JP6504538B2 - 湿潤強度を有する紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン液体を用いた紙の加工工程と当該工程を経た紙を貧溶媒に浸漬する工程とを少なくとも備えた、湿潤強度を有する紙の製造方法に関するものである。
湿潤紙力増強剤は、紙を水に浸漬した後の湿潤強度を維持する目的で、紙に使用されている。通常、湿潤紙力増強剤は、紙に乾燥紙力強度の15〜30[%]を付与することができ、つまり湿潤紙力残留率を15〜30[%]に維持することができる。このことから、湿潤紙力増強剤は、耐水段ボール、包装紙、ペーパータオル、ティッシュペーパーなどに使用されている。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミド−ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド系樹脂、尿素−ホルムアルデヒド系樹脂等が使用されている。
例えば、特許文献1〜3には、これらの湿潤紙力増強剤の製造方法及び性能が開示されている。
一方、近年では、環境に配慮する観点から、天然成分に着目した研究開発が行われており、湿潤紙力増強効果に関しても、今後、同様の傾向が続くと考えられる。
湿潤紙力増強効果に関し、天然成分を利用した例としては、特許文献4に開示されたバルカナイズドファイバーの湿潤寸法安定性やセルロースナノファイバーの湿潤紙力増強効果が、非特許文献1に記載されている。
特開2014−55223号公報 特開2006−97218号公報 特開平10−245794号公報 特開2005−240253号公報
Ind. Eng. Chem. Res. 2007, 46, p.773-780.
しかしながら、バルカナイズドファイバーの製造に使用される塩化亜鉛溶液は腐食性を有するため、製造工程には耐腐食性のある高価な設備を要する。また、セルロースナノファイバーについては、定着剤として、カチオン性のポリアクリルアミドやポリビニルアミンを使用しているため、天然成分のみで湿潤紙力増強効果を発現するものではない。
そこで、本発明の解決課題は、イオン液体を用いた紙の加工工程と貧溶媒への浸漬工程とを少なくとも有することにより、所望の湿潤強度を有すると共に天然成分のみからなり、しかも、環境に十分配慮した紙の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、イオン液体に溶解させたセルロースを紙に塗布する塗布工程と、前記塗布工程を経た紙を貧溶媒に浸漬する貧溶媒浸漬工程と、を含むことを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、イオン液体に溶解させたセルロースを紙に含浸させる含浸工程と、前記含浸工程を経た紙を貧溶媒に浸漬する貧溶媒浸漬工程と、を含むことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、前記貧溶媒浸漬工程を経た紙を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、前記イオン液体に溶解させるセルロースの濃度が1.25〜2.5[wt%]であることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、前記イオン液体に溶解させるセルロースが、木材パルプ、または、セルロースを含む製紙スラッジもしくは農業廃棄物であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、前記貧溶媒浸漬工程に使用する貧溶媒がセルロースの貧溶媒であることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項3に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、前記乾燥工程が、110[℃]、1.1[Mpa]、5分間の条件で行うプレス乾燥を含むことを特徴とする。
本発明によれば、「部分溶解工程」または「塗布工程」もしくは「含浸工程」を実施し、その後に「貧溶媒浸漬工程」を実施してその後に乾燥させることで、湿潤強度に優れた紙を製造することができる。
本発明によれば、湿潤紙力を示す指標としての湿潤紙力残留率が20[%]以上となり、従来法と同等もしくはそれ以上の湿潤紙力残留率を得ることができる。更に、全て天然素材であるセルロースによって紙が構成されるため、環境に配慮したものとなる。また、イオン液体も、従来の有機溶媒と比較して環境への負荷が少ないことから、環境保護に資することができる。
実施例1,比較例1及び比較例2のほぐれやすさ試験結果を示す図である。 実施例2,比較例1,比較例4及び比較例5のほぐれやすさ試験結果を示す図である。 実施例3,比較例1及び比較例8のほぐれやすさ試験結果を示す図である。 比較例1及び比較例10のほぐれやすさ試験結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明が適用される紙は、例えば、木材パルプやリンターパルプを用いて製造したものが挙げられる。本発明におけるセルロースの種類は特に限定されず、例えば、木材パルプから採取されたものなどが挙げられる。また、製紙スラッジや農業廃棄物等の廃棄物に含まれるセルロースも使用することができる。
イオン液体を用いた紙の加工工程としての「部分溶解工程」、「塗布工程」または「含浸工程」において、イオン液体の成分は特に限定されないが、後述する「貧溶媒浸漬工程」の貧溶媒として水やエタノールを用いる場合を考慮すると、イオン液体には、水溶性またはエタノール溶解性の成分を用いることが望ましい。
この種のイオン液体としては、例えば、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−アリル−3−アルキルイミダゾリウム塩、1−アルキル−2,3−ジメチルイミダゾリウム塩、N−アルキルピリジウム塩、メチル−N−ブチルピリジニウム塩などが挙げられる。これらのイオン液体の代表的なものとしては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、N−エチルピリジウムクロライド、3−メチル−N−ブチルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
本発明のイオン液体としては、特に、低融点で水溶性、エタノール溶解性を有する1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライドを用いることが好ましい。
「部分溶解工程」において、イオン液体の温度は、好ましくは80〜100[℃]である。80[℃]未満ではセルロースの溶解が進まず、100[℃]以上では、溶解が進行し過ぎてシート形状を維持することが困難となる。
紙にイオン液体を含浸させる時間は、5[sec]ではセルロースの溶解量が少なく、30[sec]を超えると溶解が進行し過ぎてシート形状の維持が困難になるので、含浸時間としては、好ましくは5〜30[sec]、より好ましくは12.5〜30[sec]である。
「塗布工程」または「含浸工程」において、セルロースを溶解するイオン液体の温度は、好ましくは100[℃]である。
「塗布工程」または「含浸工程」では、セルロースをイオン液体に添加して十分に撹拌することにより、セルロース溶液が調製される。このセルロース溶液におけるセルロース濃度は、好ましくは0.5〜2.5[wt%]であり、より好ましくは1.25〜2.5[wt%]である。
「塗布工程」において、セルロース濃度が0.5[wt%]以下であると、紙への湿潤強度の付与が困難になり、濃度が2.5[wt%]を超える場合には、粘度が高くなり過ぎて紙への塗布が困難となる。また、濃度が3.75[wt%]を超える場合、粘度が高くなり過ぎて紙への塗布や含浸が困難になる。
イオン液体を用いた紙の加工工程に続く「貧溶媒浸漬工程」では、貧溶媒を用いて、セルロース溶液からセルロースを紙表面上もしく紙中に析出させる。これらの貧溶媒は、例えば、水及びメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類であり、これらの混合溶媒を使用することができる。
これらの貧溶媒は、使用後にイオン液体との混合溶媒となる。従って、イオン液体及び貧溶媒の再利用を考慮した場合、減圧蒸留や再利用の容易さ及びコスト等の観点から、貧溶媒としてエタノールを使用することが最も望ましい。
更に、「貧溶媒浸漬工程」の後の「乾燥工程」では、例えば水を用いて紙を洗浄することにより、過剰のイオン液体を除去して紙を乾燥させる。この乾燥には、プレス乾燥を用いることができる。プレス乾燥は、105[℃]、1.1[MPa]の条件で行うことが望ましく、これによって紙が保有する水分を簡便に除去することができる。
なお、この「乾燥工程」は、他の条件により、例えば自然乾燥によって実施しても良い。
以上のように、本発明では、「部分溶解工程」、「塗布工程」または「含浸工程」の何れかを実施し、その後に「貧溶媒浸漬工程」を少なくとも実施することにより、セルロースのみからなる湿潤強度に優れた紙の製造が可能となる。
次に、本発明の実施例1〜3を比較例1〜10と共に説明する。なお、各実施例及び比較例により調製したサンプル(ろ紙)に対する機能評価として、以下のように、ほぐれやすさ試験、乾燥紙力試験及び湿潤紙力試験を行い、更に、湿潤引張強さ残留率を算出した。
(a)ほぐれやすさ試験
100[mL]の蒸留水が入ったサンプル管瓶(110[mL])に調製したサンプルを入れ、瓶を手で持って往復で50回、一定速度で振とうさせた後、サンプルの状態を観察した。
(b)乾燥紙力試験
50[mm]×20[mm]のサンプルを用いて引張試験を行った。引張試験は、A&D社製のSTB−1225Sを用いて、試験速度10[mm/min]、チャンク間距離25[mm]にて行い、以下の数式1により乾燥紙力強度を算出した。
[数式1]
乾燥紙力強度[kN/m]= 最大荷重[N]/ サンプル幅[mm]
(c)湿潤紙力試験
50[mm]×20[mm]のサンプルを、蒸留水に1 時間浸漬させた。浸漬後、サンプルを水中から取り出して吸水紙の上に置き、更に別の吸水紙を上に載せ、軽く押さえて余分な水分を除いた。この後、直ちに引張試験を行った。引張試験条件は、乾燥紙力試験と同様である。
次に、以下の数式2により湿潤紙力強度を算出した。
[数式2]
湿潤紙力強度[kN/m]=最大荷重[N]/ サンプル幅[mm]
(d)湿潤引張強さ残留率の算出
更に、湿潤紙力強度と乾燥紙力強度との比である湿潤引張強さ残留率を、以下の数式3により算出した。
[数式3]
湿潤引張強さ残留率[%]=湿潤紙力強度[kN/m]/ 乾燥紙力強度[kN/m]×100
次いで、実施例1〜実施例3により本発明を具体的に説明する。なお、いわゆる当業者の技術常識に照らし、本発明が以下の各実施例における実験条件に限定されないのは言うまでもない。
(1)本発明に係る部分溶解法(「部分溶解工程」,「貧溶媒浸漬工程」及び「乾燥工程」を有する製造方法)
イオン液体である1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド20[g](>95[%]、Aldrich製)をφ90[mm]のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製シャーレに入れ、ホットプレートを用いて80[℃]まで加温した。イオン液体が固体から液体になったことを確認した後、イオン液体にサンプルとなるろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を12.5[sec]、20[sec]、30[sec]にわたり、全体的に含浸処理して3種類のサンプルを作製した。そして、各サンプルを貧溶媒であるエタノールに1分間浸漬後、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。
その後、各サンプルを蒸留水に1分間浸漬した後、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去し、110[℃]、1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行うことにより、各サンプルを調製した。
(2)比較例1
サンプルとなるろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を貧溶媒としてのエタノールに1分間浸漬後、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。そして、サンプルとなるろ紙を蒸留水に1分間浸漬した後、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。その後、110[℃]、1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行ってサンプルを調製した。
なお、この比較例1では、サンプルへのイオン液体の含浸処理を行っていない。
(3)比較例2
ろ紙へのイオン液体(1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド)の含浸時間を5[sec]とし、それ以外の工程を実施例1と同様に行って調製したサンプルを比較例2とした。
(4)比較例3
ろ紙へのイオン液体(1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド)の含浸時間を40[sec]とし、それ以外の工程を実施例1と同様に行って調製したサンプルを比較例3とした。
なお、この比較例3では、シート形状を維持することが困難であった。これは、イオン液体の含浸時間が長かったため、セルロースの溶解が進行し過ぎた結果と考えられる。
表1は、実施例1における各サンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示しており、表2は、比較例1,2における各サンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示している。
表1及び表2によれば、実施例1、比較例1,2の乾燥紙力強度は、イオン液体の含浸時間が長くなるにつれて低くなっている。これは、イオン液体によるセルロースの溶解量が、含浸時間が長くなるほど増加し、乾燥紙力強度に影響を及ぼすセルロース繊維間の水素結合が切断されたためと考えられる。
実施例1において、含浸時間が12.5[sec]、20[sec]の場合には、比較例1,2よりも湿潤紙力強度が高くなっており、含浸時間が20[sec]の場合に最大値を示している。
更に、実施例1では、湿潤引張強さ残留率が何れの場合も20[%]以上であり、比較例1,2よりも大幅に高くなっている。
また、図1は、実施例1,比較例1及び比較例2のほぐれやすさ試験の結果を示している。
比較例1では、50回振とう後にシート形状を維持することが困難であった。比較例2では、サンプルの一部分に破れが確認された。
一方、実施例1では、含浸時間の長短に関わらず破れが確認されなかった。特に、実施例1においては、含浸時間が20[sec],30[sec]の場合でもシート形状を完全に維持することができた。
上記のように、実施例1によれば、イオン液体による紙の部分溶解により湿潤紙力強度の向上が可能である。これは、イオン液体により紙のセルロースが一部溶解し、セルロースにフィルム化が生じた結果、このセルロースフィルムが有する繊維結合維持機能により、湿潤紙力強度が向上したものと考えられる。
比較例1〜3からも明らかなように、イオン液体への含浸時間は、5[sec]ではセルロースの溶解量が少なく、40[sec]以上ではシート形状を維持することが困難なため、好ましくは12.5〜30[sec]、より好ましくは12.5〜20[sec]である。
(1)本発明に係る塗布法(「塗布工程」,「貧溶媒浸漬工程」及び「乾燥工程」を有する製造方法)
イオン液体である1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド20[g]をPTFE製ビーカーに入れ、スターラー付ウォーターバスを用いて100[℃]に加温した。イオン液体が固体から液体になったことを確認した後、100[℃]のイオン液体にろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を0.25 [g](1.25[wt%])入れ、一定速度(250[rpm])で2時間、撹拌しながら溶解させた。次に、溶解したセルロースを、サンプルとなるろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製、0.29[g])に塗布して、5[sec]静置した。この静置後のろ紙を、貧溶媒であるエタノールに1分間浸漬し、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。
その後、ろ紙を蒸留水に1分間浸漬し、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した後、110[℃],1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行ってサンプルを調製した。
処理前後のろ紙の重量差を測定することにより算出したセルロース塗布量は、0.11[g]であった。
(2)比較例4
1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド20[g]をPTFE製ビーカーに入れ、スターラー付ウォーターバスを用いて100[℃]に加温した。イオン液体が固体から液体になったことを確認した後、イオン液体をサンプルとなるろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)に塗布し、5[sec]静置した。この静置後のろ紙を、貧溶媒であるエタノールに1分間浸漬後、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。次に、ろ紙を蒸留水に1分間浸漬し、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。その後、110[℃]、1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行ってサンプルを調製した。
(3)比較例5
イオン液体(1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド)にろ紙 0.1[g](0.5[wt%])を溶解し、それ以外の工程を実施例2と同様に行って調製したサンプルを比較例5とした。
(4)比較例6
イオン液体(1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムクロライド)にろ紙 0.5[g](2.5[wt%])を溶解し、それ以外の工程を実施例2と同様に行って調製したサンプルを比較例6とした。
なお、この比較例6では、セルロースが溶解したイオン液体の粘度が高く、塗布が困難であり、紙を作製できなかった。
表3は、実施例2及び比較例4,5における各サンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示している。
実施例2の乾燥紙力強度は、比較例4,5よりも低くなっている。これは、溶解したセルロースをろ紙に塗布したことにより、セルロース繊維間の水素結合力が低下したものと考えられる。
実施例2の湿潤紙力強度は、比較例1,2,4,5よりも高い値を示した。また、実施例2の湿潤引張強さ残留率は、比較例1,2,4,5よりも大幅に高い値を示した。
また、図2は、実施例2、比較例1、比較例4及び比較例5のほぐれやすさ試験の結果を示している。
実施例2により、イオン液体で溶解したセルロースをろ紙に塗布した場合、比較例1,4,5と比較すると、明らかにシート形状を維持することが可能になっている。比較例5の湿潤引張強さ残留率は、15[%]を超えている。しかしながら、ほぐれやすさ試験では、シート形状を維持することが困難であった。このことから、比較例5はセルロースの塗布量が少ないことが原因と思われる。よって、不適とした。
この実施例2によれば、イオン液体により溶解したセルロースをろ紙に塗布することにより、セルロース膜がろ紙の表面に生成され、このセルロース膜の繊維結合維持機能により、湿潤紙力強度の発現が可能になった。湿潤紙力強度を付与するためのセルロースの塗布量、言い換えれば、イオン液体におけるセルロース濃度は、比較例5のように0.5[wt%]では少なく、比較例6のように2.5[wt%]を超えると粘度が高くなって塗布が困難となり、不適であった。すなわち、セルロース濃度は、実施例2のように1.25[wt%]とした場合が最適であった。
(1)本発明に係る含浸法(「含浸工程」,「貧溶媒浸漬工程」及び「乾燥工程」を有する製造方法)
イオン液体である1−ブチル−3−メチル-イミダゾリウムクロライド20[g]をPTFE製ビーカーに入れ、スターラー付ウォーターバスを用いて100[℃]に加温した。イオン液体が固体から液体になったことを確認した後、イオン液体に、農業廃棄物としての廃棄ユズ果皮(YP−02、四国総合研究所製)をそれぞれ0.25[g](1.25[wt%])、0.5[g](2.5[wt%])入れて2種類のサンプル溶液を作製し、一定速度(250[rpm])で撹拌しながら溶解した。
次いで、各サンプル溶液に溶解した廃棄ユズ果皮中のセルロースを、ろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)にそれぞれ4[sec]含浸させて2種類のサンプルを作製した。更に、含浸後の各サンプルを貧溶媒としてのエタノールに1分間浸漬した後、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。次に、各サンプルを蒸留水に1分間浸漬した後、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去し、その後、110[℃]、1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行って各サンプルを調製した。
(2)比較例7
1−ブチル−3−メチル-イミダゾリウムクロライド20[g]をPTFE製ビーカーに入れ、スターラー付ウォーターバスを用いて100[℃]に加温した。イオン液体が固体から液体になったことを確認した後、このイオン液体をろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)に4[sec]含浸させた。その後、ろ紙を貧溶媒であるエタノールに1分間浸漬した後、過剰のエタノールをろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。
更に、ろ紙を蒸留水に1分間浸漬した後、過剰の蒸留水をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去し、その後、110[℃]、1.1[MPa]の条件で5分間、プレス乾燥を行ってサンプルを調製した。
(3)比較例8
イオン液体(1−ブチル−3−メチル-イミダゾリウムクロライド)に廃棄ユズ果皮0.1[g](0.5[wt%])を溶解し、それ以外の工程を実施例3と同様に行って調製したサンプルを比較例8とした。
(4)比較例9
イオン液体(1−ブチル−3−メチル-イミダゾリウムクロライド)に廃棄ユズ果皮0.75[g](3.75[wt%])を溶解し、それ以外の工程を実施例3と同様に行って調製したサンプルを比較例9とした。
なお、この比較例9では、廃棄ユズ果皮の粘度が高過ぎてろ紙への含浸が困難であり、サンプルの調製が困難であった。
表4は、実施例3におけるサンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示しており、表5は、比較例7,8における各サンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示している。
実施例3の乾燥紙力強度は、比較例7,8よりも低くなっている。これは、溶解したセルロースをろ紙に含浸させたことにより、セルロース繊維間の水素結合力が低下したものと考えられる。
また、実施例3の湿潤紙力強度は、比較例1,7,8よりも高くなっていると共に、湿潤引張強さ残留率も30[%]以上であり、高い湿潤強度を有する紙を提供することが可能である。
更に、図3は、実施例3,比較例1及び比較例8のほぐれやすさ試験の結果を示している。
実施例3のうち、廃棄ユズ果皮をイオン液体中に0.5[g](2.5[wt%])溶解させたサンプルでは、その他のサンプルと比べてシート形状を良好に維持できている。
上記のように、実施例3では、廃棄ユズ果皮中のセルロースをイオン液体に溶解し、溶解した廃棄ユズ果皮のセルロースにろ紙を浸漬することにより、セルロース膜がろ紙表面に生成され、そのセルロース膜の繊維結合維持機能により、湿潤紙力強度の発現が可能になった。特に、廃棄ユズ果皮の量が1.25[wt%]のイオン液体に浸漬した条件で、最も高い湿潤紙力強度をろ紙に付与することができた。
比較例8,9から、廃棄ユズ果皮の量が0.5[wt%]以下ではセルロース濃度が小さく、ろ紙への湿潤強度の付与が困難であり、廃棄ユズ果皮の量が3.75[wt%]以上では粘度が高くなり、ろ紙の浸漬が困難になって紙を製造することができなかった。
(5)比較例10
前述したイオン液体とは異なる天然高分子として、カルボキシメチルセルロース(CMC)(和光純薬社製)、ペクチン(PEC)(和光純薬社製)、溶性デンプン(STA)(和光純薬社製)を2.5[%]になるように3種類の水溶液を作製した。これらの水溶液をサンプルとなるろ紙(φ55[mm]、NO.2、ADVANTEC製)にそれぞれ塗布後、過剰の水溶液をろ紙(φ90[mm]、NO.2、ADVANTEC製)を用いて除去した。その後、110[℃]、1.1[MP]の条件で5分間、プレス乾燥を行って3種類のサンプルを調製した。
表6は、この比較例10における各サンプルの乾燥紙力強度、湿潤紙力強度、湿潤引張強さ残留率を示しており、図4は、比較例1,10におけるほぐれ易さ試験の結果を示している。
表6によれば、比較例10の全てのサンプルの乾燥紙力強度は表2の比較例1よりも向上している。一方、湿潤紙力強度は、比較例1と同等であるが、実施例1〜3と比較すると低くなっており、湿潤引張強さ残留率も同様である。このため、CMCやPEC、STA等の天然高分子には、湿潤紙力強度を向上させる機能は認められなかった。
更に、図4から明らかなように、比較例10においても、比較例1と同様にシート形状を維持することが困難であった。
以上述べたように、本発明によれば、すべてセルロースにより構成された湿潤強度を有する紙を提供することができ、湿潤強度や環境保護が求められる衛材用品、梱包材料など、各種用途の紙の製造に利用することができる。

Claims (7)

  1. オン液体に溶解させたセルロースを紙に塗布する塗布工程と、前記塗布工程を経た紙を貧溶媒に浸漬する貧溶媒浸漬工程と、を含むことを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  2. イオン液体に溶解させたセルロースを紙に含浸させる含浸工程と、前記含浸工程を経た紙を貧溶媒に浸漬する貧溶媒浸漬工程と、を含むことを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、
    前記貧溶媒浸漬工程を経た紙を乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、
    前記イオン液体に溶解させるセルロースの濃度が1.25〜2.5[wt%]であることを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、
    前記イオン液体に溶解させるセルロースが、木材パルプ、または、セルロースを含む製紙スラッジもしくは農業廃棄物であることを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、
    前記貧溶媒浸漬工程に使用する貧溶媒がセルロースの貧溶媒であることを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
  7. 請求項3に記載した湿潤強度を有する紙の製造方法において、
    前記乾燥工程が、110[℃]、1.1[Mpa]、5分間の条件で行うプレス乾燥を含むことを特徴とする、湿潤強度を有する紙の製造方法。
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