(第1実施形態)
以下、本発明のステアリング装置を具体化した第1実施形態を図1〜図9を参照して説明する。
図1に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト2と、ステアリングシャフト2の一部を構成するコラムシャフト3を回転可能に収容するステアリングコラム4とを備えている。コラムシャフト3における車両の後方側(図1における右側)端部には、ステアリングホイール5が連結される。一方、コラムシャフト3における車両の前方側(図1における左側)端部には、図示しない自在継手を介してステアリングシャフト2の一部を構成するインターミディエイトシャフト(図示略)が連結される。そして、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト2の回転がラック&ピニオン機構等の転舵機構に伝達されることにより転舵輪の舵角が変更される。なお、コラムシャフト3は、前方側端部が車両の上下方向下側に位置するように傾斜した状態で車両に搭載される。
ステアリング装置1は、モータを駆動源としてコラムシャフト3を回転駆動する所謂コラムアシスト型の電動パワーステアリング装置(EPS)として構成されている。具体的には、図1に示すようにステアリングコラム4は、コラムチューブ11と、コラムチューブ11の前方側端部に固定される操舵力補助装置12と備えている。前記操舵力補助装置12は、ハウジング13と、モータ14と、モータ14の作動により回転駆動するウォーム軸(図示略)と、ウォーム軸と噛合するウォームホイール15とを備えている。前記ウォームホイール15には、コラムシャフト3の一部を構成する駆動軸21が一体回転可能に連結されている。前記駆動軸21は、前記ハウジング13内に設けられた軸受16a,16b,16cを介して回転可能に支持されている。
これにより、モータ14の回転が図示しないウォーム軸及びウォームホイール15により減速されて駆動軸21に伝達されて操舵系に対してアシスト力が付与される。また、ハウジング13には、後述する下側支持機構32によって支持される支持部17が形成されている。支持部17には、車両幅方向に貫通した軸孔18が形成されている。
また、ステアリング装置1は、ステアリングホイール5のチルト位置を調整するチルト調整機能、及び前後位置を調整するテレスコ調整機能を備えている。前記コラムシャフト3は、前記駆動軸21に対して一体に連結されたロアシャフト23と、ロアシャフト23に対して軸方向に移動可能にスプライン嵌合された中空状のアッパシャフト22とを備えている。前記アッパシャフト22には、前記ステアリングホイール5が連結されている。
前記コラムチューブ11は、前記ハウジング13に前端が固定されてロアシャフト23を収容するインナーチューブ26と、インナーチューブ26に対して軸方向に移動自在に外嵌されたアウターチューブ25とを備えている。前記アウターチューブ25は、前記アッパシャフト22を軸受24を介して支持している。図1に示すように、前記アウターチューブ25の側部には、軸方向に延びるとともに下側に開口する開口部27が形成されている。また、図1、図2に示すようにアウターチューブ25とインナーチューブ26の間には、円弧板状のシート部材28が介在されている。
図1に示すように、ステアリングコラム4の前端側は、操舵力補助装置12のハウジング13が車両本体31における車両前方側部分に設けられた下側支持機構32にて連結されることにより支持されている。具体的には、前記下側支持機構32は、前記ハウジング13の支持部17の軸孔18に挿通されたチルト中心軸34を備えており、前記チルト中心軸34周りにハウジング13、すなわちステアリングコラム4を傾動可能に支持している。
また、ステアリングコラム4は、車両本体31において、前記下側支持機構32よりも後ろ寄りに位置する部位に設けられた上側支持機構33に前記コラムチューブ11が連結されることにより支持されている。すなわち、図1及び図2に示す上側支持機構33は、所定範囲内でコラムチューブ11(アウターチューブ25)をチルト中心軸34周りに傾動可能に、かつ軸方向移動可能に支持している。
これにより、チルト中心軸34周りの回転方向であるチルト方向におけるステアリングホイール5の位置を変更することにより、そのチルト位置が調整される。また、インナーチューブ26及びロアシャフト23に対してアウターチューブ25及びアッパシャフト22を移動させて、ステアリングシャフト2の軸方向であるテレスコ方向におけるステアリングホイール5の位置を変更することにより、その前後位置が調整される。
次に、上側支持機構33の構成について説明する。
図2、図3に示すように上側支持機構33は、車両本体31に固定される車体側ブラケット41と、前記ステアリングコラム4(アウターチューブ25)が固定されたコラム側ブラケット42と、両ブラケット41、42を連結する支軸43とを備えている。前記車体側ブラケット41は、プレート45に形成された締結孔48に挿通された図示しない締結ボルトによって車両本体31に対して固定されている。
前記車体側ブラケット41は、図2、図7に示すようにステアリングシャフト2の軸方向視でコ字状に形成されるクランプ44と、クランプ44の上端に固定される平板状のプレート45とを備えている。前記クランプ44の一対の側板46a,46bには、チルト方向に延びるチルト長孔47がそれぞれ形成されている。各チルト長孔47は、後述するスライド側カム66のボス部92、及びカラー57の円筒部57aが、チルト中心軸34を揺動中心として描く円弧状の軌跡を含むように長孔に形成されている。
また、図7に示すように前記クランプ44の各側板46a,46bにおいて、前記チルト長孔47を挟む部位には一対の回り止め長孔49、50がそれぞれチルト方向に延びてチルト長孔47と平行に形成されている。前記回り止め長孔49、50は、後述するスライド側カム66の各回り止め突部96が、チルト中心軸34を揺動中心として描く円弧状の軌跡を含むように形成されている。
図2、図8に示すようにコラム側ブラケット42は、ステアリングシャフト2の軸方向視でコ字状に形成されている。図2に示すように各側板51a,51bの上端部は、それぞれ内側に折り曲げられて溶接等によりステアリングコラム4(アウターチューブ25)に固定されている。図8に示すように前記一対の側板51a,51bには、テレスコ方向に延びる挿通孔としてのテレスコ長孔53が形成されている。
図2に示すように支軸43は、軸状に形成されるとともに、その基端(図2中、左端)には、他の部分よりも大径の頭部54が形成されている。前記支軸43は、コラム側ブラケット42が車体側ブラケット41の内側に配置された状態で、チルト長孔47及びテレスコ長孔53に挿通され、その先端にナット55が螺着されることにより、車体側ブラケット41とコラム側ブラケット42とを連結している。これにより、コラム側ブラケット42は、チルト長孔47の形成された範囲内で車体側ブラケット41に対してチルト方向に相対移動可能となるとともに、テレスコ長孔53の形成された範囲内でテレスコ方向に相対移動可能となっている。
図2に示すように、支軸43の軸部56の先端側には、カラー57が回動自在及び軸心方向へ移動自在に挿通されている。前記カラー57は円筒部57aを備えており、同円筒部57aが側板46bのチルト長孔47に対してはチルト方向へ、コラム側ブラケット42のテレスコ長孔53内に対してはテレスコ方向へそれぞれ移動自在に挿入されている。また、図2、図9に示すように、カラー57には、円筒部57aの基端からフランジ部58が径方向外側に張り出し形成されており、フランジ部58とナット55との間にはスラスト軸受59が介在されている。図9に示すようにフランジ部58には、一対の回り止め突起58aが突出されて一対の前記回り止め長孔50に所定のクリアランスを有して係合(すなわち挿入)されている。前記所定のクリアランスは、前記一対の回り止め突起58aが一対の前記回り止め長孔50に対してそれぞれ係合が可能であるとともに、各回り止め突起58aにおけるカラー57の支軸43の軸心L周りでの回転を阻止する大きさとされている。なお、カラー57、フランジ部58及び回り止め突起58aは、例えば、焼結金属で製造されることが好ましいが、限定するものではない。
前記回り止め突起58aのフランジ部58からの突出量は、図2に示すようにフランジ部58がクランプ44の側板46bに当接した状態でコラム側ブラケット42の側板51bに到達しない長さに設定されている。
また、図2〜図4(a)に示すように、上側支持機構33には、ロック機構61が設けられている。ロック機構61は、支軸43の軸方向に沿った押圧力を発生して車体側ブラケット41とコラム側ブラケット42とを互いに摩擦係合させることにより、ステアリングホイール5の位置(チルト位置及びテレスコ位置(前後位置))を保持するものである。
具体的には、図2、図3、図4(a)に示すように前記ロック機構61は、運転者により操作される操作レバー62と、操作レバー62と支軸43とを連結する連結プレート63とを備えている。ロック機構61は、図1、図2に示すように支軸43の軸方向中央部に固定された押圧部材64と、支軸43にそれぞれ貫通されたレバー側カム65と、カムとしてのスライド側カム66とを有している。
図2に示すように前記操作レバー62の基端部62aには、支軸43の軸方向に貫通した四角孔状の嵌合孔71が形成されている。また、前記嵌合孔71には、支軸43の軸部56が回転可能に挿通されている。
図2、図3に示すように前記連結プレート63には、支軸43の頭部54が一体回転可能に嵌合する連結孔72、及び連結孔72の中心を曲率中心とする円弧溝73が形成されている。そして、連結プレート63は、前記連結孔72に支軸43の頭部54が嵌合した状態で、円弧溝73を介してボルト74が操作レバー62に螺着されることにより、支軸43と操作レバー62とを一体で回動するように連結している。
図3に示すように、ロック機構61は、操作レバー62がその回動範囲におけるロック位置にあるとき、ステアリングホイール5の位置を固定するロック状態となる。また、操作レバー62がその回動範囲におけるアンロック位置にあるとき、ステアリングホイール5の位置を調整可能なアンロック状態となる。
なお、本実施形態では、操作レバー62がアンロック位置にあるときは、把持部62bは、操作レバー62がロック位置にあるときの把持部62bの位置よりも下方に位置するとともに、支軸43から鉛直線(図3参照)よりも車両前後方向の後側に位置する。
すなわち、支軸43の鉛直下方からロック方向へ所定角度、戻った位置までが回動範囲になるように、操作レバー62が支軸43に連結されている。図3では、ロック位置にある操作レバー62を実線で示し、アンロック位置にある操作レバー62の一部を二点鎖線で示している。
図1、図2に示すように、押圧部材64は、円筒状に形成されており、軸部56の外周にセレーション嵌合することにより支軸43と一体で回動可能に連結されている。押圧部材64には、その軸方向中央部に車両上下方向の上側に突出した押圧部75が形成されている。押圧部75は、前記アウターチューブ25の開口部27に挿入されてインナーチューブ26の外周面に接触している。そして、押圧部75は、扇形状に形成されている。図2に示すように押圧部75のインナーチューブ26との当接面は、支軸43の軸心Lから偏心した位置に曲率中心を有する円弧状に形成されている。
図2、図4(a)及び図5(a)〜図5(d)に示すように、レバー側カム65は、円板状に形成されていて、スライド側カム66と対向する対向面65b及びスライド側カム66と反対側の反対面65aを有している。また、レバー側カム65の反対面65aの中央には四角筒状のボス部82が形成されている。
レバー側カム65及びボス部82には、丸孔状の貫通孔81が形成されていて前記支軸43の軸部56が回転可能に挿通されている。前記レバー側カム65は、前記ボス部82が前記操作レバー62の嵌合孔71に相対回動不能に嵌合されていることにより、前記支軸43の軸心周りに操作レバー62と一体で回動する。
レバー側カム65の対向面65bには、複数(本実施形態では、4つ)のカム部83が設けられている。カム部83は、レバー側カム65の周方向に沿って突出量が連続的に変化するように構成され、後述するスライド側カム66と協働して支軸43の軸方向の押圧力を発生させる。
図5(b)に示すようにカム部83は、アンロック方向に向かうほど対向面65bからの突出量が一定割合で増加するカム面83aと、前記カム面83aのアンロック方向側の端部に対して隣接するとともに突出量が略一定の平坦面83bとを有する。すなわち、前記カム面83aは斜面として形成されている。また、カム部83は、前記平坦面83bのアンロック方向側の端部に対して隣接した端面83cを有する。
また、レバー側カム65の対向面65bにおけるカム部83の径方向外側には、対向面65bからスライド側カム66と反対側に凹んだ段差面65cが形成されている。前記段差面65cには、レバー側カム65とスライド側カム66との相対的な回動範囲を規定する複数(本実施形態では、4つ)のストッパ部84が形成されている。
図5(a)、図5(b)に示すようにストッパ部84はロック方向に向かって段差面65cからの突出量が一定割合で増加するアンロック側係合面84aと、アンロック側係合面84aのロック方向側の端部に隣接するとともに突出量が略一定の平坦面84bを有する。すなわち、前記アンロック側係合面84aは斜面として形成されている。また、ストッパ部84は、前記平坦面84bのロック方向側の端部に隣接するとともにロック方向側の部位の突出量が急激に減少して、前記アンロック側係合面84aよりも急斜面であるロック側係合面84cを有する。
図2、図4(a)及び図6(a)〜図6(d)に示すように、スライド側カム66は、円板状に形成されていて、レバー側カム65と対向する対向面66b及びレバー側カム65とは反対側の反対面66aとを有している。また、スライド側カム66の反対面66aの中央には円筒形状のボス部92が形成されている。前記ボス部92は、図4(b)に示すようにチルト長孔47及びテレスコ長孔53の交差した状態の交差部分において、両長孔に対してそれぞれ挿入可能でかつ、摺接可能な大きさを有している。また、図6(a)〜図6(d)に示すようにスライド側カム66の反対面66aにおいて、前記ボス部92を挟む部位には、一対の回り止め突部96が、ボス部92の突出方向と同じ方向に突出されている。なお、各回り止め突部96のボス部92からの離間距離は、同じでもよく、或いは異なっていても良い。
本実施形態では、図4(b)に示すように、各回り止め突部96の軸心O1、O2、及び支軸43の軸心Lがテレスコ長孔53の延出方向(テレスコ方向)に延びる仮想平面Hに含まれるように、スライド側カム66が側板46aに取付けられている。以下ではスライド側カム66が側板46aに取付けられる姿勢を、以下では、取付姿勢という。
スライド側カム66及びボス部92には、丸孔状の貫通孔91が形成されていて支軸43の軸部56が回転可能に挿通されている。
前記レバー側カム65及びスライド側カム66は、例えば、焼結金属で製造されることが好ましいが、限定するものではない。
各回り止め突部96は、前記クランプ44の側板46aにおける各回り止め長孔49に対して、所定のクリアランスを有してそれぞれ係合(すなわち、挿入)されている。前記所定のクリアランスは、前記一対の回り止め突部96が一対の前記回り止め長孔49に対してそれぞれ係合(すなわち、挿入)が可能であるとともに、各回り止め突部96におけるボス部92の支軸43周りでの回転を阻止する大きさとされている。
なお、回り止め突部96は、反対面66aからの突出量が側板46aの板厚以下にされていることにより、コラム側ブラケット42には達しないようにされている。
各回り止め突部96は、ボス部92がチルト長孔47をチルト方向に移動する際、その移動を許容する大きさであって、かつ、ボス部92の軸心回り(支軸43周り)に回転力が付与された際には、回り止め長孔49の周面に係止してその回転を阻止する大きさにされている。回り止め突部96の断面形状は、限定はしないが、本実施形態では、円形とされている。この結果、支軸43周りへの回転力がスライド側カム66に付与されたときに回り止め突部96の外周面が回り止め長孔49の内周面に係止する。
これにより、スライド側カム66は、ボス部92がチルト長孔47及びテレスコ長孔53の交差部分に挿入されて状態においても、支軸43周りでの回動が規制されている。
スライド側カム66においてレバー側カム65との対向面66bには、複数(本実施形態では、4つ)のカム部93が設けられている。カム部93は、スライド側カム66の周方向に沿って突出量が連続的に変化するように構成され、前記レバー側カム65と協働して、支軸43の軸方向の押圧力を発生させる。具体的には、図6(b)に示すようにカム部93は、ロック方向に向かうほど対向面66bからの突出量が一定割合で増加するカム面93aと、前記カム面93aのロック方向側の端部に対して隣接するとともに突出量が略一定の平坦面93bとを有する。また、カム部93は、前記平坦面93bのロック方向側端部に隣接した端面93cを有する。
また、スライド側カム66の対向面66bにおけるカム部93の径方向外側には、対向面66bからスライド側カム66と反対側に凹んだ段差面66cが形成されている。前記段差面66cには、レバー側カム65とスライド側カム66との相対的な回動範囲を規定する複数(本実施形態では、4つ)のストッパ部94が形成されている。すなわち、レバー側カム65とスライド側カム66は、支軸43に装着された状態において、ストッパ部94とレバー側カム65のストッパ部84とが相対するように形成されている。
図6(a)、図6(b)に示すようにストッパ部94はアンロック方向に向かって段差面66cからの突出量が一定割合で増加するアンロック側係合面94aと、アンロック側係合面94aのアンロック方向側の端部に隣接するとともに突出量が略一定の平坦面94bとを有する。すなわち、前記アンロック側係合面94aは斜面として形成されている。また、ストッパ部94は、前記平坦面94bのアンロック方向側の端部に隣接するとともにアンロック側の部位の突出量が急激に減少して、前記アンロック側係合面94aよりも急斜面であるロック側係合面94cを有している。
前記アンロック側係合面94aは、前記操作レバー62がアンロック位置に位置する際に、前記レバー側カム65のアンロック側係合面94aと係合するように配置されている。また、ロック側係合面94cは、前記操作レバー62がロック位置に位置する際に、前記レバー側カム65のロック側係合面84cと係合するように配置されている。
(第1実施形態の作用)
次に、上記のように構成されたステアリング装置1の作用を説明する。
(操作レバー62のロック位置への回動)
図3に示すように、操作レバー62をアンロック位置からロック方向へ回動してロック位置まで回動操作すると、レバー側カム65及び支軸43も同方向に回動する。この回動によりレバー側カム65のカム部83(平坦面83b)がスライド側カム66のカム部93(平坦面93b)に乗り上げてスライド側カム66を支軸43の軸心方向に沿って移動させてクランプ44側へ押圧する。すなわち、レバー側カム65とスライド側カム66とが協働して、両ブラケット41、42の弾性力に抗して支軸43の軸方向の押圧力を発生させる。これにより、車体側ブラケット41及びコラム側ブラケット42の側板46a,51a及び側板46b,51b同士が摩擦係合する。
なお、レバー側カム65のカム部83との摩擦によりスライド側カム66はカム部93を介してロック方向側への、すなわち支軸43周りへの回転力が付与されるが、各回り止め突部96の外周面が回り止め長孔49の内周面にそれぞれ係止する。この結果、スライド側カム66は、ロック方向への支軸43周りに回転することはない。また、支軸43のロック方向への回動により図2に示すカラー57は、支軸43との摩擦により同方向に回動しようとするが、各回り止め突起58aの外周面が回り止め長孔50の内周面にそれぞれ係止する。このため、カラー57は支軸43の軸心回りの回転が阻止される。また、このとき、ストッパ部84,94のロック側係合面84c,94cが互いに係合することにより、操作レバー62がそれ以上ロック方向へ回動することが規制される。
また、図1、図4に示すように押圧部材64の押圧部75がインナーチューブ26を車両上下方向の上側に押圧することにより、インナーチューブ26の外周面及びアウターチューブ25の内周面がそれぞれシート部材28に摩擦係合する。
このようにロック機構61のロック状態においては、車体側ブラケット41とコラム側ブラケット42との間、及びインナーチューブ26とアウターチューブ25との間に作用する摩擦係合力により、ステアリングホイール5の位置が保持される。
(操作レバー62のアンロック位置への回動)
図3に示すロック位置から操作レバー62をアンロック方向へ回動操作する。すると、レバー側カム65のカム部83がスライド側カム66のカム部93から滑り降りて、前記軸方向の押圧力が消失する。また、両ブラケット41、42の側板は自身の弾性力により前記押圧力が印加される前の状態に復帰する。
このとき、レバー側カム65の平坦面83bに当接している平坦面93bを介してアンロック方向に支軸43周りの回転力がスライド側カム66に付与されるが、各回り止め突部96の外周面が回り止め長孔49の内周面にそれぞれ係止する。この結果、スライド側カム66は、アンロック方向への支軸43周りに回転することはない。また、支軸43のアンロック方向への回動により図2に示すカラー57は、支軸43との摩擦により同方向に回動しようとするが、各回り止め突起58aの外周面が回り止め長孔50の内周面にそれぞれ係止する。このため、カラー57は支軸43の軸心回りの回転が阻止される。
この結果、車体側ブラケット41及びコラム側ブラケット42の側板46a,51a及び側板46b,51b同士の摩擦係合が解除される。前記解除後、運転者が操作レバー62から手を離すと、操作レバー62がその自重によってアンロック方向へ回動し、先ずストッパ部84,94のアンロック側係合面84a,94aが互いに周方向に係合して前記操作レバー62はアンロック位置に位置する。また、図1、図2に示す押圧部材64の押圧部75がインナーチューブ26を車両上下方向の上側に押圧しなくなり、インナーチューブ26及びアウターチューブ25とシート部材28との摩擦係合が解除される。
このようにロック機構61のアンロック状態においては、車体側ブラケット41とコラム側ブラケット42との間の摩擦係合が解除されることにより、ステアリングホイール5のチルト位置(高さ位置)の調整が可能となる。
なお、ステアリングホイール5のチルト位置を調整する際、図1のチルト中心軸34の周りで、ステアリングコラム4の傾動に応じて、コラム側ブラケット42(テレスコ長孔53)が移動する。
前記コラム側ブラケット42の前記移動に追従してテレスコ長孔53に挿通されているスライド側カム66は、テレスコ長孔53が許容する範囲でチルト中心軸34周りで傾動する。すなわち、スライド側カム66は、車体側ブラケット41(クランプ44)のチルト長孔47を移動する。
なお、スライド側カム66がテレスコ長孔53内をテレスコ方向への移動時にチルト長孔47内面との摩擦により、図4(b)に示すスライド側カム66のボス部92に支軸43周りの回転力が付与される。しかし、各回り止め突部96の外周面が回り止め長孔49の内周面に係合することにより、スライド側カム66の支軸43周りの回転が阻止される。
また、このとき、同様にしてカラー57がテレスコ長孔53内をテレスコ方向への移動時にチルト長孔47内面との摩擦により、カラー57に支軸43周りの回転力が付与される。しかし、各回り止め突起58aの外周面が回り止め長孔50の内周面に係合することにより、カラー57の支軸43周りの回転が阻止される。
また、インナーチューブ26とアウターチューブ25との間の摩擦係合が解除されるため、ステアリングホイール5のテレスコ位置が調整可能となる。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のステアリング装置1は、スライド側カム66のボス部92が円筒形状に形成されている。また、チルト長孔が設けられた車体側ブラケット41には、チルト長孔47と平行に回り止め長孔49が形成されている。また、スライド側カム66には、回り止め長孔49に対して前記回り止め長孔が延びる方向に移動自在に係合してスライド側カム66の支軸43の周りの回転を阻止する回り止め突部96が形成されている。
上記の構成により、車種によらずスライド側カム及びレバー側カムの共通化を簡単に行うことができる。また、従来と異なり、スライド側カムのボス部の形状について、車種の諸元毎の設計検討が必要でなくなる。
なお、従来は、例えば、図10に示すようにスライド側カムのボス部の断面が菱形等の非円形形状の場合、車体側ブラケットのチルト長孔については、前記ボス部の形状に合わせた設計検討が必要となる。本実施形態によれば、その設計検討の必要がなくなる。
また、チルト長孔47内面とボス部92とのクリアランス、回り止め長孔49内面と回り止め突部96とのクリアランス、並びに、ボス部92と回り止め突部96との離間距離をいずれの車種においても統一すると下記の利点がある。すなわち、スライド側カムの車体側ブラケットに対する取付姿勢が、車種の諸元によらず同一に保つことが可能となる。例えば、本実施形態ではスライド側カムの車体側ブラケットに対する取付姿勢は、図4(b)に示すように設定されているが、このときの、前記クリアランス、及び前記離間距離を統一しておけば、いずれの車種においても、図4(b)に示す取付姿勢にできるということである。
また、スライド側カムの支軸周りの回転の阻止を、車体側ブラケットに対してチルト長孔と平行に配置した回り止め長孔と、スライド側カムに設けられた回り止め突部とにより行うことができる。すなわち、スライド側カムのボス部とチルト長孔との干渉の懸念もない効果を奏する。
(2)本実施形態のステアリング装置1において、回り止め長孔を2個(複数)個形成した。また、複数の回り止め突部96を回り止め長孔49に対してそれぞれ係合するようにした。この結果、スライド側カムの支軸周りの回転を容易に阻止することができる。
(3)本実施形態では、ステアリング装置1のコラム側ブラケット42の挿通孔としてのテレスコ長孔に対してスライド側カム66のボス部92が、テレスコ方向に移動自在に挿入されている。この結果、本実施形態によれば、チルト調整機能のみならずテレスコ調整機能を有するステアリング装置に対しても上記(1)の効果を容易に実現できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のステアリング装置を図11〜図15を参照して説明する。
本実施形態のステアリング装置1は、ステアリングホイール5のチルト調整を行うチルト機構6を備えているが、前後位置を調整するテレスコ調整機能は省略されているところが第1実施形態と異なっている。
本実施形態では、第1実施形態のステアリング装置の構成と同一または相当する構成については、同一符号を付して、その説明を簡略して説明する。
図11に示すように上側支持機構33は、回転自在にステアリングシャフト2を支承するステアリングコラム4と、図示しない車体に対してステアリングコラム4を支持するチルト機構6とを備えている。ステアリングシャフト2には自在継手(図示せず)を介してインターミディエイトシャフト(図示略)及びピニオンシャフト(図示略)が接続され、ステアリング操作に基づく回転及び操舵トルクが、操舵輪(図示略)の舵角を変更する転舵機構へと伝達される。
ステアリングコラム4は、アウターチューブ25とインナーチューブ26を有し、アウターチューブ25及びインナーチューブ26とでステアリングシャフト2を回転可能に支持している。アウターチューブ25は、インナーチューブ26を内装し、複数箇所を凹ませて、その内装した部分においてインナーチューブ26を回転不能にかしめ支持している。
前記ステアリングコラム4は、第1実施形態と同様に図示しない下側支持機構を介して、チルト中心軸(図示略)周りに傾動可能に支持されている。そして、チルト機構6は、車体に対するステアリングコラム4の傾動を許可し及びその傾動位置を固定する。チルト機構6は、ロック機構に相当する。
本実施形態のステアリング装置1は、ステアリングシャフト2を回転駆動することにより操舵系にアシスト力を付与するコラム式の電動パワーステアリング装置である。ステアリング装置1は、第1実施形態と同様にその駆動源となる図示しないモータ、減速機(ウォーム軸及びウォームホイール)等を備えている。
チルト機構6は、図示しない車体に固定されるプレート111と、相互に対向する一対の側板112a,112bを有してプレート111に固定されるクランプ112と、後述するブラケット110、115を連結する支軸118を備える。
また、チルト機構6は、クランプ112の各側板112a,112bの内側に配置される一対の側板115a,115bを有してステアリングコラム4に固定されるコラム側ブラケット115を備えている。本実施形態では、プレート111及びクランプ112により車体側ブラケット110が構成されている。そして、コラム側ブラケット115は、その各側板115a,115b及びクランプ112の各側板112a,112bを貫通する支軸118により、クランプ112に対して相対変位可能に連結されている。
図11、図12に示すようにクランプ112は、断面略コ字状に形成され、その基部112cの両端から折り曲げられた各側板112a,112bが下側に延出して配置されるように、プレート111の下面111aに固定されている。
図11、図13に示すように、コラム側ブラケット115は、クランプ112と同様、断面略コ字状に形成されるとともに、その対向する各側板112a,112bの先端が内側に折り曲げられている。そして、コラム側ブラケット115は、これら各側板112a,112bの先端がステアリングコラム4(アウターチューブ25)の外周に溶接されることにより、同ステアリングコラム4に固定されている。
図11、図13に示すように、コラム側ブラケット115の各側板115a,115bには、互いに対向する円孔116が形成されている。図13に示す各円孔116は、支軸118の直径と略等しい内径を有している。また、図12に示すようにクランプ112の各側板112a,112bには、各円孔116に対応するチルト長孔112dが形成されている。そして、前記支軸118は、これら各円孔116及びチルト長孔112dに挿通されている。
チルト長孔112dは、後述するスライド側カム120のボス部130が、図示略のチルト中心軸を揺動中心として描く円弧状の軌跡を含むように長孔に形成されている。
また、図12に示すように、各側板112a,112bにおいて、前記チルト長孔112dを挟む部位には一対の回り止め長孔113、114がそれぞれチルト方向に延びてチルト長孔47と平行に形成されている。回り止め長孔113、114は、第1実施形態と同様に後述するスライド側カム120の回り止め突部132、及び支軸118の回り止め突起121が、図示しないチルト中心軸を揺動中心として描く円弧状の軌跡を含むように形成されている。
図11、図14に示すように支軸118の頭部119はフランジ状に張り出し形成されてクランプ112の側板112bの外側面に当接し、コラム側ブラケット115側への移動が規制されている。又、支軸118の基端部は円柱状のボス部118bが支軸118の軸心方向に向かって突出形成されている。ボス部118bは、チルト長孔112dの幅と同じとされてチルト長孔112dに嵌合し、チルト長孔112d内をチルト方向へ摺動可能に配置されている。
図14に示すように、頭部119において、ボス部118bを挟む部位には、一対の回り止め突起121がボス部118bと同方向に突出されている。各回り止め突起121は、図12に示す一対の回り止め長孔114に対してチルト方向へ移動自在に、かつ支軸118の軸心の周りでは回動不能に係合(すなわち、挿入)されている。
前記支軸118が各チルト長孔112d内を移動することにより、チルト長孔112dが延伸された方向において、クランプ112に対するコラム側ブラケット115の相対位置が変更される。
図11に示すように、支軸118において、クランプ112の側板112aのチルト長孔112dから突出した部位には、スライド側カム120、レバー側カム122、及び操作レバー124が順に貫挿されている。
スライド側カム120は、その貫通穴126がレバー側カム122の円筒軸部122aに対して回転可能かつ軸心方向に移動可能に支持されている。そして、スライド側カム120は、側板112aとは反対側の面に、第1カム面128が形成されている。
また、スライド側カム120において、クランプ112の側板112a側の面120aには円筒形状のボス部130が突出されている。前記ボス部130は、スライド側カム120の面120aをクランプ112の側板112aの外側面に当接させた状態で、側板112aのチルト長孔112dに嵌合し、チルト長孔112d内をチルト方向へ摺動可能に配置されている。
また、スライド側カム120において、クランプ112の側板112a側の面120aには、図15に示すように、一対の回り止め突部132がボス部130の突出方向と同方向へ突出している。本実施形態では、図15に示すように、各回り止め突部132の軸心O3、O4、及び支軸118の軸心L1が共通の仮想平面H1に含まれるように、設定されている。
また、前記各回り止め突部132が回り止め長孔113にそれぞれ係合(すなわち、挿入)することによって、スライド側カム120は、クランプ112の側板112aに対して支軸118の軸心L1周りに回動しないようにされている。
レバー側カム122は、その貫通穴134が支軸118の軸部118aに対して回転可能かつ軸心方向に移動可能に支持されている。レバー側カム122は、スライド側カム120側の面に第2カム面136を形成している。そして、このレバー側カム122を回転させることによって、第2カム面136の山部又は谷部が、スライド側カム120の第1カム面128の山部又は谷部に当接するようになっている。
操作レバー124は、その貫通穴138がレバー側カム122の円筒軸部122bに対して回転不能に、かつ、軸心方向に移動可能に嵌合されることにより、支持されている。なお、円筒軸部122aと円筒軸部122bは、同軸上に設けられており、同一内径及び同一外径を有する。従って、操作レバー124は、レバー側カム122と一体に支軸118を回転中心として回転する。
スライド側カム120、レバー側カム122、操作レバー124を貫挿した支軸118は、図11、図14に示すようにその先端部に形成されたネジ部140に鍔付きナット142が螺着されている。
鍔付きナット142は、スライド側カム120、レバー側カム122、操作レバー124が、鍔付きナット142とクランプ112の側板112aの間において、所定の間隔で保持されるように、支軸118のネジ部140に螺着されている。すなわち、鍔付きナット142は、第2カム面136の山部が第1カム面128の谷部に当接した状態で、側板112aと側板115aが互いに摺動可能に当接するように、支軸118のネジ部140に螺着されている。
そして、鍔付きナット142と操作レバー124の基端部の間には、ストッパープレート144が連結されている。ストッパープレート144は、クランク形状をなし、その先端部に形成された嵌合孔146が鍔付きナット142に嵌合され、鍔付きナット142に対して回転不能かつ軸線方向に移動可能に支持されている。ストッパープレート144は、その基端部が図示しない固定ネジにて操作レバー124の基端部に固定されている。従って、ストッパープレート144は、操作レバー124を回動操作すると、嵌合孔146に嵌合した鍔付きナット142が連れ回りするようにされている。
(第2実施形態の作用)
側板112aと側板115aが互いに摺動可能に当接している状態から、操作レバー124を回動操作させると、操作レバー124の回動に伴ってレバー側カム122は一体回転する。レバー側カム122の回転によって第2カム面136の山部が、スライド側カム120の第1カム面128の谷部から山部に乗り上がる。
なお、このとき、レバー側カム122とのカム作用によりスライド側カム120は、支軸118の周りで回動しようとするが、図15に示すように、回り止め突部132が、回り止め長孔113にそれぞれ係合している。このため、スライド側カム120はクランプ112の側板112aに対して、支軸118の軸心L1周りに回動することはない。
また、支軸118の各回り止め突起121が、図12に示す一対の回り止め長孔114に対して支軸118は自身の軸心の周りでは回動不能に係合されている。このため支軸118も回動することがない。
第2カム面136の山部が両ブラケットの側板の弾性力に抗して第1カム面128の山部に乗り上がると、クランプ112の側板112a、112bを内側に縮めつける支軸118の軸力が増大する。この軸力の増大によって、該軸力が側板112a、112bを介してコラム側ブラケット115の側板115a、115bの外側面にそれぞれ加えられ、コラム側ブラケット115及びクランプ112との摩擦係合面の摩擦抵抗が増大する。
これによって、コラム側ブラケット115はクランプ112に締め付け固定(クランプ)される。しかも、レバー側カム122は鍔付きナット142とともに締め付け方向に移動するため、側板112a、112bを内側に縮めつける力がより大きなものとなり、コラム側ブラケット115はクランプ112をより強固に締め付け固定(クランプ)する。
コラム側ブラケット115は、締め付け固定(クランプ)されることによって、揺動不能となり、ステアリングシャフト2(ステアリングホイール)は所定の傾斜角度に固定保持される。
この締め付け固定(クランプ)状態から、締め付け固定を開放状態(アンクランプ)にすべく、操作レバー124を、反対方向に回動操作させると、操作レバー124の回動に伴ってレバー側カム122は一体回転する。このレバー側カム122の回転によって、第2カム面136の山部が、第1カム面128の山部から谷部に当接する。第2カム面136の山部が第1カム面128の谷部に当接すると、支軸118の軸力が消失し、コラム側ブラケット115及びクランプ112との摩擦係合面の摩擦抵抗が消失する。また、ブラケット115及びクランプ112の側板は自身の弾性力により前記押圧力が印加される前の状態に復帰する。
なお、このとき、レバー側カム122とのカム作用によりスライド側カム120は、支軸118の周りで回動しようとするが、図15に示すように、回り止め突部132が、回り止め長孔113にそれぞれ係合している。このため、スライド側カム120はクランプ112の側板112aに対して、支軸118の軸心L1周りに回動することはない。
また、支軸118の各回り止め突起121が、図12に示す、一対の回り止め長孔114に対して支軸118は自身の軸心の周りでは回動不能に係合(すなわち、挿入)されている。このため支軸118も回動することがない。
この摩擦係合面の摩擦抵抗が消失すると、コラム側ブラケット115はクランプ112に締め付け固定(クランプ)から開放されて、アンクランプとなり揺動可能となる。これによって、コラム側ブラケット115の側板115a,115bの外側面はクランプ112の側板112a,112bの内側面と摺動可能となり、ステアリングシャフト2を回動させて傾斜角度を調整することが可能となる。
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態のステアリング装置1は、スライド側カム120のボス部130が円筒形状に形成されている。また、車体側ブラケット110には、チルト長孔112dと平行に回り止め長孔113が形成されている。また、スライド側カム120には、回り止め長孔113に対して移動自在に係合してスライド側カム120の支軸118(支軸)の周りの回転を阻止する回り止め突部132が形成されている。この結果、本実施形態においても、第1実施形態の(1)と同様の効果を奏する。
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・第1、第2実施形態では、コラム側ブラケットを車体側ブラケットの内側に配置した。この代わりに、車体側ブラケットをコラム側ブラケットの内側に配置してもよい。この場合、ロック機構は、スライド側カムをコラム側ブラケットに押圧する形態となる。
・第1、第2実施形態では、車体側ブラケットにチルト長孔、及び回り止め長孔を形成し、コラム側ブラケットに挿通孔を形成したが、逆に、コラム側ブラケットにチルト長孔、及び車体側ブラケットに挿通孔を形成してもよい。
・第1、第2実施形態では、車体側ブラケットとコラム側ブラケットとを直接、摩擦係合させることにより、ステアリングコラムのチルト位置を固定するようにしたが、この構成に限定するものではない。
例えば、特許第3939806号公報に記載のステアリング装置のように、車体側ブラケットとコラム側ブラケットとの間に、平らで平滑な金属板である薄板で形成した薄板セット(公報段落0009、0010参照)を設け、薄板セットを介して両ブラケットを係合させるようにしてもよい。この場合、スライド側カムのボス部、及び回り止め突部が、前記薄板セットを貫通してブラケットのチルト長孔、回り止め長孔に対して係合する、ように構成する。
また、前記薄板セットとは異なる手段を用いて、車体側ブラケットとコラム側ブラケットとを間接的に係合させてもよい。
・第1、第2実施形態では、回り止め突部96、132を2個としたが、3個以上、或いは、単数でもよい。この場合、回り止め長孔49、113の個数を回り止め突部96、132の個数にあわせればよい。
・第1実施形態では、カラー57を支軸43周りで回転しないように、クランプ44の側板46bに回り止め長孔50を設けるとともに、カラー57に回り止め突起58aを設けたが、回り止め長孔50及び回り止め突起58aを省略してもよい。
・第2実施形態において、支軸118を支軸118の軸心周りで回転しないように、コラム側ブラケット115の側板112bに回り止め長孔114を設けるとともに、頭部119に回り止め突起121を設けた。この回り止め長孔114及び回り止め突起121を省略して、ボス部118bを断面非円形形状にして、チルト長孔112dに対して、支軸118をその軸心周りでは回動不能にし、チルト方向に摺動自在に嵌合してもよい。
・第1実施形態では、図4(b)に示すように、各回り止め突部96の軸心O1、O2、及び支軸43の軸心Lが仮想平面Hに含まれるように、スライド側カム66を側板46aに取付けしたがこの構成に限定されるものではない。
例えば、支軸43の軸心Lを含む一対の仮想平面を同軸心Lで交差し、そのうち一方の仮想平面に軸心O1を含むように一方の回り止め突部96を配置し、他方の仮想平面に軸心O2を含むように他方の回り止め突部96を配置してもよい。
・また、第2実施形態においても、支軸118の軸心L1を含む一対の仮想平面を同軸心L1で交差し、そのうち一方の仮想平面に軸心O3を含むように一方の回り止め突部132を配置し、他方の仮想平面に軸心O4を含むように他方の回り止め突部132を配置してもよい。