JP6452113B2 - 交流電機システム及びその制御方法 - Google Patents
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Description
図4において、11は三相の電力変換器としてのフルブリッジ型の電圧形インバータ、111〜116はインバータ11を構成する半導体スイッチング素子、21は交流電機としての交流電動機、40は電源(直流電源)、50はインバータ11の直流電圧部に接続されたコンデンサである。
この交流電機システムにおいては、インバータ11のスイッチング素子111〜116をオン・オフして交流電動機21に供給する三相(U,V,W相)の交流電力を制御することにより、交流電動機21の発生トルクや回転速度を調整することができる。
まず、交流電動機21側からインバータ11内の還流ダイオードを介して電磁エネルギーが流入することにより、直流電圧部のコンデンサ50の電圧が上昇し、その電圧がコンデンサ50やスイッチング素子111〜116の耐圧を超えると、これらの部品が破損する。この問題を回避するには、コンデンサ50の静電容量を増大させる、コンデンサ50やスイッチング素子111〜116の耐圧を高める、等の対策が有効であるが、何れもコスト、体積、発生損失の増大等を伴う。
例えば、特許文献1に記載された従来技術では、回路の主スイッチ(図5の直流スイッチ42に相当)が何らかの理由で開放されたとき、インバータの上アームまたは下アームのスイッチング素子を全てオン状態として交流電動機の固定子巻線を短絡させている。これにより、交流電動機の電磁エネルギーをインバータとの間で還流させてコンデンサ側への流入を回避し、コンデンサに過電圧が印加されるのを防止することができる。
しかし、特許文献1の従来技術では、交流電動機の固定子巻線を短絡させることによって過大な電流が持続して流れるので、交流電動機の過熱や永久磁石の減磁を生じ得る。また、固定子巻線の短絡により流れる過大な電流の減衰を、もっぱら交流電動機の減速動作に依存しているため、通常、過大な短絡電流が減衰するまでに相当な時間を必要とする。
また、非特許文献1に記載された方法によって短絡電流を短時間のうちに減衰させることができたとしても、短絡電流のピーク(過渡的な最大電流)を抑制する効果は得られず、スイッチング素子の破壊や電動機の過熱、PMモータの場合の永久磁石の減磁等を生じ得る。
この制御方法では、図6(a),(b)に示すように、コンデンサ50に蓄積されたエネルギーを放電する制御とコンデンサ50にエネルギーを充電する制御とを繰り返すことでコンデンサ50の直流電圧を一定値に制御し、インバータ11と交流電動機21との間で授受される有効電力がゼロ近傍となる状態を生成する。
[数式1]
P=ωT
ω:機械角速度
[数式2]
T=Pn{Ψm+(Ld−Lq)Id}Iq
Pn:極対数、Ψm:永久磁石磁束
Ld:d軸インダクタンス、Lq:q軸インダクタンス
Id:d軸電流、Iq:q軸電流
更に、この従来技術では、有効電力Pがゼロ近傍になった後に、交流電動機21の電気端子を短絡させる制御に移行する。
有効電力がゼロでない場合(ステップS11No)、インバータ11によりコンデンサ50に対する充電制御または放電制御を行って有効電力をゼロに制御する。すなわち、コンデンサ50の直流電圧が上限設定値を超えた場合は放電モードに設定し(ステップS12Yes,S13)、直流電圧が下限設定値を下回った場合は充電モードに設定する(ステップS12No,S14Yes,S15)。
上記の動作を全相のスイッチング素子がオフするまで繰り返し実行し(ステップS27〜S29)、全相のスイッチング素子がオフしたらインバータ11の運転を停止して終了する(ステップS30)。
しかし、例えばq軸電流Iqがゼロであることを演算するにはマイクロコンピュータに実装されたソフトウェアが必要であり、演算能力に優れた高価なハードウェアやソフトウェアを用いることが要求される。この場合、仮にマイクロコンピュータが故障してしまうと、過電圧や過電流の発生を防止することを目的とした交流電機システムの実現が困難になり、十分な安全性を確保することができなくなる。
更に、本発明の他の解決課題は、システムの故障に対する冗長性を持たせて安全性を一層高めることができる交流電機システム及びその制御方法を提供することにある。
前記電力変換器と前記交流電機との間で電力を授受している変換器動作期間から電力の授受を行わない変換器停止期間へ移行するための変換器移行期間が、第一制御期間及び第二制御期間からなり、
前記制御装置は、
前記第一制御期間において、
前記半導体スイッチング素子の制御により、前記コンデンサを放電させる放電制御と前記コンデンサを充電する充電制御とを繰り返し行う第1の手段と、前記電力変換器の各相出力電流の絶対値の最大相を判定し、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことから前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定する第2の手段と、を備え、かつ、
前記第2の手段による判定後に移行する前記第二制御期間において、
前記半導体スイッチング素子の制御により、前記交流電機の各電気端子を短絡状態にする短絡制御を行う第3の手段と、前記交流電機の各電気端子を流れる電流がゼロ近傍となった時点で当該電気端子を開放し、または、前記電力変換器の内部の整流素子を介して当該電気端子を導通可能な状態にする制御を、全ての前記電気端子について行う第4の手段と、を備えたものである。
前記電力変換器と前記交流電機との間で電力を授受している変換器動作期間から電力の授受を行わない変換器停止期間へ移行するための変換器移行期間が、第一制御期間及び第二制御期間からなり、
前記第一制御期間では、前記半導体スイッチング素子の制御により、前記コンデンサを放電させる放電制御と前記コンデンサを充電する充電制御とを繰り返し行い、前記電力変換器の各相出力電流の絶対値を演算して前記絶対値の最大相を検出し、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことにより前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定して前記第二制御期間に移行し、
前記第二制御期間では、前記半導体スイッチング素子の制御により、前記交流電機の各電気端子を短絡状態にする短絡制御を行い、前記交流電機の各電気端子を流れる電流がゼロ近傍となった時点で当該電気端子を開放し、または、前記電力変換器の内部の整流素子を介して当該電気端子を導通可能な状態にする制御を、全ての前記電気端子について行うものである。
前記第一制御期間では、アナログ演算回路及びディジタル演算回路により構成されるハードウェアを用いて、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことを検出して前記有効電力がゼロ近傍になったことを判定する処理と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアを用いた演算により、前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定する処理と、を選択可能にしたものである。
このため、電磁エネルギーによる過電圧、過電流の発生を防止するために、従来技術のごとくマイクロコンピュータ及びソフトウェアによりq軸電流等を演算して有効電力がゼロ近傍であることを判定する必要がなく、低コストで安全性の高い交流電機システムを実現することができる。
また、有効電力がゼロ近傍であることを判定する場合に、本発明と特許文献2による処理とを選択可能にすれば、装置の異常や故障に対する冗長性を高めて交流電機システムの安全性を一層向上させることができる。
この実施形態は、例えば図4,図5に示した三相の交流電機システムに適用されるものであるが、交流電機システムの相数が三相を超える場合にも適用可能である。また、以下では、交流電機20がPMモータ等の交流電動機21であるものとして説明するが、本発明は交流電機20が交流発電機や交流電源等である場合にも適用可能である。
ここで、本実施形態が図7の従来技術と相違するのは、有効電力がゼロであることをソフトウェアによる演算を行って判定するのではなく、コンデンサ50の充放電制御を行いながら各相出力電流の絶対値に基づいて有効電力がゼロ近傍であることを推定する点にある。
なお、図2(a)はインバータ11の各相の出力電流iu,iv,iw、図2(b)は上記電流をd−q軸座標系に回転座標変換したd軸電流id及びq軸電流iq、図2(c)はコンデンサ50の直流電圧Edcを示している。また、「運転指令あり」から「運転指令なし」への移行時(変換器動作期間T0から第1制御期間T1への移行時)は、図6に示した直流スイッチ42がオンからオフに移行する時点である。
以下、図1,図2を参照しつつ本実施形態の動作を説明する。
上記の制御、すなわちステップS01〜S03,S12〜S17を繰り返し行うことにより、q軸電流iq=0等の演算を行わなくても、インバータ11と交流電動機21との間で授受される有効電力を実質的にゼロ近傍に制御することができる。
すなわち、交流電動機21の各電気端子を短絡するようにインバータ11のスイッチングパターンを制御し、交流電動機21から直流電圧部にエネルギーが流入しないようにする。その後、相電流のゼロクロスが検出された相からスイッチング素子を順次、オフさせる(ステップS21〜S26)。
これにより、インバータ11と交流電動機21との間で授受される有効電力を予めゼロ近傍に制御した状態で交流電動機21の各電気端子を短絡するため、短絡後に流れる電流を抑制できると共に、交流電動機21からインバータ11へのエネルギーの流入を防止することができる。
一方、特許文献2に記載されているように、マイクロコンピュータ及びソフトウェアを用いた演算により、インバータ11と交流電動機21との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定する判定手段を別個に設け、この判定手段による判定処理と、本実施形態による判定処理とを選択可能に構成しても良い。
これにより、有効電力がゼロ近傍になったことの判定手段を冗長化することができ、一方の判定手段を構成するハードウェア等に異常や故障が発生したときに他方の判定手段を利用するようにして、交流電機システムの安全性を一層向上させることができる。
11 インバータ
20 交流電機
21 交流電動機
30 リアクタンス成分
40 電源
41 バッテリー
42 直流スイッチ
50 コンデンサ
111〜116 半導体スイッチング素子
Claims (4)
- 交流電機と、前記交流電機の複数の電気端子に接続され、前記交流電機との間で電力を授受する電力変換器と、前記電力変換器を構成する半導体スイッチング素子を制御する制御装置と、前記電力変換器の直流入力端子に接続されたコンデンサと、を有する交流電機システムにおいて、
前記電力変換器と前記交流電機との間で電力を授受している変換器動作期間から電力の授受を行わない変換器停止期間へ移行するための変換器移行期間が、第一制御期間及び第二制御期間からなり、
前記制御装置は、
前記第一制御期間において、
前記半導体スイッチング素子の制御により、前記コンデンサを放電させる放電制御と前記コンデンサを充電する充電制御とを繰り返し行う第1の手段と、前記電力変換器の各相出力電流の絶対値の最大相を判定し、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことから前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定する第2の手段と、を備え、かつ、
前記第2の手段による判定後に移行する前記第二制御期間において、
前記半導体スイッチング素子の制御により、前記交流電機の各電気端子を短絡状態にする短絡制御を行う第3の手段と、前記交流電機の各電気端子を流れる電流がゼロ近傍となった時点で当該電気端子を開放し、または、前記電力変換器の内部の整流素子を介して当該電気端子を導通可能な状態にする制御を、全ての前記電気端子について行う第4の手段と、を備えたことを特徴とする交流電機システム。 - 請求項1に記載した交流電機システムにおいて、
少なくとも前記第2の手段を、アナログ演算回路及びディジタル演算回路により構成されるハードウェアによって実現したことを特徴とする交流電機システム。 - 交流電機と、前記交流電機の複数の電気端子に接続され、前記交流電機との間で電力を授受する電力変換器と、前記電力変換器を構成する半導体スイッチング素子を制御する制御装置と、前記電力変換器の直流入力端子に接続されたコンデンサと、を有する交流電機システムの制御方法において、
前記電力変換器と前記交流電機との間で電力を授受している変換器動作期間から電力の授受を行わない変換器停止期間へ移行するための変換器移行期間が、第一制御期間及び第二制御期間からなり、
前記第一制御期間では、前記半導体スイッチング素子の制御により、前記コンデンサを放電させる放電制御と前記コンデンサを充電する充電制御とを繰り返し行い、前記電力変換器の各相出力電流の絶対値を演算して前記絶対値の最大相を検出し、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことにより前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定して前記第二制御期間に移行し、
前記第二制御期間では、前記半導体スイッチング素子の制御により、前記交流電機の各電気端子を短絡状態にする短絡制御を行い、前記交流電機の各電気端子を流れる電流がゼロ近傍となった時点で当該電気端子を開放し、または、前記電力変換器の内部の整流素子を介して当該電気端子を導通可能な状態にする制御を、全ての前記電気端子について行うことを特徴とする交流電機システムの制御方法。 - 請求項3に記載した交流電機システムの制御方法において、
前記第一制御期間では、
アナログ演算回路及びディジタル演算回路により構成されるハードウェアを用いて、前記最大相の出力電流絶対値がピーク値に到達したことを検出して前記有効電力がゼロ近傍になったことを判定する処理と、マイクロコンピュータ及びソフトウェアを用いた演算により、前記電力変換器と前記交流電機との間で授受される有効電力がゼロ近傍になったことを判定する処理と、を選択可能にしたことを特徴とする交流電機システムの制御方法。
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