以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図10〜図12は実物の寸法の縦横比を正確に表示しているが、これらを除いては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いに他から区別されるものではない。例えば、「基材シート」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「基材シート」は、「基材板(基板)」や「基材フィルム」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて互いに区別され得ない。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味である場合も含むが、これのみに縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図18は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1はタッチパネル装置及び表示装置を概略的に示す図であり、図2はタッチパネル装置のタッチパネルセンサを示す平面図であり、図3及び図4はタッチパネルセンサの層構成を例示する図面であり、図5〜7はタッチパネルセンサの導電性メッシュを示す平面図であり、図8及び図9は導電性メッシュのパターンの決定方法を説明するための図である。図10〜図17は、導電性メッシュのパターンから参照メッシュパターンを特定する方法の一例を説明する図である。
図1に示すように、タッチパネル装置20は、画像表示機構(例えば液晶表示装置)12とともに組み合わせられて用いられ、表示装置10を構成している。画像表示機構12は、画像を表示することができる表示領域A1と、表示領域A1を取り囲むようにして表示領域A1の外側に配置された非表示領域(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。タッチパネル装置20は、タッチパネルセンサ30を含んでいる。タッチパネルセンサ30は、画像表示機構12の表示面12aに対面する位置に配置されている。以下においては、タッチパネル装置20が、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成された例について説明する。
図2に示すように、投影型容量結合方式として構成されたタッチパネルセンサ30は、その法線方向に沿って離間して配置された第1電極40及び第2電極50を有している。図3に示すように、タッチパネルセンサ30は、両側の表面上に第1電極40及び第2電極50がそれぞれ形成された一枚の基材シート35を含むようにしてもよい。また一変形例として、図4に示すように、タッチパネルセンサ30は、第1電極40が形成された第1透明基材35aと、第2電極50が形成された第2透明基材35bと、の二枚の透明基材35を含むようにしてもよい。なお、以下においては、図3に示された層構成について説明していくが、図4に示された例において、第1電極40及び第2電極50は、以下に説明する方法にて、第1透明基材35a及び第2透明基材35b上にそれぞれ作製することができる。また、図4に示された例において、第1基材シート35a及び第2基材シート35bは、以下に説明するタッチパネルセンサ30の基材シート35と同様に構成され得る。
基材シート35(図4の形態に於いて、基材シート35a及び基材シート35bを意味する。以下、同樣。)は、電極40,50を支持する基材として機能し、且つ、タッチパネルセンサ30における誘電体としても機能する。図2に示すように、基材シート35は、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1に隣接し、其の周縁部を囲繞する非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。図1に示すように、タッチパネルセンサ30のアクティブエリアAa1は、画像表示機構12の表示領域A1に対面する領域を占めている。一方、非アクティブエリアAa2は、矩形状のアクティブエリアAa1を四方から周状に取り囲むように、言い換えると、額縁状に形成されている。この非アクティブエリアAa2は、画像表示機構12の非表示領域A2に対面する領域に形成されている。
アクティブエリアAa1を介して画像表示機構12の画像を観察することができるよう、基材シート35は、透明または半透明となっている。基材シート35は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。なお、基材シート35の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
基材シート35は、例えば、誘電体として機能し得るガラスや樹脂フィルムから構成され得る。樹脂フィルムとしては、光学部材の基材として使用されている種々の樹脂フィルムを好適に用いることができる。一例として、複屈折性を有さない光学等方性のフィルム、典型的には、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムを、基材シート35として用いることができる。その一方で、複屈折性を有する光学異方性のフィルムも、基材シート35として用いることができる。例えば、安価で安定性に優れた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを、基材シート35として用いることができる。ポリエステルフィルムは、吸湿性が低く、高温多湿の環境化においても変形等が生じ難いといった利点を、有している。
次に、基材シート35上に設けられたタッチパネルセンサ30の第1電極40及び第2電極50について説明する。なお、本実施の形態での説明において、第1電極に関連して四十番台の符号を使用し、第2電極に関連して五十番台の符号を使用している。「第1」又は「第2」との用語を用いることなく四十番台及び五十番台の双方の符号を付して行う説明は、第1電極40及び第2電極50の双方に当てはまる説明とする。
図2に示すように、基材シート35の一方の側(観察者側)の面上には、多数の第1電極40が設けられている。また、基材シート35の他方の側(画像表示機構12の側)の面上には、多数の第2電極50が設けられている。各電極40,50は、位置検出に用いられる検出電極41,51と、検出電極41,51に接続された取出電極(取出配線)42,52と、を有している。検出電極41,51は、パターンをなすようにしてアクティブエリアAa1内に配置されている。一方、取出電極42,52は、非アクティブエリアAa2内に配置されている。
取出電極42,52は、検出電極41,51の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一つまたは二つ設けられている。各取出電極42,52は、対応する検出電極41,51に接続されて配線を形成している。取出電極42,52は、基材シート35の非アクティブエリアAa2内を、対応する検出電極41,51から基材シート35の端縁まで延びている。そして、取出電極42,52の検出電極41,51とは反対側の端部に、端子部42a,52aが形成されている。取出電極42,52は、その端子部42a,52aにて、図示しない外部接続配線(例えば、FPC)を介し、制御回路(図示せず)に接続される。
第1検出電極41は、基材シート35の一方の側の面上に所定のパターンで配置されている。また、第2検出電極51は、基材シート35の他方の側の面上に、第1検出電極41とは異なるパターンで配置されている。図示された例において、第1検出電極41は、ストライプ状に配列され、且つ、その配列方向に直交する方向に直線状に延びている。また、第2検出電極51も、ストライプ状に配列され、且つ、その配列方向に直交する方向に直線状に延びている。第1検出電極41の配列方向と第2検出電極51の配列方向とは互いに直交している。
検出電極41,51は、外部導体がタッチパネルセンサ30に接近した際に生じる、電磁的な変化または静電容量の変化を検知するために設けられるものである。従って、検出電極41,51には、電磁的な変化または静電容量の変化に起因する電流を検知可能なレベルで流すことができる程度の導電性が求められる。このような検出電極41,51を構成するための材料として、優れた導電性を有する金属材料、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの合金の一以上を用いることができる。
一方、これらの金属材料は、可視光に対して遮光性を有している。そこで、検出電極41,51は、図5及び図6の如く導線44,54が多数の開口領域46,56を画成するメッシュパターンにて配置されてなる導電性メッシュ45,55を含んでいる。とりわけ図2に示された例においては、各検出電極41,51が、細長い領域に形成された導電性メッシュ45,55から形成されている。導線44,54の線幅は、1μm以上30μm以下とすることができる。また、導電性メッシュ45,55の開口率は、90%以上99%以下とすることができる。また、開口領域46,56の周期は、200μm以上1000μm以下とすることができる。
アクティブエリアAa1の全域にメッシュ状導電体が設けられ、各検出電極41,51の輪郭に対応して、メッシュ状導電体をなす導線44,54を断線させることにより、各検出電極41,51をなす導電性メッシュ45,55が形成され得る。すなわち、導電性メッシュ45,55は、アクティブエリアAa1の全域に広がるメッシュ状導電体を断線部にて断線していくことによって区画される複数のメッシュパターンの各々に対応している。各導電性メッシュ45,55は、多数の開口領域46,56を画成している。そして、導電性メッシュ45,55は、二つの分岐点47,57の間を延びて開口領域46,56を画成する多数の接続要素48,58から形成されている。すなわち、分岐点47,57は、三つ以上の接続要素48,58の一端が合流している点である。
ところで、図18に示すように、タッチパネルセンサ30と重ねて配置される画像表示機構12の表示領域A1には、画像を形成するための画素Pが周期的に配列されている。一般的には、画像表示機構12の設置状態における水平方向(図18における方向dx)及び水平方向に直交する方向dy(例えば鉛直方向)の両方に、一定の周期で画素Pが配列されている。なお、図18に示された例のように、一般的に、各画素Pは、複数のサブ画素RP,GP,BPを含んでいる。画素配列を有する画像表示機構12に導電性メッシュ45,55を有したタッチパネルセンサ30が積層されると、導電性メッシュ45,55の開口領域46,56が周期的に配列されている場合、即ち、画素Pの周期的配列パターンと導電性メッシュ45,55の開口領域46,56の配列パターンとに起因した縞状の模様、すなわちモアレが視認される可能性がある。
一般的に、導電性メッシュのパターンを非周期化する、即ち、開口領域46、55の隣接するもの同志の間隔を導電メッシュ全域内に於いて一定では無くし、分布を持たせることが、モアレの不可視化に有効であると考えられてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、単に導電性メッシュのパターンの形状及び配列周期を非周期化したとしても、常に、モアレを十分に目立たなくさせることはできなかった。また、導電性メッシュ45,55の開口領域46,56の配列の周期性を大きく崩すことによって、すなわち、開口領域46,56を非周期的に配列することによってモアレを目立たなくすることができたとしても、開口領域46,56の密度バラツキに起因した濃淡のむらが視認される可能性もある。そして、背景技術の節で説明したように、モアレ又は濃淡むらの不可視化対策が種々研究されてきたが、モアレ及び濃淡むらの双方を効果的に目立たなくさせるには至っていなかった。
一方、本件発明者らは、開口領域46,56の形状又は開口面積に着目して、鋭意研究を重ねた。その結果として、本件発明者らは、開口領域46,56の形状又は開口面積のばらつきに制約を課すことにより、モアレを極めて効果的に目立たなくさせること可能となること、同時に、濃淡むらを極めて効果的に目立たなくさせることの両方が可能となることを知見した。このような作用効果は、モアレの不可視化として単にパターンの非周期化を実施し、その一方で、濃淡むらの不可視化として単にパターンの周期化を実施し、結果として、モアレ及び濃淡むらの双方を不可視化することができていなかった従来の技術水準からして、予測される範囲を超えた顕著な効果であると言える。
図5には、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45の一例が示されており、図6には、第2検出電極51をなす導電性メッシュ55の一例が示されている。これらの導電性メッシュ45,55のパターンは、二つの交点62,67の間を延びて開口領域(開口部)61,66を画成する複数の線分63,68から形成された参照メッシュパターン60,65(図8及び図9参照)を基礎にして、決定されている。此処で、参照メッシュパターン60、65は仮想上のパターンであり実在はしない。一方、導電性メッシュ45、55は実在の物体(金屬材料からなる実在のパターン)である。そして、仮想的な参照メシュパタ−ン60、65は、実在の導電性メシュ45、55を設計、製造する中間工程で用いる手段として利用される。導電性メッシュ45、55と其の参照メッシュパターン60、65とは、それ故、互いに特定の位置及び形状の対応関係を有する。より具体的には、これらの導電性メッシュ45,55のパターンは、開口領域61,66が周期的に配列されてなる、言い換えると、開口領域61,66が周期性を持って配列されてなる参照メッシュパターン60,65を基礎として、濃淡むらを引き起こさないように開口領域61,66の配置位置の均一性を維持しつつ、その一方でモアレを十分に不可視化できる程度に、開口領域61,66の形状を変化させて当該開口領域61,66の開口面積をばらつかせることにより、決定されている。
そして、図5及び図6に示された例において、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55は、同一パターンの参照メッシュパターン60,65を基礎として、そのパターンを決定されている。したがって、図5及び図6に示すように、参照メッシュパターン60,65の周期性が大きく崩されていない状態において、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55は、概ね同様のパターンとなっている。
図2に示された例において、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55は、大部分において、重なり合って配置される。そして、このように重なり合う部分において、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55は、図8及び図9に示すように、それぞれを生成する参照メッシュパターン60,65が、開口領域61,66の配列方向に、当該開口領域61,66の配列周期の半分の長さだけ変位して配置されるようにして、互いに対して位置決めされている。結果として、図7に示すように、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55は、互いに重ね合わされた状態において、或る程度の周期性を残したパターンを形成している。
なお、モアレは、第1検出電極41をなす導電性メッシュ45及び第2検出電極51をなす導電性メッシュ55を重ねて形成されるパターンと、他の部材の周期的なパターン(例えば、画像表示機構12の画素Pの配列パターン)との干渉によって生じるとともに、第1検出電極41,第2検出電極51の各々単独によって形成されるパターンと、他の部材の周期的なパターンとの干渉によっても生じる。同様に、濃淡むらは、第1検出電極41によって形成されるパターン及び第2検出電極51によって形成されるパターンを重ねてなるパターンの局所的な不均一性によっても生じるし、また、各電極40,50の検出電極41,51の各々単独によって形成されるパターンの局所的な不均一性によっても生じ得る。したがって、第1検出電極41によって形成されるパターン及び第2検出電極51によって形成されるパターンを重ねてなるパターンを工夫することにより、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効であるとともに、各電極40,50をなす検出電極41,51によって形成されるパターンのいずれか一以上を工夫することによっても、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効である。
ここで、以上に説明した導電性メッシュ45のパターンの決定方法の一例について説明する。以下に説明する方法では、二つの交点62,67の間を延びて開口領域61,66を画成する複数の線分63,68から形成され参照メッシュパターン60,65を決定する工程と、参照メッシュパターン60,65の交点62,67に基づいて分岐点47,57の位置を決定する工程と、決定された分岐点47,57及び参照メッシュパターン60,65の線分63,68に基づき、接続要素48,58の位置を決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。
まず、参照メッシュパターン60,65を決定する工程において、導電性メッシュ45,55を生成する基礎(出発点)となる周期的なパターン、すなわち、参照メッシュパターン60,65を決定する。ここで決定される参照メッシュパターン60,65は、隣接する二つの交点62,67の間を延びて開口領域61,66を画成する複数の線分63,68から形成されている。この参照メッシュパターン60,65において、一定形状の開口領域61,66が交差する二以上の方向d1,d2に周期的に配列されている。なお、参照メッシュパターン60,65に複数種類の開口領域61,66が含まれ、各種の開口領域61,66が交差する二以上の方向に周期的に配列されるようにしてもよい。
図8及び図9に示すように、図示された参照メッシュパターン60,65では、一定の四角形形状の開口領域61,66が、隙間なく敷き詰められたパターンとなっている。開口領域61,66は、互いに交差する第1方向d1及び第2方向d2にそれぞれ一定周期で配列されている。とりわけ、図示された参照メッシュパターン60,65は、各々が第1方向d1に直線状に延び且つ第1方向d1に直交する方向に一定周期p1で配列された複数の第1の直線60a,65a群と、各々が第2方向d2に直線状に延び且つ第2方向d2に直交する方向に前記一定周期p1と同一の一定周期p2で配列された第2の直線60b,65b群と、によって画成されている。結果として、参照メッシュパターン60,65に含まれる開口領域61,66は、すべて同一の四角形形状、とりわけ菱形形状に形成されている。
また、図9に示すように、図示された例において、導電性メッシュ45を生成する参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは同一のパターンとなっている。図9に示すように、導電性メッシュ45を生成する基になる参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは、それぞれの第1方向d1が互いに平行となるように配置されている。また、導電性メッシュ45を生成する参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは、それぞれの第2方向d2が互いに平行となるように配置されている。さらに、導電性メッシュ45を生成する参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは、それぞれの第1の直線60a,65aの群が、第1方向d1に直交する方向に、一定周期p1の半分(p1/2)だけ互いから変位して配置されている。加えて、導電性メッシュ45を生成する参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは、それぞれの第2の直線60b,65bの群が、第2方向d2に直交する方向に、一定周期p2の半分(p2/2)だけ互いから変位して配置されている。この参照メッシュパターン60,65の決定によれば、参照メッシュパターン60,65に基づいて作製される二つの導電性メッシュ45,55が互いに重なり合って、開口している領域が或る程度の周期性を残しながらその一方で一定ではない形状を持つようになるメッシュパターンを示すようになる。すなわち、導電性メッシュ45,55は、単独の状態だけでなく重ね合わせた状態においても、開口領域が或る程度均一に分散したパターンを呈するようになる。
ところで、一般に、画像表示機構12の画素配列とタッチパネルセンサ30の導電性メッシュ45,55との干渉によるモアレを不可視化する観点からは、画像表示機構12における画素の配列方向dx,dyに対し、タッチパネルセンサ30の開口領域46,56の配列方向を傾斜させることが好ましいとされている。一方、本件発明者らが実験を繰り返したところ、図18に示された正方格子配列された画素Pとのモアレを不可視化する上では、さらに、画素の対角線方向doに対しても、タッチパネルセンサ30の開口領域46,56の配列方向を傾斜させることが有効であった。これは、図18に示すように、画素Pの対角線上となる位置に、画素Pを画成する遮光部(例えばブラックマトリクス)13の幅太部13aが並び、一定間隔で並べられた遮光部13の幅太部13aと開口領域46,56とのモアレが生じ易くなるためと考えられる。
正方格子配列された一般的な画素Pは、平面視において正方形形状を有している。このような画素Pを用いた場合、対角線方向doは、画素配列方向dx,dyに対して45°傾斜する。そして、本件発明者が確認したところ、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域46,56の配列方向が、直交する画素配列方向dx,dyのうちの一方dxに対してなす角度が30°以上40°以下であることが好ましく、33°以上37°以下であることより好ましく、35°であることが最も好ましかった。言い換えると、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域46,56の配列方向が、直交する画素の配列方向dx,dyのうちの他方dyに対してなす角度が50°以上60°以下であることが好ましく、53°以上57°以下であることより好ましく、55°であることが最も好ましかった。
一方、ここで説明する導電性メッシュ45,55のパターン決定方法において、導電性メッシュ45,55の開口領域46,56は、概ね、参照メッシュパターン60,65の開口領域61,66の配列方向に従うようになる。そして、参照メッシュパターン60,65における開口領域61,66の配列方向は、第1方向d1及び第2方向d2となる。したがって、参照メッシュパターン60,65に含まれる開口領域61,66の向きを決める第1方向d1及び第2方向d2は、直交する画素Pの配列方向dx,dyのうちの一方dxに対して30°以上40°以下の角度をなすことが好ましく、33°以上37°以下の角度をなすことがより好ましく、図8及び図9に示すように35°の角度θ1x,θ2xをなすことが最も好ましい。したがって、第1方向d1及び第2方向d2が互いに対してなす角度θxは、60°以上80°以下であることが好ましく、66°以上74°以下であることがより好ましく、図8及び図9に示すように70°であることが最も好ましい。また、参照メッシュパターン60,65に含まれる開口領域61,66の向きを決める第1方向d1及び第2方向d2は、直交する画素の配列方向のうちの他方dyに対して50°以上60°以下の角度をなすことが好ましく、53°以上57°以下の角度をなすことがより好ましく、図8及び図9に示すように55°の角度θ1y,θ2yをなすことが最も好ましい。
次に、参照メッシュパターン60,65の交点62,67(これらは仮想的な点)に基づいて分岐点47,57(こちらは実在の点)の位置を決定する工程について説明する。この工程では、参照メッシュパターン60,65の一つの交点62,67から、一つの分岐点47,57の位置を決定する。具体的には、各分岐点47,57は、参照メッシュパターン60,65の対応する交点62,67上に配置されるか、或いは、当該対応する交点62,67上から所定長さ以下の長さだけ変位した位置に、配置される。この際、各分岐点47,57の対応する交点62,67からの変位量および変位する方向即ち変位ベクトルのd1成分及びd2成分を確立変数により不規則的に分布するように決定することにより、最終的に得られる導電性メッシュ45,55の開口領域46,56の形状が全域に亙って一定とはならず、モアレを効果的に目立たなくさせることができる。なお、不規則的に選択される変位量が0となった場合に、分岐点47,57が対応する交点62,67上に位置するように(両者の位置が位置するように)してもよい。ここで、該確率変数を与える確率分布(乃至確率密度函数)としては、正規分布、一樣分布等を選択することが出来、これら確率分布に屬する確率変数を所望の最大変位量の範囲内で採用すれば良い。
なお、各分岐点47,57の対応する交点62,67からの変位量は、接続要素48,58が他の接続要素に接触又は交叉することを回避すべく、開口領域61,66の配列周期の半分未満となっていることが好ましい。一つの接続要素48,58が他の接続要素と重なってしまうと、当該部分が視認されてしまい濃淡むらの原因となってしまう可能性があるからである。具体的には、接続要素48,58が他の接続要素に接触することを回避すべく、各分岐点47,57の対応する交点62,67からの変位量は、変位ベクトルの第1方向d1成分は第2の直線60b,65b群の配列周期p2の半分未満、且つ、第2方向d2成分は第1の直線60a,5a群の配列周期p1の半分未満とすることができる。斯くの如く、交点62、67と分岐点47、57との位置関係を満たすように変位させる為には、所定の確率分布の中から選出する確率変数の上限値を、各々p1/2未満、p2/2未満となるように制限すれば良い。
また、上述したように、図示された例では、導電性メッシュ45を生成する基となる参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する基となる参照メッシュパターン65とは、それぞれの第1の直線60a,65aの群が、第1方向d1に直交する配列方向に、一定周期p1の半分(p1/2)だけ変位して配置されている。加えて、導電性メッシュ45を生成する参照メッシュパターン60と、導電性メッシュ55を生成する参照メッシュパターン65とは、それぞれの第2の直線60b,65bの群が、第2方向d2に直交する配列方向に、一定周期p2の半分(p2/2)だけ変位して配置されている。このような例においては、導電性メッシュ45を生成する接続要素48と、導電性メッシュ55を生成する接続要素58とが接触してしまうことを回避すべく、各分岐点47,57の対応する交点62,67からの変位量のd1方向成分及びd2方向成分は、開口領域61,66の配列周期の1/4未満となっていることが好ましい。導電性メッシュ45を生成する接続要素48と、導電性メッシュ55を生成する接続要素58とが接触してしまうと、当該部分が視認されてしまい濃淡むらの原因となってしまう可能性があるからである。具体的には、導電性メッシュ45を生成する接続要素48と、導電性メッシュ55を生成する接続要素58とが接触してしまうことを回避すべく、各分岐点47,57の対応する交点62,67からの変位量は、変位ベクトルの第1方向d1成分は第2の直線60b,65b群の配列周期p2の1/4未満、且つ、第2方向d2成分は第1の直線60a,65a群の配列周期p1での1/4未満とすることができる。
さらに、各分岐点47,57について、対応する交点62,67からの変位量および変位する方向、即ち変位ベクトルのd1成分及びd2成分の両方をそれぞれ決定していくことに代えて、各分岐点47,57について、対応する交点62,67からの予め設定したd1、d2方向以外の他の二方向への変位量(以下、変位ベクトル成分とも呼稱する)をそれぞれ決定していくようにしてもよい。一例として、画像表示機構12の画素Pの配列方向dx,dyへの対応する交点62,67からの変位ベクトル成分δx,δy(図8参照)を、分岐点47,57毎に決定していくようにしてもよい。他の例として、四角形形状をなす開口領域61,66の二つの対角線方向に沿った変位ベクトル成分δx,δy(図8参照)を、分岐点毎47,57に決定していくようにしてもよい。なお、図示された実施の形態では、二つの対角線方向は、それぞれ、画像表示機構12の画素Pの配列方向dx,dyと平行になっている。
この例において、濃淡むらの発生を抑制する観点から画素Pの一方の配列方向dxに沿った開口領域61,66の配列周期pxの一定割合以下(例えば15%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から画素Pの一方の配列方向dxに沿った開口領域61,66の配列周期pxの一定割合以上(例えば2%以上)となるように変位ベクトル成分δxが決定されるようにし、且つ、濃淡むらの発生を抑制する観点から画素Pの他方の配列方向dyに沿った開口領域61,66の配列周期pyの一定割合以下(例えば15%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から画素Pの一方の配列方向dyに沿った開口領域61,66の配列周期pyの一定割合以上(例えば2%以上)となるように変位ベクトル成分δyが決定されるようにすることで、対応する交点62,67からの分岐点47,57の変位量に制約を課してもよい。
別の表現によれば、濃淡むらの発生を抑制する観点から開口領域61,66の一方の対角線と平行な方向dxに沿った当該開口領域61,66の一方の対角線の長さpxの一定割合以下(例えば15%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から開口領域61,66の一方の対角線と平行な方向dxに沿った当該開口領域61,66の一方の対角線の長さpxの一定割合以上(例えば2%以上)となるように変位ベクトル成分δxが決定されるようにし、且つ、濃淡むらの発生を抑制する観点から開口領域61,66の他方の対角線と平行な方向dyに沿った当該開口領域61,66の他方の対角線の長さpyの一定割合以下(例えば15%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から開口領域61,66の他方の対角線と平行な方向dyに沿った当該開口領域61,66の他方の対角線の長さpyの一定割合以上(例えば2%以上)となるように変位ベクトル成分δyが決定されるようにすることで、対応する交点62,67からの分岐点47,57の変位ベクトル成分に制約を課してもよい。尚、何れの場合に於いても、濃淡むら等の視覚上の欠点の解消の為、接続要素48、58同士が接触又は交叉しない為の前記の如き条件は満たすようにする。
次に、接続要素48,58の位置を決定する工程について説明する。以上のようにして、導電性メッシュ45,55における分岐点47,57の位置が決定すると、次に、決定された分岐点47,57に基づき、接続要素48,58の位置を決定する。具体的には、参照メッシュパターン60,65の或る一つ線分63,68の両端に位置する二つの交点62,67にそれぞれ対応する二つの分岐点47,57の間を延びるように、導電性メッシュ45,55の一つの接続要素48,58の位置を決定する。二つの分岐点47,57の間における接続要素48,58の経路は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、折れ線であってもよいし、直線及び曲線の組み合わせであってもよい。また、接続要素48,58の線幅は、上述したように0.2μm以上2μm以下とすることができるし、或いは、この範囲外の太さとしてもよい。
このようにして、電極40,50の検出電極41,51をなす導電性メッシュ45,55のメッシュパターンが形成される。導電性メッシュ45,55の分岐点47,57の位置が、周期性を有した参照メッシュパターン60,65の交点62,67の位置に基づいて決定されているため、得られた導電性メッシュ45,55において開口領域46,56が或る程度均一に分散して、濃淡むらの発生を抑制することが可能となる。ただし、分岐点47,57の位置は対応する交点62,67の位置から不規則的に選択された所定範囲内の量だけ変位している。したがって、得られた導電性メッシュ45,55において開口領域46,56の形状または開口面積の規則性または一定性が失われ、モアレによる不具合も回避することができる。
以上のようにしてパターンを決定された導電性メッシュ45,55は、基材シート35上に形成された金属薄膜を、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングすることにより、或いは導電性組成物から成るインキの印刷により基材シート35上に作製され得る。
なお、実際に作製された導電性メッシュ45,55から、次のようにして参照パターンを特定することができる。まず、実際に作製された導電性メッシュ45,55を顕微鏡で観察し、当該導電性メッシュ45,55のパターンの画像データを作成する。次に、得られた画像データを二次元空間座標(x、y)の函数としてフーリエ変換して空間周波数のパワースペクトル(以下、単にパワースペクトルとも呼稱する)を取得し、このパワースペクトルから参照メッシュパターン60,65を特定することができる。すなわち、この手法では、参照メッシュパターン60,65が、導電性メッシュ45,55のパターンのフーリエ変換パワースペクトル画像から、当該導電性メッシュ45,55のパターンに類似する周期的なパターンとして特定される。そして、参照パターンが特定されると、各交点の変位量を特定することも可能となる。
参照メッシュパターン60,65は、導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各角度での積算値分布から特定される第1ピーク角度θp1〔°〕及び第2ピーク角度θp2〔°〕、第1ピーク角度θp1〔°〕における導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各空間周波数での分布から特定される第1空間周波数、及び、第2ピーク角度θp2〔°〕における導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各空間周波数での分布から特定される第2空間周波数を用いて特定され得る。導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各角度での積算値分布は、平面スキャナを用いて作成した導電性メッシュ45,55のパターンを二次元の直交座標(x、y)に対する画像濃度値として読み込んだスキャンデータに、フーリエ変換および直交座標(x、y)を極座標(r、θ)に変換する極座標変換を施すことによって得られる。第1ピーク角度θp1〔°〕は、このパワースペクトルの各角度での積算値分布において0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が最も大きくなる角度である。また、第2ピーク角度θp2〔°〕は、このパワースペクトルの各角度での積算値分布において0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が二番目に大きくなる角である。第1空間周波数は、第1ピーク角度θp1〔°〕における導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各空間周波数での分布において基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のピークをなす周波数である。第2空間周波数は、第2ピーク角度θp2〔°〕における導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルの各空間周波数での分布において基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のピークをなす周波数である。
そして、参照メッシュパターン60,65は、導電性メッシュ45,55のパターンのスキャンデータから当該導電性メッシュ45,55のパターンのパワースペクトルを特定する際と同様に座標系を設定し、第1ピーク角度θp1〔°〕となる方向に、第1空間周波数に対応する長さとなる一定周期で配列された第1直線60a,65a群と、第2ピーク角度θp2〔°〕となる方向に、第2の空間周波数に対応する長さとなる一定周期で配列された第2直線群60b,65bと、によって形成されるパターンとして、特定され得る。
以下、主として図10〜図17を参照して、参照メッシュパターン60,65の特定方法について、詳述する。なお、図10〜図16は、図8及び図9を参照して説明した上述の方法により決定された第1検出電極41のメッシュパターンにて導電体メッシュ45を実際に作製し、当該作製された第1検出電極41の導電体メッシュ45についてのデータである。尚、第2検出電極51の導電性メッシュ55のデータについても、基本的には同様の挙動、特徴を有する為、其の図示は省略し、図10〜図16にて両検出電極41、51のデータを代表する。
最初に、導電体メッシュ45,55を平面スキャナでスキャンすることにより、導電体メッシュ45,55のパターンに関するスキャンデータを二次元空間座標(x、y)に対する画像濃度値の函数D(x、y)としての二次元画像として作成する。この際、実際に流通しているタッチパネルセンサ30の開口領域46,56の周期等を考慮して、導電体メッシュ45,55のパターンのスキャンデータを作成されるべき導電体メッシュ45,55の領域は、3cm×3cm以上の領域とすることが好ましい。また、導電体メッシュ45,55のパターンをなす導線(接続要素48,58)の線幅が複数ピクセルで構成されるよう、解像度を調整することが好ましい。線幅が複数ピクセルで構成されるような解像度であれば、実物には存在しない断線箇所がスキャンデータに形成されてしまうことを効果的に防止することができる。図10には、導電体メッシュ45,55のパターンのスキャンデータの一部が示されている。
導電体メッシュ45,55のパターンのスキャンデータD(x、y)を画像処理することにより、導電体メッシュ45,55のパターンのフーリエ変換パワースペクトルS0(x、y)からなる画像が作成される。この際、フーリエ変換パワースペクトル画像の作成精度を向上させるため、いくつかの画像上の処理が行われることが好ましい。
例えば、導電体メッシュ45,55をなす金属導線以外を示す低周波成分をスキャンデータから除去するため、スキャンデータをハイパス(高周波通過)フィルタを通して低周波成分の除去処理を行うことが好ましい。除去されるべき低周波成分としては、必然的に生じてしまう照明むらを例示することができる。図11には、図10に示された画像データD(x、y)から低周波成分除去した後に二値化処理した画像データDB(x、y)が示されている。
また、フーリエ変換パワースペクトル画像の作成精度を向上させる上で、フーリエ変換前に細線化処理を行っておくことも有効である。とりわけ上述したように、導電体メッシュ45,55のパターンをなす導線(接続要素53)の線幅が複数ピクセルで構成されている場合には、細線化処理が有効となる。
図12には、二値化処理および細線化処理を行った後のスキャンデータDN(x、y)が示されている。このスキャンデータDN(x、y)は、実際に作製された第1検出電極41の導電体メッシュ45における4155μm×4155μmの面積を有する領域についての画像データである。そして、図13には、図12に示されたスキャンデータDN(x、y)にフーリエ変換を施すことによって得られた直交座標系(x、y)に於けるフーリエ変換パワースペクトル画像S0(x、y)が、示されている。また、図14は、図13のフーリエ変換パワースペクトル画像を極座標変換して極座標(r、θ)に於けるフーリエ変換パワースペクトルS0(r、θ)を示している。なお、図12〜図14における座標系は、互いに同様に設定されており、図5〜図9に示された座標系とも同様に設定されている。また、図14における座標系の設定は、図13に示したとおりである。
図13及び図14の画像データから、各角度θ〔°〕での、導電体メッシュのパターンのパワースペクトルの分布が特定され得る。次に、各角度θ〔°〕毎にパワースペクトルを径r=0からr=∞迄(実際には、十分な精度で∞に近似されると判断する値迄)積分した値としてのパワースペクトルの積算値
を特定する。図15には、メッシュパターンのパワースペクトルの各角度θでの積算値S(θ)の分布が示されている。このパワースペクトル積算値分布において、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が最も大きくなる角度が第1ピーク角度θp1〔°〕であり、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が二番目に大きくなる角度が第2ピーク角度θp2〔°〕である。なお、パワースペクトル積算値分布において、積算値が最も大きくなる角度と二番目に大きくなる角度の区別が付かない場合には、いずれか一方を第1ピーク角度θp1とし、他方を第2ピーク角度θp2とすればよい。
ところで、第1ピーク角度θp1及び第2ピーク角度θp2を高精度に特定するため、いくつかの処理が積算値分布S(θ)に対して行われてもよい。例えば、パワースペクトル積算値分布に対して、周囲±10°の範囲で平滑化処理を行うようにし、特定の高周波成分を除去するようにしてもよい。このような処理によれば、パワースペクトルの積算値分布において極大値がより明確に現れるようになる。ぼかし処理には、ガウシアンフィルタを用いることができる。図15に示されたパワースペクトル積算値分布S(θ)は、ガウシアンフィルタを用いて±10°の角度範囲内にて平滑化処理を行った後の積算値分布である。
図15の積算値分布S(θ)において、第1ピーク角度θp1は125°となっており、第2ピーク角度θp2は55°となっている。メッシュパターン50のパワースペクトルの積算値分布S(θ)では、積算値のピークが現れる角度方向に、メッシュパターン50をなす金属導線が配列されていることを意味する。したがって、ピーク角度θp1,θp2が55°および125°に出現することから、図8及び図9に示されたθ1x=35°(θ=90°―55°)及びθ2x=35°(θ=125°―90°)の参照パターン60が高精度に特定されている。
次に、図16は、図10〜図15で対象としたパターンに関し、極座標において55°となる方向での、空間周波数に対するパワースペクトルの分布を示している。つまり、図16は、第2ピーク角度θp2における導電性メッシュ45のパターンのパワースペクトルの各空間周波数での分布を示している。上述したように、図示された例において、フーリエ変換パワースペクトル画像を取得した元の導電体メッシュ55の領域は、4155μm×4155μmの領域である。そして、基本周波数に対応する長さ、すなわち基本周波数(1〔cycle〕/4.155〔mm〕=0.24〔cycle/mm〕)での波長は4155μmとなる。一方、図16のパワースペクトル分布において、基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のパワースペクトルピークが現れる第2空間周波数は、1.9976〔cycle/mm〕である。したがって、第2空間周波数での波長は約500.6μm=1000μm/1.9976周期となる。図17に示すように、直線群の配列方向daa2は、極座標における基準方向(0°方向)となっていたx軸方向に対し、第2ピーク角度θp2である55°だけ反時計回り方向に傾斜した方向となる。そして、この直線群をなす直線60aは、その配列方向daa1に、第2空間周波数での波長(第2空間周波数に対応する長さ)となる500.6μmの周期Pa1で配列される。
なお、図17に示された参照メッシュパターン60では、一方の直線群と同様にして特定された他方の直線群も示されている。すなわち、他方の直線群の配列方向daa2は、極座標における基準方向(0°方向)となっていたx軸方向に対し、第1ピーク角度θp1である125°だけ反時計回り方向に傾斜した方向となっている。そして、他方の直線群をなす直線60bは、その配列方向daa2に、第1空間周波数に対応する長さと同一の周期Pa2で配列される。
以上のようにして、参照メッシュパターンをなすようになる直線群が特定され、結果としてこの直線群から参照メッシュパターンが特定される。上述してきた例では、図8に示された参照メッシュパターン60をなす複数の第1の直線60aが、一方の直線群として特定され、参照メッシュパターン60をなす複数の第2の直線60bが、他方の直線群として特定されたことになる。
以上のようにして、導電性メッシュ45,55のパターンから、参照メッシュパターン60,65を特定することができる。特定された参照メッシュパターン60,65と導電性メッシュ45,55のパターンとを比較することにより、導電性メッシュ45,55の各分岐点47,57についての参照メッシュパターン60,65の対応する交点62,67からの変位量を計測することができる。
以上のような本実施の形態によるタッチパネルセンサ30では、導電性メッシュ45,55の各分岐点47,57は、二つの交点62,67の間を延びて開口領域61,66を画成する複数の線分63,68から形成され開口領域61,66が周期的に配列されてなる参照メッシュパターン60,65の一つの交点62,67上または所定長さ以下となる長さだけ当該一つの交点62,67から変位した位置に位置しており、且つ、導電性メッシュ45,55の各接続要素48,58は、一つの線分63,68の両端に位置する二つの交点62,67にそれぞれ対応する二つの分岐点47,57の間を延びている。このようなタッチパネルセンサ30の導電性メッシュ45,55のパターンは、濃淡むらを引き起こさないように開口領域61,66の配置位置の均一性を維持しつつ、その一方でモアレを十分に不可視化できる程度に、開口領域61,66の形状をばらつかせることができる。結果として、得られたタッチパネルセンサ30の導電性メッシュ45,55を用いた際に、モアレ及び濃淡むらの双方を効果的に目立たなくさせることができる。
各分岐点47,57の交点62,67からの変位量が所定の長さ以下となっているか否かの判断は、全体的な傾向を反映し得ると期待される数の分岐点47,57について測定すればよく、通常であれば、100箇所測定すれば十分である。
ここで、本件発明者らが行ったモアレ及び濃淡むらの評価結果の一例について説明する。以下の実験では、図18に示された正方形の画素Pが正方格子配列されている画像表示機構12との組み合わせで、タッチパネルセンサ30のサンプルについて、モアレ及び濃淡むらに関する評価を行った。
サンプル1の導電体メッシュは、図8に示された参照メッシュパターン60と同一のパターンとした。すなわち、画素の一方の配列方向であるx軸方向(基準方向)に対して145°傾斜した方向に延びる第1の直線群と、x軸方向(基準方向)に対して35°傾斜した方向に延びる第2の直線群と、からなるパターンとした。第1の直線群に含まれる第1の直線60aは、その長手方向に直交する方向に500μmの周期で配列され、第2の直線群に含まれる第2の直線60bは、その長手方向に直交する方向に500μmの周期で配列されるようにした。したがって、サンプル1の導電体メッシュのパターンは、一定の菱形形状の開口領域が周期的に配列されてなるパターンとなっている。
一方、サンプル2〜7の導電体メッシュのパターンは、上述した参照メッシュパターンの周期性を崩すことにより作製した。参照メッシュパターンは、サンプル1の導電体メッシュのパターンとした。各サンプルのパターンの分岐点は、参照メッシュパターンの対応する交点をx軸方向およびx軸方向に直交するy軸方向のそれぞれ独立した変位量δx,δy(図8参照)だけずらすことにより決定していった。x軸方向への変位量δxは、開口領域の一方の対角線の長さに相当する開口領域のx軸方向への配列周期pxに基づいた制限を課して乱数表に従ってランダムに決定し、y軸方向への変位量δyは、開口領域の他方の対角線の長さに相当する開口領域のy軸方向への配列周期pyに基づいた制限を課して乱数表に従ってランダムに決定した。
具体的には、サンプル2のパターンでは、「0≦δx≦0.02×px」及び「0≦δy≦0.02×py」とした。サンプル3のパターンでは、「0≦δx≦0.05×px」及び「0≦δy≦0.05×py」とした。サンプル4のパターンでは、「0≦δx≦0.1×px」及び「0≦δy≦0.1×py」とした。サンプル5のパターンでは、「0≦δx≦0.15×px」及び「0≦δy≦0.15×py」とした。サンプル6のパターンでは、「0≦δx≦0.2×px」及び「0≦δy≦0.2×py」とした。サンプル7のパターンでは、「0≦δx≦0.3×px」及び「0≦δy≦0.3×py」とした。サンプル8のパターンでは、「0≦δx≦0.4×px」及び「0≦δy≦0.4×py」とした。
次に、各サンプルのパターンの接続要素は、参照パターンの一つの線分の両端に位置する二つの交点に対応する二つの分岐点の間を直線状に延びるようにした。そして、以上のようにして決定したパターンにて、サンプル2〜7に係る導電体メッシュを作製した。
各サンプルに係る導電体メッシュを、市販されている液晶表示装置の表示面上に配置して、モアレ及び濃淡むらの有無を確認した。液晶表示装置は、図18に示された画素配列と同様に、画素がx軸方向およびy軸方向の両方に同一の一定の周期で配列されていた。モアレ及び濃淡むらの有無の確認は、液晶表示装置が全面白色を表示した状態で行った。確認結果を表1に示す。表1の評価の欄は、次の基準で判断した結果を示している。
「×:モアレ又は濃淡むらが通常の使用において、問題となる程度に確認された。」
「○:モアレ又は濃淡むらが通常の使用において、問題となる程度に確認されなかった。」
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、適宜図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
上述した実施の形態の図2に示されたタッチパネルセンサ30では、各検出電極41,51がアクティブエリアAa1内に配置された細長い矩形状の導電性メッシュ45,55として形成されているが、これに限られない。検出電極41,51の構成は、種々の変更が可能である。図19に示された例では、各第1検出電極41が、その長手方向に間隔を明けて配列された多数の導電性メッシュ45,55と、隣り合う二つの導電性メッシュ45,55の間を接続する接続部43,53と、を有している。各検出電極41,51は、導電性メッシュ45,55および接続部43,53により、アクティブエリアAa1内を直線状に延びている。例えば、図1に於いては、導電性メッシュ45及び接続要素43は図の上下方向に延びている。各検出電極41,51が配置されている領域の幅は、導電性メッシュ45,55が設けられている部分において太くなっている。第1電極40に含まれる各第1検出電極41は、第2電極50に含まれる多数の第2検出電極51とは共に1枚の基材シート35の一方の面上に存在し、且つ其の延びる方向が互いに交差している。そして、図19に示すように、第1電極40の第1検出電極41は、その接続部43において、第2電極50の第2検出電極51の接続部53と間に図示はし無い絶縁層を介して交差している。したがって、第1検出電極41の導電性メッシュ45は、隣り合う二つの第2検出電極51の間に配置され、第2検出電極51の導電性メッシュ55は、隣り合う二つの第1検出電極41の間に配置されている。
また、上述した実施の形態において、参照メッシュパターン60,65の一例を示したが、上述した例に限られず、種々のパターンを採用することができる。例えば、参照メッシュパターン60,65がハニカムパターン(6方格子)として形成されていてもよい。また、上述したように、参照メッシュパターン60,65が、二種類以上の開口領域61,66を含み、各種の開口領域61,66が周期的に配列されているようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。