以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
以下の実施例は、臨床検査分野において検体検査を自動的に行うことに適する検体検査システムに関し、特に検体を搬送するシステムに関する。
図1は、検体検査システムの一実施例の構成図である。検体検査システムは、前処理システムと、分析システムとを含み、前処理システムと分析システムとがバッファリング機構を介して接続されている。本例において、前処理システムでは、1個の検体容器が載せられたキャリアが搬送され、分析システムでは、5個の検体容器が載せられたキャリアが搬送される。すなわち、前処理が終了した検体容器は、前処理システム用のキャリアから抜き取られ、その後、分析システム用のキャリアに移載されることを想定している。
前処理システムは、複数の前処理機能ユニット11、12、13、14、15、16、17、18を備える。ここでは、1個の検体容器が載せられたキャリアが搬送され、検体容器内の検体に対して必要な前処理が実施される。前処理の具体的な例として、血清と血餅を分離する遠心分離処理、検体容器の栓を抜き取る開栓動作、血清部分を別容器に移し替える分注動作などが行われる。
前処理機能ユニット群11〜18の終端には、検体移載ユニット19が設けられている。検体移載ユニット19は、1本の検体容器を搬送するキャリアから、5本の検体容器を搬送するキャリアへの移し替え動作を行うものである。
図2は、検体移載ユニット19及びバッファリング機構1の構成を示す図である。前処理システム用のキャリアは、前処理用搬送ライン191によって検体抜取位置192まで搬送される。
図7は、検体移載ユニット19の動作を説明する図であり、検体容器の抜き取り動作を説明する図である。検体移載ユニット19は、検体移載用チャック機構112を有する検体移載機構111を備える。検体移載用チャック機構112は、検体容器を把持するための複数のアームを備えてよい。前処理システム用のキャリア121に搭載されて搬送されてきた検体容器131が、検体抜取位置192(図2参照)に到着すると、検体移載機構111が検体容器131の頭上に移動する。
次に、検体移載用チャック機構112が開き、検体移載機構111が下降する。検体移載機構111の下降が完了すると、検体移載用チャック機構112が、検体容器131を把持する。その後、検体移載機構111が上昇する。この動作によって、検体容器131が、前処理システム用のキャリア121から抜き取られることになる。
図8は、検体移載ユニット19の動作を説明する図であり、分析システム用のキャリアへの検体容器の設置動作を説明する図である。分析システム用のキャリア141は、定常的に、例えば、複数のキャリア設置列144a、144b、144c、144dに沿って整列されて待機している。
検体容器131を把持した状態の検体移載機構111は、キャリア設置列144a、144b、144c、144dの中の特定のキャリア141の上方へ移動する。検体移載機構111は、その位置で下降し、キャリア141の中の5つの設置位置の中の1つに検体容器131を設置する。その後、検体移載用チャック機構112が開き、検体移載機構111が上昇する。この動作によって、検体容器131が、分析システム用のキャリア141上に設置されることになる。
次に、図2に戻り、バッファリング機構1について説明する。バッファリング機構1は、前処理システムと分析システムとの間に配置され、複数のキャリア141を収容可能な構造を備える。5つの検体容器131が設置されたキャリア141は、キャリア設置列144a、144b、144c、144dの中のある位置からバッファリング機構1に搬送される。図示省略されているが、バッファリング機構1への移送には、公知の搬送機構(例えば、アームなど)が用いられてよい。
バッファリング機構1は、バッファローター102を備える。ここで、バッファローター102は、円盤状の形状を有しており、円の中心を軸として回転する構造を有する。また、バッファローター102は、分析システム用のキャリア141を収容するための複数のスロット103を備える。したがって、バッファリング機構1は、複数の検体容器131が搭載されたキャリア141を収容可能で、かつ、収容された順とは異なる任意の順でキャリア141を搬出することが可能である。複数のスロット103は、バッファローター102の円周に沿って等間隔で配置されている。分析システム用のキャリア141は、キャリア設置列144a、144b、144c、144dの中のある位置からバッファリング機構1のスロット103へ搬送される。
なお、図2のバッファローター102では、20個のスロット103が18度毎に等間隔で配置されている。図2の例では、20個のスロット103を有している構造が示されているが、スロット103の数はこれに限定されない。例えば、複数のスロット103が所定の間隔で配置されるのであれば、スロット103の数は20個よりも少なくてもよいし、20個より多くてもよい。
また、バッファリング機構1は、キャリア141の搬入方向(図2では、キャリア設置列144a、144b、144c、144dから搬送されるため、図面の左から右への方向)と直交する方向に、キャリア取り出し口101を備える。当然ながら、キャリア取り出し口101は、必ずしも上記搬入方向と直交して配置されている必要はなく、バッファローター102の円周軌道上でキャリア141を取り出せる位置であれば、どこの位置でも構わない。
バッファローター102からキャリア141を取り出す場合は、取出対象となるキャリア141が所定の取出位置まで移動するようにバッファローター102を回転させ、その後、取出位置まで移動したキャリア141が、公知の搬送機構により搬送ライン2aに載せられる。
次に、分析システム及び分析システムへの搬送機構について説明する。図1に示すように、分析システムは、複数の分析装置20a、20b、20cを備える。図1の搬送機構は、バッファリング機構1から複数の分析装置20a、20b、20までを接続し、キャリア141を搬送することが可能な機構を備える。詳細には、バッファリング機構1と複数の分析装置20a、20b、20cとの間には、搬送ライン2a、2b、2c、2d、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cが設けられている。搬送方向変更機構3a、3b、3cは、回転軸を有する円盤上にベルトラインが配置された構造を有する。この構造により、搬送方向変更機構3a、3b、3cは、ベルトライン上に載ったキャリア141の搬送方向を90度変更し、搬送ライン2b、2d、2fへ搬送することが可能となる。
図4は、搬送ライン2a、2b、2c、2d、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cの構成を示す図である。ここで、バッファリング機構1と分析装置20aは、搬送ライン2a、2b、及び搬送方向変更機構3aによって接続されている。分析システム用のキャリア141は、搬送ライン2a上のベルトライン2a1、搬送方向変更機構3a上のベルトライン3a1、搬送ライン2b上のベルトライン2b1上を通って、分析装置20aに搬送されることになる。
同様に、バッファリング機構1と分析装置20bは、搬送ライン2a、2c、2d、及び搬送方向変更機構3a、3bによって接続されている。分析システム用のキャリア141は、搬送ライン2a上のベルトライン2a1、搬送方向変更機構3a上のベルトライン3a1、搬送ライン2c上のベルトライン2c1、搬送方向変更機構3b上のベルトライン3b1、搬送ライン2d上のベルトライン2d1上を通って、分析装置20bに搬送されることになる。
同様に、バッファリング機構1と分析装置20cは、搬送ライン2a、2c、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cによって接続されている。分析システム用のキャリア141は、搬送ライン2a上のベルトライン2a1、搬送方向変更機構3a上のベルトライン3a1、搬送ライン2c上のベルトライン2c1、搬送方向変更機構3b上のベルトライン3b1、搬送ライン2e上のベルトライン2e1、搬送方向変更機構3c上のベルトライン3c1、及び搬送ライン2f上のベルトライン2f1を通って、分析装置20cに搬送されることになる。
したがって、搬送ライン2a及び搬送方向変更機構3aは、全ての分析装置20a、20b、20cにおいて、共用の経路となる。一般的に、共用の経路が渋滞すると、全ての経路の渋滞が発生してしまうので、これを回避するように制御するのが好ましい。本実施例において、渋滞とは、共用の経路上に、キャリアが停滞し、後続のキャリアが追い越せない状態を意味する。
本実施例では、搬送ライン2a、2b、2c、2d、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cが、キャリア141を搬送中であるかを検知するためのキャリア検知部を備える。例えば、搬送ライン2aのベルトライン2a1に沿ってセンサ51、52が配置されている。一例として、センサ51、52は、ベルトライン2a1の始点及び終点に配置されている。センサ51、52での検知情報は、制御用コンピュータ10に送信される。制御用コンピュータ10は、センサ51、52からの情報を用いて、搬送ライン2a上にキャリア141が存在するかを判定することができる。なお、図4では、搬送ライン2aについてのみキャリア検知部を図示しているが、搬送ライン2b、2c、2d、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cについても同様のキャリア検知部が設けられている。
制御用コンピュータ10は、検体検査システムの構成要素の制御を行うものである。制御用コンピュータ10の制御対象は、図1の10aで示した範囲である。制御用コンピュータ10は、中央演算処理装置と、補助記憶装置と、主記憶装置とを備えてよい。例えば、中央演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ(又は演算部ともいう)で構成されている。例えば、補助記憶装置はハードディスクであり、主記憶装置はメモリである。制御用コンピュータ10で行われる制御処理は、それらの処理に対応するプログラムコードをメモリなどの記憶装置に格納し、プロセッサが各プログラムコードを実行することによって実現されてもよい。
なお、制御用コンピュータ10は、表示部及び入力部を備えてよい。入力部は、キーボード、ポインティングデバイス(マウスなど)などである。表示部は、ディスプレイ、プリンタなどである。オペレータは、入力部を用いて検体検査システムの各種設定を行ってもよい。また、オペレータは、表示部によって検体検査システムの設定内容を確認してもよい。
以下では、制御用コンピュータ10の処理の中で、キャリア141を分析装置20a、20b、20cへ搬送するときの制御について説明する。制御用コンピュータ10は、搬送ライン2a、2b、2c、2d、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3cから取得された経路渋滞情報及び複数の分析装置20a、20b、20cから取得された搬入可否情報を用いて、前記検体容器の搬送を制御する。
図3Aは、一実施例における経路渋滞情報を示す図であり、図3Bは、一実施例における搬入可否情報を示す図である。制御用コンピュータ10の記憶装置(例えば、ハードディスクなど)は、経路渋滞情報及び搬入可否情報を格納している。
経路渋滞情報は、各分析装置20a、20b、20cへの搬送経路上の渋滞に関する情報である。この経路渋滞情報は、それぞれの分析装置20a、20b、20cへの搬送経路上のキャリアの数の総和で定義する。この経路渋滞情報により、渋滞の有無を監視することができる。なお、以降の説明では、記載を簡単にするために、分析装置20a、20b、20cを、それぞれ、分析装置1、2、3と表現する。
経路渋滞情報211は、分析装置1への搬送経路上の渋滞に関する情報である。経路渋滞情報211は、搬送ライン2a、2b、及び搬送方向変更機構3a上のキャリア141の総和を示す。
経路渋滞情報212は、分析装置2への搬送経路上の渋滞に関する情報である。経路渋滞情報212は、搬送ライン2a、2c、2d、及び搬送方向変更機構3a、3b上のキャリア141の総和を示す。
経路渋滞情報213は、分析装置3への搬送経路上の渋滞に関する情報である。経路渋滞情報213は、搬送ライン2a、2c、2e、2f、及び搬送方向変更機構3a、3b、3c上のキャリア141の総和を示す。
経路渋滞情報211、212、213は、対象となる搬送経路上にキャリア141が存在する場合には、その数を示し、対象となる搬送経路上にキャリア141が存在しない場合には0となる。
例えば、ある時点において、キャリア141が搬送ライン2a上で搬送されている場合、経路渋滞情報211、212、213は、1以上の数値になる。別の例として、ある時点において、キャリア141が搬送方向変更機構3b上にだけ存在する場合、経路渋滞情報211、212、213は、それぞれ、0、1、1となる。つまり、経路渋滞情報211、212、213が1以上の数となる場合、その経路では渋滞が生じることを意味する。
各分析装置1、2、3の搬送経路は、各分析装置1、2、3の専用経路と共用経路の組み合わせで実現できる。例えば、分析装置1の搬送経路の場合、搬送ライン2bは専用経路であり、搬送ライン2a及び搬送方向変更機構3aは共用経路である。専用経路において渋滞が生じても、共用経路の渋滞が生じなければ、後続のキャリア141の搬送が実現できることになる。言い換えれば、共用経路上でキャリア141を停滞させないように制御することで、全体の渋滞を抑制することにつながる。
分析装置1、2、3は、生化学検査項目や免疫検査項目の測定を実施できる自動分析装置を想定している。これらの自動分析装置は、キャリア141を受け取ると、キャリア141上の検体容器131に貼り付けられた検体バーコード132を読み取り、分析すべき項目を決定する。自動分析装置は、読み取られた情報に基づいて、分注、測定といった処理を行う。
但し、一般的な分析装置であれば、項目の測定をするためには、添加すべき試薬の残量不足により、分析出来なかったりすることもある。それ以外にも、分析装置が何らかの理由で分析可能な状態でない場合がある。このため、分析装置1、2、3は、分析装置が分析可能な状態であることを報告するための通信部を備える。詳細には、分析装置1、2、3は、搬入可否情報報告用信号ケーブル20a1、20b1、20c1を経由して、分析可能な状態かを搬送ライン2b、2d、2fに報告している。これらの分析装置1、2、3へ搬入可能かどうかの情報は、搬送ライン2b、2d、2fを介して制御用コンピュータ10に報告される。
図3Bの搬入可否情報は、各分析装置1、2、3に対してキャリアを搬入可能であるか(すなわち、各分析装置1、2、3が分析可能な状態であるか)を示す情報である。
搬入可否情報221は、分析装置1への搬入が可能であるかを示す情報である。搬入可否情報222は、分析装置2への搬入が可能であるかを示す情報である。搬入可否情報223は、分析装置3への搬入が可能であるかを示す情報である。
制御用コンピュータ10は、2つの情報(経路渋滞情報、搬入可否情報)を用いて、キャリア141の搬送を制御する。制御用コンピュータ10は、分析装置1、2、3への経路が渋滞しておらず、かつ、分析装置1、2、3へキャリア141を搬入可能であるとき、当該分析装置が搬送先となるキャリア141の搬送を開始する。従来ではキャリアの渋滞の管理が行われておらず、渋滞している状態でキャリアを搬送して、余計な渋滞を招くおそれがあった。従来では、この渋滞により、他の分析装置への経路が妨げられる可能性があった。本実施例では、経路渋滞情報及び搬入可否情報を用いてキャリア141の搬送を行うことにより、渋滞なく分析装置にキャリアを搬送することが出来、迅速な検査を実施することが可能となる。
次に、バッファリング機構1から搬送するキャリアを選択する制御について説明する。図5Aは、一実施例におけるキャリア収容情報を示す図である。制御用コンピュータ10の記憶装置(例えば、ハードディスクなど)は、図5Aのキャリア収容情報を管理している。
キャリア収容情報は、バッファローター102の各スロット103に、どのような種別のキャリア141が格納され、どの程度時間が経過しているかを示す情報である。キャリア収容情報として、記憶装置には、格納位置31と、格納キュー種別32と、経過時間33とが関連づけて記録されている。
格納位置31は、バッファローター102上のキャリア141の位置を示す。例えば、バッファローター102上の20個のスロット103には、それぞれ数字が割り当てられており、格納位置31は、キャリア141が格納されているスロット103の数字を示す。
格納キュー種別32は、格納位置31に対応するスロット103に格納されたキャリア141の検体容器131がどの分析装置1、2、3に搬送されるべきかを示す情報である。格納キュー種別32は、検体容器131の検体バーコード132内に含まれる依頼情報から取得することができる。例えば、検体容器131の検体バーコード132は、前処理の前段階(例えば、検体容器131の投入部)で所定の読取装置によって読み取られる。読み取られた情報は、制御用コンピュータ10に送信される。制御用コンピュータ10は、バッファローター102上に配置されたスロット103にキャリア141を収容する時点で、そのキャリア141がどの分析装置に搬送すべきかの情報を、依頼情報から決定する。依頼情報によっては、ある特定の分析装置でしか分析できない場合もあれば、どの分析装置で分析してもよいものも存在する。したがって、格納キュー種別32では、「共用」という情報が管理される。「共用」とは、対応するキャリア141が分析装置1、2、3のどの分析装置に搬送されてもよいことを示す。また、格納キュー種別32において、「緊急」とは、対応するキャリア141が「一般」に比べて優先的に分析装置1、2、3に搬送されるべきことを示す。このように、検体に関しては、一般のものと、緊急のものが存在し、搭載された検体容器131上の検体の優先度に応じてキャリア141の搬送順序が決定される。
経過時間33は、キャリア141がスロット103に収容された時点からの経過時間を示す。経過時間33に関して、キャリア141をスロット103に収容した時点を0として定義する。これ以降、時間経過とともに、制御用コンピュータ10は、経過時間33を更新していくことになる。これにより、制御用コンピュータ10は、キャリア141がスロット103に収容されてからの待機時間を管理することができる。
図5Bは、図5Aのキャリア収容情報から作成されるキュー情報を示す。制御用コンピュータ10は、キャリア収容情報から、論理的な搬送先キュー情報34を定義することができる。搬送先キュー情報34では、図5Aの格納キュー種別32ごとにキューが管理されている。図5B内の数字は、図5Aの格納位置31の数字に対応する。例えば、「分析装置1一般」の場合、格納位置1、7、14の順にキャリア141が搬送されることになる。この搬送順は、図5Aの経過時間33の大きさによって決まる。制御用コンピュータ10は、バッファリング機構1にキャリア141が収容された時点からの経過時間が最も長いキャリア141から搬送を開始してもよい。
図6Aは、分析装置1へのキャリア141の搬送順序を決定するフローチャートである。まず、制御用コンピュータ10が、分析装置1の搬入可否情報221を確認する。(ステップ600)。搬入可否情報221の情報が「不可」である場合、制御用コンピュータ10は、キャリアの搬送を実施しない。
搬入可否情報221の情報が「可」である場合、制御用コンピュータ10が、分析装置1の経路渋滞情報211を確認する(ステップ601)。経路渋滞情報211が1以上である場合、制御用コンピュータ10は、キャリアの搬送を実施しない。
経路渋滞情報211が0である場合、制御用コンピュータ10が、共用緊急キュー34hにキャリアが存在するかを確認する(ステップ602)。共用緊急キュー34hにキャリアが存在する場合、ステップ603に進む。一方、共用緊急キュー34hにキャリアが存在しない場合、ステップ607に進む。
ここでは、まず、ステップ603に進んだ場合を説明する。共用緊急キュー34hにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在するかを確認する(ステップ603)。分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在しない場合、制御用コンピュータ10は、共用緊急キュー34hの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ606)。
分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、共用緊急キュー34hの先頭のキャリアの経過時間33と、分析装置1緊急キュー34dの先頭のキャリアの経過時間33とを比較する(ステップ604)。分析装置1緊急キュー34dの先頭のキャリアの経過時間33の方が長い場合、制御用コンピュータ10は、分析装置1緊急キュー34dの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ605)。一方、共用緊急キュー34hの先頭のキャリアの経過時間33の方が長い場合、制御用コンピュータ10は、共用緊急キュー34hの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ606)。
次に、ステップ607に進んだ場合について説明する。制御用コンピュータ10が、分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在するかを確認する(ステップ607)。分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、分析装置1緊急キュー34dの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ608)。分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在しない場合、ステップ609へ進む。
分析装置1緊急キュー34dにキャリアが存在しない場合、制御用コンピュータ10が、共用一般キュー34gにキャリアが存在するかを確認する(ステップ609)。共用一般キュー34gにキャリアが存在する場合、ステップ610に進む。一方、共用一般キュー34gにキャリアが存在しない場合、ステップ614に進む。
共用一般キュー34gにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在するかを確認する(ステップ610)。分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在しない場合、制御用コンピュータ10は、共用一般キュー34gの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ613)。
一方、分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、共用一般キュー34gの先頭のキャリアの経過時間33と、分析装置1一般キュー34aの先頭のキャリアの経過時間33とを比較する(ステップ611)。分析装置1一般キュー34aの先頭のキャリアの経過時間33の方が長い場合、制御用コンピュータ10は、分析装置1一般キュー34aの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ612)。一方、共用一般キュー34gの先頭のキャリアの経過時間33の方が長い場合、制御用コンピュータ10は、共用一般キュー34gの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ613)。
次に、ステップ614に進んだ場合について説明する。制御用コンピュータ10が、分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在するかを確認する(ステップ614)。分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在する場合、制御用コンピュータ10が、分析装置1一般キュー34aの先頭のキャリアを分析装置1に搬送するように制御する(ステップ615)。一方、分析装置1一般キュー34aにキャリアが存在しない場合、制御用コンピュータ10は、キャリアの搬送を実施しない。
上記の例では、まず、搬入可否情報221及び経路渋滞情報211を用いて、分析装置1への搬送が可能であるかが判断される。キャリアの搬送が可能な場合、優先度が高い(緊急の)キャリアから搬送が開始される。共用緊急キュー34h及び分析装置1緊急キュー34dの両方にキャリアが存在する場合(優先度が同じキャリアが存在する場合)、経過時間33の長い方、つまり、バッファリング機構1に先に収納されたものから搬送を開始する。また、共用一般キュー34g及び分析装置1一般キュー34aの両方にキャリアが存在する場合でも、経過時間33の長い方、つまり、バッファリング機構1に先に収納されたものから搬送を開始する。このように、優先度が同じ場合では、経過時間が長いキャリアを搬送するため、経過時間が長くなると問題が生じる検体の場合に有効である。
図6Bは、分析装置2へのキャリア141の搬送順序を決定するフローチャートであり、図6Cは、分析装置3へのキャリア141の搬送順序を決定するフローチャートである。図6Aと同様の処理を分析装置2及び分析装置3に対しても行う。図6Bのステップ620〜635、図6Cのステップ640〜655は、キャリア141の搬送先が分析装置2、3であることが図6Aと異なるだけであり、図6Aのステップ600〜615と同様の処理を示している。したがって、図6B及び図6Cの詳細な説明を省略する。
上述したように、制御用コンピュータ10は、搬送先キュー情報34をもとに、バッファローター102に収容されている複数のキャリアをランダムに取り出して、搬送ラインへ送るように制御するため、バッファローター102は、上述のように円盤形状が好ましい。取出対象となるキャリア141を所定の取出位置まで移動するようにバッファローター102を回転するだけでよく、バッファローター102からのキャリア141の取り出しを効率的に行うことができる。
図9は、制御用コンピュータ10の表示部に表示される設定画面の一例である。バッファローター102でキャリア141が待機しているときに、場合によっては、分析装置1、2、3が使用不可能になる可能性がある。分析装置オフライン設定画面60では、該当の分析装置を使用不可能な状態に設定することが出来る。
分析装置1、2、3をオフラインにする場合、オペレータは、チェックボックス61にチェックを入れる。この時に、バッファローター102で待機しているキャリア141の中には、そのオフラインに設定した分析装置でしか測定出来ないものと、他の分析装置で測定できるものもある。
前者の場合は、オペレータは、キャリア取り出しオプション62を有効にしてもよい。この場合、制御用コンピュータ10は、該当するキャリア141をキャリア取り出し口101から順次搬出するように制御する。
また、後者の場合は、オペレータは、他の分析装置への割り付けオプション63を有効にしてもよい。割り付けオプション63が有効にされた場合、制御用コンピュータ10は、図5Aのキャリア収容情報及び図5Bの搬送先キュー情報34を更新する。例えば、分析装置1一般キュー34aの中に他の分析装置に割り付けてもよいキャリアが存在したと想定する。この場合、制御用コンピュータ10は、該当するキャリアの搬送先を、分析装置2一般キュー34b又は分析装置3一般キュー34cに変更する。このとき、経過時間33の情報をそのまま用いることができるので、キャリア141がスロット103に収容された順番が狂うこともなく、制御できるようになる。上述の構成によれば、使用不可能になった分析装置の代替えとして、他の分析装置によって分析が可能となる。
なお、本実施例では、バッファリング機構1の右側に搬送ライン2aを接続するような構造で示したが、バッファローター102から放射状に複数の搬送ラインを配置し、バッファリング機構1と分析装置1、2、3とを接続してもよい。つまり、バッファローター102を中心としたスター型の配置として、後続するキャリアが前に搬送されているキャリアによって、搬送の妨げにならない構造にしてもよい。当然この構造となった場合でも、前述されたキュー管理の制御方法を用いることが可能なため、分析装置1、2、3の故障に伴う経路の変更なども実現することが出来る。さらに、バッファローター102も、搬入順と搬出順をランダムに制御することが出来る構造であればよいので、必ずしも円盤状のバッファローター102の形態である必要性はない。
以上、本発明の一実施例を説明したが、上述した実施例の特徴的な構成は以下の通りである。前処理システムの終端に、バッファリング機構1を配置し、バッファリング機構1と複数の分析装置1、2、3との間を搬送ライン2a〜2f及び搬送方向変更機構3a〜3cによって接続させる。バッファリング機構1は、複数の検体容器131が搭載されたキャリア141を収容可能で、かつ、収容された順とは異なる任意の順でキャリア141を搬出することが可能な構造を備える。具体的には、バッファリング機構1は、緊急用の検体容器131が先に収容された一般の検体容器131を追い越し可能な構造を備える。
バッファリング機構1内に一旦収容したキャリア141は、分析装置1、2、3への経路が渋滞しておらず、かつ、分析装置1、2、3が分析可能になった時点で搬送される。この制御は、制御用コンピュータ10によって行われる。
バッファリング機構1内にキャリア141が収容された時点で、制御用コンピュータ10は、検体の依頼情報から搬送先となる分析装置1、2、3を決定する。制御用コンピュータ10は、複数の分析装置1、2、3で測定が可能な検体と、特定の分析装置1、2、3でしか測定が出来ない検体とを区別し、更に検体の優先度に応じてキャリア141の搬送順を決定する。制御用コンピュータ10は、分析装置1、2、3への経路にキャリア141が存在しておらず、かつ、分析装置1、2、3が分析可能な状態に遷移したことを検知したら、前述の搬送順に従ってキャリア141を分析装置1、2、3に搬送する。また、オペレータの入力による搬送先の分析装置1、2、3オフライン設定が可能である。制御用コンピュータ10は、特定の分析装置1、2、3に対してオフラインが設定されると、前述した搬送順を再度作り直し、有効な分析装置だけでの搬送順を作成する。
上述した実施例の効果について説明する。従来では、搬送ラインと分析装置の処理能力の差から検体容器の渋滞が生じるという課題のために、分析装置の前段に、検体容器をバッファリング可能なバッファリング機構が設けられていた。しかし、現実には、分析装置において、各測定項目のための試薬などの消耗品の補充や、測定項目の安定性を図るための精度管理試料の測定等、定常的な運転時間中にも実際の検体の測定を中断せざるを得ない場合が多い。もちろん、こういった時間帯においても、バッファリング機構が機能し、分析不可能な間だけ検体容器をバッファリングすることができるが、分析装置がそのまま分析可能な状態にならない場合もあり得る。この場合、一旦検体容器をバッファリング機構から取り出し、分析可能な他の分析装置に手動で搬送し直す煩わしさが伴う。もちろん、これらの検体容器を自動で別の分析装置に搬送する機構を構築することは可能ではあるが、これを実現することになると、複数の分析装置間を接続する搬送ライン上を検体容器が双方向に搬送できる構成が必要となる。したがって、供給する検体容器と迂回する検体容器との衝突を回避するような非常に複雑な機構が必要となってしまう。
また、複数の分析装置を接続した場合、迅速な測定結果を得たいがため、測定状況を鑑みて、忙しくない分析装置に検体を供給したいのだが、分析装置前のバッファリング機構に検体容器を収容させると、最適な経路を選択したとは言い難く、最終的な処理時間の短縮などには繋がらない。また、搬送される検体というのは患者から採取されたものであるため、緊急度がある。当然優先しなければならない検体もあれば、時間をかけても問題のない検体も存在する。したがって、検体検査システムにおいて、なんらかの手段を用いて緊急性の高い検体を優先的に搬送し、早急に分析装置に対して検体を供給することが望まれる。
上述の課題に対して、本実施例によれば、分析装置への経路上の渋滞を考慮しつつ、分析装置の稼働状況に応じて検体容器の供給が可能となり、分析装置の空き時間を最小限にしながらも、分析を継続することが可能となる。つまり、分析装置が必要とするときに、タイムリーに検体容器を供給することが可能になるため、TAT(Turn Around Time)の低下を招くことなく、分析を継続することが出来るようになる。その結果として、すべての検体の処理が完了する時間を短縮することが可能となる。
また、不稼働状態となった分析装置の動的な切り離しによる、迂回経路の選択も可能となり、フレキシビリティが高い検体搬送システムを実現することが出来る。更に、検体の優先度が高い検体への着手も迅速に行え、検査業務の質の向上につながる。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
上述の実施例において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。