以下、第1の実施形態の構成を図1ないし図3を参照して説明する。
図2に示すように、標識灯10は、空港の滑走路や誘導路などに地上に設置される地上型航空標識灯である。標識灯10は、灯体11、灯体11を配置する台座12、灯体11を台座12に取り付ける取付手段13、および台座12を固定する可折継手14を備えている。
そして、灯体11は、筐体17、発光ユニット18、グローブ19および点灯回路20を備えている。
筐体17は、例えば金属製で、円板状のベース22、およびこのベース22の下面に設けられたケース23を備えている。ベース22の周辺部にはケース23よりも外径方向に突出するフランジ部24が形成されている。ケース23は、上下に開口する筒部25、および筒部25の下面に取り付けられる蓋部26を備えている。筒部25の上端は、ベース22に溶接固定あるいは一体に形成され、筒部25とベース22との間が密閉されている。筒部25と蓋部26との間にOリングなどのパッキング27が介在され、複数のねじ28によって蓋部26が筒部25に締め付け固定されている。そのため、ケース23内には密閉構造であって例えば気密構造の収容部29が形成されている。蓋部26には、この蓋体26を貫通する複数の導通部30が気密状態に取り付けられている。なお、ベース22にも、このベース22を貫通する複数の導通部が気密状態に取り付けられている。
発光ユニット18は、複数の発光素子32、発光素子32が発する光の配光を制御する配向部材であるレンズ33、複数の発光素子32およびレンズ33を支持する支持部材34を備えている。発光素子32としては、標識灯10の設置場所に応じて、例えば赤色、緑色、青色などの所定の色の光を発するLEDなどの半導体発光素子が用いられる。この発光素子32がLEDの場合には、複数のLED素子を基板に実装して蛍光体を含む封止部材で覆うCOB(Chip On Board)方式、LED素子が搭載された接続端子付きのSMD(Surface Mount Device)パッケージを基板に実装する方式など、いずれを用いてもよい。そして、発光ユニット18は、支持部材34をベース22の上面に固定することで、筐体17上に配置され、グローブ19を介して標識灯10の外部に発光するとともに、標識灯10(灯体11)の外部から入射された光信号を受光(受信)することで起電する受光素子の機能を有している。
グローブ19は、透光性を有する樹脂材料やガラスによって形成されている。グローブ19は、上面が閉塞されるとともに下面に開口された筒状に形成されている。グローブ19の下端周辺部には、筐体17のフランジ部24上に取り付けられるフランジ部36が形成されている。グローブ19のフランジ部36とベース22との間にOリングなどのパッキング37が介在され、複数のねじ38によってフランジ部36がベース22に締め付け固定されている。そのため、筐体17との間のグローブ19内には密閉構造であって例えば気密構造の収容部39が形成されている。収容部39内に、発光ユニット18が収容されている。
なお、筐体17には筐体17の外部と収容部29,39とに亘ってそれぞれ連通する検査孔41,42が形成され、検査孔41,42に検査孔41,42を閉塞する閉塞具43がそれぞれ取り付けられている。そして、灯体11の組立状態で、検査孔41,42を通じて収容部29,39に空気を送ることにより、空気漏れがないか検査することができる。検査孔41,42は隣接して設けられている。
点灯回路20は、筐体17の収容部29に収容されている。点灯回路20は、入力電力を所定の出力電力に変換して発光ユニット18の発光素子32に供給し、発光素子32を点灯させる。点灯回路20の入力端子は蓋部26に設置された導通部30に接続され、出力端子はベース22に設置された導通部に接続されている。なお、点灯回路20の詳細については後述する。
また、台座12は、下部灯体46および調整座47を備えている。
下部灯体46は、可折継手14上に載置される載置部49、この載置部49から下方に突出する固定部50、および載置部49から上方に突出する受部51を備えている。載置部49は、中央が開口された環状に形成されている。固定部50は、筒状に形成され、可折継手14の周囲に配置されている。固定部50の周囲の例えば90°ずつずれた4方向からねじ込まれる固定ねじが可折継手14の周面に当接することにより、固定部50が可折継手14に固定されている。受部51は、上面が開口されるとともに下側から上側に行くに従って径が徐々に大きくなる筒状に形成されている。受部51の内面には、球面状の受面52が形成されている。
調整座47は、下面が閉塞されるとともに上面が開口された筒状に形成されている。調整座47の下面は平坦面に形成されている。調整座47の周面下部側には球面状の調整面53が形成されている。調整座47の上端周辺部には、筐体17のフランジ部24の下面が配置されるフランジ部54が形成されている。筐体17のフランジ部24と調整座47のフランジ部54とは、互いに位置決め状態に取り付けられるようにそれぞれ位置決め構造を有している。
下部灯体46と調整座47とは、下部灯体46の受面52に調整座47の調整面53が接合するように組み合わせられる。受面52と調整面とは互いに球面状であるため、下部灯体46に対して調整座47の角度を任意に調整することができる。下部灯体46の受部51に設けられた溝孔55を通じて調整ねじ56が調整座47にねじ込まれている。そして、調整ねじ56を緩めた状態で、調整座47の角度調整が可能で、調整ねじ56を締め付けることにより調整座47が下部灯体46に固定される。
調整座47の下面には複数の防水ケーブルクランプ57が密閉状態に取り付けられている。これら防水ケーブルクランプ57の下部にケーブル58が接続されている。防水ケーブルクランプ57の上部にはケーブル58からの配線59が導出されている。そして、調整座47の内側において、配線59のコネクタ60と、導通部30に接続された配線61のコネクタ62とが電気的に接続されている。
また、取付手段13は、環状の締付具65、およびこの締付具65の内側に配置される環状のパッキング66を備えている。締付具65は、操作部の操作によって拡径、縮径が可能に構成されている。締付具65の上下の縁部67は締付具65の中心方向に折曲されている。そして、筐体17のフランジ部24、グローブ19のフランジ部36および調整座47のフランジ部54を重ねた状態で、フランジ部24,36,54の外径側からパッキング66を介して締付具65を縮径させることにより、締付具65の上下の縁部67間でパッキング66を介してフランジ部24,36,54を互いに締め付け固定するとともに、フランジ部24,36,54にパッキング66が密着し、フランジ部24,36,54を密閉状態であって例えば水密状態に結合する。そして、筐体17のフランジ部24と調整座47のフランジ部54とが水密状態に接合されることにより、調整座47の内部が水密構造の収容空間として構成される。
また、可折継手14は、地中に埋設される配線ボックスに立設される。可折継手14は、円筒状に形成され、内部に台座12と配線ボックスとに亘って配線されるケーブル58が挿通されている。
そして、標識灯10を設置する場合には、地上に設置された可折継手14に台座12の下部灯体46を取り付け、台座12の調整座47内に灯体11の下部すなわちケース23を挿入する。筐体17のフランジ部24、グローブ19のフランジ部36および調整座47のフランジ部54を取付手段13で結合する。
さらに、フランジ部24,36,54上に図示しない調整台を用いて、灯体11の回転方向の向きや、灯体11の鉛直方向の角度を調整する。調整後に、下部灯体46の固定部50を可折継手14に固定するととともに、調整ねじ56で下部灯体46と調整座47とを固定する。
また、標識灯10のメンテナンスの際には、取付手段13を外し、灯体11を台座12の調整座47から外す。メンテナンスの完了した灯体11を台座12に再度取り付ける際、あるいはメンテナンスのために外した灯体11とは別の代わりの灯体11を台座12に取り付ける際には、灯体11を台座12に配置し、取付手段13で灯体11を台座12に取り付けるだけでよい。
次に、標識灯10を用いた標識灯システムについて説明する。
図1において、標識灯10は、交流の定電流電力を供給する定電流電源装置(CCR)71から定電流電力を供給する給電ラインに一次側が直列に接続された、例えばゴム被覆絶縁トランスなどの複数の絶縁トランス72の二次側に接続されている。なお、図1には1つの絶縁トランス72を示し、他は省略している。そして、標識灯10は、これら定電流電源装置71、絶縁トランス72とともに、標識灯システムを構成している。
そして、標識灯10は、絶縁トランス72の二次側に入力端子が接続され、点灯回路20により、この入力端子に入力される定電流電力を所定の点灯電力に変換して発光素子32に供給する。
点灯回路20は、入力端子に対して、一次側が直列に接続されるカレントトランス74,75,76を備えている。
カレントトランス74は、絶縁トランス72から入力される定電流電力の電流値を所定の電流値に変換する。カレントトランス74の二次側には、交流の定電流電力を整流する整流回路78、および整流回路78で整流された定電流電力を平滑する平滑回路79が接続されている。さらに、平滑回路79には、負荷調整回路80、および点灯制御回路81が接続されている。負荷調整回路80は、主電圧検出回路83で検出される電圧に基づいて制御部84によりフィードバック制御され、発光素子32に供給する電力の電圧を制御する。点灯制御回路81は、スイッチング素子を備え、このスイッチング素子が制御部84によってPWM(パルス幅変調)制御されることにより、発光素子32が所定の光度で点灯するように発光素子32に供給する電流を制御する。また、この点灯制御回路81の出力側には、発光素子32および信号受信回路85が接続されている。信号受信回路85は、例えば、光信号を受信したときに発光素子32により発電される微小電力信号(例えばLEDのアノード−カソード間に起電した電圧値、LEDに流れる電流値、あるいは電圧値や電流値の変化など)を検出することで発光素子32に光信号が入力されたかどうか(発光素子32により光信号を受信したかどうか)を監視している。この光信号は、太陽光などと異なる波長成分を有する赤外線ないし可視光などの照射光が用いられ、光信号の波長成分は特段限定されない。また、この光信号は、PWM(Pulse Width Modulation)により制御されることで、より太陽光との区別が容易になる。
また、カレントトランス75は、絶縁トランス72から入力される定電流電力の電流値を所定の電流値に変換する。カレントトランス75の二次側には、入力端子に入力される定電流電力の電流を検出する電流検出回路86が接続されている。この電流検出回路86で検出された定電流電力の電流値が制御部84に入力され、制御部84は入力される電流値に応じて点灯制御回路81を制御する。
さらに、カレントトランス76は、絶縁トランス72から入力される定電流電力の電流値を所定の電流値に変換する。カレントトランス76の二次側には、制御電源回路88が接続されている。この制御電源回路88は、整流回路78a、平滑回路79a、負荷調整回路80a、12V電源回路89、および5V電源回路90を備えている。整流回路78a、平滑回路79aおよび負荷調整回路80aは、上述した整流回路78、平滑回路79および負荷調整回路80と同様に構成されている。12V電源回路89からは12Vの動作電圧が電流検出回路86に供給され、5V電源回路90からは5Vの動作電圧が制御部84に供給される。
主電圧検出回路83は、検出した主電圧を制御部84に入力し、制御部84は負荷調整回路80の出力電圧を調整する。
また、制御部84は、CPU(マイコン)によって構成され、上述したように点灯回路20を制御する。さらに、制御部84は、発光素子32に入力された光信号に応じて信号受信回路85から出力される受信信号に基づいて、発光素子32が受信した外部からの光信号を判別し、その光信号(光信号の種類)に応じて、定電流電源装置71から供給する交流定電流の電流値と光度比率との関係が予め定められた光度比率テーブルの切り換え、標識灯10の点検、あるいは出力調整などの各種動作を行う。この交流定電流の電流値と光度比率との関係は、定電流電源装置71および各標識灯10がそれぞれ保有しており、各標識灯10においては制御部84が有する記憶部に記憶している。
図3に、制御部84の記憶部に記憶される光度比率テーブルの例を示す。滑走路の標識灯10の場合、光度比率はタップ0〜5までの6段階があり、タップ5が光度比率100%、タップ4が光度比率25%、タップ3が光度比率5%、タップ2が光度比率1%、タップ1が光度比率0.2%、タップ0(消灯タップ)が光度比率0%となっている。そして、タップ5の光度比率100%を定格電流とし、定格電流が6.6Aの光度比率テーブル1と、定格電流が5.0Aの光度比率テーブル2との2種類の光度比率テーブルを備えている。光度比率テーブル1と光度比率テーブル2とは、定格電流が異なるだけで、タップ0〜5における光度比率に変化はない。光度比率テーブル1は電球を用いた標識灯に対応した定格電流となっており、光度比率テーブル2は発光素子32を用いた標識灯10に適した定格電流となっている。なお、このようなタップ0〜5と光度比率テーブル1および2との対応付けは定電流電源装置71も保有している。
そして、既設の滑走路に電球を用いた電球式の標識灯が設置されている場合、定電流電源装置71では、6.6Aを定格電流とし、この定格電流6.6Aを基準として光度比率に応じた電流値の交流定電流を給電ラインから電球式の標識灯に供給し、また、電球式の標識灯では、定格電流6.6Aを基準として供給される交流定電流の電流値を検出し、検出した電流値に応じた光度比率に光度を制御する。
既設の滑走路に設置されている電球式の標識灯を、発光素子32を用いたLED式の標識灯10に入れ替える場合、複数の電球式の標識灯をLED式の標識灯10に順次入れ替えていくこととなり、全ての入れ替えが完了するまでの期間、同じ滑走路に電球式の標識灯とLED式の標識灯10とが混在する状況が発生する。このような電球式の標識灯とLED式の標識灯10とが混在する状況では、定電流電源装置71から供給する定格電流は電球式の標識灯に合わせた定格電流6.6Aとしなければならない。
給電ラインに電球式の標識灯と混在してLED式の標識灯10を設置する場合、LED式の標識灯10の制御部84は定格電流6.6Aに対応した光度比率テーブル1が設定されている。
LED式の標識灯10では、制御部84により、信号受信回路85からの受信信号に基づき、発光素子32によって光信号を受信しているかどうかを監視している。そして、発光素子32にて光信号を受信していなければ、設定されている定格電流6.6Aに対応した光度比率テーブル1に基づき、検出した電流値に応じた光度比率に光度を制御する。この場合、LED式の標識灯10は、負荷調整回路23が相対的に大きな電流をバイパスして、発光素子32への印加電圧を一定化することになる。
そして、給電ラインに接続される標識灯10が全てLED式に入れ替わった場合、標識灯システムで用いる定格電流6.6Aを定格電流5.0Aに切り換える切換作業を行う。この切換作業は、滑走路を使用しない時間帯などに行われる。
切換作業は、まず、定電流電源装置71は、定格電流6.6Aを定格電流5.0Aに切り換え、定格電流5.0Aを基準として光度比率に応じた電流値の交流定電流を給電ラインからLED式の標識灯10に供給する。
次に、定電流電源装置71から給電ラインを通じて標識灯10に定電流電力を供給するとともに、各標識灯10の発光素子32に対して所定の光信号を入力する。このとき、各標識灯10では、制御部84が点灯回路20の出力タップをタップ0(消灯タップ)の電流値に切り換えて、点灯制御回路81により各発光素子32を消灯した状態、すなわち、制御部84および信号受信回路85を含む点灯回路20は動作しているものの、発光素子32のみが消灯した状態とする。これは、発光素子32が点灯した状態では、発光素子32の逆起電圧が信号伝送の障害となり、また、制御部84および信号受信回路85を含む点灯回路20が停止していると、発光素子32からの電力信号を検出できないためである。
LED式の標識灯10では、制御部84により、信号受信回路85からの受信信号の入力があるかどうかを判断する。制御部84により、光信号の入力に拘らず受信信号の入力がないと判断すると、例えば発光素子32が故障しているものと判断する。すなわち、発光素子32が例えばLEDの場合、オープン(開放)による故障と、ショート(短絡)による故障とが生じる場合があり、ショートによる故障の場合には、出力電流波形の歪みなどから故障と判別することが容易でない場合がある。そのため、発光素子32の、故障により発光できなければ光信号を入力しても起電しないという性質を利用して、光信号の入力によって発光素子32が起電したか否かを、信号受信回路85を介して制御部84により監視することで、発光素子32が故障しているか正常であるかも、標識灯10を1つずつ分解してチェックすることなく検査できる。
一方、制御部84により、受信信号の入力があると判断すると、その受信信号の種類を判別する。受信信号が光度比率テーブルの切り換えを指示する信号である場合には、定格電流6.6Aに対応した光度比率テーブル1を定格電流5.0Aに対応した光度比率テーブル2に切り換えた後、発光素子32を所定のタップで点灯させる。
なお、発光素子32に入力する光信号は、その当て方を変える(例えば所定時間以内に光を当てる回数を変える)ことなどにより、異なる種類の信号を生成できる。例えば、遠隔操作による走行や自走(自動走行)する機械装置などを用い、その機械装置に発光手段、および、受光手段を設けて、滑走路に沿って配置された標識灯10に沿うように走行させ、発光手段によって各標識灯10に光信号を順次入力するとともに、各標識灯10の発光素子32の光量を検出することで、光度比率テーブルの切り換わりの成否、あるいは発光素子32の状態などを検出できるようになっている。
LED式の標識灯10では、制御部84により、切り換えられた定格電流5.0Aに対応した光度比率テーブル2に基づき、検出した電流値に応じた光度比率に光度を制御する。この場合、LED式の標識灯10は、負荷調整回路23が相対的に小さな電流をバイパスして発光素子32への印加電圧を一定化できることになる。すなわち、標識灯10での電力損失を低減できる。
定電流電源装置71から複数の標識灯10に交流定電流を供給する給電ラインは数kmにわたるが、定格電流を低減することにより、給電ラインでの電力損失を低減することができる。
このように構成された標識灯10では、発光素子32での光信号の受信によって光度比率テーブルに切り換えるため、例えば別の信号ラインなどを設置したり、光度比率テーブルを切り換えるための構成を新たに内蔵したりすることなく、光度比率テーブルを簡単に切り換えることができる。
また、光度比率テーブルを切り換えた後、発光素子32を所定の光度比率(タップ)で点灯させるように制御部84が点灯回路20を制御することで、発光素子32からの光量を検出するだけで、光度比率テーブルの切り換えが成功したかを容易に確認できる。しかも、光信号を入力する機械装置などに光量を検出する受光手段を設けることで、光度比率テーブルを切り換えるための光信号の入力後、そのまま直ちに切り換えの成否を確認できるので、多数の標識灯10に対しても切り換え漏れなどが生じにくい。
そのため、上記の標識灯システムでは、この標識灯10を用いることにより、既設の滑走路に設置されている電球式の標識灯をLED式の標識灯10に順次入れ替える場合、全て入れ替わった後には、複数の標識灯10の光度比率テーブルを順次切り換えることができ、定格電流を低減化することができる。定格電流を低減化することにより、給電ラインでの電力損失を低減でき、低電力化を図ることができる。
また、切換作業の他に、標識灯10を検査する場合などには、標識灯10の検査を指示する光信号を発光素子32に入力する。この光信号に対応する受信信号を信号受信回路85から受信した制御部84は、標識灯10のタップを所定のタップに切り換えて発光素子32を点灯させるように点灯回路20を制御する。このとき、定電流電源装置71側では、タップを所定のタップ、例えばタップ5などに固定しておく。そして、上記の機械装置などを用いて標識灯10の配光や照度を測定することで、定電流電源装置71の操作なしで、各標識灯10の配光測定や照度測定を容易に行うことができる。
さらに、標識灯10の出力を調整する場合には、標識灯10の出力調整を指示する光信号を発光素子32に入力する。この光信号に対応する受信信号を信号受信回路85から受信した制御部84は、その標識灯10の各タップでの出力を調整する。このため、経年劣化などにより標識灯10の出力が低下した場合でも、容易にその場で調整し直すことができる。すなわち、給電ラインを介して信号を標識灯10に入力する場合には、全ての標識灯10に同一の信号が入力されるのに対して、本実施形態では、標識灯10毎の細かい設定を行うことができる。
なお、LED式の標識灯10に対応した光度比率テーブルは、定格電流3.3Aの光度比率テーブル2に限らず、例えば、定格電流を4.0Aとし、タップ5の電流値を4.0A、タップ4の電流値を3.5A、タップ3の電流値を3.0A、タップ2の電流値を2.5A、タップ1の電流値を2.0A、タップ0の電流値を1.0Aとする光度比率テーブルでもよく、標識灯10の種類に対応した光度比率テーブルが設定されればよい。
次に、第2の実施形態を図4および図5を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施形態は、上記第1の実施形態の内部構造を有する標識灯10を、空港の滑走路や誘導路などの路面(地面)95に埋め込み設置される埋込形としたものである。
すなわち、この標識灯10は、路面95に埋め込み設置される設置体96を備え、この設置体96上に、路面95に埋め込み設置される灯体11が取り付けられる。
設置体96は、例えばアルミニウム合金などの金属により形成され、有底で円筒状の基台97、この基台97上に取り付けられた埋め込み深さ調整用の円筒状の間座98、およびこの間座98上に取り付けられた水平軸調整のための円環状の調整リング99を備えている。そして、設置体96は、調整リング99の上面周辺部が路面95と略同一高さとなるように埋め込み設置される。
調整リング99の中央には灯体11を上方から嵌め込む開口部100が上下に貫通して形成され、この開口部100の周縁には灯体11を支える段部101が形成されている。段部101の上面からは灯体11を固定するための複数のボルト102が立設されている。
調整リング99の上面には、調整リング99の中心部から互いに逆向きに拡開するように出射溝103が形成されている。これら出射溝103は、その底面が調整リング99の内周部から外周部へ向けて斜めに上昇するように傾斜状に形成され、両側面の面積が調整リング99の外周部へ向かうに従って大きくなるように形成されている。
調整リング99の周辺部の複数箇所には、周方向に沿って孔設けされた長孔104が上下に貫通して形成されている。
そして、調整リング99は、環状のパッキング105を介して間座98上に配置され、各長孔104に上方から挿入するボルト106を間座98に螺着し、締め付けることにより固定されている。また、各ボルト106を締め付ける際には、ボルト106が長孔104内を移動できる範囲内で、座間18に対して調整リング99を中心O周りに回転させることにより、灯体11の向きを調整可能としている。
また、灯体11は、灯体本体108、一対の光源である発光素子32、一対の窓部110、および点灯回路20を備えている。
灯体本体108は、例えばアルミニウム合金などの金属により形成された筐体であり、円盤状の上部灯体112、およびこの上部灯体112の下面に取り付けられた灯体カバー113を備えている。上部灯体112には、上部灯体112の中心部から互いに逆向きに拡開する窓孔114が形成されているとともに、この窓孔114から上部灯体112の外周に向かって連続した形状をなすように出射溝115が形成されている。
発光素子32は、ブラケット116によって支持され、このブラケット116は灯体カバー113の支持台117に取り付けられている。さらに、発光素子32は、リード線118によって点灯回路20の出力端子に電気的に接続されている。
窓部110は、透光性を有するレンズやプリズムによって形成されており、上部灯体112の窓孔114に図示しないパッキングを介して嵌め込まれて配置されている。窓部110は、発光素子32に対向し、発光素子32からの光が入射する入射面110a、および灯体11の外部に光を出射する出射面110bを有している。
そして、灯体11は、灯体カバー113の周囲に配置される環状のパッキング121を介して調整リング99の開口部100に嵌め込まれている。このとき、調整リング99の段部101から突出する複数のボルト102が灯体11を貫通し、これらボルト102の上端にナット122を螺着して締め付けることにより、灯体11が調整リング99上に取り付けられている。
また、基台97には、定電流電源装置71からの点灯用ケーブル124が引き込まれている。点灯用ケーブル124の先端に取り付けられているコネクタ125が灯体11から引き出されている点灯用配線126のコネクタ127に接続されている。
そして、このように構成された埋込形の標識灯10において、発光素子32が点灯することにより、発光素子32から発生した光が、窓部110の入射面110aを介して出射面110bから出射し、灯体11の出射溝115および調整リング99の出射溝103を経て標識灯10の側方へ向けて照射する。
また、光度比率テーブルの切り換え、検査、および出力調整などの際には、それぞれ上記第1の実施形態と同様に、定電流電源装置71から給電ラインを通じて標識灯10に定電流電力を供給するとともに、各標識灯10の発光素子32を消灯させた状態でこの発光素子32に窓部110を介して所定の光信号を入力することで、埋込形の標識灯10の場合でも、上記第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、路面95に埋め込み設置される標識灯10の場合には、その強度を確保するために略全体が透光性を有しない金属などの部材によって形成されるため、光を出射するために外部に臨む窓部110の位置に受光素子となる発光素子32を配置することで、埋込形の標識灯10であっても、この窓部110を介して、光の出射だけでなく、外部からの光信号を入力することができる。
そして、以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、外部から入力される所定の光信号に応じて受光素子となる発光素子32により発生する電力信号を信号受信回路85により検出し、この電力信号に応じて、制御部84が光度比率テーブルの切り換えと、点灯回路20の動作の制御との少なくともいずれかをするので、構成の複雑化や追加を招くことなく、定格電流の低減化に簡単に対応できるとともに、標識灯10毎に細かい設定ができる。
また、発光素子32が受光素子の機能を兼ねることで、発光素子と受光素子とを別個に設ける場合と比較して構成を簡略化できるとともに、発光素子32自体の故障を、発光素子32を受光素子として用いることで直接検出できる。
さらに、制御部84に記憶した光度比率テーブルが、定電流の電流値に対して点灯回路20が発光素子32を消灯させる光度比率であるタップ0を有しているので、光信号を入力する際に、発光素子32の発光が邪魔になることがないとともに、制御部84および信号受信回路85などには電源が供給されているので、発光素子32に入力された光信号により生じた電力信号を確実に検出できる。
そして、制御部84は、光度比率テーブルを切り換えたときに、所定の光度比率(タップ)で発光素子32を発光させるように点灯回路20を制御するので、光度比率テーブルの切り換えに成功したかどうかを、発光素子32の発光を介して容易に確認できる。
なお、上記各実施形態において、消灯タップは、最小の電流値のタップであるタップ1よりも小さい電流値に設定したが、例えば最大の電流値のタップであるタップ5よりも大きい電流値に設定することもできる。すなわち、消灯タップは、タップ1〜5と異なる電流値であれば、任意の電流値に設定できる。
点灯制御回路81は、例えばAM制御なども可能であり、発光素子32と直列または並列に例えばFETなどのリレー素子を設けたものとすることができる。
光信号の受信用の受光素子を発光素子32とは別個に配置することもできる。この場合には、受光素子を受光可能に配置するために、例えば埋込形の標識灯10の場合には窓部110など、発光素子32の近傍に配置することで、光信号を確実に受光できる。この場合にも、受光素子に光信号を入力するときには発光素子32を消灯することが好ましい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。