以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙幣処理装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態である紙幣処理装置を模式的に示す説明図である。ここで例示する紙幣処理装置は、例えば紙幣釣銭機として適用されるものであり、装置本体1及び出金庫40を備えて構成されている。
装置本体1には、入金部10、鑑別部21、判別部22及び収納部(収納構造)30が設けられている。入金部10は、装置本体1の前端部分に設けられており、入金路11及び搬送振分機構12を備えている。
入金路11は、装置本体1に設けられた入金口2に連通しており、該入金口2から離隔するに連れて、すなわち後方に向かうに連れて漸次下方に傾斜する態様で形成されている。この入金路11の下流側は搬送路20に連続している。
ここで搬送路20は、入金路11を通過した紙幣を搬送するためのもので、装置本体1の内部にて前後方向に沿って延在している。より詳細に説明すると、搬送路20は、入金路11に連続する部分から後方に向かうに連れて、すなわち入金路11の出口から離隔するに連れて漸次上方に傾斜する傾斜路20aを有しており、この傾斜路20aの後は、同一の高さレベルにて後方に向かって延在している。
かかる搬送路20は、図には明示しないが、搬送プーリに張設された搬送ベルトが変位することにより、紙幣を前方から後方に向けて搬送するとともに、紙幣を後方から前方に向けて搬送する路である。
搬送振分機構12は、入金口2を通じて入金部10に投入された複数の紙幣を搬送路20に対して1枚ずつ送出する機能を有するとともに、投入された複数の紙幣に硬貨等の紙幣以外の異物が侵入している場合、該異物を排出路3に振り分ける機能を有している。排出路3に振り分けられた異物は、該排出路3を通過した後に受皿4に導かれて装置本体1の外部に排出される。
鑑別部21は、上記傾斜路20aの途中に設けられている。この鑑別部21は、入金部10より1枚ずつ送出されて通過する紙幣の真偽及び金種を鑑別するものである。この鑑別部21での鑑別結果は、図示せぬ制御部に鑑別信号として与えられる。
判別部22は、鑑別部21よりも後方側の搬送路20の途中に設けられている。この判別部22は、通過する紙幣の金種及び枚数を判別するものである。この判別部22での判別結果は、制御部に判別信号として与えられる。
収納部30は、装置本体1の後方側における搬送路20の下部において、金種毎に前後に並ぶ態様で設けられている。
図2及び図3は、最も前方の収納部30を示すものであり、図2は、右側前方より見た場合を示す斜視図であり、図3は、左側後方より見た場合を示す斜視図である。尚、ここでは、最も前方の収納部30について説明するが、最も後方の収納部30も略同様の構成を有している。
これら図2及び図3に示すように、収納部30は、収納壁部31と、押圧部32と、プッシャ部材33とを備えて構成されている。
収納壁部31は、収納部30の後壁を構成するものであり、収納底部30Bとの間に隙間30Sが形成された状態で、収納部30の左壁を構成する収納左側部30Lと、収納部30の右壁を構成する収納右側部30Rとに支持されている。尚、収納左側部30L及び収納右側部30Rは、それぞれ収納底部30Bに立設されている。
この収納壁部31にはキックローラ311が設けられている。キックローラ311は、2つ設けられており、それぞれ左右方向に沿って延在する軸部材312(図6〜図8参照)の中心軸回りに回転可能なものである。これらキックローラ311は、図示せぬローラ用モータに連係されており、該ローラ用モータの駆動により時計回り又は反時計回りに回転するものである。そして、キックローラ311は、収納壁部31の前面となる収納面31aより外周面の一部が前方に突出している。
押圧部32は、収納壁部31の前方側に設けられている。この押圧部32は、後面である押圧面32aが収納面31aに対向する態様で設けられている。この押圧部32の左右幅は、収納面31aの左右幅よりも大きいものである。
このような押圧部32は、下部に設けられた図示せぬ押圧下部ローラが収納底部30Bに形成された前後方向が長手方向となる図示せぬ下側案内溝部に進入しており、左側部に設けられた押圧左側ローラ321が収納左側部30Lに形成された前後方向が長手方向となる左側案内溝部30L1に進入しており、右側部に設けられた押圧右側ローラ322が収納右側部30Rに形成された前後方向が長手方向となる右側案内溝部30R1に進入しており、収納底部30Bの上面を前後方向に沿って移動可能である。
かかる押圧部32は、収納左側部30Lの前端部及び収納右側部30Rの前端部を連結する態様で収納底部30Bに立設された収納基部30Kとの間に介在する押圧スプリング(付勢手段)32Sにより後方に向けて、すなわち収納壁部31に近接するよう常時付勢されている。ここで収納基部30Kは、収納部30の前壁を構成するものである。
プッシャ部材33は、収納壁部31と押圧部32との間に設けられている。このプッシャ部材33は、図4及び図5に示すように、左右一対となる左側プッシャ部331と右側プッシャ部332との下端部同士がプッシャロッド333に連結されて構成されている。かかるプッシャロッド333は、左右方向が長手方向となる長尺状のものであり、中心軸回りに回転可能である。
このようなプッシャ部材33は、左側プッシャ部331の後面及び右側プッシャ部332の後面が作用面33aを構成しており、左側プッシャ部331と右側プッシャ部332との間に切欠部33bが形成されている。ここで切欠部33bの左右幅、すなわち左側プッシャ部331と右側プッシャ部332との離間距離は、収納壁部31の左右幅よりも大きくされている。
かかるプッシャ部材33における左側プッシャ部331には、プッシャローラ334が設けられており、該プッシャローラ334が収納底部30Bと収納左側部30Lとの間に形成された前後方向が長手方向となるガイド溝部33L2に進入している。
一方、右側プッシャ部332には、上下方向が長手方向となる長孔335aを有する連結板335が取り付けられている。かかる連結板335の長孔335aには、収納右側部30Rの右方側において自身の中心軸回りに回転可能に設けられたプッシャ伝達ギア341の右側面より右方に向けて突出するプッシャ伝達突部341aが進入している。プッシャ伝達ギア341は、外周面に形成されたギアの一部がプッシャ駆動ギア342に噛合している。このプッシャ駆動ギア342は、プッシャ用モータ343に伝達ユニット344を介して連係されており、該プッシャ用モータ343の駆動により自身の中心軸回りに回転するものである。つまり、プッシャ伝達ギア341は、プッシャ用モータ343の駆動により伝達ユニット344及びプッシャ駆動ギア342を介して中心軸回りに回転するものである。
そして、プッシャ伝達ギア341がプッシャ用モータ343の駆動により中心軸回りに回転することにより、プッシャ伝達突部341aが長孔335aの内部を移動することとなり、これによりプッシャ部材33は、最も前方となる基準位置と、最も後方となる進出位置との間で収納底部30Bの上面を前後方向に沿って進退移動する。つまり、プッシャ部材33は、右側部に駆動源であるプッシャ用モータ343からの駆動力が付与されることにより進退移動するものである。
上記基準位置は、収納壁部31と押圧部32との間の位置であり、収納壁部31との間に集積域S1(図6等参照)を形成するとともに、押圧部32との間に収納域S2(図6等参照)を形成している。常態においては、プッシャ部材33が基準位置に配置されている。上記進出位置は、切欠部33bを収納壁部31が相対的に通過した位置である(図7参照)。
上記プッシャ部材33においては、プッシャロッド333に左右一対となるピニオン351が形成されている。これらピニオン351は、収納底部30Bにおいて左右一対となる態様で形成され、かつ前後方向が長手方向となるラック352に噛合している。
このような構成を有する収納部30の紙幣の収納動作について説明する。かかる説明の前提として、プッシャ部材33は基準位置に配置されており、収納域S2には既に複数の紙幣が収納されており、押圧部32によりプッシャ部材33(左側プッシャ部331及び右側プッシャ部332)の前面に押し付けられているものとする。
図6に示すように、集積域S1に複数の紙幣が搬送されると、プッシャ部材33は、プッシャ用モータ343の駆動により後方に向けて進出移動する。このとき、プッシャロッド333は、ピニオン351が対応するラック352に噛合した状態で中心軸回りを回転する。またプッシャ部材33は、左側プッシャ部331のプッシャローラ334がガイド溝部33L2を回転しながら移動することで上方への変位が規制されている。つまり、プッシャ部材33は、上方への変位が規制されてピニオン351とラック352との噛合状態が維持されている。尚、押圧部32は、押圧スプリング32Sによりプッシャ部材33の進出移動に追従して後方に向けて移動する。
そして、図7に示すように、プッシャ部材33が進出位置に向けて進出移動すると、収納壁部31が相対的に切欠部33bを通過する。これにより、集積域S1に搬送された紙幣は形状を変形させながら切欠部33bを相対的に通過して収納域S2に移動する。この場合、収納域S2の紙幣枚数が増加することとなるが、増加した紙幣の厚み分は、押圧部32が押圧スプリング32Sの付勢力に抗して後方に移動することにより吸収される。
このようにして進出移動まで移動したプッシャ部材33は、プッシャ用モータ343の駆動により前方に向けて退行移動する。このとき、押圧部32も押圧スプリング32Sの付勢力に抗して前方に向けて移動する。その後、図8に示すように、基準位置まで移動することにより、紙幣の収納動作が完了する。
このような判別部22の前方側には精査部23が設けられている(図1参照)。この精査部23は、精査態様となる収納部30に収納された紙幣を一時的に収納するものである。そして、精査部23は、精査のために一時的に収納した紙幣を搬送路20に繰り出すものである。
出金庫40は、図9にも示すように、装置本体1の前方であって入金部10の上方側に設けられている。この出金庫40は、図10に示すように、装置本体1から離脱させることができ、装置本体1に対して着脱可能に設けられている。尚、出金庫40は装置本体1に着脱可能に設けられていると述べたが、図9に示すように装置本体1に設けられている場合には、専用の入力操作、あるいは図示せぬ取出用鍵を所定の取出用鍵孔(図示せず)に挿入して操作等されない限り、装置本体1から離脱できないように設けられている。つまり、出金庫40は、装置本体1から容易に離脱するようには設けられていない。
このような出金庫40は、図11に示すように出金口41を有しており、搬送路20を通じて搬送された紙幣を収容して出金口41を通じて外部に排出するものである。かかる出金庫40は、図12に示すように、ガイド部42、出金扉43、スライド部材44及び出金ロック部50を備えて構成されている。
ガイド部42は、連通口42aを構成する部分である。かかるガイド部42は、図9に示すように出金庫40が装置本体1に装着される場合に、連通口42aが入金口2に連通している。そして、ガイド部42は、図10に示すように出金庫40が装置本体1から離脱する場合に、連通口42aの前方縁部42bが操作者の把持部として機能するものである。
出金扉43は、出金口41を開閉するものであり、図13及び図14に示すように、左右両端部431が左右方向に沿って延在する扉軸部432に軸支され、該扉軸部432の中心軸回りに揺動可能に設けられている。この出金扉43は、上方に向けて揺動することにより出金口41を開成させる一方、下方に向けて揺動することにより出金口41を閉成するものである。
このような出金扉43においては、左右両端部431における扉軸部432の径方向外部となる個所に扉ギア部433が形成されている。
スライド部材44は、出金口41の下縁部の一部を構成するものであり、前後方向にスライド可能に設けられている。このようなスライド部材44は、左右両端の後方にスライドギア部441が形成されており、連係ギア(連係部材)45を介して出金扉43に連係されている。
連係ギア45は、左右一対となる態様で2つ設けられている。これら連係ギア45は、周面にギア部が形成された大径ギア部451と、周面にギア部が形成された小径ギア部452とが互いに接合され、左右方向に沿って延在する共通の連係ギア軸453の中心軸回りに回転可能に設けられている。ここで小径ギア部452は、大径ギア部451よりも外径が小さい。
このような連係ギア45は、大径ギア部451のギア部の一部が対応するスライドギア部441に噛合しているとともに、小径ギア部452が出金扉43の対応する扉ギア部433に噛合している。
これにより、スライド部材44は、図13及び図14に示したように、出金扉43が下方に揺動して出金口41を閉成する場合には、前方に向けてスライドして前端部が出金扉43の端部に接する一方、出金扉43が上方に揺動して出金口41を開成する場合には、後方に向けてスライドして前端部が出金口41の下縁前端部よりも後方に配置される。つまり、スライド部材44は、後方に向けてスライドすることにより、図11の二点差線で示す紙幣のうち最下位の紙幣の下部を露出させるものである。
出金ロック部50は、左右一対となる態様で設けられており、ロック作用片部51を備えている。図15は、右方側の出金ロック部50を示す模式図である。尚、左方側の出金ロック部50は、右方側の出金ロック部50とは左右が異なるだけであるので、以下においては右方側の出金ロック部50について説明し、左方側の出金ロック部50の説明は割愛する。
ロック作用片部51は、出金扉43の右端部431よりも右方側において、左右方向に沿って延在する作用軸部51aの中心軸回りに回動可能に設けられている。このロック作用片部51は、作用軸部51aが取り付けられた作用基部511と、作用基部511より上方に向けて延在する作用フック部512と、作用基部511より前方に向けて延在する作用入力部513とを有している。作用入力部513には、長孔形状の作用入力孔513aが形成されている。
この作用入力孔513aには、操作入力部52の第1入力突部521aが左方から挿通している。操作入力部52は、左右方向に沿って延在する入力軸部52aの中心軸回りに回動可能に設けられている。この操作入力部52は、入力スプリング522によりその基準姿勢が決められており、基準姿勢となる場合、第1入力突部521aが入力軸部52aの後方側に位置している。図15中の符号53は、左方側の出金ロック部50を構成する操作入力部52に回動力を伝達する伝達部材である。
このような出金ロック部50は、常態においては、操作入力部52が基準姿勢となることで、図15に示すように、ロック作用片部51の作用フック部512が作用基部511より上方に向けて延在している。これにより、作用フック部512は、出金扉43の右端部431において右方に突出する態様で設けられた突片435(図13参照)よりも先端部が上方側に位置しているので、出金扉43を上方に揺動させても作用フック部512の先端が干渉する。よって、出金ロック部50は、常態においては、出金扉43が開く方向に移動することを規制するロック状態となるものである。
ところで、出金ロック部50は、操作入力部52に形成された入力鍵孔523に出金用鍵(図示せず)が挿入されて、図16に示すように、入力スプリング522の付勢力に抗して操作入力部52を右方側から見て時計回りに回動した解除姿勢にされる解除操作がなされた場合には、ロック作用片部51が前方に向けて回動し、作用フック部512の先端部が突片435の上方側から離脱し、出金扉43が上方に揺動されることを許容する。よって、出金ロック部50は、解除操作された場合には、出金扉43が開く方向に移動することを許容する非ロック状態となるものである。
上記装置本体1には、上記構成の他に、図12に示すように、ロック機構部60が設けられている。
図17及び図18は、それぞれ右方側の出金ロック部50とともにロック機構部60の構成要素を示すものであり、図17は右方側から見た説明図であり、図18は左方側から見た説明図である。
ここで例示するロック機構部60は、図12に示したように、装置本体1の入金部10の右方側に設けられている。このロック機構部60は、ロック駆動ギア61と、ロック伝達ギア62と、ロック伝達レバー63と、ロック伝達部64とを備えて構成されている。 ロック駆動ギア61は、左右方向に沿って延在するロック駆動軸部61aの中心軸回りに回転可能に設けられている。このロック駆動ギア61は、入金部10の搬送振分機構12の駆動源となる搬送振分モータ5の駆動により右方から見て時計回り若しくは反時計回りに駆動するものである。
ロック伝達ギア62は、ロック駆動ギア61の後方において、左右方向に沿って延在するロック伝達軸部62aの中心軸回りに回転可能に設けられている。このロック伝達ギア62は、外周面に形成されたギア部がロック連係ギア65の外周面のギア部に噛合している。ロック連係ギア65のギア部は、ロック駆動ギア61の外周面に形成されたギア部にも噛合している。
これにより、ロック伝達ギア62は、ロック駆動ギア61が右方から見て時計回りに回転する場合には、ロック連係ギア65を介して右方から見て時計回りに回転する一方、ロック駆動ギア61が右方から見て反時計回りに回転する場合には、ロック連係ギア65を介して右方から見て反時計回りに回転するものである。また、ロック伝達ギア62の左面には、左方に向けて突出するロック伝達突部621が形成されている。
ロック伝達レバー63は、ロック伝達ギア62の後方において、左右方向に沿って延在するロック伝達レバー軸部63aの中心軸回りに回動可能に設けられている。このロック伝達レバー63は、ロック伝達レバースプリング63Sによりその基準姿勢が決められている。
このようなロック伝達レバー63は、ロック伝達レバー軸部63aが取り付けられた伝達レバー基部631より前方に向けて延在する伝達レバー入力部632と、伝達レバー基部631より後方に向けて延在する伝達レバー出力部633とを有している。ここで伝達レバー入力部632は、ロック伝達ギア62が右方から見て時計回り(左方から見て反時計回り)に回転する場合にロック伝達突部621に干渉する位置に配置されている。
ロック伝達部64は、上下方向が長手方向となる長尺状部材であって、上限位置と下限位置との間で上下方向に沿って移動可能に設けられている。このロック伝達部64は、ロック伝達スプリング64Sにより下方に向けて付勢されて下限位置に配置されている。
このようなロック伝達部64にはその右方側において、ロック伝達レバー63が右方から見て反時計回りに回動する場合に、伝達レバー出力部633に当接されるロック当接面641が形成されている。
かかるロック伝達部64は、ロック伝達スプリング64Sの付勢力に抗して上限位置まで移動した場合には、その上端部がロック作用レバー66に当接するものである。
ロック作用レバー66は、出金庫40に設けられている。このロック作用レバー66は、右方側の出金ロック部50の後方において、左右方向に沿って延在するロック作用レバー軸部66aの中心軸回りに回動可能に設けられている。かかるロック作用レバー66は、ロック作用レバー軸部66aの径外方向となる後方に向けて延在する作用レバー入力部661と、ロック作用レバー軸部66aの径外方向となる前方側斜め上方に向けて延在する作用レバー出力部662とを有している。この作用レバー出力部662の端部は、上記第1入力突部521aが形成された板状部521の左面より左方に突出する第2入力突部521bの上方に位置している。
尚、図17の符号67は、センサである。このセンサ67は、ロック伝達部64が上限位置に移動したことを検知するものであり、その検知結果を検知信号として制御部に与えるものである。
このようなロック機構部60の動作について説明する。かかるロック機構部60では、常態においては、ロック伝達部64が下限位置に配置されることで、図17及び図18に示すように出金ロック部50をロック状態にさせる。
そして、制御部から解除指令が与えられた場合には、ロック機構部60は、次のようにして出金ロック部50を非ロック状態にさせる。
ロック駆動ギア61が、搬送振分モータ5の駆動により右方から見て時計回りに回転することでロック伝達ギア62が右方から見て時計回りに回転する。このようにロック伝達ギア62が回転することにより、ロック伝達突部621が伝達レバー入力部632に当接して押圧し、これによりロック伝達レバー63が右方から見て反時計回りに回動する。
ロック伝達レバー63が回動することにより、伝達レバー出力部633がロック伝達部64のロック当接面641に当接し、ロック伝達部64がロック伝達スプリング64Sの付勢力に抗して上方に向けて移動する。
図19及び図20に示すように、ロック伝達部64が上限位置まで移動すると、センサ67がその旨を検知して制御部に検知信号を与えることで、制御部が搬送振分モータ5の駆動を一時的に停止させる。これによりロック伝達部64は上限位置に配置される。
ところで、ロック伝達部64が下限位置から上限位置に移動することで該ロック伝達部64の上端部に作用レバー入力部661が当接されたロック作用レバー66は、ロック作用レバー軸部66aの中心軸回りに回動して作用レバー出力部662が下方に向けて変位する。これにより作用レバー出力部662が第2入力突部521bを下方に押圧することで操作入力部52が入力スプリング522の付勢力に抗して解除姿勢となり、ロック作用片部51が前方に向けて揺動し、出金ロック部50を非ロック状態にさせる。そして、ロック伝達部64が上限位置に配置されることで出金ロック部50も非ロック状態に維持される。
その後、所定時間の経過後に制御部からの指令により搬送振分モータ5が駆動すると、ロック駆動ギア61及びロック伝達ギア62が右方から見て時計回りに回転して、ロック伝達ギア62のロック伝達突部621が伝達レバー入力部632から離脱すると、ロック伝達レバー63は、ロック伝達レバースプリング63Sの付勢力により基準姿勢に戻る。この結果、ロック伝達部64は、ロック伝達スプリング64Sに付勢されて下限位置に移動する。このようにロック伝達部64が下限位置に移動すると、ロック作用レバー66は、操作入力部52が入力スプリング522により基準姿勢となることで、元の状態に戻る。
このようにロック機構部60は、出金庫40が装置本体1に装着される場合において、常態においては出金ロック部50をロック状態にさせる一方、解除指令が与えられたときには出金ロック部50を非ロック状態にさせている。
以上のような構成を有する紙幣処理装置の動作について説明する。まず入金動作について説明する。
入金口2を通じて入金部10に紙幣が投入され、かつ利用者により図示せぬ入力手段が入力操作されて入金指令が与えられた場合、紙幣処理装置は、搬送プーリ等を駆動させることにより、入金部10に投入された紙幣を搬送路20に繰り出させて搬送させる。搬送路20を通じて紙幣を搬送させた紙幣処理装置は、その搬送途中で鑑別部21を通じて搬送される紙幣の真贋及び金種を鑑別させる。
この鑑別部21により「真」と鑑別されるとともに金種が鑑別された場合、紙幣処理装置は、鑑別された紙幣を金種毎に割り付けられた所定の収納部30に搬送路20を通じて搬送する。このようにして紙幣が搬送された収納部30では、上述したような収納動作が行われて紙幣が収納される。
次に出金動作について説明する。利用者により入力手段が入力操作されて出金指令が与えられた場合、紙幣処理装置は、搬送プーリ等を駆動させることにより、所定の収納部30に収納された紙幣を搬送路20に繰り出させて搬送させる。搬送路20を通じて紙幣を搬送させた紙幣処理装置は、その搬送途中で判別部22を通じて搬送される紙幣の金種及び枚数を判別させる。
この判別部22で金種等が判別された後、紙幣処理装置は、判別された紙幣を出金庫40に搬送路20を通じて搬送させて収容させる。このようにして出金庫40に所定枚数の紙幣を収容されて出金準備が完了すると、紙幣処理装置は、制御部を通じて上述したようにロック機構部60に解除指令を与えて出金ロック部50を非ロック状態にさせて、出金扉43が開く方向に揺動することを許容して、出金庫40に収納された紙幣を出金口41より外部に排出させる。
更に回収動作について説明する。管理者等により管理者用の入力手段が入力操作されて回収指令が与えられた場合、紙幣処理装置は、搬送プーリ等を駆動させることにより、すべての収納部30に収納された紙幣を搬送路20に繰り出させて該搬送路20を通じて前方に向けて搬送させて出金庫40に収容させる。この出金庫40では、ロック機構部60により出金ロック部50がロック状態にされているから出金扉43が常時出金口41を閉塞した状態となっている。
このようにしてすべての収納部30の紙幣を出金庫40に収容させた後、紙幣処理装置は、取出用鍵を取出用鍵孔に挿入して操作されることにより、出金庫40が装置本体1から取り外されることを許容する。このようにして取り外された出金庫40は、管理者が管理する金庫に保管されることになる。
このように装置本体1から取り外された出金庫40から紙幣を取り出すには、入力鍵孔523に出金用鍵を挿入して解除操作を行うことで出金ロック部50を非ロック状態にさせることにより、出金扉43を開く方向に揺動させて出金口41より紙幣を取り出すことができる。
以上のような構成を有する紙幣処理装置によれば、出金庫40が装置本体1に着脱可能に設けられるとともに、回収指令が与えられた場合に各収納部30に収納された紙幣を回収するので、出金庫40が従来の回収庫の機能も有している。これにより、回収庫の設置スペースを削減することができ、装置全体の小型化を図ることができる。しかも、出金庫40が装置本体1に対して着脱可能に設けられているので、各収納部30に収納された紙幣を出金庫40に収容させた後に、該出金庫40を装置本体1から離脱させることで所定の金庫等に保管することができ、出金庫40から紙幣を取り出す必要がなく、セキュリティの向上を図ることができる。
上記紙幣処理装置によれば、常態においては出金口41を開閉する出金扉43が開く方向に移動することを規制するロック状態となる一方、解除操作された場合に出金扉43が開く方向に移動することを許容する非ロック状態となる出金ロック部50を出金庫40が備えているので、装置本体1から出金庫40を離脱させたときでも出金口41が安易に開成されることを防止して、セキュリティの向上を図ることができるとともに、出金ロック部50を操作することにより出金口41を開成させることができ、収容された紙幣を取り出すことができる。また、出金庫40が装置本体1に装着される場合において、ロック機構部60が、常態においては出金ロック部50をロック状態にさせる一方、解除指令が与えられたときには出金ロック部50を非ロック状態にさせるので、出金庫40が装置本体1に装着されるときでも出金口41が安易に開成されることを防止して、セキュリティの向上を図ることができるとともに、解除指令により自動的に出金ロック部50を非ロック状態にして出金口41を開成させることができ、収容された紙幣を容易に取り出すことができる。
上記紙幣処理装置によれば、出金庫40のガイド部42が、該出金庫40が装置本体1に装着される場合には入金口2に連通する一方、該出金庫40が装置本体1から離脱する場合には一部が把持部として機能するので、把持部が把持されることにより装置本体1から離脱させた出金庫40を容易に保持することができ、出金庫40の運搬性及び操作性を良好なものとすることができる。
上記紙幣処理装置によれば、出金庫40のスライド部材44が、出金扉43が下方に揺動して出金口41を閉成する場合には、前方に向けてスライドして前端部が出金扉43の端部に接する一方、出金扉43が上方に揺動して出金口41を開成する場合には、後方に向けてスライドして収容された紙幣のうち最下位の紙幣の下部を露出させるので、従来のように紙幣を外部に押し出すことなく、紙幣を手指で上下に挟み込むようにして取り出すことができる。これにより、紙幣が出金扉43等に引っ掛かる虞れがなく、出金口41より紙幣を良好に排出することができる。
上記紙幣処理装置の収納部30によれば、プッシャ部材33のピニオン351が収納底部30Bのラック352に噛合した状態でプッシャ部材33を進退移動させるので、プッシャ部材33の作用面33aが収納壁部31の収納面31aに常時平行となる態様で該プッシャ部材33の姿勢を規制することができ、これにより、集積域S1にて紙幣詰まり等の集積不良の発生を抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
上述した実施の形態では、プッシャ部材33のピニオン351と、収納底部30Bのラック352とが噛合することにより、プッシャ部材33の作用面33aが収納壁部31の収納面31aに常時平行となる態様で該プッシャ部材33の姿勢を規制していたが、本発明においては、プッシャ部材の作用面が収納壁部の収納面に常時平行となる態様で該プッシャ部材の姿勢を規制することができれば、種々の構成を採用してもよい。
上述した実施の形態では、スライド部材44は、出金扉43が下方に揺動するのに連係して前方に向けてスライドする一方、出金扉43が上方に揺動するのに連係して後方に向けてスライドしていたが、本発明においては、スライド部材は、出金扉の移動に連係せずに、出金口が開成される場合に後方にスライドし、出金口が閉成される場合に前方にスライドしてもよい。