JP6444885B2 - 運動装置の状態監視システム - Google Patents
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Description
本明細書において、運動装置とは、装置の構成部材間において相対的な可動部を備える装置を称し、その代表的なものとして、往復運動式圧縮機等の往復運動機構を含む運動装置が挙げられる。
この種の往復運動装置では、運転中に予想外の破損が生じ、運転停止に至るなど多大な損害が生じている事例がある。
往復運動式圧縮機で突発的なトラブルが発生した場合、生産活動の停止により数千万円〜数億円/日の生産損失が発生し、その件数は国内外で100件程度/年間である。その損傷原因の多くは、往復運動式圧縮機のクロスヘッドやピストンロッドの連結部の緩みやピストンリング、ライダリング、ピストンロッドパッキンといった摺動部の摩耗、基礎部分の剛性低下などが推定される。それらを検知するアプリケーションとして往復運動式圧縮機用の連続監視システムを、GE(Bently)を始め、ドイツのPrognost SYSTEMS、HOERBIGERが提供している。
基本的には3社の機能は同等であり、機械保護と状態監視に特化した設計となっており、シリンダの内圧と振動とクランクアングルを組み合わせることにより、様々な診断が可能となっている(例えば特許文献1参照)。
また、同種類の装置であったとしても、設置環境やメンテナンスの方法などによって、各装置はそれぞれ固有の現象を所持しているため、個別的に評価する技術が必要である。
さらに、往復運動式圧縮機においては、運転中ケーシングに覆われている上に、高速運転を行っているため、往復圧縮機内部に発生している繰返し荷重や、各可動部の加速度変動等の実機を用いた測定および把握は困難である。その為、システムの動特性や各種パラメータ変化に対応した数学モデルを導入した診断技術が必要と考えられる。
この提案により、往復運動式圧縮機に特化した新たな監視技術および判定基準を作成することによって予知メンテナンスが可能となる。
一般的なピストン−クランク軸系のモデル化に於いては、各連結部を剛結合、または集中質量系としていることが挙げられる。この場合、クロスヘッドや支持部の摺動箇所の事象を把握することができない。そこで、本モデルは、往復運動式圧縮機の可動部であるクランクシャフト−コネクティングロッド−クロスヘッド−シリンダーロッド−シリンダ系を弾性ばねまたはばね定数と粘性減衰係数で連結された等価モデルとしてモデル化を行うことにより、事象ごとの発生メカニズムを解明することができると考える。
具体的には、外部ケーシングまたは監視対象部から測定した周波数応答データを使用して、往復運動式圧縮機の可動部であるクランクシャフト−コネクティングロッド−クロスヘッド−シリンダーロッド−シリンダー系を弾性ばねまたは弾性ばねとダッシュポットの粘弾性部材で連結された等価モデルを用いて、最小自乗法や滑降シンプレックス法(ダウンヒルシンプレックス法)などを用いた逆問題(パラメータ同定)を解くことで、各連結部のばね定数またはばね定数と粘性減衰係数のパラメータを算出(パラメータ同定)し、そのパラメータの変化から外部測定により内部の状態を推定することが可能である。
また、状態が変化した場合、クランク角度に応じた固有値解析の結果で得られた固有値、そして、周波数解析によって得られた周波数特性が変化する。これらを複合的に評価することで内部の状態を推定することができる。なお、本明細書において、「粘弾性部材」とは、弾性部材のみの場合と、弾性部材とともに粘性部材を含む場合の両者を指称する。
本対象装置の往復運動装置は、電動機、クランクシャフト、コネクティングロッド、クロスヘッド、ピストンロッド、ピストン、ケーシング(シリンダ)から構成されている。
本モデルの対象は、往復運動式圧縮機の可動部であるクランクシャフト、コネクティングロッド、クロスヘッド、ピストンロッド、ピストン、シリンダ系である。
また、往復運動装置では、連結部および摺動部の故障の頻度が高く、また、それらの故障は社会的影響および人身的影響をもたらす。その為、連結部および摺動部の剛性変化が観察(把握)できるモデリングをする必要があるので、各連結部および摺動部を弾性ばねまたは弾性ばねとダッシュポットの粘弾性部材で連結した等価モデルによりモデル化を行い、動的挙動を把握する。
往復運動装置の駆動部分を面内並進運動する剛体として扱い、構造上で回転運動が発生する可能性があるコネクティングロッドとピストンロッドおよびピストンに関しては運動方程式で回転運動を考慮する。また、各連結部には運動方向である水平方向と垂直方向に対してそれぞれ独立の弾性ばねを配置する。そして、クロスヘッド摺動部、ピストンロッド中間グランド部、ピストンのライダーリングにおいては、各部品が支持されている箇所であるので、上下方向の運動を拘束するばねを設置する。以上の仮定に基づき、多体動力学モデルの運動方程式を導出する。
往復運動装置のモデルは内部の連結部や摺動部の状態量を把握できる。しかし、ケーシングで覆われている往復運動装置の内部に発生している繰り返し荷重や各可動部の加速度変動を推定する為に、入力信号と出力信号の関係を数学的に求めることができる伝達関数を用いて、外部ケーシングから計測した情報から内部の各可動部の状態量(加速度、速度、変位、力など)を算出する。外部ケーシングから内部状態量を推定する為に、逆行列や動質量法などに基づく入力同定手法を用いて内部振動を同定する。
具体的には、内部の連結状態の変化によって、固有振動数が変化することが分かっている。固有振動数が変化しているということは、連結部のばね定数、粘性減衰係数が変化しているということであるので(重量の変化はない)、そのばね定数、粘性減衰係数の変化量から状態量を把握し、傾向管理を行うことができる。
このように、蓄積された故障データおよびモデルの運動方程式を用いた動的応答解析(数値シミュレーション)でのパラメータ変化による故障時の状態変化を把握することで、各可動部の故障を推定し、異常の有無を判定することができる。また、入力同定によって得られた内部振動での正確な状態量となり、材料物性値から寿命予測を行うことも可能である。
(1)運動装置におけるケーシング内部の監視しようとする一または複数の構成部材および/または構成部材間の連結部および/もしくは摺動部の特性に起因する振動を粘弾性部材の特性に起因する振動に置換し、かつこれらの粘弾性部材の振動が合成されたものと等価な振動の仮想的振動データを出力しうるようにした運動装置の等価モデルからなるシミュレータと、前記シミュレータにおける等価モデルから出力される前記仮想的振動データの波形を、運動装置の正常運転時におけるケーシングの振動測定データの波形に実質的に一致させるようにシミュレータを作動して得られた、前記粘弾性部材のばね定数またはばね定数と粘性減衰係数としてのパラメータを、運動装置の正常運転時のパラメータとして記憶するパラメータ記憶部と、運動装置の実運転時において前記ケーシングの振動を、ケーシングにおける予め選択した任意の一もしくは複数の箇所で測定するケーシング振動測定部と、前記粘弾性部材のパラメータを変化させて前記シミュレータを作動させることにより、等価モデルより出力される仮想的振動データの波形を、前記の予め選択した任意の一もしくは複数の箇所のケーシング振動測定部で得られた実運転時の振動波形とそれぞれ実質的に一致させて、前記粘弾性部材のパラメータを同定するパラメータ同定部と、このパラメータ同定部で同定された実運転時のパラメータが、前記パラメータ記憶部により記憶されている運動装置の正常運転時におけるパラメータと対比して、どのように変化しているかを検証するパラメータ変化検証部と、を備えることを特徴とする運動装置の状態監視システムとする。
また、ケーシングの振動を外部から測定するだけで、内部の状態を推定することができる。
さらに、実測データや高価で大がかりな装置に頼ることなく、物理的および数学的な解析のみにより、故障原因を割り出すことができ、従来の運動装置の状態監視装置より安価に状態監視ができる。
このような構成によると、弾性ばねのばね定数をパラメータとして、等価モデルを簡素化することができる。
このような構成によると、弾性ばねの振動をダッシュポットにより緩和吸収する等価モデルを形成することができ、より精度の高いモニタリングを実現することができる。
図1に示すように、状態監視しようとする運動装置1は、この例では、化学プラントにおいて、水素を圧縮するのに使用する往復移動式圧縮機としてある。
クロスヘッド13の外周には、クロスヘッドシュー16が設けられ、クランクケース5との摺動抵抗を軽減するようにしてある。
また、シリンダ7には、多数の冷却材通路21が設けられ、その中を通る冷却材により、シリンダ7は冷却されるようになっている。
吸込弁27には、吸込弁開放式アンローダ30が接続されている。
図2に示すように、状態監視システム31は、ケーシング振動測定部35とパソコン38とからなり、ケーシング振動測定部35は、振動センサ32と振動測定ユニット34とからなっている。
この故障データメモリ45は、等価モデルより出力される仮想的振動データの波形を、ケーシング振動測定部35で得られた実運転時の振動波形と実質的に一致させて、弾性ばねのパラメータを同定したときに、複数組のパラメータ同定結果が得られた場合に、過去の異常時の振動パターンと対比して、どの異常時の振動パターンに該当するかを決定するときにも有用である。
図3において、図1における符号と同一の符号は、図1におけるのと同一の部材の仮想の剛体を示す。
各弾性ばねSのパラメータの正常時(初期状態)の値と、異常時の値との一例を図4に示す。
まず、対象装置の選定(S1)として、運動装置1を選定し、その可動部であるクランクシャフト9、コネクティングロッド11、クロスヘッド14、ピストンロッド17、ピストン24を仮想の剛体とし、それらの相互間、およびそれらとケーシング8との間を弾性ばねSをもって接続したものとする。
そして、クロスヘッド14摺動部、ピストンロッド17中間グランド部、ピストン24のライダーリングにおいては、各部品が支持されている箇所であるので、上下方向の運動を拘束するばねを設置し、観察箇所、故障箇所を、上記の連結部および摺動部とする(S2)。
以上の仮定に基づき、多体動力学モデルの運動方程式を導出する(S3)。
ここで、等価モデル(運動方程式)と運動装置の固有振動特性が一致しない場合は、モデルの再検討を行い、固有振動特性が一致する等価モデルとする。
これによって、モデリングの完成である(S7)。
運動装置1の等価モデルは内部の連結部や摺動部の状態量を把握できる。しかし、ケーシング8で覆われている運動装置1の内部に発生している繰り返し荷重や各可動部の加速度変動を推定する為に、入力信号と出力信号の関係を数学的に求めることができる伝達関数を用いて、ケーシング8から計測した情報から内部の各可動部の状態量(加速度、速度、変位、力など)を算出する。ケーシング8から内部状態量を推定する為に、周波数応答関数測定を行い、算出結果の周波数ごとの係数を導出する(S8)。
その具体的なパラメータの同定方法を、式をもって示すと次の通りである。
異常判定部44において、故障データメモリ45に蓄積された故障データおよび等価モデルの運動方程式を用いた動的応答解析(数値シミュレーション)でのパラメータ変化による故障時の状態変化を把握することで、各可動部の故障を推定し、異常の有無を判定し、異常と判定したときは、例えばブザーや警告灯等の警報装置46を作動させる(S11)。
また、伝達関数から得られた係数を計測データに与えることで、正確な状態量となり、材料物性値から寿命を予測したり、補修計画を立案したりすることができる(S13)。
図7に示すように、パラメータ同定部41およびパラメータ変化検証部42と並列的に、周波数解析部47および周波数特性変化検証部48と、固有値解析部49および固有値変化検証部50とを設け、パラメータ変化検証部42と周波数特性変化検証部48と固有値変化検証部50との検証データを、結果記憶部51に記憶させた後、図2におけるパラメータ変化傾向判定部43を含む変化傾向判定部52において、それらの変化傾向を判定するようにしてもよい。
これは、往復運動装置1の運転中の振動値が上昇したことを受けて、想定される損傷時のシミュレーションを実施し、コネクティングロッド11およびクロスヘッド14の連結部回りの弾性ばね定数の低下に異常があると判定した事例である。
図9は、実機測定時の補修前後のおよび損傷時の周波数解析結果を示す。また、図10は補修前、および損傷時を想定したシミュレーション結果を示している。補修前の周波数データに対して、損傷時の周波数データが変化することから、モデルパラメータに変化が生じていることが予想され、パラメータ同定を行うことにより、損傷箇所やばね定数の低下の度合いを推定することができる。
図8に示す補修前データから異常発生時データへの変化を説明するモデルパラメータ変化として、コネクティングロッドとクロスヘッド連結部のばね定数、および、クロスヘッド摺動部のばね定数が10分の1程度低下していることから、コネクティングロッド11およびクロスヘッド14の連結部の損傷であることが推認された。これらのデータは随時、故障データメモリ45に保存される。
<モデルの定式化>
図3に於いて、クランクシャフト9周りの中心0は、座標(0、0)に固定する。クランクシャフト9の位置(x0、y0)は、式(4.1)、(4.2)のように表すことができる。
往復動式圧縮機の回転入力周波数fを8 [Hz]として、各パーツの重心位置の加速度応答を求める。角振動数ωはf(周波数)とT(振周期)とω(角振動数)の関係から次式で与えられる。
運転時の内部振動である振動源から外部振動である応答(計測点)までの寄与を解析する技術として、伝達経路解析(Transfer Path Analysis, 以下TPA)がある。そのTPAに於ける伝達関数は運転時に計測することは不可能に近く、このように直接計測ができない場合に運転時の振動源を逆問題として入力同定する必要がある。入力同定手法として、広く用いられているのが逆行列法と動バネ法である。例えば、逆行列法を用いる場合について説明すれば、以下のようになる。即ち、逆行列法を用いたTPAを行うことで、加振試験から推定されるアクセレランスと運転時に計測して得られる加速度値(応答値)に基づいて入力同定を行う。逆行列法による入力同定を行う時は、H1推定章による周波数応答関数(Frequency Response Function, 以下FRF)を用いる。
伝達関数逆行列法は、複雑なモデル(機構)の場合、同定精度を向上する為に応答点を増やし疑似逆行列を用いた計算を行う必要がある。まず、入力同定を行う前段階として、アクセレランス(Accelerance)を求める必要がある。提案する診断システムは、外部振動(応答)から内部振動(入力)を同定し、その推定された入力値を用いて数学モデルによるパラメータ解析を行う。計測の利便性を考えると、計測点はシリンダーに対して1点が理想である為、外部振動である応答点を基準に各部位の入出力2点間のFRFを推定する必要がある。また、加振点はF1〜F5の5点とした場合の複数個の入力信号と出力信号の組合せによってFRFを推定した。以下に、FRF推定の導出及び入力同定の導出について述べる。
小型実験装置を用いてFRFの推定を行う。外部振動の計測点を基準として、構築した数学モデルに対応する部品毎に外部(ケーシング)と内部(部品毎)の入出力2点間とし、加振点については、クランク垂直方向(F1)、クランク軸方向(F2)、ピストンロッド垂直方向(F3)、ピストンロッド水平方向(F4)、ピストン軸方向(F5)のF1〜F5の5点とした場合のFRFを推定する。
上記F1〜F5の5点の加振点を、図1に示してある。
以下に、上記の条件によるFRF行列[H]の導出過程を示す。なお、ここでは、ピストンロッド(内部入力)−ケーシング(外部出力)に加速度センサーを設置した条件での結果を示す。
(1) 振動センサ32を、クランクケース5の下部以外の、例えばディスタンスピース6またはシリンダ7等のケーシング8の一部だけでなく、クランクシャフト9、コネクティングロッド11、ピストンロッド17等の構成部材自体に取付ける。
(2) 図3におけるクロスヘッド14およびピストンロッド17を省略し、コネクティングロッド11を直接ピストン24に接続した等価モデルを作成する。
このような等価モデルは、例えば自動車のエンジン等の状態監視に使用することができる。
(3) ケーシングまたは監視対象部から得られる信号を、振動波形だけでなく、超音波、音響、歪み、等を示す各種の電気信号とする。
例えば、自動車のエンジン等のように、大量生産するものであって、品質がほぼ一定しているものに関しては、1個の製品に関する等価モデルを、他の製品に関してもそのまま、または個体差に基づく若干の修整を加えた上で使用することができる。
また、システムを使用開始から設置して、データを連続的に取得することによって、ある期間までの、または期間を限定したデータを基準データ(初期値)として記憶させることにより、異常検出が可能となる。すなわち、基準データとの比較により、監視対象部のどこに異常があるかを検出することができる。
2 クランク部
3 中間接続部
4 ピストン−シリンダ部
5 クランクケース
6 ディスタンスピース
7 シリンダ
8 ケーシング
9 クランクシャフト
9aクランクピン
10 クランクピンメタル
11 コネクティングロッド
12 クロスヘッドピン
13 クロスヘッドピンメタル
14 クロスヘッド
15 ボルト
16 クロスヘッドシュー
17 ピストンロッド
18 オイルワイパーリング
19 中間グランドパッキン
19a押えねじ
20 グランドパッキン
21 冷却材通路
22 ピストンリング
23 ライダーリング
24 ピストン
25 シリンダライナ
26 ガス入口
27 吸込弁
28 吐出弁
29 ガス出口
30 吸込弁開放式アンローダ
31 状態監視システム
32 振動センサ
33 出力用インターフェース
34 振動測定ユニット
35 ケーシング振動測定部
36 ケーブル
37 入力用インターフェース
38 パソコン
39 シミュレータ
40 パラメータ記憶部
41 パラメータ同定部
42 パラメータ変化検証部
43 パラメータ変化傾向判定部
44 異常判定部
45 故障データメモリ
46 警報装置
47 周波数解析部
48 周波数特性変化検証部
49 固有値解析部
50 固有値変化検証部
51 結果記憶部
52 変化傾向判定部
D ダッシュポット(粘弾性部材)
S 弾性ばね(粘弾性部材)
Claims (7)
- 運動装置におけるケーシング内部の監視しようとする一または複数の構成部材および/または構成部材間の連結部および/もしくは摺動部の特性に起因する振動を粘弾性部材の特性に起因する振動に置換し、かつこれらの粘弾性部材の振動が合成されたものと等価な振動の仮想的振動データを出力しうるようにした運動装置の等価モデルからなるシミュレータと、
前記シミュレータにおける等価モデルから出力される前記仮想的振動データの波形を、運動装置の正常運転時におけるケーシングの振動測定データの波形に実質的に一致させるようにシミュレータを作動して得られた、前記粘弾性部材のばね定数またはばね定数と粘性減衰係数としてのパラメータを、運動装置の正常運転時のパラメータとして記憶するパラメータ記憶部と、
運動装置の実運転時において前記ケーシングの振動を、ケーシングにおける予め選択した任意の一もしくは複数の箇所で測定するケーシング振動測定部と、
前記粘弾性部材のパラメータを変化させて前記シミュレータを作動させることにより、等価モデルより出力される仮想的振動データの波形を、前記の予め選択した任意の一もしくは複数の箇所のケーシング振動測定部で得られた実運転時の振動波形とそれぞれ実質的に一致させて、前記粘弾性部材のパラメータを同定するパラメータ同定部と、
このパラメータ同定部で同定された実運転時のパラメータが、前記パラメータ記憶部により記憶されている運動装置の正常運転時におけるパラメータと対比して、どのように変化しているかを検証するパラメータ変化検証部と、
を備えることを特徴とする運動装置の状態監視システム。 - 運動装置における監視対象部としての一または複数の構成部材および/または構成部材間の連結部および/もしくは摺動部の特性に起因する振動を粘弾性部材の特性に起因する振動に置換し、前記監視対象部のうち、実運転時において振動を測定する予め選択した任意の一もしくは複数の監視対象部の各振動に対応して置換した粘弾性部材の各振動と等価な仮想的振動データ、または予め選択した任意の複数の監視対象部の各振動に対応して置換した粘弾性部材の各振動が合成されたものと等価な振動の仮想的振動データを出力しうるようにした運動装置の等価モデルからなるシミュレータと、
前記シミュレータにおける等価モデルから出力される前記仮想的振動データの波形を、運動装置の正常運転時における前記監視対象部のうち、実運転時において振動を測定する予め選択した任意の一もしくは複数の監視対象部の各振動測定データの波形、または予め選択した任意の複数の監視対象部の各振動測定データが合成された波形に実質的に一致させるようにシミュレータを作動して得られた、前記粘弾性部材のばね定数またはばね定数と粘性減衰係数としてのパラメータを、運動装置の正常運転時のパラメータとして記憶するパラメータ記憶部と、
運動装置の実運転時において前記監視対象部の振動を測定する監視対象部振動測定部と、
前記粘弾性部材のパラメータを変化させて前記シミュレータを作動させることにより、等価モデルより出力される仮想的振動データの波形を、前記監視対象部振動測定部で得られた実運転時の振動波形、またはこれらの振動が合成された波形と実質的に一致させて、前記粘弾性部材のパラメータを同定するパラメータ同定部と、
このパラメータ同定部で同定された実運転時のパラメータが、前記パラメータ記憶部により記憶されている運動装置の正常運転時におけるパラメータと対比して、どのように変化しているかを検証するパラメータ変化検証部と、
を備えることを特徴とする運動装置の状態監視システム。 - 粘弾性部材を、弾性ばねとした請求項1または2に記載の運動装置の状態監視システム。
- 粘弾性部材を、弾性ばねとダッシュポットとからなるものとした請求項1または2に記載の運動装置の状態監視システム。
- さらに、パラメータ変化検証部において検証された実運転時のパラメータの変化状況から、運動装置における監視しようとする一または複数の構成部材および/または構成部材間の連結部および/もしくは摺動部の変化傾向を判定する変化傾向判定部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の運動装置の状態監視システム。
- さらに、パラメータ変化検証部において検証された実運転時のパラメータの変化量を、正常運転時のパラメータに基づいて予め設定した閾値と比較して、運動装置における監視しようとする一または複数の構成部材および/または構成部材間の連結部および/もしくは摺動部の異常状態を判定する異常判定部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の運動装置の状態監視システム。
- 運動装置が、電動機、クランクシャフト、コネクティンクロッド、およびピストンを備えており、等価モデルが、クランクシャフト、コネクティンクロッド、およびピストンの仮想の剛体を備えるものとした請求項1または2に記載の運動装置の状態監視システム。
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