以下に、添付図面を参照して、本発明に係る圧下レベリング制御装置および圧下レベリング制御方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明を適用する圧延機の一例として、熱間圧延ラインにおける粗圧延装置の圧延機を例示するが、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(圧下レベリング制御装置)
まず、本発明の実施の形態に係る圧下レベリング制御装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る圧下レベリング制御装置の一構成例を示す図である。本実施の形態に係る圧下レベリング制御装置1は、例えば熱間圧延ラインにおいて複数の被圧延材を順次圧延する圧延機11の圧下レベリング量を制御するものであり、図1に示すように、入側キャンバー量測定部2と、出側キャンバー量測定部3と、記憶部4と、演算処理部5と、制御部6とを備える。
入側キャンバー量測定部2は、被圧延材の圧延機入側でのキャンバー量(以下、「入側キャンバー量」という)を測定するものである。本実施の形態において、入側キャンバー量測定部2は、撮像装置等を用いて構成され、図1に示すように、圧下レベリング制御対象である圧延機11の入側に配置される。入側キャンバー量測定部2は、圧延機11の圧延対象である複数の被圧延材のうち当材19と複数の先行材18とについて、圧延機11の入側における入側キャンバー量を測定する。
具体的には、入側キャンバー量測定部2は、圧延機11の入側に搬送された被圧延材のキャンバーの量および方向を撮像装置等によって光学的に検出し、得られた被圧延材のキャンバーの検出結果に対して所定の画像処理等を行う。これにより、入側キャンバー量測定部2は、圧延機11の入側における被圧延材の入側キャンバー量を測定する。この際、入側キャンバー量測定部2は、圧延機11の入側における被圧延材のキャンバーの方向を、入側キャンバー量の実測値に付される正負の符号によって区別する。入側キャンバー量測定部2は、上記のような被圧延材に対する入側キャンバー量の測定処理を複数の先行材18の各々について順次行い、これにより、圧延機11の入側における複数の先行材18の各入側キャンバー量を、その圧延順(搬送順)に各々測定する。また、入側キャンバー量測定部2は、上記のような被圧延材に対する入側キャンバー量の測定処理を当材19について行い、これにより、圧延機11の入側における当材19の入側キャンバー量を、その圧延順(複数の先行材18のうち直前の先行材に続く圧延順)に測定する。入側キャンバー量測定部2は、上述したように当材19および複数の先行材18の各入側キャンバー量をその圧延順に各々測定する都度、得られた入側キャンバー量の実測値を制御部6に送信する。
出側キャンバー量測定部3は、被圧延材の圧延機出側でのキャンバー量(以下、「出側キャンバー量」という)を測定するものである。本実施の形態において、出側キャンバー量測定部3は、撮像装置等を用いて構成され、図1に示すように、圧下レベリング制御対象である圧延機11の出側に配置される。出側キャンバー量測定部3は、圧延機11の圧延対象である複数の被圧延材のうち、圧延機11による圧延後の当材19と複数の先行材18とについて、圧延機11の出側における出側キャンバー量を測定する。
具体的には、出側キャンバー量測定部3は、複数の先行材18の各々について、上述した入側キャンバー量測定部2と同様の測定処理を順次行い、これにより、圧延機11の出側における複数の先行材18の出側キャンバー量を、その圧延順に各々測定する。また、出側キャンバー量測定部3は、圧延機11による圧延後の当材19について、上述した入側キャンバー量測定部2と同様の測定処理を行い、これにより、上記圧延後の当材19のキャンバー量を、その圧延順に測定する。ここで、上記圧延後の当材19は、これから圧延機11によって圧延される後続の被圧延材にとっては先行材に該当する。したがって、出側キャンバー量測定部3は、上記圧延後の当材19のキャンバー量を、圧延機11の出側における一先行材の出側キャンバー量として測定する。出側キャンバー量測定部3は、上述したように出側キャンバー量を測定する際、圧延機11の出側における被圧延材のキャンバーの方向を、出側キャンバー量の実測値に付される正負の符号によって区別する。出側キャンバー量測定部3は、上述したように一先行材としての圧延後の当材19および複数の先行材18の各出側キャンバー量をその圧延順に各々測定する都度、得られた出側キャンバー量の実測値を制御部6に送信する。
本実施の形態において、当材19は、圧延機11の圧延対象として熱間圧延ラインの搬送経路16に沿って順次搬送される複数の被圧延材のうち、圧延機11によって今回圧延される被圧延材である。複数の先行材18の各々は、これら複数の被圧延材のうち、当材19に先行して圧延機11により圧延される被圧延材である。このような複数の先行材18には、当材19の直ぐ前に先行する直前の先行材のみならず、この直前の先行材よりも更に前に先行する各先行材(例えば全ての先行材)も含まれる。これら複数の被圧延材(当材19および複数の先行材18)として、例えば、熱間圧延ラインの加熱炉(図示せず)によって加熱された後のスラブ等の鉄鋼材が挙げられる。
記憶部4は、圧延機11の圧下レベリング量の制御に必要な各種情報を記憶するものである。例えば、図1に示すように、記憶部4は、先行材データテーブル4aを記憶する。先行材データテーブル4aは、入側キャンバー量測定部2によって測定された複数の先行材18の入側キャンバー量(実測値)と、出側キャンバー量測定部3によって測定された複数の先行材18の出側キャンバー量(実測値)とを、複数の先行材18の少なくともストランド特定情報および炉内材間距離とに対応付けたデータテーブルである。
本実施の形態における先行材データテーブル4aでは、これら複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値は、これら複数の先行材18の圧延機11での圧延順とストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離とに対応付けられている。ここで、複数の先行材18の圧延順は、複数の先行材18の各々を特定する情報である。先行材データテーブル4aでは、複数の先行材18の各々が圧延順によって示される。ストランド特定情報は、被圧延材を切り出す鋳造ストランドを特定する情報である。加熱炉特定情報は、被圧延材を加熱する加熱炉が熱間圧延ラインに複数設置されている場合に、これら複数の加熱炉の各々を特定する情報である。炉内材間距離は、被圧延材を加熱する上記加熱炉の内部で隣り合う被圧延材同士の幅方向の間隔である。本実施の形態において、記憶部4は、これら複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値を、上記の圧延順とストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離とに対応付けて、先行材データテーブル4aとして記憶し、蓄積する。
演算処理部5は、被圧延材を圧延する圧延機11の圧下レベリング制御に必要な各種演算処理を実行するものである。具体的には、演算処理部5は、少なくともストランド特定情報および炉内材間距離(例えば、ストランド特定情報、炉内材間距離、および加熱炉特定情報等)をもとに、複数の先行材18の中から当材19に対する類似先行材を選択する。すなわち、演算処理部5は、先行材データテーブル4a内の圧延順によって示される複数の先行材18の中から、元になった鋳造ストランドと使用した加熱炉と加熱炉内での炉内材間距離とが当材19と同じであると見做す先行材を、類似先行材として選択する。類似先行材は、複数の先行材18のうち、当材19と類似した幅方向温度偏差を有する先行材である。本実施の形態において、「幅方向温度偏差が類似する」ことには、注目する被圧延材同士で幅方向温度偏差が一致する(同じ)場合は勿論、幅方向温度偏差の大きさや方向の違いが所定の範囲内におさまる場合も含まれる。
また、演算処理部5は、記憶部4に蓄積された類似先行材の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量の実績値とをもとに、次式(5)に基づいて、キャンバー影響係数Infを算出する。キャンバー影響係数Infは、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量が類似先行材の圧延前後のキャンバー量変化に影響する度合いを示す影響係数である。
式(5)において、入側キャンバー実測量CamAinは、入側キャンバー量測定部2によって測定された類似先行材の入側キャンバー量の実測値である。出側キャンバー実測量CamAoutは、出側キャンバー量測定部3によって測定された類似先行材の出側キャンバー量の実測値である。これらの入側キャンバー実測量CamAinおよび出側キャンバー実測量CamAoutは、先行材データテーブル4aの一部として記憶部4に蓄積されている。圧下レベリング実績量Lvaは、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量の実績値であり、制御部6に既知のデータである。演算処理部5は、記憶部4から入側キャンバー実測量CamAinおよび出側キャンバー実測量CamAoutを読み出し、制御部6から圧下レベリング実績量Lvaを取得する。
さらに、演算処理部5は、上述のキャンバー影響係数Infと当材19の入側キャンバー量の実測値とをもとに、圧延機11の出側における当材19の出側キャンバー量の予測値を出側キャンバー量の目標値に仮定した場合の圧下レベリング量の設定値を算出する。
ここで、上述した類似先行材と当材19とでは、幅方向温度偏差が類似していることから、幅方向変形抵抗偏差が同じである。このため、類似先行材の圧延前後でのキャンバー量変化に対する圧下レベリング操作の影響度合いは、当材19と同じである。したがって、当材19の出側キャンバー量の予測値、すなわち、出側キャンバー予測量CamBoutは、圧延機11の入側における当材19の入側キャンバー量の実測値と、当材19に対応する圧下レベリング量の設定値と、上述のキャンバー影響係数Infとをもとに、次式(6)に基づいて算出可能である。
式(6)において、入側キャンバー実測量CamBinは、入側キャンバー量測定部2によって測定された当材19の入側キャンバー量の実測値である。この入側キャンバー実測量CamBinは、入側キャンバー量測定部2から制御部6に送信される。演算処理部5は、制御部6から入側キャンバー実測量CamBinを取得する。圧下レベリング設定量Lvbは、当材19に対応する圧下レベリング量の設定値である。演算処理部5は、この圧下レベリング設定量Lvbを算出目的とする。
本実施の形態では、圧延機11の出側における当材19の出側キャンバー量を零値とすることが、目標とされる。すなわち、演算処理部5は、当材19の出側キャンバー量の目標値を零値に仮定する。この場合、式(6)の左辺である当材19の出側キャンバー予測量CamBoutを零値(CamBout=0)として式(6)を整理すると、次式(7)が得られる。
演算処理部5は、上述のキャンバー影響係数Infと当材19の入側キャンバー実測量CamBinとをもとに、式(7)に基づいて、圧延機11の出側における当材19の出側キャンバー量をその目標値(=0)にするための圧下レベリング設定量Lvbを算出する。演算処理部5は、当材19に対応して圧下レベリング設定量Lvbを算出する都度、得られた圧下レベリング設定量Lvbを制御部6に送信する。
制御部6は、被圧延材を圧延する圧延機11の圧下レベリング制御を実行するものである。本実施の形態において、制御部6は、演算処理部5によって算出された圧下レベリング量の設定値(圧下レベリング設定量Lvb)をもとに、圧延機11の圧下装置11aを制御する。制御部6は、この圧下装置11aの制御を通じて、圧延機11による当材19の圧延時の圧下レベリング量を制御する。
この際、制御部6は、圧下レベリング設定量Lvbと圧延機11の圧下レベリング上限量Lvmaxおよび圧下レベリング下限量Lvminとを比較する。圧下レベリング上限量Lvmaxは、圧延機11の構造から決まる操作可能な圧下レベリング量の上限値である。圧下レベリング下限量Lvminは、圧延機11の構造から決まる操作可能な圧下レベリング量の下限値である。制御部6は、圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング上限量Lvmaxと圧下レベリング下限量Lvminとの範囲内である場合、当材19の圧延時の圧下レベリング量を、この圧下レベリング設定量Lvbに制御する。制御部6は、圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング上限量Lvmaxを上回る場合、当材19の圧延時の圧下レベリング量を圧下レベリング上限量Lvmaxに制御する。制御部6は、圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング下限量Lvminを下回る場合、当材19の圧延時の圧下レベリング量を圧下レベリング下限量Lvminに制御する。このようにして、制御部6は、圧延機11の圧下レベリング上限量Lvmaxと圧下レベリング下限量Lvminとの範囲内で当材19の出側キャンバー量の絶対値が最小(望ましくは零値)となるように、当材19の圧延時の圧下レベリング量を制御する。
また、制御部6は、記憶部4に対して複数の先行材18に関する各種データの蓄積を制御する。具体的には、制御部6は、入側キャンバー量測定部2から複数の先行材18の入側キャンバー量の実測値を取得し、出側キャンバー量測定部3から複数の先行材18の出側キャンバー量の実測値を取得する。また、制御部6は、プロセスコンピュータ20から複数の先行材18の圧延順とストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離とを取得する。制御部6は、これら複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、プロセスコンピュータ20からのストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離とを、これら複数の先行材18の圧延順に対応付ける。制御部6は、このように複数の先行材18の圧延順に対応付けた入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値とストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離とを、先行材データテーブル4aとして蓄積するように記憶部4を制御する。
さらに、制御部6は、演算処理部5に対して当材19に関する各種データを提供する。具体的には、制御部6は、入側キャンバー量測定部2から当材19の入側キャンバー量の実測値を取得し、プロセスコンピュータ20から当材19の圧延順とストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離とを取得する。制御部6は、これら取得した当材19の入側キャンバー量の実測値とストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離とを、この当材19の圧延順に対応付けて、演算処理部5に送信する。
一方、搬送経路16は、熱間圧延ラインにおいて複数の被圧延材を順次搬送するためのものである。この搬送経路16は、複数の搬送ロール(図示せず)を用いて構成される。圧延機11は、本発明における制御対象の圧延機の一例であり、複数の先行材18や当材19に例示される複数の被圧延材をその搬送順に順次圧延する。例えば、圧延機11は、これら複数の被圧延材に対して粗圧延を順次行う粗圧延装置を構成する一圧延機である。特に図1には図示していないが、この粗圧延装置は、圧延機11を含む複数の圧延機を搬送経路16に沿って被圧延材の搬送方向に並設したものである。
圧延機11は、搬送経路16を挟んで被圧延材の厚さ方向D1に対向する一対の圧延ロールを有する。図1には、一対の圧延ロールと一対のバックアップロールを有する4段型の圧延機11が例示されているが、本発明において、圧延機11の各ロール段数は、4段に限定されず、所望の段数であってもよい。また、図1に示すように、圧延機11は、圧下装置11aを有する。圧下装置11aは、圧延機11の圧下レベリング量を調整する。図2は、圧延機の圧下レベリング量を説明する図である。本実施の形態において、圧下レベリング量は、図2に示すように、被圧延材17を圧延する圧延ロール11b,11cのロール軸方向の両端部間での圧下量(圧下レベル)の差として定義される。
プロセスコンピュータ20は、熱間圧延ラインを管理するコンピュータである。プロセスコンピュータ20は、熱間圧延ラインにおける被圧延材の圧延順、圧延条件、および性状等を決定し、管理する。例えば、プロセスコンピュータ20は、被圧延材を切り出す鋳造ストランドを複数の鋳造ストランドの中から決定し、決定した鋳造ストランドを特定する情報(ストランド特定情報)を制御部6に入力する。また、プロセスコンピュータ20は、熱間圧延ラインにおける複数の加熱炉の中から被圧延材の加熱処理を行う加熱炉を決定し、決定した加熱炉を特定する情報(加熱炉特定情報)を制御部6に入力する。さらに、プロセスコンピュータ20は、加熱炉による被圧延材の加熱条件(被圧延材の加熱温度、搬送速度、装入タイミングおよび抽出タイミング等)を決定し、被圧延材の加熱条件に基づいて決まる炉内材間距離を制御部6に入力する。
なお、特に図1には図示していないが、圧延機11を含む粗圧延装置よりも搬送経路16の上流側には、複数の加熱炉等の設備が配置され、この粗圧延装置よりも搬送経路16の下流側には仕上圧延装置等の設備が配置されている。すなわち、鋳造ストランドから切り出されたスラブ等の被圧延材は、加熱炉に装入され、所望の温度に加熱された後、加熱炉から抽出される。その後、被圧延材は、搬送経路16に沿って順次搬送され、粗圧延装置の圧延機11等によって粗圧延される。粗圧延後の被圧延材は、仕上圧延装置等の熱間圧延ラインの各種設備を通り、その後、コイラーによってコイル状に巻かれる。
(被圧延材のキャンバー量)
つぎに、本発明の実施の形態における被圧延材のキャンバー量について説明する。図3は、本発明の実施の形態における被圧延材のキャンバー量を説明する図である。図3に示すように、被圧延材17(上述した複数の先行材18や当材19等)のキャンバー量は、被圧延材17の長手方向D2に対する幅方向D3の正側または負側(図3では正側)の曲がり量として定義される。具体的には、本実施の形態において、キャンバー量は、被圧延材17の幅方向中心位置S1と被圧延材17の基準位置S2との距離の最大値として定義される。
なお、基準位置S2は、図3に示すように、被圧延材17の先端部17aにおける幅方向中心位置Waと尾端部17bにおける幅方向中心位置Wbとを通る直線(基準線)によって表される。図3に示す例では、キャンバー量は、被圧延材17の長手方向D2の中心位置における幅方向中心位置S1と基準位置S2との距離になる。
また、キャンバー量の正負の符号(キャンバーの方向)は、被圧延材17の基準位置S2に対する幅方向中心位置S1の位置ズレの方向と幅方向D3との関係によって決定される。図3に示す例では、幅方向中心位置S1は、基準位置S2に対して幅方向D3の正側に位置ズレしているため、キャンバー量は、正の値になる。特に図示しないが、幅方向中心位置S1が基準位置S2に対して幅方向D3の負側に位置ズレしている場合、キャンバー量は、負の値になる。上述したキャンバー量の定義は、本実施の形態における複数の先行材18や当材19の入側キャンバー量および出側キャンバー量の双方について同じである。
なお、本実施の形態において、厚さ方向D1は、複数の先行材18や当材19に例示される被圧延材17の厚さ方向である。長手方向D2は、被圧延材17の長手方向であり、搬送経路16に沿った複数の先行材18や当材19の搬送方向と同じである。この長手方向D2は、被圧延材17の先端側を正(順方向)とし、尾端側を負(逆方向)とする。幅方向D3は、被圧延材17の幅方向であり、搬送経路16を構成する搬送ロールのロール軸方向および圧延機11の各圧延ロールのロール軸方向と同じである。この幅方向D3は、例えば図3に示すように、長手方向D2の正側に向かって左側(作業側)を正とし、右側(駆動側)を負とする。これらの厚さ方向D1、長手方向D2、および幅方向D3は、互いに垂直な方向である。
(被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性)
つぎに、本実施の形態における被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性について説明する。本実施の形態における被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性は、被圧延材を切り出した鋳造ストランドの観点、被圧延材を加熱した加熱炉の観点、および加熱炉内で隣り合う被圧延材同士の幅方向の間隔(炉内材間距離)の観点から、判定される。
連続鋳造機等によって順次製造される複数の鋳造ストランドでは、各々、その凝固のために冷却水の噴射による冷却処理が行われる。鋳造ストランドの冷却処理において、噴射する冷却水の水量や水圧に鋳造ストランドの幅方向分布がある場合、この冷却処理後の鋳造ストランドに幅方向温度偏差が発生する。鋳造ストランドの幅方向温度偏差は、この鋳造ストランドから切り出されたスラブ等の被圧延材に引き継がれる。鋳造ストランドから引き継がれた被圧延材の幅方向温度偏差は、熱間圧延ラインの加熱炉によって加熱された後も残存し、その後の圧延工程(特に粗圧延工程)でのキャンバー発生の要因となる。このような鋳造ストランドから被圧延材に引き継がれた幅方向温度偏差は、異なる鋳造ストランドから各々切り出された複数の被圧延材間では相違するが、同一の鋳造ストランドから順次切り出された複数の被圧延材間では同じと見做せる。
また、被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性は、被圧延材を加熱する加熱炉や加熱炉内で隣り合う被圧延材同士の相対的な位置関係によって影響される。図4は、加熱炉に関する被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性を説明する図である。図4において、加熱炉21〜23は、本実施の形態における熱間圧延ラインに設置された複数の加熱炉の一例である。図4には、加熱炉22内で隣り合う被圧延材17同士の相対的な位置関係が例示されている。
図4に示すように、加熱炉22内へは、装入側の搬送テーブルによって搬送されてきた被圧延材17が加熱炉22の装入扉(図示せず)から装入される。加熱炉22内に装入された各被圧延材17は、その幅方向D3に隣り合うように並んだ状態で、加熱されながら装入側から抽出側へ向かう方向(図4では幅方向D3の負側の方向)に搬送される。加熱炉22によって所望の温度に加熱された被圧延材17は、加熱炉22の抽出扉(図示せず)から抽出され、その後、抽出側の搬送テーブルにより、例えば図1に示した圧延機11側に向かって長手方向D2に搬送される。
このような加熱炉22内において、被圧延材17の幅方向両端部のうち抽出側の端部は、加熱炉22の抽出扉の開閉によって加熱炉22外の大気に曝される。このため、加熱炉22内に存在する被圧延材17の幅方向両端部のうち、抽出側の端部は、その反対側の端部(すなわち装入側の端部)に比べて低温になる。これに起因して被圧延材17に発生する幅方向温度偏差は、加熱炉22の設備仕様、例えば炉長、炉内温度、および炉内での被圧延材搬送速度等によって、異なるものとなる。このことは、互いに異なる各加熱炉間(例えば図4に示す3つの加熱炉21〜23の間)で、各被圧延材17の幅方向温度偏差が相違する要因となる。
一方、同じ加熱炉22内に装入された各被圧延材17には、この炉内で隣り合う被圧延材同士の幅方向D3の間隔、すなわち、炉内材間距離によっても、幅方向温度偏差が発生する。例えば、図4に示すように、加熱炉22内で幅方向D3に隣り合う被圧延材17−1〜17−3のうち、被圧延材17−1に着目すると、被圧延材17−1の幅方向D3の抽出側には、炉内材間距離LAが生じている。炉内材間距離LAは、着目する被圧延材17−1と、この被圧延材17−1に対して幅方向D3の抽出側に隣り合う被圧延材17−2との間隔である。また、被圧延材17−1の幅方向D3の装入側には、炉内材間距離LBが生じている。炉内材間距離LBは、着目する被圧延材17−1と、この被圧延材17−1に対して幅方向D3の装入側に隣り合う被圧延材17−3との間隔である。
被圧延材17−1の幅方向両側の炉内材間距離LA,LBのうち、抽出側の炉内材間距離LAは、加熱炉22内への被圧延材17−1,17−2の各装入タイミングによって決まる。装入側の炉内材間距離LBは、加熱炉22内への被圧延材17−1,17−3の各装入タイミングによって決まる。加熱炉22内への被圧延材17−1〜17−3の各装入タイミングは、上述したプロセスコンピュータ20(図1参照)によって決定される。すなわち、上述した炉内材間距離LA,LBは、プロセスコンピュータ20によって決定される。また、加熱炉22内に存在する全ての被圧延材17は、加熱炉22の装入側から抽出側に向かって同時に同じ距離だけ搬送される。したがって、各被圧延材17の炉内材間距離LA,LBは、加熱炉22内に装入されてから加熱炉22外へ抽出されるまでの期間、一定である。
ここで、被圧延材17−1の抽出側の端部温度は、抽出側に隣り合う被圧延材17−2との間隔(抽出側の炉内材間距離LA)が大きいほど高温になり、小さいほど低温になる。これと同様に、被圧延材17−1の装入側の端部温度は、装入側に隣り合う被圧延材17−3との間隔(装入側の炉内材間距離LB)が大きいほど高温になり、小さいほど低温になる。このような炉内材間距離LA,LBに応じた被圧延材17−1の幅方向両端部の温度高低差に起因して、被圧延材17−1に幅方向温度偏差が生じる。例えば、図4に示す被圧延材17−1では、抽出側の炉内材間距離LAが装入側の炉内材間距離LBに比べて大きい。この場合、被圧延材17−1では、抽出側の端部温度が装入側の端部温度に比べて高くなり、これに起因して、抽出側の端部から装入側の端部に向かって温度が減少変化する幅方向温度偏差が生じる。
このような炉内材間距離LA,LBに起因する各被圧延材17の幅方向温度偏差は、同じ加熱炉22内において炉内材間距離LA,LBが双方とも各被圧延材17間で同程度であれば、同じと見做せる。一方、同じ加熱炉22内に存在する各被圧延材17であっても、炉内材間距離LA,LBの少なくとも一方が同程度でなければ、上述した炉内材間距離LA,LBに起因する幅方向温度偏差は、各被圧延材17間で相違する。したがって、抽出側の炉内材間距離LAおよび装入側の炉内材間距離LBは、各被圧延材17間で幅方向温度偏差が同じとなる距離範囲毎に区分けされる。
例えば、抽出側の炉内材間距離LAが1[m]未満の場合に被圧延材17の抽出側の端部温度が温度T1[℃]に所定の誤差範囲内で安定すれば、抽出側の炉内材間距離LAの距離範囲として「1[m]未満」が設定される。抽出側の炉内材間距離LAが1[m]以上且つ2[m]未満の場合に被圧延材17の抽出側の端部温度が温度T2(≠T1)[℃]に所定の誤差範囲内で安定すれば、抽出側の炉内材間距離LAの距離範囲として「1[m]以上且つ2[m]未満」が設定される。抽出側の炉内材間距離LAが2[m]以上且つ3[m]未満の場合に被圧延材17の抽出側の端部温度が温度T3(≠T1,T2)[℃]に所定の誤差範囲内で安定すれば、抽出側の炉内材間距離LAの距離範囲として「2[m]以上且つ3[m]未満」が設定される。抽出側の炉内材間距離LAが3[m]以上の場合に被圧延材17の抽出側の端部温度が温度T4(≠T1,T2,T3)[℃]に所定の誤差範囲内で安定すれば、抽出側の炉内材間距離LAの距離範囲として「3[m]以上」が設定される。また、装入側の炉内材間距離LBの距離範囲についても、上記した抽出側の炉内材間距離LAの場合と同様に設定される。
以上のようにして、抽出側の炉内材間距離LAおよび装入側の炉内材間距離LBは、各々、1[m]未満、1[m]以上且つ2[m]未満、2[m]以上且つ3[m]未満、3[m]以上という複数の距離範囲に区分けされる。抽出側の炉内材間距離LAが各被圧延材17間で同じ距離範囲(例えば3[m]以上)に分類され、且つ、装入側の炉内材間距離LBが各被圧延材17間で同じ距離範囲(例えば1[m]未満)に分類された場合、これらの炉内材間距離LA,LBに起因する幅方向温度偏差は、各被圧延材17間で同じである。
本実施の形態において、被圧延材同士の幅方向温度偏差の類似性は、上述した3つの観点、すなわち、被圧延材を切り出す鋳造ストランドが同じであるか否か、被圧延材を加熱する加熱炉が同じであるか否か、加熱炉内での炉内材間距離LA,LBが各々同じ距離範囲に分類されるか否かに基づいて判定される。具体的には、当材19と複数の先行材18との間において、元となる鋳造ストランドと使用した加熱炉と炉内材間距離LA,LBの各距離範囲とが全て同じになる被圧延材同士(すなわち当材19および類似先行材)は、幅方向温度偏差が類似したものと判定される。
(圧下レベリング制御方法)
つぎに、本発明の実施の形態に係る圧下レベリング制御方法について説明する。図5は、本発明の実施の形態に係る圧下レベリング制御方法の一例を示すフローチャートである。本発明の実施の形態に係る圧下レベリング制御方法において、圧下レベリング制御装置1(図1参照)は、図5に示すステップS101〜S104を順次実行する。
すなわち、図5に示すように、圧下レベリング制御装置1は、まず、熱間圧延ラインの圧延機11の圧延対象である複数の被圧延材のうち今回圧延される当材19に先行して圧延された複数の先行材18についての先行材データを蓄積する(ステップS101)。
ステップS101において、入側キャンバー量測定部2は、複数の先行材18のうち当材19の直前に先行する直前の先行材の入側キャンバー量を測定し、この入側キャンバー量の実測値を制御部6に送信する。ついで、出側キャンバー量測定部3は、この直前の先行材の出側キャンバー量(圧延機11による圧延後のキャンバー量)を測定し、この出側キャンバー量の実測値を制御部6に送信する。制御部6は、これらの入側キャンバー量測定部2および出側キャンバー量測定部3から各々取得した直前の先行材の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、プロセスコンピュータ20から取得した当該直前の先行材のストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LBとを対応付ける。制御部6は、このように直前の先行材について対応付けた入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、ストランド特定情報と、加熱炉特定情報と、炉内材間距離LA,LBとを複数の先行材18の圧延順に沿って蓄積するよう記憶部4を制御する。
このステップS101の時点において、記憶部4は、複数の先行材18のうち、上記直前の先行材を除く各先行材(直前の先行材よりも前に先行する各先行材)の先行材データを、これらの各先行材の圧延順に沿って既に先行材データテーブル4aに蓄積済みである。なお、先行材データは、先行材の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LB等である。記憶部4は、制御部6の制御に基づき、上記直前の先行材の先行材データを複数の先行材18の圧延順に沿って先行材データテーブル4aに新たに蓄積する。このようにして、制御部6は、複数の先行材18について、入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値を、少なくともストランド特定情報および炉内材間距離LA,LBと圧延順に対応付けて記憶部4に蓄積する。例えば、熱間圧延ラインに複数の加熱炉が設置されている本実施の形態では、制御部6は、複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値を、これら複数の先行材18の圧延順に沿って、ストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離LA,LBとに対応付けて記憶部4に蓄積する。
ステップS101を実行後、圧下レベリング制御装置1は、圧延機11の入側における当材19の入側キャンバー量を測定する(ステップS102)。ステップS102において、入側キャンバー量測定部2は、圧延機11に今回圧延されるべく圧延機11の入側に搬送されてきた当材19の入側キャンバー量を測定する。入側キャンバー量測定部2は、得られた当材19の入側キャンバー量の実測値を制御部6に送信する。
ステップS102を実行後、圧下レベリング制御装置1は、当材19に対応する圧下レベリング量の設定値を算出する(ステップS103)。ステップS103において、制御部6は、ステップS102での入側キャンバー量測定部2による当材19の入側キャンバー量の実測値と、プロセスコンピュータ20から取得した当材19の少なくともストランド特定情報および炉内材間距離LA,LB(本実施の形態では、当材19の圧延順、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LB)とを対応付けて演算処理部5に送信する。そして、制御部6は、演算処理部5に対し、当材19に対応する圧下レベリング量の演算処理を指示する。
演算処理部5は、上述した制御部6の指示に基づき、ステップS103において、当材19に対応する圧下レベリング量の演算処理を実行する。詳細には、演算処理部5は、少なくともストランド特定情報と炉内材間距離LA,LBとをもとに、複数の先行材18の中から、当材19と類似した幅方向温度偏差を有する先行材である類似先行材を選択する。例えば熱間圧延ラインに複数の加熱炉が設置されている本実施の形態では、演算処理部5は、記憶部4から読み出した先行材データテーブル4aと、制御部6から取得した当材19の各種データとを参照しつつ、ストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離LA,LBとをもとに、複数の先行材18の中から、当材19と類似する類似先行材を選択する。
図6は、本発明の実施の形態における複数の先行材の中から当材に類似する類似先行材を選択する処理の一具体例を説明する図である。図6には、複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値をストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離LA,LBと圧延順とを対応付けて蓄積した先行材データテーブル4aの一具体例が図示されている。また、図6には、当材19の入側キャンバー量の実測値、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、炉内材間距離LA,LB、および圧延順の一具体例が図示されている。
演算処理部5は、例えば図6に示す先行材データテーブル4aと当材19の各種データとを参照し、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LBについて、複数の先行材18と当材19とを比較する。これにより、演算処理部5は、複数の先行材18の中から、ストランド特定情報が当材19と一致(鋳造ストランドが一致)し、加熱炉特定情報が当材19と一致(使用した加熱炉が一致)し、且つ、炉内材間距離LA,LBが当材19と同じ距離範囲に分類される先行材を、類似先行材として選択する。
例えば、本実施の形態における炉内材間距離LA,LBは、1[m]未満、1[m]以上且つ2[m]未満、2[m]以上且つ3[m]未満、3[m]以上という4つの距離範囲に区分けされる。この場合、演算処理部5は、図6に例示する複数の先行材18と当材19との比較処理の結果、当材19に対して、ストランド特定情報が「1」で一致し、加熱炉特定情報が「2」で一致し、抽出側の炉内材間距離LAが「3[m]以上の距離範囲」で一致し、且つ、装入側の炉内材間距離LBが「1[m]未満の距離範囲」で一致する圧延順iの先行材を、類似先行材として選択する。特に図6には図示しないが、これら複数の先行材18の中に、ストランド特定情報と加熱炉特定情報と炉内材間距離LA,LBの各距離範囲とが当材19と一致する先行材の候補が複数存在する場合、演算処理部5は、これら複数の候補としての先行材のうち、当材19の圧延順Nに最も近い圧延順の先行材を、類似先行材として選択する。
上述したように類似先行材を選択した後、演算処理部5は、記憶部4に蓄積された類似先行材の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量の実績値とをもとに、キャンバー影響係数Infを算出する。この際、演算処理部5は、記憶部4内の先行材データテーブル4aの中から、類似先行材の入側キャンバー実測量CamAinおよび出側キャンバー実測量CamAout(図6では圧延順iの先行材入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値)を読み出す。また、演算処理部5は、この類似先行材の圧下レベリング実績量Lvaを制御部6から取得する。演算処理部5は、これらの入側キャンバー実測量CamAin、出側キャンバー実測量CamAout、および圧下レベリング実績量Lvaを用い、上述した式(5)に基づいて、類似先行材に対応するキャンバー影響係数Infを算出する。
上述したようにキャンバー影響係数Infを算出した後、演算処理部5は、このキャンバー影響係数Infと当材19の入側キャンバー量の実測値とをもとに、圧延機11の出側における当材19の出側キャンバー量の予測値を出側キャンバー量の目標値に仮定した場合の圧下レベリング量の設定値を算出する。この際、演算処理部5は、例えば上記目標値を零値に仮定して、このキャンバー影響係数Infと当材19の入側キャンバー実測量CamBin(図6に例示する当材19の入側キャンバー量の実測値)とを用い、上述した式(7)に基づいて、当材19に対応する圧下レベリング設定量Lvbを算出する。演算処理部5は、算出した圧下レベリング設定量Lvbを制御部6に送信する。
以上のようにしてステップS103を実行した後、圧下レベリング制御装置1は、ステップS103で演算処理部5によって算出された圧下レベリング量の設定値をもとに、当材19の圧延時の圧下レベリング量を制御し(ステップS104)、本処理を終了する。
ステップS104において、制御部6は、演算処理部5によって算出された圧下レベリング量の設定値、すなわち、当材19に対応する圧下レベリング設定量Lvbを演算処理部5から取得する。制御部6は、この取得した圧下レベリング設定量Lvbと、圧延機11の圧下レベリング量の上限値(圧下レベリング上限量Lvmax)および下限値(圧下レベリング下限量Lvmin)とを比較する。制御部6は、この圧下レベリング設定量Lvbと圧下レベリング上限量Lvmaxおよび圧下レベリング下限量Lvminとを比較処理の結果に基づいて、圧延機11における当材19の圧延時の圧下レベリング量を制御する。
図7は、本発明の実施の形態における当材の圧延時における圧下レベリング量の制御を説明する図である。図7において、直交2軸のxy座標系は、x軸に圧延機11の圧下レベリング量をとり、y軸に圧延機11の出側における被圧延材の出側キャンバー量をとる。直線F1〜F3は、上述した式(6)に基づいて、このxy座標系に示される直線、すなわち、当材19についての圧下レベリング設定量Lvbと出側キャンバー予測量CamBoutと相関を示す直線である。これらの直線F1〜F3の傾きは、各々、キャンバー影響係数Infである。
圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング上限量Lvmaxと圧下レベリング下限量Lvminとの範囲内、すなわち、圧下レベリング量の上下限範囲RLV内である場合、図7に例示される直線F1が、上述した式(6)に基づいてxy座標系に表される。この場合、当材19の出側キャンバー予測量CamBoutを零値(y=0)とする圧下レベリング設定量Lvbは、図7に示すように、圧下レベリング量の上下限範囲RLV内の値となる。すなわち、この圧下レベリング設定量Lvbは、圧延機11の圧下装置11aにおいて操作可能な圧下レベリング量である。したがって、制御部6は、圧下レベリング量の上下限範囲RLV内である圧下レベリング設定量Lvbをもとに、圧下装置11aを制御し、この制御を通じて、圧延機11による当材19の圧延時の圧下レベリング量を、この圧下レベリング設定量Lvbに制御する。
一方、圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング上限量Lvmaxを上回る場合、図7に例示される直線F2が、上述した式(6)に基づいてxy座標系に表される。この場合、当材19の出側キャンバー予測量CamBoutを零値(y=0)とする圧下レベリング設定量Lvbは、図7に示すように、圧下レベリング量の上下限範囲RLV外の値、具体的には、圧下レベリング上限量Lvmaxに比して大きい値となる。すなわち、この圧下レベリング設定量Lvbは、圧延機11の圧下装置11aにおいて操作不可な圧下レベリング量である。このような状況下では、図7の直線F2に例示されるように、圧下レベリング量の上下限範囲RLV内で当材19の出側キャンバー予測量CamBout(y軸の値)の絶対値を最小とする圧下レベリング量は、圧下レベリング上限量Lvmaxになる。したがって、制御部6は、上述した圧下レベリング設定量Lvbを圧下レベリング上限量Lvmaxに置き換えて圧下装置11aを制御し、この制御を通じて、圧延機11による当材19の圧延時の圧下レベリング量を、この圧下レベリング上限量Lvmaxに制御する。
他方、圧下レベリング設定量Lvbが圧下レベリング下限量Lvminを下回る場合、図7に例示される直線F3が、上述した式(6)に基づいてxy座標系に表される。この場合、当材19の出側キャンバー予測量CamBoutを零値(y=0)とする圧下レベリング設定量Lvbは、図7に示すように、圧下レベリング量の上下限範囲RLV外の値、具体的には、圧下レベリング下限量Lvminに比して小さい値となる。すなわち、この圧下レベリング設定量Lvbは、圧延機11の圧下装置11aにおいて操作不可な圧下レベリング量である。このような状況下では、図7の直線F3に例示されるように、圧下レベリング量の上下限範囲RLV内で当材19の出側キャンバー予測量CamBout(y軸の値)の絶対値を最小とする圧下レベリング量は、圧下レベリング下限量Lvminになる。したがって、制御部6は、上述した圧下レベリング設定量Lvbを圧下レベリング下限量Lvminに置き換えて圧下装置11aを制御し、この制御を通じて、圧延機11による当材19の圧延時の圧下レベリング量を、この圧下レベリング下限量Lvminに制御する。
ステップS104では、上述したようにして、制御部6は、圧延機11の圧下レベリング量の上下限範囲RLV内で当材19の出側キャンバー量の絶対値が最小(望ましくは零値)となるように、圧延機11における当材19の圧延時の圧下レベリング量を制御する。
なお、圧延機11による圧延が完了した当材19は、これから圧延機11によって圧延される後続の被圧延材にとっては先行材に該当する。このような当材19は、搬送経路16に沿って順次搬送されながら、圧延機11によって圧延され、出側キャンバー量測定部3によって圧延機11の出側における出側キャンバー量を測定され、その後、後段の各種圧延機による粗圧延や仕上圧延等の熱間圧延ラインにおける必要な処理を施される。圧下レベリング制御装置1は、上述したステップS101〜S104の各処理を、圧延機11による被圧延材の圧延が完了する都度、繰り返し行う。
(実施例1)
つぎに、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、本発明の効果を検証するために本発明例1を行った。本発明例1の条件として、調査対象の被圧延材は、材長(長手方向D2の長さ)が8000〜10000[mm]であり、材厚(厚さ方向D1の長さ)が235[mm]であり、材幅(幅方向D3の長さ)が1200〜1400[mm]である軟鋼のスラブとした。
制御対象の圧延機は、一対の圧延ロールと一対のバックアップロールとを備えた4段型の圧延機(図1に示した圧延機11と同様に構成されるもの)を5つ有する熱間圧延ラインの粗圧延装置のうち、最上流(第1スタンド)の圧延機とした。この第1スタンドの圧延機によって被圧延材を圧延する際の目標の板厚(設定値)は、200〜210[mm]とした。
また、本発明例1において、圧下レベリング制御装置は、図1に示した圧下レベリング制御装置1と同様の構成のものとし、上述した第1スタンドの圧延機に適用した。調査対象の被圧延材を切り出す鋳造ストランドは2つとし、熱間圧延ラインに設置された加熱炉は3つとした。すなわち、複数の先行材18の中から、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LBの各距離範囲が当材19と同じ先行材が、類似先行材として選択される。この際、炉内材間距離LA,LBの各距離範囲は、1[m]未満、1[m]以上且つ2[m]未満、2[m]以上且つ3[m]未満、3[m]以上とした。本発明例1の圧下レベリング制御装置は、制御対象の第1スタンドの圧延機が被圧延材を圧延する都度、図5に示したステップS101〜S104を繰り返し実行して、この第1スタンドの圧延機が当材19を圧延する際の圧下レベリング量を制御した。
一方、実施例1では、上述した本発明例1と比較する比較例1を行った。比較例1では、上述した第1スタンドの圧延機に従来の圧下レベリング制御装置を適用した。この従来の圧下レベリング制御装置は、圧延開始前に無負荷時の圧延ロールのロールギャップがロール軸方向に均等となるよう設定した圧下レベリング量を初期値とし、被圧延材の圧延中、上述した第1スタンドの圧延機の圧下レベリング量を一定(すなわち初期値)に保つよう制御した。比較例1において、その他の条件は、本発明例1と同じにした。
上述した本発明例1および比較例1の各々において、制御対象としての第1スタンドの圧延機が、調査対象の被圧延材(スラブ)を順次圧延し、圧延後の各スラブの圧延機出側でのキャンバー量を、この第1スタンドの圧延機の出側に設置したキャンバー計が順次測定した。実施例1では、本発明例1および比較例1の各々について、この第1スタンドの圧延機出側における調査対象のスラブのキャンバー量の度数分布を調査した。
図8は、実施例1における本発明例1の調査結果を示す図である。図8には、本発明例1での第1スタンドの圧延機による圧延が完了した後のスラブのキャンバー量、すなわち、第1スタンドの圧延機の出側におけるスラブのキャンバー量の度数分布が図示されている。図8に示すように、本発明例1では、スラブの圧延によるキャンバー量の度数分布は、−60[mm]以上、60[mm]以下の範囲内に収まった。また、この度数分布の標準偏差σは、23[mm]であった。
一方、図9は、実施例1における比較例1の調査結果を示す図である。図9には、比較例1での第1スタンドの圧延機の出側におけるスラブのキャンバー量の度数分布が図示されている。図9に示すように、比較例1では、スラブの圧延によるキャンバー量の度数分布は、−60[mm]以上、60[mm]以下の範囲(本発明例1でのキャンバー量の範囲)を超えて、ばらついていた。このばらつきを示す標準偏差σは、58[mm]であった。
図8,9を比較して分かるように、本発明例1では、スラブの圧延によるキャンバー量を比較例1よりも低減することができ、さらには、このキャンバー量のばらつきを、比較例1のばらつきの約60[%]程度、大幅に低減することができた。この比較結果から、本発明例1では、比較例1よりも、スラブの圧延機出側でのキャンバー量の低減(キャンバー抑制)に効果があることが分かった。
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、本発明の効果を検証するために本発明例2を行った。本発明例2の条件として、調査対象の被圧延材は、材長が6000〜9000[mm]であり、材厚が250[mm]であり、材幅が800〜1000[mm]である軟鋼のスラブとした。
制御対象の圧延機は、一対の圧延ロールと一対のバックアップロールとを備えた4段型の圧延機(図1に示した圧延機11と同様に構成されるもの)を5つ有する熱間圧延ラインの粗圧延装置とした。すなわち、この粗圧延装置を構成する第1スタンド(最上流)から第5スタンド(最下流)までの5つの圧延機が、制御対象である。この粗圧延装置によって被圧延材を圧延する際の第5スタンドの圧延機出側における目標の板厚(設定値)は、30〜35[mm]とした。
また、本発明例2において、圧下レベリング制御装置は、図1に示した圧下レベリング制御装置1と同様の構成のものとし、制御対象である第1スタンド、第2スタンド、第3スタンド、第4スタンド、および第5スタンドの各圧延機に各々適用した。調査対象の被圧延材を切り出す鋳造ストランドは4つとし、熱間圧延ラインに設置された加熱炉は3つとした。すなわち、複数の先行材18の中から、ストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離LA,LBの各距離範囲が当材19と同じ先行材が、類似先行材として選択される。なお、本発明例2における炉内材間距離LA,LBの各距離範囲は、上述した本発明例1と同じにした。本発明例2の各圧下レベリング制御装置は、制御対象の第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機が被圧延材を各々圧延する都度、図5に示したステップS101〜S104を各々繰り返し実行して、これら第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機が当材19を順次圧延する際の各圧下レベリング量を各々制御した。
一方、実施例2では、上述した本発明例2と比較する比較例2を行った。比較例2では、上述した第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機に従来の各圧下レベリング制御装置を適用した。従来の各圧下レベリング制御装置による第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機に対する圧下レベリング量の制御は、上述した比較例1と同じにした。また、比較例2において、その他の条件は、本発明例2と同じにした。
上述した本発明例2および比較例2の各々において、制御対象としての第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機が、調査対象の被圧延材(スラブ)を順次圧延し、圧延後の各スラブの圧延機出側でのキャンバー量を、第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機の出側に設置した各キャンバー計が順次測定した。実施例2では、本発明例2および比較例2の各々について、これら第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機出側における調査対象のスラブのキャンバー量の度数分布を調査した。
図10は、実施例2における本発明例2の調査結果を示す図である。図10には、本発明例2での第1スタンド〜第5スタンドの各圧延機による圧延が完了した後のスラブのキャンバー量、すなわち、スラブに対して最終圧延パスの圧延を行う第5スタンドの圧延機の出側におけるスラブのキャンバー量の度数分布が図示されている。図10に示すように、本発明例2では、スラブの圧延によるキャンバー量の度数分布は、−60[mm]以上、80[mm]以下の範囲内に収まった。また、この度数分布の標準偏差σは、23[mm]であった。
一方、図11は、実施例2における比較例2の調査結果を示す図である。図11は、比較例2での第5スタンドの圧延機の出側におけるスラブのキャンバー量の度数分布が図示されている。図11に示すように、比較例2では、スラブの圧延によるキャンバー量の度数分布は、−60[mm]以上、80[mm]以下の範囲(本発明例2でのキャンバー量の範囲)を超えて、ばらついていた。このばらつきを示す標準偏差σは、56[mm]であった。
図10,11を比較して分かるように、本発明例2では、スラブの圧延によるキャンバー量を比較例2よりも低減することができ、さらには、このキャンバー量のばらつきを、比較例2のばらつきの約59[%]程度、大幅に低減することができた。また、図10,11には示されていないが、本発明例2では、第1スタンド〜第4スタンドの各圧延機出側におけるスラブのキャンバー量およびその標準偏差σ(ばらつき)を、第5スタンドの圧延機の場合と同様に、比較例2よりも低減することができた。以上の比較結果から、本発明例2では、被圧延材の搬送方向に並ぶ複数の圧延機の各々に上述した圧下レベリング制御装置1を適用することによって、比較例2よりも、スラブの各圧延機出側でのキャンバー量の低減(キャンバー抑制)に効果があることが分かった。
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、制御対象圧延機の圧延対象である複数の被圧延材のうち今回圧延されようとしている当材に先行して圧延された複数の先行材について、制御対象圧延機における入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値を、上述したストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離等に対応付けて記憶部に蓄積し、制御対象圧延機の入側における当材の入側キャンバー量を測定し、上述したストランド特定情報、加熱炉特定情報、および炉内材間距離等をもとに、これら複数の先行材の中から、当材と幅方向温度偏差が類似した類似先行材を選択し、記憶部に蓄積した類似先行材の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値と、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量の実績値とをもとに、類似先行材の圧延時の圧下レベリング量が類似先行材の圧延前後のキャンバー量変化に影響する度合いを示すキャンバー影響係数を算出し、この算出したキャンバー影響係数と当材の入側キャンバー量の実測値とをもとに、制御対象圧延機の出側における当材の出側キャンバー量の予測値を出側キャンバー量の目標値に仮定した場合の圧下レベリング量の設定値を算出し、算出した圧下レベリング量の設定値をもとに、制御対象圧延機による当材の圧延時の圧下レベリング量を制御している。
このため、当材や先行材の幅方向温度偏差を測定せずとも、当材と幅方向温度偏差が類似した類似先行材の圧延前後における実際のキャンバー量変化に対する圧下レベリング量の操作実績の影響度合いに基づき、当材の幅方向温度偏差に応じた圧下レベリング操作を当材の圧延時に正しく行うことができる。これにより、当材の幅方向温度偏差に起因する圧延時のキャンバー量を正確に低減するとともに、当材の幅方向変形抵抗偏差に起因する圧延時のキャンバー量を正確に低減することができる。これに加え、上述した類似先行材についてのキャンバー影響係数に基づいて当材の圧延時の圧下レベリング量を制御することにより、圧下レベリング量の設定不良に起因する当材の圧延時のキャンバー発生を回避することができる。以上の結果、被圧延材の幅方向温度偏差を測定せずとも被圧延材の圧延機出側でのキャンバー発生を確実に抑制することができる。
また、本発明の実施の形態では、上述した圧下レベリング量の設定値と制御対象圧延機の圧下レベリング量の上限値および下限値とを比較し、圧下レベリング量の設定値が制御対象圧延機の圧下レベリング量の上下限範囲内である場合、当材の圧延時の圧下レベリング量をこの圧下レベリング量の設定値に制御し、圧下レベリング量の設定値が制御対象圧延機の圧下レベリング量の上限値を上回る場合、当材の圧延時の圧下レベリング量をこの圧下レベリング量の上限値に制御し、圧下レベリング量の設定値が制御対象圧延機の圧下レベリング量の下限値を下回る場合、当材の圧延時の圧下レベリング量をこの圧下レベリング量の下限値に制御している。
これにより、制御対象圧延機の圧下レベリング量の上下限範囲内で当材の出側キャンバー量の絶対値が最小となるように、当材の圧延時の圧下レベリング量を制御することができる。この結果、制御対象圧延機の設備仕様による圧下レベリング量の操作限界を加味して、被圧延材の圧延機出側でのキャンバー量を可能な限り低減することができる。
なお、上述した実施の形態では、ストランド特定情報と加熱炉特定情報と被圧延材同士の炉内材間距離とをもとに、複数の先行材18の中から当材19と幅方向温度偏差が類似した類似先行材を選択していたが、本発明は、これに限定されるものではない。制御対象圧延機を備える熱間圧延ラインにおいて、被圧延材を加熱する加熱炉の設置数が1つである場合、複数の先行材18の各々や当材19の加熱に使用した加熱炉は一義的に決まる。この場合、上述した類似先行材を選択する際に加熱炉特定情報を用いなくてもよい。また、記憶部4に蓄積する複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値に加熱炉特定情報を対応付けなくてもよいし、当材19の入側キャンバー量の実測値に加熱炉特定情報を対応付けなくてもよい。
すなわち、本発明において、演算処理部5は、少なくともストランド特定情報と被圧延材同士の炉内材間距離とをもとに、複数の先行材18の中から類似先行材を選択してもよい。記憶部4は、複数の先行材18の入側キャンバー量および出側キャンバー量の各実測値を、少なくともストランド特定情報と被圧延材同士の炉内材間距離とに対応付けて記憶し、蓄積してもよい。制御部6は、演算処理部5に提供する当材19の入側キャンバー量の実測値を、少なくともストランド特定情報と被圧延材同士の炉内材間距離とに対応付けてもよい。
また、上述した実施の形態では、演算処理部5は、当材19に対応する圧下レベリング量の設定値を算出する際、制御対象圧延機の出側における当材19の出側キャンバー量の予測値を、出側キャンバー量の目標値としての零値に仮定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。演算処理部5は、当材19に対応する圧下レベリング量の設定値を算出する際、制御対象圧延機の出側における当材19の出側キャンバー量の予測値として仮定する出側キャンバー量の目標値を、零値以外の所望の値にしてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、被圧延材同士の炉内材間距離について区分けする距離範囲として、1[m]未満、1[m]以上且つ2[m]未満、2[m]以上且つ3[m]未満、3[m]以上という4つの距離範囲を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。被圧延材同士の炉内材間距離は、2つ以上(複数)の距離範囲に区分けしてもよいし、各距離範囲の上限値、下限値、および境界値は、被圧延材の幅方向温度偏差と被圧延材同士の炉内材間距離との相関等を考慮して所望の値に設定してもよい。
また、上述した実施の形態では、制御対象圧延機として粗圧延装置の圧延機を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。制御対象圧延機は、仕上圧延装置等、粗圧延装置以外の圧延機であってもよい。
さらに、上述した実施の形態では、制御対象圧延機として、一対の圧延ロールと一対のバックアップロールとを備えた4段型の圧延機11を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。制御対象圧延機のロール段数は、4段以外であってもよく、本発明において特に問われない。
また、上述した実施の形態では、作業側に曲がる被圧延材のキャンバー量を正の値とし、駆動側に曲がる被圧延材のキャンバー量を負の値としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、キャンバー量の正負の定義(すなわちキャンバーの方向の定義)は、上述したものと逆(作業側が負、駆動側が正)であってもよい。
さらに、上述した実施の形態では、ストランド特定情報および加熱炉特定情報を数字によって表していたが、本発明は、これに限定されるものではない。ストランド特定情報および加熱炉特定情報は、各々、数字、英字等の文字、または記号、あるいはこれらのうち少なくとも2つを組み合わせた文字列等、所望の態様で表してもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。