JP6478187B2 - Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料 - Google Patents

Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料 Download PDF

Info

Publication number
JP6478187B2
JP6478187B2 JP2015101321A JP2015101321A JP6478187B2 JP 6478187 B2 JP6478187 B2 JP 6478187B2 JP 2015101321 A JP2015101321 A JP 2015101321A JP 2015101321 A JP2015101321 A JP 2015101321A JP 6478187 B2 JP6478187 B2 JP 6478187B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
spin
kekule
topological
honeycomb lattice
energy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015101321A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016219546A (ja
Inventor
暁 古月
暁 古月
龍華 呉
龍華 呉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Priority to JP2015101321A priority Critical patent/JP6478187B2/ja
Publication of JP2016219546A publication Critical patent/JP2016219546A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6478187B2 publication Critical patent/JP6478187B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Hall/Mr Elements (AREA)

Description

本発明はトポロジカル状態を発現する材料に関し、より詳細には、蜂の巣格子(honeycomb lattice)上の最隣接格子点間電子の遷移係数の
(以下、Kekuleと称する)超格子構造により巨大有効スピン軌道相互作用を誘起し、これによって安定なトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子構造材料に関する。
量子ホール効果(quantum Hall effect、QHE)の発見により、トポロジーを中心概念とした物性研究の新たな進展が見られた(非特許文献1〜11)。トポロジカル状態は学術的な観点で興味深いものであるというだけではなく、応用面にも重大な影響を及ぼすものと期待されている。それは、バルクトポロジーによって保護される強靭な表面(あるいエッジ)状態により、スピントロニクス及び量子計算に新たな可能性がもたらされるからである(非特許文献12〜17)。
しかしながら、現在までにトポロジカル状態が確認されている物質はごく少数であり、またそのほとんどのものは非常に低い温度のみでトポロジカルな性質を示す。この問題により、実際の応用に必須である材料の詳細な研究や操作が妨げられていた。
グラフェンの特異な物理特性が大きく注目されており、基礎物性の探索から新規デバイスの開発まで広く研究されている。グラフェンの特性を支配するのは炭素のπ電子が持つディラック型エネルギー分散である。つまり、電子のエネルギーの運動量依存性はフェルミレベルで線型的になっている。これは蜂の巣格子のC対称性で決まっている。
蜂の巣格子上電子のディラック型分散関係を利用してトポロジカル状態を実現できることが理解され、トポロジカル絶縁体を含むトポロジカル物質研究の全盛につながった。Haldaneは非特許文献6において蜂の巣格子上の電子タイトバインディングモデルに次近接サイト間の電子遷移に伴ういわゆる交替フラックス(staggered flux)項を加えた。それによってディラック電子が質量を持ち、ブリュリアン・ゾーンのコーナーにあるK点とK’点でのBerry位相が揃い、量子異常ホール効果が生まれる。KaneとMeleは非特許文献7で電子のスピン自由度を考え、次近接サイト間の電子遷移に伴うスピン軌道相互作用もK点とK’点のBerry位相を揃えられることを明らかにした。この場合、スピン上向きと下向きの電子のBerry位相は反対であり、時間反転対称性が満たされ、量子スピンホール効果が現れる。
しかし、グラフェンのスピン軌道相互作用は非常に小さいため、量子スピンホール効果を実験的に観測するのは極めて難しい。一方で、交替フラックスは円偏光した光の照射によって実現できるが、デバイスの実現には不利である。
本発明の課題は、原子が蜂の巣状に配置された蜂の巣格子上の電子の遷移エネルギーのKekule超構造の導入により、従来提案されている材料に比べて、巨大な有効スピン軌道相互作用と安定したトポロジカル状態を発現する材料を提供することにある。
本発明の一側面によれば、原子が蜂の巣状に配置された蜂の巣格子型材料であって、 最隣接サイトとの電子遷移エネルギーがKekule超構造を有し、その六員環内部の電子遷移エネルギーtが最隣接六員環との間の電子遷移エネルギーtよりも小さい、Kekule超格子を有し、巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料が与えられる。
ここで、Cu[111]面にCO分子が配置され、一部の六員環に余分のCO分子を導入することにより、前記Kekule超構造を導入してよい。
本発明の一側面によれば、原子が蜂の巣状に配置された蜂の巣格子型材料であって、最隣接サイトとの電子遷移エネルギーがKekule超構造を有し、前記Kekule超構造の六員環内部の電子遷移エネルギーtが最隣接六員環との間の電子遷移エネルギーt超構造よりも小さい、Kekule超格子を有し、巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料が与えられる。
ここで、Cu[111]面にCO分子が配置され、一部の六員環に余分のCO分子を導入することにより、前記Kekule超構造を導入してよい。
(a)最隣接サイトとの間の電子遷移エネルギー(hopping integral)がKekule超構造を持つように調節した蜂の巣格子を示す図。tは図中の右下隅部に示す破線で囲まれた六角形内の黒い実線で示される六員環内部の電子遷移エネルギー、tは隣接する六員環間の電子遷移エネルギーを示す。破線で囲まれた六角形は格子ベクトルが
であり、格子定数が
である三角格子の単純胞(primitive cell)である。(b)一つの六員環で構成される人工原子の固有軌道(eigen orbital)を示す図。
六角形の単位胞をもつ格子系の分散関係(dispersion relation)を示す図。(a)t=0.9tの場合、(b)t=tの場合、及び(c)t=1.1tの場合。図中、(a)〜(c)のグラフのそれぞれで最上部にある上に凸の曲線及び最下部にある下に凸の曲線以外の曲線において、濃い灰色の線及びやや薄い灰色の線はそれぞれ|p±〉及び|d±〉に対応し、また(c)の中央付近にある両方が入り混じっているように見える部分は両者の混成を示す。ここで、オンサイトエネルギー(on-site energy)はε=0とした。 (a)36個の六員環を有するとともに六員環同士の間の電子遷移エネルギーt=1.1tである構造のリボン形状系の両側を、それぞれ12個の六員環を有するとともに六員環同士の電子遷移エネルギーt=0.9tの構造で挟んだ複合系の分散関係を示す図。淡色の広がった曲線群はバルクバンドについてのものであり、赤い曲線に対応する分散はリボン系特有のものである。(b)(a)中の中央で交差した2本の濃色で描かれたやや太い曲線に対応する状態が実空間で上記2つの界面に局在化している様子。黒及び白の矢印がそれぞれ擬スピンアップ及び擬スピンダウンチャネルを示す。 (a)トポロジカル状態の電気伝導を測定する6端子ホールバー。但し、中央部の細かな網掛けの入った部分は図3にあるトポロジカル領域、周辺部の網掛けの入っていない、トポロジカル領域よりもやや淡色の灰色部分は自明領域であり、電流は左側の端子から注入され、右側の端子から取り出す。ホールバーでの電流密度の分布が濃淡で示されている。(b)平行方向とホール電気伝導の注入電子エネルギー依存性。但し、電子のオンサイトエネルギー(on-site energy)はε=0とした。 Cu[111]表面電子系をCO分子の三角格子で装飾することによって実現される分子グラフェン系の模式図:(a)t>tでトポロジカル相,(b)t<tで自明相に対応する。灰色丸はCO分子を示し、STM等の技法で配置されている。太いボンドは細いボンドより短く、電子遷移のKekule超構造が実現されている。
本発明の一形態では、蜂の巣格子上の最隣接格子点間の電子の遷移エネルギーを一定のルールに従って強弱をつけ、Kekule遷移超構造を導入するだけで、巨大な有効スピン軌道相互作用と非常に安定なトポロジカル状態が実現可能であることを示す。具体的には、図1(a)に示すように、蜂の巣格子の全てのサイトを6個の最隣接サイトからなる六員環にグループ化し、六員環内の電子遷移エネルギーを一定にしたまま、六員環間の電子遷移エネルギーを強くする。この操作により、電子系にC対称性が実現され、それに伴って電子波動関数に擬スピン自由度が生まれ、量子スピンホール効果が可能になる。この場合、擬スピンに対応する有効スピン軌道相互作用がグラフェンに見られる内在スピン軌道相互作用より数ケタも大きくなる。有効スピン軌道相互作用が非常に大きいため、ここで議論されているトポロジカル状態が高温でも安定である。
出発点は蜂の巣格子上の電子のタイトバインディングモデルである:
ここで、cはサイトiでの電子消滅演算子、εはオンサイトエネルギーである。tは六員環内での電子遷移に伴うエネルギー、tは六員環間の電子遷移エネルギーである。一番目の和は全てのサイトについて、二番目の和は六員環内の最隣接サイト同志、三番目の和は六員環間であって、最隣接サイト同士についてそれぞれとるものである。議論を簡単にするため、先ず電子の持つスピンを考えないことにする。以下にtを一定にして、tを調整することを考える。tとtとが異なる場合、もともとの蜂の巣格子は六員環を単位とする三角格子になることに留意する。この六員環を1個の人工原子と見なすことが便利であり、この場合人工原子が作る格子の対称性はCである。
まず1個の六員環を考える。そのハミルトニアンは
で与えられる。ここで、ベクトル
は6個サイトの電子消滅演算子で構成され、nは六員環の番号である。式(2)のハミルトニアンの固有ベクトルは
で与えられ、それぞれのエネルギーは順番通りに2,1,1,−1,−1,−2になっている、但し単位はtである。固有状態の規格化は黙認されているとする。式(3)の状態は人工格子の軌道と考えてよく、その形は図1(b)に示される。2番目から4番目の軌道はp軌道とd軌道になっていることが分かる。
運動量空間での直接対角化によって、式(1)で記述される系のエネルギー分散関係が計算できる。但し、ここではεはゼロとする。t=0.9tの場合に計算されたバンド分散関係を図2(a)に示す。まず、バンドはΓ点において二つの二重縮退を持つ。これはC点群が有する2個の二次元不可約表現に対応する。
計算された波動関数を図1(b)に示された人工分子軌道に射影すると、図2(a)に示されている分散関係の濃淡表現(元来の図面はカラーで表現)から分かるように、価電子バンドの中でエネルギーの最も高い状態はd軌道に、伝導電子バンドの中でエネルギーの最も低い状態はp軌道になっている。このエネルギー順序は孤立した六員環人工原子と同じであり、この場合のバンド絶縁体は孤立人工原子と連続的につながることを示唆する。
を増大させると、図2(a)でのバンドギャップが小さくなる。t=tになると、図2(b)に示されているように、バンドギャップが閉じ、d軌道とp軌道とがΓ点で縮退すると共に、線型的なエネルギー分散がみられる。この二重に縮退したディラック錐は、蜂の巣格子のK点とK’点にあるディラック錐に由来する。t=tでは、系は蜂の巣格子に戻り、実空間の単位胞は二つのサイトからなる菱形である。一方で、図2に示されるバンド構造に対応する実空間の単位胞は六員環であるため、ブリュリアン・ゾーンは畳み込まれ、蜂の巣格子のK点及びK’点が図2のΓ点になる。
をさらに増大させると、Γ点でのバンドギャップが再び開く。図2(c)にはt=1.1tの結果を示している。図2(c)のバンド分散の濃淡表現から分かるように、Γ点ではエネルギーの最も高い価電子バンドではp軌道の成分が支配的であり、エネルギーの最も低い伝導電子バンドはd軌道になる。Γ点から離れると、バンドの軌道成分はΓ点と異なり、図2(a)と同じである。すなわち、p軌道とd軌道との間のバンド逆転が起きている。p軌道とd軌道とは空間反転操作に対して正反対のパリティを示すため、そのバンド反転はトポロジカル状態をもたらすことが可能である。これについては、本願発明者の論文である非特許文献18及びBHZモデル(非特許文献8)も参照されたい。
非自明なトポロジーを説明するために、この系が持つ擬時間反転対称性について議論する。擬時間反転対称演算子
は複数共役演算子
及び演算子
を用いて以下のように合成できる:
但し
はパウリ行列である。重要な性質は、
はp軌道に対してp/2回転、d軌道に対してp/4回転の演算子に対応することである。このため、p軌道とd軌道で張られる空間では
になる。これにより、
が簡単に証明できる。この反ユニタリ演算子はスピン自由度を考慮した電子系の時間反転対称演算子と同じ性質を持つ。実際に、この擬時間反転対称演算子に付随するKramersペアは、軌道角運動量の正反対の状態
になることが簡単に確認できる。
蜂の巣格子上の最隣接する6個のサイトからなる六員環人工原子を考えることにより、炭素のπ電子だけから、角運動量を持つ原子軌道が創生され、それらがC対称性の元で擬スピン自由度になる。
式(4)にある擬スピンをもつ原子軌道から構成される基底[p,d,p,dで書かれたΓ点でのk・pモデル
を用いて、図2の振る舞いを理解できる。但し、ここでH及びHはそれぞれ
及び
で与えられる。またδt=t−t、a及びbは1程度の実数、
は2行2例のゼロ行列である(非特許文献18)。図2(c)の場合、δt>0が満たされるので、バンド反転が起き、Zトポロジカル不変量に特徴づけられるトポロジカル状態が現れる(非特許文献7、非特許文献18、非特許文献22)。一方、図2(a)では、δt<0であり、バンドギャップは自明なものである。
重要な点として、有効スピン軌道相互作用はλeSOC〜δtになっていることである。例えば、 δt=0.1tの場合、グラフェンの内在スピン軌道相互作用がλSOC〜0.1meVで、電子遷移エネルギーがt=2.7eVであることを考えれば、有効スピン軌道作用は内在スピン相互作用の3000倍程度になっていることが分かる。
有効スピン軌道相互作用は電子遷移エネルギーによるものに対して、内在スピン軌道相互作用は相対論的効果であり、一般的に小さい値になる。巨大な有効スピン軌道相互作用が可能になることは本願発明の最も優れた特性であり、それによってトポロジカルバンドギャップのサイズが数千度の温度に相当する。
トポロジカル状態をさらによく特徴づけるため、t=1.1tになるリボン系を、t=0.9tのもので挟む場合を解析する。図3に示されているように、バンドギャップに二重縮退を持つ新しい分散曲線(やや太い濃色の曲線)が現れている。それらが対応する状態の波動関数を調べると、それぞれ擬スピン上向きと下向きで、リボン系の二つの境界線に局在していることが分かる。これは典型的な量子スピンホール効果に期待される、逆スピンに伴う反対流に他ならない。
リボンの縁ではC対称性がC対称性に変わり、擬時間反転対称性が破れる。このため、擬スピン上向きと下向の電子同志が相互作用を及ぼし合い、エッジ状態の分散関係はG点で小さいギャップを持つ。定量的には0.01t程度で、図3の尺度では見えない。このミニギャップによって後方散乱が起き、量子スピンホール効果の理想的なエッジ輸送が妨げるかもしれない。この効果を定量的に見積もるため、図3にあるリボン系の電気伝導を計算する。このため、図4に示されるホールバー構造を用い、電流Iを左電極から注入し、右電極から取り出し、平行電圧Vとホール電圧Vを測定し、平行抵抗とホール抵抗を見積もる。理論的には、半無限になっている電極とホール散乱領域での波動関数を界面で接続させ(非特許文献21、非特許文献22)、Landauer-Buettiker公式(非特許文献29)を用いて6つの電極によって散乱される平面波の伝導率
を計算する。
図4(a)に示されているように、注入された電流Iは擬スピンによって二つに分かれ、上向きと下向き擬スピンはそれぞれホールバーの上側と下側の縁を流れる。理想的な場合、注入電子のエネルギーがバルクエネルギーギャップの中に設定されている限り、
が期待される(非特許文献22、非特許文献23)。図4(b)にあるように、ミニギャップ〜0.01tの中では、電気伝導は期待された値から乖離する。しかし、エネルギーがミニギャップを超えると、GxxとGxyは最大振幅0.05e/hのFabry-Perot型振動(非特許文献30)の数周期のうちに、期待された値に近づく。フェルミレベルを[0.05t,0.1t]に設置した場合、殆ど完璧に量子化された電気伝導度(上式)が実現される。このエネルギー領域ではエッジ状態のエネルギー分散はほぼ直線であり、ミニギャップの存在を感じない。
光格子(非特許文献24、非特許文献25)から二次元電子ガス(非特許文献26〜非特許文献28)までさまざまな系で人工的な蜂の巣格子でディラック型エネルギー分散を作り出すことが試みされている。これらの系はいずれも本願にあるように蜂の巣格子の格子点間の遷移エネルギーの調整によってトポロジカル状態を実現する有望なプラットフォームになっている。具体的に議論を進めるため、ここではCu[111]表面をCO分子の三角ゲートによってトポロジカル状態を創成することに限定する(非特許文献28)。もともとの分子グラフェンに、余分なCO分子を選ばれた場所に配置すれば、CO原子クラスタが局所的に斥力ポテンシャルを作り、電子を遠ざけるため(非特許文献27)、それらを囲む六員環のボンドの長さが大きくなり、従って電子の遷移エネルギーが小さくなる。本願発明の観点からみれば、上記手法によって、分子グラフェンに大きなスケールのKekule遷移バターンが既に実験的に実現されていることが非常に重要である(非特許文献28)。本願では図5(a)に示されたパターンのルールに従ってCO分子クラスタを配置する。明らかにここではもとものの蜂の巣格子に比べて、CO分子クラスタを囲む六員環内の電子遷移エネルギーが小さくなり、六員環間のそれが相対的に大きくなる。t>tが満たされているため、本願発明の理論に従って、この場合はトポロジカル状態が実現される。一方、既に実験的に実現されたKekule電子遷移パターンは図5(b)に示され(非特許文献28)、図5(a)のものと双対関係になり、t<tが満たされているため、系がトポロジカル自明な状態になる。
バンドギャップから擬スピン自由度に対応するスピン軌道相互作用の大きさを見積もることが可能である。図2(c)のバンドギャップから分かるように、今の場合擬スピン軌道相互作用は近似的にλeSOC=0.1tになる(eSOCは有効(effective)スピン軌道結合(spin-orbit coupling))。グラフェンではt=2.7eV、λSOC=0.1meVであることを考えれば、電子遷移エネルギーを1割程度変調させるだけで、スピン軌道相互作用の数千倍になる有効擬スピン軌道相互作用が実現できる。スピン軌道相互作用は相対論的効果であり、一般的に弱いのに対して、擬スピン軌道相互作用は電気的な相互作用のみにより、非常に大きくなりえる。このことは本願発明の最も重要な特徴の一つであり、これにより高温でも安定なトポロジカル特性が得られる。
電子の持つ内在スピン自由度を考慮に入れることが可能である。スピン軌道相互作用がなければ、二つのスピンチャンネルはそれぞれ独立に振る舞い、縮退度は上記結果の2倍になる。スピン軌道相互作用があれば、その縮退が解ける。一つの分散については、リボンのエッジでC対称性からC対称性に落ち、擬時間反転対称性の消失に伴ってΓ点に現れるミニギャップが閉じられる。残りの二つの状態についてはそのミニギャップが逆に大きくなる。
ここで、六員環内での電子遷移に伴うエネルギーtと六員環間の電子遷移エネルギーtとの間の比率を所望の値に設定するためには、これに限定されるものではないが、たとえば、Cu[111]面にCO分子を置くことによって人工グラフェンを創製したうえ、図5(a)に図示するように一部の六員環に余分のCO原子を導入し、電子遷移エネルギーのKekule超構造を導入する、等の手法を使用することができる(非特許文献28)。
以上詳細に説明したように、本発明によれば原子が蜂の巣状に配置された蜂の巣格子上の電子遷移エネルギーをKekule超構造をもつように調整するだけで、巨大な有効スピン軌道相互作用が生まれ、従来よりもはるかに高温でもポロジカル状態を発現する材料を実現することができる。このような材料は、これに限定されるものではないが、例えばスピントロニクスや超伝導との結合によって新規量子計算への応用に当たって非常に有用であることが期待される。
Klitzing, K. v., Dorda, G. & Pepper, M. New method for high-accuracy determination of the fine-structure constant based on quantized Hall resistance. Phys. Rev. Lett. 45, 494-497 (1980). Hasan, M. Z. & Kane, C. L. Colloquium: Topological insulators. Rev. Mod. Phys. 82, 3045-3067 (2010). Qi, X.-L. & Zhang S.-C. Topological insulators and superconductors. Rev. Mod. Phys. 83, 1057-1110 (2011). Thouless, D. J., Kohmoto, M., Nightingale, M. P. & Nijs, M. d. Quantized Hall Conductance in a Two-Dimensional Periodic Potential. Phys. Rev. Lett. 49, 405-408 (1982). Xiao, D., Chang, M.-C. & Niu, Q. Berry phase effects on electronic properties. Rev. Mod. Phys. 82, 1959-2007 (2010). Haldane, F. D. M. Model for a Quantum Hall Effect without Landau Levels: Condensed-Matter Realization of the "Parity Anomaly". Phys. Rev. Lett. 61, 2015 (1988). Kane, C. L. & Mele E. J. Quantum Spin Hall Effect in Graphene. Phys. Rev. Lett. 95, 226801 (2005). Bernevig, B. A., Hughes, T. L. & Zhang S.-C. Quantum Spin Hall Effect and Topological Phase Transition in HgTe Quantum Wells. Science 314, 1757-1761 (2006). Hsieh, D., Qian, D., Wray, L., Xia, Y., Hor, Y. S., Cava, R. J. & Hasan M. Z. A topological Dirac insulator in a quantum spin Hall phase. Nature 452, 970-974 (2008). Yu, R., Zhang, W., Zhang, H.-J., Zhang, S.-C., Dai, X. & Fang, Z. Quantized Anomalous Hall Effect in Magnetic Topological Insulators. Science 329, 61-64 (2010). Chang, C.-Z. et al. Experimental Observation of the Quantum Anomalous Hall Effect in a Magnetic Topological Insulator. Science 340, 167-170 (2013). Liang, Q.-F., Wu, L-.H. & Hu, X. Electrically tunable topological state in [111] perovskite materials with an antiferromagnetic exchange field. New J. Phys. 15, 063031 (2013). Pesin, D. & MacDonald, A. H. Spintronics and pseudospintronics in graphene and topological insulators. Nature Mater. 11, 409-416 (2012). Nayak, C., Simon, S. H., Stern, A., Freedman, M. & Das Sarma, S. Non-Abelian anyons and topological quantum computation. Rev. Mod. Phys. 80, 1083-1159 (2008). Stanescu, T. D., & Tewari, S. Majorana fermions in semiconductor nanowires: fundamentals, modeling, and experiment. J. Phys.: Condens. Matter 25, 233201 (2013). Beenakker, C. W. J. Search for Majorana Fermions in Superconductors. Annu. Rev. Condens. Matter Phys. 4, 113-136 (2013). Wu, L.-H., Liang, Q.-F. & Hu, X. New scheme for braiding Majorana fermions. Sci. Technol. Adv. Mater. 15, 064402 (2014). L.-H. Wu, & X. Hu, Scheme to Achieve Silicon Topological Photonics by Dielectric Material. Phys. Rev. Lett. [ arXiv:1503.00416 ]. L. Fu, Topological Crystalline Insulators. Phys. Rev. Lett. 106, 106802 (2011). Ando, T. Quantum point contacts in magnetic fields. Phys. Rev. B 44, 8017 (1991). Groth, C. W., Wimmer, M., Akhmerov, A. R. & Waintal, X. Kwant: a software package for quantum transport. New J. Phys. 16, 063065 (2014). Bernevig, B. A., Hughes, T. L. & Zhang, S.-C. Science Quantum Spin Hall Effect and Topological Phase Transition in HgTe Quantum Wells. 314. 1757-1761 (2006). Koenig, M., Wiedmann, S., Bruene, C., Roth, A., Buhmann, H., Molenkamp, L. W., Qi, X.-L. & Zhang, S.-C. Science Quantum Spin Hall Insulator Statein HgTe Quantum Wells. 318, 766-770 (2007). Wunsch, B., Guinea, F. & Sols, F. Dirac-point engineering and topological phase transitions in honeycomb optical lattices. New J. Phys. 10, 103027 (2008). Tarruell, L., Greif, D., Uehlinger, T., Jotzu, G. & Esslinger, T. Creating, moving and merging Dirac points with a Fermi gas in a tunable honeycomb lattice. Nature 483, 302-305 (2012). Gibertini, M., Singha, A., Pellegrini, V. & Polini, M. Engineering artificial graphene in a two-dimensional electron gas. Phys. Rev. B, 79, 241406 (2009). Park, C.-H. & Louie, S. G. Making Massless Dirac Fermions from a Patterned Two-Dimensional Electron Gas. Nano Lett. 9, 1793-1797 (2009). Gomes, K. K., Mar, W., Ko, W., Guinea, F. & Manoharan, H. C. Designer Dirac fermions and topological phases in molecular graphene. Nature 483, 306-310 (2012). Imry, Y. & Landauer, R. Conductance viewed as transmission, Rev. Mod. Phys. 71, S306-S312 (1999). Tkachov, G. & Hankiewicz, E. M. Ballistic Quantum Spin Hall State and Enhanced Edge Backscattering in Strong Magnetic Fields. Phys. Rev. Lett. 104, 166803 (2010).

Claims (2)

  1. 原子が蜂の巣状に配置された蜂の巣格子型材料であって、
    最隣接サイトとの電子遷移エネルギーがKekule超構造を有し、
    前記Kekule超構造の六員環内部の電子遷移エネルギーtが最隣接六員環との間の電子遷移エネルギーt超構造よりも小さいKekule超格子を有し、巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料。
  2. Cu[111]面にCO分子が配置され、
    一部の六員環に余分のCO分子を導入することにより、前記Kekule超構造を導入した、
    請求項1に記載の蜂の巣格子型材料。
JP2015101321A 2015-05-18 2015-05-18 Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料 Active JP6478187B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015101321A JP6478187B2 (ja) 2015-05-18 2015-05-18 Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015101321A JP6478187B2 (ja) 2015-05-18 2015-05-18 Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016219546A JP2016219546A (ja) 2016-12-22
JP6478187B2 true JP6478187B2 (ja) 2019-03-06

Family

ID=57581526

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015101321A Active JP6478187B2 (ja) 2015-05-18 2015-05-18 Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6478187B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112036573B (zh) * 2020-08-26 2023-09-19 南通大学 一种基于中等规模有噪声量子计算机的量子位交互拓扑结构及其映射方法
CN116594175B (zh) * 2023-05-22 2023-12-01 南开大学 一种基于拓扑奇点的光涡旋阶梯构建方法、***及产品

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6161147B2 (ja) * 2013-01-25 2017-07-12 国立研究開発法人物質・材料研究機構 ペロブスカイト構造を利用した電場調整可能なトポロジカル絶縁体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016219546A (ja) 2016-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Kulish et al. Single-layer metal halides MX 2 (X= Cl, Br, I): stability and tunable magnetism from first principles and Monte Carlo simulations
Sushkov et al. Topological insulating states in laterally patterned ordinary semiconductors
Wang et al. Topological p-n junction
Kotov et al. Electron-electron interactions in graphene: Current status and perspectives
JP6536938B2 (ja) トポロジカルフォトニック結晶
Das Weyl semimetal and superconductor designed in an orbital-selective superlattice
Jiang et al. Spin negative differential resistance in edge doped zigzag graphene nanoribbons
Ratnikov et al. Novel type of superlattices based on gapless graphene with the alternating Fermi velocity
Jin et al. Dirac cone engineering in Bi 2 Se 3 thin films
Feng et al. First-principles investigations on the berry phase effect in spin–orbit coupling materials
Lü et al. Topological phases and pumps in the Su–Schrieffer–Heeger model periodically modulated in time
Vedeneev Quantum oscillations in three-dimensional topological insulators
JP6478187B2 (ja) Kekule超格子構造を有し巨大有効スピン軌道相互作用及びトポロジカル状態を発現する蜂の巣格子型材料
Tan et al. Instability of the magnetic state of MPX 3 (M= Mn, Ni; X= S, Se) monolayers induced by strain and doping
Tang et al. Magneto optical properties of self-assembled InAs quantum dots for quantum information processing
Wang et al. Electric control of the Josephson current-phase relation in a topological circuit
Zhang et al. Quantum phase transitions and topological proximity effects in graphene nanoribbon heterostructures
Polini et al. Artificial graphene as a tunable Dirac material
Li et al. Dirac fermions and pseudomagnetic fields in two-dimensional electron gases with triangular antidot lattices
Zhang et al. The transport properties of Kekulé-ordered graphene p–n junction
Wang et al. Electronic and optical properties of monolayer InSe quantum dots
Escudero et al. Fermi velocity reduction in graphene due to enhanced vacuum fluctuations
Roslyak et al. Plasmons in single-and double-component helical liquids: Application to two-dimensional topological insulators
Tan et al. Anomalous Bloch oscillation and electrical switching of edge magnetization in a bilayer graphene nanoribbon
Myoung et al. Transport in armchair graphene nanoribbons modulated by magnetic barriers

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180315

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190122

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6478187

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250