113Bとの間に配置され、ガス拡散層113Bは触媒層113Aとカソードセパレータ13との間に配置される。
アノードセパレータ12は、ガス拡散層112Bの外側に配置される。アノードセパレータ12は、アノード電極112にアノードガス(水素ガス)を供給するための複数のアノードガス流路121を備えている。アノードガス流路121は、溝状通路として形成されている。
カソードセパレータ13は、ガス拡散層113Bの外側に配置される。カソードセパレータ13は、カソード電極113にカソードガス(空気)を供給するための複数のカソードガス流路131を備えている。カソードガス流路131は、溝状通路として形成されている。
アノードセパレータ12及びカソードセパレータ13は、アノードガス流路121を流れるアノードガスの流れ方向とカソードガス流路131を流れるカソードガスの流れ方向とが互いに逆向きとなるように構成されている。なお、アノードセパレータ12及びカソードセパレータ13は、これらガスの流れ方向が同じ向きに流れるように構成されてもよい。
このような燃料電池10を自動車用電源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池10を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両を駆動させるための電力を取り出す。
図3は、本発明の一実施形態による燃料電池システム100の概略図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、電力システム5と、コントローラ6と、を備える。
燃料電池スタック1は、複数枚の燃料電池10(単位セル)を積層した積層電池である。燃料電池スタック1は、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて、車両の走行に必要な電力を発電する。燃料電池スタック1は、電力を取り出す出力端子として、アノード電極側端子1Aと、カソード電極側端子1Bと、を有している。
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外部に排出する。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、カソードガス排出通路22と、フィルタ23と、エアフローセンサ24と、カソードコンプレッサ25と、カソード圧力センサ26と、水分回収装置(WRD;Water Recovery Device)27と、カソード調圧弁28と、を備える。
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路21の一端はフィルタ23に接続され、他端は燃料電池スタック1のカソードガス入口部に接続される。
カソードガス排出通路22は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路22の一端は燃料電池スタック1のカソードガス出口部に接続され、他端は開口端として形成される。カソードオフガスは、カソードガスや電極反応によって生じた水蒸気等を含む混合ガスである。
フィルタ23は、カソードガス供給通路21に取り込まれるカソードガスに含まれる塵や埃等を除去する部材である。
カソードコンプレッサ25は、フィルタ23よりも下流側のカソードガス供給通路21に設けられる。カソードコンプレッサ25は、カソードガス供給通路21内のカソードガスを圧送して燃料電池スタック1に供給する。
エアフローセンサ24は、フィルタ23とカソードコンプレッサ25との間のカソードガス供給通路21に設けられる。エアフローセンサ24は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの流量を検出する。
カソード圧力センサ26は、カソードコンプレッサ25とWRD27との間のカソードガス供給通路21に設けられる。カソード圧力センサ26は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を検出する。カソード圧力センサ26で検出されたカソードガス圧力は、燃料電池スタック1のカソードガス流路等を含むカソード系全体の圧力を代表する。
WRD27は、カソードガス供給通路21とカソードガス排出通路22とに跨って接続される。WRD27は、カソードガス排出通路22を流れるカソードオフガス中の水分を回収し、その回収した水分を用いてカソードガス供給通路21を流れるカソードガスを加湿する装置である。
カソード調圧弁28は、WRD27よりも下流のカソードガス排出通路22に設けられる。カソード調圧弁28は、コントローラ6によって開閉制御され、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を調整する。
次に、アノードガス給排装置3について説明する。
アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガスを供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスをカソードガス排出通路22に排出する。アノードガス給排装置3は、高圧タンク31と、アノードガス供給通路32と、アノード調圧弁33と、アノード圧力センサ34と、アノードガス排出通路35と、バッファタンク36と、パージ通路37と、パージ弁38と、を備える。
高圧タンク31は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する容器である。
アノードガス供給通路32は、高圧タンク31から排出されるアノードガスを燃料電池スタック1に供給する通路である。アノードガス供給通路32の一端は高圧タンク31に接続され、他端は燃料電池スタック1のアノードガス入口部に接続される。
アノード調圧弁33は、高圧タンク31よりも下流のアノードガス供給通路32に設けられる。アノード調圧弁33は、コントローラ6によって開閉制御され、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を調整する。
アノード圧力センサ34は、アノード調圧弁33よりも下流のアノードガス供給通路32に設けられる。アノード圧力センサ34は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を検出する。アノード圧力センサ34で検出されたアノードガス圧力は、バッファタンク36や燃料電池スタック1のアノードガス流路等を含むアノード系全体の圧力を代表する。
アノードガス排出通路35は、燃料電池スタック1から排出されたアノードオフガスを流す通路である。アノードガス排出通路35の一端は燃料電池スタック1のアノードガス出口部に接続され、他端はバッファタンク36に接続される。アノードオフガスには、電極反応で使用されなかったアノードガスや、カソードガス流路131からアノードガス流路121へとリークしてきた窒素等の不純物ガスや水分等が含まれる。
バッファタンク36は、アノードガス排出通路35を流れてきたアノードオフガスを一時的に蓄える容器である。バッファタンク36に溜められたアノードオフガスは、パージ弁38が開かれる時に、パージ通路37を通ってカソードガス排出通路22に排出される。
パージ通路37は、アノードオフガスを排出するための通路である。パージ通路37の一端はバッファタンク36の下流部に接続され、他端はカソード調圧弁28よりも下流のカソードガス排出通路22に接続される。
パージ弁38は、パージ通路37に設けられる。パージ弁38は、コントローラ6によって開閉制御され、アノードガス排出通路35からカソードガス排出通路22に排出するアノードオフガスのパージ流量を制御する。
パージ弁38が開弁状態となるパージ制御が実行されると、アノードオフガスは、パージ通路37及びカソードガス排出通路22を通じて外部に排出される。この時、アノードオフガスは、カソードガス排出通路22内でカソードオフガスと混合される。このようにアノードオフガスとカソードオフガスとを混合させて外部に排出することで、混合ガス中のアノードガス濃度(水素濃度)が排出許容濃度以下の値に設定される。
電力システム5は、電流センサ51と、電圧センサ52と、走行モータ53と、インバータ54と、バッテリ55と、DC/DCコンバータ56と、を備える。
電流センサ51は、燃料電池スタック1から取り出される出力電流を検出する。電圧センサ52は、燃料電池スタック1の出力電圧、つまりアノード電極側端子1Aとカソード電極側端子1Bの間の端子間電圧を検出する。電圧センサ52は、燃料電池10の1枚ごとの電圧を検出するように構成されてもよいし、燃料電池10の複数枚ごとの電圧を検出するように構成されてもよい。
走行モータ53は、三相交流同期モータであって、車輪を駆動するため駆動源である。走行モータ53は、燃料電池スタック1及びバッテリ55から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、外力によって回転駆動されることで発電する発電機としての機能と、を有する。
インバータ54は、IGBT等の複数の半導体スイッチから構成される。インバータ54の半導体スイッチは、コントローラ6によってスイッチング制御され、これにより直流電力が交流電力に、又は交流電力が直流電力に変換される。走行モータ53を電動機として機能させる場合、インバータ54は、燃料電池スタック1の出力電力とバッテリ55の出力電力との合成直流電力を三相交流電力に変換し、走行モータ53に供給する。これに対して、走行モータ53を発電機として機能させる場合、インバータ54は、走行モータ53の回生電力(三相交流電力)を直流電力に変換し、バッテリ55に供給する。
バッテリ55は、燃料電池スタック1の出力電力の余剰分及び走行モータ53の回生電力が充電されるように構成されている。バッテリ55に充電された電力は、必要に応じてカソードコンプレッサ25等の補機類や走行モータ53に供給される。
DC/DCコンバータ56は、燃料電池スタック1の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック1の出力電流等が調整される。
コントローラ6は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ6には、電流センサ51や電圧センサ52等の各種センサからの信号の他、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ61等のセンサからの信号が入力される。
コントローラ6は、燃料電池システム100の運転状態に応じて、アノード調圧弁33やカソード調圧弁28、カソードコンプレッサ25等を制御し、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスやカソードガスの圧力や流量を調整する。
また、コントローラ6は、燃料電池システム100の運転状態に基づいて、燃料電池スタック1の目標出力電力を算出する。コントローラ6は、走行モータ53の要求電力やカソードコンプレッサ25等の補機類の要求電力、バッテリ55の充放電要求等に基づいて、目標出力電力を算出する。コントローラ6は、目標出力電力に基づいて、予め定められた燃料電池スタック1のIV特性(電流電圧特性)を参照して燃料電池スタック1の目標出力電流を算出する。そして、コントローラ6は、燃料電池スタック1の出力電流が目標出力電流となるように、DC/DCコンバータ56によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御し、走行モータ53や補機類に必要な電流を供給する。
また、コントローラ6は、燃料電池スタック1の各電解質膜111の湿潤度(含水量)が発電に適した状態となるように、カソードコンプレッサ25等を制御する。コントローラ6は、電解質膜111の湿潤度と相関関係のある燃料電池スタック1の電解質膜抵抗を算出し、この電解質膜抵抗が目標値となるようにカソードコンプレッサ25等を制御する。本実施形態では、目標値は予め実験等で定めた発電に適した所定値に設定される。このように、コントローラ6は、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗を算出可能な内部状態推定装置としての機能を有している。
従来、燃料電池スタックの電解質膜抵抗は、燃料電池スタックから出力される高周波数の交流信号(交流電流及び交流電圧)に基づいて算出される。例えば、コントローラが、燃料電池スタックの出力電流及び出力電圧が高周波数(例えば数十kHz)を有する交流信号となるように燃料電池スタックの出力を制御し、この時検出される出力電流値及び出力電圧値に基づいて燃料電池スタックの内部インピーダンスを算出する。そして、コントローラは、内部インピーダンスの実部成分を、燃料電池スタックの電解質膜抵抗として設定する。
このように構成されたコントローラ(内部状態推定装置)では、高周波数の交流信号を扱うために各種処理部で高速演算を行う必要がある。その結果、コントローラに組み込まれるマイクロコンピュータは高価なものとなり、当該コントローラのコストが増大してしまうという問題がある。
そこで、本実施形態では、演算負荷を軽減するため、コントローラ6は、燃料電池スタック1から出力される低周波数(数Hz〜数百Hz)の交流信号(交流電流及び交流電圧)に基づいて算出される内部インピーダンスを用いて、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗を算出するように構成される。つまり、コントローラ6は、燃料電池スタック1から出力される交流電流及び交流電圧が低周波数(数Hz〜数百Hz)の交流信号となるように燃料電池スタック1の出力を制御する。そして、コントローラ6は、出力電流値及び出力電圧値に基づいて燃料電池スタック1の内部インピーダンスを算出し、この内部インピーダンスの実部成分及び虚部成分を利用して電解質膜抵抗を算出する。なお、低周波数は、数Hz〜数百Hzとしたが、より具体的には3Hz〜1000Hz程度の周波数を含む。
図4を参照して、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗の算出原理について説明する。図4は、燃料電池スタック1の等価回路を示す模式図である。
図4に示すように、燃料電池スタック1を模式的に示す等価回路は、燃料電池スタック1の電解質膜111の抵抗成分である電解質膜抵抗Rmemと、カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlとによって表される。なお、アノードガス流路内のアノードガス濃度が発電に適した濃度となっている場合には、アノード電極112側の反応抵抗は非常に小さくなり、インピーダンス測定の際にアノード電極112の影響については無視できるため、図4においてはアノード電極112の記載を省略している。
低周波数f(数Hz〜数百Hz)の交流信号に基づいて算出される燃料電池スタック1の内部インピーダンスZは、以下の(1)式で表わされる。
図4に示すように、低周波数fの交流電流は、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗Rmemだけでなく、カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlを通過する。そのため、(1)式で示されるように、低周波数fの交流信号に基づき算出される内部インピーダンスZは、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗Rmemだけでなく、カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlの影響を受けた値として算出される。
ここで、(1)式を内部インピーダンスの実部成分Zreに関して整理すると、(2)式のように表わされる。
(2)式に示すように、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗は、右辺第1項の内部インピーダンスの実部成分Zreから、右辺第2項の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlによって表わされるインピーダンス成分(補正用インピーダンス)を差し引いた値となる。内部インピーダンスの実部成分Zreは既知の値であるので、カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlの値が分かれば、(2)式より燃料電池スタック1の電解質膜抵抗Rmemを算出することが可能となる。
本実施形態では、コントローラ6は、2つの異なる低周波数における内部インピーダンスの虚部成分Zimを用いて、反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlの値を算出するように構成されている。そして、コントローラ6は、算出したRact及びCdlの値を(2)式に代入することで、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗Rmemを算出する。カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlの算出の詳細については、図9及び図10を参照して後述する。
なお、本実施形態では、インピーダンス測定用の交流信号の周波数は数Hz〜数百Hzに設定される。従来手法のように周波数を高周波数に設定すると、測定される内部インピーダンスは燃料電池スタック1に電気的に接続したコントローラ6等のインピーダンス計測系のリアクタンス成分Lの影響を強く受けてしまい、この影響が測定誤差の要因となる。
しかしながら、本実施形態のように周波数を数Hz〜数百Hzに設定する場合には、交流電流が図5A及び図5Bに示すようにインピーダンス計測系のリアクタンス成分Lを通過しても、その影響をほとんど受けないという知見が得られた。そのため、インピーダンス測定用の交流信号の周波数を低周波数(数Hz〜数百Hz)に設定する場合には、インピーダンス計測系のリアクタンス成分Lに起因する測定誤差を抑制することが可能となる。
インピーダンス測定用の交流信号の周波数を低くしすぎると、図6に示すようにカソード電極113においてカソードガスの輸送抵抗に起因するワールブルグインピーダンスZwの影響が、測定される内部インピーダンスに含まれる可能性がある。
しかしながら、本実施形態のように周波数を数Hz〜数百Hzに設定する場合には、カソード電極113側のワールブルグインピーダンスZwを無視することができ、当該ワールブルグインピーダンスZwに起因する測定誤差を抑制することが可能となる。
このように、本実施形態では、インピーダンス測定用の交流信号の周波数は、インピーダンス計測系のリアクタンス成分LやワールブルグインピーダンスZwに起因する測定誤差が抑制される周波数範囲(数Hz〜数百Hz)に設定されている。
次に、図7を参照して、コントローラ6における電解質膜抵抗設定制御の詳細について説明する。この制御において、コントローラ6は、低周波数での内部インピーダンスの実部成分及び虚部成分を用いて燃料電池スタック1の電解質膜抵抗を算出し、現在の電解質膜抵抗測定値を設定する。
図7は、コントローラ6が実行する電解質膜抵抗設定制御を示すフローチャートである。電解質膜抵抗設定制御は、所定制御周期で繰り返し実行される。
図7に示すように、ステップ101(S101)では、コントローラ6は内部インピーダンス算出処理を実行する。内部インピーダンス算出処理では、2つの異なる低周波数での内部インピーダンスZ1,Z2の実部成分Z1re,Z2re及び虚部成分Z1im,Z2imが算出される。このように、コントローラ6は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスを算出するインピーダンス算出手段を有している。内部インピーダンス算出処理の詳細については、図8を参照して後述する。
S102では、コントローラ6は、電極状態推定処理を実行する。電極状態推定処理では、S101で算出された内部インピーダンスの虚部成分Z1im,Z2imに基づいて、カソード電極113の反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlが算出される。このように、コントローラ6は、燃料電池スタック1のカソード電極113の状態を示す状態量(反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdl)を算出する状態量算出手段を有している。電極状態推定処理の詳細については、図9及び図10を参照して後述する。
S103では、コントローラ6は、電解質膜抵抗算出処理を実行する。電解質膜抵抗算出処理では、S101で算出された内部インピーダンスの実部成分Z1re,Z2reと、S102で算出された反応抵抗Ract及び電気二重層容量Cdlとに基づいて、電解質膜抵抗R1mem,R2memが算出される。このように、コントローラ6は、燃料電池スタック1の電解質膜111の湿潤度と相関関係のある電解質膜抵抗を算出する膜抵抗算出手段を有している。電解質膜抵抗算出処理の詳細については、図11を参照して後述する。
S104では、コントローラ6は、電解質膜抵抗設定処理を実行して、今回の電解質膜抵抗設定制御を終了する。電解質膜抵抗設定処理では、S103で算出された電解質膜抵抗R1mem,R2memに基づいて、現在の燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値が設定される。このように、コントローラ6は、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値(現状値)を設定する設定手段を有している。電解質膜抵抗設定処理の詳細については、図12を参照して後述する。
図8を参照して、図7のS101で実行される内部インピーダンス算出処理について説明する。内部インピーダンス算出処理は、例えば交流インピーダンス法を利用したインピーダンスの算出手法である。
S201では、コントローラ6は、インピーダンス計測タイミングにおいて、燃料電池スタック1から出力される出力電流及び出力電圧が2つの異なる低周波数f1,f2(数Hz〜数百Hz)を含む交流信号となるように、インバータ54及びDC/DCコンバータ56を制御する。本実施形態では、従来手法において設定される周波数(数k〜数十Hz)よりも低い周波数に設定される。例えば、周波数f1は10Hzに設定され、周波数f2は100Hzに設定される。
S202では、コントローラ6は、電流センサ51により検出した出力電流値I1,I2にフーリエ変換処理を施して、各周波数f1,f2における電流振幅値ΔI1,ΔI2を算出する。
S203では、コントローラ6は、電圧センサ52により検出した出力電圧値V1,V2にフーリエ変換処理を施して、各周波数f1,f2における電圧振幅値ΔV1,ΔV2を算出する。
S204では、コントローラ6は、S203で算出した電圧振幅値ΔV1,ΔV2をS202で算出した対応する電流振幅値ΔI1,ΔI2で除して、燃料電池スタック1の内部インピーダンスZ1,Z2を算出する。
S205では、コントローラ6は、出力電流値I1に対する出力電圧値V1の位相遅れθ1を算出し、出力電流値I2に対する出力電圧値V2の位相遅れθ2を算出する。
S206では、コントローラ6は、内部インピーダンスZ1と位相遅れθ1に基づいて内部インピーダンスZ1を実部成分Z1reと虚部成分Z1imに分離し、内部インピーダンスZ2と位相遅れθ2に基づいて内部インピーダンスZ2を実部成分Z2reと虚部成分Z2imに分離する。S206で算出された低周波数f1における虚部成分Z1im及び低周波数f2における虚部成分Z2imは、図7のS102における電極状態推定処理で使用される。また、S206で算出された低周波数f1における実部成分Z1re及び低周波数f2における実部成分Z2reは、図7のS103における電解質膜抵抗算出処理で使用される。
なお、内部インピーダンス算出処理のS201では、燃料電池スタック1から出力される出力電流及び出力電圧に2つの異なる低周波数f1,f2を含んでいるが、いずれか一方の周波数のみを含むようにしてもよい。この場合、コントローラ6は、周波数f1を含む出力電流及び出力電圧を用いて当該周波数f1における内部インピーダンスの実部成分Z1re及び虚部成分Z1imを算出し、その後出力電流及び出力電圧の周波数をf1からf2に変更して当該周波数f2における内部インピーダンスの実部成分Z2re及び虚部成分Z2imを算出する。
また、内部インピーダンス算出処理では、コントローラ6は、燃料電池スタック1から出力される出力電流及び出力電圧が交流信号となるように、インバータ54及びDC/DCコンバータ56を制御する。しかしながら、燃料電池システム100に燃料電池スタック1に低周波数の交流電圧を印加する装置を設け、コントローラ6は印加された交流電圧と、印加時における燃料電池スタック1の出力交流電流とに基づいて内部インピーダンスを算出してもよい。
次に、図9を参照して、図7のS102で実行される電極状態推定処理について説明する。電極状態推定処理は、カソード電極113の電気二重層容量Cdl及び反応抵抗Ractを算出する処理である。
S301では、コントローラ6は、周波数f1における内部インピーダンスの虚部成分Z1im及び周波数f2における内部インピーダンスの虚部成分Z2imに基づいて、カソード電極113の状態量の一つである電気二重層容量Cdlを算出する。
ここで、カソード電極113の状態量の算出手法について説明する。
コントローラ6によって検出される燃料電池スタック1の内部インピーダンスZは前述した通り(1)式で表わされる。この(1)式を内部インピーダンスの虚部成分Zimに関して整理すると、(3)式のように表わされる。なお、(3)式において、fはインピーダンス測定時の交流信号の周波数、Ractは電極の反応抵抗を示し、Cdlは電極の電気二重層容量を示す。
(3)式は、横軸を1/ω2とし、縦軸を−1/ω・Zimとする直線を示す式である。この(3)式から分かるように、直線の切片は燃料電池スタック1におけるカソード電極113の電気二重層容量であり、直線の傾きはカソード電極113の電気二重層容量及び反応抵抗から算出される定数である。
本実施形態では、コントローラ6は、図8のS206において周波数f1,f2での内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imを算出しているので、図10に示すように横軸を1/ω2とし縦軸を−1/ω・Zimとする座標上にZ1im,Z2imに基づいて2つの点P1,P2をプロットし、これら2点P1,P2を結ぶことで、(3)式に関する直線Lを求めることができる。
したがって、コントローラ6は、S301において周波数f1,f2での内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imに基づいて求めた直線Lから切片を計算し、直線Lの切片の値を燃料電池スタック1におけるカソード電極113の電気二重層量Cdlとする。
S302では、コントローラ6は、周波数f1,f2での内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imに基づいて求めた直線Lから傾きaを計算する。(3)式の直線の傾き部分を反応抵抗Ractに関して整理すると、反応抵抗Ractは(4)式に示すように直線Lの傾きaとカソード電極113の電気二重層容量Cdlとで表わされる。
コントローラ6は、内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imに基づいて求めた直線Lの傾きaと、S301で算出した電気二重層容量Cdlを(4)式に代入することで、カソード電極113の反応抵抗Ractを算出する。このように、コントローラ6は、内部インピーダンス虚部成分Z1im、内部インピーダンス虚部成分Z2im、及び電気二重層容量Cdlに基づいて、カソード電極113の状態量の一つである反応抵抗Ractを算出する。
図11を参照して、図7のS103で実行される電解質膜抵抗算出処理について説明する。電解質膜抵抗算出処理は、燃料電池スタック1の電解質膜111の湿潤度と相関関係のある電解質膜抵抗を算出する処理である。
S401では、コントローラ6は、図8のS206で算出された周波数f1での内部インピーダンスの実部成分Z1re、図9のS301及びS302で算出された電気二重層容量Cdl及び反応抵抗Ractを前述した(2)式に代入することで、第1電解質膜抵抗R1memを算出する。
つまり、コントローラ6は、カソード電極113の状態量(電気二重層容量Cdl及び反応抵抗Ract)に基づいて(2)式の右辺第2項で表わされる補正用インピーダンスを算出する。そして、コントローラ6は、内部インピーダンス実部成分Z1reを補正用インピーダンスにより補正することで、より具体的には内部インピーダンス実部成分Z1reから補正用インピーダンスを減算することで、第1電解質膜抵抗R1memを算出する。
S402では、コントローラ6は、S401と同様の手法により、周波数f2での内部インピーダンスの実部成分Z2re、電気二重層容量Cdl、及び反応抵抗Ractを前述した(2)式に代入することで、第2電解質膜抵抗R2memを算出する。
次に、図12を参照して、図7のS104で実行される電解質膜抵抗設定処理について説明する。電解質膜抵抗設定処理は、電解質膜抵抗算出処理で算出された第1電解質膜抵抗R1mem及び第2電解質膜抵抗R2memに基づいて、現在の燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値を設定する処理である。
S501では、コントローラ6は、電解質膜抵抗算出処理で算出した第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち大きい方が、ドライ限界閾値RH(湿潤判定用上限値)よりも大きいか否かを判定する。
ドライ限界閾値RHは、予め定められた値であって、燃料電池スタック1の電解質膜111が過乾燥状態である場合に燃料電池システム100において許容されるスタック最低出力値に基づき設定される。ドライ限界閾値RHは、最もスタック出力電圧が低下する車両加速時等の過渡状態を想定して設定されており、さらに各燃料電池10の個体ばらつきや経時劣化等を加味して設定されている。
第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち大きい方がドライ限界閾値RHよりも大きい場合には、コントローラ6は、電解質膜111が過乾燥状態であると判定し、S502の処理を実行する。
S502では、コントローラ6は、第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち大きい方を、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmem(電解質膜抵抗の現状値)に設定する。このように電解質膜抵抗測定値Rmemを設定することで、燃料電池スタック1の電解質膜111が過乾燥状態となっていることをより確実に検出でき、電解質膜抵抗測定値Rmemに応じた過乾燥状態回避制御を実行することが可能となる。
一方、S501において第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち大きい方がドライ限界閾値RH以下であると判定された場合には、コントローラ6は、電解質膜111が過乾燥状態になっていないと判断してS503の処理を実行する。
S503では、コントローラ6は、第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち小さい方が、ウェット限界閾値RL(湿潤判定用下限値)よりも小さいか否かを判定する。
ウェット限界閾値RLは、予め定められた値であって、燃料電池スタック1におけるフラッディングの発生を検知可能な値として設定される。ウェット限界閾値RLは、各燃料電池10の個体ばらつきや経時劣化等を加味して設定されている。
第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち小さい方がウェット限界閾値RLよりも小さい場合には、コントローラ6は、フラッディングが発生する可能性があると判定し、S504の処理を実行する。
S504では、コントローラ6は、第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memのうち小さい方を、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmem(電解質膜抵抗の現状値)に設定する。このように電解質膜抵抗測定値Rmemを設定することで、燃料電池スタック1の電解質膜111が過湿潤状態となっていることをより確実に検出でき、電解質膜抵抗測定値Rmemに応じたフラッディング回避制御を実行することが可能となる。
一方、第1電解質膜抵抗R1mem及び第2電解質膜抵抗R2memの両方がウェット限界閾値RL以上でドライ限界閾値RH以下である場合には、コントローラ6は、電解質膜111が適度に湿潤していると判定し、S505の処理を実行する。
S505では、コントローラ6は、第1電解質膜抵抗R1memと第2電解質膜抵抗R2memの平均値を、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmem(電解質膜抵抗の現状値)に設定する。複数の電解質膜抵抗の平均値を電解質膜抵抗測定値Rmemとして設定することで、燃料電池スタック1にとって最適な湿潤制御を実行することが可能となる。
上記した本実施形態の燃料電池システム100が備えるコントローラ6(内部状態推定装置)によれば、以下の効果を得ることができる。
コントローラ6は、燃料電池スタック1から出力される2つの異なる周波数の交流信号(交流電流及び交流電圧)に基づいて、各周波数に対応した燃料電池スタック1の内部インピーダンスを算出する。また、コントローラ6は、各周波数の内部インピーダンスの虚部成分Z1im,Z2imに基づいて燃料電池スタック1のカソード電極113の状態量を算出し、当該状態量と各周波数の内部インピーダンスの実部成分Z1re,Z2reとに基づいて燃料電池スタック1の電解質膜抵抗R1mem,R2memを算出する。そして、コントローラ6は、これら電解質膜抵抗R1mem,R2memに基づいて、燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmem(電解質膜抵抗の現状値)を設定する。
このような構成の電解質膜抵抗算出手法によれば、インピーダンス測定時の交流信号の周波数を低周波数(数Hz〜数百Hz)に設定することができる。したがって、従来手法のように高周波数の交流信号を扱う必要がないため、コントローラ6(内部状態推定装置)での演算負荷を軽減でき、当該コントローラ6のコストアップを招くことなく、燃料電池スタック1の電解質膜111の湿潤度と相関関係のある電解質膜抵抗を算出することが可能となる。
また、測定周波数は数Hz〜数百Hzの低周波領域から選択できるため、特定の周波数にノイズ成分があっても、その特定の周波数以外の低周波数を使用することでインピーダンス測定精度を高めることができる。その結果、電解質膜抵抗算出精度も高めることが可能となる。
コントローラ6は、カソード電極113の状態量(電気二重層容量Cdl及び反応抵抗Ract)に基づいて、前述した(2)式の右辺第2項で表わされる補正用インピーダンスを算出する。そして、コントローラ6は、内部インピーダンス実部成分を補正用インピーダンスにより補正することで、より具体的には内部インピーダンス実部成分から補正用インピーダンスを減算することで、電解質膜抵抗を算出する。このように本実施形態によれば、内部インピーダンス実部成分と補正用インピーダンスを用いて、容易に燃料電池スタック1における電解質膜抵抗を算出することができる。
コントローラ6は、横軸を1/ω2とし縦軸を−1/ω・Zimとする座標において、2つの異なる周波数f1,f2での内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imに基づいてプロットされる2点を結ぶ直線Lの切片を、電気二重層容量Cdlとして算出する。さらに、コントローラ6は、算出した電気二重層容量Cdlと直線Lの傾きaから反応抵抗Ractを算出する。
このように、2つの異なる周波数f1,f2での内部インピーダンス虚部成分Z1im,Z2imを用いることで、カソード電極113の状態量である電気二重層容量Cdl及び反応抵抗Ractを容易に推定することが可能となる。
コントローラ6は、算出した2つの電解質膜抵抗R1mem,R2memのうちの最大値がドライ限界閾値RH(湿潤判定用上限値)よりも大きい場合、当該最大値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmemに設定する。これにより、燃料電池スタック1の電解質膜111が過乾燥状態となっていることをより確実に検出でき、電解質膜抵抗測定値Rmemに応じた過乾燥状態回避制御を実行することが可能となる。
コントローラ6は、算出した2つの電解質膜抵抗R1mem,R2memのうちの最小値がウェット限界閾値RL(湿潤判定用下限値)よりも小さい場合、当該最小値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmemに設定する。これにより、燃料電池スタック1の電解質膜111が過湿潤状態となっていることをより確実に検出でき、電解質膜抵抗測定値Rmemに応じたフラッディング回避制御を実行することが可能となる。
コントローラ6は、算出した2つの電解質膜抵抗R1mem,R2memがウェット限界閾値RLとドライ限界閾値RHとの間にある場合には、2つの電解質膜抵抗R1mem,R2memの平均値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値Rmemに設定する。これにより、燃料電池システム100の通常運転時に燃料電池スタック1にとって最適な湿潤制御を実行することが可能となる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
本実施形態のコントローラ6は、図9の電極状態推定処理において、2つの異なる低周波数での内部インピーダンス虚部成分に基づいて直線Lを求めて、その直線Lを利用して電極の状態量(電気二重層容量及び反応抵抗)を算出する。しかしながら、コントローラ6は、3以上の異なる低周波数での内部インピーダンス虚部成分に基づいて直線Lを求めて、その直線Lを利用して電極の状態量(電気二重層容量及び反応抵抗)を算出してもよい。
この場合には、内部インピーダンス算出処理において、3以上の異なる低周波数での内部インピーダンスの実部成分及び虚部成分が算出される。また、電極状態推定処理においては、横軸を1/ω2とし縦軸を−1/ω・Zimとする座標に3以上の点がプロットされるため、最小二乗法等を利用して直線Lが求められる。
本実施形態のコントローラ6は、図11の電解質膜抵抗算出処理において、2つの異なる低周波数での内部インピーダンス実部成分及び電極の状態量(電気二重層容量及び反応抵抗)を用いて、第1電解質膜抵抗及び第2電解質膜抵抗を算出する。しかしながら、コントローラ6は、3以上の異なる低周波数での内部インピーダンスの実部成分及び電極の状態量を用いて、3以上の電解質膜抵抗を算出してもよい。
この場合には、電解質膜抵抗設定処理において、コントローラ6は、3以上の電解質膜抵抗のうちの最大値がドライ限界閾値よりも大きい場合に、当該最大値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値に設定する。また、コントローラ6は、3以上の電解質膜抵抗のうちの最小値がウェット限界閾値よりも小さい場合に、当該最小値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値に設定する。さらに、コントローラ6は、3以上の電解質膜抵抗がウェット限界閾値とドライ限界閾値との間にある場合に、これら電解質膜抵抗の平均値を燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値に設定する。
なお、電解質膜抵抗算出処理において、コントローラ6は、電極の状態量と所定の低周波数における内部インピーダンス実部成分とに基づいて、複数ではなく、一の電解質膜抵抗を算出してもよい。この場合には、電解質膜抵抗設定処理において、コントローラ6は、電解質膜抵抗算出処理で算出した一の電解質膜抵抗を、そのまま燃料電池スタック1の電解質膜抵抗測定値に設定する。