JP6481802B1 - Cr−Fe−Ni系合金製造物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
前記合金は、その化学組成が、
45質量%以上75質量%以下のCrと、
10質量%以上33質量%以下のFeと、
10質量%以上40質量%以下のNiと、
0質量%超2質量%以下のMn(マンガン)と、
0質量%超1質量%以下のSi(ケイ素)と、
0.005質量%以上0.2質量%以下のAl(アルミニウム)と、
0質量%超2質量%以下のC(炭素)と、
0質量%超2質量%以下のN(窒素)と、
0質量%超0.2質量%以下のO(酸素)と、
0質量%超0.06質量%以下のP(リン)と、
0質量%超0.01質量%以下のS(硫黄)とを含み、
前記製造物は、その微細組織においてフェライト相の占有率が60%以上であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物を提供するものである。
(i)前記Cr、前記Feおよび前記Niが、それぞれ50質量%以上75質量%以下のCr、10質量%以上33質量%以下のFe、および10質量%以上17質量%未満のNiである。
(ii)随意成分として、0.1質量%以上5質量%以下のCu(銅)、0.1質量%以上3質量%以下のMo(モリブデン)、および0.02質量%以上0.3質量%以下のSn(スズ)のうちの少なくとも一種を更に含む。
(iii)随意成分として、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)およびTi(チタン)のうちの少なくとも一種を更に含み、
前記V、Nb、TaおよびTiの合計原子含有率が、前記C、NおよびOの合計原子含有率の0.8倍以上2倍以下の範囲である。
(iv)JIS(日本工業規格) G 0591に準拠した硫酸腐食試験を行った場合に、平均質量減少速度が0.1 g/(m2・h)未満である。
(v)前記製造物のビッカース硬さが600 HV1以上である。
(vi)前記製造物のビッカース硬さが700 HV1以上である。
(vii)前記製造物は、鋳造組織を有する鋳造成形体である。
(viii)前記製造物は、再結晶組織を有する成形体である。
(ix)前記製造物は、急冷凝固組織を有する急冷凝固成形体である。
(x)前記製造物は、急冷凝固組織を有する粉体である。
(xi)前記急冷凝固成形体は、基材上に前記急冷凝固組織を有するCr-Fe-Ni系合金の被覆層が形成された複合体である。
(xii)前記製造物は、焼結組織を有する粉末冶金成形体である。
なお、本発明において、随意成分とは、含有してもよいし含有しなくてもよい成分を意味する。
前記合金は、その化学組成が、
54質量%以上75質量%以下のCrと、
10質量%以上27質量%以下のFeと、
10質量%以上25質量%以下のNiと、
0質量%超2質量%以下のMnと、
0質量%超0.5質量%以下のCと、
0質量%超0.1質量%以下のNと、
0質量%超2.8質量%以下のOとを含み、
残部が不純物からなることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物を提供するものである。
(xiii)前記Niが10質量%以上17質量%未満である。
(xiv)水素イオン指数pH=1、30℃の硫酸水溶液中における硫酸腐食試験を行った場合に、平均質量減少速度が0.02 mg/(cm2・h)未満である。
(xv)前記製造物のビッカース硬さが700 HV1以上である。
(xvi)前記製造物のビッカース硬さが800 HV1以上である。
(xvii)前記製造物は、鋳造組織を有する鋳造成形体である。
(xviii)前記製造物は、再結晶組織を有する成形体である。
(xix)前記製造物は、急冷凝固組織を有する急冷凝固成形体である。
(xx)前記製造物は、急冷凝固組織を有する粉体である。
(xxi)前記急冷凝固成形体は、基材上に前記急冷凝固組織を有するCr-Fe-Ni系合金の被覆層が形成された複合体である。
(xxii)前記製造物は、焼結組織を有する粉末冶金成形体である。
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯を鋳造して鋳造成形体を形成する鋳造工程と、
前記鋳造成形体に対して800℃以上950℃以下の焼鈍熱処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍した鋳造成形体に対して所望の形状となるように機械加工を施して機械加工成形体を形成する機械加工工程と、
前記機械加工成形体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法を提供するものである。
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯を鋳造して鋳造成形体を形成する鋳造工程と、
前記鋳造成形体に対して塑性加工を施して塑性加工成形体を形成する塑性加工工程と、
前記塑性加工成形体に対して800℃以上950℃以下の焼鈍熱処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍した塑性加工成形体に対して所望の形状となるように機械加工を施して機械加工成形体を形成する機械加工工程と、
前記機械加工成形体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法を提供するものである。
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法を提供するものである。
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
前記合金粉末を用いてプレス成型または射出成型を行って粉末成形体を形成する粉末成型工程と、
前記粉末成形体に対して1000℃以上で前記合金の固相線温度未満の焼結熱処理を施して粉末焼結体を形成する焼結工程と、
前記粉末焼結体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法を提供するものである。
(xxiii)前記焼結熱処理は、1000℃以上で前記合金の固相線温度未満かつ500気圧以上3000気圧以下の熱間等方圧加圧処理を含む。
(xxiv)前記原料混合溶解工程は、前記原料を混合・溶解して溶湯を形成した後に一旦凝固させて原料合金塊を形成する原料合金塊形成素工程と、前記原料合金塊を再溶解して清浄化溶湯を用意する再溶解素工程とからなる。
前述したように、本発明に係る合金は、Cr、FeおよびNiを主要成分とするCr-Fe-Ni系合金であり、副成分としてMn、Si、Al、C、NおよびOを含み、不純物(例えば、PおよびS)を含む。随意的にCu、MoおよびSnのうちの一種以上、および/またはV、Nb、TaおよびTiのうちの一種以上を更に含んでもよい。なお、主要成分と副成分と随意成分との合計含有率は99質量%超が好ましい。言い換えると、不純物の含有率は1質量%未満が好ましい。
Cr成分は、本Cr-Fe-Ni系合金の主要成分の1つであり、高耐食性のフェライト相の形成に寄与すると共に、オーステナイト相においても耐食性の向上に寄与する成分である。加えて、合金材の表面にCr酸化物被膜(例えば、Cr2O3)を形成した場合に、耐食性を更に向上させる作用効果もある。Cr成分の含有率は、45質量%以上75質量%以下が好ましい。Cr含有率が45質量%未満になると、Cr-Fe-Ni系合金の耐食性および機械的特性(例えば、硬さ、延性、靱性)が不十分になる。一方、Cr含有率が75質量%超になると、Cr-Fe-Ni系合金の機械的特性が低下する。
Fe成分も、本Cr-Fe-Ni系合金の主要成分の1つであり、良好な機械的特性を確保するための基本成分である。Fe成分の含有率は、10質量%以上33質量%以下が好ましい。Fe含有率が10質量%未満になると、Cr-Fe-Ni系合金の機械的特性が不十分になる。一方、Fe含有率が33質量%超になると、800℃近傍の温度域で脆性の金属間化合物のσ相(FeCr相を基本とする金属間化合物相)が生成し易くなり、Cr-Fe-Ni系合金の延性・靱性が著しく低下する(いわゆるσ相脆化)。言い換えると、Feの含有率を10〜33質量%の範囲に制御することにより、Cr-Fe-Ni系合金のσ相脆化を抑制して良好な機械的特性を確保することができる。
Ni成分も、本Cr-Fe-Ni系合金の主要成分の1つであり、良好な加工性を有するオーステナイト相の形成に寄与すると共に、フェライト相においても延性・靱性の向上に寄与する成分である。Ni成分の含有率は、10質量%以上40質量%以下が好ましい。Ni含有率が10質量%未満になると、Cr-Fe-Ni系合金の加工性が低下する。一方、Ni含有率が40質量%超になると、Cr-Fe-Ni系合金の硬さが不十分になる。
Fe成分とNi成分との合計含有率は、25質量%以上50質量%以下が好ましい。該合計含有率が25質量%未満になると、Cr-Fe-Ni系合金の加工性が不十分になる。一方、該合計含有率が50質量%超になると、機械的特性が不十分になる。
Mn成分は、本Cr-Fe-Ni系合金の副成分の1つであり、脱硫・脱酸素の役割を担って機械的特性の向上および耐炭酸ガス腐食性の向上に寄与する成分である。Mn成分の含有率は、0質量%超2質量%以下が好ましい。Mn含有率が2質量%超になると、硫化物(例えばMnS)の粗大粒子を形成して耐食性や機械的特性の低下要因になる。
Si成分も、本Cr-Fe-Ni系合金の副成分の1つであり、脱酸素の役割を担って機械的特性の向上に寄与する成分である。Si成分を含有させる場合、その含有率は、0質量%超1質量%以下が好ましい。Si含有率が1質量%超になると、酸化物(例えばSiO2)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
Al成分も、本Cr-Fe-Ni系合金の副成分の1つであり、MnおよびSi成分と組み合わせることで脱酸素作用の向上に寄与する成分である。Al成分を含有させる場合、その含有率は、0.005質量%以上0.2質量%以下が好ましい。Al含有率が0.005質量%未満になると、Al成分による作用効果が十分に得られない。また、Al含有率が0.2質量%超になると、酸化物や窒化物(例えば、Al2O3やAlN)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
C成分は、母相中に固溶したり炭化物として晶出または析出したりすることによって合金を硬化させる作用効果がある。また、本合金の粉末を焼結させる場合(例えば、後述する焼結工程において)、焼結性を向上させる作用効果がある。C成分の含有率は、0質量%超2質量%以下に制御することが好ましい。C含有率が2質量%超になると、本Cr-Fe-Ni系合金の構成成分と化合して粗大粒子(例えばCr炭化物粒子)を形成して耐食性や機械的特性の低下要因になる。
N成分は、母相中に固溶したり窒化物として晶出または析出したりすることによって機械的特性(例えば硬さ)を向上させる作用効果がある。N成分の含有率は、0質量%超2質量%以下に制御することが好ましい。N含有率が2質量%超になると、本Cr-Fe-Ni系合金の構成成分と化合して粗大粒子(例えばCr窒化物粒子)を形成して機械的特性(特に、延性、靱性)の低下要因になる。
O成分は、前述したCr-Fe-Ni系合金製造物(I)において、該合金の構成成分と化合して微細な酸化物粒子を形成した場合に、機械的特性(例えば硬さ)を向上させる作用効果がある。O成分の含有率は、0質量%超0.2質量%以下に制御することが好ましい。O含有率が0.2質量%超になると、粗大な酸化物粒子(例えば、Fe酸化物粒子、Si酸化物粒子、Al酸化物粒子)を形成して機械的特性(特に、延性、靱性)の低下要因になる。
P成分は、本Cr-Fe-Ni系合金の結晶粒界に偏析し易く、機械的特性や粒界の耐食性を低下させる不純物成分である。P成分の含有率を0.06質量%以下に制御することで、それらの負の影響を抑制することができる。P含有率は、0.03質量%以下がより好ましい。
S成分は、本Cr-Fe-Ni系合金の構成成分と化合して比較的低融点の硫化物(例えば、Fe硫化物、Mn硫化物)を生成し易く、機械的特性や耐孔食性を低下させる不純物成分である。S成分の含有率を0.01質量%以下に制御することで、それらの負の影響を抑制することができる。S含有率は、0.003質量%以下がより好ましい。
Cu成分は、本Cr-Fe-Ni系合金において耐食性の向上に寄与する随意成分である。Cu成分を含有する場合、その含有率は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上4質量%以下がより好ましい。Cu含有率が0.1質量%未満になると、Cu成分に基づく作用効果が十分に得られない(特段の不具合は生じない)。また、Cu含有率が5質量%超になると、フェライト相中にCu析出物を生成し易くなり、合金の延性・靭性の低下要因になる。
Mo成分は、本Cr-Fe-Ni系合金において耐食性の向上に寄与する随意成分である。具体的には、不動態皮膜の安定化に寄与し、耐孔食性の向上が期待できる。Mo成分を含有する場合、その含有率は、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。Mo含有率が0.1質量%未満になると、Mo成分に基づく作用効果が十分に得られない(特段の不具合は生じない)。また、Mo含有率が3質量%超になると、脆化相(例えばσ相)の生成を助長し、合金の延性・靭性の低下要因になる。
Sn成分は、本Cr-Fe-Ni系合金において不動態皮膜強化の役割を担い、耐食性・耐摩耗性の向上に寄与する随意成分である。具体的には、塩化物イオンや酸性の腐食環境に対する耐性の向上が期待できる。Sn成分の含有率は、0.02質量%以上0.3質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。Sn含有率が0.02質量%未満になると、Sn成分に基づく作用効果が十分に得られない(特段の不具合は生じない)。また、Sn含有率が0.3質量%超になると、Sn成分の粒界偏析を生じさせて合金の延性・靱性の低下要因になる。
本発明に係るCr-Fe-Ni系合金製造物の微細組織(金属組織とも言う)について説明する。
次に、本発明のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法について説明する。
図2は、本発明に係るCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法の一例であり、鋳造材の製造方法を示す工程図である。図2に示したように、まず、所望の組成(主要成分+副成分+必要に応じて随意成分)となるようにCr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯10を形成する原料混合溶解工程(ステップ1:S1)を行う。原料の混合方法や溶解方法に特段の限定はなく、高耐食性・高強度合金の製造における従前の方法を利用できる。溶湯10を精錬してもよい。
図3は、本発明に係るCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法の他の一例であり、塑性加工材の製造方法を示す工程図である。図3では、棒状材を作製する工程について示した。また、図面の簡単化のため、原料合金塊形成素工程S1aおよび再溶解素工程S1bの記載を省略したが、当然のことながらそれらの素工程を行ってもよい。
図4は、本発明に係るCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法の他の一例であり、急冷凝固材の製造方法を示す工程図である。図4では、粉体および肉盛溶接材を作製する工程について示した。また、図面の簡単化のため、原料合金塊形成素工程S1aおよび再溶解素工程S1bの記載を省略したが、当然のことながらそれらの素工程を行ってもよい。
図5は、本発明に係るCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法の他の一例であり、粉末冶金材の製造方法を示す工程図である。図5では、粉末焼結体を作製する工程について示した。また、図面の簡単化のため、原料合金塊形成素工程S1aおよび再溶解素工程S1bの記載を省略したが、当然のことながらそれらの素工程を行ってもよい。
上記のようにして製造したCr-Fe-Ni系合金製造物は、マルテンサイト系ステンレス鋼と同等以上の機械的特性と高い耐食性とを有しながら、Niに比して安価なCrを最大成分とすることから、Ni基合金製造物よりも低コスト化を図ることができる。
(発明合金IA-1〜IA-13および比較合金CA-1〜CA-6の用意)
表1に示す名目化学組成となるように、原料を混合し高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、溶湯を鋳造して鋳造成形体(ここでは塑性加工用インゴット)を用意した(鋳造工程S2)。
(発明鍛造製造物IFP-1〜IFP-28および比較鍛造製造物CFP-1〜CFP-8の作製)
実験1で用意した塑性加工用インゴットに対して、所定の形状となるように熱間鍛造を行って塑性加工成形体を用意した(塑性加工工程S6)。熱間鍛造条件としては、鍛造温度950〜1250℃、ひずみ速度8 mm/s以下、鍛造1回あたりの圧下量10 mm以下、鍛造回数6回以上とした。
(IFP-1〜IFP-28およびCFP-1〜CFP-8に対する試験・評価)
(1)微細組織評価
各鍛造製造物から組織観察用の試験片を採取した後、該試験片の表面を鏡面研磨し、シュウ酸水溶液中で電界エッチングを行った。該研磨表面を光学顕微鏡で観察した。
機械的特性評価として、ビッカース硬度計を用いてビッカース硬さ試験(荷重1 kg、荷重付加時間10 s)を行った。ビッカース硬さHV1は5点測定の平均値として求めた。機械的特性評価用の試料は、硬化させた試料として先の組織観察用試験片を用い、軟化させた試料として焼鈍した熱間加工成形体から採取した試験片を用いた。
耐食性評価として耐硫酸性試験を行った。用意した各製造物から耐硫酸性試験用の試験片(幅25 mm、長さ25 mm、厚さ1.5 mm)を採取し、JIS G0591(2000)に準拠して、硫酸水溶液中の腐食速度により評価した。具体的には、沸騰した5%硫酸水溶液中に試験片を6時間浸漬する試験を行った。試験前後の各試験片の質量を測定し、腐食による平均質量減少速度m(単位:g/(m2・h))を測定し、2測定の平均値で求めた。
(発明合金IA-14〜IA-23および比較合金CA-7〜CA-12の用意)
表4のIA-14〜IA-23およびCA-7〜CA-12に示す名目化学組成となるように、原料を混合し高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、該溶湯を所定の鋳型に鋳込んで鋳造成形体を用意した(鋳造工程S2)。
上記と同様にして、表4のIA-24〜IA-25に示す名目化学組成となるように、原料を混合・溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を用意した(アトマイズ工程S7)。その後、急冷凝固合金粉末に対して分級工程S8を行って、平均粒径100μmの急冷凝固合金粉末を用意した。
(発明鋳造製造物ICP-1〜ICP-10および比較鋳造製造物CCP-1〜CCP-6の作製)
実験4で用意したIA-14〜IA-23およびCA-11〜CA-12の鋳造成形体に対して、800〜950℃の焼鈍熱処理を施した(焼鈍工程S3)。ここで、機械的特性評価用の試験片として、焼鈍した鋳造成形体から一部を採取した。
(発明急冷凝固製造物IQSP-1〜IQSP-2の作製)
実験4で用意したIA-24〜IA-25の急冷凝固合金粉末を用いて、粉末プラズマ肉盛溶接法によりオーステナイトステンレス鋼板(SUS304板)上に合金被覆層(厚さ5 mm)を形成して合金被覆複合体を用意した(肉盛溶接工程S9)。
(発明粉末冶金製造物IPMP-1〜IPMP-2の作製)
実験4で用意したIA-24〜IA-25の急冷凝固合金粉末を用いて、金属粉末射出成形法により円柱状の粉末成形体(外径30 mm、高さ10 mm)を用意した(粉末成型工程S10)。
(ICP-1〜ICP-10、CCP-1〜CCP-6、IQSP-1〜IQSP-2およびIPMP-1〜IPMP-2に対する試験・評価)
実験5〜実験7で用意したICP-1〜ICP-10、CCP-1〜CCP-6、IQSP-1〜IQSP-2およびIPMP-1〜IPMP-2に対して、実験3と同様の試験・評価を行った。試験・評価の結果を表5に併記する。
(発明合金IA-a〜IA-gおよび比較合金CA-aの用意)
表6のIA-a〜IA-gおよびCA-aに示す名目化学組成となるように、原料を混合し高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、溶湯を鋳造して鋳造成形体を用意した(鋳造工程S2)。
同様に、表6のIA-hおよびCA-b〜CA-dに示す名目化学組成となるように、原料を混合し高周波溶解法(溶解温度1500℃以上、減圧Ar雰囲気中)により溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、該溶湯を所定の鋳型に鋳込んで鋳造成形体(ここでは塑性加工用インゴット)を用意した(鋳造工程S2)。
同様に、表6のIA-i〜IA-jに示す名目化学組成となるように、原料を混合・溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、水アトマイズ法により急冷凝固合金粉末を用意した(アトマイズ工程S7)。その後、急冷凝固合金粉末に対して分級工程S8を行って、平均粒径9μmの急冷凝固合金粉末を用意した。
同様に、表6のCA-eに示す名目化学組成となるように、原料を混合・溶解して溶湯を形成した後(原料混合溶解工程S1)、ガスアトマイズ法により急冷凝固合金粉末を用意した(アトマイズ工程S7)。その後、急冷凝固合金粉末に対して分級工程S8を行って、平均粒径150μmの急冷凝固合金粉末を用意した。
(発明鋳造製造物ICP-a〜ICP-gおよび比較鋳造製造物CCP-aの作製)
実験9で用意したIA-a〜IA-gおよびCA-aの鋳造成形体に対して、焼鈍熱処理(900〜1000℃で1時間保持した後、空冷または油冷)を施した(焼鈍工程S3)。ここで、機械的特性評価用の試験片として、焼鈍した塑性加工成形体から一部を採取した。
(発明鍛造製造物IFP-aおよび比較鍛造製造物CFP-a〜CFP-cの作製)
実験9で用意したIA-hおよびCA-b〜CA-dの塑性加工用インゴットに対して、所定の形状となるように熱間鍛造を行って塑性加工成形体を用意した(塑性加工工程S6)。熱間鍛造条件としては、鍛造温度950〜1250℃、ひずみ速度8 mm/s以下、鍛造1回あたりの圧下量10 mm以下、鍛造回数3回以上とした。
(発明粉末冶金製造物IPMP-a〜IPMP-dの作製)
実験9で用意したIA-i〜IA-jの急冷凝固合金粉末を用いて、金属粉末射出成形法により円柱状の粉末成形体(外径9 mm、長さ90 mm)を用意した(粉末成型工程S10)。このとき、急冷凝固合金粉末IA-iを用いて、グラファイト粉末を混合した粉末成形体とグラファイト粉末を混合しなかった粉末成形体とを用意した。
(比較急冷凝固製造物CQSP-aの作製)
実験9で用意したCA-eの急冷凝固合金粉末を用いて、粉末プラズマ肉盛溶接法によりオーステナイトステンレス鋼板(SUS304板)上に合金被覆層(厚さ5 mm)を形成して合金被覆複合体を用意し、比較急冷凝固製造物CQSP-aとした(肉盛溶接工程S9)。
(ICP-a〜ICP-g、IFP-a、IPMP-a〜IPMP-d、CCP-a、CFP-a〜CFP-cおよびCQSP-aに対する試験・評価)
実験10〜実験13で用意したICP-a〜ICP-g、IFP-a、IPMP-a〜IPMP-d、CCP-a、CFP-a〜CFP-cおよびCQSP-aに対して、実験3と同様の試験・評価を行った。
HV
Claims (18)
- Cr-Fe-Ni系合金を用いた製造物であって、
前記Cr-Fe-Ni系合金は、その化学組成が、
54質量%以上75質量%以下のCrと、
10質量%以上27質量%以下のFeと、
10質量%以上25質量%以下のNiと、
0.2質量%以上2質量%以下のMnと、
0質量%超1質量%以下のSiと、
0.005質量%以上0.2質量%以下のAlと、
0質量%超1質量%以下のCと、
0質量%超2質量%以下のNと、
0.02質量%以上2.8質量%以下のOとを含み、
残部が不純物からなることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記Oが0.2質量%超2.8質量%以下であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1又は請求項2に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記Cが0.03質量%超1質量%以下であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1又は請求項2に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記Cが0.3質量%超1質量%以下であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記Niが10質量%以上17質量%未満であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
水素イオン指数pH=1、30℃の硫酸水溶液中における硫酸腐食試験を行った場合に、平均質量減少速度が0.02 mg/(cm2・h)未満であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物のビッカース硬さが700 HV1以上であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項7に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物のビッカース硬さが800 HV1以上であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物は、鋳造組織を有する鋳造成形体であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物は、再結晶組織を有する成形体であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物は、急冷凝固組織を有する急冷凝固成形体であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物は、急冷凝固組織を有する粉体であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物において、
前記製造物は、焼結組織を有する粉末冶金成形体であることを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物。 - 請求項9に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法であって、
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯を鋳造して鋳造成形体を形成する鋳造工程と、
前記鋳造成形体に対して800℃以上950℃以下の焼鈍熱処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍した鋳造成形体に対して所望の形状となるように機械加工を施して機械加工成形体を形成する機械加工工程と、
前記機械加工成形体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法。 - 請求項10に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法であって、
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯を鋳造して鋳造成形体を形成する鋳造工程と、
前記鋳造成形体に対して塑性加工を施して塑性加工成形体を形成する塑性加工工程と、
前記塑性加工成形体に対して800℃以上950℃以下の焼鈍熱処理を施す焼鈍工程と、
前記焼鈍した塑性加工成形体に対して所望の形状となるように機械加工を施して機械加工成形体を形成する機械加工工程と、
前記機械加工成形体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法。 - 請求項11又は請求項12に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法であって、
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法。 - 請求項13に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法であって、
前記Cr-Fe-Ni系合金の原料を混合・溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程と、
前記溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程と、
前記合金粉末を用いてプレス成型または射出成型を行って粉末成形体を形成する粉末成型工程と、
前記粉末成形体に対して1000℃以上で前記Cr-Fe-Ni系合金の固相線温度未満の焼結熱処理を施して粉末焼結体を形成する焼結工程と、
前記粉末焼結体に対して900℃以上1300℃以下の硬化熱処理を施す硬化工程と、
を有することを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法。 - 請求項17に記載のCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法であって、
前記焼結熱処理は、1000℃以上で前記Cr-Fe-Ni系合金の固相線温度未満かつ500気圧以上3000気圧以下の熱間等方圧加圧処理を含むことを特徴とするCr-Fe-Ni系合金製造物の製造方法。
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