JP6437482B2 - 取付型制振器、及びそれを用いた制振方法 - Google Patents
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Description
本発明は、かかる課題を踏まえてなされたものであり、スペースが限られている場所にも取り付けることが可能で、固有振動数等の調整の容易な取付型制振器の提供を目的とする。
また、制振部材を長手方向の複数個所で制振対象物に取り付けて制振対象物の制振対象面に沿って制振部材を取り付けるため、制振対象面からの突出高さを抑制することができる。
ここで、「節付近」とは、当該節に隣接する振動の腹の位置より当該節に近い位置をい
うものとする。
このように、制振部材を複数本にすることで、制振体の本数を簡単に増やせ、その相乗効果により、より高い制振効果が発揮される。
このように、緩衝材、又は取付け手段を設ける箇所数及び位置を調節することで制振器の制振効果を高めるようにしたので、容易に制振器の調節を行うことができる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る取付型制振器(以下単に「制振器」ともいう。)100を制振対象物Aに取り付けた様子を示している。制振器100は、制振部材1と、拘束部材2と、取付け手段3(以下「ボルト3」ともいう。)とを備えている。
このように、拘束部材2をボルト3で制振対象物Aに固定することにより、ボルト3と拘束部材2の摩擦や、ボルト3と制振対象物Aの摩擦、拘束部材2と制振対象物Aとの摩擦によって、あるいは、拘束部材2と制振対象物Aの衝突によっても制振効果を高めることができ、また、拘束部材2が動吸振器の様に働くことによっても制振効果を高めることができる。
制振対象物Aと拘束部材2を固定するボルト3の最もよい締結位置を調べるため、以下
に示す比較例3、実施例2、及び実施例3の試験体を用いて振動試験1を行った。また固有振動数、及び減衰比の比較対象として、制振対象物Aのみを試験体とした比較例1について振動試験を行った。
図2に示した寸法(単位mm)に加工したA5052製のアルミニウム板を拘束部材2とし、図3に示した寸法(単位mm)に加工したSS400製軟鋼板を制振対象物Aとし、制振部材1を用いず、鋼製のM6六角穴付きボルト(JIS B1054強度区分10.9)からなる取付け手段3を、図5に示すように、18個のボルト挿通孔A1すべてに挿入して、締付トルク4.2N・mにて、制振対象物Aと拘束部材2と結合して試験体を形成した。
しかる後、加速度計Q(PCB製356A17)を、図4に示した位置の一つに設置し、符号Pの位置をインパクトハンマ(PCB製:086C03、白チップ)で叩いて加振した。
振動試験は、加速度計Qの位置を変えながら5回実施した。
こうして加速度計にて得られたデータからOROS社製FFTアナライザ(型式OR35−8)を用いて曲げ1次モード、及び曲げ2次モードの固有振動数、及び減衰比を算出し、比較例1(制振対象物Aのみ)の固有振動数、及び減衰比に対する固有振動数倍率、及び減衰比倍率を求めた。
ボルト3の個数、及び締結位置を、図5に示した通りとした他は、比較例3と同じようにして試験を実施した。
実施例3においては、左右一対ずつ計4本のM8穴付六角ボルトSの軸部を拘束部材2の両端から3列目となる計4個の雌ネジ貫通孔21に下側から螺入したのち、制振対象物Aのボルト挿通孔A1に挿入し、ボルトSの頭をブロックRに載置して試験体を支持した。
試験体を、制振対象物Aのみとした他は、実施例3と同じようにして試験を行った。(図6参照)
緩衝材5のピッチと減衰比倍率の関係、及び制振部材1の本数と減衰比倍率の関係を調べるため以下の要領で振動試験2を行った。
(実施例4)
質量体4として、φ4mm×長さ500mmのSS400製丸鋼を用い、緩衝材5とし
て片面に接着剤層が設けられた厚さ1mm×幅15mm×長さ22mmのCRゴム製のス
ポンジ材を用いた。質量体4の両端に1個ずつ計2個の緩衝材5を2巻程度に巻回して、
制振部材1を形成した。A5052製のアルミニウム板を図2に示した寸法に加工して拘
束部材2とし、1本の制振部材1を拘束部材2の3本の制振部材挿入部6のうち端の1本
に挿入して取付型制振器100とした。SS400製軟鋼板を図4に示した寸法(単位m
m)に加工して制振対象物Aとした。
6個のM6六角穴付きボルトからなる取付け手段3を、制振器100の長さ方向の2個
×9列の貫通孔21のうち両端と中央の3列に挿入して制振器100を制振対象物Aに固
定し、実施例4に係る試験体とした。振動試験は実施例3と同様に行った。
緩衝材5の個数、及びピッチを図6に示したように変更した以外は実施例4と同様にして実施例5〜実施例12について曲げ1次モードの固有振動数、減衰比、固有振動数倍率、及び減衰比倍率を求めた。
実施例4から12で、最も比較例1に対する減衰比倍率の高かった実施例8と同じ制振部材1を3本用いた。3本の制振部材1を実施例4と同じ拘束部材2の3本の制振部材挿入部6に1本ずつ挿入した以外は、実施例4と同様にして試験を行って曲げ1次モードの固有振動数、減衰比及び減衰比倍率を求めた。
尚、振動試験2において、ボルト3を拘束部材の2次曲げ節位置の3箇所で締め付けたもののみを実施例としたが、本発明は、振動試験2の各実施例のボルト締付位置を全箇所締結や1次節位置の2箇所締結の他、あらゆる締付ボルト位置で締め付けたものを含むことは言うまでもない。
図8は、本発明の第2実施形態に係る取付型制振器200を制振対象物Bに取り付けた様子を示している。制振器200は、制振部材1(図1、図9参照)と、拘束部材202(図7)と、取付け手段3とを備えている。
尚、第2実施形態以降の実施形態において、第1実施形態と共通する部材については、同一符号を付して説明を省略する。
制振対象物Bと拘束部材202を固定するボルト3の最もよい締結位置を調べるため、以下に示す比較例4、実施例15から実施例17の試験体を用いて、振動試験3を行った。また固有振動数、及び減衰比の比較対象として、制振対象物Bのみを試験体とした比較例2について振動試験を行った。
制振対象物Bは、全体を軟鋼(SS400)から形成した。柱部B3を200mm角×厚さ6mm×長さ510mmの角型鋼管から形成し、梁部B4を長さ(高さ)500mm×厚さ55mm×幅1560mmに形成し、基台部B5を250mm角×厚み6mm×長さ1985mmの角形鋼管から形成し、敷設板B6を幅150mm×厚み19mm×長さ550mmに形成した。雌ネジ貫通孔B1は、M10ボルト孔とした。
拘束部材202は、アルミニウム合金板(A5052P)から図8に示した寸法(単位mm)に形成した。
そして、ボルト3として、鋼製のM10六角穴付きボルト(JIS B1054強度区分10.9)を用い、26個のボルト挿通孔221全てにボルト3を配設して締付トルク21N・mにて拘束部材202を制振対象物Bに取り付けて、比較例4の試験体とした。
図10に示した位置でボルト3の締付を行った以外は、比較例4と同様にして振動試
験を行った。
制振対象物Bのみで比較例4と同様にして振動試験を行った。振動試験3(実施例1
5から実施例17、及び比較例2、比較例4)の結果を図10に示す。尚、比較例2についてコンピュータ解析により求めた固有振動数を合わせて示す。
緩衝材5のピッチと減衰比倍率の関係、及び制振部材1の本数と減衰比倍率の関係を調べるため以下の要領で振動試験4を行った。
質量体4として、φ6mm×長さ1230mmのSS400製丸鋼(0.3kg)を用い、緩衝材5として片面に接着剤層が設けられた厚さ1mm×幅15mm×長さ30mmのCRゴム製のスポンジ材を用いた。質量体4の両端に1個ずつ計2個の緩衝材5を巻回して、制振部材1を形成した。1本の制振部材1を比較例5と同じ拘束部材202の3本の制振部材挿入部206のうち最も上側の1本に挿入して取付型制振器200とした。
6個のM10六角穴付きボルトからなる取付け手段3を、制振器200の長さ方向の2個×13列のボルト挿通孔221のうち、振動試験3で最も減衰比倍率の高かった両端と中央の3列に挿入して締付トルク21N・mで締めつけて制振器200を制振対象物Bに固定し、比較例5と同じようにして振動試験を行った。
図11に示した数の緩衝材5を質量体4の両端を含む長手方向の等間隔位置に配置して制振部材1とした他は、実施例18と同様にして振動試験を行った。
実施例21と同じ制振部材1(緩衝材5を5個備える制振部材1)を図10(b)に示すように3本用いた他は、実施例18と同様にして振動試験を行った。
ボルト締結位置を26カ所全箇所締結とした以外は、実施例26と同様にして振動試験
を行った。
振動試験4の結果を図11に示す。
とから、緩衝部材だけでなくボルトもうまく配置することで制振効果を高められることが
分かった。ボルトの締付位置が多すぎると制振効果が落ちる理由は、拘束部材と制振対象
面の摩擦や衝突が抑制されることに加え、拘束部材のフリーの部分が動吸振器の様に機能
することによる効果が抑制されることが推察される。
図12は、本発明の第3実施形態に係る取付型制振器300を示している。制振器300は、制振部材1と、3個の拘束部材302とを主に備える他、補助質量部材307を備えている。
制振部材1は、実施形態1と同じ質量体4と緩衝材5を用いて形成され、長手方向両端と中央の3箇所に緩衝材5が巻回されている。図13では、制振部材1を3本設けた例を示したが、制振部材1は、2本以下でも4本以上でもよい。
図13は、本発明の第4実施形態に係る取付型制振器400を示している。制振器400は、制振部材1と、拘束部材402と、取付け手段3を主に備えている。制振部材1は、棒状の質量体4の長手方向の両端と中間部分の2箇所の計4箇所に実施形態1と同じ緩衝材5が巻回されている。
図14は、本発明の第5実施形態に係る取付型制振器500をガントリー型の制振対象物Cに取付けた様子を示している。制振器500は、制振部材1と、拘束部材502と、取付け手段3を主に備えている。制振部材1は、棒状の質量体4の長手方向の複数個所に実施形態1と同じ緩衝材5が巻回されており、拘束部材502の長手方向に延びる5つの円形貫通孔からなる制振部材挿入部506に挿入されている。図14に示したように、第5実施形態では、制振対象物Cの梁部の上下面、左右の脚部の外側面、及びその下面の計6か所に取付型制振器500が設けられている。
実施形態1〜実施形態5では、制振部材挿入部を外気に連通した溝又は貫通孔としたが、制振部材挿入部を密閉された空間とし、制振部材挿入部の内部を油等、空気とは粘性の異なる物質により満たしたものも本発明の取付型制振器に含まれる。このように、制振部材挿入部を満たす物質の粘性を変えることにより制振器の減衰係数を変えることができる。
100,200,300,400、500 取付型制振器
1 制振部材
2,202,302,402,502 拘束部材
3 取付け手段
4 質量体
5 緩衝材
6,206,306,406,506 制振部材挿入部
Claims (5)
- 制振対象物に取り付けて前記制振対象物の制振を行う取付型制振器であって、
棒状の質量体、及び前記質量体の長手方向に間欠的にかつ前記質量体の外周を包むように設けられる複数の緩衝材を有する制振部材と、
前記制振部材が挿入される貫通孔又は溝からなる制振部材挿入部を有する拘束部材と、
前記拘束部材を制振対象物に取付ける取付け手段と
を備え、
前記制振部材挿入部は、少なくとも前記複数の緩衝材の位置で前記制振部材を内包し、緩衝材の外面側から前記緩衝材を拘束するよう構成され、
前記拘束部材が、長板状部材からなり、複数の前記取付け手段が、前記拘束部材の長手方向に間欠的に設けられており、
前記取付け手段は、前記拘束部材の曲げ1次モードにおける2箇所の節付近に設けられていることを特徴とする取付型制振器。 - 制振対象物に取り付けて前記制振対象物の制振を行う取付型制振器であって、
棒状の質量体、及び前記質量体の長手方向に間欠的にかつ前記質量体の外周を包むように設けられる複数の緩衝材を有する制振部材と、
前記制振部材が挿入される貫通孔又は溝からなる制振部材挿入部を有する拘束部材と、
前記拘束部材を制振対象物に取付ける取付け手段と
を備え、
前記制振部材挿入部は、少なくとも前記複数の緩衝材の位置で前記制振部材を内包し、緩衝材の外面側から前記緩衝材を拘束するよう構成され、
前記拘束部材が、長板状部材からなり、複数の前記取付け手段が、前記拘束部材の長手方向に間欠的に設けられており、
前記取付け手段は、前記拘束部材の長手方向において、曲げ2次モードにおける中央の振動の節付近の位置、及び両端の振動の節付近の位置、若しくは両端の振動の節付近より端部側の位置の前記拘束部材の長手方向の3箇所に設けられていることを特徴とする取付型制振器。 - 前記制振部材は、緩衝材を3つ以上備え、前記質量体が前記緩衝材により複数スパンに分割されている請求項1、又は請求項2に記載の取付型制振器。
- 前記制振部材を複数本備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の取付型制振器。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の取付型制振器を用い、
前記緩衝材を設ける箇所数及び位置を調節することで制振効果を高めることを特徴とする取付型制振器を用いた制振方法。
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