以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。なお、本発明における装置、器具、及び部品等の、個数、配置、向き、形状、及び大きさは、原則として、図面に示す個数、配置、向き、形状、及び大きさに限定されない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の熱媒体循環システムを示す構成図である。図1に示す実施の形態1の熱媒体循環システム1は、ヒートポンプ式給湯暖房システムである。熱媒体循環システム1は、ヒートポンプ装置100と、タンクユニット200と、制御装置10とを備える。ヒートポンプ装置100とタンクユニット200との間は、出口導管3、入口導管9、及び電気配線(図示省略)を介して接続される。実施の形態1の熱媒体循環システム1は、ヒートポンプ装置100とタンクユニット200とが分かれた構成である。この構成に限らず、ヒートポンプ装置100とタンクユニット200とが一体化していてもよい。
実施の形態1のヒートポンプ装置100は、熱媒体を加熱する加熱手段の例である。ヒートポンプ装置100は、冷媒を圧縮する圧縮機13と、水−冷媒熱交換器15と、冷媒を減圧させる減圧装置16と、冷媒を蒸発させる蒸発器17と、これらの機器を環状に接続する冷媒配管14とを含む冷媒回路を備える。ヒートポンプ装置100は、この冷媒回路でヒートポンプサイクルすなわち冷凍サイクルの運転を行うことで、熱媒体である水を加熱する。ヒートポンプ装置100は、圧縮機13で圧縮された高温高圧の冷媒と、水とを、水−冷媒熱交換器15にて熱交換させることで、水を加熱する。圧縮機13の運転を開始することでヒートポンプ装置100が起動する。圧縮機13の運転を停止することでヒートポンプ装置100が停止する。蒸発器17で冷媒と熱交換する流体は、例えば、外気、地下水、排水、太陽熱温水などでもよい。ヒートポンプ装置100は、当該流体を蒸発器17へ送る図示しない送風機、ポンプ等を備えてもよい。
本発明における加熱手段は、上述したヒートポンプ装置に限定されるものではなく、いかなる方式のものでもよい。例えば、本発明における加熱手段は、燃料(例えばガス、灯油、重油、石炭など)の燃焼熱で加熱する燃焼式加熱装置でもよい。本発明における加熱手段は、複数の加熱装置を含んでもよい。例えば、本発明における加熱手段は、ヒートポンプ装置と、燃焼式加熱装置との双方を含んでもよい。また、実施の形態1における熱媒体は水であるが、本発明における熱媒体は、不凍液、ブラインなどの、水以外の液状の熱媒体でもよい。
タンクユニット200は、蓄熱槽2、切替弁6、及び循環ポンプ11を内蔵する。蓄熱槽2内には、水が貯留される。蓄熱槽2内では、温度の違いによる水の密度の差により、上側が高温で下側が低温になる温度成層を形成できる。蓄熱槽2の下部には、給水管18が接続される。水道等の水源から供給される水が給水管18を通って蓄熱槽2内に供給される。蓄熱槽2の上部には、給湯管19が接続される。外部へ給湯する際には、給水管18に作用する水源水圧により、蓄熱槽2内の湯が給湯管19へ送り出される。
蓄熱槽2は、出口25及び入口26を有する。蓄熱槽2の内部の水が出口25から出る。ヒートポンプ装置100で加熱された湯が入口26から蓄熱槽2の内部へ入る。出口25は、蓄熱槽2の下部にある。入口26は、蓄熱槽2の上部にある。切替弁6は、第一ポート6a、第二ポート6b、及び第三ポート6cを有する。切替弁6は、第三ポート6cを第一ポート6aに連通させて第二ポート6bを遮断する状態と、第三ポート6cを第二ポート6bに連通させて第一ポート6aを遮断する状態とに切り替え可能である。
下部管8は、蓄熱槽2の出口25と、入口導管9の上流端との間を接続する。入口導管9の下流端は、ヒートポンプ装置100の水−冷媒熱交換器15の水入口に接続される。入口導管9の途中に、循環ポンプ11が接続される。循環ポンプ11は、その出力あるいは回転速度が可変である。循環ポンプ11として、例えば、制御装置10からの速度指令電圧により出力あるいは回転速度を変えられるパルス幅変調制御型の直流モータを備えたものを好ましく用いることができる。実施の形態1では、循環ポンプ11をタンクユニット200に設置している。この構成に代えて、循環ポンプ11は、ヒートポンプ装置100に設置されてもよい。出口導管3は、ヒートポンプ装置100の水−冷媒熱交換器15の水出口と、切替弁6の第三ポート6cとの間を接続する。上部管4は、切替弁6の第一ポート6aと、蓄熱槽2の入口26との間を接続する。実施の形態1では、循環ポンプ11を入口導管9の途中に接続している。この構成に代えて、循環ポンプ11は、出口導管3の途中に接続されてもよい。
暖房設備12は、ヒートポンプ装置100及びタンクユニット200の外部に備えられる。暖房設備12は、1または複数の暖房器具24を備える。ヒートポンプ装置100で加熱された水を暖房器具24に流すことで、室内の空気の温度を上昇させる。暖房器具24としては、例えば、床下に設置される床暖房パネル、室内壁面に設置されるラジエータまたはパネルヒーター、及び、ファンコンベクターのうち、少なくとも一種を用いることができる。暖房設備12が複数の暖房器具24を備える場合、それらの種類は同じでもよいし異なっていてもよい。暖房設備12が複数の暖房器具24を有する場合、複数の暖房器具24の接続方法は、直列、並列、直列及び並列の組み合わせ、のいずれでもよい。
タンクユニット200と暖房設備12との間は、第一外部管22及び第二外部管23を介して接続される。タンクユニット200は、出口27及び入口28を有する。タンクユニット200から暖房設備12へ供給される水は、出口27からタンクユニット200外へ出る。第一内部管5は、タンクユニット200の内部で、切替弁6の第二ポート6bと、出口27との間を接続する。第一外部管22の上流端は、タンクユニット200の外側から出口27に接続される。第一外部管22の下流端は、暖房設備12の入口に接続される。第二外部管23の上流端は、暖房設備12の出口に接続される。第二外部管23の下流端は、タンクユニット200の外側から入口28に接続される。第二内部管7は、タンクユニット200の内部で、入口28と、入口導管9の上流端との間を接続する。暖房設備12からタンクユニット200へ戻る水は、入口28からタンクユニット200内へ入る。
タンクユニット200は、制御装置10を内蔵する。制御装置10とリモートコントローラ21とは、無線または有線により、双方向にデータ通信可能に接続されている。リモートコントローラ21は、熱媒体循環システム1が備えるユーザーインターフェースの例である。リモートコントローラ21は、暖房器具24が備えられた室内に設置されてもよい。リモートコントローラ21は、それ以外の場所に設置されてもよい。ユーザーは、リモートコントローラ21から、熱媒体循環システム1の運転に関する指令及び設定値の変更などを入力できる。熱媒体循環システム1が備えるアクチュエータ類及びセンサ類は、制御装置10に電気的に接続される。制御装置10は、センサ類の検知値及びリモートコントローラ21からの信号などに基づいて、熱媒体循環システム1の動作を制御する。
蓄熱槽2の表面には、複数の温度センサ(図示省略)が、鉛直方向に間隔をあけて、取り付けられている。制御装置10は、これらの温度センサにより、蓄熱槽2内の鉛直方向の温度分布を検知することで、蓄熱槽2内の貯湯量、蓄熱量、残湯量等を算出できる。
出口導管3には、流量センサ30及び供給温度センサ31が設けられている。流量センサ30は、出口導管3を通る水の流量を検知する。供給温度センサ31は、ヒートポンプ装置100から流出する水の温度を検知する。供給温度センサ31により、ヒートポンプ装置100で加熱された水の温度を検知できる。ヒートポンプ装置100で加熱された水の温度を以下「ヒートポンプ加熱温度」とも呼ぶ。実施の形態1では、流量センサ30及び供給温度センサ31をタンクユニット200に設置している。この構成に代えて、流量センサ30及び供給温度センサ31をヒートポンプ装置100に設置してもよい。
入口導管9には、戻り温度センサ32が設けられている。戻り温度センサ32は、ヒートポンプ装置100に流入する水の温度を検知する。ヒートポンプ装置100に流入する水の温度を以下「ヒートポンプ戻り温度」とも呼ぶ。実施の形態1では、戻り温度センサ32をタンクユニット200に設置している。この構成に代えて、戻り温度センサ32をヒートポンプ装置100に設置してもよい。
ヒートポンプ装置100は、加熱能力[kW]が可変であることが望ましい。加熱能力とは、単位時間当たりにヒートポンプ装置100が熱媒体に与える熱量である。制御装置10は、例えば、ヒートポンプ装置100の圧縮機13の容量を変えることで、ヒートポンプ装置100の加熱能力を制御できる。制御装置10は、例えば、圧縮機13の回転速度を変えることで、圧縮機13の容量を制御できる。制御装置10は、例えば、インバータ制御により、圧縮機13の回転速度を変えることができる。
次に、熱媒体循環システム1の蓄熱運転について説明する。蓄熱運転は、以下のような運転である。切替弁6は、第三ポート6cを第一ポート6aに連通させ、かつ、第二ポート6bを遮断する状態に制御される。ヒートポンプ装置100及び循環ポンプ11が運転される。蓄熱運転では、蓄熱槽2の下部の低温水が、出口25、下部管8、及び入口導管9を通り、ヒートポンプ装置100の水−冷媒熱交換器15に送られる。そして、水−冷媒熱交換器15で加熱されることで高温になった水が、出口導管3、切替弁6の第三ポート6c、第一ポート6a、上部管4、及び、入口26を通り、蓄熱槽2の上部に流入する。蓄熱運転では、上記のように水が循環することで、蓄熱槽2の内部に上から下に向かって高温水が貯えられていく。これにより、蓄熱槽2の蓄熱量が増加する。上述した蓄熱運転時の水の循環回路を「蓄熱回路」と称する。
制御装置10は、蓄熱槽2内の残湯量または蓄熱量が、予め設定された低レベル以下になった場合に、蓄熱運転を開始してもよい。蓄熱運転により、蓄熱槽2内の貯湯量及び蓄熱量が増加して、予め設定された高レベルに達した場合に、制御装置10は、蓄熱運転を終了してもよい。
蓄熱運転のとき、制御装置10は、以下のようにして、供給温度センサ31で検知されるヒートポンプ加熱温度が、目標値に等しくなるように制御してもよい。制御装置10は、循環ポンプ11の出力または回転速度を増減すること、すなわち水の循環流量を増減することで、ヒートポンプ加熱温度を制御できる。ヒートポンプ加熱温度が目標値より高い場合には、制御装置10は、水の循環流量を増加させることで、ヒートポンプ加熱温度を目標値まで低下させることができる。ヒートポンプ加熱温度が目標値より低い場合には、制御装置10は、水の循環流量を低下させることで、ヒートポンプ加熱温度を目標値まで上昇させることができる。制御装置10は、ヒートポンプ装置100の冷媒回路の動作を調整することで、ヒートポンプ加熱温度を制御してもよい。蓄熱運転のときのヒートポンプ加熱温度の目標値は、例えば、60℃から80℃程度の範囲の値でもよい。
図2は、実施の形態1におけるリモートコントローラ21の外観を示す図である。図2に示すように、本実施の形態におけるリモートコントローラ21は、表示部21a、第一操作部21b、第二操作部21c、スピーカ21d、及びマイク21eを備える。表示部21aは、熱媒体循環システム1の状態または設定内容などに関する情報を表示可能なディスプレイである。第一操作部21b及び第二操作部21cについては後述する。
次に、図3を参照して、熱媒体循環システム1の暖房運転について説明する。図3は、実施の形態1の熱媒体循環システム1の暖房運転時の水の循環回路を示す図である。図3中の矢印は、水が流れる方向を示す。暖房運転は、以下のような運転である。切替弁6は、第三ポート6cを第二ポート6bに連通させ、かつ、第一ポート6aを遮断する状態に制御される。ヒートポンプ装置100及び循環ポンプ11が運転される。暖房運転では、ヒートポンプ装置100の水−冷媒熱交換器15で加熱された水が、出口導管3、切替弁6の第三ポート6c、第二ポート6b、第一内部管5、出口27、及び、第一外部管22を通り、暖房設備12に送られる。この水は、暖房設備12の暖房器具24を通過する間に、室内空気または床などに熱を奪われることで、温度低下する。この温度低下した水は、第二外部管23、入口28、第二内部管7、及び、入口導管9を通り、ヒートポンプ装置100の水−冷媒熱交換器15に戻る。水−冷媒熱交換器15に戻った水は、再加熱され、再循環する。上述した暖房運転時の水の循環回路を「暖房回路」と称する。実施の形態1では、切替弁6により、蓄熱回路と暖房回路とを切り替え可能である。
暖房器具24が備えられた室内には、室温センサを備えた室内リモートコントローラ(図示省略)が設置されてもよい。室内リモートコントローラと、制御装置10とは、有線または無線により、双方向にデータ通信可能に接続される。室内リモートコントローラは、室温センサで検知された室温の情報を制御装置10へ送信できる。暖房器具24が備えられた室内に、前述したリモートコントローラ21が設置される場合には、リモートコントローラ21が室温センサを備え、室温情報をリモートコントローラ21が制御装置10へ送信してもよい。制御装置10は、室内リモートコントローラまたはリモートコントローラ21から受信した情報に基づき、室温が目標温度に達したときに、暖房運転を終了してもよい。
図4は、実施の形態1の熱媒体循環システム1の機能ブロック図である。図4では、熱媒体循環システム1が備える要素のうち、暖房運転に関係しない要素を省略している。図4に示すように、制御装置10は、暖房運転判定部10a、起動停止頻度判定部10b、及び循環流量制御部10cを備える。以下、実施の形態1の熱媒体循環システム1の暖房運転について、さらに説明する。
供給温度センサ31は、暖房回路におけるヒートポンプ装置100の下流側かつ暖房器具24の上流側の水の温度を検知できる。すなわち、供給温度センサ31は、ヒートポンプ装置100から暖房器具24への水の供給温度を検知できる。暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度と、暖房運転の目標供給温度との比較結果に応じて、ヒートポンプ装置100を起動する。例えば、暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度が、暖房運転の目標供給温度より低い場合に、ヒートポンプ装置100を起動してもよい。例えば、供給温度センサ31の検知温度が30℃、暖房運転の目標供給温度が50℃の場合に、暖房運転判定部10aは、ヒートポンプ装置100を起動してもよい。あるいは、暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度が、暖房運転の目標供給温度に比べて、所定温度差以上に低い場合に、ヒートポンプ装置100を起動してもよい。
暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度と、暖房運転の目標供給温度との比較結果に応じて、ヒートポンプ装置100を停止する。例えば、暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度が、暖房運転の目標供給温度より高い場合に、ヒートポンプ装置100を停止してもよい。例えば、供給温度センサ31の検知温度が51℃、暖房運転の目標供給温度が50℃の場合に、暖房運転判定部10aは、ヒートポンプ装置100を停止してもよい。あるいは、暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度が、暖房運転の目標供給温度に比べて、所定温度差以上に高い場合に、ヒートポンプ装置100を停止してもよい。
暖房運転判定部10aは、ヒートポンプ装置100を停止した場合に、循環ポンプ11の運転を継続してもよい。暖房運転判定部10aは、ヒートポンプ装置100を停止した後、循環ポンプ11の運転を停止してもよい。循環ポンプ11の運転を停止した場合には、暖房運転判定部10aは、ヒートポンプ装置100を再起動するときに、循環ポンプ11を再起動する。
暖房運転判定部10aは、室内リモートコントローラまたはリモートコントローラ21から受信した室温などの情報に基づいて、暖房運転の目標供給温度を変更してもよい。暖房運転判定部10aは、室温が低いほど、暖房運転の目標供給温度を高くしてもよい。
なお、本実施の形態における暖房運転判定部10aは、供給温度センサ31の検知温度に応じてヒートポンプ装置100の起動及び停止を制御する第一制御手段に相当する。
制御装置10は、例えば暖房運転の目標供給温度が高い場合など、暖房負荷が高い場合にはヒートポンプ装置100の加熱能力を高くしてもよい。制御装置10は、例えば暖房運転の目標供給温度が低い場合など、暖房負荷が低い場合にはヒートポンプ装置100の加熱能力を低くしてもよい。
起動停止頻度判定部10bは、暖房運転におけるヒートポンプ装置100の起動及び停止の頻度(以下、「起動停止頻度」とも呼ぶ)が高いか低いかを判定する。ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高いと、圧縮機13の起動及び停止の回数が増加することで、ヒートポンプ装置100の寿命、特に圧縮機13の寿命が低下する可能性がある。本実施の形態における起動停止頻度判定部10bは、現在から過去所定時間以内(例えば、過去30分以内)の期間にヒートポンプ装置100が起動及び停止した回数をカウントする。起動停止頻度判定部10bは、そのカウントした回数を、閾値となる回数と比較することで、起動停止頻度の高低を判定する。当該閾値は、例えば、3回でもよい。本明細書において、ヒートポンプ装置100が起動及び停止した回数とは、ヒートポンプ装置100の起動から停止までを1回と数えるものとする。ヒートポンプ装置100が起動及び停止した回数を以下「ヒートポンプ装置100の起動停止回数」と称する。なお、起動停止頻度判定部10bは、他の方法で起動停止頻度の高低を判定してもよい。例えば、起動停止頻度判定部10bは、ヒートポンプ装置100の起動から停止までの時間を、直近の所定回数について算術平均した平均時間が長い場合には起動停止頻度が低いと判定し、当該平均時間が短い場合には起動停止頻度が高いと判定してもよい。
循環流量制御部10cは、暖房回路における水の循環流量を制御する。暖房回路における水の循環流量を以下「暖房循環流量」と称する。循環流量制御部10cは、循環ポンプ11の出力または回転速度を制御することで、暖房循環流量を制御できる。本実施の形態における循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の運転中には暖房循環流量が一定になるように制御する。循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の停止中に、暖房循環流量を変更する。ヒートポンプ装置100の運転中に暖房循環流量が変わると、ヒートポンプ装置100から暖房器具24への水の供給温度が変動しやすい。このため、ヒートポンプ装置100の運転中に暖房循環流量を変えると、ヒートポンプ装置100から暖房器具24への水の供給温度を制御することが困難になる可能性がある。これに対し、本実施の形態であれば、ヒートポンプ装置100の運転中には暖房循環流量が一定になるように制御することで、ヒートポンプ装置100から暖房器具24への水の供給温度を良好に制御できる。
循環流量制御部10cは、流量センサ30で検知される暖房循環流量が目標循環流量に等しくなるように、循環ポンプ11の出力または回転速度を制御してもよい。本実施の形態における循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の運転中には目標循環流量を変更せず、ヒートポンプ装置100の停止中にのみ目標循環流量を変更する。これにより、本実施の形態であれば、ヒートポンプ装置100の運転中に暖房循環流量が変動することを抑制できる。
本実施の形態における循環流量制御部10cは、起動停止頻度判定部10bで判定された起動停止頻度の高低に応じて、目標循環流量を変更することで、暖房循環流量を制御する。
本実施の形態における循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準に比べて高い場合には、暖房循環流量を増加させる。これにより、以下の効果が得られる。ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高いことは、供給温度センサ31で検知されるヒートポンプ加熱温度が暖房運転の目標供給温度を超える事態の発生頻度が高いことを意味する。暖房循環流量が低いと、水が水−冷媒熱交換器15の通過に要する時間、すなわち水が水−冷媒熱交換器15で加熱される時間が長くなる。例えば暖房運転の目標供給温度が低い場合など、暖房負荷が低い場合において、暖房循環流量が低すぎると、水が水−冷媒熱交換器15で長い時間加熱されることで、ヒートポンプ加熱温度が暖房運転の目標供給温度を超える事態の発生頻度が高くなる場合がある。このように、暖房循環流量が低すぎることが原因で、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高くなっていると考えられる。この場合に、暖房循環流量を増加させることで、水が水−冷媒熱交換器15で加熱される時間が短くなる結果、ヒートポンプ加熱温度が暖房運転の目標供給温度を超える事態の発生頻度を低下させること、すなわちヒートポンプ装置100の起動停止頻度を低下させることが可能となる。本実施の形態であれば、このようにして、暖房運転のときにヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高くなりすぎることを抑制できる。このため、ヒートポンプ装置100の寿命低下を抑制できる。
暖房循環流量を高くすると、ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が小さくなる。この温度差が小さいと、暖房運転の効率が低くなる可能性がある。本実施の形態であれば、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準に比べて高くない場合には、暖房循環流量を増加させないので、暖房運転の効率の低下を抑制できる。
本実施の形態における循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が、第一基準より低い第二基準に比べて低い場合には、暖房循環流量を低下させる。これにより、以下の効果が得られる。ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が低いことは、ヒートポンプ加熱温度が暖房運転の目標供給温度を超える事態の発生頻度が低いことを意味する。暖房循環流量が高いと、水が水−冷媒熱交換器15の通過に要する時間、すなわち水が水−冷媒熱交換器15で加熱される時間が短くなる。暖房循環流量が高いと、水−冷媒熱交換器15での熱交換効率が低下する可能性がある。例えば暖房運転の目標供給温度が高い場合など、暖房負荷が高い場合において、暖房循環流量が高すぎると、水が水−冷媒熱交換器15で加熱される時間が短いことで、ヒートポンプ加熱温度が低くなりやすい。その結果、ヒートポンプ加熱温度が暖房運転の目標供給温度を超える事態の発生頻度が低くなる場合がある。ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が低いときには、暖房循環流量が高すぎる状態になっていると考えられる。暖房循環流量が高すぎると、ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が小さくなる。この温度差が小さすぎると、暖房運転の効率が低くなる。本実施の形態であれば、このような場合に、暖房循環流量を低下させることで、ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が拡大する結果、暖房運転の効率を向上できる。
図5は、実施の形態1の熱媒体循環システム1の暖房運転において制御装置10が実施する処理を示すフローチャートである。制御装置10は、ヒートポンプ装置100を再起動する場合に図5に示すフローチャートの処理を実行する。例えば、供給温度センサ31の検知温度と暖房運転の目標供給温度との比較結果に応じて暖房運転判定部10aがヒートポンプ装置100を停止した後、供給温度センサ31の検知温度が暖房運転の目標供給温度より低くなることでヒートポンプ装置100の再起動が必要になったときに、制御装置10が図5に示すフローチャートの処理を実行してもよい。
図5のステップS1で、起動停止頻度判定部10bは、現在から過去所定時間以内(例えば、過去30分以内)の期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数を、第一閾値と比較する。第一閾値は、例えば、3回でもよい。当該期間を以下の説明では「頻度判定期間」と称する。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第一閾値以上である場合には、ステップS1からステップS2へ移行する。これに対し、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第一閾値未満である場合には、ステップS1からステップS3へ移行する。なお、ステップS1で、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第一閾値以上であることは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準に比べて高いことに相当する。例として、第一閾値が3回であるとすると、以下のようになる。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が2回以下のときに、ステップS1からステップS3へ移行する。
ステップS2で、循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の再起動後の目標循環流量を、ヒートポンプ装置100の前回運転時の目標循環流量に比べて、1L/min高い値に設定する。循環流量制御部10cは、当該設定された目標循環流量に対して、流量センサ30で検知する循環流量が等しくなるように、循環ポンプ11を制御する。ステップS2の処理は、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準に比べて高い場合に、暖房循環流量を増加させることに相当する。ステップS2の処理は、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準に比べて高い場合に、ヒートポンプ装置100の停止前の暖房循環流量に比べて、ヒートポンプ装置100の再起動後の暖房循環流量を高くすることに相当する。ステップS2の処理によれば、ヒートポンプ加熱温度が抑制されることで、暖房運転のときにヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高くなりすぎることを抑制できる。このため、ヒートポンプ装置100の寿命低下を抑制できる。ステップS2の処理の後、本ルーチンを終了する。
ステップS3で、起動停止頻度判定部10bは、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数を第二閾値と比較する。第二閾値は、第一閾値より小さい値である。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第二閾値以下である場合には、ステップS3からステップS4へ移行する。
ステップS3で、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第二閾値以下であることは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が、第一基準より低い第二基準に比べて低いことに相当する。
第二閾値は、例えば、0回でもよい。前回のヒートポンプ装置100の運転開始時期が頻度判定期間より前である場合には、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動回数が0回であるので、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数は0回となる。例として、現在から過去30分以内の期間を頻度判定期間とし、1時間前にヒートポンプ装置100が起動した後、ヒートポンプ装置100が今回停止するまで継続して運転していた場合には、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数は0回となる。例として、第一閾値が3回、第二閾値が0回であるとすると、以下のようになる。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が0回の場合には、ステップS3からステップS4へ移行する。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が1回または2回の場合には、ステップS3の後、本ルーチンを終了する。
ステップS4で、循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の再起動後の目標循環流量を、ヒートポンプ装置100の前回運転時の目標循環流量に比べて、1L/min低い値に設定する。循環流量制御部10cは、当該設定された目標循環流量に対して、流量センサ30で検知する循環流量が等しくなるように、循環ポンプ11を制御する。ステップS4の処理は、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第二基準に比べて低い場合に、暖房循環流量を低下させることに相当する。ステップS4の処理は、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第二基準に比べて低い場合に、ヒートポンプ装置100の停止前の暖房循環流量に比べて、ヒートポンプ装置100の再起動後の暖房循環流量を低くすることに相当する。ステップS4の処理によれば、ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が小さいことが原因で暖房運転の効率が低くなっていると考えられる場合に、暖房循環流量を低下させることができる。これにより、ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が拡大する結果、暖房運転の効率を向上できる。ステップS4の処理の後、本ルーチンを終了する。
ステップS3で、頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第二閾値を超える場合には、本ルーチンを終了する。この場合には、目標循環流量は変更されない。すなわち、この場合には、循環流量制御部10cは、流量センサ30で検知する循環流量が、ヒートポンプ装置100の前回運転時の目標循環流量に等しくなるように、循環ポンプ11を制御する。これにより、以下のようになる。頻度判定期間におけるヒートポンプ装置100の起動停止回数が第一閾値未満かつ第二閾値を超える場合、すなわちヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準と第二基準との間である場合には、ヒートポンプ装置100の再起動後の暖房循環流量は、ヒートポンプ装置100の停止前の暖房循環流量に等しくなる。ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が第一基準と第二基準との間である場合には、現在の暖房循環流量は適切な値であり、暖房循環流量を変更する必要はないと考えられる。このため、ヒートポンプ装置100の再起動後の暖房循環流量を、ヒートポンプ装置100の停止前の暖房循環流量に等しくすることで、適切な暖房運転を実施できる。
なお、本実施の形態における起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10cは、暖房循環流量を制御し、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度が高い場合には暖房循環流量を増加させる第二制御手段に相当する。
本実施の形態の熱媒体循環システム1の設置後の初回の暖房運転のときには、制御装置10は、以下のように制御してもよい。循環流量制御部10cは、暖房循環流量を最低流量に設定してもよい。最低流量は、例えば、設定可能な循環ポンプ11の最低回転速度に応じて定まる。最低流量の値は、例えば、3L/minでもよい。暖房循環流量を低くすると、以下のようになる。水−冷媒熱交換器15での熱交換効率が向上する。ヒートポンプ加熱温度が高くなる。ヒートポンプ加熱温度とヒートポンプ戻り温度との差が大きくなる。暖房運転の効率が向上する。したがって、熱媒体循環システム1の設置後の初回の暖房運転のときに、暖房循環流量を最低流量に設定することで、暖房運転を高効率で実施できる。熱媒体循環システム1の設置後の初回の暖房運転のときには、循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度によらずに、暖房循環流量を一定にしてもよい。
本実施の形態では、リモートコントローラ21の第一操作部21bを使用者等が操作することで、起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10c、すなわち第二制御手段による暖房循環流量の制御を無効にすることを選択可能である。すなわち、使用者等が第一操作部21bを操作することで、起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10cによる暖房循環流量の制御を許可するか禁止するかを選択可能である。起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10cによる暖房循環流量の制御を許可することが選択されている場合には、上述した図5に示すような制御を制御装置10が実施する。起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10cによる暖房循環流量の制御を禁止することが選択されている場合には、循環流量制御部10cは、ヒートポンプ装置100の起動停止頻度によらずに、暖房循環流量を一定にする。本実施の形態であれば、第二制御手段による暖房循環流量の制御を無効にすることを選択可能とする上記のような無効化手段を備えたことで、第二制御手段による暖房循環流量の制御を望まない使用者等は、当該制御を禁止できる。
本実施の形態では、リモートコントローラ21の第二操作部21cを使用者等が操作することで、起動停止頻度判定部10b及び循環流量制御部10c、すなわち第二制御手段による暖房循環流量の変化量を増減できる。上述した図5に示す例では、ステップS2及びステップS4の暖房循環流量の変化量は、1L/min刻みである。リモートコントローラ21の第二操作部21cを使用者等が操作することで、この暖房循環流量の変化量を増減できる。例えば、図5のステップS2及びステップS4の暖房循環流量の変化量を、1L/min刻みから0.5L/min刻みへ減らしたり、1L/min刻みから2L/min刻みへ増やしたりできる。本実施の形態であれば、第二制御手段による暖房循環流量の変化量の増減を可能にする、上記のような調整手段を備えたことで、以下の効果が得られる。例えば暖房器具24の使用条件などに応じて、暖房循環流量の変化量を調整することで、暖房循環流量が適切な流量に対してオーバーシュートしたりアンダーシュートしたりすることをより確実に抑制できる。
図6は、実施の形態1の熱媒体循環システム1が備える制御装置10のハードウェア構成の例を示す図である。制御装置10の各機能は、処理回路により実現される。図6に示す例では、制御装置10の処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ101と少なくとも1つのメモリ102とを備える。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ101と少なくとも1つのメモリ102とを備える場合、制御装置10の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ102に格納される。少なくとも1つのプロセッサ101は、少なくとも1つのメモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置10の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等である。
図7は、実施の形態1の熱媒体循環システム1が備える制御装置10のハードウェア構成の他の例を示す図である。図7に示す例では、制御装置10の処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア103を備える。処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア103を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものである。制御装置10の各部の機能がそれぞれ処理回路で実現されても良い。また、制御装置10の各部の機能がまとめて処理回路で実現されても良い。
また、制御装置10の各機能について、一部を専用のハードウェア103で実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。処理回路は、ハードウェア103、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、制御装置10の各機能を実現しても良い。
また、単一の制御装置により熱媒体循環システム1の動作が制御される構成に限定されるものではなく、複数の制御装置が連携することで熱媒体循環システム1の動作を制御する構成にしても良い。
上述した実施の形態では、給湯暖房システムに本発明を適用した例について説明したが、本発明は、給湯を行わない暖房専用のシステムにも適用可能である。本発明の熱媒体循環システムは、蓄熱槽を備えないもの、すなわち蓄熱運転を実施しないものでもよい。