次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の振動減衰装置20を含む発進装置1の概略構成図である。同図に示す発進装置1は、例えば駆動装置としてのエンジン(内燃機関)EGを備えた車両に搭載されるものであり、振動減衰装置20に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されて当該フロントカバー3と一体に回転するポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、ハイブリッドトランスミッションあるいは減速機である変速機(動力伝達装置)TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8、ダンパ装置10等を含む。
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10(振動減衰装置20)の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
ポンプインペラ4は、図2に示すように、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチとして構成されており、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7すなわち変速機TMの入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除する。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピース3sにより軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11に一体化されたクラッチドラムとしてのドラム部11dと、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、ドラム部11dの内周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート(セパレータプレート)84とを含む。
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側、すなわちロックアップピストン80よりもダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース3sに取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、係合油室87を画成し、当該係合油室87には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。そして、係合油室87への係合油圧を高めることにより、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されてもよい。
ダンパ装置10は、図1および図2に示すように、回転要素として、上記ドラム部11dを含むドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)12と、ドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素として、同一円周上に周方向に間隔をおいて交互に配設されるそれぞれ複数(本実施形態では、例えば4個ずつ)の第1スプリング(第1弾性体)SP1および第2スプリング(第2弾性体)SP2を含む。第1および第2スプリングSP1,SP2としては、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングや、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるストレートコイルスプリングが採用される。また、第1および第2スプリングSP1,SP2スプリングSPとしては、図示するように、いわゆる二重バネが採用されてもよい。
ダンパ装置10のドライブ部材11は、外周側に上記ドラム部11dを含む環状部材であり、内周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)のスプリング当接部11cを有する。中間部材12は、環状の板状部材であり、外周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)のスプリング当接部12cを有する。中間部材12は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、ドライブ部材11の径方向内側で当該ドライブ部材11により包囲される。
ドリブン部材15は、図2に示すように、環状の第1ドリブンプレート16と、図示しない複数のリベットを介して当該第1ドリブンプレート16に一体に回転するように連結される環状の第2ドリブンプレート17とを含む。第1ドリブンプレート16は、板状の環状部材として構成されており、第2ドリブンプレート17よりもタービンランナ5に近接するように配置され、タービンランナ5のタービンシェル50と共にダンパハブ7に複数のリベットを介して固定される。第2ドリブンプレート17は、第1ドリブンプレート16よりも小さい内径を有する板状の環状部材として構成されており、当該第2ドリブンプレート17の外周部が図示しない複数のリベットを介して第1ドリブンプレート16に締結される。
第1ドリブンプレート16は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング収容窓16wと、それぞれ対応するスプリング収容窓16wの内周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部16aと、それぞれ対応するスプリング収容窓16wの外周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並んで対応するスプリング支持部16aと第1ドリブンプレート16の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部16bと、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部16cとを有する。第1ドリブンプレート16の複数のスプリング当接部16cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓16w(スプリング支持部16a,16b)の間に1個ずつ設けられる。
第2ドリブンプレート17も、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング収容窓17wと、それぞれ対応するスプリング収容窓17wの内周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部17aと、それぞれ対応するスプリング収容窓17wの外周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並んで対応するスプリング支持部17aと第2ドリブンプレート17の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部17bと、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部17cとを有する。第2ドリブンプレート17の複数のスプリング当接部17cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング支持部17a,17b(スプリング収容窓)の間に1個ずつ設けられる。なお、本実施形態において、ドライブ部材11は、図2に示すように、第1ドリブンプレート16を介してダンパハブ7により支持される第2ドリブンプレート17の外周面により回転自在に支持され、これにより、当該ドライブ部材11は、ダンパハブ7に対して調心される。
ダンパ装置10の取付状態において、第1および第2スプリングSP1,SP2は、ダンパ装置10の周方向に沿って交互に並ぶように、ドライブ部材11の互い隣り合うスプリング当接部11cの間に1個ずつ配置される。また、中間部材12の各スプリング当接部12cは、互い隣り合うスプリング当接部11cの間に配置されて対をなす(直列に作用する)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の一端部は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部11cと当接し、各第1スプリングSP1の他端部は、中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の一端部は、中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接し、各第2スプリングSP2の他端部は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部11cと当接する。
一方、第1ドリブンプレート16の複数のスプリング支持部16aは、図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。また、複数のスプリング支持部16bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を外周側から支持(ガイド)する。更に、第2ドリブンプレート17の複数のスプリング支持部17aは、図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップピストン80側の側部を内周側から支持(ガイド)する。また、複数のスプリング支持部17bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップピストン80側の側部を外周側から支持(ガイド)する。
また、ドリブン部材15の各スプリング当接部16cおよび各スプリング当接部17cは、ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11のスプリング当接部11cと同様に、対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の上記一端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部16c,17cとも当接し、各第2スプリングSP2の上記他端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部16c,17cとも当接する。この結果、ドリブン部材15は、複数の第1スプリングSP1と、中間部材12と、複数の第2スプリングSP2とを介してドライブ部材11に連結され、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、中間部材12のスプリング当接部12cを介して直列に連結される。なお、本実施形態では、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第1スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1等の軸心と各第2スプリングSP2の軸心との距離とが等しくなっている。
更に、本実施形態のダンパ装置10は、中間部材12とドリブン部材15との相対回転および第2スプリングSP2の撓みを規制する第1ストッパと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する第2ストッパとを含む。第1ストッパは、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される入力トルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達した段階で中間部材12とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。また、第2ストッパは、ドライブ部材11への入力トルクが最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達した段階でドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、第1ストッパは、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転および第1スプリングSP1の撓みを規制するように構成されてもよい。また、ダンパ装置10には、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転および第1スプリングSP1の撓みを規制するストッパと、中間部材12とドリブン部材15との相対回転および第2スプリングSP2の撓みを規制するストッパとが設けられてもよい。
振動減衰装置20は、ダンパ装置10のドリブン部材15に連結され、作動油で満たされる流体伝動室9の内部に配置される。図2から図4に示すように、振動減衰装置20は、支持部材(第1リンク)としての第1ドリブンプレート16と、それぞれ第1連結軸21を介して第1ドリブンプレート16に回転自在に連結される復元力発生部材(第2リンク)としての複数(本実施形態では、例えば4個)のクランク部材22と、1体の環状の慣性質量体(第3リンク)23と、それぞれ対応するクランク部材22と慣性質量体23とを相対回転自在に連結する複数(本実施形態では、例えば4個)の第2連結軸24とを含む。
第1ドリブンプレート16は、図3に示すように、その外周面161から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば4個)の突出支持部162を有する。図示するように、各クランク部材22の一方の端部は、対応する第1ドリブンプレート16の突出支持部162に第1連結軸21(図3参照)を介して回転自在に連結される。本実施形態において、各クランク部材22は、図4に示すように、2枚のプレート部材220を有する。各プレート部材220は、円弧状の平面形状を有するように金属板により形成されており、本実施形態において、プレート部材220の外周縁の曲率半径は、慣性質量体23の外周縁の曲率半径と同一に定められている。
2枚のプレート部材220は、対応する突出支持部162および慣性質量体23を介してダンパ装置10の軸方向に対向し合うと共に第1連結軸21により互いに連結される。本実施形態において、第1連結軸21は、第1ドリブンプレート16の突出支持部162に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)と、各プレート部材220に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)とに挿通されると共に両端がカシメられるリベットである。これにより、第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)と、各クランク部材22とは、互いに回り対偶をなす。なお、第1連結軸21は、突出支持部162と2枚のプレート部材220との一方に形成された滑り軸受け部としての連結孔とに挿通されると共に、他方により支持(嵌合または固定)されるものであってもよい。また、プレート部材220と第1連結軸21との間および突出支持部162と第1連結軸21との間の少なくとも何れか一方に、ボールベアリング等の転がり軸受が配置されてもよい。
慣性質量体23は、金属板により形成された2枚の環状部材230を含み、慣性質量体23(2枚の環状部材230)の重量は、1個のクランク部材22の重量よりも十分に重く定められる。図3および図4に示すように、環状部材230は、短尺円筒状(円環状)の本体231と、本体231の内周面から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば4個)の突出部232とを有する。2枚の環状部材230は、突出部232同士が当該環状部材230の軸方向に対向するように図示しない固定具を介して連結される。
各突出部232には、クランク部材22と慣性質量体23とを連結する第2連結軸24をガイドするガイド部235が形成されている。ガイド部235は、円弧状に延びる開口部であり、凹曲面状のガイド面236と、当該ガイド面236よりも環状部材(第1ドリブンプレート16)の径方向における内側(環状部材230の中心側)でガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237と、ガイド面236および支持面237の両側で両者に連続する2つのストッパ面238とを含む。ガイド面236は、一定の曲率半径を有する凹円柱面である。支持面237は、円弧状に延びる凸曲面であり、ストッパ面238は、円弧状に延びる凹曲面である。図3に示すように、ガイド部235(ガイド面236、支持面237およびストッパ面238)は、ガイド面236の曲率中心と環状部材230の中心(第1ドリブンプレート16の回転中心RC)とを通る直線に関して左右対称に形成される。そして、振動減衰装置20では、ガイド面236の曲率中心を通って突出部232(環状部材230)に直交する直線が、2枚の環状部材230、すなわち慣性質量体23に対する相対位置が不変となる(慣性質量体23に対して移動しない)仮想軸25として定められる。これにより、ガイド面236の曲率中心は仮想軸25に一致する。
第2連結軸24は、中実(あるいは中空)の丸棒状に形成されると共に、両端から軸方向外側に突出する例えば丸棒状の2つの突起部24aを有する。図4に示すように、第2連結軸24の2つの突起部24aは、それぞれクランク部材22のプレート部材220に形成された連結孔(円孔)に嵌合(固定)される。本実施形態において、突起部24aが嵌合されるプレート部材220の連結孔は、その中心がクランク部材22の重心G(プレート部材220の長手方向における中央部付近)を通る直線と同軸に延在するように各プレート部材220に形成される。これにより、第1ドリブンプレート16(突出支持部162)とクランク部材22とを連結する第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さは、第1連結軸21と、クランク部材22と慣性質量体23とを連結する第2連結軸24との軸間距離(中心間距離)に一致する。また、クランク部材22(プレート部材220)の他方の端部は、第2連結軸24に関して第1連結軸21とは反対側に位置する。なお、第2連結軸24の各突起部24aは、クランク部材22のプレート部材220に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)に挿通されてもよい。すなわち、第2連結軸24は、2枚のプレート部材すなわちクランク部材22により両側から回転自在に支持されてもよい。更に、プレート部材220と、第2連結軸24の突起部24aとの間にボールベアリング等の転がり軸受が配置されてもよい。
図4に示すように、第2連結軸24は、複数のコロ(転動体)26を介して円筒状の外輪27を回転自在に支持する。外輪27の外径は、上記ガイド部235のガイド面236と支持面237との間隔よりも僅かに小さく定められる。第2連結軸24および外輪27は、クランク部材22により支持されると共に、当該外輪27がガイド面236上を転動するように慣性質量体23の対応するガイド部235内に配置される。これにより、慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16の回転中心RCと同軸かつ当該回転中心RCの周りに回転自在に配置されることになる。また、複数のコロ26、外輪27および第2連結軸24は、転がり軸受を構成することから、クランク部材22と慣性質量体23との相対回転が許容され、各クランク部材22と慣性質量体23とは、互いに回り対偶をなす。なお、第2連結軸24と外輪27との間には、複数のコロ26の代わりに複数のボールが配設されてもよい。
上述のように、振動減衰装置20では、第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)と、各クランク部材22とが互いに回り対偶をなし、各クランク部材22と慣性質量体23のガイド部235によりガイドされる第2連結軸24とが互いに回り対偶をなす。また、慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りに回転自在に配置される。これにより、第1ドリブンプレート16が一方向に回転すると、各第2連結軸24は、慣性質量体23のガイド部235によりガイドされながら第2リンクに連動し、第1連結軸21との軸間距離を一定に保ちながら当該第1連結軸21の周りに揺動(往復回転運動)すると共に仮想軸25との軸間距離を一定に保ちながら当該仮想軸25の周りに揺動(往復回転運動)する。すなわち、各クランク部材22は、第2連結軸24の移動に応じて第1連結軸21の周りに揺動し、仮想軸25および慣性質量体23は、移動する第2連結軸24の周りに揺動すると共に、第1ドリブンプレート16の回転中心RC周りに揺動(往復回転運動)することになる。この結果、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、第1ドリブンプレート16を固定節とする4節回転連鎖機構を構成する。
更に、第1ドリブンプレート16の回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離を“L1”とし、第1連結軸21と第2連結軸24との軸間距離を“L2”とし、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離を“L3”とし、仮想軸25と回転中心RCとの軸間距離を“L4”としたときに(図2参照)、本実施形態では、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第2連結軸24および慣性質量体23のガイド部235が、L1+L2>L3+L4という関係を満たすように構成される。また、本実施形態では、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離L3(ガイド面236の曲率半径−外輪27の半径)が、軸間距離L1,L2およびL4よりも短く、かつ各クランク部材22および慣性質量体23の動作に支障のない範囲で、できるだけ短く定められる。更に、本実施形態において、第1リンクとしての第1ドリブンプレート16(突出支持部162)は、回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離L1が、軸間距離L2,L3およびL4よりも長くなるように構成される。
これにより、本実施形態の振動減衰装置20では、L1>L4>L2>L3という関係が成立し、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、第2連結軸24と仮想軸25とを結ぶ線分(仮想リンク)と対向する第1ドリブンプレート16を固定節とする両てこ機構を構成する。加えて、本実施形態の振動減衰装置20では、第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さを“Lg”としたときに、Lg=L2という関係が成立する。
また、振動減衰装置20の「平衡状態(釣り合い状態)」は、振動減衰装置20の構成要素に作用する遠心力の総和と、振動減衰装置20の第1および第2連結軸21,24の中心並びに回転中心RCに作用する力との合力がゼロになる状態である。振動減衰装置20の平衡状態では、図2に示すように、第2連結軸24の中心と、仮想軸25の中心と、第1ドリブンプレート16の回転中心RCとが一直線上に位置する。更に、本実施形態の振動減衰装置20は、第2連結軸24の中心、仮想軸25の中心および第1ドリブンプレート16の回転中心RCが一直線上に位置する平衡状態で、第1連結軸21の中心から第2連結軸24の中心に向かう方向と、第2連結軸24の中心から回転中心RCに向かう方向とがなす角度を“α”としたときに、60°≦α≦120°、より好ましくは70°≦α≦90°を満たすように構成される。
上記ダンパ装置10および振動減衰装置20を含む発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際、図1からわかるように、原動機としてのエンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。また、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行される際には、図1からわかるように、エンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、第1スプリングSP1、中間部材12、第2スプリングSP2、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。
ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際、エンジンEGの回転に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたドライブ部材11が回転すると、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT1に達するまで、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、第1および第2スプリングSP1,SP2が中間部材12を介して直列に作用する。これにより、フロントカバー3に伝達されるエンジンEGからのトルクが変速機TMの入力軸ISへと伝達されると共に、当該エンジンEGからのトルクの変動がダンパ装置10の第1および第2スプリングSP1,SP2により減衰(吸収)される。また、ドライブ部材11への入力トルクがトルクT1以上になると、当該入力トルクがトルクT2に達するまで、エンジンEGからのトルクの変動がダンパ装置10の第1スプリングSP1により減衰(吸収)される。
更に、発進装置1では、ロックアップの実行に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたダンパ装置10がフロントカバー3と共に回転すると、ダンパ装置10の第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)も発進装置1の軸心周りにフロントカバー3と同方向に回転する。そして、第1ドリブンプレート16の回転に伴い、振動減衰装置20を構成する各クランク部材22および慣性質量体23が第1ドリブンプレート16に対して揺動し、それにより、振動減衰装置20によってもエンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動が減衰されることになる。すなわち、振動減衰装置20は、各クランク部材22や慣性質量体23の揺動の次数(振動次数q)がエンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動の次数(エンジンEGが例えば3気筒エンジンである場合、1.5次、エンジンEGが例えば4気筒エンジンである場合、2次)に一致するように構成され、エンジンEG(第1ドリブンプレート16)の回転数に拘わらず、エンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動を減衰する。これにより、ダンパ装置10の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10と振動減衰装置20との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
次に、振動減衰装置20の動作について詳細に説明する。
上述のように、振動減衰装置20の第1ドリブンプレート16、各クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、L1+L2>L3+L4という関係を満たす4節回転連鎖機構すなわち両てこ機構を構成する。従って、図5に示すように、第1ドリブンプレート16が回転中心RCの周りの一方向(例えば、図5における反時計方向)に回転すると、各クランク部材22は、図5および図6Aに示すように、慣性質量体23の慣性モーメント(回りにくさ)により、平衡状態での位置(図6Aにおける一点鎖線参照)から第1連結軸21の周りに第1ドリブンプレート16とは逆方向(例えば、図5および図6Aにおける時計方向)に回転する。更に、各クランク部材22の運動が第2連結軸24やガイド部235を介して慣性質量体23に伝達されることで、当該慣性質量体23は、回転中心RCの周りに第1ドリブンプレート16とは逆方向(クランク部材22と同方向すなわち図中時計方向)に回転する。
また、第1ドリブンプレート16が回転することで、各クランク部材22(重心G)には、図7に示すように、遠心力Fcが作用する。当該遠心力Fcの第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力(=Fc・sinφ)は、クランク部材22(振動減衰装置20)を平衡状態での位置に戻そうとする復元力Frとなり、各クランク部材22に作用する復元力Frは、第2連結軸24やガイド部235を介して慣性質量体23に伝達される。ただし、“φ”は、クランク部材22に作用する遠心力Fcの方向と、第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心G(第2連結軸24の中心)に向かう方向とがなす角度である。また、図7において、“m”は、クランク部材22の重量を示し、“ω”は、第1ドリブンプレート16の回転角速度を示す(図9においても同様)。
各クランク部材22に作用する復元力Frは、平衡状態での位置から第1連結軸21の周りの一方向(図6Aにおける時計方向)に回転した折り返し位置(図6Aにおける実線参照)、すなわちエンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置で、各クランク部材22および慣性質量体23をそれまでの回転方向に回転させようとする力(慣性モーメント)に打ち勝つようになる。これにより、各クランク部材22は、第1連結軸21の周りにそれまでとは逆方向に回転し、折り返し位置から図6Bに示す平衡状態での位置へと戻る。また、慣性質量体23は、各クランク部材22に連動して回転中心RCの周りにそれまでとは逆方向に回転し、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる平衡状態での位置を中心とした揺動の範囲の一端から図6Bに示す平衡状態での位置へと戻る。
更に、図8に示すように、ドライブ部材11等を介して伝達されるエンジンEGからの振動により第1ドリブンプレート16が回転中心RCの周りの他方向(例えば、図8における時計方向)に回転すると、各クランク部材22は、図6Cおよび図8に示すように、慣性質量体23の慣性モーメント(回りにくさ)により、平衡状態での位置(図6Cにおける一点鎖線参照)から第1連結軸21の周りに第1ドリブンプレート16と同方向(例えば、図6Cおよび図8における時計方向)に回転する。この際、振動減衰装置20がL1+L2>L3+L4という関係を満たすように構成されていることから、各クランク部材22の運動が第2連結軸24やガイド部235を介して慣性質量体23に伝達されることで、当該慣性質量体23は、図6Cおよび図8に示すように、第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りに第1ドリブンプレート16およびクランク部材22とは逆方向(例えば、図6Cおよび図8における反時計方向)に回転する。
この場合も、各クランク部材22(重心G)には、遠心力Fcが作用し、各クランク部材22に作用する遠心力Fcの分力すなわち復元力Frは、第2連結軸24やガイド部235を介して慣性質量体23に伝達される。そして、各クランク部材22に作用する復元力Frは、平衡状態での位置から第1連結軸21の周りの上記一方向(図6Cにおける時計方向)に回転した折り返し位置(図6Cにおける実線参照)、すなわちエンジンEGからドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置で、各クランク部材22および慣性質量体23をそれまでの回転方向に回転させようとする力(慣性モーメント)に打ち勝つようになる。これにより、各クランク部材22は、第1連結軸21の周りにそれまでとは逆方向に回転し、折り返し位置から図6Bに示す平衡状態での位置へと戻る。また、慣性質量体23は、各クランク部材22に連動して回転中心RCの周りにそれまでとは逆方向に回転し、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる平衡状態での位置を中心とした揺動の範囲の他端から図6Bに示す平衡状態での位置へと戻る。
このように、第1ドリブンプレート16が一方向に回転する際、振動減衰装置20の復元力発生部材としての各クランク部材22は、平衡状態での位置と、エンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動の振幅(振動レベル)に応じて定まる折り返し位置との間で第1連結軸21の周りに揺動(往復回転運動)し、慣性質量体23は、クランク部材22の振れ角(揺動範囲)に応じて定まる平衡状態での位置を中心とした揺動範囲内で回転中心RCの周りに第1ドリブンプレート16と逆方向に揺動(往復回転運動)する。すなわち、各クランク部材22が平衡状態での位置から折り返し位置まで移動すると共に当該折り返し位置から平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間に、慣性質量体23は、平衡状態での位置から揺動範囲の一端まで移動した後、平衡状態での位置に戻り、更に揺動範囲の他端まで移動した後、平衡状態での位置に戻る。これにより、揺動する慣性質量体23から、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される振動とは逆位相の振動を各ガイド部235、各第2連結軸24および各クランク部材22を介して第1ドリブンプレート16に付与し、当該第1ドリブンプレート16の振動を減衰することが可能となる。
ここで、L1+L2>L3+L4という関係を満たさない振動減衰装置、すなわち上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす他の振動減衰装置(図9参照)において、クランク部材22は、図10A、図10Bおよび図10Cに示すように、慣性質量体23と同様に、平衡状態での位置を中心とする揺動範囲内で第1連結軸21の周りに第1ドリブンプレート16とは常に逆方向に揺動(往復回転運動)する。更に、上記他の振動減衰装置では、図10Bに示す平衡状態において、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸21の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロになる。すなわち、上記他の振動減衰装置において、平衡状態での位置を中心とした揺動範囲内で揺動するクランク部材22に作用する復元力Frは、図11において破線で示すように、平衡状態での位置(図11における振れ角θ=0°)でゼロ(最小)になり、振れ角θが大きくなるにつれて(揺動範囲の端部に近づくにつれて)遠心力Fcに対する復元力Frの比(Fr/Fc)が増加していく。
これに対して、L1+L2>L3+L4という関係を満たす振動減衰装置20では、図6Bに示す平衡状態において、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸21の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロよりも大きくなる。すなわち、振動減衰装置20において、平衡状態での位置と上記折り返し位置との間で揺動するクランク部材22に作用する復元力Frは、図11において実線で示すように、平衡状態での位置(図11における振れ角θ=0°)で最大となり、振れ角θが大きくなるにつれて低下していく。言い換えれば、上記他の振動減衰装置では、各クランク部材22や慣性質量体23がそれぞれの揺動範囲内で揺動する間に平衡状態になると、各クランク部材22に復元力が一瞬作用しなくなるのに対し、振動減衰装置20では、各クランク部材22や慣性質量体23がそれぞれの揺動範囲内で揺動する間、各クランク部材22に復元力が常時作用する。
また、振動減衰装置20では、上述のように、各クランク部材22が平衡状態での位置から折り返し位置まで移動すると共に当該折り返し位置から平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間、慣性質量体23は、平衡状態での位置から揺動範囲の一端まで移動した後、平衡状態での位置に戻り、更に揺動範囲の他端まで移動した後、平衡状態での位置に戻る。従って、第1ドリブンプレート16に伝達される振動に応じたクランク部材22の第1連結軸21周りの振れ角θすなわち揺動範囲は、慣性質量体23に比べてより小さくなる。すなわち、振動減衰装置20において、第2連結軸24および慣性質量体23の運動はトグル機構を構成する2つのリンクの運動と同様のものとなり、それにより、図6A、図6Bおよび図6Cからわかるように、慣性質量体23に比べてクランク部材22の揺動が大幅に制限される。
この結果、振動減衰装置20では、図11に示すように、クランク部材22の揺動範囲が平衡状態での位置(θ=0°)から比較的小さい角度だけ振れた位置までの狭い範囲となることから、平衡状態でクランク部材22に作用する遠心力Fcの第1連結軸21の中心から当該クランク部材22の重心Gに向かう方向と直交する方向の分力がゼロになる場合(上記他の振動減衰装置)に比べて、クランク部材22に作用する遠心力Fcが同一であるときの復元力Fr(比Fr/Fc)をより大きくすることが可能となる。具体的には、振動減衰装置20では、図7に示す角度φを90°により近づけて、クランク部材22の重心Gに作用する復元力Fr(=Fc・sinφ)の方向を遠心力Fcの方向により近づけることができる。特に、図7に示すような平衡状態に近い状態では、復元力Frの方向が遠心力Fcの方向に非常に近くなる(角度φが90°により近くなる)。そして、クランク部材22(および慣性質量体23)に対して、より大きな復元力Frを付与し得るということは、振動減衰装置20が高い捩り剛性を有しているということを意味する。従って、振動減衰装置20では、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性Kをより大きくすることが可能となる。
また、慣性質量体23が平衡状態での位置を中心とする揺動範囲内で回転中心RCの周りに揺動するのに対して、クランク部材22は、平衡状態での位置と、当該平衡状態での位置から第1連結軸21の周りの一方向に回転した折り返し位置との間で第1連結軸21の周りに揺動する。すなわち、振動減衰装置20では、図6A、図6Bおよび図6Cに示すように、慣性質量体23が回転中心RCの周りに常に第1ドリブンプレート16と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、クランク部材22は、第1連結軸21の周りに第1ドリブンプレート16と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、第1ドリブンプレート16と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置20の等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響を非常に小さくすることができる。
従って、振動減衰装置20では、等価剛性Kおよび等価質量Mすなわち振動次数q=√(K/M)の設定の自由度をより向上させることが可能となり、クランク部材22ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を極めて良好に向上させることができる。なお、上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす振動減衰装置では、図10A、図10Bおよび図10Cに示すように、クランク部材22が慣性質量体23と同様に第1連結軸21の周りに第1ドリブンプレート16とは常に逆方向に回転する。従って、上記特許文献1に記載されたダンパ装置では、クランク部材22の重量が等価剛性Kおよび等価質量Mの双方に大きく影響することから、本実施形態の振動減衰装置20のように振動次数qの設定の自由度を向上させることが容易ではない。
また、本発明者らの解析によれば、振動減衰装置20の等価剛性Kは、軸間距離L3およびL4の和に対する軸間距離L3の比率ρ=L3/(L3+L4)の二乗値に反比例することが判明している。従って、上述のように、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離L3を、回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離L1、第1連結軸21と第2連結軸24との軸間距離L2、仮想軸25と回転中心RCとの軸間距離L4よりも短くすることで、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性Kをより大きくすることが可能となる。更に、軸間距離L3をより短くすることで、クランク部材22の第1連結軸21周りの振れ角をより小さくすることができる。これにより、等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響をより一層小さくすると共に、クランク部材22の第1連結軸21とは反対側の端部が回転中心RCに向けて移動するようにして(あるいは径方向外側への突出量をできるだけ減らして)装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。加えて、軸間距離L3をより短くすることで、各クランク部材22および質量体の揺動の周期を一定にする(等時性を保つ)ことができる。
更に、振動減衰装置20では、回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離L1が軸間距離L2,L3およびL4よりも長く定められている。これにより、クランク部材22を第1ドリブンプレート16の回転中心RCから離間させて当該クランク部材22の重心G(第2連結軸24)をより径方向外側に位置させることができるので、ダンパ装置10のスプリングSPの配置スペースを充分に確保すると共に、クランク部材22の重量の増加させることなく当該クランク部材22に作用する遠心力Fcの分力すなわち復元力Frをより大きくすることが可能となる。
また、L1+L2>L3+L4という関係を満たしつつ、軸間距離L1を最長にすることで、第1連結軸21の中心を通ると共に回転中心RCを中心とする円周に沿うようにクランク部材22を配置すると共に、クランク部材22の第1連結軸21周りの振れ角を小さくすることができる。これにより、図12からわかるように、上記特許文献1に記載されたダンパ装置のようにL1+L2<L3+L4という関係を満たす振動減衰装置に比べて(図13参照)、作動油で満たされる流体伝動室9内でクランク部材22に作用する遠心油圧による力の上記復元力Frに対する影響を小さくすると共に、クランク部材22が揺動する際の遠心油圧による力の変動を小さくすることが可能となる。加えて、クランク部材22を円弧状の平面形状を有する2枚のプレート部材220により構成することで、当該クランク部材22に作用する遠心油圧による力の上記復元力Frに対する影響を良好に小さくすることが可能となる。
更に、L1>L4>L2>L3を満たすように振動減衰装置20を構成することで、等価剛性Kを実用上良好に確保すると共に、等価質量Mに対するクランク部材22の重量の影響を実用上無視し得る程度まで小さくすることができる。この結果、振動減衰装置20の振動次数qを減衰すべき振動の次数に容易に一致させて(より近づけて)、当該振動を極めて良好に減衰することが可能となる。なお、各クランク部材22の最大振れ角(揺動限界)や慣性質量体23の最大揺動範囲は、軸間距離L1,L2,L3,L4から定まることから、振動減衰装置20の軸間距離L1,L2,L3,L4は、ドリブン部材15に伝達される振動を減衰不能にならないように、当該ドリブン部材15に伝達される振動の振幅(振動レベル)を考慮して定められるとよい。
また、振動減衰装置20は、第2連結軸24の中心、仮想軸25の中心および第1ドリブンプレート16の回転中心RCが一直線上に位置する平衡状態で、第1連結軸21の中心から第2連結軸24の中心に向かう方向と、第2連結軸24の中心から回転中心RCに向かう方向とがなす角度を“α”としたときに、60°≦α≦120°、より好ましくは70°≦α≦90°を満たすように構成される。これにより、第1ドリブンプレート16の回転数が低いときに、慣性質量体23が揺動範囲の一側に大きく振れて当該一側の揺動限界(死点)に達する一方で他側に小さく振れるのを抑制することができる。この結果、第1ドリブンプレート16の回転数が比較的低いうちから、慣性質量体23を平衡状態での位置(図6B参照)に関して対称に揺動させて振動減衰装置20の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
そして、振動減衰装置20では、クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンク、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接ロッドを用いることなく、4節回転連鎖機構を構成することができる。従って、振動減衰装置20では、厚みや重量を増やして当該連接ロッドの強度や耐久性を確保する必要がなくなることから、装置全体の重量の増加や大型化を良好に抑制することが可能となる。加えて、連接ロッドを含まない振動減衰装置20では、当該連接ロッドの重量(慣性モーメント)の増加によりクランク部材22の重心Gが回転中心RC側に移動することに起因して復元力Frが低下するのを抑制し、振動減衰性能を良好に確保することができる。また、連接ロッドを含む振動減衰装置では、当該連接ロッドの両端に滑り軸受や転がり軸受といった軸受を設ける必要があることから、連接ロッドの長さの設定の自由度が低下してしまい、ダンパの振動減衰性能を向上させることが困難になることがある。これに対して、振動減衰装置20の仮想軸25には滑り軸受や転がり軸受といった軸受を設ける必要がないことから、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離L3、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接ロッドの長さの設定の自由度を向上させて、軸間距離L3を容易に短くすることが可能となる。従って、当該軸間距離L3の調整により振動減衰装置20の振動減衰性能を容易に向上させることができる。更に、クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンク(連接ロッド)が不要となることで、クランク部材22に作用する遠心力の分力が当該クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンクを平衡状態での位置へと戻すのに使われることはない。従って、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置20の振動減衰性能を向上させることができる。また、第1連結軸21との軸間距離と、仮想軸25との軸間距離とをそれぞれ一定に保つように第2連結軸24を仮想軸25の周りに揺動させることで、ガイド部235によって第2連結軸24をスムースにガイドして振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。この結果、振動減衰装置20では、装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、振動減衰装置20において、慣性質量体23のガイド部235は、一定の曲率半径を有する凹曲面状のガイド面236を含み、第2連結軸24は、第1ドリブンプレート16の回転に伴ってガイド面236に沿って移動する。これにより、第1ドリブンプレート16の回転に伴って、第1連結軸21との軸間距離L2を一定にしながら当該第1連結軸21の周りに第2連結軸24を揺動させると共に、仮想軸25との軸間距離L3を一定にしながら当該仮想軸25の周りに第2連結軸24を揺動させることが可能となる。そして、ガイド面236を曲率が一定の凹曲面状に形成することで、滑りや跳ねの発生を抑制しながらガイド面236上で外輪27をスムースに転動させることが可能となり、ガイド部235により第2連結軸24をスムースにガイドしてトルク変動を安定化させ、それにより振動減衰性能を良好に確保することができる。ただし、ガイド面236は、必ずしも一定の曲率半径を有する凹円柱面である必要はなく、第2連結軸24を上述のように移動させるものであれば、例えば曲率半径が段階的あるいは徐々に変化するように形成された凹曲面であってもよい。
更に、振動減衰装置20は、複数のコロ(転動体)26と、複数のコロ26を介して第2連結軸24により回転自在に支持されると共に、ガイド面236上を転動する外輪27を含み、複数のコロ26、外輪27および第2連結軸24は、転がり軸受を構成する。これにより、第2連結軸24に作用する遠心力に基づく引張荷重が大きくなったとしても、第2連結軸24周辺での摩擦による損失を低下させることができる。この結果、振動減衰装置20の振動次数qを減衰されるべき狙いの振動の次数により近づけて振動減衰性能を良好に向上させることが可能となる。
本発明者らの解析によれば、上記振動減衰装置20の第2連結軸24に作用する遠心力に基づく引張荷重は比較的大きく、当該第2連結軸24の支持構造として上述のような転がり軸受構造を採用することは、第2連結軸24周辺での摩擦による損失を低下させて所望の振動次数qを得る上で極めて有用であることが判明している。加えて、本発明者らの解析によれば、第1連結軸21に作用する遠心力に基づく引張荷重は、第2連結軸24に作用する遠心力に基づく引張荷重に比べて充分に小さいことが判明している。従って、第1連結軸21の支持構造として、上述のような第1ドリブンプレート16およびクランク部材22に設けられた滑り軸受部を採用することができる。これにより、第1連結軸21周辺の構成を簡素化して、装置全体を小型・軽量化することが可能となる。
また、慣性質量体23のガイド部235は、ガイド面236よりも第1ドリブンプレート16や当該慣性質量体23の径方向における内側でガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237を含む。これにより、第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)の回転速度が低い時や静止時に支持面237により第2連結軸24を支持して、クランク部材22および慣性質量体23をより適正に揺動させることが可能となる。
更に、ガイド部235を慣性質量体23に形成すると共に、第2連結軸24をクランク部材22に支持させることで、要求されるクランク部材22および慣性質量体23の重量(慣性モーメント)を確保しつつ、装置全体の重量の増加や大型化を抑制することが可能となる。ただし、ガイド部235は、クランク部材22に形成されてもよく、第2連結軸24は、慣性質量体23により支持されてもよい。
また、上記実施形態のように、環状の慣性質量体23を用いることで、慣性質量体23(環状部材230)に作用する遠心力(および遠心液圧)の当該慣性質量体23の揺動に対する影響を無くすと共に、慣性質量体23の重量の増加を抑制しつつ当該慣性質量体23の慣性モーメントを大きくすることが可能となる。加えて、環状の慣性質量体23を隣り合う突出支持部162の間に延在する第1ドリブンプレート16の外周面161よりも径方向外側に配置することで、慣性質量体23の重量の増加を抑制しつつ当該慣性質量体23の慣性モーメントを大きくすることができる。
更に、上記実施形態において、クランク部材22は、第1ドリブンプレート16の軸方向に対向する2枚のプレート部材220を含み、慣性質量体23は、2枚のプレート部材220の軸方向における間に互いに対向するように配置される2枚の環状部材230を含む。加えて、第1ドリブンプレート16は、2枚の環状部材230の軸方向における間に配置される1枚の板状部材とされる。これにより、一般的な4節回転連鎖機構における連接ロッドの省略により振動減衰装置20の軸長の増加を抑制しつつ、1枚の第1ドリブンプレート16の両側にクランク部材22および慣性質量体23をバランスよく配置して振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、本発明者らの解析によれば、振動減衰装置20において、外輪27とガイド面236との接触部が回転中心RCに近づくほど、ガイド面236に対して外輪27が滑りやすくなることが判明している。従って、振動減衰装置20は、ガイド部235によりガイドされて第2連結軸24が仮想軸25の周りに揺動する際に、当該第2連結軸24の中心が、仮想軸25を通って回転中心RCと仮想軸25とを結ぶ線分と直交する直線(図6A、図6Bおよび図6Cにおける破線参照)よりも回転中心RC側に位置しないように設計されてもよい。すなわち、振動減衰装置20は、第2連結軸24が慣性質量体23に対して平衡状態から両側にそれぞれ90°以下の振れ角で仮想軸25の周りに回動するように設計されてもよい。これにより、第2連結軸24の揺動範囲の全体で外輪27をガイド面236上で滑りなく転動させて当該第2連結軸24をスムースに移動させることができるので、振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。
ところで、上述のような振動減衰装置20では、慣性質量体23の振れ角が大きくなると、振動減衰装置20によって本来減衰されるべき振動の次数(以下、「目標次数」という)qtagと、当該振動減衰装置20により実際に減衰される振動の次数(以下、「有効次数」という)との間にズレを生じることが判明している。また、振動減衰装置20では、平衡状態での位置から慣性質量体23を回転中心周りにある初期角度(慣性質量体23の回転中心周りの振れ角に相当する角度)だけ回転させた状態を初期状態として、第1ドリブンプレート16に振動成分を含まないトルクを付与して当該第1ドリブンプレート16を一定の回転数で回転させた場合、慣性質量体23等は、初期角度に応じた周波数で揺動する。
これらを踏まえて、本発明者らは、上述の軸間距離L3およびL4の和に対する軸間距離L3の比率ρ=L3/(L3+L4)の調整により上述のような次数ズレを抑制すべく、互いに異なる比率ρを有する複数の振動減衰装置20のモデルを用意し、各モデルについて、複数の初期角度(振れ角)ごとに第1ドリブンプレート16に振動成分を含まないトルクを付与し当該第1ドリブンプレート16を一定の回転数(例えば、1000rpm)で回転させるシミュレーションを行った。シミュレーションに用いられた複数のモデルは、何れも4気筒エンジンにおける目標次数qtag=2の振動を減衰するように作成されたLg=L2という関係を満たすものである。このようなシミュレーションを行い、本発明者らは、各モデル(比率ρ)について、慣性質量体23の揺動の周波数と理論値(目標次数qtag=2かつ回転数が1000rpmである場合、33.3Hz)との差分(ズレ量)に基づいて、慣性質量体23の振れ角(初期角度)ごとの有効次数を求めた。
図14に、複数の振動減衰装置20のモデル(比率ρ)における慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角θと有効次数qeffとの関係についての解析結果を示す。同図に示すように、比率ρ=0.05のモデルでは、慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角θが極小さい段階から次数ズレを生じ、有効次数qeffの目標次数qtagからのズレ量は、振れ角θが最大振れ角に達する前に許容範囲から外れてしまった。同様に、比率ρ=0.25のモデルにおいても、慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角θが比較的小さい段階から次数ズレを生じ、有効次数qeffの目標次数qtagからのズレ量は、振れ角θが最大振れ角に達する前に許容範囲から外れてしまった。
これに対して、比率ρ=0.20のモデルでは、慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角θが大きくなると次数ズレを生じるものの、揺動範囲(最大振れ角間)の比較的広い範囲で有効次数qeffの目標次数qtagからのズレ量が許容範囲内に含まれた。また、比率ρ=0.10および0.15のモデルでは、振れ角θの全範囲内で有効次数qeffの目標次数qtagからのズレ量が許容範囲内に含まれた。更に、比率ρ=0.12のモデルでは、振れ角θの全範囲内で有効次数qeffが目標次数qtagに概ね一致した。従って、振動減衰装置20を0.1≦ρ=L3/(L3+L4)≦0.2という関係、より好ましくは0.1≦ρ≦0.15という関係を満たすように構成すれば、慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角θが大きくなったときの有効次数qeffの変化(次数ズレ)をより小さくして、振動減衰装置20の振動減衰性能をより良好に向上させ得ることが理解されよう。
なお、上記振動減衰装置20のように、第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さLgを第1連結軸21と第2連結軸24との軸間距離L2に一致させることで、第1連結軸21の支持部(軸受部)に作用する荷重(負荷)をより小さくすることが可能となる。ただし、長さLgと軸間距離L2とは必ずしも一致している必要はない。すなわち、振動減衰装置20は、図15に示すように、Lg>L2という関係を満たすように構成されてもよい。これにより、Lg=L2という関係を満たす場合に比べて第1連結軸21の支持部(軸受部)に作用する荷重(負荷)が増加することになるが、てこの作用によってクランク部材22に作用する復元力Frをより一層大きくすることが可能となる。また、図15に示す例では、クランク部材22の重心Gが第1および第2連結軸21,24の中心を通る直線上に位置しているが、必ずしも重心Gが第1および第2連結軸21,24の中心を通る直線上に位置している必要はない。このように第2連結軸24の中心とクランク部材22の重心Gとが同軸に延在しない場合であっても、平衡状態でクランク部材22の重心Gに作用する復元力Frがゼロよりも大きくなれば、クランク部材22に作用する遠心力の第1連結軸21の中心から第2連結軸24の中心に向かう方向と直交する方向の分力もゼロよりも大きくなることはいうまでもない。
また、上記ガイド部235は、ガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237およびストッパ面238を含むが、図16に示すように、当該支持面237およびストッパ面238は省略されてもよい。図16に示す環状部材230Xの突出部232に形成されるガイド部235Xは、一定の曲率半径を有する凹曲面状(凹円柱面状)のガイド面236を有する概ね半円状の切り欠きとされる。これにより、第2連結軸24をガイドするガイド部235Xの構造、ひいては振動減衰装置20の構造を簡素化することが可能となる。なお、ガイド部235Xと同様のガイド部がクランク部材22のプレート部材220に形成されてもよいことはいうまでもない。
更に、上記実施形態において、環状の慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16により回転自在により支持(調心)されるように構成されてもよい。これにより、クランク部材22が揺動する際に、慣性質量体23を第1ドリブンプレート16の回転中心RC周りにスムースに揺動させることが可能となる。この場合、2枚の環状部材230の本体231の軸方向における間に、第1ドリブンプレート16の突出支持部162の外周面に摺接するスペーサを配置(固定)してもよく、2枚の環状部材230の突出部232の軸方向における間に、第1ドリブンプレート16の外周面161に摺接するスペーサを配置(固定)してもよい。
また、上記振動減衰装置20において、環状の慣性質量体23は、互いに同一の諸元(寸法、重量等)を有する複数(例えば4個)の質量体で置き換えられてもよい。この場合、各質量体は、平衡状態で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共に回転中心RCの周りに揺動するようにクランク部材22(2枚のプレート部材220)、第2連結軸24およびガイド部235を介して第1ドリブンプレート16に連結される例えば円弧状の平面形状を有する金属板により構成されてもよい。更に、この場合、第1ドリブンプレート16の外周部には、各質量体に作用する遠心力(遠心油圧)を受けながら各質量体を回転中心RC周りに揺動するようにガイドするガイド部が設けられてもよい。このような複数の質量体を含む振動減衰装置20においても、振動次数qの設定の自由度を向上させることが可能となり、クランク部材22ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることができる。
更に、クランク部材22に作用する復元力Frが低下することになるが、振動減衰装置20は、L1+L2<L3+L4(図9、図10A、図10Bおよび図10C参照)を満たすように構成されてもよい。これにより、4節回転連鎖機構における思案点を無くして第2および第3リンクを安定かつスムースに揺動させることが可能となる。この場合、軸間距離L2は、軸間距離L1,L3およびL4よりも短くされるとよい。このような関係を満たす場合、第1ドリブンプレート16、各クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、第1ドリブンプレート16(回転要素)を固定節とすると共にクランク部材22の揺動運動を慣性質量体23の揺動運動に変換するてこクランク機構を構成する。これにより、平衡状態での位置からクランク部材22が第1ドリブンプレート16(回転要素)に対して揺動し始めた際に、慣性質量体23に作用する回転中心RC周りのモーメントをより一層大きくすると共に、クランク部材22が揺動範囲における一端に達した際に慣性質量体23に作用する復元力をより一層大きくすることが可能となる。
また、上記実施形態では、ダンパ装置10の回転要素である第1ドリブンプレート16自体が振動減衰装置20の第1リンクとなるが、これに限られるものではない。すなわち、振動減衰装置20は、クランク部材22を揺動自在に支持して当該クランク部材22と回り対偶をなすと共に慣性質量体23と回り待遇をなす専用の支持部材(第1リンク)を含むものであってもよい。すなわち、クランク部材22は、第1リンクとしての専用の支持部材を介して間接的に回転要素に連結されてもよく、この場合、振動減衰装置20の支持部材は、振動の減衰対象となる例えばダンパ装置10のドライブ部材11、中間部材12あるいは第1ドリブンプレート16といった回転要素に同軸かつ一体に回転するように連結されればよい。このように構成される振動減衰装置20によっても、回転要素の振動を良好に減衰することが可能となる。
そして、振動減衰装置20は、上記ダンパ装置10のドライブ部材(入力要素)11に連結されてもよく、中間部材12に連結されてもよい。また、振動減衰装置20は、図17に示すダンパ装置10Bに適用されてもよい。図17のダンパ装置10Bは、上記ダンパ装置10から中間部材12を省略したものに相当し、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11およびドリブン部材15(出力要素)を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11とドリブン部材15との間に配置されるスプリングSPを含むものである。この場合、振動減衰装置20は、図示するようにダンパ装置10Bのドリブン部材15に連結されてもよく、ドライブ部材11に連結されてもよい。
更に、振動減衰装置20は、図18に示すダンパ装置10Cに適用されてもよい。図18のダンパ装置10Cは、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11、第1中間部材(第1中間要素)121、第2中間部材(第2中間要素)122、およびドリブン部材(出力要素)15を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11と第1中間部材121との間に配置される第1スプリングSP1、第2中間部材122とドリブン部材15との間に配置される第2スプリングSP2、および第1中間部材121と第2中間部材122との間に配置される第3スプリングSP3を含む。この場合、振動減衰装置20は、図示するようにダンパ装置10Cのドリブン部材15に連結されてもよく、ドライブ部材11、第1中間部材121あるいは第2中間部材122に連結されてもよい。何れにしても、ダンパ装置10,10B,10Cの回転要素に振動減衰装置20を連結することで、ダンパ装置10〜10Cの重量の増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10〜10Cと振動減衰装置20との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
以上説明したように、本開示の振動減衰装置は、回転要素(15,16)の振動を減衰する振動減衰装置(20)であって、前記回転要素(15,16)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15,16)と一体に回転する支持部材(16)と、第1連結軸(21)を介して前記支持部材(16)に回転自在に連結される復元力発生部材(22)と、前記回転中心(RC)の周りに回転可能な慣性質量体(23)と、前記復元力発生部材および慣性質量体(22,23)の一方により支持されると共に、該復元力発生部材および慣性質量体(22,23)を相対回転自在に連結する第2連結軸(24)と、前記復元力発生部材および慣性質量体(22,23)の他方に形成され、前記支持部材(16)の回転に伴って、前記第2連結軸(24)が前記第1連結軸(21)との軸間距離(L2)を一定に保ちながら該第1連結軸(21)の周りに揺動すると共に前記慣性質量体(23)に対する相対位置が不変となるように定められた仮想軸(25)との軸間距離(L3)を一定に保ちながら該仮想軸(25)の周りに揺動するように該第2連結軸(24)をガイドするガイド部(235)とを備えるものである。
この振動減衰装置において、支持部材(回転要素)が一方向に回転すると、第2連結軸は、ガイド部によりガイドされながら復元力発生部材に連動することで、第1連結軸との軸間距離を一定に保ちながら当該第1連結軸の周りに揺動(往復回転運動)すると共に慣性質量体に対する相対位置が不変となる仮想軸との軸間距離を一定に保ちながら当該仮想軸の周りに揺動(往復回転運動)する。すなわち、復元力発生部材は、第2連結軸の移動に応じて第1連結軸の周りに揺動し、仮想軸および慣性質量体は、移動する第2連結軸の周りに揺動すると共に、回転要素(支持部材)の回転中心周りに揺動(往復回転運動)することになる。この結果、支持部材、復元力発生部材、慣性質量体、第1および第2連結軸、並びにガイド部は、実質的に、支持部材(回転要素)を固定節とする4節回転連鎖機構を構成する。従って、支持部材(回転要素)の回転に伴い、慣性質量体から、回転要素の振動とは逆位相の振動をガイド部、第2連結軸および復元力発生部材を介して支持部材と一体に回転する回転要素に付与し、回転要素の振動を減衰することが可能となる。
そして、この振動減衰装置では、復元力発生部材および慣性質量体の双方に連結されるリンク、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接部材を用いることなく、4節回転連鎖機構を構成することができる。従って、振動減衰装置全体の重量の増加や大型化を抑制することが可能となる。また、仮想軸には滑り軸受や転がり軸受といった軸受を設ける必要がないことから、第2連結軸と仮想軸との軸間距離、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接部材の長さの設定の自由度を向上させることができる。従って、当該軸間距離の調整により振動減衰装置の振動減衰性能を容易に向上させることが可能となる。更に、復元力発生部材および慣性質量体の双方に連結されるリンクが不要となることで、復元力発生部材に作用する遠心力の分力が当該復元力発生部材および慣性質量体の双方に連結されるリンクを平衡状態での位置へと戻すのに使われることはない。従って、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置の振動減衰性能を向上させることができる。また、第1連結軸との軸間距離と、仮想軸との軸間距離とをそれぞれ一定に保つように第2連結軸を仮想軸の周りに揺動させることで、ガイド部によって第2連結軸をスムースにガイドして振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。この結果、この振動減衰装置では、装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。なお、支持部材は、回転要素自体であってもよく、回転要素とは別体の部材であってもよい。
また、前記振動減衰装置(20)は、前記ガイド部(235)によりガイドされて前記第2連結軸(24)が前記仮想軸(25)の周りに揺動する際に、前記第2連結軸(24)の中心が、前記仮想軸(25)を通って前記回転中心(RC)と前記仮想軸(25)とを結ぶ線分と直交する直線よりも前記回転中心(RC)側に位置しないように設計されてもよい。これにより、第2連結軸をその揺動範囲の全体でスムースに移動させることができるので、振動減衰性能を良好に確保することが可能となる。
更に、前記ガイド部(235)は、凹円柱面状のガイド面(236)を含んでもよく、前記第2連結軸(24)は、前記支持部材(16)の回転に伴って前記ガイド面(236)に沿って移動してもよい。これにより、支持部材(回転要素)の回転に伴って、第1連結軸との軸間距離を一定にしながら当該第1連結軸の周りに第2連結軸を揺動させると共に、仮想軸との軸間距離を一定にしながら当該仮想軸の周りに第2連結軸を揺動させることが可能となる。そして、ガイド面を曲率が一定の凹円柱面状に形成することで、ガイド部により第2連結軸をスムースにガイドしてトルク変動を安定化させ、それにより振動減衰性能を良好に確保することができる。
また、前記振動減衰装置(20)は、複数の転動体(26)と、前記複数の転動体(26)を介して前記第2連結軸(24)により回転自在に支持されると共に前記ガイド面(236)上を転動する外輪(27)とを更に備えてもよい。かかる振動減衰装置において、ボールやコロといった複数の転動体、外輪および第2連結軸は、転がり軸受を構成する。これにより、第2連結軸に作用する遠心力に基づく引張荷重が大きくなったとしても、第2連結軸周辺での摩擦による損失を低下させることができる。この結果、振動減衰装置の振動次数を減衰されるべき狙いの振動の次数により近づけて振動減衰性能を良好に向上させることが可能となる。
更に、前記ガイド部(235)は、前記ガイド面(236)よりも前記回転要素(15,16)の径方向における内側で該ガイド面(236)と対向する凸曲面状の支持面(237)を含んでもよい。これにより、回転要素(支持部材)の回転速度が低い時や静止時に支持面により第2連結軸を支持して、復元力発生部材および慣性質量体をより適正に揺動させることが可能となる。ただし、支持面は、ガイド部から省略されてもよい。
また、前記第1連結軸(21)は、前記支持部材および復元力発生部材(16,22)の少なくとも何れか一方に設けられた滑り軸受部により回転自在に支持されてもよい。これにより、第1連結軸周辺の構成を簡素化して、装置全体を小型・軽量化することが可能となる。
更に、前記慣性質量体(23)は、少なくとも1つの環状部材(230)を含んでもよい。これにより、慣性質量体に作用する遠心力(および遠心液圧)の当該慣性質量体の揺動に対する影響を無くすと共に、慣性質量体の重量の増加を抑制しつつ当該慣性質量体の慣性モーメントを大きくすることが可能となる。
また、前記復元力発生部材(22)は、円弧状の平面形状を有する少なくとも1つのプレート部材(220)を含んでもよい。これにより、振動減衰装置が油中に配置される場合に、復元力発生部材に作用する遠心油圧による力の上記復元力(復元力発生部材に作用する遠心力の分力)に対する影響を良好に小さくすることが可能となる。
更に、前記復元力発生部材(22)は、前記回転要素(15,16)の軸方向に対向する2枚のプレート部材(220)を含んでもよく、前記慣性質量体(23)は、前記2枚のプレート部材(220)の前記軸方向における間に互いに対向するように配置される2枚の環状部材(230)を含んでもよく、前記支持部材(16)は、前記2枚の環状部材(230)の前記軸方向における間に配置される1枚の板状部材であってもよい。これにより、一般的な4節回転連鎖機構における連接部材の省略により振動減衰装置の軸長の増加を抑制しつつ、1枚の支持部材の両側に復元力発生部材および慣性質量体をバランスよく配置して振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
また、前記ガイド部(235)は、前記慣性質量体(23)に形成されてもよく、前記第2連結軸(24)は、前記復元力発生部材(22)により支持されてもよい。これにより、要求される復元力発生部材および慣性質量体の重量(慣性モーメント)を確保しつつ、装置全体の重量の増加や大型化を抑制することが可能となる。ただし、前記ガイド部は、前記復元力発生部材に形成されてもよく、前記第2連結軸は、前記慣性質量体により支持されてもよい。
更に、前記支持部材(16)は、少なくとも入力要素(11)および出力要素(15)を含む複数の回転要素(11,12,121,122,15)と、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクを伝達する弾性体(SP,SP1,SP2,SP3)とを有するダンパ装置(10,10B,10C)の何れかの回転要素と同軸かつ一体に回転してもよい。このようにダンパ装置の回転要素に上記振動減衰装置を連結することで、ダンパ装置の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置と上記振動減衰装置との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
また、前記ダンパ装置(10,10B,10C)の前記入力要素(11)は、原動機(EG)の出力軸に作用的(直接的または間接的)に連結されてもよく、前記ダンパ装置(10,10B,10C)の前記出力要素(15)は、変速機(TM)の入力軸(Is)に作用的(直接的または間接的)に連結されてもよい。
更に、前記振動減衰装置(20)の平衡状態では、前記支持部材(16)の回転に伴って前記復元力発生部材(22)に作用する遠心力の前記第1連結軸(21)の中心から該復元力発生部材(22)の重心(G)に向かう方向と直交する方向の分力がゼロよりも大きくなってもよい。すなわち、上述のような振動減衰装置では、支持部材の回転に伴って復元力発生部材に作用する遠心力の第1連結軸の中心から当該復元力発生部材の重心に向かう方向と直交する方向の分力が、復元力発生部材やそれに連結される慣性質量体を平衡状態での位置へと戻す復元力(モーメント)として作用する。従って、平衡状態における当該遠心力の分力がゼロよりも大きくなるように振動減衰装置を構成すれば、平衡状態で復元力発生部材に作用する上記遠心力の分力がゼロになる場合に比べて、復元力発生部材に作用する遠心力が同一であるときの復元力をより大きくすることができる。従って、この振動減衰装置では、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置の等価剛性をより大きくすることが可能となり、等価剛性および等価質量すなわち振動次数の設定の自由度を向上させることができる。この結果、復元力発生部材ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。ただし、本開示の振動減衰装置は、平衡状態で復元力発生部材に作用する遠心力の第1連結軸の中心から第2連結軸の中心に向かう方向と直交する方向の分力がゼロよりも大きくなるように構成されてもよい。
また、前記復元力発生部材(22)は、前記平衡状態での位置と、該平衡状態での位置から前記第1連結軸(21)の周りの一方向に回転した折り返し位置との間で当該第1連結軸(A1)の周りに揺動してもよく、前記慣性質量体(24)は、前記平衡状態での位置を中心とした揺動範囲内で前記回転中心(RC)の周りに揺動してもよい。すなわち、かかる振動減衰装置では、慣性質量体が回転中心の周りに常に回転要素(支持部材)と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、復元力発生部材は、連結軸の周りに回転要素等と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、当該回転要素等と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響をより小さくすることが可能となる。
更に、前記復元力発生部材(22)が、前記平衡状態での位置から前記折り返し位置に移動すると共に該折り返し位置から前記平衡状態での位置に戻る動作を2回行う間に、前記慣性質量体(24)は、前記平衡状態での位置から前記揺動範囲の一端まで移動した後、前記平衡状態での位置に戻り、更に前記揺動範囲の他端まで移動した後、前記平衡状態での位置に戻ってもよい。これにより、復元力発生部材の連結軸周りの振れ角(揺動範囲)をより小さくし、揺動する復元力発生部材(および慣性質量体)に作用する復元力をより大きくすることが可能となる。
また、前記回転要素(15,16)の前記回転中心(RC)と前記第1連結軸(21)との軸間距離を“L1”とし、前記第1連結軸(21)と前記第2連結軸(24)との軸間距離を“L2”とし、前記第2連結軸(24)と前記仮想軸(25)との軸間距離を“L3”とし、前記仮想軸(25)と前記回転中心(RC)との軸間距離を“L4”としたときに、前記振動減衰装置(20)は、L1+L2>L3+L4を満たしてもよい。
このように、L1+L2>L3+L4という関係を満たすように振動減衰装置を構成することで、復元力発生部材に作用する遠心力の方向と、支持部材と復元力発生部材とを連結する第1連結軸の中心から復元力発生部材の重心に向かう方向とのなす角度を90°に近づけることができる。すなわち、かかる振動減衰装置では、復元力発生部材に作用する復元力(遠心力の分力)の方向を遠心力の方向により近づけることが可能となる。これにより、L1+L2>L3+L4という関係を満たさない場合に比べて、復元力発生部材に作用する遠心力が同一であるときの復元力をより大きくすることができるので、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置の等価剛性をより大きくすることが可能となる。更に、L1+L2>L3+L4という関係が成立する場合、慣性質量体に比べて復元力発生部材の揺動が制限され(振れ角が小さくなり)、慣性質量体が回転中心の周りに常に回転要素(支持部材)と逆方向に(逆位相で)回転するのに対し、復元力発生部材は、第1連結軸の周りに回転要素と逆方向に(逆位相で)回転するだけではなく、当該回転要素と同方向にも(同位相で)回転することになる。これにより、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響を非常に小さくして、等価剛性および等価質量すなわち振動次数の設定の自由度をより向上させることができる。この結果、復元力発生部材ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。
更に、前記軸間距離L3は、前記軸間距離L1,L2およびL4よりも短くてもよい。すなわち、上述のような振動減衰装置の等価剛性は、軸間距離L3およびL4の和に対する当該軸間距離L3の比(L3/(L3+L4))の二乗値に反比例する。従って、軸間距離L3を軸間距離L1,L2およびL4よりも短くすることで、復元力発生部材の重量の増加を抑制しつつ、等価剛性をより大きくすることが可能となる。加えて、軸間距離L3をより短くすることで、復元力発生部材の振れ角をより小さくすることができるので、等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響をより一層小さくすると共に、装置全体のコンパクト化を図ることが可能となる。そして、本開示の振動減衰装置では、仮想軸に滑り軸受や転がり軸受といった軸受を設ける必要がないことから、軸間距離L3を容易に短くすることができる。
また、前記軸間距離L1は、前記軸間距離L2,L3およびL4よりも長くてもよい。これにより、復元力発生部材を回転要素の回転中心から離間させて当該復元力発生部材の重心をより径方向外側に位置させることができるので、復元力発生部材に作用する遠心力の分力すなわち復元力をより大きくすることが可能となる。加えて、L1+L2>L3+L4という関係を満たしつつ軸間距離L1を最長にすることで、第1連結軸の中心を通ると共に上記回転中心を中心とする円周に沿うように復元力発生部材を配置すると共に、復元力発生部材の振れ角を小さくすることができる。これにより、振動減衰装置が油中に配置される場合に、復元力発生部材に作用する遠心油圧による力の上記復元力に対する影響を小さくすると共に、復元力発生部材が揺動する際の遠心油圧による力の変動を小さくすることが可能となる。
更に、前記振動減衰装置(20)は、L1>L4>L2>L3を満たすように構成されてもよい。これにより、振動減衰装置の等価剛性を実用上良好に確保すると共に、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響を実用上無視し得る程度まで小さくすることが可能となる。
また、前記振動減衰装置(20)は、L1+L2<L3+L4を満たすものであってもよい。これにより、4節回転連鎖機構における思案点を無くして復元力発生部材および慣性質量体を安定かつスムースに揺動させることが可能となる。この場合、前記軸間距離L2は、前記軸間距離L1,L3およびL4よりも短くてもよい。かかる振動減衰装置において、支持部材、復元力発生部材、慣性質量体、第1および第2連結軸、並びにガイド部は、実質的に、支持部材(回転要素)を固定節とすると共に復元力発生部材の揺動運動を慣性質量体の揺動運動に変換するてこクランク機構を構成する。従って、かかる振動減衰装置では、平衡状態での位置から復元力発生部材が支持部材に対して揺動し始めた際に、慣性質量体に作用する上記回転中心周りのモーメントをより一層大きくすると共に、復元力発生部材が揺動範囲における一端に達した際に慣性質量体に作用する復元力をより一層大きくすることが可能となる。
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。