以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
以下に説明する実施の形態において、空気調和システムは食品を加工する工場の工場建屋に適用される。食品衛生法では、食品加工に必要な環境条件がたとえば衛生環境手法(HACCP)によって規定されている。食品加工工場では、空気中を浮遊する微生物(細菌およびウイルスを含む。以下、浮遊微生物と言う)および食品に付着する微生物(以下、付着微生物と言う)の活性を抑制するために、環境内を低温(たとえば15℃)に保つことが一般的である。そのため、食品加工工場では空気調和システムの消費電力が特に大きい。また、低温の環境内で作業する作業者にとっては身体的負荷が大きい。なお、本発明に係る空気調和システムが適用可能なのは工場建屋に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和システムの構成を示す模式図である。図1を参照して、空気調和システム200は、空気調和機202と、帯電粒子発生装置100と、制御装置204と、微生物検出装置500とを備える。工場建屋201には、天井201Rと、扉201Dと、食品加工設備203とが設けられている。作業者(図示せず)
は扉201Dから工場建屋201(環境内)に出入りする。食品加工設備203は、たとえば食品を加工するための作業台あるいは加工装置である。
空気調和機202および帯電粒子発生装置100は、いわゆる天井埋込型である。工場建屋201の天井201Rには、空気調和機202および帯電粒子発生装置100にそれぞれ対応して貫通穴が設けられている。空気調和機202は、環境内の温度が設定温度に到達するように環境内の温度を調節する。
帯電粒子発生装置100は、正イオンおよび負イオンの双方を発生させることが可能なように構成されている。帯電粒子発生装置100は、帯電粒子の発生量が多くなる順に、弱/標準/フルパワー/急速の4つの運転モードを有する。天井高さ3m、床面積約35m2の空間において、「標準モード」では、帯電粒子発生装置100は、正イオンおよび負イオンの濃度の各々を25,000個/cm3で維持することができる。また、「急速モード」では、帯電粒子発生装置100は、正イオンおよび負イオンの濃度の各々を50,000個/cm3とすることができる。
付着微生物は、浮遊微生物が多いほど多く存在し、浮遊微生物が少ないほど少ないとみなすことができる。付着微生物の量(たとえば単位面積当たりの微生物の数)を評価するために、微生物検出装置500は、たとえば食品加工設備203の近くの壁面に設置される。これにより、微生物検出装置500は食品加工設備203の周辺の浮遊微生物の量を検出する。この検出方法については後に詳細に説明する。
制御装置204は、空気調和機202と、帯電粒子発生装置100と、微生物検出装置500とに接続されて、これらの装置を集中的に制御する。より具体的には、制御装置204は、微生物検出装置500から微生物の量を示す検出結果を取得する。この検出結果に基づいて、制御装置204は、空気調和機202の設定温度を定めるとともに、帯電粒子発生装置100を制御して環境内への帯電粒子の送出量を調整する。この制御方法についても後により詳細に説明する。
図2は、図1に示した空気調和システム200における、帯電粒子発生装置100のルーバを閉じた状態での構成の一例を示す外観斜視図である。図3は、図2に示した帯電粒子発生装置100のルーバを開いた状態での構成の一例を示す外観斜視図である。図4は、図2に示した帯電粒子発生装置100の内部構成の一例を示す斜視図である。
図2〜図4を参照して、帯電粒子発生装置100は、一面が開口した箱状のケース1と、ケース1の開口面に装着される矩形状のパネル2とを備える。帯電粒子発生装置100は、ケース1が貫通穴から天井201Rの上方に突出する状態で設置される(図1参照)。これにより、パネル2が天井面に露出する。なお、空気調和機202も同様にパネルだけが天井面に露出するように設置される。
パネル2の中央部には矩形状の空気の取入口10が設けられる。パネル2では、中央部の高さ寸法(厚み寸法)が大きく、中央部から周縁部に向かって高さ寸法が小さくなる。つまり、パネル2の表面(前面)は、取入口10の面に対して傾斜している。パネル2の周縁部には矩形状の空気の吹出口11〜14が設けられる。吹出口11〜14のそれぞれには、風向調整板であるルーバ21〜24が設けられる。
ルーバ21〜24はそれぞれ吹出口11〜14と略同寸法を有する矩形状である。ルーバ21〜24は、パネル2の中央部側における吹出口11〜14の縁部に沿った軸回りに正逆両方向に円運動するようにそれぞれ設けられる。ルーバ21〜24は図示しないルーバ制御回路によって制御される。ルーバ21〜24を閉じることにより、吹出口11〜1
4はルーバ21〜24でそれぞれ覆われる。一方、ルーバ21〜24を適宜の角度(たとえば取入口10の面に対する角度)で開くことにより、吹出口11〜14から吹出される帯電粒子を含む空気は、ルーバ21〜24の内側面に当たる。これにより、風向を調整することができる。また、パネル2の中央部から周縁部へ向かう方向に空気を吹出すことができる。
吹出口11〜14の近傍には、吹出口11〜14にそれぞれ対応させて、LED31〜34が設けられる。たとえば、LED31〜34のそれぞれは、取入口10の周縁部と吹出口11〜14の端部との間に設けられる。LED31〜34は、対応する吹出口11〜14の異常あるいは点検の必要性を使用者に通知する。LED31〜34には、点灯時の光で、たとえばルーバ21〜24の外側面の所望の領域を照らすことができるように導光部材(図示せず)を設けることもできる。これにより、ルーバ21〜24の開状態および閉状態に関わらず、ルーバ21〜24の外側表面の所望の領域を光らせることができ、外部からの視認性を高めることができる。
パネル2の前面には表示パネル25が設けられる。表示パネル25は、たとえば複数のLEDランプ、および受光部を備える。複数のLEDランプには、帯電粒子発生装置100が運転中であることを示すためのLEDランプ、帯電粒子発生ユニットの交換を通知するためのLEDランプ、帯電粒子発生ユニット41〜44などの異常を通知するためのLEDランプ、あるいは帯電粒子発生ユニット41〜44または図示しないフィルタなどの清掃を通知するためのLEDランプなどが含まれる。受光部はリモートコントロールからの信号を受ける。
吹出口11〜14の内側には、帯電粒子発生ユニット41〜44がそれぞれ設置されている。以下においては帯電粒子発生ユニット41について代表的に説明する。他の帯電粒子発生ユニット42〜44の構成は、帯電粒子発生ユニット41の構成と同等である。
図5は、図2に示した帯電粒子発生装置100における帯電粒子発生ユニット41の構成の一例を示す外観斜視図である。図5を参照して、帯電粒子発生ユニット41は箱状の収容部411を備える。収容部411には、帯電粒子発生部411aおよび帯電粒子センサ414が収容される。
帯電粒子発生部411aは矩形状の板状体である。帯電粒子発生部411aには、一方の端部の近傍に負イオンを発生させる電極部412が設けられ、他方の端部の近傍に正イオンを発生させる電極部413が設けられる。電極部412,413の各々には、図示しない制御回路によって、電圧が周期的に印加される。帯電粒子センサ414は、電極部412,413によって発生した正イオンおよび負イオンの発生量を検出する。
収容部411の一方の側端部には、帯電粒子発生ユニット41を機械的および電気的に接続するためのコネクタ415が設けられる。収容部411の他方の側端部には、帯電粒子発生ユニット41をケース1に固定するためのねじ部416が設けられる。
帯電粒子発生ユニット41は、空気中の水蒸気をプラズマ放電によりイオン化することにより、正イオンとしてのH+(H2O)n(nは任意の自然数)と、負イオンとしてのO2 −(H2O)m(mは任意の自然数)とを発生させるように構成されている。これらの正イオンおよび負イオンが浮遊微生物などの対象物に付着し、その表面で化学反応を起こす。この化学反応により、活性種である過酸化水素(H2O2)および/または水酸基ラジカル(・OH)が生成される。これらの活性種が浮遊微生物の組織を破壊する。これにより、浮遊微生物が殺菌(ウイルスの場合は除去)される。
帯電粒子発生ユニット41〜44は、互いに独立した吹出口11〜14に設置される。また、帯電粒子発生ユニット41〜44の各々は、正イオンを発生させる電極部413および負イオンを発生させる電極部412のうちのいずれか一方のみを動作させることが可能である。そのため、吹出口11〜14の各々から、正イオンを含む空気および負イオンを含む空気のうちのいずれか一方を吹出させることができる。これにより、帯電粒子発生装置100から吹出した空気中の正イオンと負イオンとが直ちに電気的に中和することを防止できる。したがって、帯電粒子をより広範囲に拡散させることが可能になる。
環境内への帯電粒子の送出量を増加させるためには、電極部413,412に印加する電圧を高くすればよい。あるいは、電極部413,412に電圧を印加する周期を短くすることにより、電圧の印加回数を増加させてもよい。これにより、帯電粒子の発生量が増加するため、帯電粒子の送出量を増加させることができる。また一般には、電極部413,412を通過する風量を大きくすることにより、帯電粒子の送出量を容易に増加させることができる。
図6は、図2に示した帯電粒子発生装置100の内部構成の一例を示す平面図である。図6ではパネル2(図2参照)を取外した状態が示される。図6を参照して、帯電粒子発生装置100の中央部にファン3が設けられる。ファン3は、いわゆるターボファンであり、複数の羽板30を備える。ファン3すなわち羽板30の回転方向を矢印Aで表す。
羽板30の各々はファン3の回転軸に平行に設けられる。また、羽板30の各々は、ファン3の半径方向について傾斜して設けられる。すなわち、ファン3の回転軸から、半径方向についての各羽板30の左右両端部までの距離が互いに異なる。ファン3が回転することにより、取入口10(図2参照)から空気が取入れられる。取入れられた空気は、羽板30によって、ファン3の半径方向外側に向かって送出される。この空気は帯電粒子を含んだ状態で吹出口11〜14から吹出される。
吹出口11〜14の長手方向の寸法は、電極部412と電極部413との間の間隔よりも長い。吹出口11〜14の内側には、吹出口11〜14の長手方向に沿って電極部412と電極部413との間に、抑制部材61〜64がそれぞれ設けられる。抑制部材61〜64は、電極部412での風量と電極部413での風量とを同等にするための風量調整部として機能する。以下においては、吹出口14に設けられる抑制部材64について代表的に説明する。他の抑制部材61〜63の構成は抑制部材64の構成と同等である。
図7は、図6に示した吹出口14を拡大して示す平面図である。図8は、図7に示したVIII−VIII線に沿う吹出口14の断面の概略を示す断面図である。図9は、図8に示したIX−IX線に沿う吹出口14の断面の概略を示す断面図である。図8および図9を参照して、羽板30には便宜上平行斜線を付して他の箇所と区別できるようにしてある。
図7〜図9を参照して、吹出口14の内側は略直方体の空間を有し、当該略直方体の一面が吹出口14である。当該一面と交差する他面に、吹出口14と連通する導入口74が設けられる。導入口74から流入した空気は、吹出口14の内側を通って吹出口14から吹出される。略直方体の残りの面はケース1などの部材で構成され、吹出口14を除いて空気が環境内に流出することはない。導入口74の長さは吹出口14の長さと略同寸法であるとともに、導入口74の高さはファン3の羽板30の高さと略同寸法である。
抑制部材64は、たとえば矩形状の板状体である。抑制部材64の幅は吹出口14の短手方向の寸法よりも小さい。また、抑制部材64の高さはファン3の羽板30の高さよりも小さい。抑制部材61〜64は、ケース1の側面に接するとともに、羽板30の回転軌
道から適切な距離を離して設けられる。
ファン3から送出された空気(図7における矢印Bで表す)は、導入口74へ流入し、吹出口14の内側を通って吹出口から吹出す。ファン3は、電極部413から電極部412へ向かう方向に沿って導入口74に空気を流入させる。したがって、抑制部材64を具備しない場合、電極部413における風量よりも電極部412での風量の方が大きくなる。
抑制部材64は、導入口74から流入する空気の一部を遮って、電極部412への風量を抑制する(図7における矢印Dで表す)。電極部412の方へ流れることを抑制された空気は、電極部413の方に流れる(図7における矢印Cで表す)。これにより、電極部412での風量が小さくなるとともに、電極部413での風量が大きくなる。したがって、適切な寸法の抑制部材64を用いることによって、正イオンを発生させる電極部413での風量と負イオンを発生させる電極部412での風量とを同等にすることができる。その結果として、吹出口14から吹出される正イオンの送出量と負イオンの送出量とのバランスを改善することができる。
上述の説明では、抑制部材64の寸法(面積あるいは抑制範囲)は固定されている。しかし、抑制部材64の寸法を変更可能にしてもよい。
図10は、図6に示した吹出口14の構成の他の一例を示す断面図である。図10を参照して、図10に示す吹出口14の構成は、抑制部材が可動である点、およびファン回転数検出部51と高さ変更部52とが設けられる点において、図9に示した吹出口14の構成と異なる。図10に示されたそれ以外の構成については図9に示された構成と同等であるため、詳細な説明を繰返さない。
ファン回転数検出部51はファン3の回転数を検出する。なお、ファン3の回転数に代えて、ファン3による風量を検出してもよい。すなわち、ファン3による風量を直接検出してもよく、あるいはこの風量と相関関係があるファン3の回転数を検出することにより、ファン3による風量を間接的に検出することもできる。
高さ変更部52は、ファン回転数検出部51が検出した風量(あるいはファン3の回転数)に応じて、抑制部材の高さを変更する。抑制部材は、たとえば2つの板状部材641,642で構成される。板状部材642はケース1に固定される。板状部材641は、ジョイント部材643に沿って動くことが可能である。これにより、抑制部材全体としての高さを変更することができる。
ファン3の回転数がある値の場合に、電極部412での風量と電極部413での風量とが同等であるとする。この状態からファン3の回転数を上げて風量を増加させると、抑制部材によって、電極部413での風量が電極部412での風量よりも大きくなってしまう。そのため、抑制部材の高さを低くする。その結果、電極部412の方に空気が流れやすくなるため、電極部412での風量と電極部413での風量とが同等になる。逆に、ファン3の回転数を下げて風量を減少させると、電極部413での風量が電極部412での風量よりも小さくなってしまう。そのため、抑制部材の高さを高くする。これにより、電極部413での風量が大きくなるため、電極部412での風量と電極部413での風量とが同等になる。
このように、抑制部材の寸法を変更可能にすることで、ファン3の回転数または風量を変化させた場合であっても、電極部412での風量と電極部413での風量とを同等にすることができる。なお、図10に示された構成では抑制部材の高さが変更可能である。し
かし、抑制部材の寸法を変更する方法はこれに限定されるものではない。
次に、本発明の実施の形態に係る空気調和システム200における微生物検出装置500について説明する。図11は、図1に示した空気調和システム200における微生物検出装置500が実行する微生物の検出工程を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、微生物検出装置500は、大きく3つの段階に分類される工程を経て微生物を検出するように構成されている。第1段階の工程は、ステップS101,S102および図12に示す捕集工程である。第2段階の工程は、ステップS103〜S108、図13、および図14に示す蛍光測定工程(加熱前および加熱後)である。第3段階の工程は、ステップS109,S110および図15に示すリフレッシュ工程である。
図12は、図11に示したフローチャートにおける捕集工程の原理を説明するための模式図である。図13は、図11に示したフローチャートにおける加熱前蛍光測定工程の原理を説明するための模式図である。図14は、図11に示したフローチャートにおける加熱後蛍光測定工程の原理を説明するための模式図である。図15は、図11に示したフローチャートにおけるリフレッシュ工程の原理を説明するための模式図である。
図12〜図15を参照して、微生物検出装置500の本体部分は、ほぼ直方体をしており、縦5cm×横6cm×高さ3cm程度である。微生物検出装置500は、テーブル(捕集部)510と、ヒータ520と、放電電極530と、電圧装置540と、光源550と、レンズ560と、受光部(検出部)565と、ファン570と、ブラシ(リフレッシュ部)580と、図示しない回転装置とを備える。回転装置は、テーブル510を回転中心(たとえばテーブル510の右端部)の周りに回転させる。これにより、テーブル510は、図11のフローチャートに示す各工程を順々に経由するように構成されている。
まず図11および図12を参照して、捕集工程において、微生物検出装置500は、空気中に浮遊する微生物600Aを捕集する。このときに、空気中に浮遊する化学繊維600Bも一緒に捕集される(ステップS101)。より具体的には、テーブル510は鏡面仕上げされたガラス円盤である。放電電極530は針状電極であり、その先端部がテーブル510に対向している。電圧装置540から供給される電圧により、放電電極530はテーブル510と放電電極530との間に電界を形成する。これにより、浮遊物600(微生物600Aおよび化学繊維600B)が帯電する。帯電した浮遊物600は、基準電位に維持されているテーブル510の表面に吸着して捕集される。ステップS102において、回転装置は、蛍光強度を測定するための位置にテーブル510を移動させる。
次に図11および図13を参照して、加熱前蛍光測定工程において、光源550は、捕集された浮遊物600に向けて紫外線などの励起光を照射する。これにより、微生物600Aおよび化学繊維600Bは、それぞれの物質中の成分に特有の蛍光を発する。レンズ560は、浮遊物600からの蛍光を集光する。受光部565は、レンズ560によって集光された蛍光を受光する。受光部565によって受光された蛍光が図示しない分析部によって分析される(ステップS103)。なお、テーブル510の表面が鏡面仕上げされているのは、ステップS103の処理において余計な散乱光を生じないようにするためである。加熱前蛍光測定を終えたテーブル510は、蛍光を測定するための位置から一旦外されて、ステップS101における捕集位置に戻る(ステップS104)。
ヒータ520は、テーブル510上に捕集された浮遊物600をテーブル510とともに加熱処理する(ステップS105)。その後に、ファン570はテーブル510を冷却する。(ステップS106)。ステップS107において、回転装置は、蛍光強度を測定するための位置にテーブル510を再び移動させる。図11および図14を参照して、加熱後蛍光測定工程においても加熱前蛍光測定工程と同様に、微生物600Aおよび化学繊
維600Bに再度励起光が照射されて、蛍光が分析される(ステップS108)。
ステップS105において微生物600Aと化学繊維600Bとを同時に加熱処理することで、微生物600Aは死滅し、化学繊維600Bは分子状態に変化が起きる。このため、加熱処理の前後で蛍光に変化が生じる。したがって、加熱処理前と加熱処理後との蛍光測定結果を比較することにより、微生物600Aの量(たとえば単位体積当たりの微生物の数)を定量的に評価することができる。
最後に図11および図15を参照して、リフレッシュ工程において、ブラシ580は、テーブル510上の浮遊物600を清掃する(ステップS109)。回転装置はテーブル510を捕集位置に戻す(ステップS110)。
微生物検出装置500は、微生物と特定抗体との抗体反応を利用するものではない。そのため、微生物をその種類を問わず検出することができる。また、微生物を検出するための反応時間を必要としない。さらに、検出が終わればリフレッシュ工程によってすぐに初期化することができる。したがって、微生物検出装置500は、上記ステップS101〜S110における処理を繰返すことができる。すなわち、微生物検出装置500は連続的に微生物を検出することが可能である。
図16は、図1に示した制御装置204の制御を説明するためのフローチャートである。図1および図16を参照して、制御装置204では、帯電粒子発生装置100の停止状態(「停止モード」)における空気調和機202の設定温度として温度T1(第1の温度、たとえば15℃)が定められるとともに、温度T1よりも高い温度T2(第2の温度、たとえば17℃)が定められる。空気調和システム200に電源が投入された状態をスタートとする。なお、本実施の形態においては、帯電粒子発生装置100の停止状態における帯電粒子の送出量(すなわちゼロ)が本発明に係る「第1の送出量」に対応し、帯電粒子発生装置100の運転時における帯電粒子の送出量が本発明に係る「第2の送出量」に対応する。
ステップS201において、制御装置204は、帯電粒子発生装置100の運転モード(上記4つの運転モードあるいは帯電粒子発生装置100の停止状態)に関する情報を取得する。帯電粒子発生装置100が運転されている場合、処理はステップS203に進む(ステップS202においてYES)。ステップS203において制御装置204は、空気調和機202の設定温度を温度T2に定める。一方、帯電粒子発生装置100が停止されている場合、処理はステップS204に進む(ステップS202においてNO)。ステップS204において制御装置204は、空気調和機202の設定温度を温度T1に定める。
ステップS205において、微生物検出装置500は、食品加工設備203の周辺における微生物の量を検出する。制御装置204はこの検出結果を取得する。
ステップS206において、制御装置204は、微生物検出装置500による検出結果を予め定められた基準値(たとえば食品衛生法で規定された基準値あるいはそれよりも厳しい値)と比較する。検出結果が基準値を上回る場合、処理はステップS207に進む(ステップS206においてYES)。一方、検出結果が基準値以下の場合、処理はステップS212に進む(ステップS206においてNO)。
ステップS207において、制御装置204は、(a)空気調和システム200に電源を投入した直後であるか、(b)微生物検出装置500による検出結果が基準値を上回ったのは突発的であるか、または(c)帯電粒子発生装置100による帯電粒子の送出量が
最大である(帯電粒子発生装置100の運転モードが「急速モード」)にも関わらず、検出結果が基準値を上回ったかを判断する。(a)〜(c)のうちの少なくとも1つに該当する場合、処理はステップS210に進む(ステップS207においてYES)。一方、(a)〜(c)のいずれにも該当しない場合、処理はステップS208に進む(ステップS207においてNO)。
ステップS208において、制御装置204は、検出結果が基準値を上回る前よりも環境内への帯電粒子の送出量を増加させるように帯電粒子発生装置100を制御する。帯電粒子発生装置100の運転モードは、たとえば「フルパワーモード」または「急速モード」に定められる。また、ステップS209において、制御装置204は、空気調和機202の設定温度を温度T2に定める。
従来の空気調和システムでは、環境内の温度を温度T1まで低下させることによって微生物の活性を抑制する。一方、本発明の実施の形態に係る空気調和システム200によれば、帯電粒子の送出量を増加させることによって微生物を殺菌し減少させる。そのため、環境内の温度が温度T1よりも高い温度T2であっても、環境内の微生物の量が増加することはない。したがって、従来の空気調和システムと同様に、たとえば食品加工に適した衛生的な環境を実現することができる。
また、空気調和機202の設定温度を温度T1に代えて温度T2に定めることによって節約される電力は、帯電粒子発生装置100の消費電力の増加分よりも大きい。したがって、空気調和システム200全体としての消費電力を削減することができる。さらに、上述のように、低温の環境内で作業する作業者にとっては身体的負荷が大きい。空気調和システム200によれば、冷え過ぎを抑え、作業者の身体的負荷を軽減することができる。すなわち、より健康的な作業環境を実現することができる。
次に、ステップS210,S211においては、制御装置204は衛生的な環境を回復することを優先する。制御装置204は、帯電粒子の発生量が最大となるように帯電粒子発生装置100を制御する(ステップS210)とともに、空気調和機202の設定温度を温度T1に定める(ステップS211)。これにより、環境内の温度を低下させることによって微生物の活性を抑制するのに加えて、発生量が最大となった帯電粒子によって微生物を減少させることができる。なお、上記(a)〜(c)の条件は、衛生的な環境を回復することを優先する条件の例示であって、これらに限定されるものではない。
逆に、ステップS212,S213においては、制御装置204は空気調和システム200の消費電力を削減することを優先する。ステップS213において制御装置204は、検出結果が基準値を上回る前よりも環境内への帯電粒子の送出量を減少させるように帯電粒子発生装置100を制御する。帯電粒子発生装置100が運転中である場合には、帯電粒子発生装置100の運転モードは、たとえば「標準モード」または「弱モード」に定められる。あるいは、帯電粒子発生装置100を停止させることもできる。帯電粒子発生装置100がすでに停止されている場合には、その状態を維持する。また、ステップS212において制御装置204は、空気調和機202の設定温度を温度T2に定める。
その後も、制御装置204は、微生物検出装置500による検出結果が基準値以下の状態を維持できる範囲で、帯電粒子の送出量を減少させるように帯電粒子発生装置100を制御する。これにより、ステップS208,S209における処理と同様に、空気調和機202の消費電力を削減することができる。また、ステップS208,S209における処理よりも、帯電粒子発生装置100の消費電力を削減することができる。
上記ステップS209,S211,S213のうちのいずれかにおける処理が完了する
と、処理は再びステップS201に戻る。なお、ステップS208における処理とステップS209における処理とは順序を入替えてもよい。同様に、ステップS210における処理とステップS211における処理との間、およびステップS212における処理とS213における処理との間についても順序を入替えてもよい。
なお、以上の説明においては、空気調和機202の停止状態における設定温度として温度T1を定める。しかし、設定温度を定める方法はこれに限定されるものではない。たとえば、帯電粒子発生装置100の「弱モード」に対応する設定温度を温度T1としてもよい。
発明者らが実施した検証試験によれば、従来は工場内での作業環境における温度は15℃とされていた。本発明の実施の形態に係る空気調和システムによれば、温度を17℃に高めても、微生物の検出量は同等であった。したがって、衛生環境手法(HACCP)基準を満たす衛生的な環境が維持されることを実証できた。また、節電の観点からは、消費電力を約20%削減することができた。さらに、作業者の身体的負荷の観点から、労働衛生法では環境温度基準を事務所の場合で17℃〜28℃と定めている。作業場でも18℃〜24℃であれば問題がないと言われている。これらを考慮すると、作業環境における温度を15℃から17℃に上昇させることができることは、作業者の身体的負荷の観点からも大きな意味があると言える。
ちなみに、国は、東日本大震災の被害地内の食品加工業者に対して計画を策定し、「本計画における『高度衛生管理』とは、取り扱われる水産物の陸揚げから荷さばき、出荷に至る各工程において、(生物的、化学的または物理的)危害要因を分析・特定し、取り除くためのハードおよびソフト対策を総合的に講じるとともに、この取組の持続性を確保するための定期的な調査・点検の実施および記録の管理を行うことにより、消費者等からの要請に応じてこれらの情報の提供を可能とする体制の構築を目指す。」と定めている。本発明は、これらの計画を実現するとともに、省エネルギーをも可能にするものである。
なお、帯電粒子発生装置100は正イオンおよび負イオンの双方を発生させると説明した。しかし、帯電粒子発生装置は上記以外の構成であっても同様の効果を得ることができる。たとえば、帯電粒子発生装置には、正イオンの発生装置と、負極性の帯電微細水滴を発生させる液体霧化装置とを組み合わせて用いることができる。水を電気分解して得られる電解水を噴霧する電解水噴霧装置と放電装置とを組み合わせでもよい。
また、制御装置204が微生物検出装置500による検出結果に基づいて、空気調和機202および帯電粒子発生装置100を制御すると説明した。しかし、空気調和機202および帯電粒子発生装置100は、微生物検出装置500から検出結果を直接取得してもよい。また、空気調和機202は、帯電粒子発生装置100の運転モードに関する情報を帯電粒子発生装置100から直接受けてもよい。この場合には、帯電粒子発生装置100による検出結果および帯電粒子発生装置100の運転モードに基づいて、空気調和機202自身が設定温度を温度T1,T2に定める。
さらに、図1では、微生物検出装置500は工場建屋201の壁面に設置されると説明した。しかし、図11〜図15で説明したように、微生物検出装置500の構成は簡単である。そのため、微生物検出装置500は扱いやすく、小型化も可能である。したがって、微生物検出装置500は、たとえば空気調和機の内部に設けることもできる。また、本発明に係る空気調和システムをたとえば車両に搭載することもできる。
本発明の実施の形態は次のように要約することができる。
環境内の温度を設定温度に調節する空気調和機202と、放電により帯電粒子を発生さ
せて、帯電粒子を環境内に送出する帯電粒子発生装置100とを備え、帯電粒子の送出量が第1の送出量の場合における空気調和機202の設定温度として温度T1を定めるとともに、帯電粒子の送出量が第1の送出量よりも大きい第2の送出量である場合に、設定温度を温度T1よりも高い温度T2に定める、空気調和システム200。
上記構成によれば、帯電粒子発生装置100が発生させた帯電粒子の殺菌効果によって衛生的な環境を実現するとともに、環境内の温度を上昇させることができる。その結果、空気調和システム200の消費電力を削減することができる。
帯電粒子発生装置100の停止状態における空気調和機202の設定温度として温度T1を定める、空気調和システム200。
上記構成によれば、空気調和システム200の消費電力を一層削減することができる。
環境内における微生物の量を検出する微生物検出装置500をさらに備え、帯電粒子発生装置100は、微生物検出装置による検出結果を取得して、検出結果が所定の基準値を上回った場合には、環境内への帯電粒子の送出量を、検出結果が基準値を上回る前よりも増加させる、空気調和システム200。
上記構成によれば、環境内の微生物を一層急速に殺菌することができる。
微生物検出装置500による検出結果が基準値を上回った場合には、空気調和機202の設定温度を温度T1に定める、空気調和システム200。
上記構成によれば、環境内の微生物の活性を一層急速に抑制することができる。
空気調和機202および帯電粒子発生装置100を制御する制御装置204をさらに備え、制御装置204は、微生物検出装置500の検出結果に基づいて、空気調和機202および帯電粒子発生装置100を制御するとともに、検出結果が基準値以下となる状態が維持されるように、空気調和機202の設定温度および帯電粒子発生装置100から送出される帯電粒子の送出量のうちの少なくとも一方を調整する、空気調和システム200。
上記構成によれば、微生物の量を示す検出結果に基づいて、環境内の衛生状態に応じて適切に空気調和機202および帯電粒子発生装置100を制御することが可能になる。
微生物検出装置500は、微生物を捕集するテーブル510と、当該捕集した微生物を検出する受光部565と、テーブル510を微生物を捕集する前の状態に戻すブラシ580とを含む、空気調和システム200。
上記構成によれば、微生物検出装置500は、各構成要素による処理を順に実行することにより、繰返し微生物を検出することが可能になる。
空気調和システム200の空気調和方法であって、空気調和システム200は、環境内の温度を設定温度に調節する空気調和機202と、放電により帯電粒子を発生させて、帯電粒子を環境内に送出する帯電粒子発生装置100とを備え、空気調和方法は、帯電粒子発生装置100からの帯電粒子の送出量が第1の送出量の場合に、空気調和機202の設定温度を温度T1に定めるステップS204と、帯電粒子発生装置100からの帯電粒子の送出量が第1の送出量よりも大きい第2の送出量である場合に、空気調和機202の設定温度を温度T1よりも高い温度T2に定めるステップS203とを備える、空気調和方法。
上記方法によれば、帯電粒子発生装置が発生させた帯電粒子の殺菌効果によって衛生的な環境を実現するとともに、環境内の温度を上昇させることができる。その結果、空気調
和システム200の消費電力を削減することができる。
温度T1は、帯電粒子発生装置100の停止状態における空気調和機202の設定温度である、空気調和方法。
上記方法によれば、空気調和システム200の消費電力を一層削減することができる。
空気調和システム200は、環境内における微生物の量を検出する微生物検出装置500をさらに備え、微生物検出装置500による検出結果が所定の基準値を上回った場合には、環境内への帯電粒子の送出量を、検出結果が基準値を上回る前よりも増加させるステップS208,S210をさらに備える、空気調和方法。
上記方法によれば、環境内の微生物を一層急速に殺菌することができる。
空気調和方法は、微生物検出装置による検出結果が基準値を上回った場合には、設定温度を温度T1に定めるステップS211をさらに備える、空気調和方法。
上記方法によれば、環境内の微生物の活性を一層急速に抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。