JP6506320B2 - 植物育成用マット及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、木質培土を用いた植物育成用マット及びその製造方法に関する。
一般に、水稲の育苗では、概ね縦が60cm、横が30cm程度の育苗箱が用いられている。水稲の育苗は、その育苗箱に、数cm程度の厚みで床土を敷き詰めた後、潅水によって床土に十分な水分を含ませ、その床土の上に種籾を播種し、更にその上に覆土することによって行なわれる。
このような育苗の準備作業は繁雑で手間暇を要するうえに、多量の床土が敷き詰められた育苗箱の重量は6Kg程度にもなるため、それを取り扱う作業の肉体的負担が大きいという問題がある。
そのため、従来では、床土の代わりに、軽量で扱い易い育苗マットがよく利用されている。例えば、無機物の人工繊維であるロックウールをマット状に加工したものや、繊維状合成樹脂(芯鞘型複合繊維)を籾殻と共に網目状に加工したものなどがある(特許文献1、2)。特許文献2では、自然分解可能な芯鞘型複合繊維が用いられている。
また、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献3〜7がある。
特開平2−303421号公報 特開2002−281827号公報 特開10−130084号公報 特開2006−6254号公報 特開2006−239729号公報 特開平11−89422号公報 特開2004−166524号公報
星 信幸、高橋智恵子、「もみがら成型マット」の吸水特性と根上がり防止対策、東北農業研究 55,19-20(2002),[平成28年11月24日検索]、インターネット<URL:http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/to-noken/DB/DATA/055/055-019.pdf>
床土に代えて育苗箱に敷設されるマットは、育苗箱と同等の縦横寸法に形成されるため、厚みが12mm〜15mm程度の薄板状になる。
そのため、特許文献1のようなロックウールで形成されたマットの場合、柔軟性に欠けるため、雑に取り扱うと、割れるなど、容易に壊れる問題がある。また、ロックウールは分解し難いため、水田に蓄積するという問題もある。
その点、特許文献2のように、芯鞘型複合繊維と籾殻とで形成されたマットは、自然分解するため、水田には悪影響を及ぼさない。
しかし、特許文献2のマットは、芯鞘型複合繊維や籾殻によって根の侵入が阻害される結果、根上がり(出芽した種籾の根がマット中に入らず、種籾が覆土の上まで浮き上がる現象)が発生しやすいという問題がある(非特許文献1)。
そこで本発明の主たる目的は、軽量で扱い易く、根上がりも効果的に抑制できる植物育成用マットを提供することにある。
本発明の1つは、種苗箱に敷設される植物育成用マットに関する。当該植物育成用マットは、補強層の上に軟弱層が積層された2層で構成されている。そして、前記補強層及び前記軟弱層の各々は、堆肥化されていない木材砕片がポリビニルアルコールを含む結合剤で結合されることによって構成され、前記補強層の前記結合剤が、芯鞘型複合繊維を含んでいる。
すなわち、この植物育成用マットは、堆肥化されていない軽量な木材砕片を主体に構成されているため、取り扱いが容易で、育苗作業の負担が軽減できる。木材の繊維成分は、生分解され難いうえに、適度に解くことで、保水性や透水性に優れた所定の形態に形成することができる。ポリビニルアルコールは、水溶性で自然分解可能であるため、水田にも悪影響を及ぼさない。
木材砕片と芯鞘型複合繊維との組み合わせにより、補強層の柔軟性及び強度を、効率よく更に強化することができる。
特に、前記木材砕片は、繊維束が解けて形成された多数の繊維からなる繊維状形態と、繊維束が解けずに残る木片からなる粒状形態とが混然一体(お互いの区別がつかないほど一体になった状態)となった形態を有しているのが好ましい。
そうすれば、保水性及び透水性の双方に優れた育苗マットを実現することができる。
更には、前記軟弱層を構成する前記木材砕片が、前記補強層を構成する前記木材砕片よりも細かく粉砕されていて、3mm〜20mmの範囲内の所定のメッシュサイズを通過する大きさに形成されているようにするのが好ましい。本発明で用いるメッシュサイズの定義は、JIS Z 8801−1に規定される試験用ふるいの公称目開き同等のものをいう。
そうすれば、根上がりの効果的な抑制とともに、適度な保水性と透水性とが確保でき、良好な育苗が行える。
本発明の他の1つは、植物育成用マットの製造方法に関する。当該製造方法は、針葉樹の木材をエクストルーダーで砕いて木材砕片を形成する木質培土形成工程と、前記木材砕片に、ポリビニルアルコールと芯鞘型複合繊維とを含む結合剤を添加して混合し、補強層を構成する補強層ベースを形成する補強層ベース形成工程と、前記木材砕片に、ポリビニルアルコールを含む結合剤を添加して混合し、軟弱層を構成する軟弱層ベースを形成する軟弱層ベース形成工程と、前記補強層ベースの上に前記軟弱層ベースを積層し、マット状に成形する成形工程と、を含む。
この製造方法によれば、前述したような特異な構造の木材砕片を活用した、扱い易くて高性能な植物育成用マットを製造することができる。
具体的には、前記木質培土形成工程は、前記木材をエクストルーダーで粗粉砕して粗木材砕片を形成する前段処理と、前記粗木材砕片を、カッターミルで細粉砕して細木材砕片を形成する後段処理と、を含み、前記補強層の前記木材砕片に前記粗木材砕片が用いられ、前記軟弱層の前記木材砕片に前記細木材砕片が用いられるようにするのが好ましい。
そうすれば、取り扱いも容易で、根上がりが効果的に抑制でき、保水性も優れた育苗に良好な植物育成用マットを製造することができる。
更には、前記木質培土形成工程が、前記木材砕片を、クエン酸鉄アンモニウムを含有する溶液で処理する改質工程を含むのが好ましい。
そうすれば、濃度障害を受けること無く、木材砕片に含まれるタンニンを効果的に不活性化できるので、苗を安定して良好に生育させることができる。
また、前記木質培土形成工程が、前記木材砕片を、クエン酸鉄アンモニウム及び硫酸鉄を含有する溶液で処理する改質工程を含むようにしてもよい。
硫酸鉄はタンニンとの反応性が高いため、濃度障害が生じない程度の範囲で用いれば、効率的かつ効果的に、タンニンを不活性化できる。
また更には、前記成形工程の成形は、高周波プレスによって行うのが好ましい。
熱圧プレスで成形してもよいが、高周波プレスであれば、熱圧プレスよりも極めて短時間で効率的に成形できるので、生産性に優れる。
本発明の植物育成用マットによれば、軽量で扱い易く、根上がりも効果的に抑制できるので、育苗作業の負担が軽減されるとともに良好な育苗が行える。
植物育成用マットの概略断面図である。 木材破片を写した写真である。(a)は、ハンマーミルによって形成された木材砕片である(倍率:100倍)。(b)は、カッターミルによって形成された木材砕片である(倍率:25倍)。(c)は、エクストルーダーによって形成された木材砕片である(倍率:25倍)。 エクストルーダーで得られた木材砕片の三相分布の測定結果を示すグラフである。 軟弱層及び補強層の各々の構成例を示す表である。 木質培土の製造方法での主な工程の一例を示す概略図である。 木質培土の製造方法での主な工程の一例を示す概略図である。 植物育成用マットの製造設備の一例を示す概略図である。 エクストルーダーの粉砕物を、スクリーンのメッシュサイズを変えて細粉砕して得られた木材砕片を写した写真である。(a)は、メッシュサイズが2mmの木材砕片である(倍率:25倍)。(b)は、メッシュサイズが3mmの木材砕片である(倍率:25倍)。(c)は、メッシュサイズが4mmの木材砕片である(倍率:25倍)。 エクストルーダーの粉砕物を、スクリーンのメッシュサイズを変えて細粉砕して得られた木材砕片の三相分布の測定結果を示すグラフである。(a)は、メッシュサイズが2mmの木材砕片である。(b)は、メッシュサイズが3mmの木材砕片である。(c)は、メッシュサイズが4mmの木材砕片である。 比較試験1の結果を示す図である。 比較試験2の結果を示す図である。 比較試験3の結果を示す図である。 比較試験4の結果を示す図である。 比較試験5の結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<植物育成用マット>
図1に、本発明を適用した水稲(植物の一例)の苗の育成用マット(以下、育苗マット1ともいう)の一例を示す。育苗マット1は、一般的な種苗箱(概ね、縦:60cm、横:30cm、高さ:3cm)に、床土に代替して敷設できるように、種苗箱の内部の縦横寸法と、0.5〜1.5cmの厚みとを有し、平板状に形成されている。
この育苗マット1は、通常は、積み重ねた状態で段ボール箱等で梱包され、市場へと提供される。そうして提供される育苗マット1は、種苗箱に敷設して、水稲の育苗に用いられる。水稲の育苗は、種苗箱に敷設した育苗マット1の上に種籾が播種され、その後、灌水によって育苗マット1に十分な水分を含ませた後、所定量の土で覆う。そのようにセッティングした育苗箱を所定の条件下で保管し、種籾を発芽させることによって行われる。これら一連の作業が適切かつ簡単に行え、良好な育苗が行えるように、育苗マット1の構造が工夫されている。
すなわち、育苗マット1は、補強層1Bの上に軟弱層1Aが積層された上下2層で構成されている。補強層1Bは、育苗マット1に柔軟で壊れ難い強度を与え、取り扱いを容易にすることを主眼に設けられており、軟弱層1Aは、種籾の発芽初期に発生し得る根上がりを抑制し、苗の適切な生長を阻害しないことを主眼に設けられている。
本実施形態の育苗マット1には、本発明者らが開発した木質培土が活用されている(詳細は後述)。すなわち、本実施形態の育苗マット1の補強層1B及び軟弱層1Aの各々は、その木質培土に関連する木材砕片2A,2Bを、ポリビニルアルコール(PVA)を含む結合剤で結合することによって、多孔質構造に構成されている。例えば、各層1A,1Bを構成している木材砕片2A,2Bに対し、絶乾重量比で略3%のPVAを含ませることができる。
軽量な木材砕片2A,2Bで育苗マット1を構成することで、取り扱いが容易で、育苗作業の負担が軽減できる。PVAは、水溶性で自然分解可能であるため、水田にも悪影響を及ぼさない。
そして、その木材砕片2A,2Bは、詳細は後述するが、繊維束が解けて形成された多数の繊維からなる繊維状形態と、繊維束が解けずに残る木片からなる粒状形態とが混然一体となった、特異な構造を有している。その形態は保水性に優れるため、床土の代替として効果的なものとなっている。
更に、補強層1Bには、粗い形態の木材砕片(粗木材砕片2B)を用い、軟弱層1Aには、所定のサイズに分級された均質で細かい形態の木材砕片(細木材砕片2A)を用いるのが好ましい。具体的には、軟弱層1Aを構成する細木材砕片2Aは、1mm〜10mmの範囲内の所定のメッシュサイズを通過する大きさに形成するのが好ましい。そうすることで、根上がりの効果的な抑制とともに、適度な保水性と透水性とが確保でき、良好な育苗が行える。
特に、補強層1Bの結合剤には、補助的に芯鞘型複合繊維3(公知)が含まれている。例えば、補強層1Bを構成している粗木材砕片2Bに対し、絶乾重量比で略0.5%の芯鞘型複合繊維3を含ませることができる。それにより、木材砕片2Bの特異な構造との組み合わせによって柔軟性及び強度が更に強化され、安定性が向上する。なお、特許文献2の芯鞘型複合繊維と同様に、この育苗マット1でも、自然分解可能な芯鞘型複合繊維を用いるのが好ましい。
一方、本実施形態の育苗マット1では、軟弱層1Aの結合剤には、芯鞘型複合繊維3は含まれておらず、細木材砕片2AがPVAのみによって結合されている。軟弱層1Aの構成は、仕様に応じて適宜選択可能であり、芯鞘型複合繊維3を含むものであってもよい。ただし、その場合、軟弱層1Aでの芯鞘型複合繊維3の添加量は、補強層1Bと同じかそれよりも少ないのが好ましい。
補強層1B及び軟弱層1Aの各々の厚みは、仕様に応じて適宜選択できる。例えば、育苗マット1の厚みとして、育苗箱の高さより低い範囲で、各々1mm〜15mmの範囲で調整すればよい。一例として、本実施形態の育苗マット1では、補強層1B及び軟弱層1Aの各々の厚みは5mmとなっている。
また、補強層1Bや軟弱層1Aには、界面活性剤や肥料等の付加的素材を含有させてもよく、これら付加的素材を含む木質培土を用いてもよい。
<木質培土>
現在、農業や園芸には、ピートモスや赤玉土、堆肥などを主材として構成された培土が一般に用いられている。培土は、栄養成分はもとより、植える植物に適した保水性、透水性、pH等の品質が求められる。ピートモスなどのいわゆる有機資材は、土壌の保水性・通気性の改善あるいは向上を目的として用いられる。近年では、趣味としての園芸も定着したことから、これを楽しむライトユーザーにとっては、軽量性も重要視されつつある。堆肥は、土壌改良資材(肥料)として有効であるが、その製造には、長い保管時間と広大な保管場所を要する。なお、「培土」は、概念的なものであり、植物を栽培するための土台を構成する素材、を意味する。
ピートモスは、水苔などが化石化したものであり、土壌改良のための有機資材として優れているが、再生可能な資源ではなく、コストも上昇傾向にある。そこで、近年では、再生可能で安価な代替資材として、木材の樹皮活用が検討されたり、ココヤシの殻を原料とする、ヤシガラ資材の利用が検討されてきた。しかし、このような腐植が未熟な植物繊維には、タンニン(加水分解によって没食子酸などの多価フェノール酸を生ずる混合物)や塩分が多量に含まれており、これが植物の生育を阻害するという問題がある。そのため、長期間、野積みして雨水に曝したり水槽に浸漬したりしてタンニンや塩分を除去することが行われているが、時間と手間を要するうえに、適切な管理を行わないと、品質にばらつきが生じる。そこで、これら植物繊維を培土として利用する際に、タンニンを鉄イオンと反応させて不活性化させる方法が提案されている(特許文献6,7参照)。
そのような状況の下、木材の端材の活用により、これらの要望を満たし得る培土を開発すべく、本発明者らが鋭意検討を行った。その結果、良好な品質の木質培土が安定して得られる製造方法を見出し、これらに代わる新規な培土(木質培土、ここでいう細木材砕片2B)を開発した。以下、その詳細について説明する。
(木質培土の原料)
木質培土は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。
ここで、堆肥化されていないとは、腐熟により、木材を構成している多糖類等が生分解されていないことを意味する。木質培土は、細分化されてはいるが、セルロースを主骨格とする木材の繊維成分は、ほとんどそのまま残存した状態となっている。木材の繊維成分は、生分解され難いため、後述するように、木材を砕いて、保水性や透水性が異なる所定の形態の木材砕片に形成することで、生育対象の植物に適した栽培条件を長期にわたって維持できる培土が得られる。
木質培土の原料には、スギやヒノキ等、国産の針葉樹が好適である。広葉樹は、針葉樹よりも腐熟し易いため、針葉樹に比べて品質の安定性に欠ける。針葉樹であれば、腐熟しにくいため、適切かつ安定したpF値(植物が生育するために吸収できる土壌中の水分量を表す指標)や三相分布(固相、液相、気相)を、長期にわたって維持できる。
更に、国産の針葉樹は、建築材料や木材加工材料などに多用されており、その製造時には多量の端材(木材の余分な切れ端)が発生する。その端材が、木質培土の原料に利用できるため、安価な原料を安定して確保することができる。
タンニンは、木材の部位では、特に樹皮に多く存在するが、その内側の辺材(樹木の周辺部分)や心材(樹木の中心部分)にも存在する。そして、辺材よりも心材の方が、タンニンの含量が多い傾向がある。そのため、心材よりも辺材を原料に多く用いるのが好ましい。具体的には、辺材と心材との割合が1:0〜1:1の範囲となるように、原料となる木材の割合を設定するのが好ましい。特に心材の割合は低いほどよい。
辺材の端材は、柱材などを製材する際に背板または加工端材として多量に発生する。このような辺材端材を優先的に使用することで辺材の割合を上げることができる。また、合板や積層材の製造時には、薄板を形成するために、長さ方向に所定の寸法に分断した丸太を、外周から中心に向かって周方向に所定の厚みで剥いでいく工程がある。その工程の最初の剥き始めを使うことで辺材の割合を増やすことができる。一方、最後に残る、剥き芯と称する丸太の中心部分からなる端材を、木質培土の原料から排除することで、心材の割合を減らすことが可能になる。また、樹齢の若い樹木ほど樹幹中の辺材率が高いため、間伐材を使用することにより、大径木を使用する場合に比べて心材の割合を下げることができる。このようにして心材と辺材との割合を調整することができる。
木質培土には、補助的な原料として、木材に含まれるタンニンの不活性化を目的としたクエン酸鉄アンモニウムや硫酸鉄からなる改質剤、品質の向上を目的とした界面活性剤やpH調整剤が添加されている。
硫酸鉄、具体的には、硫酸第一鉄等は、タンニンとの反応性が高いため、タンニンの不活性化には効果的であるが、過剰に添加すると、植物の生育阻害を引き起こすことが判明した(詳細は後述)。詳しくは、木材砕片に添加される硫酸鉄の濃度が、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%より多くなると、植物の生育阻害を引き起こす可能性があることが判明した。
それに対し、クエン酸鉄アンモニウムは、硫酸鉄よりもタンニンとの反応性は低いものの、木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%の高濃度で添加しても、植物の生育阻害が認められなかった。このことから、クエン酸鉄アンモニウムは、木質培土の改質剤として有効であることが判明した。
従って、木質培土には、タンニンを不活性化する改質剤として、木材砕片に含有されているタンニンを十分に不活性化できる量のクエン酸鉄アンモニウムを添加するのが好ましい。更には、植物の生育阻害が起きない量の硫酸鉄と、その不足分のタンニンを十分に不活性化できる量のクエン酸鉄アンモニウムと、を添加するのが、より好ましい。そのため、この木質培土では、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとが併用されている。
木材砕片は、乾燥することによって撥水性が生じる。撥水性が生じた木材砕片で木質培土が構成されていると、保水性が悪化するとともに、撥水することによって水分分布が不均質となり、植物の生育阻害を招くおそれがある。それに対し、界面活性剤を木材砕片に添加することで、乾燥による植物の生育阻害を抑制する効果が得られることが判明した(詳細は後述)。
また、植物は、一般に、弱酸性から中性のpHを好むものが多いが、それぞれ適したpHがある。そのため、この木質培土では、生育対象とする植物に応じたpH調整剤が補助的な原料として添加されている。例えば、アルカリ性調整剤としての炭酸カルシウムや、酸性調整剤としてのピートモスなどが、仕様に応じて木質培土に添加されている。その他肥料成分や、様々な環境変化に対応するため、炭や、ベントナイト、ゼオライト等の軽量骨材が添加されていてもよい。
(木質培土の構造的特徴)
木質培土は、木材の繊維成分が、ほとんどそのまま残る、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、生育対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性や吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
原料となる木材を砕く方法としては、例えば、回転鋸やカッターミルなどの切削粉砕機によって木材を細かく切断する方法(切削粉砕)、ハンマーミルやピンミルなどの衝撃粉砕機によって木材を衝撃で砕く方法(衝撃粉砕)、エクストルーダーやボールミルなどの摩砕粉砕機によって木材を磨り潰す方法(摩砕粉砕)がある。これらの中では、摩砕粉砕が最も繊維分が解け易いため、摩砕粉砕によって木材を砕くことで保水性や吸水性を高くできる。
公知の木材の繊維分を細かく分離できる装置として、例えば、ディスクリファイナーがある。しかし、ディスクリファイナーは、その装置自体が大きいうえに、蒸煮設備も必要になるなど、設備が大型化する。そのため、木質培土の製造設備としては、実用上、ディスクリファイナーは過剰であり、その採用は困難である。更に、その粉砕物は、高度に繊維化されるため、過剰吸水や空気層の不足を招き、植物の生育に適しているとは言えない問題もある。
それに対し、特許文献5の、2軸スクリュー押出し機のようなエクストルーダーは、小型で比較的構造が簡素で扱い易いうえに、粉砕物を、他の粉砕機には認められない、植物の生育に適した特異な構造にできるため、木質培土の製造設備に適している。
図2に、各方法で形成された木材砕片を示す。(a)は、ハンマーミルによって形成された木材砕片であり、(b)は、カッターミルによって形成された木材砕片である。そして、(c)が、エクストルーダーによって形成された木材砕片である。
カッターミルによって形成された木材砕片は、アスペクト比(縦横の大きさの比率)が低く、塊状ないし粒状の形態をしており、繊維束がそのまま残り、ほとんど繊維化はしていない。一方、ハンマーミルによって形成された木材砕片は、カッターミルの場合よりも、アスペクト比が高くなって繊維化が見られるものの、その形態は、塊状ないし粒状の形態の域を出るものではない。
それに対し、エクストルーダーによって形成された木材砕片は、繊維束が解かれて形成された多数の糸状繊維からなる形態(繊維状形態)や、繊維束が解け切れずに残る、小さな木片のような形態(粒状形態)などが認められ、これら形態が適度に混然一体(お互いの区別がつかないほど一体になった状態)となった、アスペクト比の高い複雑な形態をしている。従って、保水性に有効な繊維状形態と、透水性に有効な粒状形態の両方を含むため、エクストルーダーで得られる木材砕片は、保水性及び透水性の双方に有効な構造となっている。なお、エクストルーダーには、モリマシナリー株式会社製のMORI−LEHAMANNエクストルーダー(型式B90)を用いた。
ところが、エクストルーダーで得られる木材砕片は、実際は、その形態が粗いために、木質培土としては、透水性は良いが、保水性が悪いことが判明した。図3に、その三相分布の測定結果を示す。エクストルーダーで得られる木材砕片の保水性の指標となる液相は、約60%であった。
なお、培土は、固相(すなわち、培土の固体部分)、液相(すなわち、培土に保持される水)、及び気相(すなわち、培土に含まれる空気)で構成されており、これら3相の分布が三相分布である。三相分布の測定は、公知の三相分布測定器による。
また、エクストルーダーで得られる木材砕片(粗木材砕片2B)は、そのサイズや形態のばらつきが大きいため、透水性も不安定になり易い。サイズの大きな粒状形態の木材砕片があると、栽培時に、播種した種が大きな木材砕片の間に落ち込んで塞がれてしまい、発芽が不揃いになるという問題もある。更に、繊維状形態の木材砕片と粒子状形態の木材砕片とが絡まって、大きな塊状になり易く、培土としては扱い難いという問題もある(この点、育苗マット1の補強層1Bでは逆に活用)。
従って、エクストルーダーのみで粉砕した木材砕片は、改善の余地があったため、本発明者らが鋭意検討した。その結果、本発明者らは、エクストルーダーで粉砕した木材砕片を、カッターミルで粉砕しても、繊維状形態と粒状形態とが適度に混然一体となった特異な構造を壊すことなく、微細化できることを見出し、均質で微細な特異な構造を有する木材砕片を開発した。
それにより、この木質培土を構成している木材砕片は、繊維状の形態と粒状の形態とが適度に混然一体となった構造を有するだけでなく、例えば、1mm〜20mmの各メッシュを通過するような、微細でサイズが均一化された状態となっている。
エクストルーダーのスクリューと、スクリューを収容する軸孔との間の隙間(木材が通る空間)を狭めることで、エクストルーダーで得られる粉砕物のサイズを小さくすることは可能である。ところが、その場合、繊維化が進んで粒状形態が減少するため、繊維状形態と粒状形態とが適度に混然一体となった構造が損なわれる。
また、ディスクリファイナーで微細に粉砕した木材砕片と、カッターミルで微細に粉砕した木材砕片とを混合することも可能である。しかし、その場合も、それぞれの木材砕片の構造は、繊維状形態と粒子状形態とに独立しているため、繊維状形態と粒状形態とが混然一体となった構造とは本質的に異なり、同じような均質性は得られない。
(木質培土の成分的特徴)
硫酸鉄は、タンニンとの反応性が高いうえに、木材砕片が含有するタンニンに対して不足する量が添加されるため、木材砕片に残存しないか残存しても微量である。それに対し、クエン酸鉄アンモニウムは、鉄イオンがキレートを形成しているためにタンニンとの反応性が低く、添加した全量は反応せず、木材砕片には、クエン酸鉄アンモニウムが残存している。その結果、木材砕片は、クエン酸鉄アンモニウムを含有するものとなっている(すなわち、木材砕片からクエン酸鉄アンモニウムを検出できる)。
同様に、界面活性剤やpH調整剤も添加されているため、木材砕片は、これらも含有するものとなっている。
(育苗マットの構成例)
図4に、育苗マット1の軟弱層1A及び補強層1Bの各々の構成例を示す。補強層1Bの主体には、木質培土の製造過程で得られる粗木材砕片2B(エクストルーダーによる粉砕物)が用いられ、芯鞘型複合繊維3とPVAを含む結合剤で結合して、マット状に成形することによって形成されている。絡まり易い粗木材砕片2Bが芯鞘型複合繊維3(少量でよい)で補強されることにより、他の一般的な素材に比べて、保水性や透水性に優れ、育苗に適しているだけでなく、柔軟で強度に優れた壊れ難い構造となっている。
一方、軟弱層1Aの構成は、生育対象の植物に応じて適宜選択できる。本実施形態の育苗マット1のように、細木材砕片2Aを主体に、PVAで結合してマット状に成形した軟弱層1A(パターン1)であれば、保水性や透水性に極めて優れ、育苗に適しているうえに、よりいっそう均質で細かな多孔質構造が形成されるため、根上がりを効果的に抑制できる。
強度を増強するために、軟弱層1Aの結合剤にも芯鞘型複合繊維3を含ませてもよい(パターン2)。また、他の木材粉砕物、例えば、カッターミルによる粉砕物のように、1mm〜10mmの範囲内の所定のメッシュサイズを通過する大きさに分級した、細かな粒状の粉砕物を主体にして軟弱層1Aを構成してもよい(パターン3,4)。この場合、良好な透水性が得られるので、根上がりを抑制して、そのような培地に適した植物の良好な育苗ができる。
場合によっては、細木材砕片2Aと他の木材粉砕物とを混合したものを主体に、軟弱層1Aを構成してもよい。そうすれば、保水性や透水性を調整することができるので、汎用性に優れる。
<育苗マットの製造方法>
育苗マット1の製造方法は、針葉樹の木材をエクストルーダーで砕いて木材砕片を形成する工程(木質培土形成工程)、木材砕片に、PVAと芯鞘型複合繊維とを含む結合剤を添加して混合し、補強層を構成する補強層ベースを形成する工程(補強層ベース形成工程)、木材砕片に、PVAを含む結合剤を添加して混合し、軟弱層を構成する軟弱層ベースを形成する工程(軟弱層ベース形成工程)、補強層ベースの上に軟弱層ベースを積層し、マット状に成形する工程(成形工程)などで構成されている。
(木質培土形成工程)
本工程では、粗木材砕片2Bとともに、前述した木質培土(細木材砕片2A)が形成される。木質培土は、針葉樹の木材(端材)を砕いて木材砕片を形成する工程(第1工程)、得られた木材砕片を溶液で処理する工程(第2工程)を経て製造される。堆肥化されていない木材を原料にして、工業的に製造できるので、短時間で量産できる。
第1工程では、端材をエクストルーダーで粗粉砕する前段処理と、カッターミルで細粉砕する後段処理とが行われる。エクストルーダーは、例えば、特許文献5のような2軸の粉砕機が利用できる。カッターミルは、様々な型式があるが、例えば、株式会社三力製作所社製のSF−4が利用できる。
最初に、端材をエクストルーダーで粉砕し、そうして得られる木材砕片を、カッターミルで更に粉砕する。別々に粉砕してもよいが、同時に連続して粉砕するのが効率の観点からは好ましい。
そうして、エクストルーダーで粗粉砕して得られる木材砕片(粗木材砕片2B)は、補強層1Bを構成する木材砕片に用いられ、更にカッターミルで細粉砕して得られる木材砕片(細木材砕片2A)は、軟弱層1Aを構成する木材砕片に用いられる(以下、これらをまとめて「木材砕片」ともいう)。
カッターミルには、通常、細粉砕した木材砕片を分級して排出するために、所定サイズの細孔群が形成されたスクリーンが取り換え可能な状態で備えられている。木質培土の製造には、そのメッシュサイズを、1mm〜20mmの範囲に設定するのが好ましく、さらに好ましくは3mm〜20mmの範囲に設定するのが好ましい。3mmに満たないサイズのメッシュを使うと、著しく分級効率が悪くなるためである。そうすれば、扱い易いうえに、保水性が高く、良好な品質の木質培土が得られる。
第2工程では、木材砕片に含まれるタンニンの不活性化や、品質の向上を目的とした改質処理が行われる。具体的には、硫酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、界面活性剤、pH調整剤等の各々の所定量を、木材砕片に作用させる処理が行われる。
硫酸鉄は、タンニンとの反応性が高いため、その不活性化には有効であるが、過剰に添加すると、植物の生育阻害を引き起こす。そのため、植物の生育阻害が起きない量として、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄を木材砕片に作用させる。それにより、硫酸鉄の全量が木材砕片のタンニンと反応して、タンニンを不活性化する。結果的に、木質培土には、未反応の硫酸鉄は残存しないか、残存しても微量である(植物の生育阻害は生じない)。
一方、その量の硫酸鉄では、木材砕片が含有するタンニンの量に対して不足する。そのため、残存したとしても植物の生育阻害を引き起こさないクエン酸鉄アンモニウムを、残りのタンニンの不活性化に十分な量として、木材砕片の絶乾重量に対して0.5重量%以下の範囲で作用させる。そうすることで、効果的にタンニンを不活性化でき、植物の生育阻害を防ぐことができる。
また、硫酸鉄やクエン酸鉄アンモニウムは、水溶液にして木材砕片に作用させるのが一般的であるが、その際、硫酸鉄のみであると、沈殿が生じ易いため、濃度が安定しないという問題がある。それに対し、硫酸鉄の水溶液にクエン酸鉄アンモニウムが加わると、沈殿が生じ難くなり、硫酸鉄の濃度が安定する利点もある。
また、界面活性剤やpH調整剤の各々の所定量を、木材砕片に作用させる処理が行われる。それにより、生育対象の植物(ここでは水稲)により適した状態に改質でき、植物の生育を促進できる。
第2工程では、改質液を溜めた水槽に木材砕片を浸漬することによって各成分を木材砕片に作用させてもよいが、効率的に量産できるように、改質液を噴霧する処理を行うのが好ましい。図5A及び図5Bに、その一例を示す。
木材砕片に対して各成分を所定量作用させればよいので、図5Aに示すように、所定量の木材砕片10を撹拌機12に投入し、木材砕片10を撹拌しながら、各成分の含量を調整した改質液をスプレー13で所定量噴霧することにより、改質処理を行うことができる(バッチ式)。この方法によれば、各成分を、短時間で多量の木材砕片10に対して均一に作用させることができる。
また、図5Bに示すように、フィーダー14から一定量で供給される木材砕片10を、ベルトコンベア15で搬送し、各成分の含量を調整した改質液を、スプレー13で、ベルトコンベア15で搬送される木材砕片10に向けて所定量噴霧する。そうすることによっても、木材砕片10の改質処理を均一に行うことができる。この方法によれば、連続的に改質処理できるので、より量産化が実現できる。なお、改質液の噴霧はまとめて1度に行ってもよい。また、改質液の噴霧後または噴霧中に攪拌しながら均一になるようにしてもよい。
このように、改質液の噴霧による方法によれば、短時間で均一に各成分を木材砕片に作用させることができる。改質液も必要十分量で足りるため、極めて効率的である。噴霧時に、改質液を加温すれば(例えば、50℃以上)、水分の除去を促進できるので、より効率的に処理できる。
(補強層ベース形成工程、軟弱層ベース形成工程、成形工程)
図6に、これら工程を行う製造設備の一例を示す。この製造設備は、乾式製法に基づく製造設備であり、湿式製法に基づく製造設備に比べて簡略化されている。補強層ベース形成工程、軟弱層ベース形成工程、及び成形工程の各工程が連続的に行えるように構成されている。
製造設備は、コンベア21、第1ホッパー22、第1フィーダー23、第2ホッパー24、第2フィーダー25、高周波プレス機26等で構成されている。第1ホッパー22は第1フィーダー23に付設されており、第2ホッパー24は第2フィーダー25に付設されている。第1フィーダー23は、第2フィーダー25よりも、コンベア21の搬送方向の上流側に配置されている。高周波プレス機26は、第2フィーダー25よりも、コンベア21の搬送方向の下流側に配置されている。
粗木材砕片2Bは、所定の配合割合でPVA(粉体)と芯鞘型複合繊維3とを含む結合剤と均一に混合される。そうすることにより、補強層1Bを構成する補強層ベースHBが形成される(補強層ベース形成工程)。このとき、芯鞘型複合繊維3を祖木材砕片2Bに均一に分散させるために、祖木材砕片2Bの含水率は40%以上に調整されている。
同様に、細木材砕片2Aは、所定の配合割合でPVA(粉体)を含む結合剤と均一に混合される。そうすることにより、軟弱層1Aを構成する軟弱層ベースNBが形成される(軟弱層ベース形成工程)。
補強層ベースHBは、第1ホッパー22に投入され、軟弱層ベースNBは、第2ホッパー24に投入される。そして、コンベア21が作動すると、第1フィーダー23により、コンベア21の搬送速度に応じて所定量の補強層ベースHBが、コンベア21の上に層状に送り出される。そうしてコンベア21で搬送される補強層ベースHBの上に、第2フィーダー25により、コンベア21の搬送速度に応じて所定量の軟弱層ベースNBが層状に送り出される。
補強層ベースHBの上に軟弱層ベースNBが積層された状態で、高周波プレス機26に搬送されることにより、補強層ベースHB及び軟弱層ベースNBは、連続的に高周波プレスされ、マット状に成形される。成形装置は、高周波プレス機26でなく、熱圧プレス機(加熱してプレスする)であってもよいが、熱圧プレス機の場合、成形に160℃で30分程度の処理を要するのに対し、高周波プレス機26であれば、1分程度で成形できるので、生産性に優れる。
(育苗マットの効果)
前述したような育苗マットを用いて水稲の育苗を行った結果、根上がりの発生率を10%程度まで抑制することができた。
また、前述したような育苗マットを用いて育苗した水稲の苗を用いて、実際に田植えを行い、稲作を行った。植付の移植精度も、欠株率は10%以下となり、育苗マットの田植機への適応性も良好であった。出穂や収量も、従来の床土による育苗と大きな差は認められなかった。
従って、本発明の植物育成用マットによれば、軽量で扱い易く、根上がりも効果的に抑制できるので、育苗作業の負担が軽減されるとともに良好な育苗が行える。
<エクストルーダーによる木材粉砕物の微細化の検討>
エクストルーダーによる木材粉砕物の微細化について検討した内容を説明する。図2の(c)及び図3に示した、エクストルーダーの粉砕物を、スクリーンのメッシュサイズを2mm、3mm、及び4mmに設定し、カッターミル(SF−4)で細粉砕した。そうして、各スクリーンを通過することによって分級して排出された木材砕片を得た。これら木材砕片について、三相分布を測定した。
図7に、これらの形態を示す。(a)が、メッシュサイズが2mmの木材砕片であり、(b)が、メッシュサイズが3mmの木材砕片であり、(c)が、メッシュサイズが4mmの木材砕片である。
いずれの木材砕片も、繊維状形態と粒状形態とが適度に混然一体となった特異な構造を維持していることが判る。そして、そのサイズはメッシュサイズに応じた大きさに、各々分級されている。
従って、端材をエクストルーダーで粉砕し、そうして得られる木材砕片を、スクリーンのメッシュサイズを1mm〜20mmの範囲で適宜選択しながら、カッターミルで更に粉砕することにより、繊維状形態と粒状形態とが適度に混然一体となった特異な構造を有する、均質で微細な木材砕片を安定して得ることができる。
図8に、これら木材砕片の三相分布の測定結果を示す。(a)が、メッシュサイズが2mmの木材砕片であり、(b)が、メッシュサイズが3mmの木材砕片であり、(c)が、メッシュサイズが4mmの木材砕片である。
いずれの木材砕片も、液相は70%以上となり、エクストルーダーで得られた木材砕片の液相の約60%から大幅に増加した。従って、保水性が向上し、良好な品質の木質培土が得られることが判った(水稲の育苗に好適)。
均質化、微細化、及び保水性の向上は、タンニンの不活性化にも有利である。すなわち、鉄塩の水溶液を、木材砕片に、均一に分布させ易くなるため、必要十分な鉄塩でタンニンを効率的に不活性化できる。特に、鉄塩の水溶液を噴霧する場合に効果的である。
<タンニンの不活性化の検討>
次に、タンニンの不活性化について検討した内容を説明する。
(比較試験1)
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、電気伝導率(EC)が同一値(略0.5μS/cm)となるように調整した硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、個別のシャーレに敷いた濾紙に、各水溶液を添加した。各濾紙に、12粒程度の小松菜の種を播種した後、暗条件下で7日程度育苗を行った。
図9に、その結果を示す。硫酸鉄では、発芽不良が認められたが、クエン酸鉄アンモニウムでは、発芽不良は認められなかった。この結果より、クエン酸鉄アンモニウムは、それ自体の存在によって植物の生育阻害を生じる可能性は低いのに対し、硫酸鉄は、それ自体の存在によって植物の生育阻害を生じることが判明した。
(比較試験2)
タンニンの存在下での、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムの植物の生育への影響を調べた。試験では、125ppm、500ppmの各濃度で硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各水溶液を作製し、これらに400ppmのタンニン酸を加えて、比較試験1と同様の試験を行い、育苗後での根の発育状態を比較した。
図10に、その結果を示す。同図中、(a)は、ブランクの試験結果である(タンニン酸400ppmのみ)。(b1)は、タンニン酸400ppm+硫酸鉄125ppmでの試験結果であり、(b2)は、タンニン酸400ppm+硫酸鉄500ppmでの試験結果である。(c1)は、タンニン酸400ppm+クエン酸鉄アンモニウム125ppmでの試験結果であり、(c2)は、タンニン酸400ppm+クエン酸鉄アンモニウム500ppmでの試験結果である。
図10の(a)より、タンニン酸のみの存在下では、根毛がほとんど認められず、生育が阻害されていることが判る(200ppm程度の濃度でも同様の結果であることは確認済み)。それに対し、図10の(b1)や(c1)より、400ppmのタンニン酸に対して125ppmの濃度で各鉄塩を添加した試験区では、根毛が認められ、タンニン酸による生育阻害が抑制されていることが判る。すなわち、400ppmのタンニン酸に対しては、125ppm程度の鉄塩を添加することで、タンニンによる植物の生育阻害が防止できる。
一方、図10の(b2)より、400ppmのタンニン酸に対して過量の500ppmで硫酸鉄を添加した試験区では、根毛がほとんど認められなかったのに対し、図10の(c2)より、400ppmのタンニン酸に対して過量の500ppmでクエン酸鉄アンモニウムを添加した試験区では、根毛が認められた。すなわち、硫酸鉄には濃度障害が認められ、その過剰な添加は、植物の生育阻害を引き起こすのに対し、クエン酸鉄アンモニウムには濃度障害は認められず、過剰に添加しても植物の生育阻害を引き起こす可能性は低いことが判った。
(比較試験3)
改質液の噴霧による効果について調べた。試験では、木材砕片の絶乾重量に対する重量%別(0.1、0.3、0.5)で、硫酸鉄及びクエン酸鉄アンモニウムの各改質液を作製し、これらを木材砕片に噴霧し、ポリフェノール量の変化を比較した。なお、タンニンの量については、フォーリン・チオカルト(Folin-Ciocalteu)法を用いたポリフェノール量の測定により行った。
図11に、その結果を示す。鉄塩の種類、濃度による大きな違いは認められず、いずれの試験区でも、ブランク(無処理)と比べてポリフェノール量が低下した。従って、鉄塩を含む改質溶液を木材砕片に噴霧することにより、タンニンを不活性化できることが判明した。
(比較試験4)
硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムとの併用による効果について調べた。試験では、70℃で3日間乾燥したスギチップ(徳島産)を、カッターミル(スクリーン径2mm)で粉砕して木材砕片を作製した。この木材砕片に、その絶乾重量に対して0.5重量%のクエン酸鉄アンモニウムと、濃度が異なる硫酸鉄とを含有する改質液を噴霧し、硫酸鉄の噴霧含量が異なる木質培土を作製した。これら木質培土を用いて小松菜の育苗試験を行い、播種から35日後の収穫量を比較した。
図12に、その試験結果を示す。0.5重量%のクエン酸鉄アンモニウムのみの試験区を含め、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%以下の硫酸鉄が併存する試験区では、高い収量が得られたが、木材砕片の絶乾重量に対して0.2重量%を超える硫酸鉄が併存する試験区では、収量の低下が認められた。
従って、木材砕片の絶乾重量に対し、少なくとも0.5重量%以下のクエン酸鉄アンモニウムを木材砕片に作用させることで、タンニンによる生育阻害を抑制して、植物を良好に生育できる木質培土を得ることができる。また、木材砕片の絶乾重量に対し、0.2重量%以下の硫酸鉄を、十分量のクエン酸鉄アンモニウムと併用して木材砕片に作用させることによっても、タンニンによる生育阻害を抑制して、植物を良好に生育できる木質培土を得ることができる。
(比較試験5)
界面活性剤の添加による効果について調べた。試験では、比較試験4と同様に木材砕片を作製し、その木材砕片に、クエン酸鉄アンモニウムのみからなる改質液を添加した木質培土の2試料(単独区)と、硫酸鉄とクエン酸鉄アンモニウムを併用した改質液を添加した木質培土の2試料(併用区)とを作製した。各木質培土の一方の試料の改質液には、界面活性剤(サイマトEZ:株式会社トモグリーンケミカル製)を適量添加した。作製した各試料を用いて、同じ条件の下で小松菜の育苗試験を行った。
図13に、その試験結果を示す。単独区及び併用区のいずれの試料においても、界面活性剤を添加した方が収量が増加し、界面活性剤の添加が、植物の生育に有効であることが判った。
なお、本発明にかかる植物育成用マットは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、マットのサイズは、仕様に応じて適宜変更できる。エクストルーダーは、2軸に限らず1軸や3軸以上であってもよい。水稲に限らず、他の植物の育成に利用してもよい。
1 育苗マット
1A 軟弱層
1B 補強層
2A 細木材砕片
2B 粗木材砕片
3 芯鞘型複合繊維

Claims (7)

  1. 植物育成用マットであって、
    補強層の上に軟弱層が積層された2層で構成され、
    記軟弱層、堆肥化されていない木材砕片がポリビニルアルコールを含む結合剤で結合されることによって構成され、
    前記補強層は、堆肥化されていない木材砕片がポリビニルアルコールと芯鞘型複合繊維とを含む結合剤で結合されることによって構成され、
    前記軟弱層を構成する前記木材砕片が、前記補強層を構成する前記木材砕片よりも細かく粉砕されていて、3mm〜20mmの範囲内の所定のサイズのメッシュを通過する大きさに形成されている植物育成用マット。
  2. 請求項1に記載の植物育成用マットにおいて、
    前記木材砕片が、繊維束が解けて形成された多数の繊維からなる繊維状形態と、繊維束が解けずに残る木片からなる粒状形態とが混然一体となった形態を有している植物育成用マット。
  3. 植物育成用マットの製造方法であって、
    針葉樹の木材をエクストルーダーで砕いて木材砕片を形成する木質培土形成工程と、
    前記木材砕片に、ポリビニルアルコールと芯鞘型複合繊維とを含む結合剤を添加して混合し、補強層を構成する補強層ベースを形成する補強層ベース形成工程と、
    前記木材砕片に、ポリビニルアルコールを含む結合剤を添加して混合し、軟弱層を構成する軟弱層ベースを形成する軟弱層ベース形成工程と、
    前記補強層ベースの上に前記軟弱層ベースを積層し、マット状に成形する成形工程と、
    を含み、
    前記軟弱層を構成する前記木材砕片を、前記補強層を構成する前記木材砕片よりも細かく粉砕することにより、3mm〜20mmの範囲内の所定のサイズのメッシュを通過する大きさに形成する製造方法。
  4. 請求項3に記載の製造方法において、
    前記木質培土形成工程は、
    前記木材をエクストルーダーで粗粉砕して粗木材砕片を形成する前段処理と、
    前記粗木材砕片を、カッターミルで細粉砕して細木材砕片を形成する後段処理と、
    を含み、
    前記補強層の前記木材砕片に前記粗木材砕片が用いられ、前記軟弱層の前記木材砕片に前記細木材砕片が用いられる製造方法。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の製造方法において、
    前記木質培土形成工程が、更に、前記木材砕片を、クエン酸鉄アンモニウムを含有する溶液で処理する改質工程を含む製造方法。
  6. 請求項3又は請求項4に記載の製造方法において、
    前記木質培土形成工程が、更に、前記木材砕片を、クエン酸鉄アンモニウム及び硫酸鉄を含有する溶液で処理する改質工程を含む製造方法。
  7. 請求項3〜請求項6のいずれか1つに記載の製造方法において、
    前記成形工程の成形が、高周波プレスによって行われる製造方法。
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