以下、本発明を実施するための例示的な実施形態及び実施例を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の説明は例示的なものであり、当該説明によって本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態及び実施例で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。なお、本明細書において、手の特性情報とは、手、特に指の内部の血管や骨などの生体組織(吸収体)の分布に関連する情報を指す。特性情報は、反射率や透過率、吸収率など光学的な特性を数値データとしてではなく、手の内部の吸収体の各位置の分布情報として求めても良い。さらに、特性情報は、画像化するために輝度や色の情報を付与した画像データであっても良い。なお、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。
本発明の一実施形態は、光を用いた血管の撮影装置、撮影システム、撮影方法及び撮影装置で用いられる支持部材、特に関節リウマチに伴う関節近傍の新生血管群を撮影する撮影装置、撮影システム、撮影方法及び撮影装置で用いられる支持部材に関する。以下、図1乃至8を参照して、本発明の一実施形態による撮影装置について説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による撮影装置の撮影対象となる関節の曲げ角度について説明する。
図1は、本実施形態による撮影装置で着目する関節の曲げ角度についての説明図である。以下、関節の曲げ角度の例として、人の手の指関節の曲げ角度について説明する。ここでは、撮影対象は左手人差し指の第二関節であるとして説明する。なお、本説明ではすべての指を同じ角度で曲げている例を用いて説明する。しかしながら、本発明の装置で撮影する際に実現する手の曲げ方はこれに限るものではなく、指ごとに、あるいは関節ごとに曲げ角が異なる状態でも良い。
図1は、左手101を概略的に示す。図1は左手101に関し、第一指102、第二指103、第三指104、第四指105及び第五指106を示す。また、図1は、第二指の基節骨の軸の向きを線109で示し、第二指の中節骨の軸の向きを線110で示す。
ここで、第二指の第二関節107の曲げ角度108は、第二指の基節骨の向き109及び中節骨の向き110のなす角度として定義される。以下、同様に、関節の曲げ角度は、当該関節部において接続される部位同士のなす角度とする。
手のひら側から指の関節の血管を撮影する際は、手を広げあるいは指を伸ばして撮影することで関節の手のひら側の皮膚が伸び薄くなり、その結果、関節の皮膚下の血管を撮影し易くなる。従って、撮影した画像では、関節の皮膚下の血管が見え易くなる。ところが、上述の指を伸ばした状態では、手の甲側から指の関節の血管を撮影しようとすると、指の関節の手の甲側の皮膚は逆に弛んで厚くなっているため、手の甲側の関節の皮膚下の血管は生体内での光散乱の影響で撮影しにくくなる。従って、撮影した画像では、手の甲側の関節の皮膚下の血管は見えにくくなる。そのため、手の甲側の関節の皮膚下の血管を撮影する際には、関節の皮膚の弛みをなくすために関節を曲げて撮影する。
しかしながら、関節の皮膚の弛みをなくすために関節を曲げる際に、関節の曲げ角度、例えば曲げ角度108が大き過ぎると血管像のコントラストが低下する。これは、関節の曲げ角度が大きいと関節の外側の皮膚が強く張り、結果的に関節の外側の皮膚下の血管が圧迫され血流が減少するためと考えられる。
これに関し、本発明者の検討では、関節の皮膚下の血流を阻害することなく血管コントラストを向上することが可能である適切な関節の曲げ角度の範囲は、関節の可動範囲に対しあまり広くないことが見出された。
そこで、本実施形態による撮影装置は、撮影対象となる関節の外側、例えば撮影対象が手の指の関節の場合、手の甲側の皮膚下の血管を撮影する際に、皮膚下の血管を撮影し易い、適切な関節の曲げ角度を求める機能を有する。そのため、本実施形態による撮影装置は、関節の皮膚下の血流を阻害することなく血管コントラストを向上することが可能である適切な関節の曲げ角度に関節を曲げた状態で当該関節を撮影することができる。
以下、本発明の一実施形態による撮影装置を、透過撮影用の光学系を用いて説明するが、本発明による撮影は透過照明光を用いた透過撮影に限られず、反射照明光を用いた反射撮影でも良いし、あるいは透過撮影と反射撮影を併用する構成であっても良い。また、以下、本発明の一実施形態による撮影装置について、手の指の関節を撮影対象(観察対象)として説明するが、本実施形態による撮影装置の撮影対象は手の指の関節に限られない。撮影対象は、手首、足の指、肘、膝及びその他の関節とすることもできる。
図2は、本発明の一実施形態による撮影装置200を示す概略図である。撮影装置200には、光源201と、被検体支持具202と、検出器203と、制御部(取得部)204とが設けられている。また、被検体支持具(支持部)202には被検体支持体213が設けられ、制御部204には、制御処理PC205及びモニタ206が設けられている。また、図2には、撮影対象である関節211と、指207と、指の爪210と、指207の第二関節の曲げ角度212とが示されている。さらに、図2には、任意選択的な構成として、光学素子208,209が示されている。
撮影装置200では、光源201が被検体支持具202に所定の支持状態で支持される指207(被検体)に対して光を照射し、検出器203が指207からの透過光を検出して、検出した光に基づいて電気信号を生成する。検出器203は生成した電気信号を制御部204に送信し、制御部204は、検出器203が生成した電気信号に基づいて、手の特性情報を取得し、撮影画像を構成する。ここで、制御部204は、被検体を撮影対象となる関節の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で支持するように、被検体支持具202の形状を制御する。これにより、撮影装置200は、被検体を撮影対象となる関節の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で支持して当該皮膚下の血管の撮影を行うことができ、関節の手の甲側の皮膚下の血管が見易い画像を撮影することができる。
以下、撮影装置200の各構成要素について説明する。
光源201は、被検体支持具202に支持されている手に対して近赤外光(約0.7乃至2.5μm)を照射する。手に対して照射された近赤外光は、生体の透過率が高い発光波長を有するため、指207等の部分を透過する。また、光源201が発する光は近赤外光に限られず、生体の透過率が高い波長の光であれば良い。なお、撮影に近赤外光を用いる場合には、放射線の被爆等の撮影に伴うリスクを低減することができる。
光源201としては、生体の透過率が高い近赤外の発光波長を有するLEDなどを用いることが可能である。なお、光源201はLEDに限られるものではなく、レーザーやSLD(Super Luminescent Diode)であっても良い。安価で面積が大きく、光量が多い光源を構成する場合には、LEDをアレイ状に配置した光源を用いることができる。
次に被検体支持具202について説明する。
被検体支持具202は人体の手の指207を支持する際に、撮影対象である、注目する関節211を適切な曲げ角度212で支持する形状を有する。典型的には、被検体支持具202に含まれる被検体支持体213が、関節211の曲げ方向において所定の曲率半径を有する。関節211をこの被検体支持体213に沿わせて配置することにより、被検体支持体213は、関節211(被検体)を所定の曲げ角度で支持することができる。すなわち、典型的には、被検体支持具202は、被検体支持体213の曲率半径に応じた所定の曲げ角度で関節211を保持することができる。
ここで、上述のように、撮影した画像において関節の外側の皮膚下の血管が見易くなる関節の曲げ角度は、人によって異なり、さらに関節によっても異なる。また、そのような関節の曲げ角度の範囲は関節の可動範囲に対してあまり広くない。
これに対し、撮影装置200は、被検体支持具202に接続される制御処理PC205によって検査対象となる人及び関節に応じて被検体支持体213の形状制御することができる。また、撮影装置200は、検査対象となる人及び関節に応じて被検体支持体213の形状を変化させ、被検体支持具202が支持する関節211の曲げ角度を変えて複数回撮影し、関節211の最適な曲げ角度212を求める機能を有している。
以下、関節211の最適な曲げ角度212を求める動作について説明する。
撮影装置200において、まず被検体支持体213の形状を所定の状態にしておき、関節211を被検体支持体213の形状に応じた所定の曲げ角度で支持し、関節211の皮膚下の血管の透過撮影を行う。この際、制御処理PC205によって、撮影した画像を解析し、撮影画像内に写っている、注目する関節211の皮膚下の血管像のコントラスト等を算出する。
次に制御PC205は、被検体支持具202の形状制御、具体的には被検体支持体213の関節211の曲げ方向における曲率半径を所定の値だけ変化させる等の形状制御を行い、もう一度同じ関節211を撮影する。その後、再度血管像のコントラスト等を解析し算出する。
撮影装置200の制御処理PC205は、この動作を繰り返し、例えば図3に示すような、被検体支持体213の曲率半径と血管像のコントラストとの関係を示すデータを取得する。制御処理PC205は、このようなデータを取得し、注目する血管像のコントラストを最大化(極大化)するような被検体支持体213の曲率半径301を求める。ここで、図3は、被検体支持体213の曲率半径と、被検体支持体213によって支持される関節211の皮膚下の血管を撮影した際の血管像コントラストとの関係の一例を示す。図3では、被検体支持体213の曲率半径を横軸とし、血管像コントラストを縦軸としている。また、図3は、血管像コントラストが最大となる曲率半径301を示す。
制御処理PC205は、上記の動作で求めた血管像のコントラストを最大化(極大化)する曲率半径301を有するように被検体支持体213を変形させ、被検体支持具202の形状を関節211の手の甲側の皮膚下の血管を撮影し易い、最適な形状に設定する。その後、制御処理PC205は、例えば照射光強度や露出時間等の撮影条件の最適化をさらに行うことができる。
上述のように、撮影装置200は、制御部204の制御処理PC205によって被検体支持具202の形状を変えながら、指207(被検体)を複数回撮影する。この際、制御処理PC205は、構成した複数の画像における血管像のコントラストを算出し、算出した血管像のコントラストに基づいて、血管像のコントラストが極大値となる際の被検体支持具202の形状を求める。これにより撮影装置200は、関節211の最適な曲げ角度212を実現するための被検体支持具202の適切な形状を求め、被検体支持具202を当該形状に応じて形状制御することができる。そのため、被検体支持具202は、関節211の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で関節211を支持することができる。
なお、制御処理PC205は、撮影した画像において、撮影したい血管像が高コントラストに見えている場合には、その血管像のコントラストを最大化するように撮影装置200の撮影条件を設定することが可能である。一方で、撮影した画像において、撮影したい血管像が見えない場合などには、注目する血管の領域(注目領域)の付近にある健常血管等の見易い血管のコントラストが最大になるように、光源201及び検出器203の撮影条件を制御することもできる。この場合には、撮影条件の改善により、撮影した各画像において徐々に低コントラストの血管も高コントラストに見えてくるようになり、撮影したい血管像を見易くすることができる。
次に、図4を参照して、被検体支持具202に含まれる被検体支持体213の形状の変化について説明する。
図4は、被検体支持体213を有する被検体支持具202の例として、被検体支持体402を有する被検体支持具401を示す。また、図4はそれぞれ異なる曲率半径を有する被検体支持体401の形状F1,F2,F3を示す。被検体支持具401では、被検体支持体402の両端部403,404が互いに対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動することで、被検体支持体402の曲率半径が変化し、被検体支持具401の形状が変化する。具体的には、被検体支持体401の形状F1,F2,F3に示すように、被検体支持体402の両端部403,404が互いに近づく方向に移動することで、被検体支持体402の曲率半径が小さくなる。同様に、被検体支持体402の両端部403,404が互いに遠ざかる方向に移動することで、被検体支持体402の曲率半径が大きくなる。
図4では、被検体支持体402の曲率半径が3段階に変化した形状F1,F2,F3を示す。しかしながら、被検体支持体402の形状の変化はこれに限られず、被検体支持体402は、両端部403,404が互いに対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動することに応じて、任意の曲率半径を有するように無段階に変形することができる。なお、図4の例では、被検体支持体402の両端403,404が互いに対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動するとしているが、被検体支持体の構成はこれに限られない。被検体支持体は、片方の端部(端部403又は404)のみが他方の端部(端部404又は403)に対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動可能であっても良い。
被検体支持具202の構成について、図5を参照して説明する。
図5は被検体支持具202の例として被検体支持具501を示す。被検体支持具501には、被検体支持体502と、被検体支持体台座503とが設けられており、被検体支持体台座503には複数のピン504及び開口部505が設けられている。
被検体支持具501では、被検体支持体台座503上に設けられた可撓性の板を円筒面状の形状(表面形状)を有するように変形させて被検体支持体502を形成し、この上に手を乗せることで、手を支持することが可能である。被検体支持体502は、例えば透明なアクリル板などで構成されることができる。
ピン504は、各対で被検体支持体502の両端部506,507を挟み込んで支持するように、3つの対として被検体支持体台座503上に設けられており、各ピン504は対となるピン504に対して近づく又は遠ざかる方向に移動することができる。各ピン504は、対となるピン504に近づき被検体支持体502を両側から圧迫することで、被検体支持体502を撓ませて被検体支持体502の円筒面状の形状の曲率半径を減少させることができる。同様に各ピン504は、対となるピン504から遠ざかることで、被検体支持体502を両側に延伸させて被検体支持体502の円筒面状の形状の曲率半径を増大させることができる。
なお、図5において、ピン504は3つの対として設けられているが、ピン504の数はこれに限られず、任意の数の対として設けることができる。また、ピン504は被検体支持体502の両端部506,507を挟み込んで支持し、被検体支持体502の両端部506,507を互いに近づく方向又は遠ざかる方向に移動させることができれば良いため、対として形成されなくても良い。そのため、被検体支持体502の各端部506,507側において異なる数のピンが設けられても良い。また、ピン504は、被検体支持体502の一方の端部(端部506又は507)側に設けられたピン504だけが他方の端部(端部507又は506)側に設けられたピン504に対して近づく方向又は遠ざかる方向に可動であっても良い。また、ピンの形状も円柱に限るものではなく、角柱状、あるいは板状など、被検体支持体502の両端部506、507に対して力を印加できる形状であれば良い。
ここで、被検体支持具501は撮影装置の制御処理PCに接続され、制御処理PCは、ピン504を移動するように被検体支持具501を制御することができる。
被検体支持台座503に設けられた開口部505は、撮影時に照明光を通すことができ、照射光は開口部505から被検体支持体502及び手に導入される。
このように、被検体支持具202は、撮影対象である、注目する関節211を所定の曲げ角度212で支持することができ、被検体支持具202に支持された指207を透過した光が光検出部203によって検出されて、被検体の撮影が行われる。また、撮影装置200は、制御処理PC205によって被検体支持具202を形状制御しながら複数の撮影を行うことで、注目する関節211を最適な曲げ角度212に保持できる被検体支持具202の形状を求めることができる。
次に、検出器203及び制御部204について説明する。
検出器203は光源201から発せられる光の波長に対して感度を有する検出器である。検出器203は、被検体支持具202で支持された手を透過した光(透過光)を検出し、検出した光に基づいて電気信号を生成する。検出器203は、生成した電気信号を制御部204に送信し、制御部204の制御処理PC205は受信した電気信号に基づいて手の特性情報を取得し、画像を構成する。構成された画像はモニタ206に送られ、モニタ206は構成された画像を表示する。また、制御処理PC205は、被検体支持具202に接続され、被検体支持具202の形状を制御することができる。
検出器203としては、光源201から発せられる光の波長が1μm以下の場合には、Si系の光検出素子を有するカメラやビデオカメラなどを用いることができる。また、光源201から発せられる光の波長が1μm以上の場合には、例えばInGaAs系の光検出素子を有するカメラやビデオカメラ等を検出器203として用いることができる。
なお、検出器203のカメラレンズとして、カメラレンズの硝材が光源201から発せられる光の波長(光源波長)に対して高い透過率を有するカメラレンズを用いることができる。同様に、光源波長に合わせてカメラレンズの無反射コーティングを最適化することもできる。
制御部204に含まれる制御処理PC205は、光源201、被検体支持具202及び検出器203に接続され、これらの動作を制御することができる。なお、本実施形態による撮影装置200では、制御部204の制御処理PC205で撮影画像の構成等の画像処理、照明光等の撮影条件の制御及び被検体支持具202の形状制御等を行う構成としている。しかしながら、制御部の構成はこれに限られず、制御部に撮影画像の画像処理や撮影条件の制御等を行う制御処理PCの他に、被検体支持具202の形状制御を行う被検体支持具制御部を別個設けても良い。
制御処理PC205は、CPU、MPU、メモリ、及び任意の入力装置等を備えることができる。制御処理PC205は、検出器203からの信号の処理用に特化されたコンピュータであっても良いし、信号の処理用のソフトウエアを備えた汎用のコンピュータであっても良い。また、制御処理PC205は、クラウド上のサーバ等で構成されていても良い。
撮影の際は、単一画像を撮影する他に、例えば複数の画像を撮影し、撮影画像を平均化することで画像内のランダムノイズを抑制する処理などを施すこともできる。複数の画像を撮影する方法としては、静止画を連写する方法、あるいは動画を撮影しておき、動画から各コマを単一画像として抽出する方法を用いることができる。さらに、制御処理PC205で画像を積算する際には単純な加算平均により画像を平均化する処理を行っても良いし、複数回の画像撮影の間に被験者の手が動く場合を想定して、画像処理による位置合わせ処理を併用した処理を行っても良い。
また、指の複数の関節を同時に撮影する場合、各関節から検出器203までの距離が関節ごとに互いに異なることが想定される。そのため、検出器203として用いられているカメラは、撮影時にその被写界深度内に撮影対象となる複数の関節がすべて収まるように撮影を行うことができる。すなわち、検出器203が、被検体の複数の関節のうち検出器203にもっとも近い関節及び最も遠い関節の両方が入る被写界深度を有するように、検出器203を構成することができる。例えば、35mmフルサイズイメージャーのカメラで焦点距離28mmのレンズを用いて撮影する場合、Fナンバーが5.6の撮影条件下では、被写界深度は約10cmとなる。撮影対象が手の関節の場合、典型的にはこの程度の被写界深度を有するように検出器203を構成することで、撮影対象となるすべての関節を被写界深度内に収めることができる。
本実施形態による撮影装置200では、注目する関節211の外側(手の甲側)の皮膚下の血管を撮影し易い状態で関節211を支持することができる、被検体支持具202の形状を求めることができる。また、撮影装置200は、当該形状を有するように被検体支持具202を形状制御し、関節211の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で関節211を保持することができる。そのため、撮影装置200は、関節211の外側の皮膚下の血管が見易い画像を撮影することができる。したがって、撮影装置200は、関節を曲げた時に関節の外側にくる皮膚の下の血管、手であれば指の手の甲側の皮膚下の血管が撮影画像において見易くなるような、関節の曲げ角度212を実現可能である。そのため、撮影装置200を用いることで関節の状態を適切に評価することができ、関節の状態評価に伴う患者や医師の負荷を低減可能である。
なお、本実施形態による撮影装置200の用途は、すべての指のすべての関節を同時に撮影する用途に限られない。撮影装置200は、例えば親指(第一指)以外の指の関節だけを撮影する、あるいは人差し指(第二指)と中指(第三指)と薬指(第四指)の関節を撮影する、などの一部の関節を撮影する用途にも用いることができる。注目領域を含み、撮影対象となる関節の数が少ない場合は、光源201からの照射光の照射領域や検出器203での撮影領域も撮影対象に併せて限局することで、迷光の抑制や必要な被写界深度の抑制を行うことができる。
さらに、関節リウマチに関しては、すべての関節に炎症が発生するとは限らないため、ある程度の広範囲に含まれる複数の関節を同時に撮影、モニタリング可能であるように撮影装置200を構成することもできる。例えば、被検体が手であれば、手首から先の関節すべてを同時に撮影可能であるように、あるいは両手首から先を一度に撮影可能であるように撮影装置200を構成することもできる。
広範囲な領域を撮影するためには、撮影装置200において視野の広い撮影レンズを用いることができるが、広範囲な領域を撮影するための撮影装置の構成はこれに限られない。例えば、複数の検出器でそれぞれ異なる領域を撮影し、制御部でそれぞれの領域に対応した画像データを接続して一つの広範囲な領域の画像データを構成するように撮影装置を構成することもできる。すなわち、複数の検出器が生成した電気信号に基づいて、被検体の複数の関節を同時に撮影するように撮影装置を構成することもできる。なお、撮影装置でこのような動作を行う際には、複数の検出器でそれぞれ撮影した複数の領域の一部が互いに重なることができるように、撮影及び画像の接続処理を行うことができる。
また、検出器203の位置や向きを可変とし、1台の検出器203で複数の領域を逐次撮影することで結果的に広範囲な領域を撮影しても良い。
同様に、被検体支持具202を可動とする、つまり被検体支持具202の位置が検出器203に対して可変であるように撮影装置200を構成しても良い。この場合には、被検体支持具202の位置を変えながら複数枚の血管画像を撮影し、制御部204で撮影した画像データを接続して一つの広範囲な領域の画像データを構成することもできる。
また、撮影対象となる複数の関節を撮影するために被写界深度を増す場合には、検出器203の光学系のF値を大きく設定する必要があり、結果的に露光時間の増大を招く場合がある。これに対し、静止画の場合は画像1枚、動画の場合は1コマの露出時間の増大を抑制したい場合には、撮影対象となる複数の関節を撮影するために、例えば検出器203の光学系のピント位置をずらして複数回撮影することもできる。あるいは、撮影対象となる複数の関節を撮影するために、検出器203の撮影対象からの距離を前後させて複数回撮影することもできる。
また、被検体支持具202の形状の変化に応じて被検体の支持状態も変化するため、被検体の注目領域内で検出器203に最も近い点と最も遠い点の距離差も変化する場合がある。したがって、被検体支持具202の形状に応じて、制御部204で検出器203の光学系の必要な被写界深度を変化させて設定するように撮影装置200を構成することもできる。
また同様に、被検体支持具202の形状変化に応じて、光源201及び検出器203等の撮影条件を変化させるように、制御部204によって光源201や検出器203を制御することもできる。当該撮影条件は、光源201及び検出器203の位置、光源201からの照明光の強度、強度分布及び照射角度(伝搬方向)並びにその他の条件を含むことができる。そのため、制御部204で被検体支持具202の形状制御と連動して、光源201から照射される光の強度、光強度分布、及び伝搬方向等を変化させるように、撮影装置200を構成しても良い。例えば、被検体支持具202が所定の曲率を有している場合に、光源201を被検体支持具202の曲率中心付近に配置し、光を被検体支持具202の表面に略垂直に照射することで、被検体支持具202の表面での光量のロスを低減できる。この場合、被検体支持具202の形状変化と共に被検体支持具202の曲率中心の位置が移動するため、これに追随して光源201の位置を移動させることもできる。さらに、光源201からの光の射出方向も被検体支持具202の形状変化に連動させることができる。
検出器203の位置が、撮影対象となる、注目する関節211に対して正対する位置に移動するように撮影装置200を構成することもできる。被検体支持具202の形状が変化し、支持される被検体の支持状態が変化すると注目する関節211の位置や向きが変化する。そのため、関節211の位置や向きの変化、すなわち被検体支持具202の形状変化に合わせて検出器203の位置を変化させるように撮影装置200を構成することができる。例えば、検出器203の光軸上に、被検体支持具202の曲率中心が存在するように検出器203の位置や向きを移動させ配置することができる。また、検出器203の焦点位置も被検体支持具202の形状変化に連動して変化させることもできる。
同様に、必要な被写界深度を低減するために、検出器203がその光軸方向に移動可能であるように撮影装置200を構成することができる。この場合、撮影装置200は、検出器203を光軸方向において異なる位置に配置して複数回の撮影を行うことで、撮影対象となる複数の関節を撮影する際などに、一回毎の撮影で必要とされる被写界深度を低減することができる。
また、検出器203は、広範囲な撮影領域を確保する観点から、光軸に対して垂直な面内方向に移動可能とすることができる。この場合、撮影装置200は、検出器203を光軸に対して垂直な面内方向において異なる位置に配置して複数回の撮影を行うことで、広範囲な領域を撮影することができる。
同様に、広範囲な撮影領域を確保する観点から、検出器203の光軸の向きを可変とすることもできる。この場合、撮影装置200は、検出器203の光軸の向きを変えて複数回の撮影を行うことで、広範囲な領域を撮影することができる。
また同様に、被検体支持具202も、検出器203の光軸方向や光軸に対して垂直な面内方向に移動可能とすることもできる。例えば、検出器203が鉛直下向きに配置されている場合、被検体支持具202が鉛直方向及び水平方向に移動可能であるように撮影装置200を構成することもできる。この場合、撮影装置200は、被検体支持具202を検出器203の光軸方向において異なる位置に配置して複数回の撮影を行うことで、撮影対象となる複数の関節を撮影する際などに、一回毎の撮影で必要とされる被写界深度を低減することができる。また、撮影装置200は、被検体支持具202を検出器203の光軸に対して垂直な面内方向において異なる位置に配置して複数回の撮影を行うことで、広範囲な領域を撮影することができる。
さらに、被検体の注目領域を検出器203に正対して配置するための機能として、被検体支持具202が傾斜可能なように撮影装置200を構成することもできる。この場合、撮影装置200は、被検体支持具202の傾斜角度を変えて複数回の撮影を行うことで、被検体の注目領域を検出器203に正対して配置することができる。
また、図2に示すように、光源201の前に拡散板等の光学素子208を配置することで、被検体へ照射する光の強度分布を平坦化することができる。被検体の血管が深い部位にある場合には、血管周囲の脂肪層などの生体内の散乱組織によって照射光が散乱されるため、検出器203で検出した光に基づく血管像がぼけて薄くなり、撮影画像には血管がかすかな暗部として写る。そのため、撮影画像上の輝度分布を、血管による僅かな光吸収に起因するものと、光源201自体が持っている空間的な光強度分布に起因するものとに識別することが難しい場合がある。そこで、撮影画像上の輝度分布を、血管による僅かな光吸収に起因するものと、光源201自体が持っている空間的な光強度分布に起因するものとに識別し易くするためにも、光学素子208等を用いて光源201の光強度分布をなるべく少なくすることができる。
さらに、光源201と被検体との間に、及び被検体と検出器203の間に偏光板を挿入することもできる。これにより、照明光を或る偏光成分に限定し、被検体を透過した光のうち偏光を維持している成分と偏光を解消している成分の弁別することができる。生体内組織で散乱を受けていない光は偏光成分が維持されているため、この観察手法により、無偏光撮影と比較して生体内散乱による像のボケの影響を抑制した画像取得を行うことができる。
なお、本実施形態による撮影装置200では、LED光源を用いたが、生体のように光の散乱率や吸収率が高く、光の透過率が低い物体を透過照明するために、照射スポット径が小さい高輝度光源として、レーザー光源を用いることもできる。レーザー光源は、照射位置を精密に制御、規定できるため、透過照明及び反射照明どちらにも用いることができる。
また、レーザー光はコリメートすることができるため、レーザー光源を用いて散乱体を平行光束で照明することが可能である。散乱体内で散乱された光(散乱光)は入射方向と異なる方向に伝搬するため、伝搬方向で散乱を受けなかった光(直進光)と散乱光を弁別可能である。直進光成分を抽出し画像を構成すれば、散乱光の影響を抑制したボケの少ない血管像を構成可能である。また、反射照明を行う場合においても、平行光束を散乱体表面に垂直に入射させ、散乱体内で一度だけ後方散乱を受けて散乱体から垂直に戻る光を検知し画像化することで、散乱光の影響を抑制した画像を構成することが可能である。
さらに、手に照射される光の波長(光源波長)は単一波長でも良いし、あるいは異なる波長の光を発する複数の光源を用いて、それぞれの波長に切り替えて撮影を行うこともできる。なお、発する光の波長を異なる波長に切り替えることができる光源を用いても良いし、同時に複数の波長で発光する光源を用いても良い。同時に複数波長の光を被検体に照射する場合には、検出器の手前の光路で、図2に示すような波長カットフィルタ等の光学素子209によって撮影に用いる波長(撮影波長)の切り替えを行っても良い。この場合、撮影波長として、被検体の透過率及び散乱率、並びに血液の光吸収スペクトル等を考慮し、血管像のコントラストが最も高くなる波長を選択することできる。
上記実施形態では、被検体支持体213の構成例として、図4に示す被検体支持体402を挙げた。しかしながら、被検体支持体213の構成はこれに限られない。例えば、被検体支持具は、透明な樹脂で形成された風船状の被検体支持体を形成することもできる。この場合には、当該風船状の被検体支持体を空気や水などで膨らませて形状を制御することで被検体支持体の表面の曲率半径を可変としても良い。
なお、支持する被検体の関節の曲げ角度を変えるための被検体支持体は、当該関節を関節の曲がる方向に応じて移動させることができる構成であれば良い。そのため、被検体支持体は、例えば、それぞれの一端部で接続され互いに対して可動である2枚の板で形成され、当該接続部分で関節の曲がる部分を支持するように構成されても良い。この場合、被検体支持体は2枚の板で形成されたくの字状の形状を有し、2枚の板の接続部の角度を変更することで、当該2枚の板に沿って支持される被検体の曲げ角度を変えることができる。
また、上記実施形態では、被検体支持具202の構成の例として図5に示す被検体支持具501を挙げた。しかしながら、被検体支持具202の構成はこれに限られない。図6乃至8は、被検体支持具202の形状の別例である被検体支持具601,701,801をそれぞれ概略的に示す。なお、被検体支持具601,701,801において、被検体支持体602,702,802の曲率半径を変化させる構成は被検体支持具501の構成と同様であるため相違点を中心に説明する。
図6は、両手(左手607及び右手608)を同時に撮影することを可能とする被検体支持具601を示す。被検体支持具601では、被検体支持体台座603に、互いに左右対称な形状を有する2つの被検体支持体602が設けられている。
被検体支持具601では、互いに左右対称な形状を有する2つの被検体支持具602にそれぞれ左手607及び右手608を配置することができる。このため、被検体支持具601を用いた撮影装置では、両手の関節について同時に撮影することができる。
図7は、手707や指、その他の関節付近の部位を配置するための適切な位置を示す被検体支持具701を示す。被検体支持具701では、被検体支持体台座703に被検体支持体702が設けられ、被検体支持体702には手707の各指の適切な配置位置を示す突起704が設けられている。
被検体支持具701では、被検体支持体702上において各指の先端を配置すべき位置に突起704が設けられており、突起704に基づいて各指を配置することで、被検体支持具701上の適切な位置への指の配置を助けることできる。なお、手707や指を配置するための適切な位置を示す部材は突起704に限られない。例えば、手707や指の配置を示すマーカーであっても良い。また、手707や指を配置するための適切な位置を示す部材を被検体支持体702上において可動に構成することもできる。この場合には、手の大きさ等に応じて、被検体支持具701上に手707や指を配置するための適切な位置を変化させて示すことができる。
図8は、支持される手807の手首808を配置するための適切な位置を示す被検体支持具801を示す。被検体支持具801には、被検体支持体台座803に被検体支持体802及び手首保持具804が設けられている。
被検体支持具801では、手首808を配置すべき位置を示すために、被検体支持体台座803上に手首保持具804が設けられている。手首保持具804は、被検体支持具801に手807が配置された際に、手首808を保持し手首808の位置を固定することができ、これにより配置すべき位置に手首808を配置することができる。また、手首保持具804を被検体支持体台座803上において可動に構成することもできる。この場合には、手首の太さ等に応じて、被検体支持体台座803上で手首808を配置すべき位置を変化させて示すことができる。
また、本実施形態による撮影装置200では、被検体支持具202の下方に光源201を配置し、被検体支持具202の上方に検出器203を配置したが、撮影装置における光源及び検出器の配置はこれに限られない。例えば、撮影装置において、光源と検出器の位置を入れ替えた配置も可能である。
さらに、撮影装置の構成は、図2に示す撮影装置200のように光源201から検出器203までの光路が略鉛直方向である構成に限られず、光路が水平方向である構成としても良い。
上述のように、撮影装置200で透過撮影を行う場合には、被検体支持具202は光源201から検出器203の間に配置される。この場合、被検体が配置されていない状態、あるいは被検体内で光が散乱されずに直進する場合には光源201から射出した光がそのまま検出器203に到達する。そのため、この配置では、散乱体内で散乱を受けなかった光を検出器203で検出することができる。したがって、撮影装置200は、生体内で散乱を受けない光を抽出し鮮明な血管像を取得することができる。
撮影装置200では、手を透過した光を検出するために光源201及び検出器203が互いに対向するように配置されているが、光源及び検出器の配置はこれに限られない。例えば、光源から射出された光が被検体支持具まで伝搬する方向と、手から射出した光が検出器まで伝搬する方向が異なっていても良い。このような配置では、前述の配置とは逆に、検出器は散乱体内で散乱されて伝搬方向が入射方向から変化した光を検出することができる。したがって、生体内で散乱した光による血管画像を取得したい場合などに、このような配置を有する撮影装置を用いることができる。
また、光源201からの光が手を照射することなく撮影装置200の内部で反射・散乱し迷光となって検出器203に到達する事を抑制するために、光源201の周囲あるいは被検体支持具202の周囲を暗幕などで囲うことができる。さらに、撮影装置200全体を小型暗室等で囲い、小型暗室の内壁面を、低反射の暗幕や植毛紙で構成することや、低反射塗料などで塗装した内面とすることもできる。
撮影装置200では、検出器203が生成した電気信号に基づいて、制御部204の制御処理PC205が手の特性情報を取得し、画像を構成する。しかしながら、当該処理を撮影装置200の外部に設けた処理装置で行うこともできる。この場合の撮影システム1100を図11に示す。図11は本発明の一実施形態による撮影システム1100を概略的に示す。撮影システム1100には撮影装置1110と処理装置(取得部)1105が設けられている。
撮影装置1110は、撮影装置200と同様の構成を有するが、制御部204及び制御処理PC205の代わりに制御部1114及び制御処理PC1115が設けられている。制御処理PC1115は、制御処理PC205と同様に被検体支持具202の形状や照明光などの撮影条件を制御することができる。制御部1114は、検出器203が生成した電気信号を撮影装置1110に接続された処理装置1105に送信する。処理装置1105は、受信した電気信号に基づいて手の特性情報を取得し、画像を構成する。処理装置1105は構成した画像を、制御部1114に送信し、制御部1114は受信した画像をモニタ206に表示する。なお、構成した画像を他のモニタに送信し、他のモニタに表示するように処理装置1105を構成しても良い。
また、構成した複数の撮影画像の平均化や位置合わせ等の画像処理を行ったり、構成した撮影画像に基づいて照明光等の撮影条件の制御に関する情報を生成し制御処PC1115に送信したりするように処理装置1105を構成することもできる。また、構成した撮影画像に基づいて被検体支持具202の形状制御に関する情報を生成し、制御処理PC1115に送信するように処理装置1105を構成することもできる。これらの場合、制御処理PC1115は処理装置1105から送られた情報に基づいて撮影条件の制御や被検体支持具202の形状制御を行うことができる。なお、処理装置1105は例えばインターネット等を介して接続されたサーバや汎用のコンピュータ等を用いて構成することができる。
以下、図9を参照して、本発明の実施例1による撮影装置について説明する。図9は本実施例による撮影装置900を示す概略図である。また、本実施例による撮影装置900における被検体支持具902の形状と同様の被検体支持具の形状を示す図として図5を参照する。
撮影装置900には、光源901と、被検体支持具902と、撮影カメラ903,910,911と、光源駆動電源904と、制御処理PC905と、モニタ906と、拡散板908とが設けられている。被検体支持具902には、被検体支持体909が設けられている。また、図9は、撮影対象となる被検体の例として指907を示す。
光源901は、指907に対して波長940nmの光を照射し、撮影カメラ903,910,911は手を透過した光(透過光)を検出し、検出した光に基づいて電気信号を生成する。ここで、光源901は波長940nmのLEDをアレイ状に並べたものであり、撮影カメラ903,910,911は波長940nmの光に感度を有している。
光源901と被検体支持具902の間には拡散板908が設けられており、拡散板908は、光源901が照射する光を拡散させて照射光の光強度分布を均し、指907に対する照射光強度分布を平坦化する。
被検体支持具902は光源901と撮影カメラ903,910,911との間に配置され、被検体を所定の支持状態で支持する。被検体支持具902は、図5に示す被検体支持具501と同様の形状及び構成を有し、被検体支持具902には、円筒面状の形状を有する被検体支持体909が設けられている。被検体支持体909は可撓性のアクリル薄板で構成されている。被検体支持具902では、図5に示す被検体支持体502と同様に、被検体支持体909の曲率半径を変化させることができる。ここで、被検体支持具902に接続される制御処理PC905は、被検体支持具902の被検体支持体909の形状を制御することができる。
また、撮影カメラ903は主に指907の第二関節を撮影し、撮影カメラ910は指907の第一関節を撮影し、撮影カメラ911は指907の第三関節を撮影する。これにより、撮影装置900は指907の複数の関節を同時に撮影することが可能である。
制御処理PC905は、撮影カメラ903,910,911で生成した電気信号を取り込む。制御処理PC905は、取り込んだ電気信号に基づいて画像データを生成し、生成した画像データをモニタ906に表示する。これにより、術者はモニタ906に表示される指907の撮影対象となる、注目する関節の外側の皮下血管の撮影画像を確認することができる。
さらに、制御処理PC905は、撮影した血管の画像のコントラストを算出し記憶する。制御処理PC905は、被検体支持体909の曲率半径を変化させて指907の関節の曲げ角度を変化させ、再度撮影装置200による撮影を開始する。制御処理PC905は、これらの動作を繰り返し、注目する血管の画像コントラストが最も高くなる被検体支持体909の曲率半径、すなわち被検体支持具902の最適な形状を求める。
また、制御処理PC905は、光源駆動電源904を用いて光源901の光量を制御することができる。また、制御処理PC905は、撮影カメラ903,910,911の感度や露出時間等の各種撮影条件を適切に調節することができる。
さらに、制御処理PC905は、撮影カメラ903等を用いて画像を連続して10回撮影した後、画像の加算平均処理を行うことで、撮影カメラ903等が有するランダムノイズを低減させることができる。この際、制御処理PC905は、画像内の特徴点として、例えば指の輪郭や特徴的な血管構造を抽出し、当該特徴点に基づいて、撮影した画像の位置合わせを行ってから加算平均処理を行う。これにより、制御処理PC905は、ランダムノイズの低減された、より正確な画像を構成することができる。なお、撮影回数は10回に限られず、任意の回数であって良い。
これらの一連の操作により、注目する関節の外側の皮膚下の血管を高コントラストに撮影することが可能である。
撮影装置900は、上記構成から、注目する関節の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で指907を支持することができる、被検体支持具902の形状を求めることができる。また、撮影装置900は、当該形状を有するように被検体支持具902を形状制御し、関節の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で指907を保持することができる。そのため、撮影装置900は、関節の手の甲側の皮膚下の血管が見易い画像を撮影することができる。従って、撮影装置900は、関節を曲げた時に関節の外側にくる皮膚の下の血管、手であれば指の手の甲側の皮膚下の血管が撮影画像において見易くなるような、関節の曲げ角度を実現可能である。そのため、撮影装置900を用いることで関節の状態を適切に評価することができ、関節の状態評価に伴う患者や医師の負荷を低減可能である。
実施例1による撮影装置900では、透過撮影用の光学系を用いて関節の外側の皮下血管の撮影を行う構成とした。これに対し、撮影装置に反射撮影用の光学系を用いることも可能である。以下、図10を参照して反射撮影用の光学系を用いた本発明の実施例2による撮影装置について説明する。なお、被検体支持具の形状制御や、制御処理PCによる画像処理や照明光の制御等は実施例1による撮影装置900での制御及び処理等と同様であるため、相違点を中心として説明する。
図10は、本実施例による撮影装置1000を示す概略図である。撮影装置1000には、広帯域光源1001と、被検体支持具1002と、撮影カメラ1003と、光源制御装置1004と、制御処理PC1005と、モニタ1006と、照射光学系1008と、バンドパスフィルタ1009とが設けられている。被検体支持具1002には被検体支持体1010が設けられている。また、図10は被検体の例として指1007を示す。
広帯域光源1001は、800nmから880nmの波長を有する光を指1007に対して照射する。広帯域光源1001の前には、照明光学系1008が設けられており、照明光学系1008は広帯域光源1001からの照射光を平行光束に近づけることができる。
広帯域光源1001から照射された光は手の指1007によって反射され、反射された光は撮影カメラ1003によって検出される。この際、撮影カメラ1003の前にあるバンドパスフィルタ1009によって、指1007により反射された光から880nmの波長を有する光を選択することができる。撮影カメラ1003は当該選択された光を検出し、検出した光に基づいて電気信号を生成する。
撮影カメラ1003によって生成された電気信号は制御処理PC1005に送られ、制御処理PC1005は当該電気信号に基づいて撮影画像を生成する。
制御処理PC1005は、実施例1による撮影装置900の制御処理PC905と同様に、被検体支持具1002の形状を変えながら、指1007を複数回撮影し、指1007の最適な曲げ角度に対応する被検体支持具1002の形状を求めることができる。撮影装置1000は、被検体支持具1002を制御処理PC1005で求めた被検体支持具1002の形状に形状制御する。これによって、被検体支持具1002が、注目する指1007の関節の手の甲側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で指1007を支持することができる。
上記構成により、本実施例による反射光学系を用いた撮影装置1000においても、注目する関節の外側の皮膚下の血管を撮影し易い状態で指1007を支持することができる、被検体支持具1002の形状を求めることができる。そのため、撮影装置100は、関節を曲げた時に関節の外側にくる皮膚の下の血管、手であれば指の手の甲側の皮膚下の血管が撮影画像において見易くなるような、関節の曲げ角度を実現可能である。従って、撮影装置1000においても、注目する関節の皮膚下の血管を高コントラストに撮影することが可能である。そのため、撮影装置1000を用いることで関節の状態を適切に評価することができ、関節の状態評価に伴う患者や医師の負荷を低減可能である。
さらに、撮影装置1000では、バンドパスフィルタ1009を、800nmの波長を有する光を選択透過するフィルタに交換して撮影を行うことにより、異なる波長での光による画像情報を取得することが可能である。
また、バンドパスフィルタ1009は、800nm又は880nmの波長を有する光を透過するものに限られず、任意の波長の光を選択透過するように構成することができる。なお、バンドパスフィルタの配置位置は撮影カメラ1003の直前に限られず、広帯域光源1001から指1007の間の光路中にバンドパスフィルタを配置しても良い。
なお、バンドパスフィルタ1009を撮影カメラ1003の直前に配置する場合、偏光子を併せて用いても良い。これにより、広帯域光源1001から照射された光が指1007の表面で正反射された成分による画像上のテカリの写り込みを抑制することが可能である。
なお、実施例1及び2による撮影装置900,1000においては、撮影対象を両手のすべて指の関節とすることもできるし、逆に第一指の第一関節のみなどに限局することもできる。また、実施例1及び2による撮影装置900,1000では被検体を手の指として説明したが、被検体は手の指に限られない。撮影装置900,1000の撮影対象となる被検体は、手首や足の指であっても良いし、肘や膝などの他の関節部であっても良い。
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、上述の各実施形態及び実施例は、本発明の趣旨に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。