JP6458610B2 - 電磁弁 - Google Patents
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Description
リニアソレノイド型電磁弁は従来より種々の構成のものが実用に供されているが、その代表例としては、例えば、特許文献1に記載されているリニアソレノイド型電磁弁が知られている。
このネジ調整機構は、スリーブの一端側の内周に雌ネジ部を設けるとともに、調節部材をなすスクリュアジャスト(以下、単に受栓と呼ぶ。)の外周に雄ネジ部を設けて、この両ネジ部を螺合するとともに、受栓の一端にスプリングの一端を当接(係止)させているものであって、受栓自体を回転させながら軸方向に移動させてスプリングの取付荷重を調節することができる。
かかる位置決め手段としては、受栓をスリーブに対して固定するという基本的考え方から、(A)受栓位置を固定するためのストッパを圧入する方式と、(B)ネジ調整機構のネジ山を潰す方式とに大別され、次のごとき構造が専ら採用されている。
例えば、前者の方式(A)では、特許文献2に開示されているように、受栓の軸方向位置を調整後、ストッパを圧入することでスリーブに対する受栓の軸方向移動を係止する構造が、また、後者の方式(B)では、特許文献3に開示されているように、受栓の軸方向位置を調整後、スリーブの径方向孔から挿通したかしめピンによって受栓のネジ山を潰すことで、スリーブに対して受栓を回り止めする構造が、主流である。
ところが、上述の電磁弁にあっては、性能面で高性能(高精度)が追求されればされるほど、合否検査が厳しくなることにより、不良品が増大する、或いは、位置決め工程でのコストが嵩み、コスト面でどうしてもアップしてしまい、性能面とコスト面とを両立させることが極めて困難であるとされている。
(2)そのため、高精度の特性が要求されればされるほど不合格品(不良品)が増え、不良率が高くなるために製品単価がアップしてしまう。
(3)もっとも、位置決め精度を高精度に行うことができるように、位置決め工程に時間を掛けたり、高級な設備を導入すれば、それだけ位置決め工程でのコストが嵩み、やはり製品単価の高上を招く。
(4)そこで、不合格品=不良品との従来観念を打破し、不合格品を再調整・再検査することで合格品に転換することができる方策が待望されている。
請求項1に記載の発明(電磁弁)は、筒状を呈し、径方向に貫通する複数のポートを軸方向に並設しているスリーブと、電磁力により駆動されてスリーブ内を軸方向に摺動し複数のポートを開閉制御するスプールと、このスプールを軸方向の一方へ押圧する付勢力を有し、電磁力とのバランス作用でスプールの軸方向移動量を制限する付勢手段と、スリーブ内を軸方向に移動することで、付勢手段の付勢力を加減する調節部材とで構成されることを基本構成としている。
したがって、不合格品を直ちに不良品扱いの廃棄処分にすることなく、製品の大部分を有効活用して良品に転換することができ、性能面とコスト面とを両立させるできる電磁弁を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に示す実施例(変形例を含む)にしたがって詳細に説明する。なお、各実施例において、図中の同一符号は、同一または均等部分を示すものであり、原則として重複説明を省略する。
本実施例では、特に、自動車用自動変速装置の油圧システムに適用される油圧制御用電磁弁を示しており、当該電磁弁の自動変速装置における位置付けを図3に基づいて概説する。
油圧制御用電磁弁(以下、電磁弁と略称する。)103は、Dモードの選択時にクラッチ機構104へのオイルの供給油路を開放または遮断するとともに、オイルの供給圧を調整する。そして、電磁弁103は、スプール弁1と、これを駆動するアクチュエータとしてリニアソレノイド2を備えており、エンジンの油槽(オイルパン)中で軸線が水平になるように設置されることで車両に搭載される。
次に、電磁弁103の具体的な構造について、図1を参照しながら順次説明する。
なお、図1において、図の上方および下方が車両搭載時における天方向および地方向を示している。
なお、受栓10、ネジ調整機構11、および、位置決め手段12の詳細については後述する。
なお、リングコア19にはステータコア14の案内コア14cが嵌合し、案内コア14cとリングコア19との磁束の受け渡しを行う。リングコア19の端面がヨーク17の底部17aに当接し、リングコア19とヨーク17との磁束の受け渡しを行う。これにより、案内コア14cとヨーク17とは、リングコア19を介して磁気的に結合される。
次に、上記構成の電磁弁103の基本的作用を説明する。
ソレノイドコイル13に通電されない時、ステータコア14の磁気吸引コア14aには電磁吸引力(電磁力)が発生しない。したがって、スプール4、シャフト16、および、プランジャ15は、スプリング5の付勢力によって図1の右方向に押し付けられている。そして、プランジャ15の端面がヨーク17の底部17bに当接している。
この状態では、入口ポート7aから流入したオイルは、ランド8bとランド8cとの間隙から排出ポート7cへ流出する。したがって、クラッチ機構104は駆動されない。
この状態では、ランド8cが排出ポート7cを遮断するため、入口ポート7aから流入したオイルは、ランド8bとランド8cとの間隙から出口ポート7bへ流出し、クラッチ機構104を駆動する。また、出口ポート7bから流出したオイルの一部は呼吸ポート7dへ戻される。
上記の非通電(オフ)状態と通電(オン)状態とが、自動変速装置の司令塔である電子制御装置(図示せず)のデューティ制御により繰り返される。
しかして、スリーブ3内を軸方向に摺動するスプール4には、リニアソレノイド2による電磁力(吸引力)およびスプリング5による付勢力(取付荷重)が作用している。これにより、入口ポート7aに供給されるオイルの供給圧は、このオイルが出口ポート7bから流出するときにはリニアソレノイド2への入力電気信号に対応した出力圧に調整される。供給圧に対するスプール4の移動量の調節は、ネジ調整機構11によってスプリング5の取付荷重を調整して行われる。
ここで、本発明は、前述の〔スプリング5の荷重調整〕を実施するための具体的な機構に特徴があり、当該機構の第1実施形態について、図1および図2を参照しながら詳細に説明する。
また、スリーブ3は、リニアソレノイド2と反対側の端部に、円筒状のプレート取付部32を有している。プレート取付部32は、上述のスプリング室31を形成するとともに、その端面には、受栓担持用のプレート50がビス等の取付部材51によって着脱自在に取付固定されている。
受栓10は、中実大径部10aとその挿入側に連なる円筒小径部10bとを有する段付き形状の盲栓として構成されている。そして、中実大径部10aは、外側端面に受栓10自体を回転させるための工具用多角穴10cを有するとともに、外周面に雄ネジ部10d(ネジ調整機構11の一部)を有している。
また、受栓10は、雄ネジ部10dと雌ネジ部52aとの螺合によりプレート50の保持部52に担持され、かつ、円筒小径部10bがスリーブ3のプレート取付部32の内周面に遊嵌状態で嵌挿される。そして、受栓10は、このように配置されることで、スプリング室31の他端側を閉塞するとともに、スプリング5の他端を円筒小径部10bで収納保持する。
このため、当該検査で「不合格」となった場合は、出荷することができず、従前の例ではこの不合格品を不良品として廃棄処分せざるを得なかった。
本実施例では、スリーブ3のプレート取付部32に対して、受栓担持用のプレート50をビス等の取付部材51によって着脱自在に取付固定している。
そして、受栓10は、中実大径部10aでプレート50とは螺着状態にあるものの、円筒小径部10bがプレート取付部32に対して単に嵌挿されているだけである。
したがって、プレート50をスリーブ3から取り外すことにより、受栓10もプレート50共々取り外すことができる。このため、最終検査工程で「不合格」と判定された場合には、プレート50および受栓10を取り外し、そこへ新たなプレート50および受栓10を交換・装着することにより、スプリング5の取付荷重を再調整し、改めて電磁弁103の再検査を実施することができる。
かくして、電磁弁103の主要構成部品をそのまま再利用し、不合格品を不良品にするることなく合格品に転換することができる。
上述の実施例1による本発明によれば、次のような作用効果を奏する。
(2)これにより、電磁弁103は、スプール弁1とこのスプール弁1を駆動するリニアソレノイド2との両主要構成部品を実質的にそのまま再利用し、不合格品を合格品に転換することができる。
(3)また、プレート50および受栓10の交換作業も、取付部材51の脱着により簡単に行うことができる。
(4)なお、プレート50の保持部52を円筒状に形成しているため、プレート50の板厚を薄くしても保持部52の内周面、つまり受栓10の実質的な担持長さ(軸方向長)を長くすることができ、調整代(調整用ストローク)を充分に確保することができる。
(5)かくして、性能面で高性能(高精度)が追求され、合否検査が厳しくなっても、性能面とコスト面とを両立させるできる電磁弁103を提供することができる。
次に、本発明を適用した第2実施形態の電磁弁103について、基本図の図1に加え、図4をも参照しながら説明する。
つまり、スリーブ3には、プレート取付部32の内周に雌ネジ部32a(ネジ調整機構11の一部)が設けられており、ネジ調整機構11の円筒小径部10bの外周には、雄ネジ部10d(ネジ調整機構11の一部)が設けられている。この雌ネジ部32aと雄ネジ部10dとによってネジ調整機構11が構成され、受栓10が回転しながらスリーブ3内を軸方向に移動する。
そして、受栓10の中実大径部10aは、プレート50の保持部52に遊嵌状態で嵌挿されており、軸方向に移動自在である。ただし、スプリング5の取付荷重調整後には、位置決め手段12によってプレート50の保持部52に固着されるものである。
そして、当該調整後には、プレート50の保持部52に位置決め手段12を施し、受栓10をプレート50に固着する。具体的には、保持部52の一部を中実大径部10aの外周側からカシメて塑性変形させることで、受栓10をプレート50に固着する。
このようにして、スリーブ3に対して受栓10が移動(回動)しないように位置決め固定した調整後の電磁弁103を検査工程にて最終的に合否判定する。
ただし、本実施例では、受栓10自体を直接スリーブ3に螺着しているため、取付部材51を外した後、プレート50を回転させながらスリーブ3から取り外さなければならない作業を伴なう。そこで、この作業が煩雑もしくは困難である場合には、ウイークポイント部分53をペンチ等で切除してプレート50から保持部52を切り離せば、この保持部52を回すだけで、受栓10を簡便に外すことができる。
かくして、プレート50および受栓10を取り外し新品と交換・装着することにより、スプリング5の取付荷重を再調整し、改めて電磁弁103の再検査を実施することができる。
特に、本実施例によれば、スリーブ3の内周側を有効活用して、ネジ調整機構11の軸方向長(調整用ストローク)を充分確保することができるため、取付荷重の調整が行い易く、かつ、電磁弁103の軸方向長を短縮することができる。
次に、本発明を適用した第3実施形態の電磁弁103について、基本図の図1に加え、図5をも参照しながら説明する。
ネジ部材61は、スリーブ3にネジ調整機構11を介して結合されるもので、一端側が閉塞された円筒状盲栓として構成されており、該一端側の外端面にネジ部材61自体を回転させるための工具用多角穴61aを有するとともに、外周面に雄ネジ部61b(ネジ調整機構11の一部)を有している。なお、スリーブ3には、プレート取付部32の内周に雌ネジ部32a(ネジ調整機構11の一部)が設けられている。
ストッパ部材62は、中実大径部62aと中実小径部62bとからなる段付円柱体を呈しており、中実大径部62aがプレート50の円筒状保持部52に嵌挿(担持)され、中実小径部62bの先端面をネジ部材61の外端面に当接させることで、ネジ部材61の軸方向移動を規制することができる。
そして、ストッパ部材62を、位置決め手段12によってプレート50の保持部52に固着することで、受栓10(ネジ部材61)をスリーブ3に対して位置決め固定する。
なお、かかる位置決め固定後においても、プレート50をスリーブ3から取り外すことにより、受栓10のストッパ部材62もプレート50共々取り外すことができる。
したがって、本実施例によれば、上述の実施例1、2に比し、電磁弁103のより多くの構成部品をそのまま再利用して、不合格品を合格品に転換することができる。
以上、本発明を3実施例について詳述してきたが、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変形することが可能であり、他の実施形態としてその変形例を例示する。
なお、図6(a)、(b)、(c)は、それぞれ各実施例1、2、3に対応する変形例として簡略的に示しており、関係する構成要素には各実施例毎の該当する符号が付してある。
請求項1に記載の電磁弁103において、
受栓(調節部材)10は、ネジ調整機構11を介してスリーブ3内を軸方向に移動可能であり、
ネジ調整機構11は、プレート50の保持部52の内周に形成された雌ネジ部52aと受栓10の外周に形成された雄ネジ部10dとで構成されており、
位置決め手段12は、ネジ調整機構11のネジ山を潰すことで、受栓10をプレート50に位置決め固定することを特徴としている(実施例1および変形例(1)参照)。
上記手段によれば、プレート50を受栓10共々簡単にスリーブ3から取り外すことができ、電磁弁103の再調整・再検査を効率的に行なうことができる。
請求項1に記載の電磁弁103において、
受栓10は、ネジ調整機構11を介してスリーブ3内を軸方向に移動可能であり、
ネジ調整機構11は、スリーブ3の内周に形成された雌ネジ部32aと受栓10の外周に形成された雄ネジ部10dとで構成されており、
位置決め手段12は、受栓10をプレート50に位置決め固定することを特徴としている(実施例2参照)。
上記手段によれば、スリーブ3の内周側を有効活用して、ネジ調整機構11の軸方向長(調整用ストローク)を充分確保することができため、取付荷重の調整が行い易く、かつ、調整電磁弁103の軸方向長を短縮することができる。
請求項1に記載の電磁弁103において、
受栓10は、ネジ調整機構11を介してスリーブ3に結合されるネジ部材61と、プレート50の保持部52に担持され、ネジ部材61の軸方向移動を係止するストッパ部材62とから構成されており、
位置決め手段12は、ストッパ部材62をプレート50の保持部52に固着することで、受栓10をプレート50に位置決め固定することを特徴としている(実施例3参照)。
上記手段によれば、受栓10のネジ部材61をも再利用することができるため、実施例1、2に比し、電磁弁103のより多くの構成部品をそのまま再利用して、不合格品を合格品に転換することができる。
請求項3に記載の電磁弁103において、
プレート50には、保持部52の周囲に、プレート50から保持部52を機械的に分離可能なウイークポイント部分53が形成されていることを特徴としている(実施例2参照)。
上記手段によれば、プレート50の取り外しが煩雑もしくは困難である場合にも、受栓10を簡単に取り外すことができる。
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電磁弁103において、
この電磁弁103は、自動車用自動変速装置の油圧システム100における油圧制御用電磁弁103として用いられることを特徴としている(実施例1参照)。
上記手段によれば、小型化・高性能化の要求が厳しい自動車用自動変速装置おいて一層の小型化・高性能化に貢献することができる。
Claims (6)
- 筒状を呈し、径方向に貫通する複数のポート(7、7a〜7d)を軸方向に並設しているスリーブ(3)と、
電磁力により駆動されて前記スリーブ(3)内を軸方向に摺動し前記複数のポート(7、7a〜7d)を開閉制御するスプール(4)と、
前記スプール(4)を軸方向の一方へ押圧する付勢力を有し、前記電磁力とのバランス作用で前記スプール(4)の軸方向移動量を制限する付勢手段(5)と、
前記スリーブ(3)内を軸方向に移動することで、前記付勢手段(5)の前記付勢力を加減する調節部材(10)と、
前記調節部材(10)を担持する保持部(52)を有し、前記スリーブ(3)に対して相対回転させずに取付部材(51)によって固定されている着脱自在に取り付けられるプレート(50)と、
前記調節部材(10)を軸方向に移動させて前記付勢手段(5)の前記付勢力を調整した後に前記調節部材(10)の軸方向位置を前記プレート(50)の前記保持部(52)に位置決め固定する位置決め手段(12)と
を備えることを特徴とする電磁弁。 - 請求項1に記載の電磁弁において、
前記調節部材(10)は、ネジ調整機構(11)を介して前記スリーブ(3)内を軸方向に移動可能であり、
前記ネジ調整機構(11)は、前記プレート(50)の前記保持部(52)の内周に形成された雌ネジ部(52a)と前記調節部材(10)の外周に形成された雄ネジ部(10d)とで構成されており、
前記位置決め手段(12)は、前記ネジ調整機構(11)のネジ山を潰すことで、前記調節部材(10)を前記プレート(50)に位置決め固定することを特徴とする電磁弁。 - 請求項1に記載の電磁弁において、
前記調節部材(10)は、ネジ調整機構(11)を介して前記スリーブ(3)内を軸方向に移動可能であり、
前記ネジ調整機構(11)は、前記スリーブ(3)の内周に形成された雌ネジ部(〇)と前記調節部材(10)の外周に形成された雄ネジ部(10d)とで構成されており、
前記位置決め手段(12)は、前記調節部材(10)を前記プレート(50)に位置決め固定することを特徴とする電磁弁。 - 請求項1に記載の電磁弁において、
前記調節部材(10)は、ネジ調整機構(11)を介して前記スリーブ(3)に結合されるネジ部材(61)と、前記プレート(50)の前記保持部(52)に担持され、前記ネジ部材(61)の軸方向移動を係止するストッパ部材(62)とから構成されており、
前記位置決め手段(12)は、前記ストッパ部材(62)を前記プレート(50)の前記保持部(52)に固着することで、前記調節部材(10)を前記プレート(50)に位置決め固定することを特徴とする電磁弁。 - 請求項3に記載の電磁弁において、
前記プレート(50)には、前記保持部(52)の周囲に、前記プレート(50)から前記保持部(52)を機械的に分離可能なウイークポイント部分(53)が形成されていることを特徴とする電磁弁。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の電磁弁において、
この電磁弁は、自動車用自動変速装置の油圧システム(100)における油圧制御用電磁弁(103)として用いられることを特徴とする電磁弁。
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